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2023年10月29日日曜日

イスラエルによるハマス掃討侵攻での民間パレスチナ人軽視の論理

 

イスラエルによるガザ地区の爆撃と部分的な地上侵攻が進んでいる。朝日新聞デジタル(273:01配信)によると、26日の時点で、ガザ地区の死者数は7000人以上で、その内2900人以上が子どもであったという。

 

この残忍なイスラエルの攻撃を、集団的懲罰(collective punishment)或いは属性(的)排除の論理で行われていると考える人々がいる。ハマスのテロに対する懲罰をハマスを政権とするガザ地区住民全てが負うべきだとする考え方である。(補足1)

 

現在イスラエルが行なっているガザ攻撃は、太平洋戦争末期の米国による日本攻撃に似ている。属性的排除或いは集団的懲罰はハマスのテロと同様に国際法では戦争犯罪である。https://en.wikipedia.org/wiki/Collective_punishment 

 

元々90%以上の住民がパレスチナ人だった土地に、ユダヤ金融資本家による圧力があったとは言え、強引にユダヤの帰還地をつくった英国の決断、そしてその後の無責任な委任統治が、そもそも紛争の原因である。(補足2と13‐16日の記事)

 

今回は、多数の一般市民の死亡が予想され、且つ、国際的世論が反対する中で、ガザ地区を地上侵攻してハマスを壊滅させようとするイスラエルの論理を考えてみる。

 

 

1)属性的排除という考え方:

 

作家の佐藤優氏が、今回のガザ地区への攻撃がハマスを含めてガザのパレスチナ人に対する「属性排除」であると言っている。下の動画の41分くらいからその解説がなされている。 https://www.youtube.com/watch?v=Km3fLGC-yD4
 

 

この場合の属性排除とは、ハマスに統治を委ねたガザ地区のパレスチナ人全員に7日及びこれまでのハマスのテロの責任があると考え、ガザ地区を「中立化」するという考え方である。

 

「中立化」という用語は、通常、戦争や紛争の文脈で、特定の地域や人を戦闘や敵対行動から、中立的な立場を維持するための措置を指す。ガザ地区に適用すれば、それはパレスチナ人全員を生死に無関係に追い払うこととなる。

 

この論理はハマスにとっても同じであり、パレスチナ地区を占有するユダヤ人であるが故に攻撃殺害するということになり、ハマスがテロや人質をとったことを正当化する論理となり得る。そこには、最早善悪は存在しない。完全に野獣の縄張り争いの論理である。

 

この論理なら、ハマスとイスラエルの衝突とその様相を、西欧の戦争と戦争犯罪の考え方で言及するのは完全に間違いということになる。そして、介入をこころみる国家があれば、その国も同じ野生の世界に入り込むことになる。

 

ここで重要なのは、イスラエルは国家だがハマスを含めてパレスチナは国家ではないことである。ネタニヤフは7日のテロ行為後直ちに、戦争を宣言した。イスラエルを支持する米国も、イスラエルの自衛権を認めた。

 

しかし、これらの国々はパレスチナを或いはガザを国家として認めていない。ガザやヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地は自国の占領地であると言いながら、新たに防衛戦争を宣言したのである。国連は第一次中東戦争後から一貫して、その地域をパレスチナ人の土地としている。イスラエルの占領を認めていない。

 

つまり、イスラエルはガザのハマスだけと戦っているつもりはないのだろう。イランなどアラブの国々など全て、或いはイスラエルの味方になる英米などの国々以外の全世界と戦わなければ、独立維持が出来ないと考えているのだろうか? つまり、ハルマゲドンを想定しているのかもしれない。

 

普通の感覚に戻す。パレスチナに対して防衛戦争を宣言するのなら、その前に先ず国連の決定通りに国境を守り、パレスチナを隣国として承認することが必要だと思う。(補足3) 今回の防衛戦争の宣言とその支持は、イスラエルや米国の非常に身勝手な論理であると思う。

 

 

2)アイヒマン事件:

 

上に用いた属性排除という考え方は、国際法や近代の法理論に反するものである。この極端な考え方は、アイヒマンの裁判を通して、イスラエルの一部政権に定着したと、上記動画(40分以降)で佐藤優氏が解説しているのだが、その通りだと思う。

 

モサドによりアルゼンチンで逮捕されイスラエルに移送されたナチ親衛隊のアイヒマン(補足4)は、「自分は列車運行の専門家としてユダヤ人を収容所に送る列車のダイヤグラムを組んでいただけで、ユダヤ人虐殺には直接関与していないし、それを命令する立場にもなかった。」と語り、その裁判で無罪を主張した。

 

近代の法解釈では、アイヒマンはナチスの犯罪の共同正犯になるか、ほう助罪となるか微妙である。死刑にする論理はユダヤ人を“属性排除”したナチスの一員として、その一部を担当したからであると佐藤優氏は語る。(当然、イスラエルは否定する筈)

 

アイヒマン裁判から60年と少し経過したある日、一地方紙である静岡新聞(2023.3.18)にその論説が掲載された。アイヒマン裁判のイスラエルにとっての意味が詳細に解説されている。https://www.at-s.com/news/article/national/1210162.html

 

アイヒマンを裁くだけなら、証拠書類だけで十分だが、主任検察官ギデオン・ハウスナーは生存者に裁判でナチ収容所での体験を証言させた。大惨事を生々しく再現させることで、ホロコーストを知らない若い世代への教育的な意味合いもあった。

 

建国間もないイスラエルでは、第1次中東戦争が休戦に至ったばかりで治安も安定せず、社会は「力強さ」を求めていた。「なぜ抵抗しなかったのか」「なぜ羊のように従順に殺されたのか」―。ホロコーストはユダヤ人の「弱さの象徴」とされ、さげすまれた。

 

また、アラブ諸国出身のユダヤ人は欧州出身者中心の社会へうまくなじめない様だった。しかし、裁判を通じホロコーストはユダヤ民族の記憶として共有され、ナショナルアイデンティティーになった

 

アイヒマン裁判の効果は、ベングリオン首相(当時)の狙い通りだったのである。そして「国家がなかったから虐殺された」「ユダヤ人の避難場所としてイスラエルを守る必要がある」という考えが全ての国民に刷り込まれ。

 

また、「ホロコーストの記憶から生まれる無意識の恐怖心や不安感、そしてその裏返しの強さへの憧憬」は、ユダヤ人団体やイスラエル国が、他国におけるナチスやパレスチナ問題に関する議論等を、米国などの力を背後にして神経質に抑える理由だろう。

 

ホロコーストをイスラエルの考えた通りに解釈しない者には、言論の自由など存在しないというのである。最近、イスラエル大使はパレスチナ支援のテロを母親が行なったので、その娘はパレスチナ支援の発言をする自由は無いとして、テレビ出演させたTBSを強く批判した。(補足5)

 

それは将に、「属性排除」という論理である。佐藤氏は、日本赤軍がハマスと同じように、反ユダヤ人のテロを行なったからだと言う。動画46分50秒で佐藤氏が解説するイスラエルの感覚を理解しなければならないだろう。
 

また佐藤氏は、イスラエル建国当時のユダヤの人たちが持っていた考え方は、「全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵にまわしてでも生き残る」という覚悟であると語る。(47:20)何かの機会に無意識に行なったことで“属性排除”されない様に日本人も気をつけるべきである。
 

彼らが原爆投下を表から正当化する論理も、この論理である。(補足6)ハイドパークの覚書などから見ると、日本人は既に属性排除されるべきリストに入っている可能性があると思ってしまう。原爆を日本人に用いる(日本ではなく)とその覚書には書かれている。

 

何時もユダヤ金融資本の「金の力」が支配した英米と言う国家の力を借りて行うので、過去の歴史においても反感を持つ人も多かっただろう。国家を持たなかったユダヤ人は、他国(英米)の政治に深く介入し、御簾の陰に隠れて野望を達成した。イスラエル建国もその一つだろう。

 

ネタニヤフ首相は、ヒトラーのホロコーストという人類史的犯罪以降初めての、ユダヤ人の危機と考えているのかもしれない。

 

西欧の「戦争は外交の一手段であり、戦争に関する国際法に従って行われる」という近代西欧の外交文化は、21世紀になって完全に捨て去られ、世界は弱肉強食の中世的になったと言える。


 

補足:

1)ハマスを政権に選んだのはガザ地区住民なのだろう。しかし、ハマスを育て維持したのはパレスチナの分裂を狙ったネタニヤフだった。従って、集団的懲罰の論理は最初から破綻している。https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2023/10/24/35315.html

2)最初に明確に国境を決定し、それを数十年維持する英国政府の努力があれば、自然に落ち着いたと思う。勿論相当の出費はあっただろうが、アラブ人の不満を時には懐柔し、国境を守るという強い意志を示せば出来たと思う。ただ、その英国の背後のロスチャイルドが最大版図のイスラエルを考えていたとしたら、どうしようも無かっただろう。
(23日の記事参照)

3)1948年にイスラエルは独立した。それに反対するパレスチナとアラブ諸国はイスラエルを攻撃して第一次中東戦争になった。その後の調停で出た新しい国境を、イスラエルは遵守すべきだったと思う。現在のパレスチナの範囲は、そこから著しく縮小されている。

4)モサドはイスラエルの対外諜報機関であり、他国で他国民を逮捕する権限などない。このような行為は米国民主党政権が頻繁に行なっている。米国のオバマ大統領は“世界の邪魔者3000人”をドローン攻撃で暗殺した。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/7166 

5)最近、重信房子の娘のパレスチナ擁護発言を放送したTBSに対し、駐日イスラエル大使の強い批判があった。(動画の46:40秒)また以前、月刊誌「マルコポーロ」を廃刊に追い込んだ事件があった。廃刊後には出版社の負担で、編集者らに教育的講座の受講を義務づけるという傲慢さである。かれらには、言論の自由、報道の自由、法の論理などもナチス問題を前にしては無視して良いと考えている。

 

6)米国にあるユダヤ人による圧力団体のサイモン・ヴィーゼンタール・センター(SWC)は、米国政治について隠然たる力を持っていると言われる。そこの副館長のアブラハム・クーパーは、「原爆投下を人道に反する罪だとは思わない」と明言したことは、ユダヤ人たちの思考が世界のその他の人たちの標準的思考とことなることを示している。

 

彼らは、主権国家体制だけでなく、ハーグ陸戦協定などの西欧の政治外交文化を全て無視しても良いという独裁者的思想を持っている。そして、それを米国を利用して世界に押し付ける力も持っている。この考え方の背後に、ユダヤ人の強烈な被害者意識と属性排除の考え方があると思われる。
https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12762996977.html
 

 

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