2022年6月11日土曜日

米国ネオコンが心に抱く新しい世界:ウクライナ戦争の今後

今回は、ウクライナ戦争の今後の展開を考える。その場合、米国の今後の体制に一定の仮定を置く必要があるので、すこしそれについて書く。

 

米国は今、深刻な分裂の危機にある。トランプが主力の共和党とネオコン支配の民主党の間の争いがのっぴきならない状況であり、ほとんど内戦状態にある。

 

トランプは、米国独立直後に主人公だった ”アングロサクソンの米国”をモデルに、主権国家としての米国の利益を第一に考え、MAGA(偉大な米国を取り戻そう)を標語にして、共和党の主力に登りつめた。
 

一方、民主党は労働者の権利を守る政党というイメージがあったが、現在は大きく変質している。ソ連を追い出されたトロツキー派とユダヤ系金融資本が所謂ネオコン勢力を形成し、最近はもっぱら民主党の中で活動してその支配層となっている様に見える。(補足1)

 

この米国の混乱が、2017年の大統領選挙から顕著になっている。この11月の米国中間選挙と2024年の米国大統領選挙の何れかで共和党が勝利すれば、その混乱は内戦状態になる可能性が大きい。また、両方に共和党が勝利すれば、米国のネオコン支配は内戦的混乱のあと終了する可能性が大きい。
 

ウクライナ戦争が今年起こったのは、この米国の混乱と大きく関連していると私は思う。民主党は、中間選挙までにインチキをしないで過半数をとるにはウクライナとロシアの戦争が必要だったのである。長年の準備(カラー革命に始まる準備)もあり、それに成功したしたものの、今のところバイデン人気は今一である。
 

以下の議論は、現在の民主党支配下の米国を前提に置く。


 

2)伊藤貫さんのyoutube動画「真剣な雑談」: 

 

このyoutubeシリーズは、国際政治を知るうえで非常に貴重な情報を与えてくれる。今回の話は、ウクライナ戦争及び今後の世界の歴史の動きについての、深層からの解説である。

 

 

重要なポイントの一つは、今回の戦争は100年間に一度起こる世界の構造転換の戦争であり、かなり長期に及ぶ可能性があるという指摘である。過去の戦争では、17世紀の30年戦争、18世紀のスペイン継承戦争、19世紀初頭のナポレオン戦争、20世紀の第一次と二次の世界大戦(補足2)である。

 

つまり、この戦争は世界の覇権構造が二極或いは一極支配から多極化する前の、世界史的戦争となるかもしれないというのである。

 

今回の米国によるロシア潰し(補足3)が、相当程度にロシアを弱体化させ、中露関係を中国上位の同盟の形に導けば、中国への応援になる。しかし、ロシアが完全に潰れてしまえば、米国は中国を次の標的にする可能性があり、中国にとっても厄介であると伊藤氏は語る。

 

3)私の考え:米国は中国に協力するだろう
 

上記のポイントについて、私は素人ながら少し違う風に考える。習近平の中国は、ジョージソロスがダボス会議で批判しており、現在の米国政権も歓迎しないだろう。しかし、それ以外の中国は、共産党下でも米国(民主党政権)は良きパートナーと認識し、見せかけの敵対はあっても、本質的な敵対はしないと思う。
 

米国の中国に対する評価は、国交回復の時にキッシンジャー補佐官と周恩来の間で確認されて以来、一貫している。その件については、一昨年の127日の記事に書いた。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12642624464.html<

 

米国のネオコン勢力は、中国は憎きロシアの隣国であり、思考パターンも自分達と同じであり、話が通じる相手だと評価している。ロシアが潰れれば、多極化した世界の中で、東アジアが障害なく中国の覇権下に入るだろう。

 

ここで話が通じる相手というのは、協力或いは利用できる相手だと言うことである。彼らにとっての関心は、あくまで自分たちの利益である。中国人と比較して日本人は、利用しにくい相手である。何故なら、自分の利益が関心の中心かどうかも明らかではないからである。

 

中国共産党政権と米国ネオコンとの深い関係は、中国の政権に近い学者(中国人民大学国際関係学院副院長)からも証言されている。それを紹介するHarano Timesの動画を以下に引用する。<a https://www.youtube.com/embed/gTcWNnYltaU

 

このまま米国の政治をネオコン勢力が掌握し続ければ、日本は非常に苦しい立場に追い込まれる可能性が高い。ネオコンたちは、東アジアの自然なリーダーとして中国を考えており、それを妨害する東アジアに不要な勢力として、ロシアと日本を考えて居るからである。(補足4)

 

 

4)米国ネオコンの考え;

 

安倍日本とプーチンロシアの接近を妨害したのは米国だろう。それは、1956年の日ソ共同宣言後の平和条約締結を妨害したダレス国務長官の姿勢と同じである。https://www.sankei.com/article/20210406-KPA6MILKRVKTZNSVQMYGENBK3Y/
 

安倍内閣の日露平和条約交渉において、歯舞と色丹を返却した場合には米軍基地がそこに来る可能性があるという話が急に立ち上がった。この話の背後に米国の動きがあるように思えてならない。伊藤貫氏が動画の最後の方で話すように、「米国国務省は将来に亘って日本を独立させる気がない」ようである。そのような日米関係が無ければ、日ロ平和条約は遅くとも安倍内閣で、早くて日ソ共同宣言の後の鳩山一郎内閣の時に締結出来ていただろう。

 

そのような態度を米国がとる理由だが、米国ネオコン勢力は、日露接近が米国や中国にとって安全保障上の脅威になると認識しているからである。今回のウクライナ戦争が始まる1ケ月前に日本に赴任した米国のエマニュエル駐日大使は、 ウクライナ戦争にたいして日本の姿勢を完全制御するために日本に送りこまれたのだろう。

 

彼は、オバマ政権の時の大統領首席補佐官という大物である。NATO諸国とは意思疎通が出来ているが、日本政府は十分理解していない可能性が高いので、安倍元総理のように何をしでかすかわからない。その場合、脅すことができる人物が必要なのである。

 

その結果、今回の岸田内閣は、日露関係改善の可能性を自ら放棄した。米国ネオコン政権は、「将来の安全保障上の障害としての日露協力を計画通り潰すことが出来た」と思っただろう。インドと日本のウクライナ戦争に対する姿勢の差が、日本の現在の立場と能力を現わしている。
 

日本の岸田政権の米国への服従は、恐ろしく完璧である。NHKから産経新聞まで、ロシアの言い分を流すメジャーなマスコミは無い。ローカルなマスコミでは、例外的にテレビ東京の豊島記者のネット解説だけが、ロシアのウクライナ侵攻の背景を少し語っていた。

 

このまま、米国民主党政権が続けば、世界は多極化するだろう。それはネオコンの思惑とは異なるだろう。ネオコンの目標はあくまで、統一世界国家の樹立であり、そのリーダーとなることである。
 

最初に紹介した伊藤貫さんの動画では、ネオコンの弱点を米国を代表するユダヤ人哲学者及び言語学者であるノーム・チョムスキーの言葉を引用して解説している。チョムスキーは、以下のように言ったという。「ユダヤ人がアメリカのマスコミをコントロールして、Alternative World を作り出し、それをアメリカ人に強制している」と。

ネオコンの弱点をce="MS 明朝, serif">は、もう一つの新しい世界という意味である。彼らは、自分達が世界をコントロールすることが出来ると過信して、世界を混乱に導くと言うのである。それは文明の終末を意味する可能性が高い。もし、かれらが聖書の終末思想に導かれているとすれば、もはや何をか言わんやである。

 

補足:

 

1)労働者とネオコンを結びつける考え方として、当然トロツキーの共産主義思想がある。更に、元大統領補佐官のブレジンスキーが喋ったように、マイノリティー(ユダヤ人、黒人、性的マイノリティー)の権利拡大という左翼思想を武器に、政治で支配的になった。マイノリティーが支配層となるという皮肉は、米国を倒錯状態に導き、今やその倒錯状態は世界の文明の危機となっている様に見える。尚、ネオコンは共和党での呼称だろうが、現在では共和党の主力の座をトランプに奪われた様に見える。つまり、民主党も共和党も、その内部に分裂を持つ。

 

2)二つの世界大戦を合わせると合計約30年間の世界戦争になり、これをフランスのドゴールは第二次30年戦争と呼んでいたという。そして、この戦争を勃興するドイツを抑え込む戦争と解釈した。夫々の戦争の意味については、元の動画の23分丁度から語られているので、参照してもらいたい。

 

3)現在のウクライナ戦争は、米国民主党政権の企画通りに進んでいる。この伊藤氏の動画では、この点を2冊の本を参照して紹介している。これら2冊の本は、Steve Cohen元プリンストン大教授で歴史学者の書いた、”Failed Crusade” および”War with Russia” という本であり、米国民には何も知らされずに行われた対ロシア戦争までの米国の準備を書いている。現在の戦争は、そのネオコン勢力の企画の通りに進んでいると語る(34分から)。

 

4)日本は、セオドア・ルーズベルトの時代に東アジアの政治における米国のパートナーとなりかけた。しかし、身の程を知らず、米国と対立する道を進んで、第二次大戦で叩き潰された。もう一度、ニクソン政権のときに、日本を地域のリーダーにすることを米国は考えたようだが、その意図が時の首相の佐藤栄作には全く通じなかったようである。
 

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