2024年3月5日火曜日

ゴルバチョフ元大統領とムラトフ編集長へ授与されたノーベル平和賞の役割

最近テレビ朝日系のyoutubeチャンネルが、ウクライナ侵攻が始まって間もなく米国に避難した、あるロシア人記者に対するインタビュー動画を公開した。以下にそれが反プーチン・ロシアのプロパガンダであることを示す。その話との関連で言及する人物二人がともにノーベル平和賞受賞者であることから、反プーチン・反ロシアであるグローバリスト(補足1)たちが用いる手法としての褒章制度やフェローシップ等についても書く。グローバリストたちは、金と褒章制度、更に各種トラップを巧みに用いて、世界に手先を育てていることを示すのが今回のブログ記事の目的である。


 

1)ロシアから米国に逃れた反体制派新聞記者の活動について

 

二週間程前にテレビ朝日系のANNnewsCHが、ウクライナ侵攻によりアメリカに亡命したあるロシア人記者にインタビューして作成した短い動画を公開した。その元記者の名前は、単に「リザさん(26歳)」とだけ紹介されている。https://www.youtube.com/watch?v=JAPGP5n_oY4

 

 

この動画によると、リザさんはプーチン批判を続けているロシア最大の独立系新聞ノーバヤ・ガゼータ(新しい新聞 )の記者であり、ウクライナ侵攻後に同僚の記者二人が暗殺されかかったことなどもあり、身の安全を考えて、既に米国に亡命していた両親のもとに合流した。

 

米国では記者の仕事などに就けないので、リザさんは自動車修理工場で働くようになった。昨年5月から、そこで働くウクライナ東部のドネツク(州又は共和国)からの避難民バイラムさん一家と知り合いになった。そして英語が苦手なバイラム家を訪問し、手続きなどの様々な手助けしている。ウクライナ人のバイラムさんは、ロシア人のリザさんは今や家族同然だと話す。

 

そのウクライナの方のスマホに送られた実家近くの惨状を見て、リザさんは「母国(ロシア)がウクライナでやっていることに責任を感じます。ロシア人として記者として十分なことをしてこなかったのではと思ってしまう」と語る。

 

そのインタビューから二週間後、リザさんはアメリカに逃れたウクライナ侵攻を批判するトップアスリートたちが、プーチン政権から圧力をうけているという記事をネットにアップした。記者活動の再開である。そして「今もロシア国内に事実に基づく報道を求める人たちがいることを知っています」、「私に出来るのは国外から情報を伝え続けることだけです」と語る。

 

この動画は、実際にはその重要な細部が全く不明であるにも拘わらず、事実と語りとをつなぎ合わせて作り上げた、ロシアによるウクライナ侵攻を批判する為のプロパガンダ動画である。猜疑心と警戒心の無い多くの日本人が視聴すれば、プーチン憎しの感情を強くすることになるだろう。


 

2)プロパガンダの作り方


上で述べたようにこの動画は、幾つかの事実不確かな情報を組み合わせ、そこに元々反政府の報道活動をしてきた人の語りを織り込むことことで、視聴者を反プーチンの方向に導くという目的に沿う物語を作っている。そこで語られている「真実」や視聴者に想像させる「物語」について、何の検証もなされていない。つまり報道とは程遠いプロパガンダである。

 

ロシア人の若くて穏やかな女性の外見と、彼女と異国(米国)でのウクライナ人との親交(平和的)の様子から、視聴者の感覚に訴えて、老練なプーチンの決断とその政治的歴史的論理を忌避させ、ウクライナを支援する米国が平和を目指していると思わせるのである。

 

ドネツク地方のバイラムさんの自宅近くが爆撃されたことと、それがウクライナ侵攻が原因となって発生したことは事実だろうが、その被害がウクライナ側からの攻撃により生じたかも知れないのだが、それについては何も語られていない。ロシアとウクライナの戦闘で発生したウクライナ住民の被害だから、ロシアからのミサイルによる被害だろうという視聴者のナイーブな想像に任せている。

 

リザさんは「母国(ロシア)がウクライナでやっていることに責任を感じます」というが、どのような責任なのか? 戦争がプーチン政権の権力欲や領土欲などで始まったのなら、迅速な真実の報道で国民の反対運動を誘起し或いは止められた可能性もあるかもしれない。しかし、ウクライナ進攻が、バイラムさんの住むドンパス地方のロシア人たちの命を救うため、そしてNATO諸国の連携でロシアの現政権を潰す作戦に対抗する為に為されたという経緯を考えれば、その論理は成立しない。

 

「悪は、権力欲と領土欲にまみれたプーチンなのだから、プーチンを政権から追い出す運動を十分にやってこなかったことに責任を感じている」という論理の周囲を固めるように話を展開し、その偽論理を真実のごとくに視聴者の脳内に作り上げるのである。インチキを直接主張したのでは、視聴者に警戒心を呼び起こし信用されない。虚像は本人に作らせるのである。


ロシアがウクライナを代理とする米国ネオコン政権と戦争をしているという真実について、そしてもし敗退すればロシアは存亡の危機を迎えるだろうというプーチン政権の事情には一切触れていないし、そのような母国ロシアの事情には全く配慮を感じない。

 

最後に触れている渡米したロシアのアスリートたちが受けたプーチン政権の圧力だが、どのような圧力なのかについて全く触れられていない。事情を知るロシア人からすれば、リザさんの米国からの報道は裏切り者のすることである。

 

 

3)ノーベル平和賞の役割


このタブロイド紙は、情報公開(グラスノスチ)によるソ連の立て直し(ペレストロイカ)を宣伝し、1990年にノーベル平和賞を受賞したゴルバチョフが、その賞金をもとに設立した新聞社が発行している。既に述べたように、この新聞はプーチン政権下でのロシア第一の反体制派新聞である。日本や米国には、このような反体制派の新聞は存在しない。


この新聞社創設後に、記者ら6人が殺されるなど脅迫は日常的であったという。それでも表現の自由を守り続けたと動画は語る。そのドミトリー・ムラトフ編集長が「表現の自由を守る努力」により2021年のノーベル平和賞を受賞したのだが、ロシア軍がウクライナに侵攻開始したのはその4ヶ月後であった。その数日後の同誌の紙面にはわざと大きな空白が作られ、抗議の意志を明確にしている。


検閲を始めたプーチン政権に抵抗したのだが、それから一か月で休刊となった。プーチン政権による言論統制の結果なので、世界の情報から遮断されている日本人の多くは、やっぱりプーチンは独裁者なので、汚いことをやると考えるだろう。ただ、戦時下の国では、情報統制は大多数の国民を束ねる為として普通に行われることである。

 

ウクライナ侵攻とほぼ同時期にムラトフ編集長にノーベル賞が授与されたことは、ノルウェー政府の思惑が強く働いた結果である可能性が高い。因みにノーベル平和賞を選定するノルウェーは、伝説の記者であるシーモアハーシュが、ノルドストリーム爆破の実行国であると暴露した国である。

 

 

ゴルバチョフとロシア反体制派の新聞の編集長に対して、殆ど同じ理由でのノーベル平和賞が授与されたことには、欧州各国の強い反感は共産主義に対するものではなく、ロシアに対するものであることが分かる。結局、反ロシアの戦略においてノーベル賞は有効に働いた或いは道具として使われたということである。

 

尚、ゴルバチョフは、プーチン大統領を抑圧的な政権運営を行なっていると非難し続けた。しかし、2014年のロシアによるクリミア併合につながった現地での住民投票は支持をしており、一貫していない。プーチンは、このクリミヤ併合を評価した点でゴルバチョフを高く評価したが、それ以外では一般に低い評価である。実際、ゴルバチョフの葬式には参列を見送った。(補足2)

 

ノーベル賞が人類のためにその年最大の貢献をした人々に授与されると言うが、そのような看板は神でも無い限り維持不可能である。学校や軍隊以外での褒章制度は混乱の源になり得ることもあり、君主制以外の国では存在理由は無いだろう。

 

 

終わりに


先日のナワリヌイ氏の死亡(補足3)に関する西側諸国の非難とそれと全く同じ趣旨のムラトフ編集長の声明から考えると、ナワリヌイ氏もムラトフ氏も米国現政権側つまり世界を一つにまとめようと考えているグローバリストたちの仲間と考えられる。https://www.jiji.com/jc/article?k=2024021601228&g=int 


実際、ナワルヌイという人物は、極右の人種差別主義者であるにも拘わらず、2010年には米国イェール大学のグローバルリーダーを育てるプログラムを受けている。そこに資金提供しているのが、米国のCFRCIAと関係の深いユダヤ系のモーリス・グリーンバーグというグローバリストである。現在もそのプログラムは、Maurice R. Greenberg World Fellows Program – At Yaleとして存在する。

 

イェール大学は、ユダヤ系或いはグローバリスト系の大学かもしれない。上記 World Fellows Programの他、怪しげな秘密組織であるスカル&ボーンズ(ドクロと骸骨)でも有名である。この会員であった卒業生をボーンズマンと呼び、その後政財界の有力者となるケースが多い。特に、CIA長官の多くはボーンズマンである。

 

World Fellows Program同じような怪しげなやり方に、世界経済フォーラムのYoung Global Leadersという褒章制度がある。日本人から選ばれた人物として、竹中平蔵現WEF理事が居る。2023年にも日本から一人、「高齢者は集団自決すべき」と語った成田悠輔氏が選ばれている。

 

これらは私的褒章制度ではあるが、ピンクトラップやマネートラップ、更には米国のエプシュタイン事件などと同様、グローバリストらが協力者を集めるために仕掛けた罠なのだろう。

 

 

補足:

 

1)グローバリストとは、米国を中心に政治と経済の一極化を目指す人たち。ロシア革命の中心人物でスターリンとの政争に破れたトロツキーの一派が、ヨーロッパから移住したユダヤ人資本家たちを中心にした金融資本家と連携し、深層から米国を支配するように作り上げた勢力を中心とする。その情報と政治のネットワークは欧米全体に広がっているが、国家の政治をほぼ支配していると思われるのは、英国と米国だろう。その米国の政府を深部から支配するシステムは(Deep State)と呼ばれ、元ウクライナ大使の馬淵睦夫氏が明快に解説している。https://www.youtube.com/watch?v=Z85BnnOPmZ4

英国の本当の支配者については前首相のトラスが、言及している。https://mainichi.jp/articles/20240226/k00/00m/030/011000c

 

スイスのダボスにある世界経済フォーラム(WEF)は、今やグローバリズムの世界の中心のように見えなくもない。尚、世界支配を目指すグローバリストたちの陰謀を語ることを批判するために陰謀論という言葉が頻繁に用いられる。グローバリストたちに洗脳された人たち以外の知的な層には、陰謀論は根拠のない想像だけ話では無くなっている。

 

)プーチンは、ゴルバチョフを「私たちの国と世界の歴史に大きな影響を与えた、現代で最も優れた政治家の1人」と、ゴルバチョフ氏を称賛した。https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-62733812 しかし、プーチンには、以前からゴルバチョフやエリツィンをあまり評価せず、むしろスターリンを評価する言葉が多かった。

 

3)ナワリヌイ氏について、カナダ在住の近現代史研究家の渡辺聡樹氏が動画で解説している。https://www.youtube.com/watch?v=_DIHECZXSBs  その中で触れられているのだが、ウクライナの諜報部門のトップは、彼の死はプーチンの命令による毒殺ではなく、血栓が原因だと語った。https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20240226_06/#:~:text=The%20head%20of%20Ukraine's%20Defence,was%20killed%20while%20in%20prison.

勿論、このウクライナの諜報部門のトップは反ゼレンスキーかもしれないので、確定的とは言えない。それが国際的な事件一般に言えることだろうが、真相はほぼ常に藪の中である。

(20:45,編集後最終稿とする)

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