注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2019年10月31日木曜日

日本の終焉の前に、戦争までの歴史の評価を終了すべき(1)

一昨日の記事の続きを、二回に分けて書くつもりです。その一回目が以下の文です。元気を無くして二回目が書けない可能性もありますが、表題だけ二回分の題とします。素人の文章ですので、そのつもりでお読みください。

1)昨日の延長として、将来の東アジアを考えてみる。時間的には近い可能性があるが、内容的にはあまりにも遠い先の話なので、素人の私にも一定の発言権と発言力があるだろう。昨日は日本の暗い近未来を予想する文章を書いた。今日はそのように考える根拠と、その結果も想像して書いてみる。

その日本の将来に向けて、中国と日本の中心にある人達は、準備をしているのかもしれない。その法律が、新入管法とアイヌを先住民族として認定する法案である。中国は、北海道を重視し、李克強も王岐山も、来日した際には北海道に視察に出かけている。何故なのか?

恐らく、中国は将来の覇権構造として、米国、ヨーロッパ諸国、ロシア、中国の4領域を考えているのだろう。そのロシア圏と中国圏の領域の境界として、北海道を考えているのではないだろうか。

今年1月に、チャネル桜において、伊藤貫氏から話を聞く番組がyoutubeにアップロードされたとき、その感想をブログ記事に書いた。その時、後半部分は中国と米国の覇権争いの中の日本というテーマだったのだが、感想文は次回に書くとしながら、これまで書けなかった。それは、伊藤貫氏が話す日本の国際的位置が納得できなかったからである。それは、中国の覇権域の中の日本である。https://www.youtube.com/watch?v=0bwlpoETjxQ&t=5069s 

24日のペンス副大統領の演説では、トーンが昨年より相当宥和的になったという。それを予見するような話が、一年弱前の伊藤貫氏の話の中にあった。

トランプはある段階で取引を行うことで、この経済的封じ込めをやめるだろうという予測である。その考えは、オバマ政権時代のCIA副長官(2010-2013)のMichael Morellが分析していることだという。米国が現在の中国と折り合いを付けるということは、日本が中華圏に入るということになる。(補足1)

マイク・モレルの分析の基礎にあるのは、中国の確実な経済発展である。経済的封じ込めが出来ないと考えるのは、中国は2,014年に購買力ベースで殆ど米国と同じGDPに達し、その後、おそらく米国を抜き去っているとの予測による。冷戦時代のソ連との関係とは異なり、中国はすでに自由主義世界の経済にあまりにも深く入り込んでいる、そして、すでに中国は経済的に米国を超えているからだという。(補足2)

米国には、取引のオプションしか無いが、それは結局東アジアからの米国の撤退ということになる。その切っ掛けは、5-10年先に何らかの戦争が西方で起こったとして、米国と中国が第二のヤルタ会議のような会議をひらいた時、取り決められるだろうと言うのである。

2)安倍総理が日本の置かれた上記情況を知ったのなら、そしてそれを考えた上で上記2法案を通し中国人の大量移民の流入を考えたのなら、安倍総理は優秀なスタッフを抱えており、その説得による現実的判断なのかもしれない。

安倍総理は、ロシアとの連携を考えただろう。日米露印の連携により、中国の脅威(将来起こり得る理不尽な要求)を抑えて、日本の独立国としての体裁を高めるのである。これはモスクワにいる北野幸伯氏(恐らくプーチンに近いのだろう)の考えである。プーチンも世界一長い国境線を持つ中国との関係を対等な形に維持するには、日本を利用し米国との関係も改善して、経済力をつけるべきだと考えるだろう。

その際、日本との友情樹立の証として歯舞色丹を返還することなど、ソ連時代なら簡単だっただろう。しかし、ロシアには選挙がある。ロシアの一般市民は、日本が敗戦を受け入れると表明した後に、満州、朝鮮、樺太、北海道周辺などで、民間人を含め数十万人の日本人を捕まえてシベリヤ送りにしたことや、大量の日本人を虐殺、強盗、強姦したことなど、教えられていないだろう。そのような情況で、ロシアの一般市民を説得することは不可能である。プーチンは中国の下にあって、中国に協力する路を選択するだろう。

安倍総理も、誠意あるロシアの態度無くして、日露平和条約を結び、経済協力を大々的に開始するのは、ロシアへの属国化を意味するので出来ない。更に、トランプは東アジアを切り捨てる方針を決して捨てないだろうし、トランプでなくても米国の減退する実力がそれを強制するだろう。トランプはその姿勢を、早々にTPP(環太平洋パートナーシップ)からの脱退という形で示した。(補足3)

更に、日本は憲法改正もまともに出来ない国である。日本国民は、米国とそのコバンザメ的日本の官僚政治家により、徹底したWGIP(戦争犯罪史観の徹底)の教育を受けている。その結果、「戦争は外交の一環であり、軍備は国家の背骨である」など、人類史の常識すら完全に奪われている。

日本人の殆ど、特に婦人方は、平和教信者であり、日々平和という言葉を“お経”のように唱えることで、世界の国々は日本の平和に協力してくれるはずだと信じている。野党議員は、その層の代表であり、非武装中立と非核三原則を金科玉条のように考える人たちか、日本に対し敵意を心中深く抱く人たちだろう。

そのような情況で取りうるのは、これまで世界がコンセンサスとしてきた自由貿易の原則に反するトランプの姿勢を逆手に取って、日中友好を演出することだったのかもしれない。しかし、それは国家としては自殺行為に見える。

自由を奪われる香港のように、虐待されるウイグルやモンゴルのように、そして、完全隷属を演じた李氏朝鮮のように、日本はなるだろう。

その時になって、日本人は「戦争は外交の一環であり、そのための軍備は国家の背骨である」という言葉の意味を知るだろう。日本人得意の忖度でもって、天皇制は日本人自身の手で破壊することになるだろう。天皇家が、伊勢神道のトップとしての位置に残れるかどうかも明らかではない。

天皇の2文字は早々に憲法から消えるだろう。その時、日本は日本でなくなる。日本で無くなっても、日本国という名前、その時恐らく大勢の外国人を抱えているだろうが、日本国民という括りは存在するだろう。それに耐え難い苦しみを感じるのは、主として知識人、特に、右派系の知識人だろう。

日本人の必須科目は、英語ではなく中国語の習得となるだろう。数年して、殆どの人々の脳裏から天皇は消えるだろう。それを寂しく思うのは、少数だろう。あのマッカーサーも、直ぐに日本の神となったのだから。

補足:

1)勿論、中国が自己崩壊する可能性はあるが、それはずっと先の話である。また、自己崩壊なら米国の方が早いだろう。米国はともかく民主主義の国である。国民を束ねる箍(たが)が緩い木製であり、形がバラバラの板を束ねている情況である。中国は金属製の箍であり、板が変形するほどに締め付けられる。

2)伊藤貫氏の話では、中国は2010年に世界との貿易が最大になり、2014年購買力平価で計算したGDPで世界最大になった。世界諸国で、米国と取引が無くなった時よりも、中国と取引がなくなった時の方が経済的に困ってしまう国が多い。従って、中国は自由主義経済の世界におけるメインプレイヤーであり、経済的封じ込めには遅すぎ、現在では無理である。

3)CBS NEWS 7月3日の記事「Why the U.S. could "possibly lose" war against China in East Asia(何故米国は東アジアでの戦争に“恐らく負ける”可能性が高いのか)」 で、前CIA長官代理のマイク・モレルは以下のように言っている。

中国の世界で拡大する影響力は、米国の軍事的、経済的、技術的な面での直接的脅威となっている。多くの人は中国が米国の最大の国家的脅威であると考えている。

そして、中国は世界のどの国よりも急速に米国に追いつき、東アジアで戦争になれば米国は負ける可能性さえある。中国の脅威は、中国が米国の賞賛の対象から手強い競争相手になった経済の分野や、香港において明確になっているように、地政学的影響力において顕在化している。中国は、東アジアは過去自分たちの勢力圏であったし、それを今後回復するのだと考えている。

トランプは、米国大統領として初めて中国問題を主要課題と見なした。その解決策は多くの人が関係しているが未だ解決策がない難題だが、トランプの策は狭い視野での考察に基づいている。トランプが冒した特に大きな間違いは、環太平洋パートナーシップから抜け出したことだと思う。(訳は簡単な意訳ですので、詳細は元の文を御覧ください。)

https://www.cbsnews.com/news/us-could-possibly-lose-war-against-china-in-east-asia-michael-morell-says/

2019年10月29日火曜日

安倍総理は、米国の敵に廻ることを選択したのか?

1)米中対立とその中で安倍政権が進めている日中国交の緊密化に対する懸念

今回チャネル桜の討論番組:【討論】米中対決とグローバル化した世界[桜R1/10/26]で、米中対立と安倍政権が進めている日中国交の緊密化を懸念する内容の議論をしている。https://www.youtube.com/watch?v=7iIadMYkens

しかし、その主題については、既に今年の4月6日に、インド太平洋構想の一角を日本が担うことを、米国支配層は許すだろうか?と題する記事として、私は書いている。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/04/blog-post_6.html

そのブログ記事は、馬渕睦夫元ウクライナ大使の「日本の行く末を決める決断の時・インド太平洋構想かチャイナの影響圏か?」と題する動画を見て、その内容と感想について書いたものである。その冒頭は、馬渕氏の考えに沿って以下の内容の文で始まる。https://www.youtube.com/watch?v=L0w0FYLvmhk

2019年は、日本にとって決断の時である。それは、(自由で開かれた)インド太平洋構想の一角を担うか、中国の影響圏に入るかの二者択一問題に答えることである。 ペンス副大統領の昨年10月の演説は、中国に対する米国の姿勢を明確にしたものだが、それを聞いたのなら、日本は上記課題を突きつけられて居ることに気づかなければならない。しかし現在のところ、日本政府はその決断ができないでいる。

また、上記動画で馬渕元大使は、米国は今更中国と適当なDealをするとは思えないと断言している。大使は安倍総理をこれまで非常に高く評価しており、インド太平洋構想についても、安倍総理からトランプが引き継いだとまで言っている。(補足1)

一方、自民党の議員に対しては「米国は中国共産党政権を徹底的に潰すようなことはしないだろう」という間違った見方をする者が多いとし、それは安倍一強の自民党政権の安定にあぐらをかき、気が緩んでいる所為だろうと分析している。

そして、移民受け入れやマイノリティの権利を拡大する方針を法律として具体化したのも、上記日本の取るべき決断とは関係なく、日本の財界と気が緩んだ自民党や公明党議員の所為であり、本来”インド太平洋構想の主役である筈の安倍総理”の考えではないとしている。

その法律とは、①新入国管理法と②アイヌを先住民と認定する法案である。これらの唐突とも言うべき速さでの成立は、今考えれば、①で中国人を大量に単純労働者として入国できるように法整備をし、②で北海道を大昔からの日本固有の領土と言い難い情況にして、そこに入植する中国人の居心地を良くするためのものと考えられ、インド太平洋構想の一角を担うという日本の採るべき方針と完全に矛盾する。(補足2)

馬渕大使は、中国移民の大量受け入れの準備として行われたこれら法整備を、安倍総理の意図に反して、気が緩んだ自民党議員たちによりなされたことだろうと言っている。しかし私は、以下のように馬渕大使の考えと対立する考えを書いている:

しかし、この認識は間違いだと思う。安倍総理自身の賛同がなければ、これら重要な法律二本があのようにスムースに成立する筈がない。「自民党議員たちの気の緩みが、あの重要法案二本がスムースに成立した理由だ」というのは、言語感覚からしておかしい。

繰り返すが、私は、上記二本の法律は、安倍総理も少なくとも外見上は積極的に賛成したと思う。上記二本の法律は、上述のように日本文化の破壊工作であり、それをなし得るのは安倍総理の意思か、安倍総理を操る存在の意思だと考えるべきである。 (再度引用:https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/04/blog-post_6.html

2)最近の安倍総理の対中姿勢と対米姿勢について

最近の安倍総理の発言、「日中関係は完全に正常化した」は、米国に突きつけられた2択問題において、安倍総理は自分の意思で、中国独裁政権を選択するという決断を行った事を示している。その理由には深いものがあるかもしれないが、その間違いは、確実に日本を破壊するだろう。

最初に引用した先週配信のチャネル桜の3時間番組で、この議論をしている。そこでも、安倍政権は間違った選択をしたと参加した各評論家たちは断言している。https://www.youtube.com/watch?v=7iIadMYkens

安倍総理は、先の大戦時の米国の企みについて、そして、戦後の占領政策などにおいて、日本を二度と立ち上がれない国家とするという、米国の方針を嫌というほど祖父の岸信介や父の安倍晋太郎から聞いていると思う。更に、理不尽に思えるオバマの要求(補足3)や同様のトランプ政権の米軍駐留経費の引き上げなどの要求(補足4)にも、嫌気がしているのかもしれない。後者は、米国は東アジアから撤退したいという考えから来ている可能性が高い。(補足5)

ただ、米国が考えるのは、東アジアからの撤退の原因を日本が作ったというシナリオで進めたいのである。その罠に、無能な安倍総理が簡単に引っかかった可能性がたかい。因みに、馬渕元大使は最近youtubeで姿をみなくなった。恐らく、自分が非常に高く買っていた安倍総理が、中国の擦り寄りと米国の設定した罠に簡単にハマったことに、愕然としておられるのかもしれない。

尚、この問題は米国より帰国している伊藤貫氏によっても、論じられている。日本は、目先の利益しか考えない国だと言って、日本外交の戦略性の無さに言及されている。大変参考になる話である。【令和元年秋 特別対談】伊藤貫氏の警告、パックス・アメリカーナと中華思想の間で摩滅する「商人国家日本」[桜R1/10/26]https://www.youtube.com/watch?v=wxQ7ZQtTSxs

なお、先週のペンス副大統領の演説については、遠藤誉さんが分析している。https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20191028-00148588/ 昨年の演説よりも融和的な内容で、このような演説はやって欲しくなかったと書いている。ただ、環球時報の社説もペンス演説の翌日に放送された中国の英語放送における高志凯という中国人の(中国関係の国際的)専門家の解説もそのようには見ていない。 https://www.youtube.com/watch?v=CNVR0TCuJWQ

補足:

1)しかし私はそうは思わない。安倍総理の意見は単なる思いつきだろう。何故なら、日本政府には、そのような戦略的な能力も覚悟もないからである。安倍総理の著書、「美しい日本」には、そんな戦略的思考のかけらもないからである。

2)この時、米国と北朝鮮の衝突が懸念されていたので、朝鮮半島からの大量の避難民を受け入れる準備であると、深読みする人もかなりいたと記憶する。そうなら、米国と連携した動きなので、安倍総理を米国と上手く外交していると考える人には受け入れやすい。

3)韓国との慰安婦合意は、オバマからの理不尽な要求であった。それ以外にも、後で引用する伊藤貫氏の動画にあるように、オバマとは異常な人格者であった。衛星国的な日本のトップが嫌気がさすのは当然かもしれないが、それは政治家として無能だということだろう。

4)日米安保などやめても良いとトランプ本人は思っている。そして、過大な駐留費の要求をやがてしてくる筈である。

5)トランプはもともと、アメリカ・ファーストであり、ノーカントリーアズセカンドである。東アジアから撤退することも、中東からも出来れば撤退したいことも、トランプ個人の元々の方針だろう。

2019年10月27日日曜日

地球温暖化説の再評価と対策について:未だ時間は十分に残されているので、国連は問題解決に向けた人類の協力体制をつくるべき

1)海水温変化と気温変化

気温の変化を観測する場合、観測ポイントが徐々に都市化することによる温度上昇が重なるので、真の気温変化を正確に出すことはかなり難しい。そのことは専門書にも記載されていた。http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ke04.html

そこで、海水温の変化を観測し、それを基に地球温暖化を考えることが有力になってくる。最近、気象庁のHPに海水温変化の詳細が掲載されているのを見つけた。下図は、全地球海水表面温度(上)と世界の平均気温の経年変化である。この100年間、海水温は0.54度/100年、平均気温は0.74度上昇している。しかも、その相関は非常に高い。

この高い相関関係および海水の大きな熱容量を考えると、気温は海水表面の温度に支配されていることがわかる。世界の平均気温における観測ポイントの都市化の影響があるのは確かだろうが、それを差し引いても地球気温の上昇、および、全地球規模の最近100年の0.5度以上の温暖化は事実であると分かる。勿論、その0.5℃の気温変化がどの程度重要なのかについての議論は慎重に行うべきである。時間は未だある。

気象庁のHPには、全世界のほかに日本近海の表面温度のデータも掲載されている。それによると、この100年間に日本近海で1.12度ほぼ直線的に増加している。(日本近海のグラフについては補足1)更に、日本海の方が東北沖よりも温度上昇の勾配が大きいなど、海水表面温度が、工業化によるエネルギー消費に影響されていることも十分考えられる。

更に海水面から700mの深さまでの海水(表層水)の温度の全球平均の経年変化(下)と表層水への蓄熱量(上)を示したのが下図である。この図で注目されるのは、1980年あたりからの急激な温度上昇である。それに伴って、かなりの蓄熱が表層水に生じて居る。蓄熱量は、表層水量に比熱と温度を掛けて計算されるので、図において完全に並行しているのは当然である。横にその蓄熱量を用いて、地表面からの余分な熱の流れについての概略を示した。

図中に計算の概略を示したように、その蓄熱速度は最近20年ほどの平均で、0.28 W/m2となる。つまり、太陽で温められた地表面からそれだけの熱が流れ、海水の温度上昇に使われている。W(ワット)は毎秒ジュール(J/sec)。尚、地表面への太陽エネルギーの流入は平均して342W/m2である。この0.28W/m2という量は重要だが、パニックになるほど大きくはない。

IPCC(2013)によると、2001年から2010年までの人工衛星などによる観測から、大気の上端では地球に入ってくるエネルギーが出て行くエネルギーよりも平均で0.5W/m2大きかったとしている。つまり、増加したエネルギーの約60%が700m深までの海洋表層に蓄えられていたということになる。(気象庁のHPより転載)

地球での蓄熱は、表層水のほか、深層水への熱の移行、大気温度の上昇、地殻土壌や岩石の温度上昇などが考えられる。大気の熱容量は10m程の海水に相当するだろうから、大きくはない(1〜2%)。地殻への蓄熱は、地面は地表面積の30%であることや、対流が無いことによる断熱性などから、海水に比べてそれほど大きな値ではないだろう(おそらく数%)。従って、多少過大見積もりのような気がするが、双方の誤差も考えれば0.5 W/m2 での地球温暖化の見積もりは、妥当な結論だと考えるべきだろう。

2)地球温暖化の確認と、CO2増加による気象変動

以上、太陽から平均として342W/m2で加熱される地球は、その99.85%を宇宙に返している事がわかった。つまり、0.015%程度の太陽光エネルギーが地球の温暖化に使われている。

4年前のブログで、世界の気温上昇のデータを用意する場合、この都市化による温度上昇分を差し引かなければならないことを指摘した。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2014/08/blog-post_26.html

しかし、以上の考察により、ここ40年程の地球温暖化は事実である。そして、その原因として人間の活動にあることは疑う余地はないだろう。

世界の一次エネルギー消費は2018年で約140億TOE(補足2)である。このエネルギーを仮に地球表面全体一年間で用いるとした場合、1平方メートルあたりのワット数で表すと、0.036 W/m2となる。この計算は、地球表面積と一年間を秒に換算して、両方の積で、上記エネルギーとの商を計算するだけである。

この極一部が温暖化に貢献する。一次エネルギー消費全体の値は、上記0.5 W/m2という値よりは一桁小さいので、仮に全部が温暖化に貢献するとしても、全体の10%程度の温暖化効果しかない。従って、地球全体の温暖化の主原因にはなり得ない。ただ、ローカルな海水温度の上昇や、気象変動などには影響が考えられるという点で重要かもしれない。(補足3)

次に、温暖化による気候変動はどの程度か考えてみる。台風は空気の大規模な対流であり、温度の上昇した地表面(海水表面)を冷却する働きがある。また、通常の風雨も緩慢だが、台風と同等の働きがある。従って、地球が温暖化しているのなら、台風発生数や降雨量に影響が出ると考えるのが自然である。そこで、気象庁のHPにあるデータを用いて、グラフ化した。昨日の記事にその結果を書いたが、台風発生数や降雨量ともに有意の差は見られなかった。
https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/10/blog-post_26.html

従って、今後も台風の発生や降雨量の急激な増加はないだろう。また、これまでのデータを延長すれば、地球気温が更に0.5度程度上昇するまでに、20−30年ほどの時間がある。その間に、発生する台風数や降雨量は人間の生存を脅かすほどにはならないだろう。

その間に、二酸化炭素を発生しないエネルギー産生の方法開発とともに、二酸化炭素増による地球温暖化のメカニズムの精緻化を図るべきである。大事なことは、何もかも無事に保ったままで、これまで通りの発展は無いという自覚であり、それは多少の負担には耐えるという意思を持つことである。つまり、治山治水事業に投資するなどの方法も、重要な対策である。

人間が高度な文明社会を享受するには、一定量のエネルギー消費は必須である。また、発展途上の国においては、経済発展なくしては平和への道はあり得ない。従って、その100%の解決はあり得ないかもしれないが、人類は団結してそれを成し遂げるべきである。

地球温暖化の危険性を過大視するように宣伝し、金儲けをしようとする身勝手な人々を諌めること、そして、彼らが引き起こす混乱とそれによる争いの悲劇を防止することも非常に大事であると私は思う。

3)地球温暖化対策と人類の協調

繰り返すが、二酸化炭素削減はすべきだろう。しかし、極端な目標を立てて、人類を分断することは避けるべきである。

例えば、「世界経済フォーラム」は9月23日、CO2排出量の多い重工業で、2050年までにCO2排出量をゼロにするミッションを背負った活動を8つも発足したという。対象となったのは、トラック・バス、海運、航空、アルミニウム、セメント、自動車、総合科学、鉄鋼の8業界である。

また、世界経済フォーラムは別途、自動車業界ではEVと自動運転を推進し、乗用車からのCO2を95%削減する活動も発足。それにはBMW、フォード、Uberが幹部企業となることが決まったという。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191019-00067794-gendaibiz-int&p=1

「世界経済フォーラム」という私的な団体は、地球温暖化に関する危機感を煽り、世界の政治と経済の操縦に使おうとしている。それに呼応する形で、「国連気候アクション・サミット2019」でも、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんを使った衆愚政治的手法を用いて、2050年までにCO2排出量をゼロにすることという世界経済フォーラムの提言への参加の空気を醸成した。

彼らは、地球温暖化説を掲げて、世界の政治や経済を自分たちが儲かる方向に導こうとしている。世界経済フォーラムの連中は、ハイブリッド車を廃止したいのだろう。しかし、走行時には二酸化炭素を発生しないテスラ社の代表的車種などは、自動車を製造して充電しそれで走るという全段階を考慮した場合、二酸化炭素発生量の比較では、トヨタのプリウスに劣るという。https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/electric-vehicle-eco/#title03

それにも関わらず、地球温暖化を喧伝して、ハイブリッド車およびプラグインハイブリッド車を禁止して、自分たちがそのシェアを取ろうとしている。その目的で、あのような少女を使ったプロパガンダを行うのだろう。冷静に考えれば、EVにこだわる必要はないので、衆愚政治的手法を用いるのである。

また、2050年までにCO2排出をゼロにするという必然性は、科学的には明らかではない。これは、上記のように極端な目標を掲げて、等しく問題意識をもって人類が協力していくという体制を破壊する思想である。この影には、欧米の大金融資本が、世界市場の独占を狙った陰謀が存在するのだろう。

なお、今日のそこまで行って委員会で、竹田恒泰氏は地球温暖化を完全否定していた。また、同じ番組でサイエンスライターの竹内薫氏は、逆の温暖化説を完全に擁護していた。日本の国論を統一するには、このような誤解をなくすよう、テレビ局も出席者の教育と精査という部分で努力すべきである。

補足:

1)日本近海平均海水温と世界平均海水温のデータを並べて示す。
2)toeは石油1トン換算のエネルギー単位42GJである。約10億カロリーである。

3)日本近海の海水表面温度の上昇は、日本海側や西日本の太平洋側の方が、東北沖よりもかなり大きい。そのようなローカルな温度変化には、海流の他にある程度その近くの地域のエネルギー消費が影響している可能性もある。https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/shindan/a_1/japan_warm/japan_warm.html

2019年10月26日土曜日

地球温暖化説はインチ系?台風発生数や年間降水量から考察

以下のブログ記事は昨日一旦発表し、その後凍結してきました。現在の知識を十分取り入れていないとわかったからです。しかし、削除するのは、ブログ全体の信頼性を失うので、このまま掲載することにします。本日中に海水温度などのデータを用いて、もう少し別の角度から議論した記事を掲載する予定です。読まれる方は、一部が否定されることを想定の上でお読みください。

1)台風発生数及び年間降水量と地球温暖化

台風は空気の対流の一形式であり、地表面を冷却する働きがある。従って、地球温暖化が事実なら、その発生数に影響が出ると考えるのが自然である。そこで、ネットでデータを拾って簡単な考察をしてみた。そのデータが下図である。

https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/generation/generation.html

この気象庁発表のデータを見る限りでは、もし地球温暖化が事実だとしても、その影響は台風の発生増加という形にはなっていない。年間台風発生数のばらつきが大きいので、線形変化を予測の上での分析は無意味かもしれないが、その結果はむしろ台風は年々減少する傾向にあると出た。勿論、偏差が大きいので、十分意味があるとは言えない。尚、台風とは北西太平洋地域で風速17m以上の熱帯低気圧に対して用いられる。

地球表面の冷却メカニズムの一つとして、水分の循環がある。つまり、地表面水分は蒸発して熱エネルギーを吸収し、上空で凝縮(水蒸気が水に戻ること)熱としてそれを放出し、雨となって地表に戻る。もし、空中での二酸化炭素の増加により地球が温暖化した場合、地表面から宇宙への赤外線放射による冷却が遅くなるので、太平洋の海面気温も平均として上昇し、上空空気との温度差が増加する。従って、降雨は熱エネルギーの上空へのポンプの役割を果たし、温暖化に伴いその役割が増加する筈である。

この熱ポンプの役割を我々は、台風を含めて雨と風として観測する。従って、二酸化炭素増による地球温暖化が事実なら、世界の降水量もそれに伴って増加している筈である。そこでデータを探してみた。現在世界の降水量のデータは見つからなかったので、日本のデータを下に示す。
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn_r.html

上図はこの120年間ほどの日本における降水量の変化である。これも決して年々増加しているわけではない。無理に直線を引けば、台風発生数と同じく右下がりの直線になるだろう。従って、降水量の経年変化のデータも、二酸化炭素濃度増による地球温暖化説を支持しない。 以上、完全な解析というわけではないが、北西太平洋特に日本で観測した降水量や台風発生数という気象データからは、地球温暖化の影響はそれほどでもないことになる。ここで、気温はポイント観測であるが、雨量や台風発生数は、マクロな観測結果であり、より信頼性が高いことを強調しておきたい。つまり、最初の図の右にある世界の気温変化は、都市化による都市部の温度上昇をグラフにしただけの可能性が高い。

世界の気温上昇のデータを用意する場合、この都市化による温度上昇分を差し引かなければならない。このことについては5年以上前に議論している。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2014/08/blog-post_26.html
http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ke04.html

トランプが地球温暖化説に疑いを持ち、パリ協定から脱退するのは別に不思議でもなんでもない。つまり、あるグループの何らかの政治的経済的戦略の一環として、地球温暖化説が主張されていると彼は考えて居るのである。地球温暖化を主張する人は、声高に人類の未来についての危惧を叫ぶよりも、もっと科学的な解明に努めるべきである。

2)国際的運動の不純

ことしも残り少なくなり、朝は寒く感じるようになりつつある。私は温暖化よりも、寒冷化を心配する。江戸時代の百姓一揆は、冷害が原因で起こった。ただ、近年気象に何らかの変化が起こっている可能性は高いので、それに対する対策、例えば、河川堤防の強靭化などを、特に中部から東北にかけての太平洋岸地域で行うべきだろう。

現在国連を中心とした勢力は、地球温暖化説を掲げて、世界の政治や経済を自分たちが儲かる方向に導こうとしている。例えば、テスラ社の代表的車種などは走行時には二酸化炭素を発生しないが、自動車を製造して充電しそれで走るという全段階での二酸化炭素発生量の比較では、トヨタのプリウスに劣るという解説もある。https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/electric-vehicle-eco/#title03

それにも関わらず、地球温暖化を喧伝して、ハイブリッド車を禁止して、自分たちがそのシェアを取ろうとしている。これは元々ローマクラブの成長の限界との関連で地球温暖化説を出した人々の考えとはことなるだろう。最初の人たちは、地球資源の枯渇を心配して、地球温暖化説が出されたと記憶している。二酸化炭素発生量を抑えることは、そのまま資源の温存に繋がるからである。

地球温暖化説には一定の定性的根拠はあるので、もっと科学的な研究を蓄積すべきである。どうも、この気象変動を利用しようと考える人達には、複数のグループがあり、彼らは科学的研究を無視して危機感を煽っているようだ。この混乱の中で、それらを十分考えて、政治家は戦略を練るべきである。国際政治は野生の世界に戻りつつあると思う。

(編集あり)

2019年10月21日月曜日

スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんを操る人たち

1)グレタ・トゥーンベリさんの国連での演説

9月23日に「国連気候アクション・サミット2019」がニューヨークで開催された。そこで、スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥーンベリさんの演説が話題になった。(補足1)翌日私は、この運動に否定的なブログ記事を書いた。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/09/blog-post_24.html

国連の名によって、地球温暖化防止の為に行う大々的な経済プログラムを、企画し、実行するための花火の役割を担ったのが、あの少女だろう。https://president.jp/articles/-/30179 

それは、少なくともある段階から、綿密な大人の企画に基づいた行動の筈である。その企画とは、少女をその方向にそれとなく誘導し、その道を整備することである。

国連の上記会議で、演説する資格を彼女に付与する妥当性を演出するために、グレタさんらは化石燃料を使わないモナコのレース用高速ヨット「マリツィア2号」(全長約18メートル)を用い、ロンドンからニューヨークに到着した。

その資金とヨットでの航海技術など、彼女が用意できるわけがないので、冷静に考えれば背後に誰か有力な団体などがあるのは明白である。それは、イラク戦争の時のナイラという在米クウェート大使の娘の演説と似て居る。(ウイキペディアのナイラ証言参照)

  地球温暖化説は早い段階から、経済活動の側面が強く見られていた。勿論、二酸化炭素の増加による地球温暖化のメカニズムは明確に説明されている。しかし、それが定性的に確認されていても、定量的な確認には至っていない。また、その危機のレベルも今ひとつ明白ではない。

2)グレタ・トゥーンベリさんの背後に居るのは誰か?

あの少女の活動は、世界的な金融資本家たちの集まりに影響を与えた、或いは、その一部と密接な関係にありそうである。つまり、国際的な金融資本家などの世界のお金持ちが、地球温暖化防止運動に乗じて、世界経済を支配しようと考えているように思える。そして、その動きに日本が遅れているという指摘がある。

今月19日の現代ビジネスというサイトに掲載された、「グレタさん演説のウラで、日本メディアが報じない”ヤバすぎる現実」と題する記事である。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191019-00067794-gendaibiz-int&p=1

ダボス会議で有名な「世界経済フォーラム」は9月23日、CO2排出量の多い重工業で、2050年までにCO2排出量をゼロにするミッションを背負った活動を8つも発足した。対象となったのは、トラック・バス、海運、航空、アルミニウム、セメント、自動車、総合科学、鉄鋼の8業界。各々には、先進企業自身が自主的に加盟し、活動を率いていく。

残念ながら日本企業からのリーダーシップはないが、欧米企業が競うように参加を表明している。

つまり、世界経済フォーラムに参加する人たちが、世界の政治を動かし、CO2の排出規制を行い、それに遅れた企業を没落させ、そのビジネス独占しようと考えて居ると思われる。既存の条件で支配的になった企業に代わって、自分たちが新しい支配権を得ようとする際に、地球温暖化説を前面に出すことが非常に有効である。

世界経済フォーラムは、経済を議論する場だった筈である。しかし、その中で新しい産業や企業を“羽化”させる場に変化したのだろう。

この時間的一致から、彼ら世界経済フォーラムに参加する資本の一部が、国連で発言した子どもたちを支援した可能性がある。

この地球温暖化を攻撃する子どもたちの背後に、もう一つの(本命かもしれない)勢力がある。海外の中国反体制派メディア「大紀元」の記事がそれについて書いている。(補足2)

「大紀元」の記事は以下のように書いている。

ヨットで英国から大西洋を横断して米ニューヨークに渡り、国連総会の関連パネルで怒りのスピーチを披露した16歳の環境活動家グレタ・トーンベリさんについて、英字の主要メディアはこぞって取り上げた。彼女の登壇を調整した環境団体は、以前、米国委員会により、中国共産党政府の代理人の疑いがあると指摘されている。 https://www.epochtimes.jp/p/2019/09/47700.html

9月23日、国連総会開催に合わせて開かれた気候変動サミットに、世界12カ国から集まった16人の8歳から17歳までの環境保護活動に関心を置く子どもたちが参加した。16人は、国連子どもの権利委員会に対して、気候変動に関する政府の行動の欠如に抗議する非難声明を提出した。

ユニセフによると、グレタ・トーンベリさんら16人は世界的な法律事務所ハウスフィールドLLP(Hausfeld LLP)および環境保護系の法律事務所アースジャスティス(Earthjustice)の公式代表であり、両法律事務所がその声明を準備した。https://www.unicef.org/press-releases/16-children-including-greta-thunberg-file-landmark-complaint-united-nations

そして、米下院天然資源委員会は、アースジャスティスが中国政府に都合がよく、逆に米国に不都合な活動を、米国内外で展開していると指摘している。(補足3)

また、大紀元によれば、ワシントンDCにある環境問題のシンクタンク、世界資源研究所(WRI、World Resources Institute)は北京公安局と中国生態環境省の「指導と監督」の下で機能しているという。

3)私の推測:

地球温暖化の問題が意識されだしたのは、1980年代である。1985年にオーストリアのフィラハで開催された地球温暖化に関する初めての世界会議(フィラハ会議)をきっかけに、二酸化炭素による地球温暖化の問題が 大きくとりあげられるようになった。

二酸化炭素の増加による地球温暖化のメカニズムは良く分かっているが、その定量的把握は出来ていない。人類にとって問題であることは事実なので、二酸化炭素の大削減計画を打ち上げ、それに乗じて既存の企業を追い落とす事ができれば、一挙両得である。上記「世界経済フォーラム」主要メンバーは、その世界の動きをリードすることで、世界経済の中での地位を拡大する計画だろう。

一方、そのような動きで最も強い影響を受ける可能性のある国は、世界一の一次エネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)消費国中国である。(補足4)中国当局はグレタさんが参加する国際シンポジウムなどを、提携する法律事務所を通じて監視する一方、グレタさんの環境保護活動を内外両面から支援している疑いが浮かび上がってくる。

潰すことができない以上、その運動に資金を与えて抱き込むことの方が、その影響力を最小に抑えられる可能性が高くなる。中国が温暖化ガス問題でやり玉に挙げられる時、大きく育てたグレタさんらの影響力を、主に米国等の先進国に向け、CO2削減義務を負わせる様その主張を誘導するのである。

それを裏付ける様に、グレタさんが睨むのはトランプであり、世界一の二酸化炭素産生国中国の代表ではない。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/92316.php

つまり、仮にグレタさんらの少年や少女の運動が最初自発的であったとしても、現在既に彼ら大人の支配下に入っているのである。最初には自分の意思で運動できると思っても、大人の介入を許した段階で、その方向は歪められ、運動は迷走することになる。

補足:

1)グレタ・トゥーンベリさんの国連での演説の日本語訳は以下のサイトにある。 https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201909/CK2019092502100025.html

2)その記事は、言論プラットホームのアゴラにおいて、長谷川良氏が紹介しているhttp://agora-web.jp/archives/2041857.html

3)米国下院の天然資源委員会は、アースジャスティスに中国政府との関連を問いただす質問状を送付した。しかし、その回答はないようだ。このアースジャスティスは、沖縄辺野古沖のジュゴンを護る訴訟を米国で代行したということである。

4)世界のエネルギー消費の増加分の半分程度は、中国による。しかも、二酸化炭素発生を多く伴う石炭の消費が多い。 資源エネルギー庁の委託調査では、中国が2015年に人工的に発生點せった二酸化炭素は約90億トンである。https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000219.pdf

2019年10月19日土曜日

慈悲の文化と恨みの文化

1)人生をマイナスから出発するのが本来の人間である(四苦八苦の人生観)

日本人の文化の根底にあるのは、神道と大乗仏教である(補足1)。神道は、自然の恵に感謝する宗教だが、その裏には自然に対する怖れがある。日本はまた大乗仏教の国である。仏教では、生命あるものは等しく虚しい存在であると考える(色即是空)。つまり、我々全ての生命は、やがて消え去る虚しい存在であり、悲しい存在である。

日本文化は、その「怖れ」と「悲しさ」を原点に持つ。従って、日本人の他人との関係は、比較的消極的で淡薄だが、基本的には優しい。自分も他人もお互いに悲しい存在であり自然に怯える存在であるから、助け合わなければならないのである。それが台風などで被害にあった地域にボランティアに出る人の気持ちだろう。

ボランティアは西欧から学んだことだが、日本のボランティアとは参加する動機が異なると想像する。西欧のボランティアは、恐らく神の教えによって行う“隣人愛的行為”だろう。一方、日本のボランティアは、悲惨な情況を共有する互助の気持ちで参加する。

日本人は、人生において一般に悲観的だと思う。それは人間として生まれた瞬間に、悲しい存在だからであり、自然神を怖れる存在だからである。この「悲しさ」と「怖れ」を同時に持つ文化は、日本以外には存在しないだろう。日本は極めて特殊な国である。

このマイナスからの出発を意識する様になるのは、勿論、幼少期に親族等から受ける影響、つまり教育による。西欧の人たちも、マイナスからの出発だが、それは罪深き存在というヤハウェ神の教えに基づくだろう。従って、宗教の影響が残るとすれば、日本や西欧では、人間は原点からではなくマイナスから出発する。そして、中世の西欧でも、一昔前の日本でも、人々は暗さを濃く持つだろう。

ただ、西欧は人間復興(ルネッサンス)という文化運動を経験している。そして、中世は終わり、近代化の中で「神は死んだ」という人まで現れた。それらが、部分的であっても宗教からの開放だとすれば、西欧の人たちには、恐らくそのプロセスで楽観的で明るくなったと想像する。(補足2)

人生をマイナスではなく、ゼロ或いはプラスから出発する人たちは、東アジアに多い。(補足3)儒教の下にある中国や朝鮮半島の人たちである。彼らは従って、日本人よりも楽観的で明るいだろう。その一方、自分が苦境にある時、その原因を本来悲しく虚しい存在である自分自身に発見することが出来ない。自分が原因でなければ、他人が原因である。それが「恨の文化」の根本的な存在理由だと思う。

日本文化は、敢えて言えば「慈悲の文化」である。これは、西欧に住む人には、手前味噌のように聞こえるだろう。財布を落としたとしても、その財布は警察に届けられて落とし主に返却されるのは、落胆する人を憐れみ慈しむからである。道端に落ちている裸の500円玉を拾うかどうかの議論は、現在では日本以外には無いだろう。議論のサイトを(補足4)に引用する。

2)外交には相手国の文化を深く研究して考慮すべき:

この文化の違いに気づくことが、日本の近隣外交において重要だろう。現在の政治は、大衆の感情で動く。隣国の論理的思考が出来ない一般人は、自分たちが苦境に陥ればその原因を必ず他に求め、その”見定めた他”を攻撃する。それが「ハン(恨)の文化」であり、反日法を制定し、事後法でも気にせず適用する理由である。(補足5)

日本にとって、最重要課題の一つは中国とロシアの評価である。中国にも人生がマイナスから始まるという思想はないだろう。ただ、習近平氏は文化大革命のときに不遇の幼少期を過ごしている。その経験から、「ハエも虎も叩く」のであれば、それは評価できるのかもしれない。

自由主義経済と民主主義の国に変われば、日中友好は必然だと考えるのは早計だろう。それは韓国との現在の関係を考えればわかる。米国が孤立主義の方向を採り、世界のリーダーでなくなった時、中国の敵でなくなるだろう。その後、中国が苦境に陥った時、日中は今の日韓の関係のようになる可能性がある。

西洋はキリスト教の国であり、その条約という外交文化は、つまり、敵との妥協である。日本の国譲りも、徳川封建体制も、妥協の産物である。しかし、儒教の国は、易姓革命の国であり、定めた敵は殲滅する。妥協がないのが恐ろしい。(補足6)

現在、日本政府は中国に接近しつつある。中国の最新鋭の太原は自衛隊と合同訓練を行った。http://j.people.com.cn/n3/2019/1017/c94638-9623864.html その意味をロシアの新聞スプートニクの日本語版は論じている。日本の新聞にはこの件、殆ど議論されていない。https://jp.sputniknews.com/reportage/201910156757331/

ロシアと中国の文化を理解することの意味は大きいので、改めていつか勉強して書いてみたい。(20日早朝、編集;セクション2を補充、補足編集そして補足6を追加)

補足:

1)この大乗仏教の文化圏では、自分が他人を押しのけて利益を得るという、競争社会での成功に対して、低い評価を与える。そして、自分の能力や財力を誇る行為を、卑しい行為と見る。勿論、現実主義として先立つものは金だという考えは誰にでもある。しかし、それだけでは軽薄な人間ということになる。

2)日本文化の中にしっかりと根づいていた宗教も、徐々に希薄になってきている。それは若者たちを西欧人のように、明るく積極的にしているだろう。その傾向は、特に関西地方で歪な形で強まっている。テレビと“よしもと”の漫才の影響は大きい。人の頭を平手打ちする芸の人気も定着している。その様な場面のテレビ放映は、人の尊厳に無関心な若者を大勢生み出している。それがイジメにつながっている可能性が高い。

3)身分差が制度として定着している場合、プラスで出発する人たちも大勢いる。例えば、貴族である。また、優等人種であると信仰する人たちも、プラスで出発するだろう。その場合、敵や劣等人種を殺害するような場合、信じられない程の残虐性を見せるだろう。北の隣国でのチャン・ソンテクの処刑では、全身がバラバラになったと報道されている。それは甲申事変での、金玉均の処刑と似ている。中韓で流布されている旧日本軍の残忍さは、彼らの常識で作られたと考えれば分かりやすい。 https://www.j-cast.com/2013/12/16191859.html?p=all

4)財布を拾ったとすると、現在でも日本では交番に届けられ、無事持ち主に戻る確立が70%位はあるだろう。それは、財布を落としたものは困っているに違いないという気持ちと、得る資格のない利益を得るのは不道徳であるという考えが、身についているからである。 https://oshiete.goo.ne.jp/qa/4940182.html

5)福沢諭吉の脱亜論に基づいて、この件を考察した文章がある。勿論、福沢諭吉は嫌韓ではなかった。李氏朝鮮を潰さないと朝鮮に未来はないと考える金玉均の留学を受け入れ、親しく付き合った。 https://www.news-postseven.com/archives/20180416_657811.html

6)朝鮮半島では、16世紀に李氏朝鮮の誕生により儒教と朱子学を取り入れ、仏教 は滅んだ。それ以降、歴史は易姓革命的になった。支配者が代われば、過去は全否定される。韓国の歴代大統領の悲惨な最後は、易姓革命的だと考えれば分かりやすい。

2019年10月18日金曜日

(再)誇張された発明家の功績:”銃・病原菌・鉄”の中の文章の考察(2014/10/14)

過去に書いた文章で比較的よく出来ているものを再録している。理由は、グーグルの方針で古い文章は検索にかからなくなっているからである。今も全くこの通りだが、老化でなかなか書けない。惜しいので、少し編集して再度アップする次第。(10月18日)

ジレッド・ダイヤモンド著の「銃、病原菌、鉄」(日本語訳)を読んでいる。文明の発展の歴史を科学的視点で詳細に述べた本であり、大変興味深い記述があちこちに見られる。その中の第13章”発明は必要の母である”(注1)の中に、私も日頃から思っていることに関する文章があり、それを基に本文章を書いた。

それは、今回日本人3人がノーベル物理学賞を授賞した際にブログに書いたこと、“科学技術文明は無数の研究者の努力により現在の形になっている。そして、応用研究では特に膨大な数の研究者や投資者の努力(注釈4)で、商品にまで至る。その中でたまたま一里塚的な位置にあった研究者をノーベル賞委員会が選び授賞する”と関連することである。上記本にあった文章の引用し、更に私の考えを加えて先のブログの補足を書く。

上記本の13章の中の「誇張された天才発明家」のセクションで、ワットの蒸気機関の発明の経緯を用いて、そのサブタイトルの意味を説明をしている。下にネットでの調査を加えて蒸気機関の発明経緯を書く。

蒸気機関と言えば、ワットがヤカンから上がる蒸気が蓋を動かすのをみて、発明したという話を信じている人が多いかもしれない。しかし、蒸気自動車や蒸気機関車に至るには、上記のような長い歴史があったのである。しかも、ピストン運動を回転運動に換えるプロセスも、ワット以外の何人かが決定的役割を果たしているのである。

更に、エジソンが発明した白熱電球も、1841年から1978年の間に色んな発明家が特許をとった白熱電球の改良型だった。ライト兄弟の有人動力飛行機も、その前にオットー・リリエンタールの有人グライダーやサミュエル・ラングリーのエンジン付き無人飛行器があった。

著者は結論として“あの時、あの場所で、あの人が産まれていなかったら人類史が大きく変わっていたという天才発明家は、これまで存在したことがない”。功績が認められた発明家とは、社会が丁度受け入れられる様になった時、既存の技術を改良して提供できた人であり、有能な先駆者と有能な後継者に恵まれた人なのである”と書いている。

それが、「誇張された天才発明家」の意味するところである。 

ノーベル賞に輝いた3名の功績で誰もが知る様になった青色発光ダイオードであるが、それも量子力学とそれによる半導体の研究、半導体内での電子とホールの再結合蛍光の研究、点接触ダイオードや接合型ダイオードの発明、赤色発光ダイオードの発明、青色発光ダイオードに相応しい結晶の研究などが既にあった。そして、それを基にして、赤崎教授と天野博士が初めて青色発光ダイオード作成した。

また、工業利用を可能にした中村博士の研究であるが、徳島の中小企業である日亜化学工業の創業者が、博士課程を修了していない中村氏に、米国留学のチャンスを与え、その後の研究に5億円の投資をし、青色LEDの開発研究を進めた結果である。このような長い経緯を知って、初めてこの成果が正当に評価できるのである。

ところで、中村教授は米・現地時間の7日、自らが勤務するサンタバーバラ校で会見を行い、 学生からの“(研究に対する)モチベーションは?”という問いに対し、「怒り(anger)。とにかく怒りだ」と回答し、日本の研究環境について、「日本の会社で発明したとしても、ボーナスをもらうだけ。米国では会社を立ち上げられる」と苦言を呈したという。http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1413083146/

中村氏は、開発当時勤務していた中小企業のトップの理解を得て、研究者としての修行の機会と、多額の研究費を出してもらっている。その厚遇にたいして同僚先輩などから多少の妬みなどは当然あり得る(注2)。望み通りの研究成果を得ただけでなく、訴訟したとはいえ、8億円の報奨金を手にし、更に、今回ノーベル賞の栄誉を得た。上記のような発言は、私には全く理解できない。

研究者と言えるレベルの人は知っていると思う: 分野が科学研究でも工業技術研究でも、その発展はまるで潮が満ちる様に、文明全体と相互関連して進むものであり、特定の個人が現在のノーベル賞授賞で受ける栄誉に相当する程に目立つ功績を上げて、進むものではないことを。(補足3)将にそのことを、”銃・病原菌・鉄”の中で、ジャレド・ダイヤモンドが第13章の中で書いているのである。

現在、日本のノーベル授賞者数が中国や韓国に比べて大差があることを、まるで日本国とそれらの国の文化や文明に大差があるような報道が週刊誌等でみられる。敢えて言えば、ノーベル賞なんてそんな大した問題ではない。サルトルは1964年にノーベル文学賞に選ばれるが、「いかなる人間でも生きながら神格化されるには値しない」と言って、これを辞退している。

もし、<u>ノーベル賞授賞が特定の個人の神格化なら、文明にとって意味がないか有害かのどちらかである。(Wikipediaのジャン・ポール・サルトル参照)

注釈:

1)通常良く言われるのは、「必要は発明の母である」である。しかし、この言葉で語られる発明は、大発明の中では少数派で、例えば米国による核兵器の開発がある。(”銃・病原菌・鉄”日本語文庫版、下巻、61-65頁、”発明が用途を産む”)

2)サイトにこの辺りの経緯が説明されている。http://biz-journal.jp/2014/10/post_6311_2.html しかし、ここで書かれている怒りは、本分中の講演後の怒りとは本質的に違う。

2019年10月15日火曜日

ウクライナを舞台にする米国政界の争い(編集あり)

1)ウクライナ疑惑を一般論的見地から見る:

今、米国はウクライナ問題で揺れている。トランプ大統領がウクライナの大統領選に勝利したゼレンスキー(Zelenskyy)に祝いの電話をしたとき、"おめでとう"の言葉だけでなく、ウクライナを舞台にした米国人の不正疑惑(補足1)を調査するように依頼したことが、憲法に違反するというのである。

その不正疑惑の主がバイデン父子で、バイデンは次期大統領選の有力候補とみなされているからである。しかし、その疑惑の対象が大統領候補になり得るので、捜査対象から外すべきだということにはならない筈である。バイデン父子の疑惑が明らかになれば、大統領選挙で有利になるかもしれないが(別に強敵が現れなければ)、不正を働く人が相手の選挙なら、有利になるのは当然ではないのか。

何よりも、不正が疑われる件に関して、事実の解明が第一である。もし、バイデンに不正の自覚がないのなら、そしてトランプがそんな方法で選挙を有利にしようとしたのなら、それは汚い選挙干渉だという批判が起こり、トランプにとっては非常に危険である。

従って、今回のトランプを攻撃する側(民主党支持者の)反応は、バイデン側に不正があったという自覚があるからのようにも思える。 バイデンが、徹底した捜査でも真っ白になる自信があれば、そして実際に真っ白になればなおさら、次期大統領選に大変有利ではないのか?

また、そのトランプを攻撃する一派は、バイデン一家の不正への調査要求をちらつかせて、予定されているウクライナへの軍事費支援を遅らせたのではないかとトランプを攻撃している。しかし、それも明確に脅しの言葉が無く、それが実質的に被害を生じないレベルなら、問題にする程のことではないと思う。

それが問題なら、バイデン当時副大統領がウクライナに対して保証していた10億ドルの貸与を片手に持って、ウクライナ側に検事総長の交代を迫った可能性(トランプやジュリアーニらの指摘;補足2)に対し、バイデンやトランプ非難の側が明確にすべきである。

前回の記事にも書いたが、現状説明できない金を外国から政府要人の周囲がもらったのなら、それに匹敵する国益に反する取引があった筈である。それは物理法則を適用する場合に似ている。物体が運動エネルギーを持ったのなら、それは誰かが動かしたのである。動かした人がわからなくても、誰かが動かしたのは事実である。そのエネルギーに相当するのが、今回の場合ハンターらがもらった説明できない多額のお金である。

つまり、不正捜査の鉄則は、「誰かが不正な利益をあげたか」と「次に誰がその利益を上げたのか」をその順に明確にすることである。明らかにバイデンの息子(ハンター・バイデン)やケリーの義理の息子(デバン・アーチャー)には、十分説明できない利益が、支援対象であったウクライナの企業からもたらされただろう。それは、何処かで米国の国益を害している筈であり、何らかの不正はあったと考えるべきである。

ウクライナも米国の支援という利益があったのなら、自発的には米国高官の周辺の不正は喋らない筈である。つまり、構造として、そしてメカニズムとして、その種の疑惑は明らかになりにくい。ウクライナの前検事総長が直ちにバイデン父子の調査は不要であるといったのは、その国のエゴイズムに起因すると考えても間違いではないだろう。その調査依頼を多少の圧力を感じる形でするのは当然ではないのか?(補足3) ①https://www.bbc.com/news/world-us-canada-49871909 

バイデンが大統領選に出る可能性も、何処かの一国民が大統領選に出る可能性も、ゼロではない。従って、バイデンが大統領選の候補者だからということを根拠にしたトランプ批判は民主主義の原則からみて非合理的である。そして、明確な理由なく大金が動いたことの裏には、物理的にと言って良い位の確実性で必ず不正がある。その疑惑解明よりも、トランプの電話での捜査依頼を憲法違反だといって騒ぐのはおかしい。

これらの背後には、トランプ批判の人々が「トランプは無法者」という色メガネを掛けて、政治を見ていることがあるように思える。この疑惑の元になった電話の内容は、ホワイトハウスから公開されている。NYタイムズは、言葉尻を捉えてトランプのウクライナ疑惑を批判しているが、バイデン父子のウクライナ疑惑を完全に見逃す不思議を消す努力はしていない。 ②https://www.nytimes.com/interactive/2019/09/25/us/politics/trump-ukraine-transcript.html 

2)ウクライナ疑惑の経緯について若干の追加

疑惑の具体的な話に戻ると、反日ほど前に出たFOXニュースでこの件が取り上げられている。それによれば、2014年4月16日にデバン・アーチャーはホワイトハウスでバイデンと私的に会っている。(ホワイトハウスの記録に残っていると書かれている)その二日後、バイデンの息子ハンターがブリズマの役員となり、更に三日後の4月21日にバイデンは、ブリズマに対する支援の約束を持って、ウクライナに向かったという。(John SolomonというFOXニュースの寄稿者) ③https://www.foxnews.com/opinion/steve-hilton-ukraine-scandal-us-cash-gas-bidens-dems

この件、その後ウヤウヤになった理由は、バイデンがウクライナの検事総長Victor Shokin(2015/2/11 – 2016/3/29)を首にしたことであると、政治コメンテーターとして有名なGlenn Beck(Wikipedia参照)は動画で解説している。 ④https://www.youtube.com/watch?v=5nUZekJ3pfM

BBCは、前のウクライナ検事総長Yuriy Lutsenko(ウクライナの前検事総長2016/5/12 - 2019/8/29)はこの件でバイデンを捜査する必要はないといったというが、何の為にこのようなニュースを流したのかわからない。聞くのなら、当時検事総長だったVitaly Yarema( Jun.19/2014 –Feb.11/2015) 、Viktor Shokin (Feb.11/2015 – Mar.29/2016)、Yuriy Sevruk (Mar.29 – May. 12/2016)らに聞くべきだろう。

既に、Viktor Shokinはバイデンにより首になった理由を明確に語っている。当然のことながら、バイデンは息子から疑惑が発覚するのを恐れたと推理している。それと同時に、既に述べたように米国の不正を暴くことはウクライナの得にならないので、政権側の人は米国の利益と一致すると考えなければ真実を語らないだろう。BBCの人には、何処に猫の首に鈴をつけるネズミがいるか聞いてみたい。(文献①)

「ウクライナ政変に絡んで私腹を肥やしたバイデン親子の調査が大事か、ウクライナへの軍事費支援が大事か?」という問題だが、過去の捜査とリアルタイムの安全保障問題の比較であるから、前者を重視する考え方自体は、健全であると私も思う。従って、トランプはそれほど長期に亘って、軍事支援金を出さなかったわけではないだろう。

尚、以上の考察は「chukaのブログ」氏へのコメントとして書いた。その元の記事を以下に引用しておく。 ⑤https://83k2ho1ux7ti.blog.fc2.com/blog-entry-296.html

3)世界は混乱の入り口にあるのか?

米国の政治情勢は、定性的には、韓国の情勢に似ている。韓国では、クーデターの前夜的な雰囲気のようだが、米国もトップの地位の危うさという点では同様に見える。ただ、米国の場合は副大統領が後任として控えているので、トランプ以前の情況にまで完全に戻ることはないだろう。しかし、それはたいしたことではないのだろうか?

日本のトランプを見る有力な一モデルは、グローバリズムを推し進めてきた米国の影の勢力と戦っている大統領である。そして、もしトランプが失脚すれば、西欧近代国家の主権国家体制が崩壊に向かうという人類史の3年ほど前の情況に戻るのだろう。その時から10年ほどすれば、力をもって世界を支配するのは、経済的力をつけた中世的独裁国、つまり中国かロシアになるだろう。それは日本にとって悲劇的になる可能性が大である。

トランプ政権が米国民に対して明らかにしたのは、米国が国家という価値を認めない一派により影から支配されてきたことである。グローバリストと呼ばれる人たちは、国境の破壊を意図し、難民のような移民を世界中にばら撒いてきた。その姿勢は、かれらは国民国家を理解し、それを維持するという責任感を持たない人たちだからだろう。土着のナショナリズムを持たない人達が、巨大な経済的力と政治的力を隠し持った国が、米国であった。

トランプは、以前から一部で用いられているディープ・ステートという言葉を彼らに対して用いている。その中でより明確な姿を出したのが、ホンジュラスなどから米国に向かう難民を支援した団体である。未だにメキシコと米国の国境付近の町に住んで、彼らは悲惨な毎日を送っている。

この大量移民は、トランプを窮地に陥れようとする企みであることは、明らかなに見えるのだが、それは捏造だと言われればそれまでである。その米国への移民希望の家族が「ニカラグアで暴力的に追い払われた。我々には帰るところは無い」と話す家族をテレビは映していた。大量難民発生のどの段階から米国の勢力が絡んでいるのかわからない。その図式は、北アフリカからヨーロッパへ向かう難民と相似的である。

トランプが、その支配を打ち破ろうとしていると言う説を精力的に主張しているのが、元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏である。植民地と奴隷制の中世から、近代国家を経て、世界の先頭に発展した米国は、自由、民主主義、法の支配を外に向かって主張する世界の手本に見えた。その建前論は、世界の国々にとって目標であったが、その本質は上記の一派が支配する現実主義的国家であった。多くの国々にとっては、米国の現実主義のマネはできない。

つまり、自由、民主主義、法の支配の近代国家モデルの輸出は、それに相応しい文化を持たない国々に混乱を招く結果になるだろう。ウクライナのオレンジ革命を初め、カラー革命と呼ばれる多くの政変で、米国は中心的な役割を果たしたと言われている。このウクライナの政変でも、そのような不正が生じたのだろう。それを振り返る事なしに、トランプを批判するのは疑問に思う。

(17日早朝 セクション1の語句編集)

補足:

1)この件、10月7日のブログにも書いたが、ここでも少し書く。2014年2月にウクライナのヤヌコビッチ大統領が亡命した直後の2014年4月に、当時の米国副大統領バイデンがウクライナを訪問した。それと同時期に、バイデンの息子のハンターと当時米国国務長官ケリーの(義理の)息子のデバン・アーチャー(Devon Archer)は、疑惑の中心であるガス会社のブリズマの役員になる。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/10/blog-post_7.html

デバン・アーチャーとハンター・バイデンはビジネスパートナーで、一緒にローズモント・セネカという会社を経営している。それから一年あまりの間に、彼らの周囲に千億円以上の金が流れた。 同様の疑惑が中国を舞台に存在するが、ハンターは「もし父親が大統領なら中国企業の取締役を退任し、外国での仕事はやらないと言った」と報じられている。つまり、中国と民主党はズブズブの関係であることは、この事実からも明らかである。

2)バイデン当時副大統領が、息子ハンターと、そのハンター・バイデン氏がどういう訳か突然に取締役になり多額の報酬を貰う事になったウクライナのガス会社のブリズマを刑事訴追から守るためということになる。

3)不正にならない圧力の範囲を想定する事は、「法の支配下の検察や司法」にも必要だろう。推定無実を相手にいかなる圧力も掛けるべきではないと100.00%主張するのは、現実主義的ではない。死刑を廃止し、且つ、犯罪の取り調べに圧力があってはならないという理想主義の主張は、現在の検察及び司法を機能不全にするだろう。現行犯を疑われた時点で、警察が射殺する欧米の姿勢は、その理想主義が招いた不正な警察の姿ではないのか。

2019年10月12日土曜日

「日本が成長できない本当の理由」を中心に日本文化を考える

1)「企業の設備投資はドブに捨てているようなもの 日本が成長できない本当の理由」という記事がNewsweek誌に掲載されたようだ。ヤフーニュ−スで10月8日14時30分配信の記事で読んだ。https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/10/post-81.php

日本の企業は、利益剰余金をたんまり抱えているが、設備投資をしない。それが、日本が成長できない理由としてよく言われている。しかしこの記事では、日本の企業は設備投資をドブに捨てているようなものと切り捨てている。

その一例としてシャープの経営破たんを取り上げている。つまり、本格的に液晶デバイスへ事業の転換のため、巨額の投資をしたものの、液晶の価格破壊が一気に進み、膨大な損金を出して経営危機に陥った。

液晶が汎用品的になり、価格破壊が進むことは誰もが認識していた筈だが、何故か設備投資に邁進し、大方の予想通り巨額の損失をもたらしたと言うのである。

そして結論として、シャープの経営危機は、結局経営トップが優秀でなかった。従って、その対策として、「効果的な設備投資を実現する唯一の手段は、適切な市場メカニズムを通じて、有能な経営者を企業のトップに据えることである」と主張する。

更に、政府にできることがあるとすれば、ガバナンス改革を強化し、国民の経済活動を貯蓄から投資にシフトさせることで、企業の行動原理を変化させることだ。」とある。

2)私の感想:

日本が経済成長しない原因として、安倍内閣の参与である藤井聡氏、三橋貴明氏、高橋洋一氏などの、積極財政でデフレ克服するという提案は間違いで、このニューズウィーク誌の指摘の方が正しいと思う。

最後の「政府に関するガバナンスを改革する提案」は、規制緩和の話かと思うが、もう少し具体的に言ってもらいたい。私の意見としては、年功序列的な賃金制度を廃止し、賃金を労働の対価となるように側面から支援する政策や法整備を行い、労働市場の流動性を改善することが必要だと思う。

ただ、適切な市場メカニズムを通じて、有能な経営者を企業のトップに据えることで、効果的な設備投資が出来るだろうか? 私はそれは本質的な解決にならないと思う。

Newsweek誌の記者の疑問:「何故誰もが気づいている液晶市場の性格変化が、シャープの経営トップが見抜けなかったのか?」が正当な指摘なら(誰もがに注目)、それは液晶テレビの主要メーカーだったシャープの幹部社員の多くも気づいていた筈である。

つまり、シャープという当時の一流企業の上層部が、馬鹿ばっかりだったのでない限り、会社の方針に疑問を持つ取締役などがシャープにも多く居た筈である。しかし、その意見が取締役会などで議論されなかったのだろう。以下は私の持論だが、日本の会議は議論する場ではなく、最上層の考えの伝達と承認の為にある儀式に過ぎない。

日本社会には議論の文化がない。議論が成立する為には、会議の場において対等に向かい合う大勢が意見を出し、それを批判する自由が確保されなければならない。しかし、日本の会議においては、意見の重要度を決定するのは、第一にその意見を出した個人の順位であり、意見の内容は第二の根拠にすぎない。

つまり、日本の低迷は、経営者個人の能力だけが問題で生じたのではない。頭(経営トップ)だけが悪いのではなく、全身疾患だと私は思うのである。繰り返しになるが、西洋(Newsweek誌所在の)には普通に存在する「情報の伝達や交換により、会社の方針をbrush upする会議という機能」が、日本には欠けている。

深刻なのは、その我々がまともな会議を持てない原因として、日本では個人間の情報の伝達や交換(つまり会話)を阻害する様々なファクタが社会全般に存在する。それは日本文化そのものの特徴、或いは、欠陥である。

そしてそれは、シャープだけでなく東芝などの他の一流企業の低迷や破綻にも現れている。西室泰三氏は優秀な経営者だった筈である。何故、米国ウェスティングハウス社買収で会社を傾かせ、日本郵政社長になっても、フランスの物流会社の買収で巨額の損失を出したのか?

  どのような決断でも、最後は経営トップが決断するだろう。その決断の前に、その方向についての議論が経営陣の間で円滑になされたのか? また、その材料となる情報を経営陣が部下から吸い上げることができたのか? どのような組織でも、非常に優秀な人の独裁では必ず破綻する。

3)会社など社会組織は、生体をモデルにすべき

会社などの組織が、存在を維持し成長するには、人体など生命体に学ぶべきである。人体を構成する細胞は、廻りと或いは全体と情報を交換することで、その細胞の役割を果たしている。 頭の細胞も内蔵の細胞も手足の細胞も、夫々異なった役割を持っているが、貴賤の区別はなく平等である。(補足1)

経営のトップにはトップの役割が、その下の経営陣にも固有の役割が、そして末端にも末端の役割がある。それを円滑に果たし、その際に必要な情報の受け取り、得た情報の伝達(発信)は円滑でなければならない。

それは西欧が長い歴史の中で獲得した知恵である。その西欧文化を受け入れながら、それを十分理解せずに、その社会組織は徐々に日本化しているように見える。(補足2)

日本方式の社外での飲み会などによる懇親関係の構築は、西欧文化に無い有害な習慣であり文化である。裁判という事業の円滑な遂行のために、裁判官、検事、弁護士が懇親会を開くようなものである。西欧文化に学び、それを取り入れるのなら、その本質まで理解し、自分たちのものにしなければならない。

どの社内にも大勢居る筈の若い優秀な人物を、経営陣に押し出すことで生命を維持し成長させるのは、生命体としての会社における日常的な情報交換や議論の積み重ねである。それは会社員が昼間仲良く幸せに暮らすためではない。会社の事業のためである。(補足3)

派閥や学閥のような人脈支配の人事では、会社が潰れるまでは、仲良く幸せに暮らせるだろうが、会社の維持や発展は不可能である。単に市場原理で経営トップを何処かから引き抜いても、その人一人が社内で浮き上がってしまうだろう。米国では、社長と平社員でも、互いにYOUで呼び合う。そして、個人の尊厳は、社長と平社員でも同等に重視される。(補足4)

西欧文化では、情報の流れに対し、なるべく障壁を無くするように出来ている。その文化の中で進化したのが、西欧言語である。それを意識したのが、ソフトバンクや楽天の英語公用語化だと思う。つまり、会社経営から日本文化を追放する意味もあるのだろう。

同じことが政府にも言える。先日の韓国に対する経済制裁のちぐはぐは、閣僚の間での円滑な議論の結果だとは、とても思えない。上からのトップダウンの方向で、決断のみがながれたのだろう。それでは、トランプ方式だと揶揄されても仕方がない。 https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/07/blog-post_94.html(7月4日の記事)

政府が考えるべきは、急には効果がないが、日本文化の改善が最も重要である。情報交換を双方向に円滑に行う文化の構築である。そのためには、上記大企業に習って、50年程度かけ、英語を公用語にすることが最も早いかもしれない。

その他、教育の現場では、生徒には思考と発表をさせ、それを生徒と先生の間、或いは生徒間で議論する形の授業に変える。ノートブックなどは教室から追放すべきである。

日本語の改革も重要だろう。複雑な敬語を廃止し、丁寧語を中心に整理するべきである。漢字も、当用漢字を一定数選定し直し、それ以外は廃止する。熟語も、「慚愧に堪えない」「内心忸怩たるものがある」などの慚愧、忸怩など訳のわからない表現は廃止する。

以上はとんでもない提案かもしれない。しかし、そのような議論を先ず、あらゆる場所で行うべきである。

補足:

1)今週のテレビでは、学校の先生同士でいじめが発生していると言うニュースが大きな話題になっていた。個人の尊厳という概念は、学校にも存在しなくなった。失礼なことを言うヤツがいれば、殴るのが戦前の日本だろう。大人まで幼児化が進む時、個人の尊厳なる言葉は日本社会で死語となる。

2)社会のピラミッドにおいて、上の意見が重要視されるのは人間社会共通である。しかし、下の人数は上よりも多いので、少なくとも階層全体としての意見の重要度は同じでなくてはならない。しかし、日本を含めて東アジアの儒教圏の国々では、上の意見の重要度が絶対的と言えるほど高い。それが、儒教が支配的になった中国や朝鮮が独裁に向かった理由である。圧倒的に数の多い下層に不満が蓄積した時、革命が起こる。その独裁体制の発生と強化、そして革命のサイクルが、中国の易姓革命である。朝鮮も高麗にあった仏教を廃止し儒教の完全支配になり、易姓革命的な李氏朝鮮になった。韓国は、その実態をもっと真面目に研究して、反日に頼る以外の国民団結の手段をつくるべきである。決して、独裁に戻ってはならない。

3)「日本人は仕事が好きだが、西欧などの国では仕事は苦役であると考える」と言って、日本の労働文化を自慢する人が日本人に多い。しかし、その日本人が考える楽しい仕事と、西欧人が感じる苦役という仕事の側面は、「仕事」が同じなら互いに矛盾する。つまり、西欧人も日本人も同じ人間なら、日本人が感じる楽しい筈の仕事と、西欧人が感じる苦役としての仕事は、異質のものでなくてはならない。

4)社長にとっての現場の職員と、現場の職員にとっての社長は、等しく会社の社員であり、異なった役割を分担している平等な関係にある。少なくとも生命体ではその様になっている。頭はどこかへ向かうべきと、足に情報を流すだろう。足はその情報を受けて、移動するだろう。それは、頭も足も胃も腸も含めて、生命体全体のためである。上下の関係は会社の円滑な機能発揮のためにあるのであり、私的な人間関係や個人の尊厳、とは無関係である。

2019年10月11日金曜日

リチウムイオン電池での吉野彰氏のノーベル賞受賞

1)2019年のノーベル化学賞は、エクソン社(現在米国の大学)のM. Whittingham氏、米国テキサス大のJ. Goodenough氏、旭化成(現在名城大)の吉野彰氏が受賞し、日本では非常に大きなニュースになっている。

リチウムイオン二次電池(二次は充電可能の意味;以下省略)が現代の生活に必須であり、将来更に大きな意味を持つ工業製品なるだろう。従って、その開発者にノーベル賞が授与されたのは当然である。遅すぎたという意見が在るくらいだが、その技術は未だ発展途上だからだろう。

リチウムイオン電池の構造の模式図を下に示す。(注釈1)

これは、以下の「電池の情報サイト」から借用した。http://kenkou888.com/category21/%E3%82%BB%E3%83%91%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AE%E6%9D%90%E6%96%99%E5%8C%96%E5%AD%A6.html

つまり、負極材料に炭素(通常グラファイト)、正極材料LiCoO2、電解質とセパレータと呼ばれる多孔性の膜である。セパレータの役割は、正負両極の直接接触を防ぐ他、高温になった場合穴が塞がれ、電池の機能を止めてしまうことである。(上記サイトに記載)

吉野彰さん(今回のノーベル賞受賞者)が1985年に開発したリチウムイオン電池は、負極に炭素系材料を正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いたより安全で高性能なタイプである。(注釈2)グラファイトと明記されないのは、グラファイトに何らかの形状的或いは化学的な修飾を施したものなのだろう。その化学修飾の詳細は、ネット検索の範囲では見つからなかった。

ノーベル賞受賞者の二人目は、元オックスフォード大教授のJ. Goodenough氏(今回のノーベル賞受賞者)である。同氏は、当時留学していた水島公一氏(東芝エグゼクティブフェロー)との研究で、正極にLiCoO2を、負極にリチウム金属を使用した電池を1979年に開発した。(論文発表は1980年)

リチウムイオン電池の最初は、1970年エクソンのM. Whittingham(今回のノーベル賞受賞者)により、負極に金属リチウムを用いたものが初めて作られた(受賞者の一人目)。 この時、正極に二流化チタンを用いたが、それは高価且つ不安定であまり良い選択ではなかったので、エクソンは本格的な開発をしなかった。

以上三氏の受賞理由を簡単に記した。以下に、もう少し化学的な意味や歴史的経緯について、筆者のメモとして書く。

2)リチウムイオン電池の歴史は長く深い。非常に多くの研究者が研究と開発に携わり、現在も携わっているだろう。小型で大量の電気エネルギーを蓄える電池材料として、リチウムイオンに注目するのは、リチウムは周期表の3番目に出てくる非常に小さくて軽く、且つ、その酸化により高いエネルギーを放出する金属(アルカリ金属)だからである。

ただ、正極にコバルト酸リチウムを用いた場合、充放電が行われてもLiイオンの電荷は化学式の上では変わらず、一部のコバルトの電荷が4+から3+に変化するのみである。つまり正極の反応は、Li(+) + e(-) + CoO2 → LiCoO2  である。この時、リチウムイオンは電解質中を負極から正極の方に移動し、電子は電線を通って、負極から正極に移動する。

負極でリチウムイオンを放出するのは、炭素系材料であり、主成分はグラファイトだろう。グラファイトが吸蔵しているリチウムイオンを電解質に放出する一方、電線を通って電子を放出するのである。グラファイトは正六角形の網目構造をしているので、通常C6で表す事が多い。つまり、負極での反応は C6Li → C6 + Li(+) +e(-) である。

正負両極とも巨視的材料のLiCoO2 (満放電状態)とグラファイトである。LiCoO2から可逆的にLiイオンが出て、グラファイトに可逆的にLiイオンが吸収されるのが、充電に伴うリチウムイオンの動き(輸送)である。この可逆的吸蔵をインターカレーションと呼ぶ。現在のリチウムイオン電池の物理化学的な主役である。

ここで、グラファイト中及びLiCoO2中のリチウムイオンには、母体から電子が部分的に移動している状態であり、その両電極におけるリチウムイオンのエネルギー差が、電池の起電力(電圧)となる。

その起電力を出来るだけ下げないように、電解質、セパレータ、集電箔などの材質や形状などの広範な研究がなされ、市販のリチウムイオン電池が出来上がる。現在発展中だと上に書いたが、例えば電解質として固体電解質(液漏れなどが皆無)、正電極に様々な遷移金属酸化物が研究されている。

その裾野を含めた分野は広大であり、素人には正しく評価できないのが正直なところである。巨大な連峰から目立った3つのピークを選ぶのは難作業である。もし、これが公的な褒章なら、もっと多くの人を対象にすべきだなどの議論があるだろう。

3)補足:

リチウムイオン電池の開発において、物理化学的見地に立ては、上記正負両極におけるリチウムイオンのインターカレーションの研究が非常に重要である。その現象は1974年から76年に掛けて、ドイツThe Technical University of Munich (TUM)でドイツのJ. O. Besenhardらにより研究された。J. O. Besenhardは、論文の中でリチウムイオン電池への利用を進言している。 J. Electroanal. Chem. 53 (2): 329–333(1974);Carbon. 14(2): 111–115(1976).

1977年、 ペンシルバニア大のSamar Basu氏が、グラファイトのリチウムイオンの可逆的な吸蔵と放出を電気化学的(つまり電池モデル的)に示し、それを用いた負極のリチウムイオン電池が米国Bell研究所で開発された。また、1979年、正極にLiCoO2を負極にリチウム金属を使用した電池は、最初N.E. Godshallらにより作られた。

既に記したように、英オックスフォード大J. Goodenough氏と当時留学していた水島公一(東芝エグゼクティブフェロー)により発表されたのは、その直後であった。(英語版ウイキペディア参照)

その他、1980年R. Yazami氏が、固体電解質とグラファイトを用いた陰極をつくり、それが2011年当時では最も良く使われるLIONバッテリーだとWikipediaに書かれている。2012年に、John Goodenough, Rachid Yazami、Akira Yoshino の三氏はthe 2012 IEEE Medalをリチウムイオンの環境と安全性向上の技術開発により受賞した。

電解質やセパレータなどにも、膨大な研究がなされているだろう。そして、ノーベル賞の発表とその後の社会の反応を見る時に常に思うのは、そこに参加した人とその成果の膨大さ、そして、受賞者の功績に対する称賛の大きさに比べて、それ以外の全体としてはより大きな寄与への配慮の無さである。

尚、今回紹介出来なかったが、この分野で大きな貢献をした京大山辺教授の総説を引用しておきます。 https://nias.ac.jp/cigac/pdf/LIB_KagakuJPN_2015.pdf

注釈:

1)現在のリチウムイオン電池は多層膜状構造であり、この原理図からは形状的には遠いだろう。また、電極は集電板、電極物質、電解質(有機液状物質と添加物;例えば、ポリマーゲル)を含めてのもので、電極物質(上のLiCoO2やグラファイト)は粒子状で電解質中に存在するのだろう。セパレータはリチウムイオン以外の粒子の混入を防ぐ。電池の基本は、イオンは電池内を流れるがセパレータで混合防止され、電子は電線上のみを流れることである。リチウムイオン電池では、リチウムイオンはセパレータを通過できる。



2)吉野彰氏は、会社の方針として最初ポリアセチレンを負極材料に用いたリチウムイオン電池の開発を1983年に行った。安定性などの問題があり、負極材料を炭素系材料(多分基本的にはグラファイト)に切り替えた。 (10月12早朝編集、最初のセクションでの年号追加と注釈2の追加)

コメントなど歓迎します。(以上)

2019年10月9日水曜日

愛知トリエンナーレ「表現の不自由展」に対する意見(再考)

あいちトリエンナーレが再開され、表現の不自由展で平和の像(以下、慰安婦像)や、昭和天皇の肖像画を燃やしたりする展示物が、再度公開されている。この件についての議論がプロデューサーである津田大介氏の出演で、今朝の「グッとラック」というモーニングショーでも放映されていた。

この件、既に二度ほどブログ記事にした。そして、それら展示は政治的プロパガンダであり、現政府やその下の地方自治体が支援するのはおかしいと結論した。今回は、もう少しその主張と根拠を明確にしたい。

津田氏は、自分たちが気に入らないからというだけの理由で、芸術祭を支援しないという姿勢は、その問題を考える機会すら奪い去ることになり、好ましいことではないと発言した。津田氏の一般論における論理は正しいと思うが、上記特定の展示物に対する具体的な議論が欠けていた。

津田氏も認めているように、何が芸術で何処までが芸術かという問題は、人により情況によりことなり、微妙であり結論を出すのは困難である。そこで、今回の展示の議論は、芸術かどうかの議論は保留して以下話を進めたい。というより、作品の芸術性には無関係である。

芸術は、感覚や感情に訴えるものであり、論理的思考を進めるものではない。従って、歴史に関する分析とか、政治に対する議論を重要な問題として行っているとき、そして、その作品(芸術性のある無しとは無関係に)が呼び起こす感情や感覚が強くその政治や歴史に抵触する場合、それらの展示は慎むべきであり、政府は協力すべきではない。それは国民を愚弄する行為であり、政治的プロパガンダだからである。

勿論、その時代を生きた人の感覚で、それらを表現できれば、写真や芸術作品もそれらの議論の助けにはなるかもしれないが、一般に、それらの作品は、論理的思考を妨害し、立場の異なる人々による冷静に議論の場と姿勢を破壊する可能性が高い。

繰り返しになるが、表現の不自由展で展示されているものは、特に、慰安婦像や昭和天皇の肖像写真を燃やすような展示物は、異国が用いている政治的プロパガンダの現役の道具であり、現在の日本政府や愛知県がその展示を支援すべきではない。

この点は、前回の根拠として明確な形で触れなかったかもしれない。要するに、上記結論は芸術かどうかの問題とは全く別である。つまり、仮にあの“平和の像”が芸術であっても、それが75年後の感覚で作られている以上、慰安婦制度やその歴史の中での意味を抽出する材料にはならない。

歴史上のある出来事の検証と評価は、その時代背景とその土地及び風俗などを前提に行われなければならない。慰安婦という75年前の「仕事」の意味は、既にソウル大学の教授により、議論されている。(2019-10-04 の記事参照)
慰安婦の実像と虚像ーソウル大李栄薫氏の講義の感想https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12532361574.html

別の表元で繰り返す。「平和の像」つまり慰安婦像は、75年以上前の出来事を、韓国の現在の政治的プロパガンダの為に、現代の韓国の基準で敢えて評価し表現したものであり、国家に求心力をもたらす為に反日感情を扇情するためのものである。歴史的検証の意味は皆無である。

また、表現の自由は、公共の福祉に反しない範囲で主張しなければならない。従って、昭和天皇の肖像を焼く場面を含むような展示物は、日本においては表現の自由を主張する資格はない。天皇制に賛成とか反対とかのいろんな意見はあるだろうが、それは将来の議論すべき問題であっても、現在一部の人たちの感情や感覚を表現し宣伝するのは、日本における公共の福祉に反する行為である。

立川シラク師匠が上記番組の中で用いた例え話だが、親の過去の悪い点醜い点を単に表現し展示する行為は、その一家を誹謗することになり、単なる敵対行為である。それが、コミュニティー全体の改善など相応しい場所と時間において議論される場合には、子供も辛抱し受け入れねばならないだろうが。

単なる敵対行為に対して、反撃するのは当然のことである。昭和天皇の肖像を焼いたり、破ったりする展示物は、正に、この比喩のとおりである。

2019年10月8日火曜日

アポロ宇宙船乗組員は月面を歩いていない

アポロ宇宙船の飛行士は、本当に月面に着陸し、あのように跳び跳ねる事が出来たのか? 最近、宙畑というブログ・サイトをみつけた。https://sorabatake.jp/5761/ そこにはアポロ計画の歴史と功績、捏造説の反証事例という記事があった。そこに引用されている一枚の写真を見て、再び捏造説を書いてみたくなった。 

くっきりとした靴跡が地上で撮影された写真が捏造の一つの証拠だと、以前に書いた。空気がなく、従って、水分が存在しない月面の砂粒子の表面には水が吸着していない。そのため、砂粒子どうしが凝集して、靴跡を作らないからである。それは、砂粒子がギザギザになっていても同じである。

非常に寒いところで、降り積もった雪を手で握って固める事ができないのと同じ理由である。 

今回の疑問点は、宇宙飛行士の服装である。宇宙飛行士の服装にできたシワは、地表面でよく見られるシワと同じである。これは真空状態の月面ではありえない。  

我々の皮膚の表面は約1気圧でなくてはならない。そうでないと、我々の体は10分ほどで干物になってしまうだろう。その前に、血液は酸素を失い、瞬間的に死亡するだろう。

ところが月面は真空である。従って、宇宙服の内部も真空でなくては、このような宇宙服の柔軟性を示すシワが出来ない。 そうすると、写真の白い宇宙服の内部に、1気圧の皮膚表面の空気を確保する頑丈な気密装置がなければならない。

人はその気密容器の中に入っている状態を保たなければ命はない。歩行の際には、その機密容器が何箇所にもつなぎ目を持ち、そこを変形させながら、しかし全体の内部の体積を一定に保たなければならない。そのような精巧で頑丈な装置の上に、写真のような白い宇宙服を着ける理由は、おしゃれのためなのだろうか? 

この事情は、国際宇宙ステーションで行う船外活動の場合も同様である。この場合、非常に固そうな装置を着て、宙に浮いた形で作業している筈である。

月面着陸陰謀説は多い。それらの殆どはアポロ計画成功という宣伝を擁護するためにだされたのだろう。最初に月面着陸に疑問を呈したのは、ロケット開発に従事したビルケーシング(Bill Kaysing)だった。ロケットの性能が不十分であることを根拠に、月面着陸捏造説の本「“We never went to the Moon: American 30 billion dollarSwindle”」を出版した。(1976年に初版が自費出版、2002年にHealth Research Book社から出版) 

その後出された陰謀論の殆どは、当局かその協力者が、否定することを前提に作った陰謀論だろう。

2019年10月7日月曜日

トランプのウクライナ疑惑とバイデン父子によるウクライナ政変時の不正蓄財疑惑

1)ウクライナでのバイデン父子の疑惑

この件、2014年2月のウクライナ危機が発端にある。2013年11月にヤヌコビッチ・ウクライナ大統領がEUとの連合協定交渉の棚上げを発表したことに反発した民主野党や市民・学生らが、首都キエフで抗議運動を開始したのが切掛だった。

当時、国際政治評論家の田中宇氏は、ウクライナを欧米圏に近づける為に、米国などは反ヤヌコビッチのデモを支援していたと、欧米マスコミ記事などを引用し、主張していた。(http://tanakanews.com/)オレンジ革命や2014年の政変は、ウクライナでの親露派と反露派の対立を明確にし、国家としては不安定化した。

米国オバマ政権で副大統領だったバイデン氏は、ウクライナ問題を担当していた。つまり、2014年のクーデターにも深く関与していた筈であり、この件の米国側の主役だったのだ。https://tanakanews.com/e1130ukraine.htm

当時のヤヌコヴッチ大統領はクーデターの結果、ウクライナから逃亡し(2月22日)た。そのクーデター直後にウクライナに乗り込んだバイデンは、腐敗を克服しなければならないと言っていた。まるで、ヤヌコヴィッチが大統領に適さないのは、汚職で私腹を肥やすからだと言いたいのだろう。ウクライナのソ連崩壊後を継続してみていれば、明らかに親露か反露かにしか関心がなかった筈である。 (chukaのブログ;https://83k2ho1ux7ti.blog.fc2.com/blog-entry-294.htmlに引用の米国ABC放送)

その後のウクライナの政権だが、3ヶ月あまりの暫定政権(トゥルチノフ大統領代行、6月7日まで)の後、2019年5月20日までポロシェンコが大統領を務め、現在ゼレンスキーが大統領である。

ウクライナのクーデターの直後(2014年4月18日)に、バイデン副大統領の息子のハンター氏は、資格も経験もないままウクライナのガス会社(ブリスマ)の役員となった。ハンターは、少なくとも85万ドルの報酬を得、更にブリスマはハンターの会社に300万ドル以上支払っているという。

上で触れたように、バイデンはウクライナに乗り込んだときの記者会見と思われる場面で、「貴方がた(つまりウクライナ)は腐敗というガンと戦わなければならない」と言いながら(上記動画、1分のところ)、自分たち親子は私服を肥やしていたのである。ブリスマからの収賄などに関心があったとすれば、ヤヌコヴィッチ政権の中にいた人たちを掃除するためだろう。

2015年2月に、ブリスマのオーナーに融和姿勢を示していた検事総長に代わって、新しく検事総長になったヴィクトル・ショーキンは、ハンターを含むブリスマの取締役全員の捜査する計画を進めた。しかし、2016年3月に当時のポロシェンコ大統領は、突然に検事総長の解任を命じた。

その背後には、ハンターの父、ジョー・バイデンがいた。ショーキンを解任しなければ、米国は支援をしないと脅したのだという。(ジュリアーニ氏ら)ハンターの行為は上記ABCの動画でも言及されていたように、バイデンが承知の上で演らせた可能性があり、それは米国にとっての利益相反になる。

ショーキンはヤヌコヴィッチや新興財閥寄りで、腐敗が疑われる複数の人物を立件しようとしないから、改革を求める米国政府が圧力をかけただけと言う人もいる。ショーキンに代わって検事総長になったユーリー・ルツェンコは、後に公的にブリスマは捜査の対象ではなく、バイデン父子の不法行為はなかったとした。
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019092700005.html?page=2(日本の論座というネット記事、2019/9/30の記事)
https://www.bbc.com/japanese/49874817 (2019/9/30のBBCの記事)

疑いが山程ある新興ガス会社とバイデン父子の関係を、簡単に不法行為はなかったというのは、ルツェンコはバイデンの意を受けてウクライナの検事総長になったからだろう。

2)トランプ大統領に不正があるかどうかの鍵

外国の政変を画策することは重大な国際法(国際慣例)違反である。政変を理由に外国が干渉することも同様である。ただし、クーデターへの介入が、米国の利益に基づくのなら、国際慣例(国際法)からみて犯罪的であっても、米国での犯罪にならない。

しかし、クライナの一部から、理由なく巨額の金品を、そこに出向いた米国副大統領一族が受け取ったとしたら、それは米国の利益にならないので、犯罪である(利益相反行為)。

その捜査を、現在米国の指導者トランプが催促するのは、ノーマルな行為である。もし、その米国の利益に反する行為の主が一般人なら、誰しも反対はしないだろう。

嫌疑の主が将来の大統領候補になる可能性があるということだが、それが理由で、大統領の犯罪だというのはおかしい。その捜査に対する催促は、将来のトランプの選挙への間接的援助になる可能性はある。しかし、捜査の依頼は現在の直接的な国家の行政の一部だからである。

もし、その疑惑が晴れたのなら、バイデンが大統領候補になった場合、安心してバイデンに投票できるだろう。それは、トランプには不利である。つまり、トランプ批判の人たちは、詳細に捜査すればバイデン父子の罪が暴かれるという前提で批判しているように見える。

トランプに不正があるとした場合、それは大統領がウクライナへのその要請が、ウクライナへの軍事費支援という現在の行政に直接関係したかどうかの点だろう。しかし、米国の利益のために、米国が行う援助を取引材料にするのは普通のことではないのか?

尚、米国のトランプ大統領を応援する理由は、筆者にはない。(補足1)しかし、現在米国で起こっている、民主党を中心としたトランプ降ろしは何か変だと思う。それは、孤立主義的なトランプが、従来の米国支配層とそれに支持されている民主党にとって有害だという考えに基づいているのだろう。

補足:

1)トランプ氏が東アジアからの撤退を共和党の誰よりも考えている可能性が高い。しかも、トランプ氏は北朝鮮の中距離核ミサイルには無関心である。現在の日本の情況では、米国の東アジアからの撤退は致命的な影響が考えられる。

2019年10月4日金曜日

韓国人慰安婦の実像と虚像ーソウル大李栄薫氏の講義の感想

1)ソウル大元教授李栄薫氏の講義の概要

  今韓国で週間ベストセラーとなっているのに、「反日種族主義」についてという題の本がある。この本は、李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆したものであり、それは既に本ブログでも紹介した。

この本の著者の一人である李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授(李承晩学堂校長)により、youtubeに「李承晩TV」が開設され、日本に併合された韓国をレビューする動画が配信されている。昨日、「チャネル桜」により、韓国人が暴く反日韓国の嘘と題して、その第一回目が字幕付きで公開された。(韓国人が暴く反日韓国の嘘 -「李承晩TV」より- Part2「楯師団の慰安婦、文玉珠」) https://www.youtube.com/watch?v=wkDmu22L-NU

李教授は、韓国で二番目に慰安婦であったと名乗り出た文玉珠さんの生涯を、彼女の生前の告白を書いた本「文玉珠—ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私」(文玉珠、森川万智子共著1996年)などを参照しながら解説した。その “慰安婦の実像”は、私の記憶では、朴裕河さんの著書「帝国の慰安婦」で書かれているものに良く似ている。

それを李教授の言葉を用いて表現すると、「正式な軍属ではなかったものの、軍属に準ずる意識を持ち且つそれに相応しい待遇を受け、それに相応しい行動規範の教育を受けたと思います。」である。(動画32分あたり)

2)文玉珠さんの経歴概略(以下敬称略)

  文玉珠の慰安婦としての数年間(3年ほど)は、世界戦争と貧困のなかで、売春婦、戦場における“銃後の母”(補足1)的存在、兵士との恋愛などが同居する(補足2)、過酷で近代社会の日常になれた我々の想像を絶する境遇であった。その中で李教授の語る文玉珠は、必死に、且つ、逞しく生きた。そして、その後の生活を支える財も蓄えた。

1946年に帰国後、28年間は料亭などで芸妓として生活し、その人生も豊かな時から悲惨な情況まで、浮き沈みの激しいものだった。12年間一緒に暮らした男に裏切られ、その男と自分の間に生まれた三人の子供を育てた。三人は成人した後、就職と結婚をして、普通に幸せに暮らしている(1993年当時)という。

その後、本妻のいる男性と知り合い、事情がありその子供も育てることになった。その子の浪費癖などで預金も家も失い、経済的に困窮するようになる。その男との関係もなくなり、彼女は一人ぼっちの立場になってしまう。その時、従軍慰安婦問題に関係してしまったのである。

1990年金学順という女性が元慰安婦であったことを公開した。挺対協(韓国挺身隊問題協議会)は、「挺身隊の御婆さん達は、世の中に出てください。日本政府に対して公的謝罪と賠償を要求しましょう」というような広告を全国に向けて放送した。

ある時、30年以上の知り合いのイ・ヨンナクという男(眞城李氏で退渓李晃(最後の字は氵に晃)の子孫)が「貴方は日本軍慰安婦だったと思う、真実を明らかにするのには大きな意味がある」と挺対協に名乗り出ることを勧誘した。「自ら連絡しづらいのなら、代わりに連絡してあげる」との話を聞いて、文玉珠は恥ずかしくて身が縮まるようだったと言った。

その男が文玉珠の前で挺対協に電話をかけた。二番目に慰安婦であることを告白した後、暮らしは一変する。文玉珠が放送に出た後、彼女の知り合いから批難の電話が殺到した。その後文玉珠は本当の意味で孤独になった。慰安婦時代の知り合いを訪問したが、その時も「姉さん、どうして今になって、自分の恥ずかしい過去を明かすの?」と叱責された。

3)挺対協は、元慰安婦の文玉珠氏を身包み剥いで崖に突き落とした

当時残っていた同じ境遇の女性たちは、李教授の試算では数千人(5000人以上か)生き残っていた筈だが、彼女らは全て息を潜めていた筈だという。それが素直な朝鮮民族の意識であると語る。恐らく世界中の国々でも、人は同じ様に思い反応するだろう。

挺対協は、「慰安婦だった事実はあなた個人の恥辱でも家族の恥辱でも村の恥辱でもない、それは日本が犯した戦争犯罪だった。それを暴露することであなたは自ら恥ずかしい過去から開放され、一人の人間として尊厳と名誉を回復することができる」と言って、慰安婦の告白を勧めて日本批判の最前線に立たせた。槍や刀をよける為の盾のようにも思える。

挺対協は、数千人の集団から理想論的甘言を巧みに用いて、数人を剥がし政治利用した。そして作り上げた主張は、正しいものなのか? 正しい主張なら、その様な盾として、旧慰安婦の人生を身包み剥ぐようなことは不要ではないのか?

文玉珠さんの心の底から絞り出したような言葉が、その本に書かれた内容、そして、李教授の講義の内容の通りなら、挺対協の云う慰安婦像は自分達の政治運動のために捏造したものに過ぎない。

慰安婦としての3年間は、家を家族にプレゼントする収入や日本軍兵士山田一郎との思い出はあったものの、売春婦としての仕事や兵士とともに戦い、そして山地を移動することなど、苦しい生活だっただろう。しかし、その後の45年間はそれとは切り離せない全体として、文玉珠さんの人生を形つくっていた。

挺対協の勧めで慰安婦であったことを告白した後は、政府から補助金をもらい住居も食事も無料で提供されたものの、それと引き換えに彼女の全人生が消されることになってしまったのである。文玉珠さんの残りの5年間の人生は、家族や友人から別れを宣告され、挺対協に政治利用される、悲惨なものだったに違いない。文玉珠さんはウィキペディアによれば1996年10月、72才で死亡している。

補足:

1)戦場の後方。直接戦闘に携わっていないが、間接的に何かの形で戦争に参加している一般の国民。

2)山田一郎上等兵と慰安婦としての藤原よし子の付き合いの中で、山田による4首のよし子を慕う和歌が紹介されていた。山田一郎はその後戦死したようである。文玉珠さんは慰安婦としての生活も、山田との付き合いで耐えることができたと云う。

2019年10月2日水曜日

朝鮮併合の失敗について

1)日本帝国による朝鮮支配については、初代朝鮮総督の伊藤博文は反対であった。何故なら、独自の文化を持つ民族を束ねて統治することの困難さを知っていたからであった。しかし、そう考えるのは知的な少数派でしかなかった。その伊藤博文を暗殺し、安重根は韓国の英雄となった。

日本の支配層は、倒幕を行なった薩長土肥と言われる外様諸藩の下級武士とそれに協力した下級貴族たちであった。日清戦争に勝利し、朝鮮から満州に支配を広げる時、それまで蔑まれていた外様の下級武士たちは、江戸時代の精神のままに、外地の住民たちを睥睨し支配したのだろう。

朝鮮併合の失敗の原因としては、日本人支配層、特に軍人などに驕りがあったのも一因だろう。薩長の下級武士にも優秀なものは大勢いたはずであり、彼らは伊藤だけでなく支配される側の気持ちと力を理解した筈である。しかし、四民平等の立憲主義の国では、時間が経てば多勢に無勢であり、愚者の驕りの前に賢者の知恵は雲散霧消する。

以前に紹介した加耶大学客員教授、崔基鎬氏の著書「歴史再検証 日韓併合」によれば、日本帝国の朝鮮支配が始まる前には、李氏朝鮮末期の停滞と貧困の中で人口が減少する程だった。それは呉善花さんの「韓国併合への道」の中の記述でも同様である。

しかし、その国は中華文明を日本よりも早くから吸収していた国である。その国の歴史は、文明国としてのプライドを持ちつつ、モンゴル、明とその後の清、ロシアなどの強国の影響下で、半独立国としての体裁を整えるだけで精一杯だった。丁度、戦後の日本と似た情況だろう。

その中で、高麗や新羅などの文化(補足1)は古く深かったが、複雑に屈折していた。そこから500年間、窓から明(中国)の方を眺める他は、殆ど孤立出来る情況になり、それが暗黒の時代に導いたと思う。李氏朝鮮である。李氏朝鮮は、明の冊封体制の中に存在するとの約束で、高麗を裏切った李成桂により建国された。最初から、独立の気概を捨てたのが(そしてそれが可能だったことが)、内向きで暗い国となった原因だろう。

視線を外に向けて、独立と繁栄を模索する国は、国の内部の団結と連携に知恵と力を尽くすが、宗主国の下で内向きの視線しか持たない国は、ただ統治の視点から国民を見る。反抗を抑えるために知的水準の高まりを警戒し、第4代の賢帝が作り上げたハングルも、10代皇帝の時に公的使用を禁止する。全体として、現在の日本の情況も似ている。(補足2)

このような屈折した歴史の克服は、朝鮮自身でなされなければならない。ところが、その克服すべき暗黒時代の肩代わりを日本帝国が自分の意思からすることになったのである。つまり、それが後の時代になって見た場合の、朝鮮併合の評価である。極めて愚かな選択だった。それは、日本にも朝鮮にもプラスになっていないかもしれない。

そして現代の韓国は、李氏朝鮮という自国の歴史の客観評価という厳しい仕事をしないで、日本帝国という他者の否定という安易な道を取ることになったのである。それは欺瞞であるが、その誘惑に負けるのはわからないでもない。しかし、自分の智慧となり力となるのは、ごまかしではなく真実に基づく自己評価である。

例えば、韓国が5つの国慶日の中に50年ほどの日本帝国の影響下からの脱出に関するものを3つ入れ、李氏朝鮮時代500年余の出来事から、ハングルの日のみを入れるのは、決して客観的な韓国の歴史を表現していないだろう。(補足3)

因みに、中国は広い国土と大きな人口を抱えた国であり、周辺への野心を具体化するには、自国の統一と強力な兵器の両面で準備が出来ていなかった。そこで、将来の統一への予約席に周辺国を朝貢国として入れた。朝貢は差し当たりの安全と緩やかな影響力行使のため、周辺国を家畜的国家(現状優遇で将来の搾取対象)の情況に置いた。因みに現在の中国は、準備が完了したと考えて行動を開始した情況にあると思う。

2)日本は歴史的に単純な国だった。つまり、一つの王朝(天皇制)が1400年間続いたのである。屈折した心を読むほどの修練はなされていなかった。大陸の国のような厳しい環境に居なかった為、必死に独立を維持するという経験に乏しかったことが、その原因だろう。

国境を挟んでの価値観や言葉の用い方の変化などを理解していなかった。それは宗教とも関係する。日本の宗教は、戦いの宗教ではなく、個人の死や運命と対峙するための宗教である。仏教は自然の中での自分を見つめる宗教であり、神道は自分に生を与えてくれた自然を崇める宗教である。(補足4)

大陸では、善悪や真偽の価値が、敵味方の境目で逆転する。それは戦うための宗教の教えとともに習得されていた。(補足5)聖書にあるように、異教徒の殲滅は善である。その宗教の人にとっては、偽証が禁止されるのは味方の中だけであり、敵を相手には禁止されない。これらのことを、頭ではなく血肉の段階から習得している。それは孔子、孟子、荀子、孫子、朱子(朱熹)らを詰め込んだ者たちも同じだろう。(補足6)

繰り返しになるが、日本人に於いては、棲息する範囲と思考の範囲が一致する。一方、世界の他の国々では、生息する範囲の10倍程度の範囲を思考の範囲とすると思う。つまり、世界の普通の国では、敵があってこそ味方があるという思考法をとる。敵の範囲を含めれば、10倍程度の範囲に目を光らす必要がある。日本人のように、敵は異常発生した(宇宙の彼方から現れる)害を及ぼす存在という考え方をしない筈。

更に、日本人は敵であっても味方と同じ言葉(通訳を通しての場合もある)を同じ意味で使うと常に考える。それが、出雲の国譲りから江戸城の無血開城を可能にした。大陸なら、無血開城を含む約束は虚しく反故にされ、徳川家は皆殺しになっただろう。

そんな日本人だからこそ、思わぬ力を得て、大陸侵略を開始したとき、異国の人たちも同じ(翻訳を入れれば)言葉を、同じ用い方で話すと考えた。自分達は威勢よく異国民を蔑視しながら、併合した後は自国民となる筈の異国民の為、彼の地のインフラ投資から始めたのである。それが後々、自分たちに向けられる刃の製造に利用されることなど考えもしなかった。

しかし、異国の人にとっては、自分達のインフラの整備は、太らせて食べるための投資の筈だと考えるだろう。それは世界の思考法からすれば至極当たり前であり、あとで日本人にしか通じない言葉で言い訳(日本人には本当のこと)を聞くのは、あまりにも虚しいし、異国の人にとっては空々しいだろう。言葉は所詮、同じ民族でしか通じない。(補足7)

因みに、グローバリストの中心にある人たちは、そもそも人類を一つにまとめて人類皆兄弟の情況を作ろうとしている風に見せながら、心の奥には但しそれの中心に座るのは自分たちだという奢りがある。つまり、グローバリズムは自分たちの為の世界を地球規模でつくるための思想である。この時、それまでの投資は異国の人たち(つまり人類)の為ではなく、単に肥らせて利用するためだろう。それは、朝鮮半島から満州に進んだ日本人の姿に似ているようであるが、心は全くことなるだろう。(補足8)

世界最低の高度に沈む(海面下数百メートル)彼の国で、上記運動の中心に居ると思われる民族は、殆ど独立国を形成出来なかった。アッシリアやローマなど、常に外国の支配の下におかれた。ジム・ロジャーズが朝鮮の応援をするのも、反日思想の他に民族の運命と云う点で共通性を感じるからだろう。(翌日早朝に編集あり)

補足:

1)日本の文化は渡来のものを元に作られた。それらは恐らく全て(地理的には)韓半島経由で日本に送られた。仏教も儒教もである。高麗には仏教が残っていたが、李氏朝鮮が儒教や朱子学を持ち込み、半島での仏教は滅んだ。それ以降、朱子学の空理空論で両班層は時間を空費したと、崔基鑛氏は「日韓併合」で書いている。

2)宗主国である米国の下で平和を享受している日本は、李氏朝鮮にそっくりである。政府は東側の窓は見るが、視点は殆ど内部に向かっている。国民には外(外国)をなるべく見せないようにし、地上波テレビはもっぱらエロ・グロ・ナンセンスを放送している。今でも、米国のバイデン やハンターなど知る由もない。政府は両班的な政治屋貴族が支配し、都会の知的な人たちに発言の場を与えない様に、田舎の1票を都会の2票から3票の価値にしている。

3)韓国の祝日の内、国慶日と呼ばれる日が5つある。上記、三一節、制憲節、光復節、ハングルの日ともう一つ開天節である。 開天節とは13世紀に作られた檀君神話という朝鮮建国神話に由来する建国の日である。三一節(反日運動)、光復節(日本の敗戦)は、各人の心の中に“抗日の歴史”をより強く意識する為の祝日である。憲法の日の制憲節も、日本からの独立を記念する日と言えなくもない。そのような“骨組みから反日”の韓国が、骨組みを組み替えるほどの改革などできるだろうか?

4)諸外国に囲まれた日本という視点の重要性を知った新政府が、天皇家がその昔敵と対峙するために作った一神教である伊勢神道を、急いで国の宗教とした。それを更に国民国家として生き残る上で必須である近代軍の創成のために変形したのが、靖国神道である。

5)宗教には2種類ある。個人が、自分を含む自然の中で、自分の生の原因を考え、その輪廻転生或いは永続を祈願するための宗教と、集団が敵と戦う為、その時の自分の死を集団の中での永遠の生に転化する為の宗教である。古代神道や仏教は前者に、キリスト教やイスラム教は後者に分類されるだろう。

6)中国の思想や宗教が、補足4の後者に分類されると考える。このあたりは全くの素人ですので、コメントくだされば幸いです。

7)国連で小泉進次郎がセクシーに環境問題をやらないと、隣の女性を見ながら言った。しかし、セクシーの意味は、民族により全く異なるだろう。そのような言葉を国連で使うのは、従って、余程の曲者か素人のすることである。同様に「愛(Love)」、「徳(virtue)」、「罪(sin, guilt, offense, crime)」などを含め、あらゆる価値に関する言葉は、異国民に対して使う場合、十分吟味しなければならないと思う。

8)第二次大戦後、かなりの日本兵はインドネシアなどに残って、独立のために戦った。インドのインパールでは、援蒋ルート壊滅という日本の目的の他、インドの独立を支援する意味もあった。

以上、間違っていると思われる部分は、遠慮なく指摘してください。