2020年7月6日月曜日

民主政治と東京都知事選:民主政治の要諦は投票に行くことではない

昨日の東京都知事選では、現職の小池百合子氏が当選した。その得票数は前回選挙を上回る300万票をこえたという。55%という地方自治体の選挙では非常に高い投票率だった。この結果は、民主主義の本質的欠陥を指摘する際の良い例の一つだと思う。(補足1)その他、既に国政での“新進党騒動”などを、我々は見ている。何れも、中心にいた人物は有能者とは言い難い。それに気づかないのは、有権者がまともに考えていないからである。

 

小池百合子氏の政治家としての無能は、新型コロナ肺炎への対応との関連で、今年5月28日に指摘している。(https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2020/05/blog-post_28.html)今回選挙で、有権者が切実な問題として勉強していれば、別の人が選ばれただろう。しかし結果は、西部邁(故人)が批判した大衆政治そのものとなった。

 

ただ、世界はインターネットの時代となった。政治に関しても何でも、我々は多少の勉強は出来る。ここで言いたいのは「投票に行こう」ではなく、「近現代史と政治を勉強し、議論しよう」ということである。それが政治を変える鍵だと思うからである。

 

1)小池氏の政界での無駄な大暴れ

 

5月28日の記事で書かなかったのだが、小池氏は都知事の第一期の最初から豊洲問題で、無駄に移転を1年以上先に延ばし、大きな損害を東京都に与えた。その大きなミスについては、ウィキペディアに詳しく書かれている。(https://ja.wikipedia.org/wiki/築地市場移転問題)これも、小池氏のカッコ良く振る舞うことにこだわる無責任から来ている。

 

小池都知事は東京都知事になる前は、衆議院議員だった。そこから、自民党の引き止めを振り切って東京都知事選に無所属で立候補し、カッコよく当選した。この勝利は、自民党という無能な政治家の集団しか、保守勢力を持たない日本人の気持ちを掴んだからだろう。それは、総理の椅子を得たあの小泉純一郎人気と同じ種類のものだった。

 

当選した直後、豊洲市場の地下の僅かな土壌汚染を事件化して、国民の耳目を集める一方、、都民ファーストの会を結成し、都知事選で自分を公認しなかった政府与党の自民党に対し報復した。そのカッコよさに惚れ惚れした国民を扇動し、政治団体「日本ファーストの会」を結成した。この辺りは、政治屋小沢一郎と非常によく似て、焚き火に風を送って大火事にするような技を持つ人である。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E3%81%AE%E5%85%9A

 

その後、衆議院の解散が発表されたので、総選挙のために「日本ファーストの会」を国政政党「希望の党」に進化させたのが、2017年9月25日であった。このあたりの小池都知事が引き起こした政界の嵐は、一度見た小沢劇場の安物時代劇のように感じた。そこで、結党の日に小池百合子氏の政治姿勢を批判した。

https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/09/blog-post_98.html

 

自分は表に出ないで、裏で実権を握る小沢氏のように、10月22日の総選挙には出なかった。両者に共通するのは、自分の政治家としての無能を自覚していることである。民進党からの合流は受けるが、一部排除するという「絞り込み」の発言で、民進党を解体するなどのゴタゴタは、記憶に新しい。

 

これだけの負の成果をあげた第一期だが、最初に引用した5月28日の小池批判の記事に書いたように、今回の新型コロナ肺炎対策でもミスを繰り返している。その原因は、小池氏は現象を見る観察力が著しく低いことである。その低い観察力や事態の変遷に対する感覚の鈍さを誤魔化すのに、カタカナ語を多用しているのである。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2020/03/blog-post_24.html

 

 

このカタカナ語の多用は、日本の政治全体で見られる現象である。直前に引用した私のブログにも書いたが、他者のものとして河北新報の記事も引用しておく。そこで取り上げられているのは、パンデミック(世界的大流行)クラスター(感染者集団)ロックダウン(都市封鎖)オーバーシュートなどである。オーバーシュートは誤用であることも書かれている。

https://this.kiji.is/618970549935735905

 

2)民主主義の過ち

 

今回、小池氏に高得票を与えた東京都知事選の結果を見て、民主国家の根本的欠陥を再度より印象強く見た思いである。そして、今年11月の米国大統領選挙も同様だろうと思うと、背筋が凍る思いである。

 

心配するのは中国による日本の属国化である。頼みの綱の米国が経済でゆらぎ、中国に世界制覇を許すことになる可能性があるからである。中国は、相当な覚悟で香港の自由を奪い取った。その覚悟とは、昨日書いた「計画経済に戻る覚悟」である。一方の日本を始め、欧米民主主義圏は、一時とは言え、小沢や小池を選ぶ愚鈍な大衆の支配する国々である。(補足2)(追補1)

 

ある有名な女優が、今回の都知事選でも「投票に行こう」とtwitterで呼びかけた:

投票に行っても変わらない?変わります!昔は女性に選挙権なかったけど、今はある。社会は変わるんです」。

 

しかし、政治は投票では変わらない。民主主義が成功するもっとも大事なポイントは、皆が投票に行くことではない。皆に投票を呼びかけるのは、政治を変えるためではなく、政治を変えないためである。それは例えば、ある偏った思想をもった投票率100%の団体がある場合、投票率が低いと政治は激変する。投票率を上げることは、彼らの誘導による政治の激変を防止するためである。

 

民主主義が成功するには、有権者が歴史特に近現代史を勉強し、互いに議論して自分の意見を作り挙げることが必須条件である。大衆にそれが期待出来ないとしたら、民主政治の国は必ず破綻する。それが中国共産党の考え方である。中国文化に、他人を思いやる心が加われば、中国の共産党政権は世界最強の政治制度に変わる。

 

つまり、エリートが政治の実権を握るのが、強力で精巧な政権樹立の上での近道である。米国の政治がそれに幾分近いのは、少数派エリート(ブレジンスキーやキッシンジャーという人たちやあのスカル&ボーンズの人たちなど)が、民主政治の化粧と服装をして、米国の政治を支えたからである。選挙は儀式にすぎない。

 

日本にはエリートを選抜する制度がない。それは議論がない社会だからである。本来エリートであるべき国会議員が、日本では田舎の票田を運営する家業となっている。(補足3)

(9:00、11:00 編集)

 

追補1(16:30):

 

時々紹介している中国人youtuberのMOTOYAMAさんも、その中国の覚悟或いは方針を伝えている。それは元ウクライナ大使で退職した中国の元中央政府官僚による文章で、自分からの発言なのか中央からの指示なのか分からないという前置きで紹介している。要するに、将来米国との関係が悪くなったときの準備をしようという内容である。その主なものは、サプライチェーンと産業の移設である。つまり、自給自足体制への準備だと紹介されている。

 

ただ、それでは中国の経済は1980年代へ戻るとMOTOYAMAさんは指摘する。このMOTOYAMAさんの分析が正しい。中国も日本同様輸出立国なのだ。日本の経済をささえるのは、輸出でなく内需だという誤った把握をする人が多い。日本の中国も輸出により(正確には資本収支も算入する)、自国通貨の価値を保っている。輸出がなければ、自国の通貨安になり、必需品で国内にないものは買えないだろう。その理由は、6月25日と昨日の記事の中に書いた。https://www.youtube.com/watch?v=07D6LT4vZ0c&t=1261s

 

中国の高官(副部長は高官である)が、日本の経済を語る一部のひとのように、「国内の需要は世界第二であり十分大きい。自給自足(或いは計画経済)で、やっていける」と思うのはとんでも無い間違いである。中国の場合は1980年代、日本の場合は1960年代に戻るだろう。

 

追補2(7/7/17:30):この中国の高官の記事は、党の対外連絡部副部長の周力氏という方が環球時報に7月3日発表したものでした。石平氏が7月5日、youtubeで紹介しています。https://www.youtube.com/watch?v=FzP8FX_zAFA

 

補足:

 

1)最も良い例として、頻繁にヒトラーの選出があげられる。しかし、第一次大戦の過大な賠償を背負わされ、不況の中で苦しんだドイツの情況とは、現在の東京は全く違う。それに、ヒトラーはフォルクスワーゲンを創業するなどで、その不況を乗り越える上でおいて大きな成果を出した。つまり、選挙でヒトラーを選んだのは、ドイツ人が無能な人間を選んだのではなく、有能だが危険な人物だったことが見抜けなかったということである。それは、民主主義の欠陥の結果ではなく、人間の知性と感覚が万全ではないことの不幸な結果である。

 

2)そもそも、小沢一郎や小池百合子が前面に出ないで、影で政治を操ろうと考えるのは、鄧小平のモノマネである。否、書記長という「同志」が国家の実権を握るという共産主義国の実態を真似たものである。嘘は付きたい放題、国民に対する責任など皆無の利己主義者たちである。彼らのやり方に強力な権力を追加したのが、共産党独裁の政治である。

 

3)総理大臣、副総理、環境大臣だけではない。自民党には家業を継いだ政治家が多い。中川秀直氏を最近見なくなったと思って調べたら、しっかりと次男の方が家業を継いでいた。経産大臣の方も、自民党大物梶山静六のご子息である。これらの方々の殆どは、有名だが三流大学のご出身である。一流大が良いわけではない。官僚という安定職の最高峰は、他人の指示に従うことが仕事である。それを人生として選択したひとたちを、政治家にする道を大きく開いた吉田学校(吉田茂)が、日本の政治を破壊した戦車であった。

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