2017年6月20日火曜日

政治の舞台を演出する極少数の人たち

1)岡田英弘の「歴史とはなにか」に、歴史は科学ではなく文学であると書かれている。その言葉は、“人類に生じた事実の時系列的整理とそれらの相互関係の解明”が、①どのような事実を取り上げるのか;②相互関係の解釈をどう記載するか、という二つのバリエーションに対応して、無数の歴史が存在しうることを示している。

学校教育では、時の権力(政府)が認めた事実とその物語を教えている。時の権力の意向に沿った歴史を「正史」といい、私的な解釈で作り上げた歴史を「外史」というが、ほとんどの人は一生、“正史の歴史観”から抜け出すことはないだろう。つまり、歴史教育は歴史に関する洗脳とも言える。

太古の人類に起こった出来事が対象の場合(つまり、考古学)、それらを見る視線の方向に、その時代(近現代)の民族や国家に起因する違いはない。しかし、現存の民族や国家がプレイヤーとなっている過去の出来事に関する物語(つまり歴史)は、それを語る国家や民族毎に、それらの名誉と利益を毀損しないように作り上げられる。

例えば、アジア最古の歴史書の史記は、武帝の正統性を語るという明確な目的の下に書かれた物語、つまり正史(の世界最古のもの)である。それに他民族の視点での“事実”が書かれている保証はない。それは日本書紀も同じであり、古代日本の真実がわかると考える方々の姿勢は滑稽である。

この正史の性質と役割は、近現代史でも同じだろう。つまり、現在我々日本人が知る世界の出来事は、日本及び同盟国(米国)の権力により選別と解釈を経たものであり、将来「正史」に組み込まれる“出来事”のみだろう。それらをそのまま信じていては、世界の動きの真相は見えない。(補足1)

以下に近代の歴史的出来事について、正史からのバリエーションの例をあげる。日本の正史において、高く評価されている吉田茂元総理の話、そして、もっと広く近現代史全体の流れについてである。

2)吉田茂は、占領軍に対しても卑屈でない国士であったという「正史」ができ上がっているように思える。しかし最近読んだ、鬼塚英昭著の「白洲次郎の嘘」には全く違うことが書いてある。吉田茂が部下として重用していた白洲次郎は、外国人(ジャーディン・マセソン商会;補足2)の操り人形であったと書かれている。また、吉田茂の父(吉田健三)は、そのユダヤ系の会社の番頭であったという。彼らは、GHQの政策に協力する一方、GHQを利用して自分たちと上記外資の利権確保のために働いたと書かれている。

GHQは占領政策として、日本の無力化を徹底して行うために、優秀な政治家や官僚を公職から追放(パージ)した。吉田と白洲は、それに乗じて自分たちの権力保持のために、鳩山一郎等有力政治家のパージに協力的に振る舞ったと書かれている。GHQのパージの理由は、将来の日本のことを考える政治家が日本政府の中にいると、占領政策が円滑に進まないことである。吉田茂は新憲法制定時の総理大臣(第一次吉田内閣)であったが、憲法条文などにほとんど注文など付けなかった。つまり、GHQの思惑通り、ことが運んだのである。

吉田茂は、戦後日本の再生に最も大事なサンフランシスコ講和条約(1951/9/8署名)の前後6年間(1948/10〜1954/12二次〜五次吉田内閣)にも総理大臣であったが、日本の骨格作りに尽力しなかった。これらの指摘は、著者の偏見でも筆者の思い込みでもない。例えば、当時官僚として働いていた中曽根康弘元総理の自伝「自省録」に、上記内容と整合性のある吉田評:「吉田茂は狡猾で、鳩山一郎などの公職への復帰を嫌がっていた」が書かれている。(補足3)

3)日露戦争において日本が勝ち、ロシアではその戦争への疲弊もあって共産革命が起こった。更に、第二次大戦後、中国では毛沢東が蒋介石を追い出し、共産中国ができた。そして、共産圏と自由主義圏との冷戦の時代が数十年続いた。これらの世界史の流れは、正史では“個別の主体性を持った国家とその勢力が衝突して、未知の領域に進んだ結果”という歴史観で書かれている。しかし、実は複数の歴史のプレイヤー(国家など)を操る別の存在があった、つまり一定の部分については計画があったという解釈が存在する。

日露戦争の資金調達に米国に向かった高橋是清の努力の結果、日本は米国ユダヤ系資本家のヤコブ・シフから多額の軍資金を借りることに成功し、米国大統領の仲介もあって、やっとのことでロシアに勝利することができた。その融資の理由も、帝政ロシアを潰す意思を持った勢力が金を貸した側にあり、その思惑通り日本が動いたというのである。その後のロシア革命も、同じく裏の権力者の計画どおりだったというのである。

鬼塚英昭著「20世紀のファウスト」は第1章で、米国ユダヤ資本のソ連革命への資金的援助が書かれている。また、マルクス他、レーニンやスターリンなど主なロシアの革命家も全てユダヤ人だったと書かれている(83頁)。中国の共産革命も、それまであった蒋介石への強力な援助がなくなったのが理由であり、それも歴史の表面でのプレイヤー(毛沢東と蒋介石が代表する両勢力)とは別の勢力の計画があったというのである。もちろん、何もかも予定通りに進むわけはないが。

4)正史の裏で歴史を動かすのは、お金と人のネットワークである。資金は何よりも大きな力の源泉であることを疑う人はいないだろう。(補足4)しかし、日本のメディアに出る代表的評論家たちは、秘密組織やユダヤの人脈などを持ち出して歴史を解釈するのは陰謀論であり、陰謀論に嵌るのは知的頽廃であると語る人が主流である。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/42023202.html

しかし、例えばイエール大学という米国の名門大学の秀才のみ(毎年15名と言われる)に限られた、スカル&ボーンズ(秘密結社)の意味が分からなければ、近現代史の詳細な解釈は出来ないだろう。世界に多く存在する秘密結社や秘密の人脈に対して目を閉じる態度こそ、知的頽廃ではないのか。

スカル&ボーンズの入会儀式は、その“墓(The tomb)”とよばれる部屋の中で行われる不可解なもの、死と蘇生の儀式である。そのメンバーの顔ぶれの大きさは、背後の力としてその役割が想像される。例えばジョージ・ブッシュ(父子とも)元大統領、CIAの母と呼ばれるジェームズ・アングルトン、前国務長官のJohn Kerry、TimeやFortuneといった雑誌の創刊者、巨大資本Morgan Stanleyや最大の物流会社FEDex などの設立者、などなどである。その存在はよく知られているが、その会員たち(Bones)からは何も聞けない組織なのである。

2004年の大統領選では民主党からの候補JohnKerryもSkull & Bonesの同窓会メンバーだった。GeorgeW. Bushは自伝のなかで、大学4年の時に会員になったが、それ以上は言えないと書いている。有力大統領候補の二人ともBonesmenだったことの意味を問われて、ケリー氏は「Not much,because it’s a secret」(多くは喋れない。それは秘密だから)と答えた。

以上、スカル&ボーンズに限って少し紹介したが、世界には数多くの政治的私的組織がある。英米をまたぐエリザベス女王をパトロンとするピルグリムソサエティーもその一つである。それらと、正式な国家組織であるNSA、CIA、FBIなどと密接な関係がある可能性もある。それらを無視した正史とは、民主社会で主権者のワッペンを貼った凡庸なる大多数の市民を誤魔化すための装置であり、その装置を動かすのはテレビなどによく出る例えば元官僚の評論家たちである。

補足:
(1)イスラム教圏とキリスト教圏の争い、例えばアラブの春とかイスラム国の報道は、キリスト教圏特に英米の視点での報道に我々は接している。そして以下の紹介記事にあるような何か変だなということがあっても、大手の報道には現れない。 https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/42995339.html
https://blogs.yahoo.co.jp/mohkorigori/56807658.html
(2)中国広州に設立された英国の会社。アヘン戦争に深く関わっている。アヘン貿易で財を築き、現在も国際コングリマットとして存在している。
(3)中曽根氏の自省録49〜50頁にはこのように書かれている。「(吉田茂は)狡猾な人で、様々な局面でマッカーサーの虎の威を借りていることがあからさまでした。」「我々青年将校だけではとても国は支えられないから、急いで追放解除を実現してもっと老練な政治家を復帰させて日本を再建しようと、追放解除運動をやったことがあります。しかし、吉田さんは追放解除をかなり嫌がっていました。」「重光さんや鳩山さんが自主防衛とそのための憲法改正を主張すると、それに対抗するために当時の左翼的雰囲気に迎合して安易な方向に行った。吉田さんの本質はオポチュニストでした。」
(4)明治維新も類似の資金が流れてこなければ、失敗しただろう。長州に最新式のスナイドル銃やスペンサー銃を買う金など元々なかったのだから。同様に、最近の北朝鮮のミサイルのお金がどこから流れているかが、その背後に隠れている勢力を明らかにする鍵である。
(5)https://en.wikipedia.org/wiki/Skull_and_Bones

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