2018年6月29日金曜日

文学から考えてみよう「日本属国論」について:

文学から考えてみよう「日本属国論」という題で、内閣官房参与の藤井聡京大教授の話がyoutube上にアップされていた。週刊ラジオ「表現者」(補足1)と題する京都放送のラジオ番組から切り取ったものらしい。それを聞いた上で、そこにコメントを書き込んだ。
https://www.youtube.com/watch?v=xDDL2zTrpQw

そのyoutube動画で藤井氏は、戦後日本は米国の属国であり、言論人や知識人はそれをテレビなどの大手メディアで明確に指摘することを自己保身のために躊躇っていると指摘している。その一方で、文学者がその戦後日本の姿を小説など文学の形で比喩的に指摘しているという。その話は大変面白く、非常に参考になった。

そのような文学の例として紹介しているのが、大岡昇平の小説「俘虜記」である。著者自身も、現在(発表当時)日本の政治状況を意識して書いたと、あとがきに記しているという。

捕虜には自由も目的もなく、従って未来のないただ生きるだけの生活が、一定の食料の提供を受けることで保障されている。(補足2)その姿が戦後日本という国家に似ているというのである。

その中に、日本人捕虜のなかで問題が起こらないように、米兵の手先となって監視する様に指名された捕虜が、米兵の”虎の威”を借る様子が書かれているらしい。それを藤井氏は面白く喋っている。兎に角読んでみようと思う。その次に短く紹介しているのが、尾崎豊の「BOW」である。藤井氏は、そのような社会の鬱屈の中で生まれ育った若者の心情を歌っているかのように紹介している。

話は面白いのだが、藤井氏はこの大岡昇平の小説の内容と現在の日本政府との接点については十分に話していない。藤井氏は現在内閣官房参与である。その立場を考えれば、この放送の内容は「画竜点睛を欠く」ものである。

現在、日本政府はどのように、米国の俘虜である日本国の取り仕切り役(牢名主的役)をしているのか?北朝鮮問題を例にすれば、それは日本政府の圧力一辺倒の言葉と関係があるのか無いのか? その日本政府の姿を内閣官房参与の藤井氏はどう考えているのか。自分も虎の威を借りる狐のしっぽで良いと考えているのか。

また、尾崎豊の歌(補足3)については誤解をしているのか、ふさわしくない紹介だとおもった。以上のような感想を持ったので、二つの短いコメントをそのyoutube動画に書いた。

①大岡昇平の俘虜記:藤井さん、捕虜収容所で米兵の手先になっている男とは誰のことか言わないと。55年体制の自民党、中でも長州族です。吉田茂がその最初の牢名主(否、収容所名主)ですな。その系譜の末端が、藤井さんが仕えている人です。確かに出世されています。とにかく、大変面白い話でした。

②書き忘れたので補足します。尾崎豊のバウですが、この歌詞は米国属国論の文学とは全く違います。要するに、社会の掟にたいする反抗です。我々社会に生きることに慣れた”大人”とは、つまり社会(或いは人間文化)の家畜です。家畜になりきれない野生を残した青年の叫びがバウ(Bow)です。

補足:

1)藤井聡氏が表現者という西部邁さんの雑誌を引き継いだと聞いていたのだが、その力があるのか全く疑問だった。雑誌の名前がクライテリオン(criterion; 標準、基準)というらしい。読んだことはない。
2)このyoutube動画で、藤井氏が捕虜迫害を禁じている法律のようなものと言っているのは、ハーグ陸戦条約のことだろう。
3)尾崎豊のバウの歌詞を少し引用する。
否が応でも社会に飲み込まれてしまうものさ 若さに任せ跳んでくドンキホーテ達は 世の中のモラルを一つ 飲み込んだだけで 一つ崩れ 一つ崩れ 全てこわれてしまうものなのさ 
あいつは言っていたね サラリーマンにはなりたかねえ 朝夕のラッシュアワー 酒びたりの中年達 ちっぽけな金にしがみつき ぶら下がっているだけじゃNO NO (以下略)http://www.kasi-time.com/item-13426.html

2018年6月23日土曜日

米朝首脳会談は成功だったのだろうか?(II)

1) 前回の記事では、失敗だったと書いた。その評価が正しいことが証明されつつあるのではないだろうか。http://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2018/06/blog-post_15.html

トランプの対北朝鮮外交は、中朝関係を大きく前進させた。その責任の一端は安倍外交にもある。(補足1)その結果最近中国は、対北朝鮮経済制裁を緩めつつあると報道されている。金正恩による二度目の訪中以降、中朝国境を跨いだ密輸が活発化しているというのである。中朝国境は1400kmあるので、密輸の穴は塞ぐ強い意図が無くなれば自然と拡大するようだ。中朝関係は緊密になり、金正恩も習近平の懐から出る勇気はないだろう。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180621-00010001-asiap-kr

その一方、トランプ(Donald Trump)米大統領は22日、北朝鮮の核兵器は米国にとって「異常で並外れた脅威」だと指摘し、金正恩政権に対する制裁を1年延長すると米議会に伝えた。それを報じた記事では、トランプ大統領の言葉の調子が、米朝会談の翌日にツウィッターの「もはや北朝鮮の核の脅威はない」というコメントとは大きく異なっていると書いている。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180623-00000017-jij_afp-int

更にロシアと韓国の動きも気になる。強かな文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領はロシアを訪問し、プーチン露大統領とモスクワのクレムリンで会談し、北朝鮮を加えた3カ国の経済協力計画を将来的に検討していくことで合意した。この状況は、時代背景や軍事的技術などは大きくことなるものの、日清戦争が始まる前の朝鮮半島を巡る国際情況とそっくりである。

19世紀から20世紀前半の歴史の進行とはことなり、朝鮮半島が中国またはロシア、あるいは中国とロシアの両方と密接な関係となり、日本は孤立無援の状況に追い込まれる危険性大である。

日本はこの国際環境の中でどのように生きるのか、米国との同盟関係をこれまで以上に深めるのか? 深めるとして、それは孤立主義が高まりつつある米国を相手に可能なのか? 可能だったとしても、それは米国の属国として中国やロシア向けの盾として使われるだけではないのか? 

朝鮮半島問題は、日本にとってそのような大問題である。それを拉致問題に矮小化するような政権なら、一日も早く退陣すべきである。拉致問題はなんども書いてきたが、大きな部分は日本政府の失政の結果として、終わっている。http://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2018/04/blog-post_48.html

残った拉致被害者奪回という課題は、この東アジアでの日本の戦略的姿勢を考える中で解決すべきである。単独で解決を急ぐのは、国の将来を誤り1億3000万人の日本国民に苦難の将来を強いることになりかねない。

2)鍵は日露問題かもしれない。ロシアと中国は、反米という共通項で括られているものの、長い目で見た場合同盟関係を長く維持できないだろう。中露の長い国境線とそれを跨いだ大きな不均衡を、ロシアのトップは常に意識している筈だ。そこにテコを入れられるのは千島樺太での日露の経済協力から始まる日露連携にあると思っていると思う。

日露関係を深化する為には、日本はプーチンに匹敵する知性と判断力を持った政治家を必要としている。ロシアのプーチン大統領は、最近訪問した安倍総理と会談する際、約束の時間を45分遅れて現れた。それは、日本をロシアと本当の意味で連携させることができるレベルの政治家ではないと評価していることを示している。

朝鮮半島は自主独立した国家として統一したいだろう。そのためには、北朝鮮や韓国が中国一辺倒であるとの印象を与えるのは良くないと文在寅が考えたと想像する。それが今回の訪露の目的だろう。あるいは問題はもっと深刻かもしれない。つまり、北朝鮮が中国のバックアップで苦境を脱したため、北朝鮮に韓国が飲み込まれる形での半島統一が平和裡ではなく、もっと急激に起こる可能性がある。それを考えて訪露したのかもしれない。 米国による夏の米韓軍事演習の取りやめ決定が、韓国とどのような打ち合わせの後に決められたのかわからない。このまま韓国から米軍が引き上げるなどという手荒いことを米国はしないだろう。このような歴史の大きな、そして急激な流れに対して、テレビは沈黙している。(補足2) 政治、政治評論、マスコミ報道など全てにおいて、日本は貧困国家である。

(6月24日午前5時改訂)

補足:
1)安倍政権は米国のトランプ政権の前面にたって、その北朝鮮制裁に協力した。それは全くの愚行であった。日本がすべきことは、北朝鮮の核に対抗すべく、独自核武装の方向で動くことであったと思う。それにより、中国など近隣大国も北朝鮮の核廃絶に動いただろう。
2)現時点では、北朝鮮は中国の支援で安定し、核保持国として存在する。その核廃絶が不確かな状況では、韓国は消滅の危機にあることは確かである。改訂前の文章では統一朝鮮という視点から文在寅を評価したが、韓国の安定という視点から見た場合、オリンピックへの北朝鮮選手団招待を起点とする今回の流れを作った文在寅韓国大統領は”大うつけ”と評価すべきなのかもしれない。 

(本文章は日本の一有権者である素人がメモとして書いたものです。)

2018年6月22日金曜日

文明発展の結果人間は再び野生化してヒトとなる

1)「文明」を広辞苑(第二版)で引くと、①文教が進んで人知の明らかなこと;②人知が進んで開けた世の中、特に生産手段の発達によって、生活水準が上がり、人権尊重と機会均等などの原則が認められているような社会とある。グーグル検索の結果も考慮すると、文明とは人の知識の増大と経済の発展により、個人が住みやすくなった社会の状態を意味する。(補足1)

それらを元に文明発展のプロセスを考えると、①「科学技術の発展」に伴い、②「生活水準の上昇」が起こる。また、それに伴って政治制度が、③「個人の独立性を尊重」する方向に変化するだろう。この「個人の独立性の尊重」は、広辞苑の記述にある“人権尊重と機会均等などの原則の尊重”を言い換えただけである。

しかし、この原因①、効果②、結果③の鎖が、螺旋を描く様に同じ方向(上昇という言葉が用いられる)に進んできたのは、世界大戦の時代位までかもしれないと思うのである。現在、その文明進展の方向が横向きから逆向きに変化し、あるいはこの螺旋構造が崩壊する傾向にあると考えるのである。

その理由であるが、この螺旋構造を上に向かわせるには全体として、人が人と協力する社会を形成することが必要であり、そのためには人と人の連携を善とする文化的裏付けが必須であり、その文化は人々が貧しい時代に作られたと考えるからである。つまり、人は「”貧困という酸素”の存在する“水”の中でしか、“人間”で在り得ないのではないか?」とおもう。(補足2)

人間とはホモ・サピエンスという生き物が、社会をつくり社会に調教されて出来上がった“人間文化の家畜”である。人間活動の“しんどい”部分を全て機械が負担するようになった現代、人は人の協力を得なければ生きられないという“しがらみ”から解放され、ホモ・サピエンスという野生の動物に戻りつつあるのではないか。つまり、社会も人の人工(artificial) から自然(natural)へ逆戻りするのである。(補足3)

2)個人の独立性を尊重するという文化の側面を考える。これに関する象徴的な出来事は、経済活動(文明)の発展により、家族内やコミュニティー内において人間関係と切り離せない形で存在した共同作業等の活動が、パブリックな経済空間に移動したことである。

家庭のレベルでは家事が、法人のサービスに置き換わることが可能となった。地域での交通手段や農作物の融通が、法人や公共団体のバスやタクシーサービス、コンビニなどの商サービスとなった。労働力を互いに融通する地域社会のシステム(例えば、結(ゆい)など)も、派遣労働力で行われるようになる。その結果、家庭や地域社会が崩壊の方向にあるのは当然の帰結である。

つまり、安易に「個人の独立性を尊重する」というが、その考えは家庭や地域社会という人間文化の基礎を解体するナイフともなり得るのである。そのナイフは人が人を支配する中世的暗黒の世界を砕く武器となっただろうが、それは人と人の関係の重要な部分も破壊する凶器ともなる。そのことを分かりやすく指摘したのはニーチェなのかもしれない。(補足4)

人間社会が豊かになった現代、生きるためには人同士の連携はそれほど必須と言えなくなりつつある。パソコンの前に座って仕事をし、その労働の対価でもって、アマゾンから配達されたサービスで生きることができる人も出てきている。人は、協力して文化を築き、それに基づいて社会を作って豊かになってきた。その豊かさは、個人の独立性を尊重する文化と、それが具現化された社会へと人を導いた。そこでは、「独立した人」という訳のわからない他人が闊歩しており、そのような人との協力は疲れるのである。(補足5)

竜頭蛇尾のような内容になったが、一応文章を閉じる。本来、野生化した人が増加した結果、社会や国家はどうなるのか?さらに、上記現象が大々的に国際政治にまで及んでいることなどを書くべきである。国際社会も人間的社会から野生的世界に変化しつつあるのではないかと思うからである。

補足:

1)グーグルで検索すると、“1。世の中が進み、精神的・物質的に生活が豊かである状態。2。特に「文化」と対立させて、技術や実用に重点がある、物質的な文化。”との説明(定義)がある。それらを参照して、本文の定義となった。
2)「ヒトにとって極度の貧困は命を失う原因だが、その中で育った動物のヒトは貧困に順応する方法として”人間”になった」と思う。丁度、酸素という危険なものを取り込んで生命が発達したのと似ているように思う。
3)Artificialなものを排斥する方向にある現代社会では、人間的な愛は崩壊して、他人は自分の利益のために存在するというタイプの自然の愛しか存在しなくなる。社会的善なる人と人の繋がりは、多くは人工的な人間愛(人工的な人間愛はエリックフロムのthe art of lovingを意識して用いた;6/23/5:00追加)により作られる。その結果、社会における人の繋がりは破壊の方向に進む。
4)この分野では全くの素人であるが、以下独断で書く。このナイフを世界にばら撒いたのは、一神教特にキリスト教である。教会は、人と人の繋がりを破壊し、神と人の繋がりを強固にしようとした。神が死んだとニーチェが“気付いた”時、当然今後キリスト教は社会を破壊するとの考えに到達する。「アンチクリスト」がニーチェのキリスト教に対するそのような評価を書いていると思う。
なお、「神は死んだ」は「神など存在しない」と同じではない。神は死んだのなら、その昔神は生きていた筈だからである。つまり、キリスト教も古代の王族の支配に対するアンチテーゼとして出てきたのなら、その時代には神は確かに生きていたのだろう。
5)“引きこもり”なども、この人間文化及びその反映としての社会の変化が引き起こした効果の一つである。「独立した個人」との付き合うのは益々”しんどく”なるので、病的にそれを忌避する人間が増加したのだろう。
なお、「神は死んだ」は「神など存在しない」は同じではない。神は死んだのなら、その昔神は生きていた筈だからである。つまり、キリスト教も暗黒の時代の支配者の論理のアンチテーゼとして出てきたのなら、その役割を果たす時代には神は確かに生きていた。

2018年6月19日火曜日

米国外交の中心的テーマは中国の抑え込みだろう

1)ダイナミックなトランプ外交

①米朝首脳会談では、北朝鮮の非核化と体制保証の話し合いを行い、合意文書に署名した。その会場のあるシンガポールに。北朝鮮の金正恩は中国の飛行機で乗りつけた。その内容には、北朝鮮の非核化プロセスに具体性がないなど、大抵の人が予想したよりも北朝鮮に対して柔軟な内容だった。

その米朝会談について、日本政府は落胆したという意見が多かったし、米国本土でも民主党系の勢力から批判されたようである。https://jp.sputniknews.com/politics/201806134985617/

②トランプ米国大統領は6月18日米国に新たに「宇宙軍」の創立を指示した。「国家宇宙会議」で米国が宇宙で優位に立つ必要があると語ったという。“優位に立つ”という表現は、相手を意識するときに用いるのだが、その相手は明らかに中国だろう。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180619-00010000-sorae_jp-sctch

中国は、月面基地建設を国家プロジェクトとして検討している。嫦娥計画としてウィキペディアにも紹介されている。米国は月旅行や火星移住計画を民間企業が中心に計画しているようだが、このままでは中国の後塵を拝することになるだろう。中国の計画はネットにも多く書かれている。https://moonstation.jp/blog/lunarexp/china-discussing-unmanned-lunar-base

③最近、貿易不均衡を理由に中国からの製品にかなりの関税をかけることを命令した。中国の報復関税に対しても、更に関税品目を増加させるなどの対抗策を講じている。https://jp.reuters.com/article/trump-china-additional-tariff-idJPKBN1JF007

これでは貿易戦争になり、米国経済にもマイナスであると考えられている。

これら①ー③の米国の動きは、単独でみるのではなく全体としてみるべきだろう。そうすると、米国の中国の軍事拡大や勢力拡大に対する警戒心が見えてくるのではないだろうか。

つまり、今回のトランプの保護貿易的な動きは、各国との貿易不均衡を是正するという凡ゆる国を対象にする話だが、それだけではないような気がする。つまり本当の目的は、中国経済を抑え込むことで、世界における中国勢力の拡大を抑える戦略ではないだろうか。

2)金正恩の今後の外交:米中の間をうまく泳ぎ切るのだろうか

北朝鮮の金正恩は、今日中国に出かけた模様である。米朝首脳会談についての報告や打ち合わせに向かったのだろう。北朝鮮と中国が蜜月関係に入ったと単純に考えるのは、早計だろう。また、習近平も自分の意のままに北朝鮮を動かせるとは思わないだろうし、金正恩を100%信用している訳ではないだろう。

金正恩は、米国と中国の間でどのような外交を展開するつもりなのだろうか。おそらく、中国の属国になりたくはないだろう。属国になるのなら、米国の方を選択するような気がする。つまり、泳ぎ切った対岸は米国側であるような気がする。(補足1) それが、トランプの北朝鮮に対する柔軟な対応や中国に対する強硬な姿勢と関連しているような気がする。

米国と中国の間でどのような外交を展開するか、自国内部の中国にコネを持つ人物の動きなども見ながら、慎重に行動しないといけなくなる。金正恩は、米朝会談を終えて少し余裕ができたと考える向きも多いだろうが、本当はこれから正念場を迎えるような気がする。
以上は素人のメモです。

補足:
1)当然明確な米国寄り政権などできない。核兵器を米国の監視下で全廃をするように見せる。朝鮮半島は北朝鮮の経済復興のあと統一朝鮮とする。しかし、核兵器のかなりを隠し持つことを米国に見逃してもらうのである。自主独立路線を強調する新しい国となるが、当面は、米国との申し合わせにより親中政権を装う。

2018年6月16日土曜日

言葉とその定義空間について:北の将軍様は殺人犯か?

1)一般に民族系(右派)と考えられるネットテレビで、先日の米朝会談を受けてその評価と日本の今後についての討論番組が放映されていた。そこで、ゲストの4人が最初に米朝会談の評価を述べたのだが、T氏が、「金正恩が堂々とトランプと会談する姿を、宿代も払えないレベルの貧乏国のトップが米国のトップとあのように会談出来るのは、核兵器の力である。従って、彼は核兵器を絶対に手放さないだろう」と話した。

この指摘は全くその通りだと思う。ただその発言の中で、「金正恩は身内を殺して平然としている殺人犯ですよ。あんな男が表舞台に出ることが出来るというのが、核の力ですよ」と言った。それを聞いて、この番組へのコメントの中に、私は「金正恩が殺人犯なら、歴史上の偉人と言われる人物はほとんど全て殺人犯である」を加えた。

つまり、金正恩は殺人犯とは言えない。犯人の犯は犯罪の氾であり、罪とは法を犯す行為や道徳に反する行為を意味する。しかし、法や道徳は国家という体制内の規範であり、金正恩が命じた叔父や兄を殺す行為は、政治体制を守る目的でなされた体制内で行われた行為ではないからである。つまり「罪」は、一つの法体系(あるいは道徳の体系)を持つ明確な境界によって区切られた社会の内部で定義される。

つまり、「罪」の定義空間は普通国家(或いは明確な政治体制)内部であり、従って罪や犯罪、犯行、犯人などの言葉は、国家内に全て含まれた行為とそれを行った人などに対してのみ用い得る。その基本をT氏は守らなかった。司会者を含めて5人の間の議論であるから、政治的目的をもった発言とは考えにくい。従って、真面目に議論を聞く人間には軽薄な意見に聞こえるのである。

2)「人を殺すことが悪なら、戦争で人を殺すことも悪ですか?」という質問に答えられない学校の先生は多いかもしれない。また、ヤフーの知恵袋などで、「人を殺す、悪」で検索するといろんな質問や答えが出てくる(補足1)が、この言葉の定義空間を超えた表現に対する質問が多い。上述のように、罪、善、悪などは、一つの安定な人間社会の枠内で定義される言葉であるが、その境界を争う戦争において敵兵を殺す行為は、法に照らして罪や悪とは言えない。

もちろん、人間界にはいろんな社会の分け方が存在する。宗教や文化などで区切る場合もある。ある宗教に至上の価値を置く人の集団は強固な社会を形成し、その宗教で悪とされた行為に対して罪という言葉を用いるだろう。従って、宗教と国家が対立した場合、非常に深刻な事態となる。つまり、宗教で善とされる行為が、国家の定める法で罪とされる場合もあるからである。イスラムの自爆テロなどはその例である。

更に、国際条約でできた社会的境界も存在する。ハーグ陸戦条約では、捕虜の虐待や民間人の殺害は禁止されている。従って、戦争で民間人を殺す行為は国家の枠を超えて罪と言える。そのような行為は、戦争犯罪として処罰されることもある。

ところで、「言葉とその定義空間」という考え方が、何故一般に広く理解されていないのか?それは、言葉自体が数世代前にはそこまで進化していなかったからだろう。つまり、定義や空間なる単語はおそらく幕末以降に創られた和製漢語であり、そのような概念自体が日本語の中になかったのだろう。言葉はそのまま思想を表すから(補足2)、言葉になければそのような議論も不可能である。

特に定義や空間などの言葉は基礎の自然科学などで頻繁に用いられるが、一般には過去それほど用いられなかっただろう。言葉と論理に関する限り、基礎理学系の人間が優れた能力を持っていると思う。

3)蛇足として一言。上記youtube動画では、その後T氏のその発言にたいする批判的なコメントは一切なかった。日本人は議論する文化を持たないとつくづく思った。「個人口撃(攻撃)はいけない」とか、「人は褒めるべきであり貶すべきではない」といった、「和を以て貴となす」を頑なに守る文化には辟易とする。

個人口撃をしないから、何人が何度集まって議論しても個人の理解はあまり深まらない。心の中で、バカな事を言っていると思っても言わないので、自分がバカなことを言っても、誰も指摘してくれないのである。議論により、互いに切磋琢磨する習慣が、日本には乏しいと思う。その文化は、やたらと地位(status)に拘り、虚栄(vanity)の中に生きる人間を増加させ、社会を静的(static)で虚しい(vane)ものにしてしまう。

補足:

1) 幾つかの例をあげる:
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10189074090?__ysp=5Lq644KS5q6644GZIOaCqg%3D%3D https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13167323978?__ysp=5Lq644KS5q6644GZIOaCqg%3D%3

2018年6月15日金曜日

米朝会談は成功だったのか?拉致問題との関連は?

あまり整理や校正せず、書き下した初稿をそのまま掲載します。12日の米朝会談だけでなく、その後の議論に落胆していて、エネルギーがありません。

1)トランプの自画自賛の評価は兎も角として、日本でも大成功だという人と、失敗だったという人が半々である。成功だったという人の中には、佐藤優や北野幸伯などの人がいる。北野氏は、メルマガで:

彼が本気で「完全非核化」を決意したかどうかを判断するのは時期尚早だろう。しかし、「非核化」が「不可逆」な段階まで進むまで、「制裁を続ける」とトランプは言っている。だから共同声明に「CVID」という言葉があったかどうかは、それほど大きな問題ではない。

と書いている。この方はトランプの「制裁を続ける」という言葉をそのまま受け取っている。トランプが「米韓軍事演習はとうぶん止める」というのは、制裁一部解除ではないと言うのだろうか? 

また、佐藤優氏は、金正恩とトランプの間には強い信頼関係が出来上がったと言っている。外交の専門家の佐藤氏は、人の心を読むことには全くの素人のように感じる。https://www.youtube.com/watch?v=EtrGo3In2LE & https://www.youtube.com/watch?v=RUlqjpMmPz4&t=946s

トランプにとって、北朝鮮の核など全く恐ろしくない。あの金正恩に対する親密な関係に見える対応は、その余裕のせいなのだ。トランプには、自分の選挙の票とノーベル賞しか頭にないことが分からないのだろうか?

何よりの失敗は、金正恩と習近平との間を近づけ、金正恩に中国に従っていれば、核を保持したままでも自分の政権は安泰だという安心感を与えたことである。中国の飛行機でシンガポールに行ったのは、習近平との打ち合わせ通りであると思う。

トランプは安倍の日本に金を出させることで、北朝鮮の経済を立て直すことに協力するだろう。その結果、核保持大国としての統一朝鮮が完成する。そこで日本をいじめる段階になっても、米国は日本に核保持を許さないだろう。トランプは回想録に書くだろう。「戦後米国は精一杯日本経済の復興に協力した。その後、あれくらいの苦労があったとしても、それは日本の責任だろう」と。

2)その悲劇的シナリオが始まっても尚、チャネル桜でも拉致問題を議論の中心においている。拉致被害者の家族会は、自分たちの活動が日本からまともな外交を奪っていることに気づいていないのだろうか。彼らは要求の相手を間違えている。既に何度も書いたように、家族が拉致された責任は、北朝鮮というよりも日本政府にあることが分かっていない。

日本は韓国を朝鮮半島唯一の政府と認めており、北朝鮮を正当なる国家と認めていない。米国とともに今まで敵国として扱ってきた。拉致の被害はその敵国による仕業である。戦争で戦死した若者の家族は、決して敵国にその責任を押し付けようとはしない。その責任追求の方向は、自国を戦争に導いた政治家に向かうはずだ。拉致被害者の家族が、拉致の責任を敵国である北朝鮮に求めるのは、全く理解不足である。

その拉致問題の理解が、反日マスコミにも都合が良いので、そのまま採用されている。それを覆す発言を政治家をすれば、たちまち落選するだろう。そして、日本の外交は拉致問題に拉致されているのである。

そのことを知的な西岡力氏は分からないのだろうか? チャネル桜の番組を見てそう思った。https://www.youtube.com/watch?v=BOoJm4FMAZU&t=1433s

この動画のはじめの20分程聞いた。其れ以降は、くだらないので聞く気になれない。出席者が最初に2-3分述べた言葉についての私のコメントは、以下の通りである。

高山さんの最初の言葉は、素人っぽい。核の威力というのはそのとおりだが、金正恩が殺人犯なら、歴史上の偉人はすべて殺人犯である。宮崎さんの最初の意見は素晴らしい。米中の衝突が問題なのはそのとおりだと思う。それを前提に日本は将来を考えるべきだと思う。加藤さんの米朝会談の評価はそのとおりであるが、何故そうなったを言わないと評論家らしくない。要するに、トランプは馬鹿だということなのだ。民主主義の弱点がそのままクローズアップされる。最後のメディアに対する意見は支離滅裂である。西岡さんの意見、核問題はまだ勝負はついていないという意見には賛成。拉致問題だが、皆さんの理解は間違っている。拉致は日本国の失敗である。何故なら、熊に我が子をさらわれたとしたら、その責任は親にあるからである。外交関係の無い国家は、太古の昔から熊というべき((”熊”と理解すべき))である。

2018年6月14日木曜日

拉致問題は安倍総理に任せるべきではない

1)読売新聞の記事として、「安倍首相と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長による首脳会談実現に向け、日朝両政府関係者が複数回にわたって水面下で交渉を行っていたことがわかった」と報じられている。https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-042414/

北朝鮮との外交関係を持つまでのプロセスを考えることは重要課題である。しかし、日韓基本条約に書かれているように、日本は韓国を朝鮮半島唯一の政権として認めているので、北朝鮮と外交関係を開くことは日韓関係の見直しでもある。従って、記事の最初の文章は其れを意味しているとは考えにくい。また、日本政府はごく最近まで対北朝鮮政策の基本として、米国の猟犬のような姿勢で最大限の圧力をかけて、完全且つ不可逆な核兵器の放棄を迫ってきた。以上から、水面下にしろ、北朝鮮との外交関係を開くという基本的な話では無いはずである。

実際、その記事の中で、首相は「北朝鮮と直接向き合い(拉致問題を)解決していかなければならない」と会談実現に強い意欲を示しているという文章がある。つまり、日本政府の上記水面下交渉の全体は、その安倍総理の言葉が意味するところに一致するだろう。この日本政府の「北朝鮮問題といえば拉致問題」という認識はオーソドックスな姿勢ではない。それは、既にブログ記事として書いた。(6月12日の記事)

また、拉致問題には2つの側面があると別記事で書いた。この件は、日本の沿岸警備不足等の貧弱な行政が原因で起こった、何者かによる自国民の拉致という過去の事件である。その理解では、責任は自国民を護れなかった日本政府にあるのだから、拉致被害者とその家族に対する保障は日本政府がすべきである。

その後、この拉致が北朝鮮という国家により引き起こされたことが明らかになった。拉致被害者が現在存命であり、彼らが望むのなら奪還しなければならないという問題が二つ目の側面である。その場合、北朝鮮を仮想敵国として捉え、戦争を含めた外交問題として対処すべきである。数人のギャングが行った犯罪ならともかく、国連に加盟している国家が行った犯罪的行為に対して、裏門を用いた類の交渉で解決を目指すのは、まともな国の考えることではない。(4月22日の記事) 

現在、北朝鮮は国際的に認知された独立国である。そして、米国さえも外交関係を開くことも視野に入れている現状を考えれば、日本国と北朝鮮との外交関係を樹立することを考え、その一環で拉致問題も解決すべきである。後者だけを独立して扱うことなど本来ありえない。

また、拉致被害などが今後生じないように、日本の沿岸警備や治安警備のあり方、日本に滞在する外国人や外国人の団体の実態の把握と監視、それらに対する治安上の措置をとる必要があるのか、必要があればどのようにとるか、などの問題に回答を用意すべきである。

2)日本政府は「拉致問題」を理解しているのか? これまでの日本政府の拉致問題解決に関する手法は、単に金を渡して返してもらうなどの異常な方法であった。それは、政府が正しく拉致問題を理解していないからだと思う。

戦後米国の支配下に入った日本は、米国の望む形で日韓基本条約を締結した。その結果、日本は北朝鮮をまともな国家として認識できない状況にある。その日米韓の関係を善き状態として温存しながら、拉致被害者を取り返す方法として考えたのが、金で取り返すという方法である。しかし、その手法は時代遅れなことは明らかである。それでも尚、安倍総理は同じ手法を使おうとしている。

現在、対北朝鮮問題として考えるべきこととして、私は以下のように考える。繰り返しになるが、日本は日韓基本条約で韓国を朝鮮半島における唯一正当な国として認めており、北朝鮮を外交関係のない仮想敵国として把握している。我々は、日本国が北朝鮮を現状正常な外交関係を持ち得ない国としていることを十分承知する必要がある。国家としてその存在を認めていないのだから、自国民が“北朝鮮”に拉致されたとしても、北朝鮮という国(朝鮮民主主義人民共和国)に文句をつける理由はない。(補足1)これは原則論だが、拉致問題を考える上で重要である。

その理解があれば、北朝鮮が国家として行った拉致問題の解決は、北朝鮮を国家として認識できるように外交関係を開いた後に解決するのが正常なやり方であることが分かる。外交関係が開かれるまでの段階で考えるべきは、①北朝鮮からの防衛の必要性をどのように考え、其れを元に②防衛計画のグランドプランを作成し、次にそれに従って③具体的にどの様なプロセスでそれを実現するか、等について回答を用意すべきだと思う。

それらが準備でき、互いに独立国としての体裁が整えば、外交関係を開くことが可能となる。そこで、拉致は韓国へ送るスパイ等の養成の一環として行ったと言ったのなら、つまり、日本国に無関係なら、賠償の要求とともに被害者の引き渡しを要求すべきである。

補足:

1)たとえ話で説明する。夜間何もわからない内に猫が何物かに拐われた。どうも山の中のあの熊が“犯人”らしいと隣家から聞いた。この段階が現状である。熊が犯人なら、言葉が通じない熊に文句を言う人はいない。鉄砲を持って、奪還に向かうのがノーマルな方法である。日本が採用している方法は、「熊に拐われた猫を救うために、熊の好きな餌を投げて猫を手放させ、そのスキを見て取り返す」という鉄砲を持たない現状から苦心して考え出した方法である。
しかし今、熊というのは嘘であると知った。街の実力者の手下の隣家が、親分の嫌いなその家の主を熊と言っただけであった。自分もその親分に近いのだが、その向こうの家の住人が言葉が理解できる人なら、隣家とは独立に知り合いになり居なくなった猫の話を聞くべきなのだ。猫が必要だったので奪ったと言ったのなら、賠償とともに猫の返還を要求すべきである。こちらが金を支払う理由などない。

2018年6月12日火曜日

北朝鮮問題=拉致問題ではない:日本の指導者はそして日本国民は金正恩に学ぶべき

1)本日の米朝会談の結果について午後6時前に安倍総理からコメントがあった。https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20180612-00000079-nnn-pol

それは、北朝鮮の朝鮮半島の非核化についての決断が文章になったことを評価することと、拉致問題をトランプ大統領が取り上げたことを評価する旨の発言であった。しかし、首相は本当に北朝鮮が朝鮮半島の非核化を望んでいると思っているのだろうか?また、北朝鮮問題といえば拉致問題という風な言及の仕方で、日本は良いのだろうか。

確かに、ナイーブな多数派の日本国民に対しては、とにかく拉致被害者を取り戻すことが北朝鮮問題の主なる課題であるように言っておれば、真面目に対応している印象を与えるだろう。しかし、それでは多くの知的な国民は納得しないだろう。何故なら、統一朝鮮や中国との関係、それに核武装の問題は、将来の日本民族の運命にかかわる重要な問題だからである。(補足1)

北朝鮮の核問題は、東アジアの平和と安定の問題であり、日本の安全の問題である。つまり、一億三千万人の安全の問題であり、拉致被害者数十人の問題に矮小化されては困る。それに、拉致問題は40年前の日本政府の失政の問題であり、現在の政府がその失点を回復することは出来ない。第一、拉致が実行されたとき、日本海に投げ捨てられた人間も多数いると聞く。その人たちの被害に対して、現在の政府が何か出来るのか?

政府は、北朝鮮問題については単に拉致被害者を取り戻すという観点からではなく、日本と北朝鮮との間の和平の問題として、また東アジアだけでなく世界の中での日本の国防の問題として捉えるべきである。

2)北朝鮮が核兵器を開発したのは、朝鮮戦争で世界一の核大国である米国と対峙してきたからである。そして、北朝鮮が核兵器を完全廃棄(& 放棄)することはないだろう。米国も、北朝鮮の核の設計図はすべて廃棄できないだろうし、技術者の頭の中にある技術やノーハウも消し去ることはできないだろう。

現在は諦める振りをしても、決して北朝鮮は核兵器を諦めないだろう。何故なら、普通に知的なリーダーにとって、国民国家が構成する世界が続く限り、現在のところ核武装は国防の要諦であることは明白だからである。そんなことは、エマヌエル・トッドに言われなくても、分かる人には分かっている。(補足2)今、北朝鮮が朝鮮半島の非核化に言及するのは、差し当たって国民が生き残る最重要問題は経済問題だからである。今後、日本などの経済援助で豊かになれば、イスラエルのような隠れた核武装国になるだろう。

その頃、敵国であった米国はもはや敵国ではなくなっているだろう。その十年か二十年後の敵国として最有力候補は日本である。現在首相の地位にあるものは、その二十年後の日本と統一朝鮮とのそのような関係を一つの可能性として考え、戦略を練る必要がある。トランプの作戦にそのまま乗ることは、亡国のシナリオに従ってしまうことである。

日本は、米国の核とは対峙していないとしても、ロシアや中国の核兵器の照準上にある。何処かを起点に、貿易問題や領土問題などがきっかけとなって、第三次大戦のような事態になったとき、或いは、将来例えば氷河期に入るなど、何かカタストロフィックな事態がこの地球上で生じたとき、その犠牲になる可能性が大きい。その様な兵器が実際に使われるのは、限られたパイを分ける人数を減らすためである。

重ねて言うが、国民国家に分離されたこの地球上において、現在のところ核ミサイルが国防の中心に存在する。それ故、米国も多くの周辺諸国も日本の核武装を許そうとしなかった。何故なら、日本の核武装が米国や周辺諸国の国防に抵触するからである。またそれは、インドやパキスタンなどが核武装した理由でもある。カダフィが核武装を目指したのも、何時かあるかも知れないイスラエルなどの核攻撃から国家を護るためである。

その昔、優秀な現実主義的政治家であった安倍総理の祖父である岸信介元総理は、核武装の必要性を考えていた。http://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2015/08/blog-post_6.html また、米国は北朝鮮のICBM核を恐れているかのうように思う人が大半かもしれないが、そうではない。米国が恐れているのは、北朝鮮の核を廃棄させられない場合に、日本が核武装する可能性があることである。

有権者なら、そして、子孫の未来に責任を感じる者なら、朝鮮半島や中国に乗っ取られているマスコミの網目を潜って、それを知る義務がある。

日本の政治家は、そして、日本国民はキム王朝三代に学ぶべきである。金正恩は見事に核兵器を完成して、その技術を持つに至った。今後はそれを一時放棄する振りをして、経済援助を取り付け、国民を養うとともに、将来のカタストロフィックな事態が起こった時にも朝鮮民族の生き残りを達成するだろう。

補足:

1)前の記事の引用記事をここでも引用する。拉致問題は日本政府の大きな失策であるとの議論:https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43635118.html https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43631245.html

2)文藝春秋の最新号で、世界的に有名なフランスの社会学者エマヌエル・トッド氏が「日本も核武装すれば良い」という趣旨の記事を書いている。

米朝首脳会談について:結局朝鮮戦争終結協議開始前の完全不可逆な非核化という合意はないだろう

今日は米朝首脳会談の日である。金正恩は一昨日シンガポールに到着した。金正恩が乗った飛行機は中国国際航空の飛行機であり、専用機は随行員や機材などを運搬したらしい。今朝の朝日新聞デジタルでは、「安全面を重視する北朝鮮と半島問題で存在感を示したい中国の思惑が一致した形だ」とこの件への言及がなされている。

この中国機の利用については、北朝鮮のメディアも積極的に報道しているようである。従って中国機の利用の意味は、単に老朽飛行機では安全に問題があると言うことでは無い。安全面への配慮は、メインな理由ではなく単にサブな理由に過ぎない。

つまり、金正恩は1994年の合意に似た合意をすることが、最も容易な道だと考えているのだろう。そして、それはトランプ政権の考えとは程遠いので、今日の会談では実質的には全くなんの合意も得られないと予想する。

このような文章を今書くのは、前回ブログ記事で紹介した藤井厳喜氏の「仮に」と前置きしたシナリオが間違いだったと思うからである。それに真面目に尾ひれをつけて考えた話は、全くの見当違いだった。 金正恩が仮にそれを望んでも、軍部を完全に掌握していないのなら、無理である。

金正恩は最も安易な道を選択したと思われるのだが、中国の全面的バックアップは米国の経済制裁の効果を緩めるので、今回の騒動は全くの無駄ではなかっただろう。その場合、トランプがまともな政治家なら、朝鮮半島分断の歴史が平和的に解消するという話も立ち消えになると思う。大山鳴動して鼠一匹で終わるのである。

そして、半島の火薬庫としての役割は益々大きくなり、中国が崩壊しないとすれば、朝鮮半島と日本を飲みこむまでその役割は解消しないだろう。米国はその頃、第二列島線をかろうじて維持しているだろう。その大きなウネリの中で、拉致問題なんか埃程度の重みしか無い。(補足1) 拉致問題が最重要な課題だという内閣など、日本人一般は早めに見限るべきである。

トランプは日米首脳会談のときに、米朝首脳会談で必ず拉致問題に言及するといった。しかし、その理由を「安倍総理の個人的関心事であるから」と言ったことを日本人は深く考えるべきである。https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20180609-00086250/

以上は素人である日本の一有権者の意見です。それを考えてお読みください。

補足:

1)拉致問題は日本政府の大きな失策であると、以下に議論している。
https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43635118.html https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43631245.html

2018年6月8日金曜日

トランプが北朝鮮の非核化交渉には時間がかかると言い出した理由:二つの見方

1)ここ2、3日のトランプが、北朝鮮への非核化要求が柔軟になってきた。それは、トランプの関心がノーベル賞を取れる可能性の高い朝鮮戦争終結へ移り、頭の中を占領してしまった結果なのかもしれない。国務長官ポンペイオも、その時間がかかるという話を承知している筈だから、米国は本気で警戒しているのは北朝鮮のICBMだけなのだろう。なんども引用するのだが、佐藤優氏の話にあるように非常にまずいことになってきている。

昨日の毎日新聞(ネット)では、更に気になるニュースが流された。シリアのアサド大統領が、北朝鮮の公式訪問をする予定であると朝鮮中央通信が3日に伝えたというのである。具体的な時期は不明。5日時点でシリア政府から正式な発表はないが、ロイター通信は金委員長が首都・平壌で会談する初の国家元首になる可能性があると報じた。https://mainichi.jp/articles/20180606/k00/00e/030/258000c

(補足1) アサドの訪朝目的は書かれていないが、それは容易に想像できる。「米国が北朝鮮の核兵器を廃棄させるというのなら、一部をシリアは喜んで買い取る」という話だろう。 そのためには如何に密かにシリアまで輸送するかが問題であり、それを相談するためなのではないか。

ユダヤ教徒の娘夫婦やネタニヤフに言われて、トランプは対策を考えるだろう。もともと中東方面への核拡散なども考えて、北朝鮮へのリビア方式(即刻CVID)での核廃棄要求だったのだから。

2)別の解釈もあるようだ。
youtubeで、藤井厳喜氏の面白い解説がアップロードされている。藤井氏は、トランプが「今回の会談で、合意文書の発表まで行けないかもしれない。時間がかかりそうだ。」と言い出したことが読めないというのである。時間がかかるというのは、ポンペイオも承知の話である。ボルトンはどう言っているのかわからないが。

「北朝鮮がCVIDを飲めないと言っているのなら、12日の会談は流れている筈である。何か未知の事態が動いているようだ。」と言っている。そして、非常に興味ある話をした。それは、米国にとって“非常に良い条件”を言って来た時の米側の対応なら、説明可能だというのである。

「当てずっぽうで言うとと断った上で、『米国のレーダー基地を北朝鮮に置いても良い』と金正恩が言った場合、それは米国にとって直ぐには答えの出ない話である」と話した。何故ならロシアと中国の強い反発が、どの程度なのか読めないからである。その上で、上の「アサド大統領の北朝鮮訪問の話はガセネタである可能性が高い」と言っている。https://www.youtube.com/watch?v=CbLMW5Dgf0k

そこで動画の欄にコメントを書いた。

藤井さんの例えばと言ってされた話は、面白いです。何故なら、金正恩は心の底では中国が嫌いだし、ロシアも好きではないだろう。「自分たちは、歴史的に見ても彼方か此方のどちらかしかありえない、シーソーのような存在だ。彼方なら、米国の要求は本当の意味で飲むのは困難だ。中国からネジを巻かれている。しかし此方なら、それは出来る。しかしその場合、中国やロシアとの交渉は、新しい親分であるトランプさん、あなたにお願いしなければならない。」と金正恩が言ったと考える。トランプは時間がかかるというだろう。

シリアのアサドの訪問の発表は、「トランプさん、時間がかかるというが、我々には時間がないのです」という意味になる。


3)上記1)は、トランプを非常に俗な人間としての解釈だが、2)は藤井厳喜氏というプロの政治アナリストの「トランプはこれまで通りの北朝鮮の非核化について強い姿勢だが、北朝鮮が直ぐに打てない変化球を投げて来た」という話である。

つまり、米国は体制の保証をすると言うが、米国から体制の保証を受けるためにCVIDを実行したときに、中露からの脅威に晒されては何にもならない。もし、「本当の意味で体制保証をするのなら、トランプさんの米国に中ソ(露)の脅威から解放してほしい」と言ったとしたら、トランプはどう答えるのか。

「なかなか時間のかかる話になる」と言わざるを得ない。これは、北朝鮮が冷戦時代のウクライナに似ていると考えれば分かる。ウクライナもNATOに入りたいのである。安倍首相の今回の日米首脳会談に関するコメントを注意深く読む必要がある。

(7:40;10:10 最後のセクション加筆)

補足:
1)東西冷戦期にともに旧ソ連の影響下にあったシリアと北朝鮮は1966年に国交を結び、73年の第4次中東戦争では北朝鮮が兵士やパイロットらをシリアに派遣して関係を深めた。両国は化学兵器開発でも協力関係にあると指摘される。また、イスラエル軍が07年に空爆したシリア東部の原子炉も、北朝鮮が建設に協力したとされている。

2018年6月6日水曜日

グローバリゼーションの調整:経済の大変革と世界の危機

1)ピケティが膨大な著書で指摘した、資本収益率が国民所得の増加率より上回るという事実は、資本家が経済成長による“正規な分”よりも、余分に取り分を拡大していることである。従ってその本は、資本家と一般民との貧富の差の拡大をデータとともに示したことになる。

この現象が先進国で拡大するメカニズムは、先進国で蓄積された資本が、発展途上国に投資され収益を上げて本国の資本家の利益になることだと思う。つまり、海外進出のために資本を先ず本国で蓄積するのである。その後、その資本が本国の高い労働賃金を避けて、賃金の安い海外に進出するのだから、本国の労働者の賃金が伸び悩むのは当然である。

食い逸れた労働は安い賃金の仕事に向かうが、生活できない人は政府の社会福祉に頼るだろう。労働賃金の減少や失業は、内需の縮小あるいは伸び悩みの原因となるから、多くの内需型企業が危機に陥るのは当然である。不景気で苦しむ企業を何とかしないといけないという理由で、法人税減税などを行うだろう。その結果、海外進出する会社の利益を増大させる一方、政府の財政は悪化するのは至極当然である。

まるで、経済の主人公は労働者である国民一般ではなく、株式会社つまり資本であるかのような政策を実行している。それは、資本が経済だけではなく政治も支配していることを示している。(補足1)

このグローバリズムの出発点にあるのは、国際政治が国境を跨ぐ経済活動が可能になるように規制緩和を行なったからである。(補足2)英米を中心とした先進国の資本の発展途上国への流れは戦後盛んになった。現地の安い労働力を使い、そこに輸出依存型の経済成長を誘起し、あげた利益の大部分を出資国に還元させるか、発展途上国への更なる投資に向けるのである。

現地政府が、一定期間にその国家の広い部分でのインフラ整備と、経済体制を内需依存型へ進める能力があった場合、その国は先進国へ向けて離陸することになるだろう。そして、それは元の先進国企業にとっても市場としての価値を増す。

2)このグローバリゼーションによる経済発展のモデルは、地球が有限である限り無期限には進行せず、一定のところで行き詰まる。否、それが既に行き詰まっている。それは以下の動画で、評論家の中野剛史氏が話している。

リーマンショックはその行き詰まりの始まりであったというのである。https://www.youtube.com/watch?v=l0BooEwk04M&t=1973sこの“グローバリゼーション”による経済発展での資本のスパイラルな増加メカニズムは、今や機能しなくなっているというのである。(補足3)

そして残されたのは、資本の出所である本国と資本が一定の収益を上げた途上国での副作用である。本国では、デフレの進行と貧富の差の拡大が起こる。これは安い労働力を求めて先進国の国内資本が海外に進出するのだから、ブルーカラー職のかなりの部分が海外に行ってしまう。そこで、その仕事が主だった地域では不況風が吹き、仕事を失った人が大量に出る。米国のデトロイトが良い例である。

更に、上記で発展途上国から先進国に脱皮するチャンスを逸した国々における混乱である。それらの国々において、進出してきた先進国資本及びそれが所属する国に協力的な政権が出来るのは当然である。(補足4)その現地国家での経済発展は、その国の賃金上昇をもたらすのだが、その時点では輸出依存型国家である。そこまで互いにwin-winの関係であっても、先進国資本が賃金上昇を避けて流出すれば、残った政治的混乱が拡大することになりかねない。

このような先進国資本のグローバル展開のあり方が、最終的に世界を豊かにして国境を挟んだ争いが無くなれば、それは人類の偉大なる勝利である。しかし、それは資本家がもともと目指したことではない。何故なら、収益のためには国境を挟んだ争いも起こし、それを利用するという歴史が見え隠れしているからである。

有限な地球の面積と資源の中で、あくまでも私的な利益の拡大を目指したものなら、行き詰まるのは当然である。そしてグローバリゼーションの発祥の地とでも言える、米国で国民の不満が選んだのがトランプ政権である。(補足5)同様の動きが、フランスやイギリスで起こっている。

3)トランプ大統領の出現は、米国の貧富の拡大が病的なまでに進展し、それに耐えられない層が、従来の巨大企業群と国家を牛耳る層に叛旗を翻したという意味を持つ。5月末のNHKクローズアップ現代でも、米国を庶民の日常から変化させているアマゾンとトランプ大統領の戦いについて放送していた。

確かに、ネット通販が盛んになり、その結果町の小売店舗だけでなく、大規模ショッピングモールが閉鎖に追い込まれ、そこでの仕事が消失する。その一方、アマゾンの進出したシアトルでは家賃が高騰して、フルタイムジョブを持つ人までホームレスになっている例が紹介されていた。程度に差があっても、同じタイプの現象は、日本でも確実におこっている。

しかし、ネット通販が盛んになるのは、グローバリゼーションとは無関係に自然な“科学技術文明”の発展方向である。これまでグローバリゼーションの結果としての発展途上国の経済発展や、先進国での労働生産性の向上は好ましいこととして受け入れ、自然な速度でその発展を待つことが正しいと思う。そしてその一方で、今後は台風のように南方の途上国から利益を巻き上げる資本の制限を行うべきである。

トランプ大統領の反グローバリゼーションの動きを高く支持しているのが、日本では元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏である。その件については、既に何回もブログに書いた。しかし、その評価は過大であると書いたのが、以下の記事である。https://blogs.yahoo.co.jp/hetanonanpin/64965457.html

例えば、その性急な保護貿易主義や反移民主義は、混乱の収拾のために新たな混乱を生じるという稚拙なレベルの政策だと思う。

現在のグローバリゼーションによる副作用低減の方法としては、先ず政治のあり方を考えるべきだと思う。それは、政治が会社資本から影響を受けないようにすることである。つまり、法人から政治資金が流れ出さないようにすべきである。日本の政治資金規制法では、会社が直接政治資金として寄付することは禁止されている。しかし、間接的に法人の金が政治に流れる可能性まで完全禁止できていないだろう。(補足6)また、グローバリゼーションの家元である米国では、この規制が緩くできているのではないかと私は疑う。

次に、グローバリゼーションへの適応するために、先進国での労働力の再分配を政治的に支援し、また、それにふさわしい教育改革などに力を入れるべきであると思う。日本では優秀な人材が医学部に流れている。しかし、それは好ましいことではない。もっと社会のために、日本国のために、全く新しい産業のために、自分は貢献するのだという野心をもった人間、そして、「人類の歴史を、良い方向に誘導するのだ」という天才的人間を育てる様に、日本の教育環境を育てるべきである。(補足7)

世界は大きなターニングポイントに来ている。グローバリズムという思想の現実政治への展開は、最初世界の社会主義革命を目指すことで始まったと考えられる。しかし、それは独裁者を産み、悲惨な結果を人間歴史に残した。今回は2度目のグローバリズムの失敗だろう。それが更に悲惨な結果として歴史に残らないことを祈りたい。

このグローバリズムの進展と国際金融資本の関係を論じた人は多いだろう。私がそれを知ったのは、元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏の著書「国難の正体」を通してである。そこに昨年3月に亡くなったロックフェラー家3代目のデイヴィッド・ロックフェラーの言葉が引用されている。「私たちがアメリカの国益に反する秘密結社に属していると信じるものさえいる。かれらの説明によると、一族と私は「国際主義者であり、世界中の仲間たちとともに、より統合的でグローバルな政治経済体制をー言うなれば一つの世界をー構築しようと企んでいるという。もし、それが罪であるならば、私は有罪であり、それを誇りに思う。」(補足8)

グローバリズムは、魅力ある思想である。しかし、それを急ぎ過ぎるのは良くないようである。グローバリズムは人類の夢なのかもしれない。しかし、将来実現する正夢なのか、惨劇に誘う悪魔の言葉なのかは、判らない。確実なのは、性急にことを実現しようとするのは良くないということだろう。それは多分、一つの民族のルサンチマンの裏返しではないだろう。そして、人類歴史の発展に対するロックフェラーの寄与を、功罪差し引きしてプラスが残るように我々は知恵を絞らなければならないと思う。

補足:

1)資本といったが、株式会社という方が適当だと思う。ただ、株式会社を誕生させ維持させる条件は、株主資本がプラスとして会社の純資産の中に存在することであるから、この様な議論の時に“資本”なる言葉を用いる。資本主義の“資本”も同様であると思う。

2)GATTからWTO(世界貿易機構)の設立などの国際条約や、IMF(国際通貨基金)の設立などは、この国を跨いだ経済活動を容易にしている。社会主義経済の失敗が明確になり、世界経済は米国の一極体制になったことも、その大きな原因である。素人ですが、敢えて補足します。

3)この動画は非常に粗い議論を流している。それはおそらく中野氏の意図するところではなく、情報を売るための宣伝(ブリーフィング)だからだろう。この動画では、グローバリゼーションの定義がうまくできていない。グローバリゼーションの元の意味は、地球規模の展開だが、「人、金、物の国境を跨いだ移動を自由にする」という現代のグローバリゼーションはその一つであり、「」内のように定義するのなら、それを明確に喋るべきである。また英語では、定冠詞をつけるべきである。尚、三橋貴明氏は世界の共産主義活動を第1次のグローバリゼーションとしている。

4)複数の先進国の資本進出があれば、それは先進国の間の政治的対立も取り込むことになるだろう。

5)トランプはこれまでにない一般庶民の味方かもしれない。そのトランプをバカだとか、悪口雑言の限りを尽くして批判してきたのが、日本で古くからいるユダヤ系のタレントである。彼には「お里が知れる」という言葉がふさわしい。

6)会社員が会社の資金援助を得て、政治パーティーなどに参加し、巨額の参加費を支払う行為や、会社や会社員の課外活動的グループなどで政治団体の人物を講演依頼して、多額の講演料を支払うことなどまで、禁止されているのだろうか?

7)一人の天才の周囲には通常10数人程度の理解者が存在するだろう。彼らがコミュニティーを作り、人類の未来を考えてもらいたいと思う。近い例では、20世紀中頃の世界の物理学会がそうだったのかもしれない。西暦の始まった頃の世界宗教も、その様にして生まれたのかもしれない。(十分な知識がないのですが、この補足は背伸びして書きました。)

8)デイヴィッド・ロックフェラー著「ロックフェラー回顧録」(楡井浩一訳)新潮社2007。第27章「誇り高き国際主義者」(517頁)にこの言葉がある。

2018年6月3日日曜日

トランプは北朝鮮問題で安倍総理と連携などしていない

1)安倍総理が、北朝鮮問題において米国トランプ大統領と連携が取れているとは思えない。安倍総理が、補佐官ともうまく連携が取れていないトランプ大統領と、連携して有効な対策を打っていると主張する日本の政治評論家の考えはおかしい。(たとへば、元ウクライナ大使の意見を参照:https://www.youtube.com/watch?v=PPXdqIf48WM ) トランプは自国の支持層以外はほとんど何も見ていないのではないのか?

貿易問題であれ、環境問題であれ、トランプは正に傍若無人のごとく唯我独尊の道を歩んでいる。北朝鮮問題でも、如何に米国の脅威を減らし、利益につなげるかしか考えていないのではないのか。日本のマスコミも全く真実をつかんでいないように見える。政治評論家で真実の近くに居て、我々一般民でも名前を知っている人物は、元外務省の佐藤優氏くらいだろう。(補足1)

今朝の中日新聞一面によると、トランプは北朝鮮に非核化を急がせない模様である。最初の会談では、「合意文書に署名することはないだろう」とまで言っている。金正恩党北朝鮮労働党委員長からの親書を受け取ったトランプ大統領は、金英哲党副委員長との会談では、主に朝鮮戦争の終戦宣言について話し合ったようだ。勿論、北朝鮮の非核化の前提には朝鮮戦争の終結が必要だろう。

また、トランプは:「非核化に時間をかけていいと彼(金英哲)に言った。その間制裁は残る」と述べたが、「最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」と強調した、と書かれている。つまり、本気で北朝鮮を経済制裁しないという表明である。

このような経緯を見れば、トランプは北朝鮮と韓国の首脳に外交で負けているのではないのか。(補足2)大きな国の大統領なので、尻尾が左右に振れるだけで脅威になるので、慎重に韓国と北朝鮮の首脳はやってきた。しかし、外交能力という点では後二者の方が上ではないのか。そのトランプと盟友関係を強調する安倍総理は、尻尾から振い落とされた感じである。このまま安倍政権が続けば、日本は北朝鮮の経済復興や統一朝鮮の核兵器付き統一に資金協力することになる。

外務省の連中は、佐藤優氏のこれまでの発言を延長すると、以下の様に言うだろう。「多分、そうなるだろうと思っていた。しかし、それを防ぐように、自分の身を守りながらどう政権に協力できるのだ。財務省の佐川を見ろ、失敗すればあのようになるのが目に見えている。」

2)「日本政府は圧力後退に困惑」という中日新聞の一面副コラムのところに、大津市で会見した安倍総理の言葉や政府の影の声が掲載されている。

「核武装した北朝鮮を決して容認するわけにはいかない。私たちは抜け道を許さないとの姿勢で、国際社会とともに圧力を強めてきた」と圧力の必要性を強調した。政府内にはトランプの「最大限の圧力という言葉はもう使いたくない」との言葉をいぶかる声が漏れる。政府関係者は「何を言っているのかと思った」と明かす。

安倍総理に聞けるなら聞きたい。総理の言う国際社会とは何なのか、その”国際社会”は頼れる存在なのか、日本は”国際社会”がなければ何もできないのか、存在すらしない国なのか?

しかし、こうなることは見えていた。私のような素人にもぼんやりと見えていた。トランプは短期的な白人ブルーカラーの票とノーベル賞が欲しいのだ。(再度補足2) そのレベルなのだ。ノーベル賞狙いのトランプを、もう少しまともな路線に戻す秘策がある。それは、ノーベル委員会が、「今後現職あるいは現職の政治家に影響力のある人物をノーベル賞対象としない」と発表することだ。

以上は素人のメモです。念の為。

補足:
1)直前記事参照。尚、安倍政権の対北朝鮮対策を高く評価してきた馬渕睦夫氏は、「トランプは従来の支配層から自由であり、従って彼らが育ててきた北朝鮮を非核化できる」といってきた。4月30日、馬渕氏の考えはおかしいと指摘した:「難破船トランプ号から逃げ遅れた馬渕睦夫元ウクライナ大使」https://blogs.yahoo.co.jp/hetanonanpin/64965457.html
2)15時20分追加: 金正恩政権は、トランプと習近平の両方の間で小さくなる振りをしながら、実際は両方を手玉にとることに成功したのかもしれないと思う。そのきっかけは、トランプによる中国経済制裁である。習近平は北朝鮮問題に対するトランプへの協力を反故にしても良いと考え、食料など物資の供給を(国連決議を無視して)再開しているという。(今日の「そこまで言って委員会」での討論)トランプは、金正恩が米国から完全に離反することを恐れ出した可能性がある。その場合、本気で平壌を爆撃する必要がある。それは、これまでのシナリオの180度変更を意味する。

2018年6月1日金曜日

朝鮮半島のリビア方式による非核化:米国は、時計の針を逆方向に回す努力をしているという自覚があるのだろうか?

1)6月12日に米朝会談が開かれる可能性が残されている。韓国の総合ニュースによると、ポンペイオ国務長官は、ニューヨークでキム労働党副委員長と米朝首脳会談に向けて話し合った結果として、「実質的な進展があったものの、まだ多くの課題が残っている」と述べた。

その上で、米朝会談を開催するかどうかについては「まだ分からない」と述べ、更に金英哲副委員長が金正恩委員長の新書をトランプ大統領に手渡すため、ワシントンに向かうことを明らかにした。http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2018/06/01/0300000000AJP20180601000500882.HTML

金正恩は、米国に対して明確な体制の保証を要求しているのだろう。そのような方法があるのだろうか?どのような約束が北朝鮮の金正恩政権の存続保証になるのだろうか?CVID(直ちに完全不可逆検証可能な核廃絶)を行うことと矛盾しないことで、そのような約束が可能なのだろうか? それについて、一人の素人が想像したことを書く。

一つは肩透かし的方法で、表向きCVIDを受け入れることにして、日本や韓国を核攻撃できる能力をしばらく維持するという密約である。それが最も可能性が高いだろう。密約は、過去の英米の得意技であったからである。勿論、トランプはそれを潔しとしないかもしれない。

密約以外では、以下は全くの素人の発想なのだが、平和協定から大使の交換を短期間に行い、例えば交渉に参加したポンペイオ氏や娘婿のクシュナー氏を大使として置くことなどがあると思う。その程度のことをしなければ、なかなか話がまとまらないだろう。

これも肩透かし的だが、トランプ政権は金正恩政権と交渉をしているふりをして、北朝鮮でのクーデターに期待している可能性もあると思う。しかし、それはむしろ危険な方法だと思う。米国の力や西欧諸国の考え方を最も良く理解しているのが金正恩であり、クーデターで出来た先軍政権は、妄信的に核兵器に依存する可能性が大きいと思うからである。斬首作戦なども、クーデター期待と同様、世界にとっても危険で稜線渡り的である。

2)もし言葉通りに、リビア方式による北朝鮮の非核化を考えているとしたら、米国は、時計の針を逆回転させる努力をしているということになる。そのような自覚が、米国にあるのだろうか?

核兵器でも何でも、拡散するのが物理法則である。西欧で大きく進んだ科学技術文明も世界に拡散した。それを元に戻すことなど出来ない。地球など孤立した系(補足1)では、拡散の程度が時間の進み具合の尺度である。時計が逆方向に進み出すことがないとすれば、否、絶対に時間は後戻りしないのだから、その系においてある物を拡散状態から元の局限状態に戻すには、外部からエネルギーを加える必要がある。それが、科学の理論の示すところである。米国は外部に出ることができるのか、そして、そのエネルギーを注ぐ用意があるのか?

米国は、その目的を達成するためにエネルギーを使わずに、羊飼いのラッパのように脅しを使うとしたら、また、本来当てにならない他国のエネルギーを充てるという、安易な方法を考えているとしたら間違いだろう。(補足2)特にトランプ政権は省エネに熱心なようであり、それが今回の米朝交渉において失敗に終わる原因とならないように祈りたい。

米国の目的が東アジアにおける平和の確保なら(補足3)、エネルギーを使わないで平和を達成する本来の方法がある。韓国および日本に相応の核抑止力獲得を黙認する方法である。それは、北朝鮮に余分の圧力を加えることなく、平和協議を可能にする。北朝鮮も強引に半島統一することなど考えないだろうし、出来ないだろう。北朝鮮をまともな国家として認めるのなら、彼らが核武装してもおかしいことは何もないのである。また、その周辺にある韓国や日本も同様である。

日米韓、それに中国ロシアなども、自然な将来の東アジアの独立国家とそれらの関係のあるべき姿を考えるべきである。そこ基準にして、そこに近づける形の合意こそ、最小のエネルギーで到達出来る筈である。(補足4)

将来も、韓国や日本を自分たちの隷属下に置き、今回更に北朝鮮もそのような形に置きたいと考えるのは、時計の針を逆戻りさせるような企てだろう。つまり、欧米の国家が優れていて、東アジアの国々は何もわかっていないので、自分たちの支配下に入るべきだと考えるとしたら、それはアジアを植民地にしていた時代に逆戻りしたいということになる。

これからの時代において核兵器は使うべき兵器でも、使える兵器でもない。しかし、国家として独立し、その尊厳を互いに認めるというのなら、全ての国家は核抑止力をもち、その上でその責任を自覚すべきである。生来のならず者国家など、存在しない。(補足5)

もし、しばらく時間的余裕を欲しいと思うのなら、繰り返しになるが「北朝鮮がリビア方式のように核廃絶するのなら、北朝鮮と平和条約を結びクシュナー大使を北朝鮮に派遣する」という位の合意が必要だろうと想像する。北朝鮮と取引(DEAL)をするというのなら、何かを交換するというのが通常取引の常識だと思う。「命令に従え」というのなら、取引ではない。

追加(17:00):佐藤優さん出演の「くにまるジャパン」では、合意は段階的核廃絶でなされ、第一段階はICBMのみの完全廃棄だろうと解析している。そこで、北朝鮮の経済支援が始まり日本が主となって参加する羽目になるだろうという話である。この悲劇的な日本の外交の背景には、森友問題などでの官僚パッシングと政府の官僚を見捨てる姿勢があるという。外務官僚たちは、体を張って現政府に協力しても、失敗すれば見捨てられるだけで割りが合わないと思っていると分析している。https://www.youtube.com/watch?v=scPML3QIEzg

補足:

1)孤立系とは物質やエネルギーの出入りのない系である。その体積が不変なら、局在していたものは拡散するというのが、自然科学の法則である。
2)なんどもブログに書いたように、朝鮮戦争を終結せずに今まで引き延ばしてきた責任は米国にある。
3)米国は東アジアでの平和確保など目的ではなく、北朝鮮から核兵器を廃絶すること自体が目的なのかもしれない。それは、米国など数カ国による世界支配の固定化という大きな目的を背景にしている。
4)国家はエゴイズム的存在なのだろうが、それを弱肉強食の原理で解決するのは20世紀までの話にしてほしい。
5)北朝鮮がならず者国家だとすれば、それは反対側にいる身勝手な国家が育てたと考えるべきである。