2014年10月1日水曜日

御岳噴火の予兆を観測しながら何もしなかった行政府と被害者家族の紳士的態度

 先ず、今回の御岳山噴火で被災し死亡された方々のご冥福をお祈り致します。また、ご家族の方々に、謹んで弔意を申し上げます。
以下に、前半は気象庁が注意喚起を怠ったことに対する私の怒りの気持ちを、後半は被害者家族の方々の紳士的姿勢と日本の行政能力との関係を書きます。

1) 御岳山の噴火で今日現在47人の死者が出た。御岳山は火山であり、2007年にも噴火している。その10程前にも水蒸気爆発で怪我人をだしている。2007年の噴火の前に、前兆として火山性地震が多数回あったことが知られている。そして、9月10日から2007年の噴火以来となる多数回の火山性地震が観測されていた。http://www.sankei.com/affairs/news/140927/afr1409270050-n1.html 以下は、そのことを記した記事の一部である。

『御嶽山では噴火の約2週間前に地震活動が活発化したが、気象庁は前兆現象と判断できず、予知できなかった。噴火の記録が乏しく観測網も手薄だったためで、経験則に基づく噴火予知の難しさを示した。  気象庁によると、御嶽山では9月10日ごろに山頂付近で火山性地震が増加し、一時は1日当たり80回を超えた。しかし、その後は減少に転じた。マグマ活動との関連が指摘される火山性微動は噴火の約10分前に観測されたが、衛星利用測位システム(GPS)や傾斜計のデータに異常はなく、マグマ上昇を示す山体膨張は観測されなかった。  噴火は地震と比べると予知しやすいとされるが、過去の噴火で観測されたデータに頼る部分が大きい。気象庁火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は「今回の噴火は予知の限界」と話す。』

 もし、10日以降にその事実だけでも登山口や山頂近くのロッジに掲示し、気象庁から関係者に通知していれば、この被害のある程度防げたのではないか。産経の記事から解る事は、気象庁は、噴火予知が出来なくても、注意は出せた筈である。御岳山は噴火警戒レベルが設定された全国30の火山の一つである(気象庁HP)。特に入山禁止(噴火警戒レベル3)にしなくても、火山性地震が2007年の噴火以来となる程、多数回観測されているという事実を登山口や山小屋などに掲示出来た筈である。レベル設定などどうでも良いのだ。大事なのは、自分の判断で入山を止める選択肢を、登山客に与えることなのだ。

 テレビで、気象庁火山噴火予知連絡会の幹部は、「完全に予知できる訳ではないので、発表できない」という上記記事と同じ趣旨の言い訳をしていた。それは全くレベルの低い言い訳である。誰も、完全な予知など期待していない。天気予報でも、台風情報でも、特別警報を含め完全にはほど遠くてもそれらを発表しているではないか。気象庁の責任を調査し、責任者を処分するべきである。

2)被害者の家族の冷静な対応を、テレビのインタビューなどで見て、何と言う礼儀正しい人たちだろうと感心した。そして、次に、この礼儀正しい冷静な態度を、同じ日本人として誇りに思っていて良いのだろうかと考えてしまった。隣国に大きな船の事故があったとき、原因が究明される前でも、家族の激しい政治に対する怒りがテレビに映されていた。
 つまり、多数の火山性地震を観測しながら、何の対応もしなかった気象庁の職員の対応に対して、声を震わせて怒るのが自然ではないのか。確かにレベル1−5の2と言うにはデータが十分でなかったという言い訳はあるだろう。しかし、レベル設定などどうでも良いのだ。要は、情報を公開して、あとは自己責任で登山するかどうかを決めてもらえばよいのである。

   香港で、返還時に約束された50年間の自由主義があやうくなっているとして、大規模なデモが行なわれている。一国二制度を守れるかどうかのターニングポイントであるとして、嘗て日本にあった安保反対のデモレベルの規模で怒りを表現している。

 ところで日本の現在の政治であるが、消費増税、配偶者控除の廃止、高額医療の負担増など、次々と国民負担を増加させる傾向にある。また、円安政策により、国内物価の上昇はこれから大きくなってくる筈である。新自由主義的政策、産業の空洞化、円安による実質給与の減少などと、極めて悪化した政府の財政体質が原因なのだが、人々が大きなデモをするどころか、目立った反応は何もない。
 この静かな国民性と、ある時点で制御出来ないレベルまで沸騰する国民性は、実は日本人の政治ストレス応答曲線の典型である。 社会を変えるのは人民の意志、つまり悪政に対する怒り、であるとすれば、政府の小さな失敗や悪政には小さく怒り、大きな失敗や悪政には大きく怒るべきである。その大衆の意志と国政を預かる為政者との間の“感情交換”というべきものが日本には欠けている。それが、優秀な政治家が育たない素地なのだろう。
 政治家にこの日本の体質を変えることは出来ない。有権者の怒りしかないのだ。カタストロフィックな出来事が無いと、この国は変われないのかもしれない。
 

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