2022年6月8日水曜日

小惑星竜宮にアミノ酸があった? 科学的成果は慎重に公表すべき

 

おととい夜のTVニュースで、小惑星「竜宮」から持ち帰った砂にアミノ酸が含まれていたという報道があった。そのニュースは7日の新聞(中日新聞)の一面トップ記事であった。その見出しは、「生命の源、地球外で初確認」だった。

その記事には、「関係者への取材で分かった」と書かれているのみで、その成果は学会誌に投稿する段階にも至っていないと思われる。それを大々的に掲載する新聞と、それを許可する担当研究者の良識を疑う。

本当に小惑星由来のものかどうかは、論文として出された内容を専門家が審査しなければ、第三者は信用する訳にはいかない。それが科学者の基本的姿勢である。一般に公表する方法として、最初に新聞紙やテレビ報道を用いるのは、異常であり非常に無神経である。

新聞(中日新聞)には、「小惑星竜宮で見つかったもの(アミノ酸)に左手型(L型)が多ければ、宇宙から、それは宇宙からもたらされた可能性が高まる」(カッコ内は筆者が補足)という解説があるが、一体だれがそのようなコメントを書いたのか?

しかもその内容の根拠がわからない。地球上で混入したアミノ酸でもL型が多い筈である。そんな下らない解説の前に確認すべきは、確かな結果かどうかということである。それは報道する側の良心ではないのか。

 

元研究者の私が関心をもつのは、世界の専門家の審査に耐えるだけの論文が書けるかどうかである。論文になれば、その真偽を考えることも可能である。そうでなければ、記事を読む気にもならない。何故なら、全くの間違いである可能性があるからだ。

スタップ細胞の件を忘れたのだろうか? あのケースでは、マスコミの報道は、学会の専門家の審査を経て論文発表されてからだった。しかし、共著者間で十分な知識の共有がなされていなかったため、間違った内容を発表してしまい、あとで論文を取り下げることになったのである。

また、新型コロナの件でも、一流医学誌に発表された論文が幾つも、再現性が乏しいということで、撤回された。https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/082300015/062500169/

日本の新聞や報道機関は、あまりにも科学研究から発表までのプロセス、そしてそれが学会で真実として定着するまでのプロセスなどに無知である。

今回の結果は、非常にエキサイティングだが、それだけにもっとマスコミ報道は、慎重にするべきである。先ずは学会誌に投稿し、専門家の審査を経て、受理されるのを待ってからにすべきである。恐らく、分析プロセスに間違いがないかどうかなど、慎重に審査されるだろう。


 

また、その結果に、地球由来でない証拠がしめされているかどうかも非常に重要である。例えば、炭素、窒素、酸素、水素すべてに安定同位体が存在するので、その比が地球上と異なるかどうかなど注目されるだろう。(おわり)


 

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