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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2024年5月30日木曜日

世界覇権国のコバンザメとして成長した日本

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コバンザメはサメなど大型の魚に身を寄せて外敵から自身を守り、そのおこぼれを貰って生きる魚である。日本は、意図してではなかっただろうが、江戸時代末期からそのような形で経済成長してきた国である。その歴史を十分承知した上で、日本の将来を考えることは非常に重要である。

 

日本は2600年の歴史のある国であると意気軒高な人は、頭を冷やしてその対極にあるこの考え方も知るべきである。両方の見方のどこかに真実があり、皇国史観だけでは日本は滅びる。

 

1)英国の東アジア戦略の中で生まれた大日本帝国

 

これについては何度も書いて来たと思うが、原田伊織著の「明治維新という過ち」などを参考にしてたどり着いた日本の近代史に関する私の理解である。最近では米国スタンフォード大フーバー研究所の元研究員である西鋭夫氏のyoutube動画などでも殆ど同じ内容が話されている。

 

18世紀ころから英国の東インド会社(1600年ころ設立)は、インドで生産したアヘンを中国で売るという貿易で利益を得ていた。この商売が民間にも許された19世紀中ごろ(江戸時代末期)、英国は中国進出の後部基地として日本を利用しようと考えたのだろう。

 

この活動の中心に英国ロスチャイルド系のジャーディン・マセソン商会があり、その中に日本ではおなじみのトーマス・グラバーがいる。英国王室とこの商社の背後に存在する英国ロスチャイルド家との関係は深く、(補足1)1875年の英国のスエズ運河買収とその資金調達などへの協力など、英国帝国主義の中心にあった。https://www.japanjournals.com/culture/gudaguda/16886-gudaguda-117.html

 

そして薩長が彼らとの深い関係の中で成し遂げたのが、明治維新というクーデターであった。その後の明治政府の発展と戦争の背後には英国、つまりユダヤ系資本家のロスチャイルド家が存在した。英国の資本は米国に流れ、ロスチャイルド系の人たちは米国をも支配することになる。

 

その時期に日露戦争がある。高橋是清は、米国のユダヤ系資本家であるシフから借金に成功し、日本は対露戦争に踏み込めた。そして、米国大統領セオドア・ルーズベルトの世話で、勝利の形でロシアと講和をする。彼らは、満州の支配を考えて、日本を利用しようとしたのだろう。

 

その目論みが外れたのは、満鉄の経営権共有の為に締結した桂=ハリマン協定に、ポーツマス条約締結後に帰国した小村寿太郎が反対し、日本側から破棄したからである。その時から日本が米国の敵国となったのである。ユダヤ系資本と米国の関係は、その時既に英国同様に濃かったのだろう。

 

日本が21世紀も世界の中心的国家としてあり続ける為には、国民がこの歴史から日本の近代史を理解することが必須だろう。同じ道を現在の中国は進んでいるように見える。この満州事変から太平洋戦争の間の歴史で、日本=>中国、満州=>ロシア の様に置き換えれば、相似形を為す。

 

つまり、ロシアの豊かな資源と国土を手に入れたい世界の金融資本家(ユダヤ系が中心の米国)が、中国を経済発展させて手下にし、ロシアを支配下に入れる企みである。その障害がプーチン政権である。ウクライナ戦争もその一環と見るのが正しい筈である。

 

その戦略に、中国習近平政権は抵抗する気配が濃厚である。その結果、日本敵視政策のオレンジ計画に代わり、中国敵視計画が作成されている可能性が高い。その地政学的変化が、今後の日本経済の復活の背景にあるという人が多い。以前紹介したトルコから来たユルマズ氏もその一人である。

 

 

2)日本はユダヤ系資本のコバンザメとして成長した

 

日本の投資ストラテジストの武者 陵司氏はyoutube動画で、米国が東アジア戦略の中で日本を必要としたとき日本経済は成長し、必要としなくなった時に停滞すると語っている。そして、中国敵視政策が始まった現在、米国は再び日本を必要とし、日本は再び成長の時を迎えるだろうと。

https://www.youtube.com/watch?v=-OQjMpCZE8I&t=296s

 

 

明治維新後の経済発展も考えれば、日本の経済はユダヤ系資本との関係で好不調を繰り返したとも言える。彼らが押さえたのは、英国及び米国の貨幣発行権であり、恐らく日本政府以外では日本銀行の最大の株主だろう。彼らの戦略は、秘密、捏造、宣伝のセットである。(補足1の下線部と補足2)

 

日本は現在、戦後の冷戦が始まった時(つまり朝鮮戦争開始時)と同じ地政学的情況にある。1950年から1990年までの戦後日本の大復興の時の情況と、これからの期間の情況が地政学的に相似だというのである。そしてエミン・ユルマズ氏は、日経平均は2050年までには30万円になると言う。勿論、大インフレ込みのパーセンテージだが。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12849312370.html
 

このモデルによれば、中国のこれからの不況は日本の失われた30年(1990年=2020)ではなく、1930年ー1950年の大破局(つまり敗戦)ということになる。

 

このような地政学的な考察を中心にした近未来の経済予測には一定の説得力があるのは当然である。しかし、歴史は繰り返すが、全く同じ繰り返しではない。核兵器が広く存在し、世界経済での米国の地位低下が進んでいる現在と、1945年の情況は全く異なるので、注意が必要である。

 

 

3)ドル経済圏が崩壊してBRICSが世界の政治経済のリーダーとなるのか?

 

米国が世界経済の発展の中心であり得たのは、米国だけが巨額の赤字を出し続けることが出来たということにある。(補足3)つまり、米国の世界における軍事的覇権の背景に、米ドルの世界における決済通貨としての地位がある。これは常識だろう。

 

その米ドルの地位を築いたのは、やはり英国及び欧州から米国に移動したロスチャイルドなどのユダヤ系資本だろう。米国中央銀行であるFRBを押さえているのは彼らである。その功績は偉大であり、警戒され憎まれる前に、今日の世界経済繁栄の基礎を築いた功績は正当に評価されるべきである。

 

この米ドルの権威が失墜する可能性があるのは、BRICS経済圏が米ドル経済圏から独立を果たす可能性が出て来たからである。彼らは世界の資源の多くを持ち、彼らの間の貿易だけで先端技術などを含め全てを賄うことが出来る。その結果、米ドルを全く必要としなくなる。

 

グローバルサウスはBRICSの圏内に入り、ユダヤ系資本を含め現在のG7らの国々は精彩をなくし、50年も経てばニューヨークも東京もギリシャの遺跡のようになるだろう。そうなる前に、どうにかする必要がある。その様に考えたのが、新世界秩序であり、グレートリセットなのだろう。

 

補足:

 

1)もう少し詳細にこのころの歴史を学んだので紹介しておく。

 

江戸末期、1853年に米国からペリーが浦賀に来て以来諸外国の船が来航して、必須物質の調達などが可能なように通商を迫った。1858年の日米修好通商条約締結以来、日本の近代が始まった。その年、フランスや英国とも修好通商条約を締結した。
 

その後、米国は南北戦争で東アジアとの関係が一旦途切れたが、積極的に日本と関係を持ったのは英国とフランスだった。英国のユダヤ系商社は、長州の下級武士を近代戦士として育て、軍資金や武器の貸与・供与などして、長州と薩摩の倒幕戦争に加担した。
 

フランス二代目公使のレオン・ロッシュは、英国公使のハリー・パークス(初代は、ラザフォード・オールコック)と対抗する形で、内政不干渉を建前とする英国とは異なり、積極的に幕府側に様々な支援を与えた。

 

1868年の鳥羽伏見の戦いで破れた徳川慶喜に、ロッシュは再起を促したが慶喜は拒絶した。日本の江戸幕府は、アヘン戦争とその後の中国の惨状に学び慎重に対外政策を練っていたのである。この慶喜の判断が日本を救った可能性が高い。薩長と幕府が英国とフランスの代理戦争を始めれば、日本は現在のウクライナのように崩壊し、今の日本は存在しなかっただろう。その辺りの歴史研究が日本に無いのは、現在の政府が長州政府の延長上にあるからである。

 

2)ロスチャイルド家などディアスポラの民の特徴は言うまでもなく、彼ら自身の国を持たないということである。その為、彼らは彼らのコミュニティを作り、陰に隠れて自分たちのために滞在国への影響力を行使する。西欧が築いた政治文化である主権国家体制や国際法システムは、彼らのために存在するわけではない。その重要な真実は、例えば、新疆ウイグル人自治区のウイグル人たちにとって、「主権国家に対する外国の干渉は国際法違反である」という近代政治文化の中心的ルールはどのように感じられるかを考えれば解るだろう。

 

3)基軸通貨発行国の赤字は、それ以外の国々の黒字となる。経済活動を国々の生命活動と見る場合、通貨は血液である。米国の赤字は、その血液を潤沢に供給することになり、世界経済の発展を維持する上で重要である。国内経済だけを考える場合、日本政府が発行する国債(赤字)は、民間人の黒字(財産)となるという話と一緒である。しかし、日本は基軸通貨発行国ではなく、食糧とエネルギーを外国との貿易に頼るひ弱な国である。この比喩を用いて、財政で経済を立て直そうと言うリフレ派の人々の多くは、日本経済が貿易に頼っていることが分かっていないのである。

==17:10 言語的編集あり==

2024年5月27日月曜日

日本民族は米国の家畜なのか

1)法に縛られる日本人

 

法は、支配者が被支配者の統治の為に用いる道具であり、人々の自由に一定の歯止めをかける為に存在する。この法と個人との関係において、日本はかなり特殊である。現在の日本人は、被支配者としての身分を受け入れ、支配者が設けた法に非常に従順に見える。

 

支配者が被支配者である国民によって造られた場合、法は国民が円滑に社会生活を送れる様に通常合理的につくられている。その場合、法への従順な姿勢は外国の人たちからも「日本人は秩序を重んじる人たちである」と評価されることになり、めでたしめでたしである。

 

その法に従順な日本の伝統は、多分1500年或いはそれ以上遡るだろう。日本人の気持ちの中に、お上(統治者或いはその代理人)は人々のために支配者の役割を担って呉れているという信仰のようなものがある。(補足1)その為、日本人は支配者に対して、更にその支配の末端に位置する警察や司法に対して、一般に親和的であり、嫌な感情を持っていない様に思う。

 

しかしながら、社会の変化が激しい昨今では、必ずしも良い傾向とは言えない。何故なら、社会の変革は既得権益層に属する支配者側への反抗、場合によっては反乱を経て成立するからである。従って平時においても、支配者やその制定した法システムと一般国民との間には一定の緊張関係があって然るべきである。

 

この法に従順な日本の伝統を、ある出来事が切っ掛けとなり思い出すことになった。それは、クマに襲われ殺された男性の遺体収容にあたった二名の警察官が、クマに襲われてその男性の遺体を見捨て退散したという秋田県警の話である。彼らは拳銃を持ちながら、その使用をためらったのだろう。(補足2) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240519/k10014453951000.html

 

秋田の警察官は、ケガをさせられても、法に縛られ銃を発射しなかった。秋田の田舎町で、人間が熊との闘いに負けたのである。この場合、警察官は法の執行人というよりも、法に縛られる一般国民側に位置する。

 

北海道でも熊が増加して、例えば牧場の子牛が襲われるなど、困っているようだ。猟友会はあるものの、農作物を荒らす鹿は射殺できても、害獣指定されていないので熊に銃を使えないのである。住民も熊を恐れ、毎日怯えながら暮らしているという。https://www.youtube.com/watch?v=daGTgdAPVxo

 

 

そこで、その動画に以下のようなコメントをアップした:

 

人間を食物としか見ない危険な熊が現れたら、猟銃で撃てばよいのです。動物愛護団体が告発すれば、受けて立てばよいのです。法は人のためにあり、熊のためにあるのではない。国家と法以前に自分が居る。それらが自分と敵対するのなら、戦うべきです。しかも、町の民意は明らかだと思う。団結して戦うのが自然であり、法に従うあまりクマに人が殺されたり、生業を破壊されたりする姿は異常です。

 

2)日本人のこの情けない姿について:

 

第二次大戦敗戦の直前に、米国は二発の原爆を投下し、数十万人の市民を虐殺した。その事実を知りながら、日本人はその米国の最高司令官であるマッカーサーを支配者として受け入れた。そんな日本人を当時の米国大統領トルーマンは、米国の家畜と言った。

 

その一方、日本人たち多くは日本民族を、全てを失い民族の原点に戻ったと云う風に見ただろう。その一人が坂口安吾であり、彼は「堕落論」を書いた。 その状態を、「日本は戦争に負け武士道は滅びたが、堕落という真実の母体によって始めて人間が誕生したのだ」と書いた。

 

それに続く「生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有り得るだろうか」などの彼の言葉は、そんな日本人同胞に対する励ましなのだろう。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12725504080.html

 

あの時から既に75年過ぎた。現在の日本人を見て、坂口安吾ならどう言うだろうか? 堕落つまり生き残って原点に立った日本民族は、75年を経ても尚再生を果たしていないのである。日本民族を何と評価するだろうか? 堕落と言ったが、当時はどん底までは落ちてなかったのかもと言うかもしれない。

 

明治維新はそれなりに美しかった。仮に、天皇が異国の操り人形と化した長州によって造り上げられた存在であったとしても、それをトップに頂き、欧米列強と戦う姿はある意味(造花のように)美しかった。しかし、そのシステムには無理があった。天皇は神では無かった。

 

今、日本人は民族の再生を希望においてもう一度どん底まで”堕落”すべきである。法も規則も馬鹿馬鹿しいと言って、反抗しそれらを破壊すべきである。1970年ころ、長い角棒を振り回し大学を封鎖した同年配の全国の大学生たちを、彼らは民族の原点を生きていたのかと今思い出している。

 

 

おわりに:

 

国際政治評論で頭角を現わした川添恵子さんにより紹介されたトルーマンの言葉が思い出される。日本の復興と発展は、家畜を育て太らせるようなものだと言うのである。そのyoutube動画は、その後削除されている。これが彼らのやり方なのだ。https://www.youtube.com/watch?v=vlwHfzTmfcc

 

あの誇り高い日本民族が米国の家畜になったのなら、日本民族の”堕落”は原点では止まらなく、どん底を破って家畜にまで落ちてしまったということになる。

 

ユダヤ系大資本を中心とした米国の支配層は、ロシア潰しのにおけるウクライナの役割を日本に期待しているのである。相手はロシアではなく中国である。その時に備えて、岸田政権は憲法改正をするように言い渡されているのだろう。そうなるかもしれない。

 

 

補足:

 

1)水戸黄門の話などはその典型だろう。お上が善人である平民一般の味方をして、悪人を裁くのである。また、「仁徳天皇が高台に登ってみると、人家の「かまど」から炊煙が立ち上っていなかった。そこで租税を免除し、民の生活が豊かになるまでは、お食事も着るものも倹約された」などという話も、日本の政治文化の特徴を表している。https://www.rinen-mg.co.jp/trinity/management/entry-4403.html

 

2)日本は銃規制において厳しい。警察官も何かで発砲した場合、その発砲が適切だったかどうかを問われる。多少とも不適切だということになれば、警察上層が責任を問われることになるので、現場の警察官に銃使用に関して過剰に慎重さを求めるのだろう。

 

(13:30小編集とともに補足2を追加)

 

2024年5月25日土曜日

岸田首相の売国密約:米国の610億ドルウクライナ支援金を日本が肩代わり!?

表題のびっくりする内容の話を、評論家の山口敬之氏がyoutube松田チャンネルでしている。前回記事で言及した米国による610憶ドルのウクライナへの軍資金支援は、ウクライナへの貸付金であり、その債務保証を日本が行うという話である。

 

そんな話何時決まったのかと不思議に思うのだが、それが訪米した岸田首相とバイデンとの密約であったというのである。ビックリし、そして次第に腹が立ってくる話である。兎に角、すべての国民は以下の動画を視聴すべきである。信じる必要はないが、何れ思い当たる時もくるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=unYJhQeWyA8  

 

 

トランプ前大統領と共和党議員たちが反対して殆ど廃案となっていた筈の米国による巨額のウクライナ支援が、何故か急に共和党多数の下院で通過したことが不思議だった。

 

前回ブログで書いた、ジョンソン下院議長のフロリダトランプ邸での話合いは、岸田―バイデン密約の説明だったというのである。この話は、 TBSワシントン支局長時代の知人で共和党の幹部クラスの女性の人から問い合わせを受け、その後両方で調査をした上での結論だという。

 

実はこの話、シェリルさんのブログ記事で初めて知った。文字おこしもされており、頭に刻み込むにはこちらの記事も利用価値が高い。https://ameblo.jp/sherryl-824/

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2024年5月21日火曜日

トランプが次期大統領になっても米国と世界は現在の延長上を進む 

もしトランプが次期米国大統領になったら、米国はどうなるか、日本は、そして世界はどうなるかという分析は、恐らく方々で行なわれているだろう。

 

トランプは、時代の周り角にあって市民一般の広範な支持を背景に政治の方向を大きく変える可能性のある政治家である。これまでの米国の政治の根幹的部分に変化を加える可能性があり、当然ながらこれまでのエリート層からは様々な妨害を受けて来た。

 

ポピュリズム政治の危険性と革新的政治に対する期待を伴って、このような政治家が現れたということは、これまでの政治が市民一般の要求を長い間無視してきた証拠である。所謂Deep Stateが本当の支配者だったのか、マスコミとそこに出る評論家などが全く無能か欺瞞的だったかのどちらかか或いは両方である。

 

このトランプの理解(モデル)として標準的なのは、米国金融資本家などグローバリストたちの利益優先ではなく、各国に出来るだけ干渉しないで米国民の利益を第一に考える政治家(モデル①)である。(補足1)ただその姿勢の背景に、グローバリストに対抗して主権国家体制を維持すべきであるという国際政治にける思想が存在するのかどうかは、明確ではない。

 

つまり、地球規模で発達した経済システムと密接な国際政治の時代、つまり狭くなった地球上での社会変革について、所謂グローバリストたちの方向に対して、対立軸を提供出来るのかどうかは不明だと思う。(補足2)従ってトランプのモデルのその部分は様々だろう(②)。

 

1)グローバリズムVS反グローバリズムの対立とトランプ

 

冷戦終結後の米国の戦争に対する公式説明は、法と正義及び民主主義の下で自由主義経済圏を拡大し、リーダーである米国を中心にしたグローバルな政治・経済体制を維持発展させるための戦いというものだった。ただ、2017年からのトランプ政権下、米国は一度も戦争することが無かった。

 

そしてこの4年間に、米国民そして世界中の人々と米国グローバル資本家たちとの間の対立関係が大きくなったと思う。米国と同盟国の自由と民主主義の体制を守るためというこれ迄の戦争の論理には、細部に多くの疑問点が残されていても、相応の説得力があったかもしれない。しかし、この4年間だけ何故その体制に対する脅威が無かったのかという疑問には、答えようが無い。

 

遠い土地での戦争で亡くなった若い米国民の死を、自由と民主主義を守る為に命を捧げたとして説明する話は、これまでの米国の支配層による嘘ではなかったのか? 彼らは、世界の政治と経済を米国のグローバルな覇権で統一し、その中で彼らの資本を巨大化し、その利益を得るために我々(若い兵士を出した米国の家庭)を利用してきたのではないのか?(補足3)

 

そのグローバルな政治・経済の恩恵を、多くの米国と同盟関係にある国々や中国などその周辺国は受けたとした場合、彼らは相応の負担をして来たのか? 現在においても、その義務を果たしているのか? トランプ周辺から周囲に向けて、このような疑問が発信されたのではないだろうか。これが序論のトランプモデル①の主張である。

 

20世紀後半から、そのグローバル経済に矛盾が発生し始めた。その一つは金融資本の巨大化と人々の間に発生した貧富の差の拡大、そして伝統的な人々の生活様式つまり文化の破壊が進んだことだろう。ここでそのようなことが発生する理由について少し考えてみる。

 

自由主義経済とは、各資本が人間社会を競技場にして勝敗を競うゲームのようなものだろう。様々な技が発明され、資本は活動の自由度拡大の本能のままに、いつの間にかその競技場そのものまで拡大し変質させるのである。(補足4)競技と競技場がペアとなって変化することはどのスポーツの歴史にもある事だろう。

 

人間の為に奉仕する筈だった資本が自由主義経済のフィールドで、いつの間にか人間社会を支配下に置く暴君のような資本に巨大化し変質する。伝統的な社会の様々な要素を、それらの自由主義の障害であるとして排除するように要求する。その競技での負けは、その資本周辺の人間の生活を破壊することになるから、それらは本当は要求ではなく命令的である。

 

その様にして、社会の家族をはじめとする人間関係、そしてそれらで創られた地域共同体は既に破壊されている。(補足)現在、それら巨大資本は西欧の近代政治文化が作り上げた主権国家体制まで破壊しようとしている。それは自然の成り行きなのかもしれないが、ある時点からは意図的にその方向に政治活動が始まった。

 

そのグローバル経済の主役である国際金融資本家たちが、結託して行っている世界の政治運動をグローバリズム、それを支持して活動する勢力をグローバリストと呼ぶようになった。現在グローバリズムのプロパガンダの中心は、クラウス・シュワブが主催する世界経済フォーラム(WEF)であり、シュワブが主唱する世界の大変革の開始が、グレートリセットである。

 

グローバリストにエネルギーを供与するのは、巨大資本を動かす金融資本家達である。主権国家体制と国際法などを遵守すべきだという反グローバリズムの主張をする者たちは、当然ながらその他多数だが、そのリーダーと見做されている人たちは国際金融資本の力により撲滅されつつある。彼らは時として民族主義者と呼ばれるが、それは不適切な呼称であり、単に保守主義者と呼ぶべきだろう。

 

最近反グローバリスト活動をしている及川幸久氏が、グローバリズムと世界経済フォーラムの関係について解説しているので、その動画を引用させてもらう。

 

 

 

冷戦終結以降、米国グローバル資本家(殆どがグローバリスト)たちの利益と米国民一般の利益とが、互いに対立するのではないかという疑問が広がった。更に、上述のトランプとトランプ政権の4年間は、反グローバリズムの反撃とでも言うべき政治であり、そのグローバリズムVS反グローバリズムの戦い(第三次世界大戦と言う人も居る)が始まったのだという考え方が、米国だけでなく世界に広く伝搬した。

 

栄光の米国を取り戻すと言う風にトランプは言っているが、それは上のような思想をその背後にしている訳ではないかもしれない。つまり、トランプを主権国家体制を衛る人物と考える人たちがおおいが、それは買いかぶりかもしれない。これが序論の②で示したトランプに対する各人各様の理解である。

 

 

2)対ウクライナ政策におけるトランプの妥協とハマス・イスラエル戦争

 

トランプは嘗て、「自分が大統領になったなら24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる」とか、「ウクライナ支援に金を一銭も出さない」と言っていた。

 

しかし、その姿勢にも大きな変化が出て来た。例えば、419日のガーディアン紙の記事には、最近トランプはウクライナの存続は米国にとって重要だと言い始めたと書かれている。その記事掲載の数日後、米国下院でウクライナ支援を含む予算案が通った。https://www.theguardian.com/world/2024/apr/19/ukraine-war-briefing-donald-trump-says-survival-of-ukraine-important-to-the-us

 

提出された法案には、ウクライナ支援の610億ドル、イスラエル支援の260億ドル、台湾支援の80億ドルが組み込まれ、合計950億ドルのパッケージとなっており、現在既に成立している。トランプのウクライナを守るべきという最近の変節発言で、共和党の多くもグローバリストたちに迎合するようにウクライナ支援法案に賛成した。(補足6)

 

この変節の理由はどこにあるのだろうか? ハマス・イスラエル戦争と関係あるのだろうか? 私は素人ながら、米国のネオコン・グローバリストたちは、トランプの固いユダヤとイスラエルを支持する姿勢をトランプ崩しの取っ掛かりとして利用したのだと思う。

 

つまり、ハマス・イスラエル戦争が始まった後(或いは始めた後)、トランプは「あなたのイスラエルとユダヤを支持する気持ちは、本物ですか」と問われることになった。つまり、イスラエルとウクライナを支援する人たちに、ロシアがイスラエルの潜在的敵国(補足7)であるのに、ロシアと戦っているウクライナを支援しないトランプの姿勢は何か変だと指摘されたのだろう。

 

その“問い質し”が、今年411日の記事に書いた3月下旬のイスラエルのネタニヤフ首相に近い新聞ハヨムによるトランプへのインタビュー(動画を引用)だったのだろう。その記事の中で、まるでイスラエルによるトランプの面接試験のようだと書いた。そのインタビューに臨んだ人たちは、イスラエル政府や米国のユダヤロビー(補足8)とも関係が深いと思う。

 

この他、トランプが共和党からの大統領候補に決まってから、ユダヤロビーやイスラエル政権の周辺人物達とトランプの間で、密な接触があったと思われる。日経新聞によると、上記法案の審議に際して、下院議長ジョンソンは方々からレクチャーを受け、4月にそれを持ってフロリダのトランプ邸を何度か訪問したという。

 

その結果、トランプはグローバリスト勢力との闘いを断念か、或いは彼らと妥協した可能性が高い。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN234YV0T20C24A4000000/

 

その情況下では、トランプと雖も先ずは生き残り、大統領選挙に勝利する必要がある。それが最近のトランプとその周辺の柔軟?な対応に関係しているのだろう。トランプはイスラエルを強く支持して来た。イスラエル支持は、グローバリスト達の心の最底部にある重要ファクターであり、それはバイデンよりも明確であると思う。

 

もし、トランプが次の4年間の任期中に妥協してくれるなら、彼らにとってバイデンよりも好ましい大統領かもしれない。民主党からの大統領候補のバイデンは、焦っているかもしれない。イスラエルへの弾薬輸送を止めたのは、その結果かもしれない。

 

このようにトランプを落とし込む米国グローバリストたちの戦略が成功したのだろう。ただ、大統領選挙でトランプを応援する筈だった一部の人たちは、反トランプになる可能性がある。米国は混沌としている。ロバートケネディJr.に今後スポットライトが当たることになるかもしれない。そうなれば、彼の命が危くなるような気がする。

 

 

終わりに

 

日本からトランプを支持している人たちの多くは、彼の言葉の背後にプーチンなどと同じ民族主義者トランプを見ていた筈である。そして、ウクライナ戦争に関しては、ゼレンスキーが戦争を継続できなくなって、戦争に不利な情況下でも和平に動くことをトランプは想定していただろう。

 

この姿勢は、ロシアを潰してしまいたい米国ネオコングローバリストたちの考えとは本質的に相容れない。ただ、トランプは現実主義的な政治家であり、民族主義者としてグローバリストたちと理念で対立し潰されては元も子もないので、姿勢を修正したのだろう。

 

ハマス・イスラム戦争が始まった以上、イスラエルの支援を明確にしなければ次期大統領の椅子には座れない。トランプは、イスラエル支援のためにはウクライナ支援も同時並行的に必要ならと、これまでの言動との矛盾を最小限に抑えつつウクライナ支援の方向に舵を切ったのだろう。

 

これまでトランプを支援してきた人は、最近トランプ支持者が書いた次期トランプ政権(仮)のウクライナ政策などに関する記述や、その要旨のツイート(補足9)などを見てがっかりするかもしれない。これらは次期トランプ政権(仮)の実現を睨んでの妥協が反映されていると思う。兎に角、大統領にならなければトランプは何も出来ないのだから。

 

大統領選挙が近づくにつれて、米国のあらゆる面で混乱が発生している。大学生によるパレスチナ支援のデモなども、大学生以外が大勢参加しているようだ。場合によっては軍事攻撃を伴う内戦に突入する危険性すら存在する。

 

米国では、今後34ヶ月、内戦と暗殺事件が勃発する可能性がある。米国には是非この国難を乗り切ってほしい。米国の国難は、日本にもその余波が及び、たいへんな事態になる可能性がある。トランプ大統領候補とその周辺の変化も、崩壊に向けた遷移状態にある米国を反映していると思う。

 

 

補足:

 

1)このようなトランプのモデルで国際情勢を分析している日本人youtuberとして、馬淵睦夫氏、渡辺惣樹氏、及川幸久氏などを私は思い出す。勘違いだと思われる方がおられましたら、コメントにて御指摘ください。

 

2)トランプは過去の第一期の政権において、北朝鮮の金正恩、中国の習近平、そしてロシアのプーチンの3人とも高く評価していた様に思う。ただ、世界のリーダーである米国の大統領として、彼らに市民一般にも解るような明確なメッセージを送ったという話は聞かない。彼らが米国と同盟国にとって味方なのか敵なのか、その根拠とともに明確にしなければ、世界のリーダーとしての米国の大統領に相応しいとは言えないだろう。ポピュリスト的政治家が成功するには、エリート層の冠である従来型に比較して極めて優れた能力と、実行力を示さなければならない。トランプ嫌いの多くの人は、その点が不安だから嫌うのだろう。

 

3)グローバリストの世界覇権の獲得の背景(目的)にシオニズムを考える人も多いだろう。シオニズムは、聖書にあるイスラエル王国の再建の話を、神に代わって人間つまりユダヤ人が行うべきだという思想である。聖書にあるのは大イスラエルだが、人間が行うのならそれが世界全体となるのなら、それは彼らにとってベストだろう。

 

4)不換紙幣でもドル基軸通貨体制を護る工夫、資本の移動の自由などWTO体制の構築、IMFなどによる国際金融システムの維持など。

 

5)日本では、巨大資本が集まる都会の周辺にニュータウンと呼ばれる地域が数多く造成され、全国から集まった人々はただ棲息の為の街を造った。子供は大学教育の後に、親元を離れて遠くの企業に就職し、長子相続などの伝統や家族共住の慣習も無くなり、昔の地域共同体は形は現在存在しない。形だけの祭りをその地域で継続する街の姿は、空蝉のように見えなくもない。

 

6)トランプの”変節”については、日経新聞も書いている。それによれば、この法案では支援金を単なる贈与ではなく、貸与と言う形にして、免除する場合は議会の議決を経るという形でトランプの意見を取り入れているようだ。トランプの姿勢の急変の背景に、大統領選へ向けた票固めと見るのは、ある意味当然だろう。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN234YV0T20C24A4000000/

 

7)旧約聖書のエゼキエル書38章に書かれている世界の最終戦争において、イスラエルを攻める国(民)としてゴグとかマゴグという名称が出てくる。新約聖書のヨハネの黙示録にも似た記述がある。それは現在ではロシアと考える人が多いようだ。因みに、現在の政治情況でも、ロシアはイランの味方であり、イスラエルの潜在敵である。グローバリストたちがロシアを潰したいと思う心の大元に、これら聖書の記述があると考える人が多いだろう。

 

8)イスラエルのユダヤ人も様々な考え方の人がおり、ユダヤ教正統派からあまり宗教を感じない人までいるだろう。正統派は、シオニズムにすら反対しており、将に神の御心のままに生きることを100%実行していると言える。一方、現実主義の人たちは、シオニズムを世界帝国建設に読み替えて、グローバリズムを実行しているのだろう。ネタニヤフ首相、米国のユダヤロビー、そして米国政界の大部分は、殆ど一体だと考えられる。

 

9)トランプ支持のグループが書いたトランプが次期政権に就いた時の政策とについて書いた本https://apnews.com/article/america-first-trump-biden-russia-ukraine-policy-54080728c6e549c8312c4d71150480ba とそこに書かれたウクライナ戦争終結のプランに関しては、https://ameblo.jp/sherryl-824/entry-12852302264.html を見てもらいたい。これらは妥協の産物であり、それでトランプを捨て去るのは“もったいない”と思う。

 (18:30 編集あり)

 

 

2024年5月14日火曜日

拡大する貧富の差の中で日本は滅びるのか

日本では、国内企業の改善や成長が世界に追い付かず、国民の間に貧富の差が拡大し、途上国に似た状態が現れつつある。金融資産の外国逃避が円安とともにスパイラルに起これば、その方向へ加速される。新NISAはその切っ掛けになる可能性大だが、しかし切っ掛けにしか過ぎないと思う。

 

日本経済の低調の根本原因は、政治ではなく文化にある。西欧文化を受け入れながら、その経済発展モデルを拒否する日本の文化である。終身雇用を最善とし発展には必須とされる労働の流動性(適材適所の実現)を拒否する。突出したアイデアは、和を乱すものとして議論されない。

 

人々は、「世間」の標準に従順で新規性を好まず保守的且つ平和的で「波風」を嫌う。議論が出来ず、西欧風社会を作っても、村社会の本質を無くそうとはしない。


勿論、これはあくまで平均としての話である。グローバル企業ともなれば、そんなことはとっくに卒業していると言う人も多いだろう。ただ、少なくとも政官界やマスコミ、更に大学などの研究機関などでは旧態依然だろう。若い人が教授になれば抜擢人事だと言われる。抜擢とは何のことだろう?

 

日本経済は政府のデフレ政策が原因であり、”財務真理教”を排除して積極財政に転ずれば、日本経済は復活するという人は今でも多い。(補足1)しかし、彼らと財務省幹部或いはその方針を支持している正統派の経済人との議論がマスコミに流れることはない。国会での議論は、予め決まった原稿を読むだけの儀式である。

 

日本文化の下では、議論すれば口論となり、最終的には喧嘩となって人間関係が破壊される。そして、山本七平が言うように、主語が明確でない言葉が、人と人の間に空しく投げかけられる。街中に見られる多くの標語は、その残骸である。(補足2)

 

 

1)経常収支の中身

 

上の図は日本の経常収支の中身を1996年からグラフにしたものである。経常収支とは、IMF(国際通貨基金)が示した方法により計算した、輸出入、金融取引、旅行などサービスや知的所有権などの取引、無償資金援助などにおける国全体の収支の合計である。

 

折れ線グラフが示している様に、経常黒字は毎年達成されている。しかし、その中身に大きな変化が生じている。21世紀の始めまでは、貿易黒字によって安定した経常黒字が達成されていた。しかし、2011年から貿易収支が赤字となる年が多くなり、それに代わって第一次所得収支が増加し、経常黒字を保っている。

 

第一次所得とは、主に海外への債券や株などの投資が産み出した所得である。この項目は、企業の海外進出や年金基金等の海外投資による収益が主だろうが、今後新NISAによる海外株式(補足3)への投資が大きくなれば、個人投資の寄与も大きくなるだろう。

 

この変化は、日本国内で企業が産み出した製品が、海外での競争力を無くしつつあること、そして、金融資産を持つ者は海外へそれを移動させ、その投資収益をかなり得ていることを示している。つまり、投資をする場合、競争力を失いつつある日本よりも、外国に投資することの方が有利ということである。

 

その結果、労働で稼ぐ一般市民の多くは益々貧しくなり、海外投資で稼ぐ階級の者は一定の所得を保つことになる。今後海外投資が出来る層とそれが出来ない層との間に大きな貧富のギャップが生じる可能性が高い。

 

勿論、一流企業の日本株を買うことは、その企業の海外進出という形で、その投資の一部は海外に向かう。更に日本の安い労働賃金や円安などの恩恵で国際競争力を今後も維持できる企業なら、海外直接投資をする企業と同様に生き残りが可能だろう。

 

そして、そのように生き残った企業の経営者や投資者は、先進国と同様の所得を得ることが出来るだろうが、労働者は現在のベトナム等の労働者と同じ所得となるだろう。それが表題の意味である。

 

 

2)円安について

 

通貨の交換比率、つまり為替レートは、貿易や金融取引など海外との決済の合計で決まる。外貨を持つ人が、日本円に交換して日本の商品を買うことが多くなれば円高に動き、逆に日本円を持つ人が、それを外貨に換えて海外製品を買うことが多くなれば円安方向に動く。

 

日本での人件費や家賃、更に国内での商品価格が幾らであっても、国際取引でなければ通貨の交換レートには影響しない。(補足4)

 

それら海外との取引収支の合計が日本の経常収支ということになる。ただ上述のように、日本国全体の収支(経常収支)が黒字でもその中身が変化していることに注意が必要である。何故なら、為替レートは現金のやり取りで決まるからである。

 

第一次所得が増加して黒字を維持しても、外国で稼いだ資金が再び外国に再投資されれば、お金の流れ(キャッシュフロー)で見た場合、赤字となっている可能性がある。つまり、日本全体としてせっせと稼いでも、稼いだ方々が外国に蓄財するのでは、日本は彼らのベッドタウンになってしまう。

 

そのように指摘する人がいる。東京財団政策研究所の「進む円安と経常収支の構造的変化」と題する文章を見てもらいたい。https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4352

 

その中で、小黒 一正氏は以下の様に書いている。

 

海外で現地生産している企業であれば、ドルで稼いだこの収益の多くは円に変換して日本に戻さず、ドルで再投資するはずだ。

 

また、「証券投資収益」は株式配当金および債券利子の受取・支払を表すが、このうちの「債券利子」から得る収益は証券投資収益の約90%(2022年度)を占める。断言はできないが、ドルで稼いだこの債券利子の収益の多くも、円に変換せず、ドルで再投資する可能性が高い。

 

この海外で稼いだ金は海外に再投資されるという指摘は他にも多い。キャッシュフローが赤字なら、ドルと円の交換レートが円安に向かうのは当然のことなのだ。

 

勿論現在の円安の主要な原因に、日米の政策金利における大差があるだろう。しかし、日銀が金利を上げても、円安の本質的治療にはならないということである。またここで重要なことは、金利を上げれば、日銀は実質的に債務超過になることである。そうなれば日本円の信用は保てないだろう。

 

それでも日銀総裁は、簿価では債務超過ではないので、国債の償還を受けても新規国債は買わなければ良いのだと強弁する。そうなれば、日本政府は大日本帝国のように変身して、国債購入を日本国民に強要することになるかもしれない。その時、新ニーサを始めたことによる国民の預金の海外流出を悔いるだろう。一体、岸田は誰に言われて新NISAを始めたのか? 分っている人は分かっているだろう。

 

 

3)貿易統計等

 

日本は農地の狭い資源小国であり、食糧とエネルギーを外国に頼っている。それは本質的なもので、日本は本質的に政治的に脆弱な国である。そのこと位は国民は熟知する必要がある。余計なことだが、日本の右翼系の方の頭にはこの自覚に欠ける人物が多い。

日本の経済活動を輸出入の点から眺める。上の表は、財務省の輸出入の統計(令和5年)である。合計すれば、93000億円余りの赤字である。この赤字への寄与が大きいのが赤でマークした食糧(8.2兆円)とエネルギー(25.7兆円)である。

 

我々の生命維持は、食糧とエネルギーの供給をしてくれるこの貿易の結果であり、その為のシステムのお陰である。この貿易システムは米国を中心に世界に根を張っており、米国は世界最強の軍事力でそれを護っている。それが日本の政治経済の基本的構図である。

 

この貿易の赤字幅を現在辛うじて抑えているのが、自動車など輸送機器(19.5兆円)と一般機械(8.9兆円)等の輸出産業である。(カッコ内は概数)日本に外貨を運び込むことにおいて、トヨタやホンダなど日本の自動車メーカーが最も大きな役割を果たしているということである。

 

その外貨収入が廻り廻って、食糧とエネルギーの購入費となっているのである。繰り返しになるが、日本は、外貨が入手できなければ国民の生命の維持さえ出来ないという脆弱な国なのである。以前、そこまで言って委員会という番組で、自称元皇族が日本は内需依存国であり、経済的に強い基盤を持っているなどと言っていたが、これが右翼の典型的な間違った意見である。日本は貿易立国なのだ。

 

この日本の自動車産業を破壊すること念頭において特に欧米を中心に繰り広げられているキャンペーンが地球環境問題である。日本が得意とす内燃機関型の自動車を追放して、構造的に簡単な電気自動車以外を禁止する方向に進むことを目的の一つとしている運動である。

 

それは、EVは大型蓄電池の製造を必須とするなど、製造から廃棄までの全プロセスを考えた場合、例えばプラグインハイブリッド車と比較して、CO2の発生や重金属汚染の問題などで、決して”環境に優しい”とは言えない。そんな事を無視してEVを推進する姿勢が、この運動のうさん臭さを示している。

 

そんなことには欧州特にドイツや北欧の人間は素知らぬ顔である。彼らは生存競争を非常に厳しく考えている。

 

貿易収支の話に戻る。上の表を良くみると、輸出産業の中で電気製品や機械類の競争力が低下しているようである。(補足5)進む円安の中でこの収支となる程の競争力であれば、この分野が今後貿易収支の赤字幅縮小の為に大きく働くとは思えない。赤字が今後大きくなる可能性が高い。

 

終わりに 

 

新型コロナ以降、各国がバラマキで財政支出を拡大し、日本も大量接種と大量廃棄のワクチンなどで無駄な政府支出が多かった。そのお金のバラマキによる物価上昇も加わり、インフレ状態になって来ている。最近では下図のように3%程度の物価上昇率が定着している。今後、更に円安による輸入物価の上昇も加わるだろう。https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

 

今年中に日銀は、この物価上昇を見て利上げを決断するだろう。それは、預金金利や住宅ローン金利だけでなく国債金利の上昇を意味する。その結果、国民の貧困化が進むだろう。国の財政も、ウクライナ支援などで今後放漫財政を続けて、益々借金体質が進むだろう。

 

また、利上げによって新規国債の発行が徐々に困難になることに注意が必要である。最悪の場合、政府は財政難に陥る可能性も今後出てくる可能性があると思う。今は英知をあつめて国難に対処する時である。のんびりと政治資金問題を議論している場合ではないと思う。

 

以上、理系素人による日本経済に対する感想です。批判やコメント期待します。

 

 

補足

 

1)この主張をする人は、民間人では三橋貴明氏、藤井聡元内閣官房参与(安倍内閣)など。江田憲司衆議院議員(立憲民主党)、西田 昌司参議院議員(自民党)などもこの中に入ると思われる。彼らの国家の債務がGDPの何倍あろうが、意味がないなどの発言が強烈である。

https://www.youtube.com/watch?v=ZqANXqn1Tlw

https://www.youtube.com/watch?v=xpNB-_v3Pnc

 

2)日本語と日本教について:10年前にブログ記事として書いているので一応引用します。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466514091.html

上の図が私の日本の言語文化に対する理解である。

 

3)海外への株投資にはNASDAQ100、S&P500などのインデックスファンド(株価連動型投資信託)を含む。日本のインデックスファンドとしては日経225に連動するファンドなどがある。世界中の有名株を組み合わせたオルカン(オルカン=all country)と呼ばれる投資信託が積立NISAでは人気があると前のブログで書いた。

 

4)発展途上国の名目年収5000ドルの人は、先進国の同じ名目年収5000ドルの人よりもはるかに裕福である。一人当たりGDPなどの国際比較データを見るとき、この事を忘れると全く間違った理解をすることになる。

 

5)電気製品と一般機械の輸入は夫々3%以上増加しているが、輸出は同程度減少している。自動車を含む輸送機器の輸入22%増加(金額は4133憶円余り)し、輸出は24%増加(金額は236300億円余り)

 

(19時、編集あり;5/15早朝全面的に編集の上、最終稿)

2024年5月8日水曜日

日銀が利上げ出来ないもう一つの理由は新NISAでは?

二度の為替介入にも拘わらず円安が続いている。為替介入は、外れた相場をもとに戻す効果はあるが、理由があって動いた相場を元の値に戻そうとしてもその時点での相場に戻るだけのようだ。ただ、国民注視の前で何もしない訳にはいかなかったのだろう。

 

高橋洋一氏が言うように、100円代で購入した米ドルを150円以上で売ったのだから財務省は大儲けしたことは確かである。もし利上げの前にひと稼ぎしようと言う為替介入なら見上げたものだが、そうではないだろう。

 

日米の大きな金利差で生じたこの円安は、購買力平価で判断した場合は異常である。日銀は、利上げすべきなのだが、円安以外の原因でのインフレが明確に2%以上になっていないから利上げしないと言う。しかし、理由は別にあるだろう。

 

評論家の増田俊男氏は、その理由の一つを語っている。米国は、高金利下での景気の冷却を懸念しており、物価が落ち着き次第に利下げしたい。そのタイミングを待っている。そんな時日本が利上げするとかなりの資金が日本に流れ、米国の景気冷却の切っ掛けになる。米国経済の冷却が始まると、日本等にも影響が及ぶ。日銀はそれを恐れているというのである。

https://www.youtube.com/watch?v=H3uTk9-PU1w

 

ここで日銀が利上げ出来ない政治的理由として新たに指摘したいのは、利上げにより岸田政権の人気急落が予想されることである。

 

今年岸田政権が始めた新NISAは、日本国民の1200兆円にも及ぶ個人預金を米国に逃がす制度になっている。実際、新NISAの積立枠の多くは米国の投資信託に流れ、米国の景気を支えるのに(大きくはないかもしれないが)一役買っているのは確かである。

 

 

全世界の株を対象にしたインデックスファンド(俗称オルカン)でも構成株の60%は米国株である。その他、S&P500とかNASDAQ100などは全て米国株である。岸田政権下の日本は、円安政策と連動させて米国経済の為にも頑張っているのである。

 

今年1月早々に新NISAで米国株投資信託を買った人は、今年1月には140円だったドル円レートが現在155円程になっていることと、米株自体も10%以上の値上がりしていることも合わせて、これまでのたった4ヶ月あまりで20%以上の含み益を得ている。


ここで、日銀が利上げをすると、日本円は130~140円になり、この含み益が吹き飛ぶ可能性がある。そうなれば、密かにほくそ笑んでいた人たちも、あからさまに嘆きと恨みの声を上げることになるだろう。

 

今でも個別株への投資では、そんな嘆き節が聞かれているというのであるから、上記のような場合はすごいことになるだろう。

 

 

 

2)岸田政権への打撃

 

岸田政権は、従来の自民党政権以上に米国に従順である。それが安定的に政権を運営する上で一番簡単だからだろうと想像する。自分の総理大臣の地位と様々なメリットが約束される。第一、安倍さんのようにはならない。

 

 

米国盲従政策の一つが、盲目的なウクライナ支援であり、大量のCovid-19ワクチン購入であり、更にもう一つがこれまで誰も出来なかった世界一の日本国民の預金を米国に流すことである。(補足1)それらが、日本のマスコミのプロパガンダ的報道の支援も得て、素直な日本国民を背後に実行できた。

 

自然に景気後退になったなら、おとなしい日本国民は必死に我慢するだろう。しかし、新NISAと円安政策で国内外の株投資へ誘導されたあと、利上げによる円高で梯子を外されたら、多量に誕生した俄か素人投資家たちの魂胆と怒りの声は岸田総理へ引導を渡すことになるだろう。

 

税金収入を犠牲にしてまで新NISAを実行するのだから、日本株や日本株の投資信託に限るべきだった。それが、政府財政を増加させてGDP上昇を考えるよりも遥かに上策である。岸田政権の愚策と米国隷属の姿勢が、日本の金融を崩壊させようとしているのである。

 

 

終わりに:

 

デフレ脱却の為には、積極的に財政拡大してGDPを増加させるべきという考えもあるが、それは現在の日本では間違いだと思う。5年以上前までは、今回のような通貨安は想像できず、私もその考えに染まっていた。しかし、今日の異常な円安に歯止めが掛けられない程の財政赤字(補足2)では、これ以上の財政赤字の積み上げは日本経済を危うくする。

 

 

同じ金を使うなら、例えば適材適所を促進するための労働の流動化、既得権益の排除、労働生産性を向上させる投資の促進やインフラ整備など、地道な努力をするべきである。それと、健全な競争を社会に喚起する”文化的”政策も、他国同様に成長するには不可欠だろう。

 

三橋貴明氏ら所謂リフレ派の人たちの多くは、今でも「政府の債務を増加させれば経済成長する」という事を理由に、財政拡大を主張している。確かに、日本円で統計を取る限りGDPは成長するだろう。しかし、通貨の実力が崩壊すれば、長期的には逆に貧困化を招く。財政赤字を垂れ流してGDPを上昇させ、暮らしを楽にできる程、この世界は甘くないと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=NvSp3uNyoQY

 

彼らが未だにMMTという思想にすがっている理由がわからない。インフレが大きくなるまでは幾らでも財政支出すればよいというMMT政策は、基軸通貨発行国のみが用いることが出来る。日本には適用できないことが今回証明されたと思う。

 

以上は一理系人間の素人分析です。コメント批判など是非お願いします。

 

補足:

 

1)郵政民営化の時、日本の簡保生命のお金を米国に投資させるためだと言われた。その時の郵貯と簡保のお金が350兆円だった。その時よりももっと円滑に且つ大規模に米国に資金が流れるだろう。

 

2)日銀総裁が言うように、日銀の大量保有する国債は元の価格で貸借対照表に掲載する限り、書面上は債務超過にはならないし、満期で償還を受けることができる。しかし、その後その借り換えをするには国債をもっと高利で発行しなければならない。その時は、もっと困難な情況に追い込まれるような気がする。

     

(おわり)(12:30補足1追加、編集)

2024年5月2日木曜日

日本円崩壊の危険性:預貯金の海外流出との関連

 

日銀の金融政策決定会合の後、円安の流れが急激になった。為替介入により若干もどしたもののその流れは止まりそうになく、年内に170円にもなる可能性もある。更に最終的には日本円崩壊のシナリオも全くない訳ではないという話が、証券会社の現役為替アナリストとして著名な佐々木融氏により為されている。

https://www.youtube.com/watch?v=okRlXPrUcZg

 

この恐ろしい話が成立する背景に、日本の個人金融資産2100兆円の半分以上1100兆円が預貯金としてため込まれていることがある。その円預金が、新NISAを利用した海外通貨建ファンドなどに既にかなり向かっている。より大きな利息や今後の為替差益を考えるなら、それが賢いと証券会社に教えられるからだろう。

 

これ以上の円安の流れが確実となれば、その傾向が益々大きくなる可能性が高い。日本では、国民の間に時として巨大な流れが出来る文化の国である。その流れを米国のヘッジファンドが見た時、円売り攻勢を仕掛け、円安の流れを大きくして利益を得ようと考えることは容易に想像できる。

 

更にそれに呼応する形で、日本の個人預貯金のお金が外国に流れる。そのようなスパイラルな円安進行が恐ろしいシナリオである。全体としては、ヘッジファンドなどが円安の流れを煽ることで日本円預貯金の外国への流出を助け、その手数料と売り買いの差益を得るということになる。

 

日本に残された金融資産は相当減少し、残った分も大きく目減りすることになる。金融資産を日本円で持っている人は、超円安で貧困化しその中であえぐことになる。勿論、日本はインフラも整備され技術をもった人材も豊富なので、企業の日本回帰などが盛んになり、そこからの輸出が大きな富を生み、どのくらいかは分からないが一定期間の内に経済規模も人々の生活も元に戻るだろう。ただし、かなり犠牲者を出した後である。

 

この波が日本円崩壊と言えるほどに極端な場合も全くない訳ではないだろう。その時、日本円は通貨価値をまともな数値で言及できるように所謂デノミが行なわれる可能性もあるだろう。預金封鎖後に、これまでの100円を1円とするなどの改訂である。日本では第二次大戦後に行われたし、外国でも通貨危機後に行われている。

 

纏めると: そして、真面目に働き稼いだ金を少しづつ蓄財した国民のかなりの部分が貧困化した結果、大部分を占める中流以下の日本国民の間に大きな貧富の差を作り上げる。借金が大きく目減りして得をするのは、放漫財政の挙句大きな借金を作り上げた国家やそれを見越して債券を発行しまくった一部の法人だろう。その事態は日本全体としては本当に愚かである。

 

勿論、これは最悪のシナリオで殆どあり得ないのだが、同じメカニズムでもっと小さい景気のうねりが発生する可能性が高い。日本は食糧とエネルギーを輸入に頼っているので、これらの価格高騰により、貧困層は危険な情況に追い込まれる可能性がある。更に、日本国民に発生した貧富の差は、日本のお互いに他人を思いやるという稀有な文化を破壊する可能性も高くなる。

 

 

2)異次元の金融緩和の評価

 

日銀がまともに為替を安定させるための金融操作が出来ないのは、前の記事に書いた様に、”異次元の金融緩”の結果日銀が保有する多量の国債残高である。それは、アベノミクスの一環として黒田日銀総裁の時に行なわれた市場からの国債の大量買い付けと、政策金利のマイナス化である。

 

この議論で最初に思い出すべきことは、赤字国債の発行と日銀が国債を引き受けることは、財政規律を無くする危険性を防ぐために禁止されていることである。財政法には以下の様に書かれている。

 

第四条: 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。 但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。更に、第五条すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。 但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

 

1955年以降約50年間続いた下劣な政治の付けを、大量の赤字国債発行とその日銀による引き受けという財政法に違反した形の金融緩和策で乗り切ろうとしたのは、自民党政府の殆ど犯罪的政治である。勿論、官僚のワル知恵を借りて特例法などを制定し、法律違反は形の上では避けている。

 

今では、内閣は赤字国債発行という事態に悩んだ時の蔵相の気持ちなど完全に忘れ去っている。(補足1)下のグラフを見てもらいたい。赤い棒グラフはその本来違法である赤字国債の金額である。この30年近く、国家の予算の40%近く或いはそれ以上を国債に頼っている。

 

繰り返しになるが、自民党政府は法で禁止されていることを、その法の思想を完全無視して、毎年税収よりも40兆円程余分に支出している。マスコミ等が報道すべきは、このような問題の原点からの経緯・歴史である。そのような本質的で真面目な議論が全くこの日本と言う国には欠けている。日本国は残念ながら、まともな近代国家ではない。

 

いささか脱線気味だが、以下のことはブログ記事毎に書いておきたい。明治の時代、日本はに西欧に出来上がった政治システムを移植したが、その精神に学ぶことはしなかった。 これは財政だけでなく政治の全ての部分について言えることである。

 

尚、以前のブログ記事で、日本株にはむしろ明るい将来があると書いたが、上記のような円安スパイラルが起こった場合には、日本は貧困化し輸出で稼ぐ会社以外の日本株は実質的価値を大きく下げるだろう。

 

終わりに

 

以下の動画を見てもらいたい。元財務官僚で嘗て内閣参与をされていた方が現在の円安について話している。為替レートについて一片の真実を語っている(=本来一ドルは110円位)と思うが、平衡論であり動的議論は一切無視している。因みに、この方は「アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる」という本の著者である。

 

https://www.youtube.com/watch?v=KCU3R2LDWVA

 

話の内容は書き下ししないので、直接聞いてもらいたい。この円安に関する話は、例えば「その住宅地は海抜2mなので、この100年や200年の間に海に沈む危険性は全くありません。例外的に20m程高くなったりしますが、すぐ収まるので気にすることはありません」に似ている。

 

物理でも化学でも、現象の解析・議論には平衡論と動的議論の2つがある。上記動画の主は、平衡論で「ドル・円は110円が正当なレートであり、たまに2割3割ズレることはあっても、すぐに元に戻るのだ」と語る。しかし、そのプロセスの中で一部の日本人の金融資産が数分の1になり、(他の1部の人の資産はほぼ全される)その他の人々の資産はかなり目減りするもののかなり保全される。その結果、大勢が貧困に突き落とされることになるが、そんなことは些細なことだとして無視を決め込むのである。

 

このように発信する動機は、自分の内閣参与時代の間違いを隠すことと、極めて強い自尊心だと思われる。この国には、このような議論を論破する人物が、近くに現れない。また、もし現れても何の利益にもならないとして、放置するだけである。日本には議論の習慣がない。議論は口論となり喧嘩となるからである。それはあらゆる面で、日本病の根本原因である。

 

以上は、一素人のメモですので、コメント或いは間違いの指摘を歓迎します。

 

補足:

 

1)赤字国債の発行は昭和50年にはじまった。この年の12月25日,「昭和50年度の公債の発行の特例に関する法律」(特例公債法)が公布され,赤字国債がはじめて発行された。赤字国債の危険性を知る時の大平蔵相は歯止め装置を置いた。しかし、それも撤廃されて無制限に発行されるようになった。その切っ掛けは、自民党の人気低下だったと思う。一時発行を止めていた赤字国債が再度大量に発行されるようになったのは、自社さ政権の村山総理の時である。

https://www.jsri.or.jp/publish/research/pdf/81/81_02.pdf

(13:00 編集あり;15:45 本文§2最後の文章に”実質的”を追加; 22:00 最後の§の打消し線部分を修正後、最終稿)