ロシアのプーチン大統領は、10月21日ソチで開催された毎年恒例のヴァルダイ・ディスカッション・クラブでの演説で、“西洋の価値観(勢力を増している左翼の価値観)”を猛烈に批判しました。(以下、括弧内は本ブログ筆者の補足)
プーチンは、西欧(米国)左翼のキャンセルカルチャー、人種逆差別、性転換を正当なものとする教育の子供たちへの強制を、ロシアの考え方の対極的なものとして概説しました。
1)The Moscow Timesによる報道:
The Moscow Timesが報じたプーチン大統領による演説の内、米国を席巻しつつある左翼の活動を批判した部分を翻訳をしてみました。
The Moscow Times;https://www.themoscowtimes.com/2021/10/22/putin-rails-against-monstrous-west-in-valdai-speech-a75373
怪獣的「西欧」:
自分たちを進歩の旗頭と自負している国々で起こっていることに私達は驚いています。(欧米での)平等と反差別を求めている筈の闘争(或いは藻掻き;struggle)は、攻撃的でほとんど馬鹿げたと言える程の教条主義に変化しています。
人種差別に反対することは必要で高貴なことですが、(欧米での)新しい「廃止の文化(culture of abolition)」は「逆差別」に変化しています。(そんな運動などやらなくても)ここロシアでは、市民の大多数が人の肌の色なんか気にしません。
男性と女性が生物学的事実として存在していると敢えて言う人々は、ほとんど追放されています。今日の子供たちが幼い頃から、男の子は簡単に女の子になることができ、その逆もできると、教えられていることの恐ろしさは言うまでもありません。これは、ほとんど進歩の旗印の下で人道に対する罪です。
納得できる保守主義:
私たちは、健全な保守主義により導かれます。
世界的な“再調整の時代”(補足1)は非常に長く続く可能性があり、しかも最終的な見通しが不明です。そんな時代には、穏やかな保守主義が最も合理的な行動方針です。私たちの(ロシアの)社会は、社会的および政治的崩壊につながる過激主義に対する「集団的免疫」を発達させてきました。(補足2)
私たちの保守主義は楽観主義者の保守主義です…そしてもちろん、私たちは共通の高貴な目標のためにパートナーと協力する準備ができています。(補足3)
2)紀元頭條(Epoch Headlines)の記事からの抜粋
この同じ演説を香港のEPOCH HEADLINES(中国の反共的メディア)は、youtube の動画で、以下のように解説しています。https://www.youtube.com/watch?v=ZAN9A8GzbGk(4:40ー7:10)
中共が常にロシアを戦略的パートナーと主張してきたのは、実はロシア共産党が中国の共産主義を育成したから、マルクス・レーニン主義勢力のエージェントだからです。しかし、プーチン氏は中共の祖先とも言うべきマルクスレーニンと共産主義の思想を完全に否定しています。
10月21日ロシアのソチで第18回バルダイ・クラブ討論会の年次総会が開催されました。
会議のテーマは「21世紀のグローバル・ショック」です。会議に出席したプーチン大統領は、
スピーチの中で「西欧社会は極左の社会主義イデオロギーに侵食されている」と指摘しました。これでは1917年のレーニン革命時のロシアで起きたことと大差はないと、警鐘を鳴らしました。
欧米の一部の国では、社会的・文化的ショックが起きている。自分達の歴史を積極的に消し去りマイノリティーのための“格差是正措置(アファーマティブ・アクション)”を進め、更には母性、父性、家族、男女の区別といった基本的価値観、伝統的価値観を捨てようと呼びかけているとプーチン氏は語りました。
その一例としてプーチン氏は「ハリウッドの制作条件では役者の性別や肌の色など映画の中にバランスがあるべきだと念を押され、時にはソ連共産党の中央宣伝部よりも厳しく言われれることもあります、と語り、”これはかつてロシアで見られた光景だった。
1917年の革命(レーニン)以来、ボリシェビキ(補足4)はマルクス・エンゲルスの教えを信じてきた。彼らはまた、伝統的な生活様式、政治経済的な生活様式、道徳を変えると宣言したが、これらは健全な社会の礎となるものであると語りました。
プーチン氏は西側諸国には、西側諸国がやりたいことをやる権利がありますが、ロシア社会の大多数は左翼のイデオロギーを拒否していると強調しました。
また、中共の下で横行している「密告」や「相互監視」に関し、プーチン氏は演説の中でその成り立ちについて、ボリシェビキ党は自分と異なる他の意見を決して容認することは出来なかったと語りました。
彼らは、時代の価値観を破壊しようとし、親戚や家族の内部告発を奨励した。当時これは進歩の現れと評価された。このようなことが今日起こっていることに気づいたと語りました。
尚、プーチンの演説はHaranotimesさんによって、より詳細に紹介されています。その動画サイトは次の通りです。https://www.youtube.com/watch?v=Sv2gidGM-Qk
これら全ては共通した内容がほとんどなので、信ぴょう性が高いと思います。
終わりに:
プーチンの話は説得力がある。この考え方から考えて、一年前までのトランプ米国大統領と意見が合ったことが良く理解できる。この種の考えをロシアとプーチンがもっていることは、以前から馬渕睦夫氏(元ウクライナ大使)が動画等で話していた。
米国左翼がプーチン嫌いなのも、彼らが目指すところを明確に否定するからだろう。中国も米国左翼も、この演説には失望していることは明白である。ジョージ・ソロスが習近平を批判しているのは、習近平が彼ら米国左翼の路線から離れて、勝手に独自の動きを始めたからだろう。
日本が中国からの独立を22世紀以降も維持する上で、ロシアが重要な役割をする可能性がある。また、そのような道を封じたのが、米国DS(ユダヤ資本などを中心とした米国の影の支配層)による対日封じ込めである。具体的には、瓶の蓋の日米安全保障条約、自民党55年体制(米国と吉田茂)、北方領土問題などだろう。
特に、領土問題は日本をロシア、韓国、中国の3国から排除されるように、米国のDSが仕掛けた罠である。日本を孤立化させ、二度とまともな国として独り歩きすることが出来ないようにするためである。自民党は、その米国の対日支配組織として存在してきた。それを隠す人たちは、与野党を問わず全て反日勢力である。
トランプは孤立的で国際協力消極派だったが、共通の利益があれば日本の安倍政権とも協力できる関係にあった。もし、共和党ポンペオ氏らが新しい米国の政治のリーダーになれば、穏やかなロシアとの協力関係の樹立もあり得るので、日本も韓国も、米国が重視するインド・太平洋地域の中に戻ることが出来るだろう。現在の体制では、台湾以北の自由主義圏は、中国の支配下に入るだろう。
ただ、その流れを防ぐため、米国民主党とDSは再びあのインチキ選挙をやるだろう。それをHaranoTimesは警戒すべきだと指摘している。
補足
1)行き過ぎたグローバリゼーションによるバブル経済と富の偏在、何を考えているのか分からない左翼思想の担い手、仮想通貨など訳のわからない資産を含めて、実体経済と比較して膨大な資産(貸借対照表の大きさ)など、世界の経済や政治は極めて不安定な状態にある。更に、新型コロナなどのパンデミックで疑われる、倫理、道徳、科学までもが崩壊の危機にある。
2)「集団的免疫」とは、マルクス・レーニン主義の暗黒のソ連時代を経験しているという意味でしょう。それは異なる角度から切り取った次のEpoch Headlinesのyoutube動画の内容から明らかです。
3)このパートナーとは、現在欧米を席巻している左翼と戦う人々を指し、トランプやその他の西側保守主義の人々、それらの人々が政権を持つ国々の意味だと解釈できます。この部分が、以下のEpoch Headlines やHaranoTimesでは触れられていないのは、プーチンに対する警戒があるからだと思われる。
4)ボリシェビキはロシア語で多数派の意味。ロシア革命のとき、空理空論と暴力の両方からの勢力争いで、勝利した方がボリシェビキである。トロツキーも最初レーニンから信頼の厚いボリシェビキだったが、レーニン死後トロツキストとして排斥された。