2021年4月27日火曜日

近衛文麿は日本の敗戦を策謀したのか?

1)林千勝氏の対米戦争に対する理解:

 

昨日、非常に興味ある講演をyoutubeで聞いた。近代史研究家の林千勝氏による「近衛文麿にみる大日本帝国敗北の教訓」である。近衛文麿は、風見章などの共産主義者(或いは社会主義者)を利用して、大日本帝国を敗戦に導き、昭和天皇の退位から近衛家支配の日本を考えていたというのである。

 

この内容は既に、林氏による「近衛文麿の野望と挫折」に書かれているだろう。その書評にも興味ある意見が書かれているので、参照すべきだろう。

 

林氏の講演では、近衛文麿は日本で共産革命を起こそうとした訳ではないが、革命を目指す風見章ら共産主義者を、上記近衛の野望の為に利用したというのである。その状況証拠として、敗戦後に天皇退位を画策したり、占領軍に取り入ろうとしたなどの不可解な行動があるという。林氏は、近衛は自殺したのではないと言っている。

 

 

つまり、東京裁判で近衛の考え方を聴取して裁くことになれば、それは米国の東京裁判のシナリオに狂いを生じるというのである。Fルーズベルトの側近であったアルジャー・ヒスだけでなく、Fルーズベルト自身にも、共産主義の影があったからである。

 

ゾルゲ事件の尾崎秀実(コミンテルンのスパイ)は、近衛の側近であったことまでは周知である。日米ともに、その中枢が共産主義により深く染まっていたのである。(補足1)林氏のモデルなら、尾崎秀実の正体は、近衛文麿も承知の上だった可能性が高い。

 

近衛文麿の自殺で、東京裁判は米国のシナリオどおりに行われることになった。それを可能にした近衛文麿の自殺は、上に書いたように、実は自殺ではないと林氏が言う。勿論、本来は気の弱い近衛文麿だろうから、自分のシナリオが潰れたことを知れば、充分自殺の動機となった可能性もある。

 

戦争をしないとの公約で大統領になったフランクリン・ルーズベルトにとって、真珠湾攻撃はまるで自分たちが仕組んだような効果を発揮し、(補足2)対日戦争を可能にした。その結果、日本の敗戦は確実だと、政府や軍の重鎮だけでなく当の山本五十六も理解していた。山本五十六は、「半年や一年は暴れてみせる」と言ったのだが、戦争に勝てるとは言っていないのである。

 

昭和12年から14年にかけての日本陸軍などの解析では、米国との戦争は無理だと結論付けていた。更に、打開策を検討した陸軍は、秋丸機関(陸軍省戦争経済研究班)をつくり、英米に勝てる戦略を練った。その結果、主戦場をインド洋にし、英国を叩くことを主な戦略として戦う案を作ったという。

 

米国は当時厭戦の国であり、Fルーズベルトは世論を説得することに手間取り、なかなか動けないだろう。そこで英国を叩いてしまえば、尚動きにくくなるだろう。もし、米軍が太平洋に出て来た場合は、マリアナ諸島あたりで待ち受ける戦略を取るというのである。勿論、日本優勢の間は講和のチャンスがあるかもしれない。

 

また、満州から中国の本土(漢民族による元々の支配域)へ侵攻することには、軍の首脳には反対意見が多かった。東南アジアへ進むことが主目的であったにも拘らず、支那事変の泥沼にはまったのは、何故なのか。象徴的なのは蒋介石が逃げ込んだ内陸部の都市である重慶の爆撃だった。

 

これは国際条約に違反する民間人虐殺であり、米軍が終戦近くになって行った日本の大都市爆撃に対する躊躇を取り除いただろう。その動機は、蒋介石を叩くことで中国の共産主義運動の応援になるからでは無かったのか。(補足3)何故、負ける戦争に日本は突っ走ったのか? その謎に答えるには、以上の疑問を含めて、戦後歴史の総括が必要である。

 

その一つのモデルとして、この林千勝氏のモデルは非常に有用であると思う。ただ、その総括をしないのは、現在の日本政府は戦前の日本の延長上にあることである。何度も書いてきたが明治以降の近代史の総括が、日本復興の近道である。

 

2)ここで一言:

 

 日本文化の欠点は、このような全く新しい見方が出てきた場合、それを100%否定する勢力と熱狂的に賛同する勢力に分かれ、その間には感情的対立しか生まれないことである。採るべきは科学的な姿勢であり、それは、自分に反対の言論を歓迎する姿勢である。両者の議論が、自分やその議論の相手を、目標に対する正しい理解に導くからである。

 

日本のyoutube動画、具体例を出して恐縮だが、例えばチャネル桜の議論や松田政策研究所チャンネルの議論(補足4)などを視聴すると、それらは議論というより仲間内の談笑に近いことを強く感じる。

 

林千勝氏のこのモデルは、正しいかもしれないし、正しくないかも知れない。しかし、今後の議論の出発点になり、日本の歴史研究を、あの対米戦争に対する合理的な理解まで進めて欲しい。更に、日本国民の多くが、その成果を踏まえて当時の世界と大日本帝国を理解することにより、日本の将来の方向を探しあてて欲しいと思う。

 

日本文化について、あのカルロス・ゴーン氏が言っていた言葉が印象にのこっている。「フランスでは、トップが何かを決めた時、議論が起こるが、日本ではトップが何かを決めたら、議論は終わる」恐らく、議論が終ったあとに間違った方向に進むのだろう。オープンな議論こそ、国家を正しい方向に進める。

 

(18時、少修正あり)

 

補足:

 

1)当時の国際共産主義運動を、現在の共産主義に対する評価を念頭に評価するのは間違いである。当時は、将に、国際共産主義運動の黄金期だったので、その雰囲気とソ連革命や毛沢東の台頭などを念頭にして、当時の日本や米国での共産主義運動を考察する必要がある。

 

2)米国ほど秘密の多い国はない。それは権力の二重構造が原因だろう。9.11の爆撃を告げられたジョージ・ブッシュJRの、何も無かったかのように落ち着いた行動などもその一つである。

 

3)毛沢東は、日中国交回復の際に、日本に礼を言ったことはよく知られている。軍人の一部は、終戦後も共産軍に参加して、蒋介石と戦ったこともその理由だが、毛沢東が言ったのは、それよりも支那事変全体に関してのものだろう。

 

4)ここでの新型コロナ肺炎を日本の風邪と同等と見る多くの番組には辟易とした。反論を書いたが、現在ではその動画は削除されている。

 

2021年4月23日金曜日

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか(II)

表題の文章を書いて半年以上経った。ここで、もう一度この問題を考えてみる。新事実も出ているので、もっと説得力のある議論が出来るかもしれないと思ったからである。その第一報は次の記事である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12629638596.html

 

1)共産中国の独占資本主義

 

中国の資本主義経済体制の本質は、中国共産党が中国株式会社を経営して利益を上げることである。そして、その利益を最大化する時の条件(束縛条件)は、共産党政権の力及びその支配域が減少しないことである。「労働者である国民個人の人権、欧米文化としての法の支配、民主主義の知恵」などへの配慮は不要であることは、香港やウイグルなどの件で明らかである。

 

この方式は、鄧小平以来の高度成長期には成功してきた。ただ、経済力がつくに従って、現場上層の共産党員による私的利益追求がひどくなった。一般に、中国人は公(おおやけ)を信用しない。一族の繁栄は、地方や中央政府(つまり中国共産党)の中に出世する人物を輩出し、そこから冨の流れを得ることに掛かってくる。この中国のコネと賄賂の文化は、小説ワイルド・スワンズのあちこちに書かれていることである。(補足1)

 

中国を世界の工場とし、国民を奴隷のように、そして一部は本当に奴隷にして働かせ、冨を築く方法は、高度成長期を経て行き詰まってきている。その原因は、上記腐敗もその中に入るが、第一に周辺国と比較した場合の人件費の高騰である。(補足2)この高度経済成長の後期に現れる“泥沼”を乗り切るには、中国人民大学翟東昇教授の講演にあったように、世界に冠たる産業を何か急いて築き上げることである。

 

その際、欧米文化の「法の支配」などには拘っている余裕はない。知的所有権は無視して、技術の差は盗み(補足3)で埋め合わせて、5G技術など先端産業で世界シェアを取ることである。更にそれを盤石にするのは、それらのバックグラウンド技術を、中国製造20251000人計画で作り上げるのである。民間企業的なファーウェイなども盗聴でも何でもして、親会社の中国共産党のために働くのである。

 


https://www.youtube.com/watch?v=C-M00hLqxg0

 

高度成長期が終わり、先進国の中で確たる地位を得るには、本当は、その国のこれまでの歴史と文化が重要になる。国民が知恵や真理を愛すること、公のルールに敬意を持つことなど、“ソフトなインフラ”が、ハードなインフラである道路や鉄道網、エネルギー設備、それに上下水道などの整備に加えて必要である。

 

中国は、時間のかかるソフトなインフラの整備を無視して、国家権力による強制と洗脳でそれに代えようとしたのである。そのような西欧文化が数百年かけて築いた文明を、数十年でスキップしようとしたことが、欧米と衝突する原因となったのである。その中国の姿勢は、トランプ政権の米国が明確にしたことであり、トランプ政権の大きな成果の一つである。(伊藤貫氏による:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12654696184.html

 

一定期間内に高度成長から先進国として離陸しなければ、再び後進国に逆戻りする危険性が高くなり、習近平政権は内部から潰れる。また、習近平は広範な政治的バックグラウンドが無いので、問題をチャイナ7の合議制で解決する鄧小平以来の伝統に拘れば、江沢民が後継と考えた李克強などとの知的ゲームに巻き込まれることになり、失脚する可能性が高くなる。

 

つまり、習近平の独裁政権への移行は、高度成長期の終わりであったこと、強固な政治的背景を持たない人物がトップになったことが原因だろう。(補足4)そのため、独裁化には腐敗追放で政敵を次々と葬り去るという方法をとったのである。だれもが腐敗している中で、腐敗を口実に政敵を追放すれば、共産党全体に亀裂を生じるのは当然である。その亀裂をも、強引に権力で縫い付けるのである。(補足5)

 

このやり方は必然的に、鄧小平体制から毛沢東体制へ、そして、中世の王朝中国に向かって歴史を逆行することになる。欧米の歴史が築き上げた国際秩序や人権重視の政治文化を無視して、国家の権力と領域を拡大されては、周辺国はたまったものではない。例えれば、フビライ・ハンの中国が、大きな経済力と軍事力を持って地球上を闊歩すれば、世界にとっては大きな脅威である。

 

世界は現在、自由主義陣営と共産党中国との深刻な対立、新冷戦になっている。経済的に中国と太く結びついてしまった今、距離をとることは経済的に大きな損失を伴う。その一方、中国に世界制覇を許しては、ウイグルやチベットのように、或いは、それ以下に扱われるだろう。何方に転んでも、無事には済まないのである。

 

2)米国のリーダーシップと先進国諸国のとるべき姿勢

 

法の支配と個人の人権を重視する先進国は、人類のこれまでの歴史を護るという自覚と、それを貫徹する覚悟をもつべきである。米国はそのリーダーとしての責任を果たすべきである。そのためには、米国は自国内の混乱の原因を探し出し、それを先ず克服すべきである。

 

バイデン政権にそれが出来るのか、かなり疑問である。何故なら、米国の民主国家体制も中国の体制のように、国家資本主義化していることが考えられる。その中心勢力に担がれたのがバイデンだからである。

 

昨年から今年の大統領選挙をめぐる民主党系勢力とトランプ側勢力との戦いでは、本来重視されるべき事実と論理が軽視され、途上国の選挙のように観えた。もし、トランプが伝家の宝刀である戒厳令を発布し、もし部分的な軍政が布かれた場合、将に内戦になっていた可能性すら存在する。

 

一例をあげる。先の選挙で大きな役割をしたのがBLM運動である。BLM運動は、黒人差別撤廃という人権問題としての運動では無かった。BLM運動の本体は、ベネズエラやキューバで共産主義の教育を受けた4人の女性が設立したblack lives matter global networkである。BLM global network の共同運営者であるパトリッセ・カラーズ(37)が今年3月、約15000万円の豪邸を購入していたのである。https://news.yahoo.co.jp/articles/5d34ba558fd044c4c53758c875366493b5ffc740

 

場所は「居住者の大多数が白人であるロサンゼルスの高級地区」である。そして、彼女が2016年から配偶者とともに複数の不動産を購入しており、総額320万ドル(約34000万円)にもなることも報道された。つまり、BLM運動は人権問題の仮面をかぶり、多くの黒人を中心とした人権派を巻き込みながら、中心部分はある勢力の傭兵だったのだ。その「お金の出どころ」はいったいどこなのか?

 

その他、大手マスコミが歪めた情報を流し、プラットフォームであるはずのyoutube、ツイッター、フェースブックなどが、トランプ派の情報発信を妨害したのは、自由と人権、法治の国の選挙とは思えない。その米国の姿は、共産党政権の本質と良く似ている。違いは、中国の共産党に相当する部分が米国では表面に出ていなかったことである。昨年の選挙に絡んで垣間見たその正体が、上記BLM運動や、ユダヤ資本の方々が語るポリティカル・コレクトネス、それに追随して金儲けに走るGAFAMなどである。

 

米国の分裂とは、アメリカ社会全体が真実よりも自分の利益を優先する(中国同様)何でもありの資本家たち(米国のエスタブリッシュメント)と、フロンティア精神と自由と人権を重視する古き米国との分裂である。前者の勢力は、建国時の精神や文化を破壊するためと安い労働力を得るために、大量の移民を入れて米国を変質させることを目指した。それがホンジュラスから大量の移民キャラバンを支援したユダヤ資本らが考える米国を変質させる手法だろう。それに追随しているのが、GAFAMである。彼ら新しい巨大資本には、古き良き米国に共鳴する部分がある筈である。

 

上記先進民主国のリーダーとして米国が本来の役割を果たすには、先ずこれらの混乱を修復をしなくてはならない。その意味では、現在バイデンが唱えている米国の統一は正しい方向である。しかし、バイデンは米国を分裂させた側の代表であり、当の本人にはリーダーになる資格はないだろう。そして、トランプは中国の本性と米国の原点を明確にした功績は大きいが、分裂する米国のもう一方の当事者であり、歴史的役割は終えた。

 

つまり、天才トランプの役割は終わり、これからはポンペオなど共和党の若き(と言っても壮年だが)中心部分に座る方々の時代である。彼らが先進諸国のリーダーとなり、中華秩序の暗黒の未来から、世界を救うべきである。トランプさんは、自分の役割が終わったことを理解し、彼らの背後で力添えをすべきである。MAGAの標語はもう賞味期限ぎれであることをトランプは知っている筈である。

 

3)中国の今後の方針と民主主義国家の対応

 

先日紹介した中国人民大学翟東昇教授は、「中国が世界の工場として稼いだ資金は、米国などの国債の購入となった。先進国は債務を際限なく膨張させることで対応できた」と発言した。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12666893508.html

 

国家の債務超過は、物価上昇を誘発するが、それは債務の一部帳消しに等しい。そして、中国がデジタル人民元を発行して、世界の決済通貨にするという計画は、中国共産党政権が潰れない限り可能だろう。世界経済の中で、確固たる技術を背景にして先端工業製品や医薬品などを供給する能力があれば、政府の債務超過はあまり問題ではない。為替レートと物価が適当にその帳消しの方向に動いてくれるからである。

 

習近平政権の中国製造20251000人計画の背後に、このシンクタンクの学者のような人が戦略を練っているのだろう。彼らは、ベースに何も置かずに戦略を練るので、日本にはない大胆な発想と実行力を発揮する。

 

中国は、今回の新冷戦で一端世界の権力から遠ざかるかもしれない。しかし、アフリカや南米などの発展途上国を纏めることで、デジタル人民元の決済圏を形成するだろう。そして、再び米国圏に挑戦することになるだろう。中国国債が優良資産(補足6)なら、無限に発行可能である。その便利さは、自然と利用者を増加させ、それにより信用も自然にできるだろう。つまり、中国共産党政権が盤石であれば、デジタル人民元は貨幣の3要素を保持できるだろう。これが現在の債務超大国の米国に学んだことである。

 

その中国にとってあまり良くないシナリオで歴史が進む前に、「中国の経済停滞は世界にとって脅威である」という論理(補足7)で、中国の手先となって働く人達が多く現れ、今回の新冷戦も有耶無耶になる可能性も残されている。つまり、中国からのデカップルには不況と戦う覚悟が必要であるのだが、株式会社の経営者にはそのような長期の視野を持つ者が非常にすくないのである。

 

これまでの人類の歴史を破壊しないためには、それ(デカップル)は乗り越えなければならない山上の関である。その結果生じる不況は、市井の一般人には全く理不尽に感じるものだろうから、先進国のトップはそれを充分理解し、民主政治の中で国民を説得しなければならない。中国首脳が独裁の有利さを強調するのは、堕落した愚民の指導は、民主主義体制では極めて困難だからである。

 

ニュージランドはこの1月に中国と自由貿易協定を結んだ。外相は、5アイズは情報の共有であり、政治の共有ではないと言ったという。オーストラリアが説得に乗り出すというが、首相が事の重大さを理解していない可能性がある。https://www.youtube.com/watch?v=30WM0GT8Fk4

 

また、ドイツとフランスは16日、バイデンの主催する会議に先立って、中国と気候変動会議に開催した。現在のドイツは、社会主義国家の延長であり、中国に理解を示すEUの中心になっている。フランスのマクロンも経済のことで視野が短くなっている可能性が高い。https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000213189.html

 

終わりに:

 

民主国の足並みを揃えるのは、繰り返すが、バイデンレベルがリーダーの米国大統領なら、容易ではないだろう。次回の米国の選挙では、もし米国がFRBなどを牛耳っている一派なら、ポンペオなどを落とすために、共和党からはトランプを応援する可能性がある。賞味期限切れの利用であり、内戦覚悟の最後の手段である。

(11:10 最後の節は、大胆な終末論なので、「終わりに」と別項目にした。)

 

補足:

 

1)政治的プロセスにおいて多少の金の動きは、中国の文化であることは、数年前までは、元富士通総研の柯隆氏がテレビなどで言及していたことでもある。

 

2)国民を奴隷のように働かせるというのは、国民の福祉が最優先ではないという意味である。国民の生活向上は共産党支配の中国の力の基礎となるので、その意味で国家の目的である。更に、賃金の上昇は内需の拡大となり、バランスのとれた経済発展にも必須である。

 

3)半導体チップでの集積度は、素子のパッキングの細かさで決まる。4nmのチップが可能で世界シェアの殆どを抑えるのが、台湾のTSMCと韓国のサムソンである。中国が台湾を吸収したい大きな理由の一つは、TSMCを手に入れることだという人も多い。

 

4)胡錦濤は後継に李克強を考えていたが、それを防ぐために江沢民が習近平を担ぎあげたという。胡錦濤までは鄧小平の威光を背景にした政権だったが、習近平は始めて鄧小平時代が完全に終わったあとの政権となったという。https://www.musashino-u.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00017977.pdf&n=06_%E5%8A%A0%E8%97%A4%E9%9D%92%E5%BB%B6%E5%85%88%E7%94%9F.pdf

 

5)汚職追放は、重慶の薄熙来の手法である。薄熙来が習近平とトップの座を争う競争に名乗りをあげたものの、勝てそうにないので、腐敗追放を看板に掲げて国民の人気を取った。これがかなり成功したので、そのモデルに倣ったのだろう。因みに薄熙来も巨万の冨を裏で稼いでいたことは明白であり、その後自分自身の失脚の原因とされた。

 

6)youtube動画MOTOYAMA氏は、日本の年金基金の半分は高利の中国国債で運用されていると言っている。これは未だ裏をとっていないが、MOTOYAMA氏の言うことだから、確かだろう。

 

7)「中国の国家資本主義が脅威でない理由 ~世界経済に深刻なダメージを与えるリスクはむしろ中国の長期停滞」キャノングローバル戦略研究所研究主幹、瀬口清之氏の文章は、中国文化とその危険性を全く無視する中国のスパイのものような感じがする。https://cigs.canon/article/20190926_6004.html

2021年4月20日火曜日

小室圭氏の裏に資金提供する大きな存在は?

小室圭氏と秋篠宮眞子さまとの婚約が内定と報じられてから4年以上経過した。その後、宮内庁が結婚に向けた行事の延期を発表(2018年2月)した。その原因の一つと言われているのが、母親とその元婚約者の金銭トラブルである。

 

今年になって、小室圭氏による長文のメッセージが提出され、それに元婚約者が強く反発するなど、依然事はスムースに運ばない。そこで、412日、母親の元婚約者に解決金を支払う意向を、4月12日に示した。

 

この件の表に存在するのは、小室圭氏とその母親、母親の元婚約者、秋篠宮家眞子さまとご両親(皇嗣秋篠宮様と紀子様)だが、その背後には大きな存在が感じられる。勿論、この件は日本国民にとって、皇室のあり方を考えた場合非常に重要だが、ここでの大きな存在とは、その国民を動かして何かを企む機関や者たちのことである。

 

小室圭氏が解決金を支払うという姿勢には、その資金の目処が立っているということである。小室圭氏の現状から、それは第三者からの新たな借金或いは資金譲渡がなければならない。その論理が、背後にある大きな存在という推測の一つの根拠である。

 

この件、メーガン妃の問題と少なくとも表向には良く似ている。英国の王室の件はここでは論じないが、以前に書いた記事を引用しておきたい。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12664073794.html

 

話を元に戻す。もし日本の皇室に何らかの打撃を与えることが、大きな成果になる存在があった場合、今回のゴタゴタ劇の始まりである3−4年前に、それを利用しようと考えるのは、諜報機関や政治組織の常ではないだろうか。つまり、そのような背後を考えて、国民は自分の意見を形成すべきだと思う。

 

菅総理の訪米時に、バイデン米国大統領が、眞子さまと小室圭氏の結婚について進めるべきとの意見を出すかどうかが、注目されていた。日米関係を重要視する米国政権の現況では、それはないだろうと思う。実際、今朝の速報ではそのような話はなかったようだ。https://news.yahoo.co.jp/articles/95958ac835da739f66487420731b9ac70c8f3ff8

 

この様々な動きを解説する文章や動画は多いのだが、ここでは、篠原常一郎氏によるyoutube動画をニュートラルな立場で引用しておく。https://www.youtube.com/watch?v=MfGVJlzgRac (4/13)&

https://www.youtube.com/watch?v=J95nmXVBhEY (4/15)

 

 

ここで言いたいのは: この件を眺めて、利用したいと思う外国の勢力は居ない筈はないだろうということ、そして、最近の動きの本質を知るには、その外国の勢力にまで視野を広げて考えてみる必要があるのということである。

 

追補1:ここで篠原氏が手に持つ本は、安積明子著「眞子内親王の危険な選択: 皇統を揺るがす一大事」である。

 

追補2

この小室圭さんの問題に関して、非常に詳細な解説をみつけました。それをここに紹介して、追補2とします。

 

 

2021年4月14日水曜日

新型コロナ肺炎の死亡率について

元衆議院議員(元財務官僚)の松田学氏のyoutubeサイトで、新型コロナ肺炎に関する動画が削除されたようだ。真実を報道しているのに削除するyoutubeの姿勢に、全体主義的な空気を感じると、米国大統領選挙の際の同社の姿勢を引き合いに出して、松田氏は批判している。

 

その削除された動画は、新型コロナ肺炎(Covid-19)に対する大阪市立大医学部名誉教授の井上正康氏の仮説を紹介したものであった。この削除された動画の主旨は、同じ東大の同窓生の知人が語っていたこととして、以前から紹介していた内容であった。

 

松田氏の自説と殆ど同じ説を主張する学者を選んで出演してもらい、自説を補強するために流した動画だと思われる。その自説動画は、昨年4月14日に発表されており、今でも視聴できる。

https://www.youtube.com/watch?v=TDnyYYtTd4Q

 

そこではCOVID-19は、日本の土着の風邪に似た病気であると解説している。従って、日本人は既に集団免疫を持っており、それが原因で欧米の大流行に比べ、一桁から二桁低い被害で済んでいると主張している。

 

つまり、日本は大騒ぎしなくてもよく、スウェーデンのように、持病を持った方や老齢で体力の無い方のみを対象に隔離などの対策をすれば良いという意見である。もしその通りなら、経済的損失が大幅に減少するだろう。

 

尚、削除された動画に出演していた井上正康氏の主張は、「本当は怖くない新型コロナウイルス」と題して、出版されている。

 

2)データからの結論:

 

この日本人は集団免疫を既に持っているという仮説には説得力はない。何故なら、データの裏付けがないからである。そして、もし集団免疫があるのなら、何故現在も過去のある時期においても、実効再生産数が、長期に亘って1以上なのか?この疑問には答えられないだろう。

 

また、もし集団免疫があるのなら、感染発病しても重症化率や死亡率は低い筈である。しかし、日本でのCovid-19発病者の死亡率は、欧米とほとんど変わらない。下の表は、WorldmetersというCovid-19の被害統計を毎日更新しているサイトのデータから計算した各国のCovid-19発病者の死亡率である。このことを知る日本の人は少ないだろうと思ったことが、本記事を書いた動機である。

 

 

発病者が多い国の順序で、その死亡率を、死亡者数/(死亡者数+回復者数)として計算した数値である。日本の死亡率の1.97%は、世界平均、米国、英国、ドイツなどより少し小さいが、大差はない。この事実からだけでも、日本に集団免疫が成立しているというのは、インチキ仮説であることが解る。

 

しかも、この病気が我々老齢の者にとって恐ろしいのは、老人を“選択的”に殺す点である。下は、東洋経済ONLINEというサイトからとった年齢別統計である。今日更新されたデータから計算した、80歳以上の発病者の死亡率は、16.3%と非常に高い。また、70歳代でも6.1%であり、老人が発病した場合重篤化する危険性が高く、インフルエンザよりもずっと恐ろしい病気である。

 

以上から、日本での欧米に比較しての低い感染率は、日本の健康志向の文化が関連していると思う。油断すれば、医療崩壊で欧米と変わらない被害を出す可能性があると思う。今回は、この指摘だけしておきたい。

開かれた民主国と閉じた独裁国との戦い:中国と米国等欧米との対立

1)開かれた本来の米国と理想論(共産主義)で閉じられた中国との戦い

 

人間社会は、家族、大家族、地域集団、更には、国家やそれがつくる国際社会へと成長してきた。この成長は、もとの構造を包含する形で大きく複雑化する様式で進行した。そして現在でも、家族は依然として、もっとも小さな人間関係の単位であり、社会構造の単位でもある。

 

この成長の段階で、古い単位から、権利の一部が上部の組織に譲り渡され、それがその上部構造を造るための素材となった。欧州でのこの社会の組み上げは、構成要素である人間の権利とその主張の自由を出来るだけ確保する形で成された。(補足1)

 

その西欧型社会の枠組に挑戦する国として登場したのが中国である。この中国の本性を明らかにしたのは、トランプ外交の成果であると、伊藤貫氏は下の動画で教えている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12654696184.html

 

昨年中国共産党政府は、香港、ウイグル、チベット、内モンゴル等で、人民の権利と自由を蹂躙した。その中国政府の振る舞いに、民主主義の世界は揺れ続けている。尚、そこで侵害されたのは、基本的人権であり、西欧において、社会構造を造るために譲り渡された権利ではない。

 

これら二つの社会では、構成員個人が社会に返上した権利が、大きく異なる。つまり、①共産党支配の独裁的な国家を為す中国では、平時においても基本的人権はない。一方、②個人あるいは大衆に開かれた国家中枢を持つ米国など民主国では、国家非常事態宣言が出ても尚、基本的人権の返上は抑制的になされる。

 

②の形態の特徴は、国家がつくる国際社会にも同じモデルを採用する点であり、国際社会の形態やルールに関する議論は、弱小国を含めて多くの国に開かれている。「善意」を信じる人達であれば、弱小国でも国際社会の中で存在し得るという安心感がある。

 

しかし、①の中枢は独裁政権であるから、国際社会の秩序を論ずる際に、他の弱小国家には議論が開かれていない。つまり、中国共産党政権のさじ加減により、弱小国の運命が左右される。この中国という国家のDNAは、弱小国相手の所謂「借金漬け外交」、他国要人に対する性や金銭によるトラップ、更には、多くの国を相手になされる戦狼外交などで、最近より明確になった。(補足2)

 

この世界史的な混乱は、この中華文明と共産党独裁思想とで作られた社会構造と、それ以外の日本、韓国、台湾などを含む欧米型の社会構造との間の、東アジア(西太平洋)での、地球規模の人類社会再編のプロセスである。このことは、「人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか」と題して、昨年10月5日の本ブログで、一度議論した。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12629638596.html

 

この争いの出発点は、政治と経済を分離して対中国外交を展開した、米国のニクソンとキッシンジャーの対中国政策:開放的な西欧文明が作り上げた繁栄する社会に、独裁的閉鎖的な共産党中国を、招き入れたことである。多数の羊が棲む牧場に幼い狼を敢えて招き入れたキッシンジャーの狙いは何なのか、人類への復讐なのか、聖書の予言の実現のためなのか?

 

共産党支配の中国と米国との密接な協力を、今だ主張するキッシンジャーという人物には、底知れない利己主義と恐怖を感じる。中国を巨大化してどこに導こうとしているのだろうか。バイデン政権が、この路線に戻らないことを期待したい。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12667547842.html

 

ニクソンはその後「フランケンシュタインを育てたかも知れない」と気づいた。昨年8月に書いた文章において、その補足3に書いた。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12617932531.html

 

 

2)開かれた社会とは何か?

 

ここで西欧が作った開かれた社会について少し書きたい。それは、米国を含め西欧社会も瞬間的には忘れることがあるので、注意が必要である。

 

開かれた社会とは、理想論を排する社会である。理想論に支配された社会は、彼らの理想以外の考え方を排除する。(補足3)人間の浅知恵では、理想モデルを立てても、何時かはその理想がとんでもない間違いに繋がる可能性が高い。

 

20世紀の共産主義がその典型である。勿論、開かれた社会では、21世紀後半?には共産主義の考えが必要になる可能性は残っているという主張も可能である。尚、理想論が社会を支配するとき頻繁に現れるのは、標語やポスター、短い言葉の繰り返しである。

 

それらは、民衆を洗脳するために用いられる。その段階では、その理想論を導き出した時の努力も経緯も忘れ去られ、それが宗教となって人を縛るのである。

 

一方、開かれた社会とは、理想を持たない社会であり、日々至らない部分を洗い出し、改良する社会である。そこで最重要なのは、事実の把握である。モデルは、足らない要素の洗い出しや、その改良とその戦略を立てる際に用いられる。

 

この開かれた社会を用いることで成功した実例を紹介したい。それは、科学の社会である。科学会では、最優先されるのは実験データである。ニュートンの法則やアインシュタインの理論も、完全なものとしては受け入れてはならない。全ての法則は仮説としての地位しかない。(補足4)

 

開かれた社会とは、文字通り反対論も受け入れて議論の対象にする社会である。そこで最高の地位があるのは、真実或いは事実である。開かれた社会の天敵は捏造や偽証、つまり嘘である。従って、政治的プロパガンダは、理想主義者の用いる手段であり、開かれた社会からそれを見れば極めて卑怯な政治手法である。言論の自由や学問の自由は、開かれた社会の鉄則である。

 

開かれた社会のもう一つの敵は無知である。「無知の知」は知を獲得する能力を言っているのであり、無知ではない。知と無知の区別にも関心がないのが、本当の無知であり、開かれた社会を無防備な社会とする。

 

3)健全な保守への期待:

 

 開かれた社会の主要なる政治思想は、所謂“保守”である。何故なら、保守は過去の歴史から学び、現在を考えるからである。故きを温ねて新しきを知る(温故知新)は、中国の論語の中にある有名な言葉である。それに加えて、新しい現象も良く観察して、政治に活かすべきである。

 

安易に理想論に走るのは、破滅の基である。カール・マルクスの言葉「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」は理想であるが、あまりにも安易な理想論である。人の欲望は無限であり、更に、その無限の欲望は、他人の権利侵害をも含むのである。

 

人は善良なる面を持つと同時に、邪悪な存在でもある。その人間の本質を深く考慮しない理想論は虚しい。日本社会は、中国同様本質としては、開かれた社会ではない。この点については今後議論したい。(14時20分;15:00編集あり)

 

補足:

 

1)この社会構築のモデルから、家族の崩壊を論じることも可能であると思う。つまり、社会の構造を、権利の返上という面から考えた場合、その様式は政治や経済、及びそのための人の行動様式などと密接に関係する。それらが国家の枠組みに影響するのなら、それは同時に家族にも影響する。

 

2)習近平政権になり、一帯一路構想やAIIBの設立などを経て、この中国の性質が明らかになった。中国はその社会構造に関して、欧米とは全くことなった思考の枠組みを持つことは、法輪功弾圧、ウイグルジェノサイド、南シナ海の岩礁の軍事基地化などで明らかである。自らの国際法無視を文化の違いだとして片付ける姿勢は、西欧文明に譲歩する姿勢がないことの表明である。

 

3)理想論とは、英語のidealismであり、頭の中での考え(思いつき)や論理のみで世界を論じることである。理想は、最上という意味ではなく、“頭で組み上げられた”くらいの意味。このアイデアルと理想的(=最高)の間の語感の違いは重要である。

 

4)ナノ(10億分の1)からサブナノメートル()の世界での電子の振舞に対する記述法を得たことが、近代科学技術の基礎となった。ほとんどの化学反応やナノの世界での物質の性質の説明は、量子力学を用いて始めて可能である。しかし、量子力学は直感的には理解が困難であり、言語上は矛盾を含む。それがアインシュタインが、量子力学の基本である確率波などの理論に強烈に反発した理由である。量子論の出発点が、アインシュタインが発見した光電効果だったことは、非常に教訓的である。言語は、我々の棲む巨視的世界を記述するには適切だが、ミクロの世界では通用しないのである。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74308?page=3 

この教訓は、巨大化した世界の社会構造を考える上でも重要である。人間に与えられたチャンスは、この開かれた社会という構想にこだわることにあると思う。

2021年4月12日月曜日

客のマスク拒否が騒動に発展する原因:日本社会に欠けた法の理解

1)再びマスク拒否事件:

 

今朝のTVニュース(朝日系)で、千葉県のある食堂でのマスク拒否騒動が放送されていた。30代の男性が店員の要請にもかかわらずマスクを拒否して、トラブルになったのである。マスクをしてくださいという「お願い」が掲示されていたが、客のOさんは拒否したのである。

 

多分、店員のOさんへの要求は、他の客の要請に基づいて行われたのかもしれない。店員との口論の末、どちらからともなく暴力行為の応酬となり、警察が呼ばれることになったのである。

 

驚くことに、このOさんは、以前ピーチ航空機内でマスク着用を拒否してトラブルになった事件の当事者であった。その飛行機は、航路途中で着陸してOさんを下ろし、結局2時間ほど遅れて目的地に到着した。昨年9月のこの事件は、結局業務妨害か何かでOさんが起訴されたようだ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/97284

 

この男性が関与したネット掲載のマスク騒動は、合計4回ほどあるというのも驚きだが、更に驚くのは、Oさんは、大阪の裕福な家庭の出身で、京都の名門私立の洛星高校から東大法学部に入学した“エリート”だったということである。https://newsmatomedia.com/okuno-junya

 

Oさんのマスク拒否の理由は、「マスク着用は店側の依願であり、自分には拒否する権利がある」である。その他に健康上の理由に言及したりしているが、それはどうも怪しいようだ。https://www.fnn.jp/articles/-/168006

 

このOさんが引き起こしたピーチ航空内での事件については、既に一度ブログに書いている。根本的な問題点はそこで書いている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12624090435.html

 

新たに一文書くことにしたのは、店側が簡単にこのような客を撃退する方法を示す為である。それは、店の前に「マスク着用に関しては、店員の指示に従うことを条件に、入店してください」との文章を掲示することである。

 

Oさんにマスクをしてもらいたいと店員が思ったときには、この掲示をOさんに思い出して貰えば良い。その指示に従わなければ、契約違反にあたると言えば、すぐに退去するだろう。この男は、論理を翳してマスク拒否をしているのだから、撃退も論理的に行えば良い。

 

2)日本の病根との関連:

 

日本の社会に欠けているのは、「日本は法治国家であり、社会のルールは法と論理に基づいて作られている」という認識であり、その教育である。つまり、個人が社会に出て(家庭外で)行う全ての行為は、法により裏付けられているのだ。

 

買物も、食事も、法的には契約行為である。契約書はいちいち交換していないが、ラーメンを店で食べる行為、お金を支払う行為は、食物の売買やサービスの提供に関する契約行為である。そのことを学校で教育していない。

 

契約には条件があるのが常である。つまり、(繰り返しになるが)飲食店は、マスク着用をお願いとしてではなく、契約の条件として店の前に掲示すれば、このようなトラブルを防ぐ事が可能である。Oさんは東大法学部を出ているのだから、このようなトラブルの際にその契約の事実を指摘すれば、すぐに退散する筈である。

 

因みに、私はこのブログ・サイトで、日本社会のいい加減さについてはいろいろ書いてきた。「日本の病根」の項目中の記事をご覧いただきたい。

 

その第一が、国家の基本法の体をなしていない憲法である。第9条の2も大問題だが、その他にも、非常事態宣言の項目がないことも欠陥の一つである。(補足1)そのため、新型コロナの強力な防疫体制が、個人の権利侵害を含むかたちでなかなかとれない。(補足2)https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12587503729.html

 

日本は明治以来、西欧のマネをして、社会を構築してきた。出来るだけ多くの個人が、社会(国家)のモデルを原点から論理的に構成し持つことが、日本の近代文明を西欧の猿真似に終わらさないためには必要だろう。

 

因みに中国は、西欧文化を無視している。オリジナルな論理で脱西欧歴史&文化を主張している。(補足3)その恐ろしさに気づかず、憲法9条第二項をありがたがっているのは、日本人のほとんどが、原点から国家とその役割を考えていないからである。

 

終わりに: 私は、法律は素人である。何故、このような文章を書くことになるのか、自分でも非常に不可解に思う。

 

補足:

 

1)非常事態宣言が出来ないことの背景に、日本は国軍を持たないことがある。非常事態宣言の次にあるのは、戦時体制やその他の理由による軍政への移行である。

 

2)勿論、法律を制定して、マスク着用を義務化することは可能である。しかし、その憲法上の根拠は、「個人の自由は、公共の福祉の妨げにならない範囲で主張できる」(正確な文章ではありません)という部分であり、非常事態宣言の下での強制のような、国家による強い権力行使は出来ない。つまり、マスク着用を強要する場合、国家権力側が「感染もしていないひとでも、マスク着用を拒否することが、公共の福祉に反する」という根拠を示す必要がある。

 

3)この中国の姿勢と米国の「キャンセルカルチャー」の動きに連携があるかもしれない。これは近代西欧文明の危機である。

 

2021年4月9日金曜日

対中国外交で跛行する米国バイデン政権

3月18−19日アラスカで行われた米中2:2会談で、中国の楊潔篪が予定時間を大きく超えて、米国の対中姿勢を攻撃した。中国は、鄧小平の韜光養晦外交から習近平の戦狼外交にスイッチを替えたことを世界に印象付けた。多くの人は、一度出来上がった米中の対立は、簡単には修復不可能だと考えた。

 

そして、この米中の関係を背景に、322日、米国、カナダ、英国に加えてEUが、ウイグル人権問題での制裁に動いた。

 

しかし、アンカレッジでの会談の2日後3月20日に、米国と中国の橋渡役のヘンリー・キッシンジャーが、中国の北京で開催されたThe China Development Forum 2021にビデオで参加し、今こそ米中は協力的な関係を強めなければならないと、挨拶していたのである。https://www.youtube.com/watch?v=KWnD1pbWik8

 

「大統領から周近平へのプレゼント」と第するyoutube動画 で、元記者の”motoyama”(ハンドルネーム)氏は、その会議での米側の参加者として、キッシンジャーの他に、クリントン政権のときの財務長官のロバート・ルービンや、オバマ時代の官僚、世界銀行の関係者らを挙げている。

 

 

中国新華社の子会社新華網が配信する英語版ニュースでも、上記中国発展フォーラムの様子が配信されている。それによると、元国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、協力的でポジティブな米中関係の重要性を強調し、それに向けてこれまで以上の努力を呼びかけた。

 

キッシンジャーは次の様に発言した。現在、米中は二つの偉大な社会であり、個々には別の文化と歴史を持つため、時として異なった方向を見ることは当然だろう。しかし同時に、世界の平和と繁栄は両国の相互理解に依存しているため、現代の技術、地球規模の意思疎通、およびグローバル経済は、これまで以上に両国の集中的な協力的実践を必要としている。( require that the two societies begin ever more intensive efforts to work together.) http://www.xinhuanet.com/english/northamerica/2021-03/20/c_139823698.htm

 

アラスカでの楊潔篪のパーフォーマンスは、一般には中国の国内向け発言だと理解されている。しかしその裏で開催された、本音を喋る非公開の会議において、米国バイデン政権は明確に米中の関係親密化に動いていたのだ。従って、アンカレッジでのパーフォーマンスは、米中共演の全世界向けだった可能性すら存在する。

 

北京五輪に対する姿勢も、このバイデン政権の対中姿勢の本質を表している。ニューズウィーク日本版の8日の記事によれば、「米国務省は当初、北京五輪のボイコットも選択肢のひとつだと示唆していたものの、その後、ボイコットの問題についてはまだ議論されていないと修正した」と報じている。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96018.php

 

つまり6日、ネッド・プライス米国国務省報道官は定例記者会見で、「米国が同盟国と北京五輪の共同ボイコットを協議しているのか」という質問に「明らかに我々が議論したいことだ」と答えた。

 

その後、中国から”スポーツの政治利用だ”という猛烈な反論にあった。

 

その勢いに動転したのか、翌日の7日、ジェン・サキ米国ホワイトハウス報道官は定例記者会見で「我々は、同盟国やパートナーとの共同ボイコットに対するいかなる議論もしておらず、現在進行中の議論もない」と述べた。https://news.yahoo.co.jp/articles/a3ccece42feef9ca9303befb43894fbe85febbe6


これでは、米国に同調して対中制裁に動いた国は、はしごを外されることになる可能性がある。今後米国の自由主義陣営のリーダーとしての能力が相当弱まるだろう。善意に解釈すれば、バイデン政権は、対中外交において跛行しているのだろう。(4月9日午後7時30分編集)

 

2021年4月6日火曜日

中国著名教授の傲慢な講演:パンデミック後のあたらしい一帯一路構想

12月6日頃に、YoutubeHaranoTimes氏が再録した中国人民大学翟東昇教授の動画は、米中関係の背後にユダヤ系資本家の協力があったこと、バイデンの資金供給に中国が協力したこと等を暴露した。https://www.youtube.com/embed/gTcWNnYltaU(このブログ・サイトでは127日に紹介した)

 

その動画は中国では削除されている。しかし、中国政府から独立していると言われるVision Times(本拠地は米国)の日本語版「看中国」が、話の内容とその中で出てくるユダヤ人女性の正体について、1211日に記事を書いている。https://www.visiontimesjp.com/?p=12134

 

その中国人民大学の国際関係学院副院長で、貨幣研究所の研究員でもある著名学者が、今度は新型コロナのパンデミックを、一帯一路構想をバージョンアップするチャンスだと主張する講演をしている。その動画を紹介しているのも、HaranoTimesさんである。https://www.youtube.com/watch?v=jDm2cz8JRQU

 

その講演内容が興味深いので、ここでその概要を紹介する。

 

1)講演の内容について

 

これまでの中国と先進諸国との経済関係は、ドル基軸体制下の米国を中心としたバブルである。西欧の資本投資により中国で大量生産が成され、輸出であげた中国の利益は、米国等の国債購入という形で欧米に還流する。

 

しかし、このグローバル経済を米国人の半分はもうやりたくないと考えている。彼らトランプ支持者はトランプに騙されている訳ではない。明確にグローバル経済に反対しているのだ。欧米諸国は既に年を取りケチになっており、この関係は長続きはしない。

 

そして、中国が利益をあげても、欧米が無限に信用拡大をすれば、中国の債権は希釈されてしまう。今後は、中国は欧米以外の50億人で、中国を中心にした新しい経済関係をつくるべきである。新しい債権と債務のバブルである。(補足1)

 

そこでは人民元が価値の基準となり、中国が(現在の米国のように)世界最大のマーケットとなる。そのためには、現在貧しい途上国の経済が発展して、そのマーケットの中で自立しなければならない。それは、途上国の王族や貴族では無理であり、中国が指導しなければならない。

 

何故なら、貧国には(自国民のための)強い政府がなく、それらの国の王族貴族は、欧米に投資して低い利子を貰うという無駄をしている。貧国が自立発展するには、輸出できる産業を育て、そのためのインフラ整備がなされる必要がある。そのために中国がそれらの50億人が属する貧国に輸出すべきは、強い政府を作る経験と能力である。(補足2)

 

先進国の資本、商品、貨幣の循環の中に入るには、それらの国は貧しい状態から競争力を持つ国に“離陸”しなければならない。その時、その推進力を産み出す「強い政府」がなければならない。その強い政府は、宗族、社会、家庭、非政府組織、メディア、世論等に対して、強いコントロールができなければならない。

 

ただし、貧国の人を、直接我々の社会に入れてはならない。異文化の人間の混住は、様々な衝突が起こるからである。我々も、五湖の激動などの悲惨な経験を知っている。(五胡十六国: 中国史上の民族大移動)

 

以上から、パンデミック後の中国が一帯一路の周辺途上国を対象に執るべき政策は:

 

 投資を増加して、資金貸しを減らす。途上国への債権増ではなく、設立された会社の株所有を増加すべき。それらの国々を周辺において、中国中心の人民元を決済通貨とする第2のグローバル・マーケットを築く。そして、世界から投資を呼び込む。

 

一帯一路上のこれらの国々に、分散投資ではなく集中投資をする。集中でなければ、制御ができないからである。

 

これらの国々には道路建設だけでなく、貿易可能品の産業育成を手伝う。これを現地の王族や貴族に任せてはならない。現在失敗しているし、失敗必定である。

 

具体的にはこの100年ほどの期間に、100程度の特区の設立をして、そこに例えばパキスタン人300万、インド人300万人、その他300万人の1000万人規模の都市とする。多種族は問題ないが、単一文化でなくてはならない。共通語はないので、中国語が公用語になる。

 

大体以上の内容である。

 

2)私の感想

 

翟東昇教授の講演は、中国の自分勝手な論理が満載されているが、それでも尚、論理の筋は通っている。現在のグローバル経済の金融の構造や、途上国が工業化できない理由なども正しい指摘だと思う。

 

「先進国の経済の中に一定の位置を得るには、先進国との間の貿易可能品を作り出す必要がある。そのためにインフラへの投資が必要だが、途上国の王族や貴族は、自身の資金を先進国に投資して低い利息を得ている」という指摘である。

 

これは王族貴族の愚行というより、利己主義である。つまり、強い政府があれば、或いは創る事ができれば、王族や貴族の資産は国内投資に向かう可能性が高くなる。しかし、現状では自国に投資しても砂漠に水を撒くようなことになることを知っているのだろう。(補足3)

 

自国への投資が可能になるには、一定の目論見が成立することである。それは、先進国の協力があって出来上がる。例えば、中国に対して米国(そして日本も)が果たした役割などがなかったなら、中国は工業国に離陸できなかっただろう。

 

早期に先進国の経済ループに入れば、その離陸のエネルギーが少なくてすむ。しかし、今となって(先進国が年をとっている現状で)は、途上国が自力で工業国等に離陸するのは困難である。

 

檻の中に置かれたような途上国の情況は、恐らく植民地主義の遺物だろう。植民地支配で、それらの国に王族や貴族と一般大衆という分裂が固定的に出来上がったからである。独立により途上国の富が、収奪されないとしても、それは途上国の王族や貴族に渡る。その結果、彼らによる欧米先進国への投資という形で、結局欧米に還流するだけだからである。

 

翟東昇教授の中華思想的な途上国開発のモデルは、非常に勝手なものである。最後の多民族都市の構築と中国語の公用語化など、その最たるものだが、それに反論するには相応のレベルの別のモデルを出す必要がある。

 (4月7日、早朝 表題を改める

 

補足:

 

1)このバブル(泡)という表現は、ここでは金融における債権と債務の関係が巨大化していくことだろう。いつかは破裂して無に帰するからである。会社の資産査定は一定のルールで成されて、債務超過の会社は破産となって潰れ、債権のかなりの部分は債権者に分配されるだろう。しかし、国家の債務超過、特に世界の中心となる国家の債務超過は、無限に大きくなり得る。覇権が別の国に移動すれば、これまでの覇権国には高度なインフレが発生し、これまでの周辺国が持つ莫大な債権は紙くずとなる。

 

2)この翟東昇教授の考えには説得力がある。ただ、その強い政府が、習近平の独裁中国では、この論理は成立しないだろう。つまり、翟教授が把握している現在の中国は、共産党の一党支配の国であり、習近平の独裁体制ではないのだろう。

それはこの動画の最初の発言、「私の民本主義政治経済学の理論観点から、一帯一路をどう建設すべきかについて話したい」から明らかである。

 

3)この点は大事で、如何にGDPの大部分が内需であるとしても、生活必需品(エネルギーや食料)を輸入しなければならないのなら、先進工業国の中に輸出できる品がなければ、その国(例えば日本)の経済は崩壊する。三橋貴明氏や藤井聡氏などの政府財政支出がデフレの元凶という考えの人達は、その点を看過していると思う。

2021年4月5日月曜日

国家における皇室や王室、歴史の役割

1)国家の権力と国民との関係:

 

人間の社会は、文明の発展とともに複雑化し、そのスケールも大きくなった。社会に秩序と安定をもたらすのは、構成員の意志とそれが社会において具現化した権力である。その権力の構造と機能は、文明の発展と社会の構造変化と伴に変化してきた。

 

西欧の文化と歴史は、社会の構造に主権国家という骨組を創りあげた。日本もその西欧文化に同化する努力を古くから行った。現代民主社会の視点では、①社会(国家)の安定維持と②構成員の福祉確保が、国家の役割であり目標である。(補足1)

 

国家の安定を害し、国民の福祉を害する要因には、内部で発生するものと外部から来るものがある。従って、国民は国家権力の主体であるが、その客体の一部でもある。もう一つの客体は、言うまでもなく外国勢力である。その権力発動を円滑に目的(上記①と②)に沿って行うのが、国家機関(政府)である。

 

国民の福祉が一応の基準で確保されていると仮定すれば、その外部要因、つまり外国による主権侵害への対処が国家権力の大きな役割となる。ただ、外国は、直接侵略の直前までは、内部から国家を操る方法、つまり諜報活動による間接的侵略で準備をする。それは、国内政治の“乱れや汚れ”であり、それは内部要因とも言える。(補足2)

 

まとめを感覚的なモデルで書く。国家権力は国民に由来し、その国内での行使の対象は国民である。国民が潜在的(本質的)に持つ権力を、国家機構の最上部にポンプで揚げ、それを国家機構が下流である国民の隅々まで流すのである。その権力の流れの中にあって、国民の棲む空間から上記の“乱れや汚れ”が除去される。その“国民による国家掌握の意志と実感”が、国家を正常に保つ。

 

2)王室や皇室の存在意義:

 

国民が持つ国家形成の意志を集合させ、その意志を具現化、エネルギー化したものが、本来の国家権力である。その国民が持つ国家形成の意志は、ナショナリズムと呼ばれるが、その中心にあるものがナショナリズムのシンボルである。そのシンボルに国民が心から誇りを持つ時、国家の内外からみた信頼性が増し、外交の力となると思う。

 

米国では、合衆国憲法が謳う、個人の独立、自由と平等や、米国史の中の開拓者精神、多様性とその連合などだろう。英国も、産業革命とその後の大英帝国の栄光や、議会制民主主義の発展などがあると思う。そして、英国の場合には、その歴史の中心に王室がある。

 

米国は直近の大統領選挙のとき、既に何者かに乗っ取られていて、彼らの株式会社の米国となっているような情況に観えた。少数の富裕層とその周辺は、その株式会社米国の手足を縛る「米国の建国の歴史」など消し去るのが良いと考えているようだ。米国のキャンセルカルチャーである。

 

それは国家の衰退或いは分裂の前兆の可能性がある。米国は多民族国家であり、元々国家のシンボルを持ちにくい。素晴らしい国歌と国旗を掲げても、それを見る目は、千差万別である。その株式会社米国が、世界の株式会社(普通の意味での)群の中に消滅する歴史の流れから“一昔前の米国”を救おうとしたのが、トランプでありポンペオであったと私は思う。

 

英国の7つの海を制覇したころの栄光にも、本質として同じような部分があったと思う。何故なら、世界覇権は、経済の中心にいたユダヤ金融資本の協力で為し得たと考えられる。例えばその支援で、スエズ運河を買収したことなどがその例である。

 

ユダヤ資本の米国移住とともに、世界覇権は米国に移った。そこから、英国は中心に王室を掲げて一つの民主大国となった。産業革命を成し遂げた科学技術文化、宗教改革から議会制民主主義を築き上げた政治や哲学の歴史は、人類に与えた偉大な財産である。(補足3)立憲君主国の中心の英国王室と、人類史の中の偉大な足跡などの誇りの上に、英国という国家は成立している。

 

国家が、その中心に残っている誇りある部分を維持しなければ、国民の心は分裂し、国は衰退するだろう。それが英国の王室であり、米国の建国の歴史であり、そして日本の皇室であると思う。

(4月5日、6:15 小編集)

 

補足:

 

1)この西欧文化を完全に取り入れることを拒否している国家がある。中国共産党(CCP)が支配する国は、上記①と②の社会の目標のうち②を軽視している。

 

2)この外国組織に諜報活動を仕掛ける方法として利用されてきたのが、社会主義思想や共産主義思想など所謂左翼思想、或いは、各種理想論である。これらの活動の主なる部分は、ある離散民族(ディアスポラ)により創出され、米国を基地として世界で展開された。

 

3)筆者は歴史には素人なので、この西欧近代史に関する理解は、伊藤貫氏と西部邁氏の対談を聞き、ブログとしてまとめたものです。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516726.html

 

 

 

2021年4月2日金曜日

新型コロナワクチンの効果について:

ファイザー社などの新型コロナワクチンは効果が高いようだ:

 

新型コロナ肺炎のワクチン接種が日本でも近づいている。その効果はどの程度なのかについて、疑問に思っている人が多いと思う。ファイザー社などから95%の感染予防効果が報告されて居るが、最近の世界はイカサマデータが横行する情況にあり、信憑性を疑う人が殆どだろうと思う。自分の問題でもあるので、公表されてデータを眺め、効果はどの程度なのか、考えてみた。

 

イスラエル:

 

ワクチン接種を一番早く行ったのは、イスラエルである。人口920万人のイスラエルでは、人口の9%以上が感染し、この1月10日から20日の10日間では、平均8500人程が感染した。日本の人口に換算すれば、毎日116000人が感染する酷い情況であった。

 

そのイスラエルがワクチン接種を始めたのが12月下旬、110日には既に人口の20%が一度は接種を終えている。その数字は、210日で42%、221日で50%、323日には60%を超えている。下に、World in Dataというサイトに公開された各国のワクチン接種率の時間変化を示す。(補足1)

 

 

イスラエルの日々の感染者数は、そのワクチン接種が効いたようで、その後急激に減少し、現在では一日500名程度である。そのデータから、今回のファイザー社のm-RNAワクチンには相当の効果があると推測される。

 

イスラエルの日々の感染者数を、Worldmetersというサイトから取って再録させてもらう。下図のように、第三波の頂点である120日の1万人以上の感染数から、急激に減少している。特に3月に入ってからの急激な減少は、特別な効果(つまりワクチンの効果)の存在を示している。

 

イスラエルでは、頑強にワクチン接種を拒否する人達も存在すると聞くので、接種比率は60%のところで飽和状態にある。それでも、ここまで押さえれば、現在の日本の感染数と変わらないレベルなので、経済活動には支障がなくなっただろう。

 

(因みに、日本、韓国、中国の100人当たり接種回数はそれぞれ、0.75、1.68、7.97である。)

 

英国:

 

他に、ワクチン接種効果が明確に現れているのが、英国である。英国では1月中頃から、一定のスピードで接種がすすみ、現在人口の50%以上が一回以上の接種を終了している。(最初の図参照)その結果、1月上旬には日に約6万人の感染者を出していたピーク時の感染者数が、現在では日に4000人程度まで落ちている。

 

このような効果は、フランス、ドイツ、イタリアでは見られない。これらの国では、100人辺りの接種率は、15〜17人の間にあり、少なくとも1回接種している人の割合は、恐らく10%程度である。

 

また、最近の一ヶ月の傾向として、英国とイスラエルの傾向とは逆に、これらの3カ国では感染者数が増加傾向にある。これらの二つのグループの中間にあるのが、米国である。米国の接種回数は、100人あたり44.1であり、少なくとも一回接種した人は多分30%位だろう。そして、最近一ヶ月、毎日の感染者数は、ほぼ増減無しである。

 

アラブ首長国連邦とチリ:

 

ワクチンがあまり明確な効果を示さなかった国として、人口約998万人のアラブ首長国連邦(UAE)がある。下に日毎の感染者数を示す。331日現在の感染者総数は約46万人であり、被害の一層の拡大を怖れた政府は、中国と契約して急いでワクチン接種を開始した。

 

 

 

第三波の2021128日には、一日で3966人(日本の人口なら5万人以上)の感染者を出している。UAEでは、16日以降ワクチン接種を始めて、現在では約830万回の接種を終わっている。1回以上接種した人は、人口の半分以上だろう。それにも関わらず、その日毎の感染者数は3月末で2084人であり、ワクチンの効果があったとは明言できない。

 

チリでは、330日現在、少なくとも一回接種している人の割合は、人口の35%程度であり英国よりも少ないが、100人あたりの接種回数は英国よりも多い。(補足2)しかし、この国の感染者数は、このところずっと上昇中である。主に使用されたワクチンは、中国シノバック社製である。

 

以上、ファイザー社やアストラゼネカ社等のワクチンには、かなりの効果があると考えられる。一方、中国製ワクチンは、あまり効果を示していない。(追補1)その原因として、中国製は古いタイプのウイルス株から作られた可能性が考えられる。それは逆に、今後第4−5波とパンデミックが続けば、現在のワクチンは効かない可能性を示唆する。

 

以上から、日本もファイザー社やアストラゼネカ社などのものを用いるので、ワクチン接種は有効だと予想できる。ただ、今年以内に制圧しなければ、新たな変異株の出現によって被害は収まらない可能性が高い。

 

追補1:MOTOYAMA氏は、自身のyoutube動画で、中国製ワクチンは偽造が殆どで元々効かないと言って居られる。そのように考える方が理解しやすい。以下の動画の6分ころから聞いていただきたい。尚、MOTOYAMA氏のyoutube動画は、日本語は若干たどたどしいが内容は信頼できる。

https://www.youtube.com/watch?v=49qPunsQ3l8

(18:00日本語の編集;4月3日早朝、追補を入れた。)

 

補足:

 

1)接種率は、World in Dataのサイト(https://ourworldindata.org/covid-vaccinationsから取った。最初の図には数日前まで、UAEの接種率を示す曲線が示されていた。どういうわけか、今日見たところそのデータは図1から消えていた。ただ全体の接種回数を、世界地図上に掲載している図があり、そこで殆どの国の100人あたりの接種回数を得ることができる。

 

2)アストラゼネカ社のワクチンは一回接種で良いという話である。英国ではアストラゼネカ社ワクチンが多く用いられているのだろう。