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2023年4月21日金曜日

岸田首相襲撃事件から学ぶべきこと:現行選挙制度は改正すべき

4月15日、和歌山市の雑賀崎漁港に設営された応援演説会場に岸田文雄首相が入った直後、首相の近くに爆発物が投げ込まれた。この事件で、木村隆二容疑者(24)が威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された。警察による聴取が進んでいるが、黙秘を続けており動機は明らかではない。

 

そんななか、木村容疑者に関する様々な情報が報道されている。彼は現在の国政に関していろいろ不満をもっていたようだ。一つは選挙の立候補資格と供託金制度についてで、もう一つは暗殺された安倍元総理の国葬についてである。

 

後者に関しては私も意見がある。それは事実の解明が第一であるにもかかわらず、議論を封じるかのように、事件直後に国葬を決定したのは大きな疑問点である。以下の記事にそのあたりの議論を記しているので、ご覧いただきたい。

安倍氏暗殺容疑者になった山上氏の拘束は一生涯続くだろう | Social Chemistry (ameblo.jp)

 

前者の問題も非常に重要である。昨年6月、現行選挙制度の下、木村容疑者が参院選に立候補できなかったのは憲法違反にあたるなどとして、神戸地裁に国家賠償請求訴訟を起こしている。第一審で訴えが退けられると控訴し、今年5月に判決が言い渡される予定になっている。

 

木村容疑者によって指摘されたこの民主主義の根幹に位置する重要な問題点については、国民や国会議員はもっと真面目に考えるべきである。そして報道機関も、事件を深刻な顔をして(面白可笑しく)報じるだけでなく、もっと真面目に議論の対象とすべきである。

 

私は、この裁判に注目を集めるのが今回の襲撃事件の動機の一つだと思っている。

 

2)公職選挙法の問題点:

 

訴えの詳細が、AERA.dotにより報道されている。訴えた理由は、以下の二点に集約されると思う。

 

1)30歳未満の成年が、30歳以上の成年と同じ『大人』であるにもかかわらず、参院選の被選挙権がないのは、社会経験に基づく思慮が十分ではないことなどを理由とした差別である。

 

2)供託金の制度は、立候補の自由を保障し、候補者資格の『財産又は収入』による差別を禁じる憲法に違反する。

 

これらの理由で選挙に立候補できなかったことによって受けた精神的損害への慰謝料として10万円を求めたのが、本訴えの趣旨である。

政治家を目指していた?襲撃事件の木村隆二容疑者24歳 「岸田首相批判」と慰謝料10万円国賠訴訟 (msn.com)

 

私は、1)と2)の論点は、本来とっくに国会で議論され、現行制度の一部は改正されているべきだったと思う。現行制度が正しいとするのなら、国は詳細にその理由を説明すべきである。特に高額の供託金で立候補者を社会の片隅(補足1)からだけに限る現行制度は、改めるべきだと思う。

 

勿論、訴状及び判決文の詳細を見なければ十分にはわからないが、一審で門前払いされたのは不思議である。この問題は過去議論の対象になっているだろうが、納得のいく答えが広報等に用意されていなかったのは、国政の怠慢(或いは犯罪)だと私は思う。(補足2)

 

現在、首相をはじめ国会議員の多くが二世三世で占められ、国会議員の職がまるで家業のようになっている。国会では、官僚たちが作った作文を読み上げられるのみであり、議論らしい場面など全くない。総理記者会見も数人だけの質問者に時間を限り、無知がバレないように済ましている。兎に角、日本の政治と政治家は非常にレベルが低い。

 

我々国民が、すくなくとも自分の担当については何時間でも議論できるという能力の政治家を選出するには、この選挙制度の改革が必須である。(補足3)勿論、一選挙区で数百人が立候補するようなことになれば大変だが、現行制度の強い制限は異常である。

 

公職選挙法の目的は、政治屋の権益を守ることではない。従って、男女差や年齢で立候補枠を狭めるのは愚かであり、成人に広く立候補のチャンスを広げる様、制度を改めるべきである。経験や知識の有無は、有権者が判断することであり、選挙制度で予め決定できることではない。

 

具体例:

 

参議院選での立候補には、選挙区は300万円(比例代表は600万円)を供託金として差し出す必要がある。その全額が、有効投票総数を議員定数で割った数の8分の1以上を獲得しなければ没収される。まるで立候補は犯罪で、300万あるいは600万円は罰金のようである。

 

2019年の前回選挙で、東京選挙区に立候補した20人のうち、10人が没収されたという。売名目的の候補者乱立を防ぐのが狙いだというが、この制度では知名度はないが優れた知識と判断力のある政治家候補は完全に除外される。繰り返しになるが、これは民主国家の選挙規定ではない。

 

現行選挙制度は国会議員という家業を持つ既得権益者のためにあると思わざるを得ない。そのグループ以外では、300万円をゴミ箱にてられる人のみが立候補資格があるということになる。

 

もちろん、平和時であれば、テロ行為が罰せられるべきなのは言うまでもない。そして木村容疑者が、人生を賭して我々に選挙制度の不備を訴えたと受け取るのは、或いは極端な事件の解釈かもしれない。しかし、日本の政治の現状を考えると、貧困なる国会に対する警鐘と受け取る視野の広さを国民は持つべきだろう。

 

マスコミはこの選挙制度の不平等をもっと報道すべきである。裁判所は、行政におもねることなく、まじめに議論し判決を出すべきである。統治行為論(補足4)などという学説で身を護るのなら、裁判官などになるなと言いたい。

 

 

補足:

 

1)社会の片隅とは政治家の家族やスポーツ及び芸能界の意味。著名な芸能人やスポーツ競技者が夫々の分野で得た知名度を頼りにして立候補するか、政治家等の子供で親の七光りで立候補するのでなければ、立候補は供託金をゴミ箱にすてるようなものである。

 

2)ネット検索をすると、公明党立川市議会議員の大沢純一という方の議論が出てくる。ただ、様々なところで細々と議論されているのみであり、国政の場でまじめに議論されてこなかったと思う。

供託金制度は廃止すべき | 公明党立川市議会議員 大沢純一 公式サイト (j-osawa.com)

 

3)米国のトランプ大統領の記者会見は数時間に及ぶことが多かった。もちろん、すべての疑問が解消するわけではないが、記者が抱く疑問点にはすべて答えるという姿勢だった。そのような姿勢で記者会見の望むことのできる大臣は、日本には一人もいないだろう。

 

4)統治行為論とは、“国家統治の基本に関する高度な政治性”を有する国家の行為については、法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、司法審査の対象から除外すべきとする理論

 

4)統治行為論とは、“国家統治の基本に関する高度な政治性”を有する国家の行為については、法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、司法審査の対象から除外すべきとする理論

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