2022年7月30日土曜日

安倍元首相暗殺から始まった統一教会騒動:日本だけでなく世界の政治も大きく動かす可能性

安倍元首相の暗殺事件後、統一教会と国会議員との間の癒着が、この件関連の話の中心になっている。国際的にも大きな問題になる可能性を感じたので、それについて素人ながら記事をアップします。尚、旧統一教会と書くべきかもしれませんが、多くの箇所で旧を省いています。


 

1)旧統一教会と日本政界の深い関係

 

統一教会の正式名称は、世界平和統一家庭連合である。日本での名称変更については、当時の下村博文文部大臣の深い関与が疑われている。(補足1)ウィキペディアによれば、統一教会(世界基督教統一神霊協会)はキリスト教を母体にした新興宗教であり、朝鮮戦争勃発後の1954年に設立された。
 

別組織或いはダミー団体として国際勝共連合が設立されているが、統一教会はKCIA(韓国中央情報局)により設立されたと上記解説にあるので、何方がダミーなのかは、私には分からない。

 

1958年から日本で布教をはじめ、反共親米を掲げていた岸信介政権との深い関係は周知である。岸信介氏が戦犯として死刑にならなかったのは、占領軍が政治的に利用するためなので、この件でも背後に米国が存在する可能性もかなりあるだろう。

 

日本統一教会の初代会長は、反共産主義政治団体の国際勝共連合の日本における初代会長久保木修己である。以下もウィキペディアの記述なのだが、安倍晋三元総理大臣が説いていた国家像である「美しい国」は、久保木修己が説いた「美しい国」が元祖であるという。安倍元首相と統一教会の関係は、単に“関係がある”レベルのものではない。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%B9%B3%E5%92%8C%E7%B5%B1%E4%B8%80%E5%AE%B6%E5%BA%AD%E9%80%A3%E5%90%88

 

もし、この件が日本の戦後政治の総決算のような形に発展すれば、日本が大きく変わる可能性がある。今回の事件は、その様に思う程の大きな事件であるだけでなく、米国にまで広がる可能性の大きい現代進行形の事件(次のセクションで少し書く)である。

 

統一教会が日本の戦後政治に深く、且つ広く根を下ろした存在だったことの情況証拠的なことを以下に新しい方から少し列挙する。
 

トランプ氏が大統領選挙に勝った201611月、未だ大統領に就任していない段階で、安倍首相(当時)が米国を訪問してトランプと面会した。この会談のアレンジに、統一教会の人脈が貢献したという。(補足2)https://lite-ra.com/2017/01/post-2871.html

 

上記引用の記事と同様の話を、722日アップの文章内で紹介した動画内で、元公安調査庁部長の菅沼光弘氏が語っている。更に、菅沼氏によると安倍元首相の父親の安倍晋太郎氏が外相になって最初に訪米した時(1983?)、米国議会要人との会談の調整にも統一教会が貢献したというのである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=_GS7MQUURp0 (削除の可能性あり)
 

その中で、外務省とその出先である駐米日本大使館の不甲斐ない現状もあばかれている。大使館員らは何のコネも米国の議員らに対して持っていないのだろう。高給をもらって一体何のために米国にいるのか?(なお、駐米大使は外務次官よりも上のポストであると言われている)

 

更に遡って1974年(57日)、帝国ホテルに1700名を集めて開催された文鮮明氏主催の「希望の日晩餐会」では、岸信介元首相が名誉実行委員長を務め、40人もの自民党国会議員が出席したという。

 

そこで挨拶をした福田赳夫元首相(当時蔵相)は、「アジアに偉大なる指導者現る。その名は文鮮明である。」などと挨拶したと記事に書かれている。https://news.yahoo.co.jp/articles/791a8bad3508196edcc349c308fd15a5ce3b7bd1

 

自民党政治家と統一教会の三代にわたる深い付き合いは、簡単には終わらない。それは岸信夫元防衛大臣の言葉でも分かる。今後も統一教会の支援を受けるかについて聞かれた岸氏は、「軽々に答えることはできない」と言ったのである。「今後一切お断りする」ではなかったのだ。https://news.yahoo.co.jp/articles/51d0f671738b44ce295ec70650fa09b09c88fb16

 

更に上記福田赳夫元首相からの三代も同じようなものである。その証拠に、福田赳夫氏の孫にあたる福田達夫総務会長は、「自民党が組織的に教団側から強い影響を受けて、政治を動かしているのであれば問題かもしれないが、僕の今の理解の範疇だとそういうことが一切ない」などと話し、「正直、何が問題かよく分からない」と惚けたのである。https://news.yahoo.co.jp/articles/a381b755045954fe7d59dbf1698273f68a49020e


 

2)統一教会問題が国際政治においてグローバリスト側の武器となる可能性

 

統一教会は、国際勝共連合などを通して、日本だけでなく世界を舞台に政治活動を行っている。米国の政界、特に共和党に深く入りこんでおり、今回の事件を切っ掛けに世界的なスキャンダルに発展する可能性がある。

 

例えば昨年9月に関連団体のUniversal Peace FederationUPF)が昨年911日に開催した「Rally for Hope」と今年2月開催の「Summit for Peace of Korean Peninsula」の二つの集会に、安倍元首相やトランプ元大統領の他、ペンス元副大統領、チェイニー元副大統領など、共和党重鎮が参加していたというのである。https://president.jp/articles/-/59761

 

米国では多くの主流メディアが統一教会関連のスキャンダルを報じているが、今はやや抑制的であり、政争にまでになっていない様に見える。(補足3)現在は、202016日の議会襲撃事件の公聴会があり、それでトランプを攻撃しているからだろう。

 

今年11月の米国の中間選挙では、民主党グローバリスト政権の生き残りを懸けて共和党と戦うことになっている。その劣勢は最近までは決定的であった。しかし、安倍元首相の暗殺事件を切っ掛けにした統一教会スキャンダルは、9月以降(安倍氏国葬以降)トランプ及び共和党攻撃の武器として大きく利用され、まさかの大逆転になるかもしれない。

 

そうなれば、主権国家体制を維持したい側に希望は無くなり、所謂グレートリセットが本格的に進行するだろう。そして、台湾問題がウクライナ問題のようになり、日本、台湾、韓国などが中米両覇権国の緩衝地帯としての悲劇を経験する可能性がかなり大きくなるだろう。(補足4)

 

統一教会は、国際勝共連合という反マルクス主義運動の拠点として、既に述べてように、米国共和党に深く関係している。また統一教会は、右派系のメディアとして有名な米国ワシントンタイムズ紙の所有者であり、上記のように世界政治の舞台の背景として大きな存在である。
 

推測だが、9月に安倍元首相の国葬を行うのは、日本のグローバリストである岸田政権だけでなく、米国の駐日エマニュエル大使など米国民主党政権の指示(そして支持)があったのではないだろうか。(補足5)

 

「多くの外国要人の弔問の場をつくってもらう意義は非常に大きい」などと高市早苗氏(自民党政調会長)が言っている。しかし、その国葬の場が、高市氏が応援している反グローバリストにとってどのような外交の場となるか、彼女はよくわかっていないのではないのか? https://www.jiji.com/jc/article?k=2022072200967&g=pol

 

このように考えると、安倍氏暗殺事件の不思議が改めて気になる。何故、あのような雑な警備になったのか?何故、あのような安倍氏を篭の鳥状態に置く場所で演説させたのか? 弾丸の入射口の方向が、山上の居た場所の方向とは逆だった?(補足6)全てを含めて、山上はJFケネディ暗殺の際のオズワルドの役割だったのではないのか?という陰謀論に導かれそうになる。

 

補足:

 

1)名称変更の相談が、旧統一教会から文化庁宗務(しゅうむ)課に持ち込まれたのは、1997年ごろのことだった。当時、宗務課長だった元文科事務次官の前川喜平氏は「『教会の実態が変わっていないのだから、申請は認められない』と言って、受理をせずに水際で止めた」と証言する。その後、2015年になって申請を受理したことと、当時の下村博文・文部科学相に異例の事前報告をしていた事との関係が疑われている。https://mainichi.jp/articles/20220729/k00/00m/040/230000c

 

2)大統領就任前にトランプを訪問したことが安倍氏の評判を高めた出来事だった。これをアレンジしたのは誰かについて、上に引用のLITERAが書いている、元TBS政治部記者の山口敬之氏は「週刊文春」(文藝春秋)2016121日号で、佐々江賢一郎駐米大使と、河井克行総理補佐官の名前をあげ、彼らがトランプ人脈に接触したと断定的に書いていたが、それは真っ赤な嘘だというのである。兎に角国際勝共連合と仲の良い側近からトランプの長女の婿のクシュナー氏経由で話が行ったようだ。

 

3)今はウクライナ問題と台湾問題で大変な時期である。特に台湾に下院議長が訪問する話は、米中衝突から日本を含めて第三次大戦になる可能性すら存在する。本ブログでは、この台湾問題については前回書いた。

4)韓国は、朝鮮戦争の悲劇だけでなく、李氏朝鮮の統治、日清戦争、日韓併合など、緩衝地帯の悲劇の中に終始あった。このことを対韓国外交の中で、日本政府はもっと考えるべきである。

 

5)岸田政権は米国民主党グローバリストの支配下で動いているように思われる。岸田政権の看板政策の新しい資本主義の訳のわからないところなど、クラウス・シュワブのステークホルダーの資本主義にそっくりである。

 

6)搬送先の病院が会見したところでは、一つの弾丸が前から入射したと発言している。以下の記事の最後の方に書かれている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8139a0574df43fc11353d5978fc37b309b77c6ea

 

(9:00 編集と改題;10時10分、補足5追加;15:50、3か所編集、補足6追加;7/31/5:00、編集2か所)

 

2022年7月27日水曜日

米中戦争に日本も積極的に参加するのか?

1)米国の対台湾姿勢における揺らぎ:

 

米国は従来から台湾は中国の一部であるとの姿勢をとってきた。これは、ニクソン大統領の時代に始まる米中国交回復の時から維持されてきた。つまり、米国の台湾問題に対する姿勢は明確である。それは現状維持と将来における平和的解決である。
 

以下に米国の台湾に対する姿勢を示した米国国務省のHPの文章を抜粋する。尚、最初の文章の “from either side”は、“米国からも中国共産党政府から”の意味である。

 We oppose any unilateral changes to the status quo from either side; we do not support Taiwan independence; and we expect cross-Strait differences to be resolved by peaceful means. https://www.state.gov/u-s-relations-with-taiwan/
 

一方、数日前、米国下院のペロシ議長が台湾を訪問するとの考えを公開した。中国国防省の報道官は26日の記者会見で「米国側が独断で強行すれば、中国軍は決して座視せず、必ず強力な措置を講じる。国家主権と領土を断固として守る」と明言し、中止を迫った。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25CQX0V20C22A7000000/
 

今回、ペロシ議長が北京の考えを無視して台湾訪問の予定を公表したことは、上記国務省の公式表明からは若干逸脱しており、中国側をイラつかせる原因になり得る。ナンシー・ペロシ氏は米国の下院議長であり、上院議長(=副大統領)に次ぐ大統領承認権を持っている米国政府に関係する重鎮だからである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=_aFfw0JU28Y 

 

それに対して、マイク・ポンペオ前国務長官の台湾訪問の時(今年3月)には、このような強烈な警告はなかった。そして、今回もポンペオ氏は、「何なら、私も同行しますよ」とペロシ議長に向けてメッセージを発信した。(補足1) 

 

実は、ペロシ議長は、今年4月に台湾を訪問すると言っていたのだが、新型コロナに感染して延期になっていた。そして、今年8月に台湾訪問すると再度公表したのである。

 

中国は、今年秋に5年に1度の共産党大会を控えている。更に、毎年8月には北戴河会議が開かれるだろう。中国が神経質になるこの時期に、本当にペロシ議長は台湾を訪問するのだろうか?

 

上記日本経済新聞の記事によると、バイデン米大統領は20日、記者団にペロシ氏の訪台について「米軍はいい考えだと思っていない」と表明したようだ。ただこれは、米政府が公の場で計画を認めたことになり、非常に問題が微妙になった。

 

そこで、共和党のギングリッジ元下院議長は透かさずツイッターで「中国共産党の脅しで米国の下院議長さえ守れなければ、中国はどうして米国が台湾を守ると信じるのか」と指摘した。この発言は、民主党とバイデン政権を攻撃する有効な一撃になっただろう。

 

尚、今年5月ネット上に公開された、広東省軍の上層部による戦前動員に関する秘密会議の録音は、昨今の緊迫した情勢を伝えている。(大紀元ニュースのyoutube報道を本ブログ520日に引用)
 

 

2)「台湾有事は日本有事」という安倍元首相の発言について

 

安倍元総理が昨年12月に台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンライン参加し、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と語った。この言葉は自民党政府だけでなく、広く日本で受け入れられているようだ。https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220722/pol/00m/010/008000c
 

この発言の前半は、「有事」という言葉の定義により、中国を対日戦争に引き込むほどの危険な発言から、極めて常識的な発言にまで、その意味は大きく振れる。ただ、後半に日米同盟の有事とあるから、この有事は「軍事行動を含む対応が要求されること」と解釈され、問題発言となる。

 

日本の現状を前提にすれば、私はこの発言を素直に受け入れる訳にはいかない。何故なら、中国は核大国である一方、日本は憲法上国防軍も持たず、ましてや核武装国でもないからである。戦争できる国家としての体裁を全く整えていないのだ。(補足2)

 

一般に、国際的問題の交渉においては、戦争の可能性を背後に見せながら臨むのである。それは、近代政治文化の常識である。(補足3)ただ、核兵器の出現により、このクラウゼヴィッツの戦争論の考え方で外交が出来るのは、核保有国のみとなった。

 

それでも西欧諸国に関しては、英国やフランスが核保有国として存在する。それ以外の国も、EUに含まれる場合或いはNATOという軍事同盟に含まれる場合は、核兵器にアクセス可能だという体面を保持しているので、まだこの種の外交にまともに臨むことも限定的だが可能である。

 

しかし、日本国は交戦権を放棄した国であり、この種の外交の現場に登場可能な国ではない。その限界を承知の上で上記発言がなされたのか、私には疑問である。(補足4)


 

3)ポンぺオ発言は日中戦争の導火線なのか

 

この情況に関して、日経ビジネスon-lineの記事は、「ポンペオ発言は日中戦争の導火線なのか」と題する記事を書いている。その中で、キャノングローバル研究所主幹の瀬口清之氏という方が以下のように指摘している。https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/040500323/

 

今年3月の訪問時にポンペオ氏は「米国は必要かつ、とっくに実行しておくべきだったことを直ちに行う必要がある。台湾を自由な主権国家として承認することだ」と発言した(補足5)が、その先には米中戦争が存在する可能性がある。
 

このポンペオ発言は、来るべき選挙に勝つことを目標において、民主党を危険な罠に陥れるためのものだと考えられる。或いは、通常兵器による米中衝突なら、この際視野にいれるべきだとポンペオ氏は考えている可能性もある。

 

その場合のポンペオ氏の考え方は、次のようになるだろう。中国は核兵器での全面対決をする気は無い筈だし、米国には勝てない。通常兵器での戦争になったとして、その前面で戦うのは、台湾と日本(韓国も含まれるかも)になる。つまり、日本をウクライナのように用いても、米国には大した損害ではない。

 

ここに戦争は避けるべきだとトランプは考えるだろうか。もし、ポンペオとトランプの間にこの問題で考え方の違いがあるのなら、昔の記事でポンペオ氏を次期大統領として適切だと書いたことを取り消さなければならない。

 

通常武器での米中戦争になった場合、中国は最初に米空軍基地の横田や嘉手納を攻撃するだろう(上記記事)。その場合、日本は中国軍と戦わなくてはならなくなる。その結果、台湾と日本は今日のウクライナのようになるだろう。

 

つまりポンペオ氏の戦略は、緩衝国である日本と同様の位置に近い中台湾を利用して、共産党支配の中国を崩壊させる、一石三鳥の政策なのである。それは、バイデン民主党政権によるウクライナ戦争、ウクライナを利用したロシア潰し、とソックリの構図である。

 

このポンペオ戦略に迎合したのが、安倍元首相の「台湾有事は日本有事、そして日米同盟の有事である」との発言である。勿論、共和党が中間選挙に勝ち、大統領選挙においてもポンペオ大統領が誕生すれば、それは日本にとって心強いと考えられたのかもしれない。
 

ただしその場合は、日本がまともな独立国であり、独自に核兵器を持つ国家でなくてはならない。そのような国になることを第一に阻害してきたのは米国である。(補足6)日本の安全保障で第一に目指すべきは、真の意味での日本の独立である。

 

日本の近未来は非常に暗い。米国にとって、中国は競合国であるが、日本は、トルーマンのアンオフィシャルな発言を借りれば、家畜である。政権を民主党がとっても、共和党がとっても、先は暗い。先が暗い理由の第一は、日本の政治家があまりにも知的でないからである。


 

補足:
 

1)ペロシ氏は、人気低迷中の民主党の人気挽回を目指して、このような発言をしたのだろう。その動機についてはあまり議論せず、及川幸久氏(上の動画)は積極的にペロシ訪台を支持している。しかし、日本国民の安全を第一に考えた場合、米国の選挙がらみの発言を応援するのは間違いだと思う。勿論、ポンぺオ氏の対台湾姿勢は、2020年のフーバー研究所で公表した中国脅威論を考えると本気かもしれない。しかし、その尻馬に乗ることも日本にとって危険である。

 

2)自民党は、憲法改正を党是として掲げての結成以来、2/3世紀を過ぎてもなお、憲法改正案の国会提出はおろか、国会での正式な議論すらしていない。その元総裁が、このような発言をするのは愚かというしかない。勿論、日本が国防軍を持ち核保有の、イザとなれば戦争できる国になるべきだと思うが、それは現状殆ど不可能である。尚、まともな外交は、背後に相手国に一撃を加える能力を背景にしてなされる。この世界の常識である近代の戦争論の考え方を、日本人のほとんどは理解していないようだ。

 

3)以前にも書いたが、そのような姿勢など一切見せないで、拉致被害者を救出する交渉を北朝鮮に対して行った小泉政権の愚かさ、更に、その際大金を北朝鮮に渡したとしたら。。。。。もう言うまい。

 

 

4)元自民党の山崎拓氏がこの問題に似た趣旨のコメントをされている。https://news.yahoo.co.jp/articles/95a39955bee6e21ae21b1ad696cf0ce2bc118655

 

5)ロイターの記事にポンペオ氏講演の動画が紹介されている。そこで、明確に本文にある発言を行っている。https://www.reuters.com/world/asia-pacific/us-should-recognise-taiwan-former-top-diplomat-pompeo-says-2022-03-04/
 

6)日本が、自国の安全を第一に考えた外交が出来るのなら、地政学的に潜在敵国同士であるロシアを日本の協力国の位置に置く筈である。その最初のステップである日露平和条約締結を二度(一度は日ソ平和条約で、鳩山一郎内閣の時のこと)に渡って米国は妨害した。その上、日本と韓国、日本と台湾との間にも、其々未確定の領土を置いて、これらの国と近い関係を樹立することを妨害したのである。http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/gazo.cgi?no=110746

(13:00 編集、表題変更)

2022年7月25日月曜日

政教分離について: 安倍元首相の事件から学ぶべきこと(3)

民主主義を標榜する国家では、国を束ねる権力は神の代理的な皇帝から、法とその執行機関に移動している。その時から、宗教が解決すべき問題は、個人の心の問題となった筈である。(補足1)その時以降、宗教には政治(=国家及び地方の行政)に関わる本質的動機は無い筈である。

 

法の支配下の民主政治において、宗教教団が何らかの政治的活動を行うとしたら、それは教団として何らかの利益を得ようと考えていることになるだろう。それは個人の心の問題を対象に活動するという本来の在り方に矛盾するだけでなく、教団が不都合な何かを持っている証拠である。(補足2)
 

つまり、そのような教団は、民主政治の下で宗教法人の資格を得るに相応しくない筈である。以下、その点について少し考えてみる。


 

1)宗教の意味と政教分離の原則:

 

個人の心の問題とは、死への恐怖と思い通りにならない人生に関する苦しみとでも言えるだろう。それは、生きることの裏返しでもある。この人に根源的な悩みは、無くなることはあり得ない。その苦しみは、囚われることにより益々大きくなるという性質がある。
 

通常、日常的にその問題に囚われる人は多くないだろう。それ以前に、仕事で様々な問題を考えたり、余暇活動などでそれを忘れているからである。これらは、殆どの人を人生の苦から一時的に解放してくれる。
 

それらが無くなった時、人はその苦しみと正面から対峙することになる。また人によっては、この問題の解決無くして、日常生活などあり得ないという情況に追い込まれた人も、いくらか存在するだろう。不幸が重なり、積極的に仕事や趣味に向かい合えない人たちである。

 

この人生における苦から逃れるために、何か特別のものに身を委ねる人も多い。例えば、何かの集団の中でその活動に熱中すること、快楽に身を委ねること、或いは絶対的存在に帰依すること等である。絶対的存在への帰依とは、宗教への入信である。

 

古典的な宗教の場合、古代の歴史から続く伝統もあり、帰依する人を受け入れるだけの基礎は持っているだろう。(補足3)しかし、新興宗教の場合、いったいどのような教えを持って、上記根源的苦悩と向かい合うのだろうか?そして、宗教法人の資格が得られたのだろうか? 先ずこの点が不思議でならない。つまり、最初の段階から政治との癒着を疑ってしまう。

 

新興宗教は、恐らく、集団の中で人と人を強く結びつけて、孤独感の残る隙間を埋めて「従属」という安心感を与えるのだろう。それは病的な近代化の個人主義に対する反抗だとしても、宗教などではない。その活動に熱中することは、ドラッグ的であり、上記宗教の目的を逸脱しているように思う。

 

何れにしても、宗教は個人の心の問題にまで介入する。宗教は個人を迷える人達と捉え、一人前として扱わない。個人の自立を前提とする民主主義政治の場と、宗教の場が重なることは、100%禁止されなければならない。それが政教分離の原則の理由であると思う。


 

2)宗教団体と政治の関わり:

 

日曜朝のテレビ番組の「ザ・プライム」で、コメンテーターの橋下徹氏は「宗教団体が政治に関わることは、宗教団体の構成員も一票持っているのだから、禁止はされない」「禁止されるのは、問題を抱えている宗教団体と政治が関わることだ」という趣旨の発言をした。しかし、この考えは間違っていると思う。

 

宗教団体が、そのアイデンティティを保持したまま(仮に別に政治団体を作ったとしても)政治活動に参加することは政教分離の原則に反する。憲法20条には、「いかなる宗教団体も政治上の権力を行使してはならない」と書かれているからである。ここで、政治上の権力行使とは何か?
 

先ず、政治とは特に国政や地方行政を意味すると考えて良いだろう。そして、「政治上の権力行使」における主格(主語)は、宗教団体のトップ或いは執行部と考えるべきである。その権力行使としては、信徒にたいして支持政党等を決める自由を侵害すること、更に、教団に都合の良い候補や政党に対する投票を、一般公衆に呼びかけさせること等がある。教団として支持政党を発表することは、教団幹部と信徒の上下関係から、これらの政治活動に他ならない。

 

尚、権力とは、他人をおさえつけ支配する力。支配者が被支配者に加える強制力 (広辞苑)であり、それを国家権力と狭く解釈する人も居るが、それは間違いである。また、強制力の範囲としては、暗黙の圧力なども含まれるべきである。

 

宗教団体(或いは別途作った政治団体)の幹部或いは執行部が、その資格のままで、ある議員候補を推薦し応援する場合、団体信者に対して投票や応援での協力依頼(依頼という名の強制)を伴うことになるが、それは政治上の権力行使である。その宗教団体が問題を抱えているとかいないとかは問題ではない。

 

勿論、宗教団体の構成員が、政治家として立候補することや、個人としてある政治家を応援することは全く問題ではない。しかし、その候補者に対し、宗教団体(或いは別途作った政治団体)として、応援することは憲法違反になると思う。

 

上記()内に示したように、宗教団体が別途政治団体を創設し、そこで政治活動を行う場合が多い。その場合でも、母体から同じメンバーが政治団体に加わることがほとんどである。このようなことが大々的に日本で行われている。しかし、明確な憲法違反の判断は、現行の制度で下されていない。

 

ある政治問題に関係する意見のバラツキは、一つの宗教団体信者の中にも存在する筈である。それを無視して、宗教団体の別動隊的な政治団体が一つの政党を形成、或いは支持することは、憲法の精神に著しく反する。

 

別表現で説明する。ある政党は様々な政治的問題に関して、其々一つの判断を示す。それは、政治的に一つの人格をなすことに他ならない。その政治的に単一の人格の下に組織される構成員が、宗教的に単一の人格をなす宗教団体と一致することは、憲法20条に違反し、近代民主国家ではあり得ない。
 

終わりに:以上、あくまで自分の頭の整理の為に書いた文章です。勿論、批判やコメントは歓迎致します。

 

(19時、編集あり)
 

補足
 

古代、民族を束ねるために一神教があった。その後、皇帝や王様が国を治めるようになったが、その正統性を示すために、統治権が神により授けられたと考える(或いは宣伝する)時期が続いた。この民族の統一のシンボルとしての宗教の役割を軽視するのは、農耕社会の日本の伝統である。明治以降の国家神道は、その西欧の伝統を日本も採用した結果である。

 

2)現行の政治が極めて劣悪であり、もう少しまともな政治を実現しないと民族が滅びる可能性があるなどの危機感から政治活動を始める宗教団体も例外的にあるかもしれない。しかし、それは法の支配下の民主政治の原則に反する。つまり、憲法20条に違反する。勿論、違法覚悟で革命政権を目指す場合は、言うべきことは何もない。ただ、歴史の審判を待つのみである。

 

3)宗教の教義は様々だが、それらは大きく二つに分けられる。一つは、最初からこの生の苦しみの問題を対象にしたと思われる宗教である。例えば仏教がその一つだろう。この場合、信徒たちは、正しい知恵の獲得により、解脱を目指す。 解脱とは、釈尊の教えを深く学ぶ(信じる)ことで、その根源的苦しみから解放されることである。つまり、「一切皆空」(現世の存在は全て空しい)を心に焼き付けるのである。仏教の宗教活動は、内向的であり個人の範囲内に留まる場合が多い。それでも、極めて政治的な僧兵という集団が、歴史上にあった。
他方、歴史的に民族の生き残りのプロセスに関係した一神教では、神を信じたものは神の意志として生き、永遠の命を得るのである。従って、異教徒などの邪魔者は倒されるべきだと考え、信徒はそれを信じるのだろう。キリスト教の場合は、人の間に神の愛を伝道し満たすことで、この世界の困難と人々の不幸は克服されると説くのかもしれない。しかしキリスト教も、その神の愛を受け入れないものは、異教徒として排除されるべきであるとその一線は固い。一神教は政治的宗教である。

2022年7月22日金曜日

宗教と政治の問題: 安倍元首相銃撃事件から日本は何を学ぶのか(2)

現代の日本における宗教と政治の密接な関係が、安倍元首相爆殺事件とともに世界中に配信された。安倍元首相だけでなく、下村博文元文部大臣など自民党議員のかなりが、統一教会(旧称)と関係があったと言われている。

 

これは日本の恥と言える。 何故なら、政教分離は近代国家の必須要件だからである。今回の事件を契機にして、日本が政教分離を未だ達成していない未開文明の国家であることが、大々的に世界に向けて暴露されたのである。

 

 自民党政府は、その被害者である安倍元総理の国葬を行うとして、問題をごまかそうとしている。それは国際的な恥の上塗りになりはしないか? 兎に角、国葬を行う場合は、法的根拠を明確にしてもらいたい。 

 

WeBlioというネット辞書によれば、1975年開祖文鮮明から日本統一教会に送金命令が下り、毎月約20億円、1985年までの10年間に合計約2000億円が文鮮明に送金されたという。そして、2001年までの25年間で被害相談額が1100億円を超えたようだ。

 

つまり日本統一教会(旧称)は、自民党の有力議員の世耕弘成氏が自ら起こした裁判で言及したように、反社会的な活動を行って来た宗教団体なのである。それに対して、日本政府は宗教法人格を与え保護してきたことを、この際徹底的に洗いなおすべきである。

 

 

安倍元首相の祖父である岸信介元首相は、北朝鮮などの共産主義と対峙するためにこの教団の創始者が作った勝共連合と、深い関係にあったようだ。更に、この参議院選で当選した自民党議員の中には、統一教会(旧称)の推薦で当選した方もがいたようである。 自民党と統一教会の関係はそれほど深く、以下のサイトにも詳しく書かれている。また、その記事中に元公安調査庁の菅沼光弘氏による現場報告的な解説動画も引用されている。

 https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20220721-00306495 

 

戦後の一時期に諜報活動として、統一教会を用いることがあったかもしれない。それは好ましいことではないが、やむを得ない部分もあっただろう。それでも、表の政治の舞台では、厳に慎むべきことである。それにも関わらず、21世紀の現代日本から堂々と国際的な場にその関連団体の集会に参加し、祝辞的なメッセージを送ったのだから、今回の事件の責任の一部は安倍元首相にも存在する。(補足1)

 

ここで、宗教と政治の問題の基本的部分から少し考えてみる。

 

 2)宗教の社会的意味の歴史的変遷について: 

 

古代、人が野生動物から社会的な人間になり、そして国家を形成するまでのプロセスにおいて、宗教は重要な役割を果たした。

 

我々の祖先は、独自の言語を作り出し部族を形成し、他の部族と生き残りを懸けて戦った歴史を持つ。その際に、偉大なるリーダーが神となり部族の団結の中心となった。それが人格神を崇拝する一神教の始まりである。例えば、旧約聖書には、そのような物語が書かれている。(補足2)

 

 その後、多くの民族或いは部族を起源とする人たちが一つの国家の下に束ねられて、中世から現代に至る。(補足3)そして、国家の支配力は、上記一神教の神ではなく皇帝に移り、現代では国家:つまり法とその執行機関等で構成される国家システムに移行した。法治国家の体裁が採られれば、その支配はより公明であり、その結果、国家の機能全体がより効率的になる。

 

中世以降の西欧の歴史は、政治や文化から一神教的な要素の排除の歴史でもあると言えると思う。(補足4)例えば、ルネッサンスは、キリスト教からの人間の解放という意味を持つ。

 

日本も、その西欧の政治文化にならって、19世紀後半に近代国家を建設した筈だったが、国家神道に頼る時代が続いた。それが国家の暴走に繋がったと言える。(補足5)

 

勿論、個人の心の中には、ある意味重要な要素として宗教心が存在する。そして、宗教は道徳の源泉として法とともに存在する。しかし公の政治空間では、宗教は名残以上には存在しないのが近代国家の原則である。 

 

このように考えると、宗教には二つのタイプがあると言える。一つは民族の歴史のなかで重要な役割を果たした(古代からの)宗教及びその連続上にある宗教と、所謂新興宗教である。新興宗教に対しては、あくまでも個人を対象に宗教活動をすること、社会システムに対する活動はしないという確信が得られなければ法人格を与えないことが大事である。

 

日本が自由と平等、人権、法の支配などを尊重する近代国家を標榜するなら、政治活動に手を染める宗教団体は、解散させるべきである。それは、別団体に政治活動を委ねる場合も同じことである。また、刑事事件の疑いがあれば、徹底的に捜査すべきである。

 

繰り返しになるが、政治活動を行う宗教団体は、近代国家においては、革命勢力と見做されて然るべきである。同様に、宗教上の人間関係を利用した政治運動は、厳に慎むべきである。

 

日本国憲法20条に、日本における信教の自由と宗教と政治の関係が記述されている。 

 

第二十条:信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 

③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 

 

公明党の政治活動とこの憲法に規定された政教分離の原則に関して、民社党(当時)の春日一幸議員により国会に質問状が出されている。その「宗教団体の政治的中立性の確保等に関する再質問主意書」には、宗教団体と政治の関係についての重要な問題提起がされている。

 

そして提起された問題は、未だに現代日本の政治の未成熟な部分として存在すると言える。(補足6)

 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/a063003.htm 

 

補足: 

 

1)責任の一端があるというのは、山上容疑者の裁判において情状酌量の根拠の一項目として、安倍元首相と統一教会(旧称)との深い関係があったことがなり得るということを意味する。それ以外の意味はない。

 

2)日本書紀や古事記に書かれている物語もよく似ていると思う。ただ、あまり読んでいないことと、古事記には後の時代の創作であるとの説もあり、客観的な視点では引用できない。

 

3)日本は6-7の民族が統合されて、ヤマト民族となったと言われている。その統合の歴史が民話として残っているのが、出雲の国譲り伝説などである。魏志倭人伝などにも多くの国(民族)があったと言う記述がある。

 

4)この表現で良いかどうか専門に近い方にコメントいただければ幸いです。

 

5)天皇支配下の大日本帝国の政治システムでは、軍隊は皇帝である天皇の直属であった。各大臣は天皇に助言を与えるが任務であった。このような脆い国家には、外国の諜報機関が入る隙が多かった。第二次大戦は、外国機関からのスパイが大きな役割を果たした。

 

6)この質問に対する答弁は、「宗教団体が公職の候補者を推薦し、もしくは支持すること、またはこの結果、これらの者が公職に就任して国政を担当することを、この原則が禁止しているものとは、考えられない」というもの。春日一幸氏の質問とこの答弁の議論は、今後の予定書く予定。

 

 

(16:20編集あり、7/23早朝全面的に編集)

2022年7月17日日曜日

ネット社会の洗脳メカニズムとその危険性

今日まで、情報源の一つとしてyoutube動画を頼りにしてきた。以下に紹介する10分ほどの動画で、その長所と限界について教えさせられた。香港の政治動画サイト「役情最前線」の「私たちは皆、自分の考えの虜」であるが、それを構築するのは誰なのか? と題する動画である。

https://www.youtube.com/watch?v=LkYUnUQNCsg

 

 

この動画では、“世論”が作り上げられるプロセスを二つの”モデル(或いは理論)”で解説している。一つは①「Feedback Loop の罠」であり、もう一つは②「自由からの逃走」である。

 

Feedback Loopの罠」とは、ネットなどで自分の好みにあった情報を選択的に見てしまい、ある一定の方向に自己洗脳してしまう危険性を意味する。それを手助けするのが、YoutubeなどのSNSAI(人工知能)が閲覧数を稼ぐために用いるプログラムである。(補足1)
 

また、「自由からの逃走」とは、エリックフロムの本の表題であるが、社会的動物である人間の”遺伝子”に由来する。人は、真実や正義を追及する”険しい孤独の道”を放棄し、世の中の流れなどの既成権威に積極的に身を任すことで楽になろうとする本能のことである。(補足2)

 

今回は、この動画のテーマを、自分風に説明してみた。批判等歓迎します。

 

 

1)Feedback Loopの罠

 

今日、我々は様々な分野の情報を入手する手段として、例えばYoutubeなどのSNSを用いる。その場合、”お勧め”のメカニズムもあって、多くの似た動画等を繰り返し視聴し、その理解を深めることになる。思想や技術の習得において繰り返しは重要であるので、この機能は便利である。

 

しかし、その便利な道具を用いてある思想(或いは考え)を習得したとして、自分は本当にその思想の主人であると言えるのだろうか? 実際には、その思想の奴隷になっている場合が多いのではないか? それが、SNSが個人に仕掛ける罠である。この罠を、ここでは(繰り返し知識を与えられるという意味で)Feedbackの罠と呼ぶ。

 

多くの“知的な人”はそれに気づかず、その思想の主人であると信じて、SNSを利用してその思想を拡散させる。その結果、ネット空間が一色に染まることも良くあるだろう。複数の人を巻き込んだ形のFeedBack Loopの罠である。

 

今回の「役情最前線」では、ウクライナ戦争に対する人々の理解を例に挙げて説明している。その説明を真似て、筆者の理解するウクライナ戦争に適用してみる。

 

プーチンのロシアが悪者であるという情報を好む者には、ロシア軍によるウクライナに対する残虐行為の話が次々と提供される。そして、プーチン=悪魔説を“真理”として信じ込むようになる。

 

逆に、米国ネオコンの策略だと思う人には、その好みに合わせて、アゾフ連隊の悪辣なロシア系住民虐殺の情報やブラックウォーターなどによる米側からの干渉行為などが紹介される。その結果、その人はネオコン元凶説を固く信じ込むようになるだろう。(補足3)

 

 

このケースでは、政治がFeedback Loopの罠を仕掛けている。具体的にはSNSの経営者等が政治勢力の一角に居て、そのプラットホームの支配に乗り出した場合(補足4)、一般大衆に組上げられた思想の主は、その経営者が支援する政治団体などとなる。

 

そこでは、大きな権威には迎合するという「自由からの逃走」の本能が働くだろう。社会全体でのFeedback Loopの罠である。その結果、国家レベルの集団が洗脳されてしまう危険もある

 

この場合の「自由からの逃走」とは一言で言えば、”長いものに巻かれることで、安心を得ようとする”人の性質を意味する。それは、人という動物を社会的動物とする遺伝子の発現と言える。SNSAIにより選択される情報、長いものに巻かれる人の性、SNSを所有する巨大資本の意思などにより、ある地域の思想は一つの色に誘導される危険性がある。

 

その結果、国際社会は大きなプラスとマイナスを蓄積した安物のリチウムイオン電池のようになり、自然発火して大火事を待つ状態となる。それがウクライナ戦争の情況であり、今は大火事、つまり世界の大混乱の直前の可能性がある。


このような社会全体に広がる大洪水のような洗脳の嵐を防止するのは、まともな専門家が防潮堤のようにマスコミなどで活躍することである。社会は、そのような人材を育てなければならない。現在、本物の専門家が育たなくなっているように思うので、そのことを次に議論する。

 

2)本物の専門家を社会は育て上げられるか(オリジナル)

 

現在、インターネットに組み込まれたAIは、パソコンの前の全ての人に無限とも言える資料のなかから瞬時に必要な情報を抜き出して提供できる。その結果、大衆から見て専門家にも勝るリーダー的な知識と弁舌を持つ人物を多く育て上げる可能性がある。

 

問題は、彼らが自説の奴隷となってしまい、そこから自分を解放できないとしたら、大衆を惑わすリーダーとなり、最悪の場合は、悪の独裁国の成立を手助けする可能性がある。

 

一方、その人物が思想の主人なら、刻々情況が変化した場合でも、広い裾野から再考してその思想をより現実に即した考え方に変更することも出来るだろう。それは、本物の専門家は常にその思想と真実の間の乖離を実感できているからである。
 

別の表現では、自分が持つ思想の主が自分なら、その分野に対する言葉を超えた理解或いは直観を持っている筈である。その直観は、その分野の基礎と哲学的レベルからの思考法を持っていることによって備わると思う。その場合、真実に対する畏敬の念を持つ筈である。(補足5)
 

ところが、インターネットとAIで育てられた似非専門家は、縦の一次元方向に自分自身を教育し、非常に狭い範囲で高みに到達する。そのポールのような知識の先端で、自分の到達した高い位置にある種の快感を覚え、遠く低く見える専門家を冷笑し批判することになりがちである。

 

本当の意味での専門家と、俄作りの似非専門家の区別は、一般大衆には瞬時には附けられないが、長期間の発言の整合性や、その後の現実との照合などから区別がつく。

 

レベルの高い本物の専門家が、全ての専門分野を引っ張るような国になるには、その国に文化の厚みが無くてはならないだろう。
 

西欧の国々のみがそのような文化を貴族社会の中から作り上げた。しかし、貴族社会が崩壊した後の民主主義社会になって、徐々にその文化も平坦になり、その知的階層文化も崩壊しつつある。

 

そして、現在の資本主義社会では、全ての分野を資本の利益(キャピタルゲイン)の支配下に置くようになった。文化的には単色一次元の世界になりつつある。その結果、現代は年収がその人の人生の全てであるかのような世界である。

 

例えば日本では、指しあたり平均年収として最高額が期待できそうな医師への道に学生が集中するようになった。そして、多くの分野での本格的な専門家の養成がより困難になっているのではないだろうか。その様な情況での医師の質もまた、低下したのではないだろうか。 ここで一応話を終わる。


 

補足:

 

1)SNSでは閲覧数を稼ぐことは、そこに掲載した宣伝の閲覧数を稼ぐことになり、広告収入の増加につながる。SNSでの広告は、ビッグデータを利用して広告を個人向けに行い、高い広告効果を実現する。個人向けの動画などの推薦と広告の掲載は、全てAIにより自動的になされる。

 

2)文明の発展は人に多くの自由を与えた。食の自由、行動の自由、社会的自由などである。近代以前の西欧文明の裏にあった奴隷制度は、多くの人からこれらの自由を奪った。一般市民の自由の範囲も近代文明の発展により、拡大した。そのような自由を得た人が、近代的な都会の中で、近代的な組織の一員として仕事をする内に、自分の視野が自分の死まで広がったとき、えも言われぬ不安と孤独感に襲われる。その孤独感と対峙できない人は、何らかの束縛に身を委ねて一旦得た自由を放棄するのである。これが自由からの逃走である。(あくまで独自解釈です)

 

3)この二つの説のどちらが正しいかは、もっと問題を掘り下げればわかるだろう。それには少なくとも20世紀末のソ連崩壊と、そこからのロシアの資本主義化、そこでのIMFの働きなどから調査しなければならない。特に、2004年のオレンジ革命2014年のマイダン革命などからの歴史の調査は欠かせない。私は、米国のネオコンが牛耳る政権の責任だと思う。

 

4)国家やある種の組織によるSNSの支配は、それを社会インフラとしてのネットプラットホームから洗脳装置或いはプロパガンダ装置に変える。FaceBookTwitterAIが新型コロナや大統領選挙などのキーワードで、投稿されたものを削除したり、そのネット配信者を登録削除したりするケースが問題となっている。
 

5)正統な専門家は、ある分野の基礎全般を学び、それを自分の専門の土台として築き上げる。その基礎は、今でもネットではなく先駆者の弟子となって教えを受け、更に弟子たちの中で互いに切磋琢磨する形で築き上げられる。そのような場の提供が大学の役割である。

 

(19:00;18日早朝、全体的に編集)

2022年7月15日金曜日

安倍元首相の通夜へ参加した米国の国務長官と財務長官の思惑

ブリンケン米国務長官が11日、タイ訪問後急遽来日した。安倍元首相が暗殺されたことに対して弔意を表わす為である。また、イエレン米財務長官も今月1213日に来日予定だったが、急遽予定を前倒しして、11日の通夜に参列した。https://news.yahoo.co.jp/articles/3bf5015882f87405d6f560a4f38b201c710d864c

 

安倍元首相の通夜に参加することが目的とは言いながら、本当は別に重要な目的があった筈である。米国による日本への正式な弔意表明は、バイデン大統領が日本大使公邸を訪問し記帳することで為されるからである。

 

1)米国の世界戦略への日本の協力:

 

安倍元首相は、在任中、憲法改正のための国民投票法を成立させた他、安保関連法や特定秘密保護法、テロ等準備罪を新設した改正組織犯罪処罰法など、日米安保体制を現実的なものとする為の法整備を行った。あと憲法を改正し、敵基地攻撃能力を持てるようにすれば完成する。(補足1)

 

今後米国民主党政権が日本に期待するのは、そのような法改正が威力を発揮する形での協力だろう。具体的には、ロシアに対する制裁をこれまで以上に強化することや、中国の台湾侵攻に対する対応のかなりの部分を肩代わりすることなどである。(補足2)

 

米国は、現在ウクライナ戦争においてNATO諸国を巻き込むことに一定の限界(補足3)を感じており、日本により一層の関与を強く要請(つまり欧州諸国の肩代わり)するだろう。米国に言われるままにロシア制裁を続ければ、戦争が東アジアに飛び火する可能性もある。

 

米国側から見た日米安保条約の目的は、日本の若者が米国の世界戦略のために血を流すことである。現在、ウクライナの人達が祖国防衛だと思って行っていることと同じこと(つまりロシアと戦うこと)を、米国は日本に期待しているだろう。

 

ウクライナ戦争の真っ只中、しかも台湾有事が予想される時期での憲法改正などの準備は、特攻へ飛び立つ直前に、2週間ほどの教習を受けることに似ている。憲法制定後75年間、一度も改正の本格議論を国会で行ったことが無かったにも拘わらず、何故今始めるのか? 国家の基本は、もっと冷静に議論すべきではないのか? https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12739095349.html

 

また、前FRB議長で財務長官のイエレン氏も、対ロシア経済制裁の約束をするために来日した。何故財務長官が国際政治の話をしに来るのだ?12日の鈴木財務大臣との会談では、円安が進む為替市場に関して協議した他、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえた経済制裁の強化を約束し、共同宣言の形で残した。何故単なる閣僚同士で異例の共同宣言など発表するのか。https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/dialogue/20220712.pdf

 

それは今後、ロシアへの経済制裁強化のための金融面での準備を日本にさせるためだろう。ロシア制裁への協力は、既に通知済(指令済)なので、今回は財務大臣レベルの出番なのだろう。更にウクライナの復興が始まれば、日本に全面協力を強制するつもりだろう。どちらかと言えば敵対国だったウクライナの戦争と復興に、日本国が借金を重ねて資金を提供することになるのだろう。

 

結果は、更なる円安とインフレである。このまま進めば、国民の生活は数年で一挙に途上国並みになるだろう。

 

2)米国盲従路線への国民の反発は?

 

今回の銃撃が、米国に対して資金面と軍事面の両面から従属姿勢を明確にする自民党政権への反発の結果ではないのかとの疑いが、ブリンケンの心の中に生じたと私は考える。それに対する回答を、ブリンケンは自分の五感で確認したかったのだろう。今後、日本人の若者に血を流す形での仕事に参加して貰うには、日本国民の反発に対する配慮が大事なポイントである。

 

ブリンケンの危惧に反して、日本人は家畜のように大人しく(補足4)、上記のような悲惨な状況になっても暴動などにはならないだろう。ハリー・S・トルーマンは、「日本人は米国の家畜であるので、相応の調教をしなければならない」と解釈される発言を戦後したという。その占領支配の成果なのだろう。

 

 

今回、安倍さんが殺害されたことで、日本人が目を覚ました可能性を危惧して来日した彼らは、安心して帰っただろう。北朝鮮の核実験のあと、日本に飛んできたかライス国務長官を思い出す。彼女は、「日本は米国が守る」と啖呵を切った。勿論、米国との同盟は、”お守り”として日本の玄関脇に貼ってはある。それは、極めて高い値のお守りである。

 

安倍さんは唯一ロシアとパイプを持ち、これまで完全に米国の思い通りには動かない唯一の有力政治家だった。その安倍元首相が暗殺されたことで、米民主党政権は日本の裏切りという悪夢から解放されたことになる。

 

安倍さんが米国に逆らった例を一つ上げる。二島返還で日露平和条約を締結する試みである。この件の地政学的関係は、今回のウクライナとロシアの敵対の図式とよく似ている。つまり、NATOを日米安保に置き換えれば、ドンパスは北方4島に相当する。北方4島に米国の力が近づけば、プーチンの国家防衛の姿勢が強まる筈である。(補足5)

 

米国に帰ったあと、ブリンケンとイエレンという二人のユダヤ人同志は、今回の件でどのような話をしただろうか?

 

国際政治評論家である田中宇氏は、大胆にも安倍氏暗殺の背後に米国ネオコンが居るという説を、ブログ記事としてアップした。安倍さんは政府与党内で唯一骨のある政治家であり、ネオコンにとって、つまり現民主党政権にとって、今後強力な邪魔者になる可能性があると考えてのことだろう。

 

田中氏は、今回の暗殺劇はケネディ暗殺の時とよく似ていると書いている。もし、犯人の山上を背後であの諜報機関が操っていたとすれば、この次に起こり得るのは、山上の不自然な死である。もし、山上が殺されたら、田中氏の推察が正しかったことになるだろう。

https://tanakanews.com/220710abe.htm

 

もし、田中氏の説が正しいのなら、その諜報機関がSPなどの警備担当も抱え込んでいたことになる。そうすれば、犯人が2発撃つまで何もしなかった謎が解ける。まあ、ちょっと考えにくいのだが、意外なところに真実があるかもしれないので、最後に簡単に紹介させていただいた。https://www.mag2.com/p/news/545467

 

 

補足:

 

1)日本国憲法は、日本国の在り方を記述する基本法である。戦争放棄が日本国憲法にあったとしても、そしてそれを無視して戦争に及んでも、国際法的には違反にならない。従って、外国は自衛隊を日本軍と見ている。

 

2)安倍総理は、昨年末「台湾有事は日本の有事、そして日米同盟の有事」と言って、中国をけん制した。この発言に中国は当然のことながら、「安倍元総理が台湾について誤った発言をした」として、中国駐在の日本大使に強く抗議した。https://www.youtube.com/watch?v=F51WZXkZj8k

 

3)欧州経済は完全にロシアの天然ガスに依存している。現在ロシアからドイツへのパイプラインのノルドストリーム1がメインテナンスに入っており、ドイツなどはその後ガス供給が再開されるかどうかを恐怖心を抱いて注目しているという。https://www.youtube.com/watch?v=kHsOdQ4CTGY

 

4)1945年4月から米国大統領になった民主党のハリーSトルーマンは「日本人は猿であり、家畜である。そして、我々の役にたたせるのだ」と言ったという。https://www.youtube.com/watch?v=4KQGpAcs7Zw

 

5)日本にとって最も危険な国は中国である。中国による日本侵略を牽制するには、日本がロシア(そしてインド)と密接な経済(可能なら防衛)の協力体制を築くことが有力である。それを妨害し続けたのが、米国ネオコンたちである。彼らと日本の自民党政権は、北方四島が日本の領土であると国民に信じ込ませ、日ソ平和条約や日露平和条約の締結を妨害した。国後と択捉はサンフランシスコ平和条約で放棄した千島に含まれることは、戦後の吉田茂首相と西村条約局長が国会答弁している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516678.html

そのネオコンの強い反日反露の姿勢を覆そうとしたのが、安倍元首相の日露平和条約への挑戦だった。色丹に米軍基地など置かないと安倍さんが言っても、今回のウクライナ戦争の原因となったNATOの東方拡大のように、米国はそれを内政に干渉して覆す。その次には、ウクライナの代わりに日本を使ったプーチン・ロシアを潰す戦争を始めさせる可能性が高い。プーチンは更にそのような問題を抱えることは出来ないと考えた筈である。

(15日午後8時30分、数か所の語句、文章を分かりやすくしました)

 

2022年7月10日日曜日

安倍元首相銃撃事件から何を日本は学ぶのか?

安倍元首相が8日、暴漢に銃撃され死亡した。この件、国内だけでなく海外にも大きな衝撃を与えた。ブラジルのボルソナーロ大統領は8日、国として3日間喪に服することを宣言した。インドのモディ首相も1日間、喪に服して政府庁舎に半旗を掲げるなどして弔意を示すという。この対応について、日本人の一人として感謝したい。

https://www.asahi.com/articles/ASQ787RDKQ78UHBI069.html

 

その一方、日本国政府からはそのようなメッセージは無かった。この元首相暗殺という事態を、日本は十分消化できないように見える。そこで、この事件から何を学ぶべきかについて少し考えてみることにした。

 

1)事件の発生原因という観点から考えるべきこと

 

犯人の山上徹也(41)は、安倍元首相がある宗教団体と関係が深いと考えて襲撃したようだ。父親の急死後、母親がその宗教団体に加入して大金を毟り取られ、家庭が崩壊した恨みが原因だという。
 

山上徹也は、郡山高校という奈良県では屈指の進学校を卒業しており、在学中には応援団に所属して甲子園にも行ったようだ。卒業後は何処かの大学(口コミでは同志社大学工学部)に進学したが、その後、母親の破産により退学したようだ。自衛隊に3年間所属したのは、金を稼ぐためのようだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fd0b5d7c6f1116d95f4de1575527d6fd2eee7327

 

このような宗教団体に関する恨みは、日本によくある話である。犯人は、安倍氏がこの宗教団体を支援するような立場だったと思い、私怨によって犯行に及んだのである。実際、犯人は今回の襲撃が安倍氏の政治姿勢等には無関係だと供述している。これがこの事件の原因について犯人側から記述すべきことの殆どだろう。(補足1)

 

新聞には驚くべき視点でこの事件に関する社説や記事が書かれている。それは、「言論は暴力に屈しない」(9日中日新聞社説)、「暴力に屈しない、参議院選きょう投開票投開票」(10日中日一面記事)「’22参院選 きょう投票日 民主社会守り抜く行動を」(毎日新聞10日社説)などの表題を見ればわかる。

 

毎日新聞の社説は、以下の文章で始まっている。10日のもので、事件の概要を知った上で書かれている筈である。
 

自民党の安倍晋三元首相が銃撃されて死去するという衝撃的な事件の直後、異例の状況下で日本の針路が問われる10日は参議院選挙の日;ブログ筆者の注)。まず改めて確認したい。暴力によって命を奪い、言論を封じる凶行は断じて許されない。民主主義の基盤を揺るがすものだ。

 

全くトンチンカンな社説である。

このような暴力は、確かに反社会的行為である。だからと言って、例えば銀行強盗があった時には、民主主義の基盤を揺るがすとは言わない。犯人の山上徹也は安倍氏の政治姿勢に反対して、その言論を封殺した訳ではない。今回の件は、単なる私怨による犯行である。

 

要人がこのような形で殺されるようでは、日本人にとって本人と家族等の命の次に大事だとも言える日本国が、いつ何時崩壊するか分からない。この事件は、民主主義を守るという観点ではなく、日本国家を守るという観点から対策をしっかり再構築しなければならないことを示している。

 

この事件の原因側から考えるべき点としては他に、宗教と政治の問題がある。しかし、重ねて言うが、特別に民主主義という政治体制に関連したことで、この犯罪から学ぶべきことはない。

 

2)事件の防止という観点から考えるべきこと

 

次に、この事件の警備側に帰すべき原因について少し書きたい。この件、一般的な警備側責任に関して、奈良県の県警本部長により、問題があったとする考えが公表されている。しかし、私には警備に不手際があったことをもっと具体的に言うべきだと思う。そして、県警本部長は当然責任をとって辞任すべきである。

 

NHKwebの記事には、以下の様に書かれている。

 

現場で警備にあたっていた複数の警察官が「1発目の銃声が聞こえて初めて不審者を認識した」という内容の説明をしていることが分かりました。

 

当時、現場には警視庁の専属のSP1人配置されていたほか、奈良県警の私服の警察官なども含めると合わせて数十人の警備態勢でした。安倍元総理の後ろ側にも警察官が配置され、周囲を360度警戒していたということです。

 

しかし、沿道にいた人が当時、撮影した動画では、容疑者が元首相の斜め後ろからゆっくりと歩いて近づく姿が写っていますが、銃声が鳴るまで警察官が制止する様子は確認できません。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220708/k10013707601000.html

 

一般に銃で目的を射る場合、銃身の後方をしっかり固定しないと、目標を外す可能性がたかい。従って、安倍元首相の後方でとる銃撃の姿勢は目立った筈である。それにも関らず、だれもが一発目の銃撃まで気付かなかったのである。

 

テレビのニュース番組では、ビルの窓から眺めていた人が、警察(この人は間違ってSPと言っていた)が20人ほどいたが、皆安倍氏の方を向いていたと証言している。もし、後方に注意をしている人がひとりでも安倍氏の近くに居れば、彼を押し倒して、安全確保を図るだろう。
 

つまり、全く要人警護のプロが警備していたとは思えないのである。新聞が民主主義を守るという視点で書くのなら、要人警護の体制を見直すべきと書くべきである。

 

警備を職業とする警察官にせめて要人警護の実地訓練ぐらいして(している筈だが)、適切な技量をみにつけさせることなど、要人警護を完全に行うことも民主主義の要件の一つだからである。

 

補足:

1)新興宗教に関して、人の弱みに付け込んで金を毟り取られたという類の話が多い。日本(社会)には宗教を保護する税制などは完備しているが、宗教に対する哲学のようなものは殆ど生かされていない。その結果、あさま山荘事件のように、宗教団体とテロ組織との区別が大事件が発生しても尚ついていない。実際、オーム真理教の分派が、堂々と宗教的活動をしている。

 

追補1 https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_litera_12006/

追補2 以下の記事に、作家の高村薫氏も明確にこの事件は民主主義への挑戦とは言えないと書いている。https://mainichi.jp/articles/20220709/k00/00m/010/218000c

 

編集(11:30追補1追加; 12:30 小編集;7/11/5:00 追補2追加)

2022年7月9日土曜日

安倍元首相が暗殺される:今後のグローバリスト対ナショナリストの戦いは?

安倍晋三元首相のご冥福を謹んでお祈り致します。
 

昨日、安倍晋三元首相が殺害された。犯人は海上自衛隊に3年程所属した人物で、その犯行の動機は政治的なものではないと自供しているようだ。しかし、安倍元首相の死去は、日本の民族主義者(ナショナリスト)に痛手となることは確かである。
 

犯人の供述に反して、犯行の政治的意味は大きい。現在ナショナリスト対グローバリストとの戦いが世界的に激しくなっている。このことはグローバリスト支配の国日本に周知されていないが、今、その戦いの天王山に差し掛かっていると言える。
 

安倍元首相の評価はいろいろあるだろうが、日本の現職政治家の中で民族主義者として最も重要な人物の一人である。勿論、自民党議員であるので、米国の圧力に屈する場面しか見ていないような気もするが、それらが苦渋の決断と見えたように記憶する。(補足1)
 

この評価は日本のナショナリストの一角にある評論家の馬渕睦夫元ウクライナ大使の言葉でもある。https://www.youtube.com/watch?v=6kb5LXWQI_4

 

米国のナショナリスト代表はトランプ元大統領であり、ユーラシア大陸で最大のナショナリストはロシアのプーチン大統領である。安倍元首相は、この二人と積極的に交渉していたことを思い出してもらいたい。
 

インドのモディ首相は、  安倍元首相の死去に対して今日9日をインド全土での追悼の日とするという、驚くべき発表を行った。安倍元首相が発表した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、インドにとっても中核的外交戦略であることに対するメッセージだと思う。https://www.afpbb.com/articles/-/3413685?pid=24683122

 

プーチン大統領は現在、米国のグローバリストの頂点であるバイデン政権によるロシア潰しの戦争の中にいる。トランプも現在、202116日の米国議会議事堂襲撃事件の責任追及の為の公聴会が開かれ、現政権グローバリストたちに叩かれている。民主党は捏造でも何でもして、トランプを起訴する可能性がある。

 

そして、日本でもナショナリストの重要人物が殺害され、米国グローバリストの言うことに従順な岸田政権を、内部からけん制する最大の存在が居なくなったと思う。

 

一つの重要な疑問は、警備が十分なされていたかどうかである。背後に銃器をもって構えた男をどうして発見できなかったのか? 一発目の発射音から致命傷を与えた二発目までの時間は相当あったと話す人がテレビに映し出されていた。当日の警備に対する十分な調査をしてほしい。
 

2)世界の大飢饉計画:

 

グローバリストの欧州における総本山となっている世界経済フォーラム(WEF)が、世界を政治支配するべくSDGSSustainable Development Goals;持続可能な開発目標) という看板の下で活動している。

 

その一つが世界各国に圧力を掛けて、二酸化炭素を削減させ、先進諸国の工業生産を激減させる活動である。最近では、窒素による環境破壊を防止するという口実で、世界の農業生産を激減させる活動も始めている。

 

農業からアンモニアや硝酸塩を追放して世界を飢饉に陥れ、人口を削減する計画のようだ。世界人口の半分が、人工的に合成された窒素肥料などに依存していることを考えれば、彼らの企みが如何に重大かが分かる。(補足2)https://lib.ruralnet.or.jp/nisio/?p=4009

 

グローバリストの諸戦略は、地球汚染の元凶は人間そのものだという考えに基づいている。つまり、自分達と協力者は例外にして、他の民族のその他大勢は、地球汚染の元凶だと考えて居るのだ。この件、今年418日の記事に書いた。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12738049227.html

 

日本のナショナリストで、最も信頼できるジャーナリストの一人となった沖縄出身の我那覇真子さんが、七夕の日にオランダから報告をしている。オランダ政府グローバリストらが、世界第二位の食料輸出国のオランダの農家から肥料を取り上げようとしているというのである。(補足3)

 

 

それに怒った(我那覇リポートでは”怯えた”と表現している)オランダの農家らが、激しくデモを行っているのである。そこへ米国のジャーナリストであるマイケル・ヨン氏も駆け付けて、この動画に出ている。https://www.youtube.com/watch?v=VuUX8lEN4lk
 

今後、何らかの形で我那覇さんの活動を支援できたらと思う。

(午前9時10分、編集、最初のセクションの最後の文章を追加)
 

補足:
 

1)米国オバマ大統領による慰安婦合意では安倍総理は批判の的になった。しかし、それは本音からの決断ではなく、グローバリストのオバマ米国大統領の圧力に屈した苦渋の決断だった筈である。

 

2)窒素肥料は、近代農業に欠かせない。世界人口が現在の80億人にまで増加可能となったのは、窒素肥料の人工的製造技術のお陰である。ヨーロッパの科学(化学)の中で発明されたからである。その最も重要な発明は、ハーバーとボッシュによる空気中窒素と水素からのアンモニア合成法の発明である。

 

3)世界の農産物輸出順位は米国、オランダ、ブラジル、ドイツなどとなっている。世界第二位のオランダからの昨年の食料輸出額は、日本円にして約14兆円に上る。最近ウクライナ戦争での食料輸出減で、世界飢饉の原因になると騒がれた二つの国だが、金額的にはオランダのそれよりかなり小さく、ロシアは世界19位、ウクライナは世界24位である。https://www.globalnote.jp/post-3280.html

2022年7月8日金曜日

国家の目的について

この問題を考える動機は、ウクライナ戦争のニュースに接したときの疑問から生じた。何故、多くの国民の命を無くし、美しい街と生活インフラを破壊してまで、ロシアと戦う必要があったのかがさっぱり分からなかったからである。(追補参照)

 

ロシアとウクライナの二か国の範囲では、幾ら考えても答えが出そうに無かった。そして得たのは、この戦争は米国の代理としてウクライナがロシア潰しのために戦っているという結論である。
 

それは米国のシカゴ大のミアシャイマー教授の考えであり、在米評論家の伊藤貫氏の考えであり、日本の馬渕睦夫氏の考えでもある。https://www.eui.eu/news-hub?id=john-mearsheimers-lecture-on-the-causes-and-consequences-of-the-ukraine-war  
 

記事中に引用されている動画:https://www.youtube.com/watch?v=qciVozNtCDM

 

ミアシャイマー教授は、仮にプーチンが最初にウクライナに侵攻したという事実を考慮しても尚、この戦争の責任は米国にあると明言している。ただ、伊藤貫氏によると、米国においても高名なミアシャイマー教授の意見はマスコミには完全に無視されているようだ。(補足1)

 

国家を形成する目的について:

 

国家の主なる目的は、① 現在の国民の命と生活を守ることである。領土の確保は、そのための手段である(領土の確保は目的の二番目)。

 

今回のウクライナ戦争にその見方を適用すれば、ロシア人が住民の大半を占めるドネツクやルガンスクを独立させるべきだった。 そうすれば、プーチンも戦争を始める理由など存在しないということになる。
 

つまり、今回のウクライナ戦争は、為政者のエゴイズムが米国の世界戦略に利用された結果である。この件についての基本的な理解は213日の記事に書いた通りである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html
 

そして、今回の戦争が日本に与える影響について、特に中国問題との関連を中心に書いたのが2月24日の記事である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12728559999.html
 

国家の目的の第二は、② (自分達国民の)社会を守ることである。それは、領土とその上にあるインフラを含めた国家の機関、多くの社会的機関からなる。株式会社もその中に含まれる。(補足2)
 

主なる目的と二番目の目的の順番を考えてほしい。入れ替わることは絶対にあり得ない。ただ、国民は一人ではないので、最大多数の最大幸福という別次元の原則との折り合いから、職業的軍人による国防軍を組織することになる。

 

今回のウクライナ戦争でのロシアの意図はロシアにしかわからない。ミンスク合意を完全実施した後にロシアが訳なく進攻してきたときには、戦うのが本来の政治と外交のプロセスだろう。

 

国家の目的の第三は、➂ 自分たちの文化と伝統を守ることだろう。勿論、文化と伝統は時代の流れとともに日々変化してゆくので、何でも継続することを意味しない。文化の変化は、自然に自分たちの裁量で行うことを意味する。

 

に生活を守ると書いたが、それは「より豊かな生活を実現する」という風に、”攻めの表現”に替えることが可能である。同じ趣旨で書き替えると、②は「社会をより発展させる」となり、➂は「新しい伝統となる創造的な活動を進める」などとなるだろう。


この攻めの表現を含めて、上記①~➂は、西欧文化が辿り着いた民主国家の目的であると私は考えている。

 

大事な点は、現実の政治と外交は、その目的に立ち戻って、つまり原点思考を採用して、その方策を自分たちで考えることである。そのプロセスが、意図を以て外国の干渉によって歪められると、やがて国の崩壊に繋がる。現在(特に岸田政権)の日本の姿は、正にそのような情況にある様に見える。

 

この原点に戻って、20世紀後半からの政治と経済のグローバル化を見ると異常であり、背後に何らかの勢力による隠れた企みがあることに気付く筈である。例えば、移民を受け入れるべきだという考え、更に、資本の完全自由化など、上記国家の目的という観点からは簡単には実行できないことである。

 

追補: 最初の数行の文章は、ゼレンスキー大統領によるミンスク合意無視がプーチンの進攻を招きいれたという理解、そして、2月13日の記事におけるウクライナ戦争の理解を前提にしています。本文における国家は、国家主権とその諸機関であり、民主制を前提としています。尚、以上はオリジナルな考えです。

 

補足:


1) 2月27日のブログ記事に、及川幸久氏のyoutube動画からの引用で、米国の元財務長官顧問のPaul Craig Roberts博士の言葉を紹介している。

https://usawatchdog.com/no-shooting-war-in-ukraine-dr-paul-craig-roberts/

その中でRoberts博士は、「オバマーバイデン政権は、明らかにその地域で戦争を引き起こそうとしている」と書いている。その一つの証拠として、ウクライナのゼレンスキー大統領によるミンスク合意実行を、米国が妨害したことが語られている。

 

2) 前回記事で尖閣問題を議論した。尖閣など日中平和条約の時に中国領と明記すべきだと書いた。その目的は沖縄と小笠原を日本領と書き込むためである。 尖閣や沖縄の領有権は、日本は返還されたとのんきに構えているが、中国はそのようには考えていない。その理由は、沖縄返還協定は日米間の条約であり、あの第二次大戦の戦勝国全てとの条約ではないからである。

勿論、条約は本質的に野生の原理で動く国際社会においては、紙切れである。しかし、国際社会が、その紙切れにより辛うじて完全野生から、インチキながら公正を演じているのである。

 

(投稿:7/7午前6時)

2022年7月5日火曜日

尖閣及び沖縄領有権問題:日中平和条約条文に尖閣は中国、沖縄小笠原は日本と明記すべきだったのでは?

及川幸久氏が72日のyoutube動画で:

 

 

明治学院大の鶴田順氏による米国のThe Diplomat421日の記事「日本は尖閣の防衛に備えよ」(補足1)を紹介する形で、日本は自衛隊を出動させて尖閣防衛できない法的環境にあると主張している。つまり、自衛隊法改正或いは新法制定が必要だというのである。

https://thediplomat.com/2022/04/japan-needs-to-prepare-for-a-possible-senkaku-islands-crisis/

 

(紹介された記事の内容)

 

中国は1992年に、中華人民共和国領海及び接続水域に関する法律第二条第二項に、尖閣諸島を中国領土と明記している。そして、2012年尖閣諸島を囲む境界線を設定し、その後日本漁船を尖閣海域から排除する行動を、海警局(最近軍隊化した)がとっている。

 

中国の軍隊が尖閣諸島に上陸しただけの場合、現在の法律では自衛隊は防衛行動としての戦いが出来ない。何故なら、政府は自衛隊の防衛行動が”外部からの日本に対する組織的かつ計画的な軍隊の使用”があった場合のみ可能であると自衛隊法を解釈しているからである。

 

したがって、中国人が島に上陸することは明らかに外部の力による日本の領土の完全性の侵害であるとしても、自衛隊は日本の主権を保護することを目的とした行動を起こせないだろう。対応は警察組織の法的措置でとるしかない。現在の法律の下でできることは、有効性の点で制限されている。

 

尖閣防衛には、自衛隊に”外部からの日本に対する組織的かつ計画的な軍隊の使用”とはまったく同じではない侵害に対応することを許可しなければならない。自衛隊法を改正するか、自衛隊による新たな活動を可能にするための新法を制定する必要がある。

 

この解説だが、私には訳が分からない。ここで自衛隊法76条本文とその第一項をまとめて書くと、以下の様になる。「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態には、国会の承認を得て、内閣総理大臣が出動を命じることができる」。

 

つまり、鶴田氏の記事に書かれている組織的とか計画的などの言葉が無い。軍隊が武器を持って自国の領土内に侵入する行為を、武力攻撃と見做さないで、一体何を武力攻撃と見做すのか。自衛隊法は国内法であり、自国の言葉を自分風に解釈すればよい。

 

問題は、日本政府に尖閣が自国領土であり、それを国家として防衛する必要があると信じ、それにふさわしい行動を執る覚悟があるかどうかである。そこで、その動画に自衛隊法76条とその第一項をまとめた上記文章をコメント欄に投じた。

 

及川氏の解説では紹介されていないが、鶴田氏の記事には、以下のようことも書かれている。:

 

政治家は危機の瞬間に決定を下さなければならない。内閣の政治家は、防衛作戦の命令につながるプロセスをリハーサルする必要がある。どのような状況が危機を構成するかを事前に正確に定義することも重要である。

 

2)日本政府に防衛の意志がなければ、議論しても無駄である。

 

鶴田氏の記事以外の話だが、この動画の中で及川氏は①「尖閣は中国により台湾侵攻の基地として今にも侵略されそうだ」と海外メディアが報じているということと、②202010月に来日した際、

中国外相の王毅は、菅総理と茂木外相の前で、「尖閣は中国の領土であるので、領海侵犯しないようにしてほしい」と言ったが、総理と外相はその場では何も言えなかったことを紹介している。

 

この②の件、本ブログでも議論している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12640754195.html

この記事を読んでもらえば解るように、自民党の議員たちには防衛問題など口にはするが、国土防衛の意志など全く無い。

 

ここで現在の尖閣周辺の情況を思い出してほしい。中国は、尖閣領海への日本漁船の侵入を、中国領海の侵犯と見做して、海警局の船が追い払っている。

 

従って、日本国に尖閣を防衛する意思があるのなら、現状を自衛隊法第76条の「外部(中国)からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している場合」とみて、既に自衛隊に防衛出動を命じている筈である。現行法令は完備している。その様な行動が取れないのは、日本政府に尖閣が自国領土であるという確信と、それを防衛する確固とした意志がないからである。

 

そこで一番重要なポイントは、”日本に尖閣領有権があるかどう”である。私自身は、日本には現状尖閣領有権など無いと考えて居る。つまり、第二次大戦で失ったのであり、関係諸国との平和条約で、領有権を回復していないのである。

 

ところで、日本の国力が中国を圧倒していた1972年、中華人民共和国との国交樹立を決定した共同声明を発表し、1978年に日中平和友好条約を締結した。その際、領土の範囲について明確にすることが出来た筈である。それが出来なかったのなら、何故、台湾を捨てて共産中国と国交樹立したのか?

 

その時、当時の田中角栄総理には、尖閣などどうでもよい小さな存在であったと思う。しかしそれを放棄し、沖縄や小笠原などの島々を日本の領土と定めて条文に書けなかったのではないのか? つまり、米国の了解が得られなかったのではないかと想像する。

 

私の想像は、それより約20年前の鳩山一郎内閣のとき二島返還で日ソ平和条約の締結直前で、ダレス米国務長官が「日米安保を止めるぞ」と脅した時の景色と相似的である。

 

なお、尖閣の領有権問題は何度も議論しているが、結論は「領有権は日本にあるとは言えない」である。下に再掲するのは、その点を指摘した2016年のブログ記事である。以下に章を改めて再録し、紹介する。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515268.html

 

補足:

 

1)及川氏は論文と言っているが、そのような体裁を取っていない単なる新聞記事である。

 

(13:00; タイトルを書き替えました。;20;30編集あり)

 

ーーーー以下再録部分ーーーー

 

尖閣及び沖縄領有権問題を考える:20160810()

 

尖閣問題:静かになれば問題を放置し、騒がしくなればおろおろする日本政府

 

尖閣諸島周辺での中国漁船風の船200隻と中国公船が領海侵犯を繰り返し、おおきな問題になっている。この問題について、多くの解説がyoutubeなどにアップロードされているが、ほとんど日本の立場や中国の脅威を強調するのみで、何の解決にも寄与するものではない。丁度、戦争前に多くのマスコミが鬼畜米英と騒ぎ立てて、ますます戦争を意識する空気を醸成したのと同様である。日本は何十年経っても何の進歩もしていない。 

 

重要な問題は何事でも、原点からスタートして考えることが肝心である。宙に存在する「中国は強引に国際法を無視して海上進出をしてくる」という点を仮の原点とし、そこから議論を始めてしまえば、議論の幅が限られ問題は解決しないだろう。 

 

 注釈: 以下に、素人の私が大胆なことを書きますが、根拠をあげて間違いを指摘してくださればと思います。本当は、尖閣も沖縄も国際法的に(論理的に)100%日本国が領有権を持っていると確認したいので、間違っていれば良いと思っています。 (2022/7/5追記:私は現在、このようには考えて居ない。)

 

§1: 

原点から思考する場合には、先ず、「尖閣は日本の領土であると、大威張りで言えるのか?」という問題を、もう一度考える事になる。そう考えると、第二次世界大戦に戻らなければならない。つまり、戦争に負けた日本は、連合国に沖縄などの南方の島を奪われたのである。つまり、それ以前に日本が鰹節を釣魚島で作っていたと言う事実は、領有権を考える上での原点ではないのである。 

 

沖縄が米国(連合国)の占領状態から日本に返還されたのは、1972年である。この際、日本と米国は「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」に1971/6/17に調印し、1972/5/15に発効した。(ウィキペディアより)しかし、その際に返還された島の中に尖閣諸島の名前を明記するように日本側は要求したが、米国は尖閣諸島の施政権は返還したが領有権については態度を明確にしていない。ニクソン政権は中国に配慮したと下の記事には書かれている。緯度経度で線を引いて示しているという人はいるだろうが、それは尖閣諸島の存在など頭になかったという米側の言い訳や、米国だけの一存で日本に返せる島々ではないという反論があり得る。

 http://jp.wsj.com/layout/set/article/content/view/full/163012

 

つまり、領有権については日本、中国、台湾で決めてくださいというのが米国の基本的姿勢である。また、中国は尖閣諸島の他に、沖縄についても領有権を主張しそうな雰囲気である。私は素人なので、自信を持って書けないのだが、中国側は沖縄返還条約にそれらの島々の領有権を決める能力はないと考えているのだろう。その議論を始めるには、サンフランシスコ講和条約の第3条に戻らなければならない。 

 

サンフランシスコ講和条約(第三条): 日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

 

講和条約締結後、沖縄を支配していたのは連合国の承認を得た米国(上記3条)である。しかし、返還協定の締結は日本と米国の二国間で行われたのであり、他の連合国とは合意していないと思うのである。つまり、サンフランシスコ講和条約三条で米国が施政権を得たのであり、領有権まで得た訳ではない。(補足1)従って日本に返還されたのは施政権である。沖縄返還協定にはreversion(返還)という言葉が用いられており、米国からは領有権についても返還されたように思うが、それは連合国全体との協定ではない。 

 

以上のような事情を考えれば、100%一方的に中国が難癖をつけてきているとは言えないのではないのか。政府はそのような事実を国民に告げずに、反中親米の雰囲気作りに尖閣問題を利用しているのではないのか? もし、上記の解釈が間違っていないのなら、尖閣諸島よりも沖縄問題の方が重要であり、深刻化する前に考えておくべきである。まさに“胸襟を開いて”交渉できない状況下では、そのような大きな問題を、しかも原点から交渉して日中が妥結することは不可能だろう(補足2)。 

 

この件と関連して、2014年に中国漁船が大挙して小笠原諸島に現れ、サンゴを密漁したことがあった。これは、小笠原諸島の領有権についても未だ未確定な部分があると、中国は暗に主張しているのではないだろうか。サンフランシスコ講和条約3条との関係で、沖縄と小笠原は同じような地位にあるからである。 

 

§2: 

この一ヶ月ほど、中国漁船と公船による尖閣諸島周辺での領海侵犯は、非常に危険なレベルにあると思う。ある人はこの15日に中国民兵が尖閣に上陸する可能性があると指摘している。この件、一昨年の秋に行われた尖閣問題についての合意と関係があると思う。この時点で私は、尖閣は中国に盗られるだろうと、ブログに書いた。 http://rcbyspinmanipulation.blogspot.jp/2014/11/blog-post_8.html

 

それは、日本と中国双方は「尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識する」との合意である。この合意は、安倍総理と習近平主席との会談を実現するために日本側が尖閣問題について一歩譲歩した印象を与えた。その後すぐに、インドネシアのジャカルタで25分程の会談が実現した。

 

この合意により日本政府は、尖閣諸島をめぐる領有権問題の存在を事実上認める道を開いたのである。当時日本外務省幹部は、異なる見解は「緊張状態が生じている」にかかっているとして、尖閣の領有権問題をめぐるものではないと説明した。日本の外交官などは、この種の誤魔化しを頻繁にする。自分がその問題を担当する間何もなければ、それで自分の経歴に傷がつかないという浅ましい根性が原因だろう。この件、佐藤優氏の記事が詳しい。

 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41113

 

この問題の解決には、すでに§1で書いたように米国の影に影響を受けることなく原点から考える必要があると思う。問題の本質が見えて来れば、解決の方法はある筈である。

 

補足:

 

1)サンフランシスコ講和条約において沖縄に対する潜在的領有権が日本にあることが確認されたという意見もある。しかし、明確にはわからない。

http://blog.goo.ne.jp/jiritsukokka/c/b76a28892b58e4049e4208c73f299ada

2)その交渉の落とし所は、おそらく尖閣は中国領と日本は認め、それ以外の日本が実効支配している沖縄とその周辺には、中国は一切権利を主張しないというところである。しかし、その合意を条約の形で確認できるのは、安倍総理ではないだろう。(2022/7/5時点での考え:現在は、この”落としどころ”にも中国は同意しないだろう。)

 

2022年7月2日土曜日

ロシアによる日本攻撃の始まりなのか?サハリンー2の接収

1)サハリン2のロシア国有化は予想されていた

 

ロシアの敵対国となった日本に対し、その深刻さを知らしむる事態がロシアによりもたらされた。プーチン大統領がサハリン2の運営会社の資産を国家へ無償譲渡する様に命じる大統領令に署名したのである。(補足1)https://news.yahoo.co.jp/articles/c0b3a8fc90961b6e20ecd8cb3f355d37810f128f

 

 

日本の三菱商事、三井物産、英国のシェル(shell global)がそれぞれ1012.527.5%出資し、ロシアの国有ガス会社のガスプロム社と共同で設立した石油・LNG複合事業会社である。サハリン2の天然ガスの60%は日本に輸出されているようだ。https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/bg/natural-gas-group/project/sakhalin-2/

 

大統領令には、ロシア側の条件に同意する外国企業は1カ月以内に申告すれば新会社で現在と同じ出資比率を維持できると書かれているらしい。しかし、New York Timesが報じるところによると、シェル石油は2月に撤退を決めており、既にガスプロム出資事業の価値16億ドルを損金計上したという。(原文:Shell has already written off $1.6 billion of the value of Sakhalin-2.https://www.nytimes.com/2022/07/01/business/putin-sakhalin-natural-gas.html

 

日本商工会議所会頭の方は、「信じられない。契約によって投資したものを何の理由もなく国有化するようなことをもし本当にやるのであれば、将来、ロシアに投資をしようという民間企業はほとんどいなくなってしまう」とコメントしていた。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220701/k10013698441000.html

 

「何の理由もなく」という言葉は、ウクライナとロシアの戦争に日本は無関係だと思っていたことになる。公人の言葉とは思えない。
 

中日新聞によると、岸田首相は1日、「大統領令に基づき、正式にどんな対応を求めてくるか確認しないうちに、何か申し上げることはできない」と述べたという。首相は、待っていればロシアからの要求が届き、それから国内の業者と対策を練るらしい。しかしプーチンの考えは、何も言ってこなければ無償譲渡を強制することだろう。

 

岸田首相は、上記のような説明で国民が納得すると思っているのだろうか? 馬鹿にされている国民は、本当に馬鹿なのだろうか?

 

中日新聞の一面では、ロシア企業に売却することになるととれるように書いている。しかし、二面には専門家の「今回の決定は、中国などの新たな出資者を確保した上で判断された可能性がある」という意見を紹介している。https://www.chunichi.co.jp/article/499622 & https://www.chunichi.co.jp/article/499927

 

また、同じ紙面の直ぐ近くの記事に、日本国の年金資金を管理しているGPIFは、ロシア関連資産(帳簿価格2000億円)の査定額をゼロにしたと報じている。つまり、他人のお金を管理する人たちは英国シェルと同様に早々と損金処理し、自分の資金に未練を持つ三菱商事と三井物産は、最悪の事態(ロシア国による接収)は免れられると期待していたのだろう。
 

日本の二つの商社の損害は、このままでは相当大きくなるだろう。それに、この冬の電力事情が非常に深刻になることが心配される。岸田は正直に現状を国民に知らせるべきだ。


 

2)日本の将来

 

今回のウクライナでの戦争は、ロシアと米国の代理であるウクライナとの戦争である。そのことは、何度も書いてきた。これまで数万名のウクライナ市民の命が失われたことは、非常に気の毒である。戦場と戦争遂行を請け合ったユダヤ人大統領を出来れば弾劾すべきだったのだが、それが出来なかったウクライナ国民がその報いを受けたということなのだろう。(補足2)

 

今回のロシア制裁の先頭を喜んで請け持った岸田総理を罷免できなければ、日本国民も似たような報いを受ける可能性が全くゼロではないだろう。サハリンー2の国有化は、ウクライナに続いて悲劇の主人公になりますか?というロシアの脅しなのだろう。
 

ユダヤ人が多く含まれる米国のネオコン指導部にとって、ウクライナなどどうなっても構わないので、消耗して無くなるまで対ロシアの武器として使うだろう。それと同様に、日本も米国ネオコン指導部にとっては、どうなっても良い国と国民である。追随する英国も、ほとんど同じ考えだろう。
 

日本は、あの戦争で真珠湾を奇襲をした上、消耗しながらも非常にしぶとく米国軍人の命を奪った憎き相手である。そして、原爆投下という人類史に刻まれている米国の犯罪の証人である。そんな日本など、ロシアや中国と戦って消えてほしいと思っているだろう。

 

伊藤貫氏が国務省の役人たちから直接聞いたという「日本には永遠に核武装させない」という言葉を噛みしめるべきだ。アメリカは一貫して日本に対して侮蔑的であったことを、外務省のアメリカンスクールの人たちや自民党宏池会の人達は何故気付かないのだろうか?

 

補足:

 

1)サハリンー1は、サハリン北東端に鉱床を持つ。この会社にはサハリン石油ガス開発株式会社(SODECO;ロシア、米国、日本の石油資源開発が出資)が30%出資している。日本の会社は関節的に4.59%出資していることになる。未だ、国有化の話は出ていないようだ。

 

2)20世紀後半以降の国際社会では、国際法は平時の理想論である。従って、相手国が国際法違反をして戦争を仕掛けてきたとしても、こちら側の首脳に戦争発生の責任が無かったことにはならない。つまり、日本の政権も、非武装で戦争を仕掛けるつもりはありませんと宣言しても、戦争になった場合には国民に対してその責任を取らなければならない。

 

(補足2は、10:45に追加;12:45編集あり)