2023年6月26日月曜日

日本のジャーナリズムが直面する深刻な問題

昨日、山口敬之氏の「日本のジャーナリズムが直面する深刻な問題」というタイトルの話をyoutube動画で視聴した。今回はその一部紹介と主題であるジャーナリズムのあり方等に関して、私の考えたことを記す。https://www.youtube.com/watch?v=Ovrnp9vEVzs

 

 

山口氏が指摘するのは、日本の大手マスコミが国民の知る権利に全く応えていないことである。具体例として、ウクライナ戦争やLGBT法制定問題について、日本の大手マスコミは真実とは程遠い内容の報道しかしていない。

 

例えばウクライナ戦争の理解には、ソ連崩壊から東欧での民主化などの近現代史からの分析が必要なのだが、その歴史的背景からの報道が全く欠けている。(補足1)日本の大手マスコミは、米国政府や日本政府の“大本営発表”を垂れ流しているのみである。(補足2)

 

この大手マスコミの報道は、一言でいえば大手マスコミが深刻な程度に米国の支配下にあることが原因である。(補足3)この日本の大手マスコミの体たらくには、共通した構造的な問題がある筈である。ただ、今回の動画では、あまり切り込んでいない。

 

多分、日本の政治が敗戦後に米国への隷属状態にあることなどがその原因の一つであることに直ぐ思いつくだろう。しかし、それだけではない。その本質的な部分が、日本における基本的かつ最重要な問題点であるので、次のセクション以下でそれを議論する。

 

ここ数年の間にインターネットを介して、情報量が増えている。従って、個人が正しい情報を得るには、正しい歴史観や価値観を身につけて、玉石混交のこれらの情報の中から必要な正しい情報を選び取るしかない。現在は、そのような時代であるという指摘で、話が終わっている。この部分についてはその通りだと思う。

 

 

2)国民の知る権利:

 

山口氏は、最初の方でジャーナリズムと国民の知る権利について、基礎的或いは硬い話をしているので、少しその辺りについての私の考えを先ず整理する。

 

国民の知る権利は、生存権など基本的人権に由来する。正しい情報は、日々の生活だけでなく自分の生命維持に直結するからである。ただ、知る権利の行使には、情報の出口としてまともなジャーナリズム(=真実とそれについての意味に関する報道)が存在しなければならない。

 

そのような良質なジャーナリズムは、憲法21条にある表現の自由が無ければ成立しない。しかし、表現の自由だけでは、そのような報道は期待できない。まともなジャーナリズムは、その国の文化が作り上げるものである

 

そのような文化を日本は独力で作り上げていないというのが、本稿での指摘である。つまり、日本に嘗てまともなマスメディアが存在したとしても、それは西欧の真似として存在しただけであり、日本にその文化がなければ、情況の変化によりそのメッキは簡単に剥がれるのである。

 

国民の知る権利の保障は、民主主義政治の基本的要件である。しかし日本には、民主主義政治も国民の知る権利を保障するジャーナリズムも創り上げたという歴史、それを要求し支援する文化も存在しない。それが、日本のマスメディアに“本物のジャーナリズム”が欠けている理由であると私は思う。

 

勿論、米国や現在の政府による干渉はあるだろう。しかし、その力に簡単に屈し、それに抵抗する力がジャーナリストやマスメディアなど関係者から出てきていない等のことから、以上の分析が成立すると考える。山口敬之氏はその例外的存在の一人である。

 

民主主義の危機という点でもっと深刻なのは、米国の政治情況である。そして、マスメディアは完全に民主党政府のプロパガンダ機関に堕落している。それにも係わらず、米国ではまともなジャーナリズムを回復しようとする努力が存在する。以下にそれを示す。

 

  

3)米国におけるジャーナリズム

 

米国FOXニュースのTucker Carlsonの番組は、米国民主党政権のグローバリズム政策に正面から批判する内容で、CNNのニュース番組よりも遥かに高い視聴率を獲得していたようだ。しかし、彼は2ヶ月前に解雇された。政府批判の報道が、政府の背後にいる東部エスタブの怒りを生み出したことが原因だと、一部に言われている。

 

また、Project Veritasのように、反グローバリスト的ゲリラ報道をするジャーナリストも存在した。ファイザー社重役がコロナ変異株のワクチン開発と同時に、コロナウイルスの変異の実験をしていると話す場面を録画し公表した。しかし、この件が原因で創始者のJames O'Keefeが、Project Veritasを追われることになった。http://totalnewsjp.com/2023/01/27/covid19-768/

 

この同時研究は、コロナウイルスの変異株が流行しても、短時間にワクチンの開発を可能にすると好意的に受け取ることも可能だが、コロナの変異株をバラまいて流行させ、適当な時に用意したワクチンを売り出せば、独占的に利益を得ることが可能となるというビジネスモデルも疑われる。

 

イーロン・マスクがこれまでひどい検閲があったツイッターを買収して検閲を大幅に縮小したので、タッカー・カールソンはツイッターで彼の番組を再開した。https://www.youtube.com/watch?v=evpFS8ODZEE

 

また、James O'Keefeは、独自に O'Keefe Media Group (OMG)という会社を設立し、活動を再開している。最近、世界最大の投資運用会社のブラックロックを取材し、政治家とお金の関係を暴露している。これも詳しくは及川幸久氏の動画を見てほしい。https://www.youtube.com/watch?v=SOX3R4iuUEk

 

大手メディアがまともに国民の知る権利を保障する姿勢を示していれば、このような解雇と復活の劇を観ることはなかっただろう。また逆に、この解雇・復活劇は、その国の民主政治が危機にあることと、その危機からの脱失を試みているということである。

 

実際、バイデン民主党政権の支持率は大きく下落している。政治に対する影響力も確かに存在する。

これらは、米国民が持つ政治や報道等の文化は、過去において民主主義を闘争の結果獲得したという欧米の歴史の中で醸成されたという証拠である。その闘争の記憶が、ある種の危険を犯してでも、ツイッターに表現の自由を回復し、そこで良質のジャーナリズムを回復させたのである。

 

上に引用のジャーナリストたちも、そしてかなり多くの政治家たち:トランプも、ロバートケネディJrも、命の危険も承知の上で、それらの分野で活動している。日本人は殆ど、この民主政治体制を守ることなど頭の端に退け、「命が地球より重い」という信仰を真ん中において日常を送っている。

 

その生き方では、侵略者や独裁者から社会を守れない。ただ、家畜の様にと殺されるまで生きるということになる。

 

 

4)日本のジャーナリズム:

 

深刻なのは、日本にTucker CarlsonProject Veritasやそこから飛び出したJames O'Keefe がいないこと、そしてそのような番組を利用して相当多くの国民が情報を得ていないことである。(補足4)インターネットで戦う例外的な人物はかなり出ているが、国家の政治との境界で活動しているのは少数である。しかし、簡単に国民に見捨てられるようでは、その人たちも居なくなるだろう。

 

つまり、日本の危機は、日本のマスコミが政府の都合に配慮して嘘を垂れ流しても、何の不自然も感じない日本国民とその文化に存在する。

 

因みに、ゲリラ報道が成功した背後には、組織からの内部告発がある。これは、国民全体の知る権利を保障するために、上司や会社と自分との関係を破壊するというリスクを冒すことを意味する。その個人の損害が非常に大きいだろうが、それを敢えて実行するのも、彼らの文化の力である。(補足5)

 

日本社会は、人と人の関係に雁字搦めになっており、人の自由な発想が大きく育つような自由な社会空間を持たない。ある情報の社会への伝達力も、その重要性の分析や論理よりも、それが誰によりもたらされたかによって80%決定される。

 

ネットを見ていても、下らない芸能人の政治的発言が大きい空間を占めている。この日本文化を再考し、変えていくことでしか、本当の意味で良質なジャーナリズムは日本に定着しないだろう。

 

 

補足:

 

1)この件については、ロシアの侵攻前に私が書いた20222/18の記事「ウクライナ危機について:米国はNATOの東方非拡大を約束すべき」を参照いただきたい。全く同じ指摘をしている。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

 

2)LGBT法案について、大手メディアは岸田政権のプロパガンダのような嘘の報道をしていた。この件について最初に引用の動画の最後の方で解説しているが、本稿は具体的議論をするためのものではないので、ここでは省略する。

 

3)山口氏はこのことと関連して、読売新聞(日本テレビも経営)の創業者である正力松太郎氏が、CIA(米国中央諜報局)のスパイであったことを指摘する。しかし、これは日本テレビ(読売新聞)だけの問題であり、他のマスコミにも共通している訳ではない。更に、創業者が嘗て米国のスパイであったとしても、自動的にその会社が米国の利益を優先内容の報道をするとは言えないのでここでは本文での紹介は避けた。

 

4)日本にも何人かの戦うジャーナリストが存在する。山口敬之氏もその一人である。その他、youtuberとしては馬渕睦夫氏、渡辺惣樹氏、河添恵子氏、などかなりの方が戦っておられる。しかし、それが国民に与える影響は極わずかだろう。

 

5)内部告発は儒教的に見れば裏切りであり、悪である。しかし、儒教は非常に小さい社会構造を前提においた道徳を説くのみで、現在のような広い社会には時代遅れの道徳規範でしかない。

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