米国大統領選挙予備選において、トランプ元大統領が共和党候補と決まって以来、本選でも相当有利だろうと言う意見がyoutube等でよく聞かれる。米国でも、ウクライナ戦争に対する米国現政権の責任に気付いている人が増加している。タッカー・カールソンの報道は一貫して客観的だったし、シカゴ大のミアシャイマー教授なども正確にこの戦争を分析している。
それでも、3月7日に行なわれた一般教書演説(補足1)においてバイデン大統領は、ウクライナ支援はプーチン・ロシアによる更なる西側侵攻を防ぐために必要だなどというインチキ論理を堂々と主張している。この論理が米国では未だ通用するのである。この辺りのことを河添恵子さんが分かりやすく纏めている。https://www.youtube.com/watch?v=keF5DDDGFqo
自分たちがソ連崩壊後やってきたことを棚に上げて、ウクライナが負ければプーチン・ロシアがポーランドなど西側にドンドン侵攻してくるというのである。「米国は自由と民主主義のために独裁政権のプーチン・ロシアと戦うウクライナを支援している」という大嘘である。
何方が専制政治の舞台なのかは、今や明らかである。大勢の人命を犠牲にし戦争で手に入れた民主政治でも、各個人が歴史と政治への関心を失えば、そして時間と能力に応じた日々の研鑚がなければ、容易に専制政治に堕するという良い例が、今日の米国でありその他の西側G7の国々だと思う。
作り上げた制度やシステムが高度で複雑になるほど崩壊は容易に進む。豊かになり生活が楽になれば、人々は考える習慣を失い、知識ある良心的な人物を選り分けてそのことばに耳を傾けるという知恵と謙虚さを失う。HaranoTimesさんがアップロードした動画がこのような米国民の姿を示している。https://www.youtube.com/watch?v=fRbIoRcbwrg
未だにトランプを攻撃するネオコン現政権側に洗脳された人たちも大勢いる(その比率は減少の一途だろうと想像するが)ので、11月の本選の結果を予測することはそれ程容易ではない。ネオコン側、つまり、ウォール・ストリート金融資本側の工作に屈服する可能性も残されている。
ここで特に紹介したいのは、今年3月25日にイスラエルの新聞イスラエル・ハヨムが トランプ元大統領に対するインタビューの様子である。マタタビ羅針盤4というチャンネルが日本語字幕を付けてくれている。この新聞社のオーナーは、ネタニヤフ大統領の支持者であり、私は米国のイスラエルロビーとも近いのではないかと思う。(補足2)
ここで考えなくてはならないのは、ユダヤ教右派の人たちとウォールストリートのユダヤ人とは全く異なる考え方をもっているということである。前者は敬虔なユダヤ教徒であり、後者はディアスポラのユダヤ人であり、神をも恐れぬ人たちである。ただし、同じユダヤ人という強い同族意識はもっているだろう。
注目すべきは、インタビューでの質問とその雰囲気、神妙なトランプ氏と強硬なインタビュアーの面持ちである。最初感じたのは、インタビューと言うよりも面接試験ではないかと思ってしまうこの雰囲気である。その強烈な印象がこのブログ記事を書く動機となった。トランプが大統領になるには、彼らの支持が必須だろう。
兎に角、トランプ元大統領の緊張した様子と、ヤームルカと呼ばれる伝統的帽子(補足3)を被ったユダヤ教ラビ風の人物(本記事では、彼をより上位の人物と考え、そのように以下呼ぶ)の鋭い元大統領を下方に睨む目つきに注目してもらいたい。
2)イスラエル・ハヨム紙によるトランプ氏への尋問
イスラエル・ハヨムから派遣された人物二人のうち下位にあると思われる人物が最初に行なった質問は、「あなたはハマスを完全に潰すというイスラエルの最終目標を支持しますか?」であった。イスラエルに対するトランプ元大統領の姿勢の本質を得るために行なった質問である。
それに対して、トランプ元大統領は直ちにイエス又はノーと答えないで、「もし私が大統領だったら、あなた方が攻撃されることはなかったでしょう。何故なら、イランにはお金がなく、中国はイランから石油が変えなかったからです。ハマスやヒズボラを支援しようにもお金がありませんでした」と。バイデンのイランへの一部制裁解除(資産凍結の解除など)を攻撃したのである。
それに続いて、トランプ元大統領は、戦争は終わらせなければならない。そうしなければ、イスラエルは世界中からの支持を失うと言っている。これは、質問への答えが心情としてはイエスであっても、現実の政策では単純なイエスはあり得ないということを示している。周到に準備を整えてから「平和が大事だ」という政治家としての持論を主張している。日本の政治家でこれだけの応答が出来る人物は一人もいない。
トランプ氏の答えを聞いたのち、上位の人物が二番目の質問を行なった。彼は、トランプ氏の発言を聞いて臨機応変に質問を行う役なのだろう。「あなたが大統領になったとして、その時戦争が続いている可能性もある。その時、あなたはどの様にしてイスラエルを助けるのですか?」
この質問にも直ぐには答えず、現職バイデン大統領の愚かな政策を非難する一方、前トランプ政権はイランに核武装させない様に努力したことや米国大使館をエルサレムに移動させたことなど、イスラエルの為に行なった10個の政策について話している。
その他には、イスラエルとUAEやバーレーンなどとの和平合意(アブラハム合意)の仲介や、ゴラン高原へのイスラエル領有権の承認などがある。バイデンの政策の後にイスラエルにどの様に味方するのかという質問だが、彼が日本語の「木に竹を接げない」ということばを知っていれば、もっと回答は容易だっただろう。
アブラハム合意: https://www.meij.or.jp/research/2023/4.html
ゴラン高原に対するイスラエルの主権承認: https://www.bbc.com/japanese/47663449
三番目の質問は、世界の全ての国のリーダーが答えるべき質問だがと前置きして為された、「10月7日のハマスのテロのようなこと自国民の婦女子に対して行なわれたのなら、あなたならどうするか?」という問であった。これにはトランプは、「あなた方(ネタニヤフ政権)と同じようにする」と答えた。この質問と答えは最重要なやり取りと感じた。
質問と回答を繰り返していく内に、イスラエル・ハヨムの二人の人物の表情が和らいでいく。「あなたは今後イスラエルを訪問しますか?」に対して、トランプ氏は「勿論です」と答え、更に過去の訪問時に、「もし私がイスラエルの大統領選に出れば98%の票を集めることが出来るでしょうと言われた」との冗談を披露できる様になった。
「私にとってイスラエルは大事な国です。それがゴラン高原の領有を認めた理由です」と語る。それを聞いた後、イスラエル・ハヨム紙派遣の上位の人物は、トランプ政権時の駐イスラエル米国大使のデビッド・フリードマンがヨルダン河西岸へのイスラエルの主権承認を主張しているが、あなたはこの計画を支持しますか?」と畳みかける。
トランプ氏は、「かれらがその案を持って来て議論したいというのなら、議論します」と やんわりとかわしている。それだけでは角が立つと考えてか、皆が平和を望んでいることと、トランプ政権時に多くの事をイスラエルの為にやってきたことの宣伝を繰り返している。
第二次世界大戦後、国連によりパレスチナに割り当てられた所謂“ヨルダン河西岸”やシリア領とされるゴラン高原に対するイスラエルの主権主張は、当然国連決議違反である。トランプは国連中心主義ではなく、従ってそれを重視していない。国連が所謂グローバリストが世界の全体主義的支配を達成するための機関なら、トランプの姿勢は一貫している。トランプは肝心な部分では嘘をつかない政治家と評価されるだろう。
インタビューアーの話し方や、トランプ氏へのインタビューの仕方を見ていると、何やらユダヤ人コミュニティ―にとって、次期大統領にトランプがなった場合の準備に見える。或いは、次期大統領となる可能性が高いと考えて、トランプの対イスラエル外交の予測と確認の為の面接なのだろう。
イスラエル支配層と米国を牛耳るユダヤ人コミュニティは一体ではない。(補足4)トランプが支持するのは、イスラエルのユダヤ人であり、グローバリストのユダヤ人ではない。後者は、バイデンを操っている人たちである。
イスラエル・ハマス戦争がグローバリストの仕組んだ戦争のように考えられているが、もしそうならイスラエルは間違った人物を大統領にした可能性が高い。その場合、ネタニヤフ大統領は、その心情は兎も角、西欧諸国首脳や日本の首相と同様にグローバリストのネオコン米国支配層に操縦されているということになる。
トランプ元大統領に対するイスラエル・ユダヤ人コミュニティのバックアップがあれば、トランプの次期大統領も十分考えられる。トランプ氏に暗殺の危険があるものの、現在まで無事だったのはイスラエルロビーの功績かもしれない。
3)独占インタビューを報じたイスラエル・ハヨムの記事
このインタビューをイスラエルでどの様に報じたのか? その記事を引用する。https://www.israelhayom.com/2024/03/25/trump-to-israel-hayom-only-a-fool-would-have-not-acted-like-israel-on-oct-7/
トップにある要約に以下の様に書かれている。
In an exclusive interview, the 45th president blames Joe Biden for the war in Israel.
"He can't talk. He's a very dumb person. He's a dumb person. His foreign policy throughout 50 years has been horrible. If you look at people that were in other administrations with him, they saw him as a weak, ineffective president, they [Hamas] would have never done that attack if I were there."
Speaking from his Florida home, he expresses disappointment with Jews who do not support him: "They hate Israel."
第45代大統領は独占インタビューで、イスラエル戦争の責任はジョー・バイデンにあると非難した。
「彼は話すことができない。彼はとても愚かな人間だ。彼は愚かな人間だ。50年間にわたる彼の外交政策はひどいものだった。彼と一緒に他の政権にいた人たちを見ると、彼らは彼を弱くて無能な大統領だと見ていた。 もし私がそこにいたなら、彼ら(ハマス)は決してあの攻撃をしなかっただろう。」
彼はフロリダの自宅で、「彼らはイスラエルを憎んでいる」と自分を支持しないユダヤ人たちへの失望を表明した。
この要約の最後にあるトランプのことば:「彼らはイスラエルを憎んでいる」の彼らとは、ハマスのテロを誘発したネオコン民主党政権を支持するユダヤ人たち、つまりグローバリストの金融資本家等ユダヤ人のことである。つまり、ユダヤ人たちは明確に幾つかに分裂している。
一つはグローバリストであるユダヤ人。彼らは英国ロスチャイルド卿など英米の金融を握るユダヤの人々であり、イスラエルを創った人たちである。イスラエルに住むユダヤ人たちの大半はグローバリストではなく、イスラエルを故郷として生きる民族主義者である。
更に、もう一つはイスラエルにも米国にも居る超正統派ユダヤ人であり、彼らはシオニズムに反対する。イスラエルの復活は神のすることであり、人間が神に先んじて大イスラエルを実現しようとするのは間違いだと考えている。敢えて繰り返すが、グローバリスト金融資本家たちは神をも恐れぬ傲慢な人たちである。
4.終わりに
本ブログサイトでは、トランプが大統領の椅子にすわることが非常に困難であると言ってきた。米国市民がトランプ支持を強くすれば、内戦か暗殺か異常事態になるだろうと考えて来た。しかし、英米のユダヤ人と雖も一枚岩ではなく、特にイスラエルのユダヤ人とは全く意見が異なる。今回のハマス・イスラエル戦争で、グローバリストと民族主義者の間に対米国の姿勢において亀裂を発生したと思うに至ったので、上記意見を白紙撤回させていただきます。現状、私には米国次期大統領に関して、更に、今後9ヶ月の米国と世界の政治について、全く分からないというのが正直なところです。
以上、全くの素人の感じたことですので、判断は各自で行なってください。
補足
1)バイデンの一般教書演説全文の和訳は日経新聞が掲載している。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN085VV0Y4A300C2000000/
2)イスラエル・ハヨム (イスラエル・トゥデイ) は、イスラエルで最も広く配布されているヘブライ語日刊紙で、イスラエル全土で無料で配布されている。 ベンヤミン・ネタニヤフ首相の個人的な友人であり後援者であるシェルドン・アデルソンの家族が所有する。
3)Bappa Shotaさんがニューヨークの一角に住むユダヤ教超正統派のハシディックと呼ばれる人たちについてレポートしている。ユダヤ人右派の人たちの日常について非常に参考になるのでここに引用する。彼らはイスラエルのユダヤ教徒たちと同じ考えをもっているだろう。https://www.youtube.com/watch?v=29ZVLWWXP3o
4)イスラエルは英国ロスチャイルド卿が英国政府を動かし、米国も協力するかたちで作り上げた国である。この背後にあるシオニズムという考え方には、ユダヤ教正統派は賛成していない。何故なら、イスラエルは最後の裁きの時に神が作り上げる筈だからである。つまり、英米及び世界の金融界を牛耳っていると思われるユダヤ人たちは世俗的ユダヤ人である。
(2024/4/12 am6:15 軽微な編集の後、最終稿)
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