今年3月10日、サウジアラビアとイランが中国の仲介により国交回復に同意した旨を、北京から三か国の共同声明という形で発表した。この出来事は新しい時代の到来を告げているように見え、従って非常に大きなニュースである。
3月20日、習近平はロシアを訪問し、経済や軍事などあらゆる分野での協力を推進する旨の文書に署名し、翌日に共同声明が発表された。この間、非公式4時間半、正式に3時間の合計7時間半の対面対談があったようだ。https://www.youtube.com/watch?v=Fo65q-MLKtM
上のyoutube動画では、二人の会談の目的をウクライナ戦争に関する協力関係確認のためとしているが、それだけであれば、矮小化した報道と言わざるを得ない。そのような協力だけなら、習近平にとっては自らモスクワ訪問するほど面白い話ではない。
ウクライナ侵略の動機(プーチンロシアの)は、ソ連崩壊後に軍事同盟のNATOがその領域を広げ、同祖のウクライナまでもその勢力範囲に入れるように工作を続けてきたことへの反発と、そのNATO軍からロシアを防衛するためである。(補足1)
プーチンのウクライナ侵攻は、単なる領土欲或いは同じ民族の救出だけではなく、米国グローバリズム勢力から主権国家としての体制を防衛する為とも言える。習近平がわざわざモスクワに出かけたのは、中国も基本的にその考えを共有し、その方向で協力できるからと見るべきである。そうでなければ、7時間半も対面で議論などする筈がない。
日本では、中露の専制国家グループとウクライナを含む西側民主主義諸国の対立という枠組みで見る人が多いかもしれない。枠組の地理的設定は今のところ正しいが、 その勧善懲悪ドラマ的な見方は時代遅れであり、正しくないだろう。
米国中心のグローバル化勢力による世界支配に反対し、中露が主権国家体制を維持する勢力としての団結を確認したというべきだろう。トランプが「私が米国大統領なら、この戦争も中露の接近もなかった」と言うのは、彼も米国民主党のグローバリズムと対決しているからである。
もしトランプが米国大統領だったら中国とロシアは接近する理由がなく、むしろネオコンDS(ディープステート)の戦争ビジネスから卒業し、米国はロシアと「法と人権」を理由に接近していた可能性が高いと思う。(補足2)
ウクライナ東部でのロシア人の人権問題なども、ミンスク合意の完全実施という形で一応解決していただろう。そしてゼレンスキーは大統領職から離れていたと思う。
2)世界を二分する戦いとドル基軸体制の崩壊
今、世界は激変期にあり、政治経済において世界を二分する枠組みが作られようとしている。ウクライナ戦争はその境界線上での争いという性格がいよいよ明確になって来ている。同様の現場として、中東と東アジアがある。日本人としてはそれが非常に心配である。
今回の中露首脳会談は、ロシアと中国が新しい政治経済の枠組みを造り、既存の米ドル基軸体制から離れ、新たに例えば「元決済圏」を樹立する方向に合意したとみるべきだろう。https://www.sankei.com/article/20230322-Y7D7GN755RLYREDRRXOBSCYLSI/
サウジアラビアとイランの国交回復も、アラブが米ドル基軸体制からの離脱を考えてのことだろう。実際、習近平は昨年12月に中東を歴訪し、石油の元決済を提案している。北京での国交回復の合意は、このような意味があるだろう。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00006_W2A310C2000000/
この先米国の政策に変化がなければ、つまりトランプ派が次期大統領の座を得なければ、中露が主権国家体制維持の勢力、つまりナショナリスト勢力の中心となるだろう。その後、最終的にはインドやブラジルなどBRICS諸国が参加を表明する可能性がある。
そして、これら諸国が今後ドル基軸体制から離れて、元を決済通貨にする可能性がある。その結果、膨大な米国債を保有するFRBは崩壊し、米国は新たな通貨体制に移行する。FRBの崩壊は「未必の故意」によるものかもしれない。
元が国際決済通貨になれば、中国の債務問題は一旦解決する。世界の半分が元を決済通貨にすれば、元の供給量は大量になる。それは、中国経済の立て直しの方法を探る習近平にとっては夢のような話である。
逆に、日本などドル基軸体制にどっぷりつかって、ドル建て債権を将来に備えてため込んだ国々には地獄である。FRBのドルは紙くずとなってしまうからである。日本も超円安地獄に落ち、日本の途上国化は一層進むだろう。(補足3)
3)第三次世界大戦:
上記二つの勢力の境界、つまり中東と東アジアに位置する国々は、今後ウクライナのような状況に陥る危険性が大きいだろう。つまり、それは後の時代に第三次世界大戦と呼ばれるかもしれない。
ウクライナに関しては、最終的に昨年春にキッシンジャーが言ったような図式、つまりウクライナ東部二州の自治州とし、クリミヤをロシア領とする和平案で停戦になる可能性が高いと思う。
ゼレンスキー大統領が中国の習近平の訪問を要請したというニュースが流れているのは、その方向での合意を探るためだろう。ゼレンスキーは、中国の強い指導を受け入れざるを得なかったという言い訳を得た上で、ウクライナ戦争を終結させようという考えだろう。
ウクライナ戦争とは独立して、中東と東アジアの二か所で、両陣営の境界線引きのための戦争になる可能性が高いと思う。米国のネオコン政権が力を発揮すればするほど、戦争は激しくなるだろう。
早い時期に台湾は中国に吸収され、朝鮮半島は主権国家の統一朝鮮となれば、戦争は収まる可能性が高い。その場合、台湾は馬英九などの国民党が政権をとり、日本は中国の属国となるだろう。
日本と朝鮮半島にとっては、その方が傷が少なくて済むのだが、米国はそれでは済まない可能性が高い。共和党の下院議長が訪米した蔡英文をどのように遇するかで、それが見えてくるかもしれない。 これらドル基軸体制を潰すことと世界の二極支配にデジタル通貨の導入が、グレートリセットのさし当りの中身のように思う。
終わりに:
世界戦争のドサクサに紛れて、米国も新しい通貨体制に移行するだろう。その際、米ドルを外貨準備やドル建て債券として多額を保持するうるさい国々は、その大渦の中に消えればよいと思っているだろう。
民主党グローバリストらは、邪魔者が居なくなり、地球人口も少なくなり、新しい二極体制の涼しい地球を取り戻すことになると思っているだろう。RINO(名前だけ共和党)の人たちも同じだろう。デサンティスもマッカーシーもそのような人なのかもしれない。
兎に角、少なくともトランプだけは、そのようなシナリオの邪魔者なのだろう。以下のシマクラさんの解説における世界動乱のシナリオには概ね賛成である。しかし、それがトランプ元大統領による戦いであると言っておられるが、その考え方には私は反対である。また、9:20以降の内容は確認していないので、本記事の引用からは除外する。
(3/30/8:30;10:30;16:20 編集)
補足:
1)上に引用の動画の後半部分で中国関係の専門家である遠藤誉氏は、プーチンによるウクライナ侵略の動機を単に大ロシアの再興のためと解釈しているようだ。そして、それは許されるべきではないと日本の公式見解のようなことを言っておられる。それは、あまりにも動機を矮小化している。
国家主権の尊重などの国際法の遵守は、近代西欧の政治文化として大切だが、それを地球規模で侵害しようとしているのが欧米のグローバリスト勢力である。
人権問題も非常に重要だが、地球環境問題やパンデミックなどで個人の自由を取り上げる動きがグローバリスト勢力により試みられている。
2)冷戦時代の産物であるNATOを今も維持するのは、米国の軍産共同体がそれを利用して戦争ビジネスを行うのためであるという見方が有力である。トランプは、戦争ビジネスをやめるなら米国に不要だとして、NATOからの離脱を考えていたことは良くしられている。https://www.cnn.co.jp/usa/35131494.html
また、ロシアが人権無視の強権政治を行っているとして、ナワリヌイ氏の暗殺未遂事件を取り上げる人が多いが、ナワリヌイ氏は現在も存命である。この件やサウジアラビアのジャーナリストのカショギの暗殺事件など、米国ネオコンの発表をそのまま鵜呑みにするのは危険である。なお、ネオコンをバックに米国オバマ大統領は、2千人もの外国人を宣戦布告の通知もなく無人機で殺害する命令を出したことも記憶しておくべきである。https://president.jp/articles/-/21210
https://note.com/iloveflying0306/n/n78b401c87c06
3)日本は世界一の債権国であり、その多くを米ドルで持っている。ドル基軸体制の崩壊は、この75年間に蓄積したドル建て資産が紙くずになることを意味している。
https://note.com/iloveflying0306/n/n78b401c87c06
3)日本は世界一の債権国であり、その多くを米ドルで持っている。ドル基軸体制の崩壊は、この75年間に蓄積したドル建て資産が紙くずになることを意味している。