2018年10月18日木曜日

そろそろ資本主義経済は行き詰まりなのか?

1)先進国の大企業は、発展途上国に工場を移転して、安価に物を作って売りさばくことで、世界シェアの拡大を考える。しかし、元の国では雇用の喪失と安価な品物の輸入によりデフレが進行する。その発展途上国は、先進国の資本を受け入れ、その技術やノーハウを吸収し、自前の製造業も起こして、経済発展する。

その途上国も元の先進国も市場となるので、先進国の大企業は市場を大きくし、且つ、自身を巨大化して世界市場で有利に戦うことが出来る。その結果、国際的資本家は利益を拡大出来るのである。この様な資本進出を途上国の新しい植民地支配と見る人もいる。(補足1)

以上が経済のグローバル化とその結果に対する私の理解である。この経済システムを企業資本家から取り上げようと戦っているのが、トランプ大統領である。一方、そのやり方は、これまで作られてきた世界経済の慣習を破壊するので、これまで通り自由貿易を守ろうと主張して世界を飛び回っているのが、日本の安倍総理である。日本では日米首脳は仲が良いと報道されているが、実際のところはさっぱりわからない。「仲がよい」というふざけた表現は、日本の報道のレベルを表している。兎に角残念ながら、明らかにトランプ大統領の方が、先をみて行動しているだろう。

自由貿易といえどもルールがあり、それを守ることが前提である。社会を作って生きる人間の自由は、ルールを守る自己規制があっての話である。世界をルールが支配する体制にするには、世界に通じる権威とそれを支える権力が必要である。米国が抜けた世界に、そのようなものは望むべくもない。

安倍総理は何を考えているのだろうか。最も権力のない国のトップが、掛け声だけでルールの支配する世界が出来るとでも思っているのだろうか。

2)NHKスペシャル:資本主義の未来(10月14日午後9:00放送)

10月14日夜のNHKの午後9時からのNHKスペシャルで、世界の債務残高が増加して、資本主義経済が破滅の道に入っているという趣旨の話があった。その根拠として番組の最初に出された情報が、世界の債務残高は164兆ドル(1京8000兆円)と巨大化しており、世界のGDPの2倍以上にも達しているという話である。(補足2)

NHKの番組でも紹介されたように、資本主義の基本パターンは、借金をしてそれを投資に回して新規産業を創出するなど、経済成長をするという図である。従って、債務残高があるということは問題ではない。因みに、債務残高は貸借対照表の右側にある値のうち、純資産を差し引いた値と考えられるが、それは通常貸借対照表の左側に書かれている資産に変化している。問題があるとすれば、その資産が不良資産の場合、あるいは別の表現で、純資産がゼロまたはマイナスの場合である。 

日本のサラリーマンの財布を例に説明すれば、銀行にローン(債務)があってもそれに相当する住宅(資産)がしっかりと資産価値を持っていれば、その借金は別に問題にはならない。債務残高が増加したと言って騒ぐのは、債務の中身の分析がなければ、ほとんど空騒ぎにすぎない。そのような解説は、上記債務の急上昇に関してほとんどなかった。NHKの制作部門は解っているのだろうか?(補足3)

兎に角、この急激な債務の増加の一つの原因は、経済のグローバル化により、発展途上国におけるインフラ投資や先進国企業の安い労働力を目的とした工場移転などの資本投下である。そしてもう一つは、その結果先進国経済に空洞化が起こり、各国が景気回復の為に金融緩和策をとったことである。この10年間の急激な債務増加は、後者がメインだろう。

もしもその資本投下が、発展途上国政府の杜撰な計画に基づくインフラ投資なら、更に、その投資が途中で不正に抜き取られるようなことがあるとしたら、その国の経済は発展しない。その場合の投資は、不良債権化するだろう。また、途上国への企業進出を埋めるだけの新規産業が先進国に起こらないで、且つ、その企業が従来の先進国の需要に頼るのなら、先進諸国がデフレ不況になるのは当然である。 

その「もしも」が現実化した結果、先進諸国はデフレになり、その克服のために、大幅な金融緩和が行われたのだ。しかし、金融緩和したから新規産業がおこるという様な簡単な話ではない。その金は、新規投資ではなく不動産や株式などへの投資に向かう可能性が高い。それら不動産や株式の価値が上がったとき、その上昇理由が主として貨幣価値の低下であると気づいた時、バブル崩壊となり金融危機の再来となると思う。 

この恐ろしいシナリオは、貿易戦争や中東などでの実際の戦争を切っ掛けに起こり得ると思う。急激な物価上昇が起こり、国債や債券の値下がりから、金融機関の債務超過という連鎖反応がおこるだろう。日本銀行は主なる資産として日本国債をもっているので、我が国でも金融危機につながる可能性がある。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/12/blog-post_9.html(2017/12/9)

3)資本主義の行き詰まりなのか? 

NHKの番組では、資本主義の未来という副題がついていたが、その副題についての話はあまりなかった。つまり、従来型のグローバル化した資本主義が成立しないというネガティブな話に終始した。

先進国は、その住民たちに十分な生活を保障できるほどの供給力を付けている。それなら、無理に資源枯渇までの時間を短縮するように、途上国へ資本主義経済システムを輸出するのは、愚かなことである。そのシナリオでは、先進国住民には今後大きな損害しか無い。先進国は、途上国に資本介入するのではなく、途上国独自の歴史的発展過程を見守るだけで良い筈である。

つまり、それがトランプ大統領の考えだろうし、それを支持する馬渕睦夫氏らの主張ではないだろうか。発展途上国を植民地化しているのは、先進国の一部の資本家であり、先進国の住民ではない。そして、深刻な貧富の差が生じて、国内が二つの層に分断されている。(補足1参照)彼ら資本家から、先進国住民は政治的実権を取り戻すべきときなのだ。トランプが大統領に当選したのは、その国内の分断線の下側に大多数の国民がいることに米国民は気付いたことが理由である。

政治的実権を大多数の国民側に取り戻すことが、番組表題にある資本主義の未来の意味の筈である。NHKは、それが資本主義者の日本政府自民党政権が恐ろしくて言えなかったのだろう。国民から視聴料をもらって経営しているのだから、それをはっきりいう義務があるのではないのか。NHKは国民から視聴料を取らずに、その経営費用を政府予算として認めてもらうべきだ。 

(19日午前6:30編集)

補足:

1)昔の植民地化の時代では、先進国の住民は兵士として対象国に出て命をかけて戦った。今回の植民地化では、先進国住民はデフレ不況で貧困化する。一方の資本家は、自分をトップとして、それに協力する芸能人やスポーツ選手、更に投資家を新しい貴族階級とする。何れにしても悲惨なのは、下層の住民である。先進国政府は住民の本来の意図に沿って活動していないが、その国家を民主的に維持しなければならない。それに協力しているのが、上記芸能人やスポーツ選手、それにテレビなどのメディアである。国際資本家は頭が良いのである。(西部邁さんが好きだったオルテガや、ニーチェは、大衆は馬鹿だといえる正直者だった。)

2)ここで言う債務残高は、世界中の国家(つまり政府)の債務残高の合計ではない。世界中の国家など公共団体、民間団体(企業等)、個人などの債務の合計である。一般の人は、164兆ドルつまり1京8000兆円の債務のうち、日本の債務として1200兆円だけ入っていると思ったのではないだろうか。

この急激に債務が膨張している問題の指摘は、経済ジャーナル“ダイヤモンドオンライン”でもこの問題が7月19付け記事で指摘されている。そこでは、2017年末のデータとして債務残高が174兆ドルとなっている。NHKのデータが何年末のものかわからないが、何れにしても恐ろしい数字ではある。

その記事の出だしを再録する。 「グローバル債務残高」が膨張を見せている。これは先進国と新興国の政府部門、企業部門、家計部門の借金を国際決済銀行(BIS)が集計したものだ。世界金融危機前の2007年末は110兆ドルだったが、17年末はそこから58%も増えて174兆ドルに達した。https://diamond.jp/articles/-/175050

3)債務残高が非常に多くなっていることが、本当に深刻かどうかは数字ではわからない。例えば、日本を代表する優良企業であるソフトバンクの債務残高(純資産額を除いた負債)は、売り上げの2.7倍であることを考えれば分かる。http://www.ullet.com/9984.html

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