トランプ政権からイーロン・マス氏が去ることで、政権内部の戦争屋ネオC(neo-conservative)勢力のシェアが高くなる。その結果、トランプ政治が経済政策でも国際政治でも当初の発言とは異なる方向に進む確率が高くなってきた。
経済では、トランプの相互関税の考え方は、現在の高度な技術で成り立つ産業とそれが能率よく働く環境である現在の世界経済体制(WTO体制)とは矛盾し、トランプが強権的にこの方向を進めば、世界経済を破綻に導く可能性が高い。(4月6日の記事)https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12892765634.html
このトランプ関税に関する最初の記事以降においては、基軸通貨としてのドルの防衛や安全保障のための製造業再興などというこの政策の意味を考えたが、それらに対する深い戦略はトランプには無かった可能性が大きい。トランプは単なるポピュリストなのだろう。
そのように思うようになったのは、トランプ政権がウクライナとのレアアース資源の共同開発に同意し、今後ウクライナの軍事支援に向かう可能性が出てきたことである。https://www.yomiuri.co.jp/world/20250501-OYT1T50160/
採算が取れるかどうか分からないようなウクライナの鉱物資源の開発に、ゼレンスキーの目論見通りに米国が真面に取り組む姿勢は、ロシアとの戦争に本格的に関わる覚悟を意味している。
この時点までゼレンスキーを正規の大統領として認めるトランプの資源外交は、二重に愚かである。一つは、採算面の考察が十分なされていない可能性が高いこと、二つ目には、ゼレンスキーが大統領のままでは、東部四州にあるレアアース開発などでプーチン・ロシアと衝突する可能性が高いことである。
その延長上に、第三次世界大戦に進む可能性も再び浮上してきたと思う。そうなれば、一緒にロシア潰しを再開するべく、もう一度NATOを強化するのだろうか?
2)エマニュエル・トッドとジム・ロジャーズが語るトランプ関税政策
エマニュエル・トッド氏は、池上彰氏との対談で「日本は今後核武装をした上で何もしないことを勧める」という言った。これは、米国との同盟関係を薄くしていくことを勧めるという意味だろう。(補足1)
米国が今後、世界の政治経済を破壊する渦の中心となっていくなら、それが最も重要な採るべき戦略だろう。しかし、残念ながら日本人には核兵器を持つ決断など出来そうにないし、日本の政治家に米国べったりの外交を止めさせるのは無理だろう。
トッド氏は、トランプの関税政策が失敗する理由をわかりやすく解説している。世界の基軸通貨発行国という立場で発展した米国の金融業は、製造業を荒廃させることに繋がったというのである。そして今や米国は、金融家の住処であり、技術者がそれと同等に評価される国にはなり得ない。
その製造業を再興すべきだというトランプの直観は正しいとしても、諸外国に対し暴力的姿勢で高関税政策を用いることでは目的は達成されないと話す。トランプの保護主義には、知性もそれに基づく慎重さもなく、おそらく失敗するだろうと話している。https://www.youtube.com/watch?v=POBnU-knw_E
更に、トッド氏は今後米国はウクライナにおいても、米国の政治と産業の敗北という意味を持つと話す。
これまで、ベトナムやアフガニスタンなどで米国は敗北をしてきたが、米国にとっては他民族内外の争いへの介入失敗として片づけられる敗北だった。しかし今回のウクライナ戦争は、ウクライナを雇って戦った米国とロシアとの本格的戦争であり、それに失敗することは歴史上初めての米国の敗戦ということになる。
その大きな原因の一つは米国の製造業の衰退であると話す。つまり、武器の開発競争でもロシアの後塵を拝することになったと考えるべきだと言うのである。
更に、世界の三大投資家の一人として名高いジム・ロジャーズ氏も、今後数年内に世界経済は困難に陥るだろうと話す。トランプの米国製造業の復興を目指しての関税政策は、世界経済を停滞させ、それが米国にも波及すると話す。https://www.youtube.com/watch?v=fDemZJp6v5k
3)米国ネオCが根を張りつつあるトランプ政権
上に引用の話の中で、ジム・ロジャーズは、教え子とも言えるイエール大学の後輩のスコット・ベッセント氏(財務長官)について、彼は優秀な人物だったと話している。イエール大学といえば、スカル&ボーズの会員(補足2)を含め米国のネオCの方々が多く卒業している。
ベッセント財務長官はその経歴からもネオCであると思われる。ジョージ・ソロスの配下として金融界で活躍したベッセント氏は、何もかも承知の上でトランプの関税政策に協力している可能性が高い。無能なイエスマンである筈はないだろう。
今回のウクライナ戦争で、トランプ政権を停戦の方向から戦争継続の方向に軌道修正させるべく働いているマルコ・ルビオ国務長官とともに、本質はネオCだろう。
彼らの力が徐々にトランプの米国を戦争から米国自壊へと導くグローバリストの既定路線に導いているように見える。
以上は、元理系研究者という素人による観測ですので、文系を専門とする方のコメントを頂ければ幸いです。
補足
1)キッシンジャーの発言を味わうべきである。彼はベトナム戦争のあとで、「アメリカの敵になることは危険かもしれないが、友人になることは致命的である」と語った。この言葉を今深く味わっているのはウクライナの人たちだろう。そして、そのあと同じ言葉を深く味わうのは日本人かもしれない。