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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2025年4月29日火曜日

人間と社会における本音と建前の役割:どちらも大事である。

前書き: 人の言葉に関して、「人間と社会における表と裏の別は大切である」との表題で2016年に書いた文を再録する。個人の言葉を考えたとき、表とはパブリック(追補1)な場で語られる言葉(建前)である。裏とは表以外であり、本能に基づく感情や感覚と区別なく存在する心の中の言葉(本音)である。したがって、その人の実際の行動は本音と建前の混合として現れる。

 

国家の声明(言葉)にも表と裏の別は存在することは、今や常識だろう。しかし、この区別を思想としてまとめたものは我が日本国には無いのではないだろうか。政治もやはり、国家の本音と建前の混合として現れる。これまでの建前を維持すべきだと考えるのが保守であり、現実から生じる本音に配慮して新しい建前を組むべきだと考えるのが革新だろう。

 

例えば、米国カリフォルニアでは950ドル以下の盗みは軽犯罪として扱うという規則は革新の暴走と言えるが、その背後には本音としての“放置できない異常な貧富の差”が存在する。 これを単に米国民主党は狂っていると考えるのは間違いで、現実に即応しようと動く米国の政治に学ぶべきである。

 

そして更に、国際政治を考えるときにこそ、本音と建前の役割を知ることが重要である。国際法という古い建前を持ち出す議論しかできない日本の評論家は〇〇である。

 

追補: パブリック(英語のpublic)は、公衆の面前位の意味であり、英語辞書で調べると"open to general observation" とある。

 

== 以下に2016年の文章を引用する ==

 

1)人間は言葉を話す唯一の生物である(補足1)。言葉を話すことにより人間に表裏ができた。発した言葉が表で心の中が裏である。「表裏(おもてとうら)の無い人」と言う言葉がある。「表裏の無い人」は表裏の違い、つまり、表で発せられた約束などの言葉と実際の行動とのずれ(補足2)の無い人を褒める言葉である。

 

そのような人は当然立派で褒めるに価する人ではある。その人は自分の発した言葉に責任を持つ人であるが、表裏が無いわけではない。一般に「表裏の無い人」というのは、本音は別にあってもそれを制御して、社会の中での自分の責任を承知し、それを果たす人のことである。上記タイトルの意味は、この表裏の差は本質的なものであり、むしろなくしてはならないという意味である。

 

直接関係はないが、細胞の内外(表裏)で大きなナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度差がある。この表裏の差が神経での信号伝達など生物の命を支えているのである。生命は、そして人間の体も心も、そのように作られている。

 

人間の生活に目を転じても、表と裏や“ハレとケ”の区別が社会の構造を支えてきた。しかしそれが、経済発展とともに氷解するようになくなりつつある。個人も社会も、暑くなって衣服を脱ぎ捨てるように、表と裏の差もハレとケの区別もなくそうとしている。小泉内閣のとき、国会でもノーネクタイがクールビズとかなんとか言って推奨されたのもその一例である。

 

もう一つの重要な例が、性(セックス)が表の世界にしゃしゃり出たことである。性は人間にとって個人の裏(内部)に封じ込めておくべきことだったが、それが上記社会の変化に伴って、大手を振って外に出てきたのである。細胞内のカリウムイオンのように家庭の夫婦間に性を封じ込め、外での濃度を低く保つことが、人間にとっての性の意味とポテンシャルを維持しつつ、性のモラルを保つことになるのである(補足3)。それにより家庭という細胞の崩壊を防いで来たのだが、最近は家庭や家族の価値も低下する方向にある(補足4)。それは社会の崩壊の始まりである。

 

昨今、その人類が築いた知恵をないがしろにする場面を屡々テレビなどでも見る。外国に来て職をもらい、テレビに出演させてもらいながら、不埒な発言をする人物もいる(補足5)。

 

2)一旦発した言葉に責任を持つと同時に、他人が発した言葉をそのまま受け取りその人の意思の表明と考えるのが、先進社会のルールである。しかし、言葉に信用を置けない社会では、社会のあらゆる機能:経済行為、契約行為、行政から司法までの国家の行為、さらに外交関係にまで、障害が生じる。外交でどちらにでも取れるような言葉を多用する日本国は、その点では後進国である。

 

言葉に信用が十分おけない社会とは、絶縁のとれていない基盤の上に組んだ電子装置のようなものである。少しでも漏電するような装置は満足に動くはずがない。社会機能を保つのは、人間の言葉の信用であり、それは屡々本音の一部を心の中でフィルターにかけることで保たれる。つまり、本音と建前を分離して、互いに建前を大事にすることが社会の機能を保障するのである。

 

 しかし、言葉には常に意味の広がりや曖昧さが伴うので、正確な意味を互いに確認する作業が、混乱を避けるために必要である。そして、その言葉使いの歴史が、言葉を育ててきたのだろう。

 

3)同様のことが国家と国民の関係でもいえると思う。民主主義国家では、国民が国家の最高機関である国会の構成員を選び、その国会からあるいは別途選挙で行政府の長を選ぶ。その行政府の長が政府の上層部の人事を決定する。そして、国民の前に見せる国家の姿(表の姿)は、主に政府が発する言葉とデータである。

 

しかし、裏から見た国家の姿は大きくことなる。政府内部で実質的に多くの企画や戦略策定などの仕事をしているのは、官僚である。官僚に対して情報を持ち込むのは、諜報機関(CIA, M16, KGBなど)や国家戦略研究所などのシンクタンク(補足6)などである。更に手足となる軍隊や警察などの組織もある。政府の発する言葉やデータ(つまり実績)を選挙民は選挙における投票の材料にするが、それらは上記の政府機関全体が作ったものである。 

 

選挙民である国民は、政治の主人公というより客である。選挙で行うのは、政府の出したメニューに対する選択あるいは可否の判断である。その判断が的確であれば、政府はより国民の期待する方向に成長するだろう。それは、客の舌が肥えて来れば、料亭の料理人の腕が上がるのと相似形である。いちいち厨房に行って、内部を見る客はいない。 

 

従って、この国家内部からみた官僚組織、諜報機関やシンクタンク、軍隊組織などが、それらしく成長していなければ、民主主義政治は混乱するだけだろう。アラブの春の失敗は最初から予想されていたはずである。その時点までに、国民からのフィードバックを政府が取り入れるプロセスを経験していなければ、混乱するだけだ。 

 

補足:

1)他の動物では行動の延長上に発する声があるが、それは論理を伴う言葉ではない。論理がなければ嘘も真もなく、表裏も生じない。つまり、唯一人間のみが裏表のある動物である。

2)100円と1ドルの差は、ドルを円に換算しないと取れない。上の例では、言動から予想される行動と実際の行動の差でも良い。単純なことのようだが、本当は簡単ではない。例えば、「拉致問題解決のために全力を尽くす」という言葉と、北朝鮮の国連制裁決議の発議国となるという行動は、言行不一致に思える。つまり、表のことばと異なり、「拉致問題を軽視する」のが現政権の裏だと思う。しかし、行動から裏の言葉に変換するには知識がひつようだからである。

3)最近の性の乱れと同時に草食系と言われる人々の出現の理由は、この文章で自ずと明らかである。

4)下重暁子という元NHKアナウンサーの書いた「家族という病」が非常に良く売れている。

5)3日ほど前、朝のテレビ番組ビビットで金慶珠という怪しげな人が、「セックスもすてき」ということを雑談に紛れていっていた。こんな女に日本の電波が穢されることに不快感を感じた記憶がある。

6)米国のシンクタンクのリストがあった。https://www.spc.jst.go.jp/link/under/list_usa.html

== EOF (編集あり)==

2025年4月23日水曜日

イエズス会所属ローマ法王の逝去で世界は変わるのか?

ローマ法王フランシスコが一昨日の4月21日に死去した。youtuberLizzy channelは、彼は2013年にイエズス会出身者として歴史上始めてローマ法王になり、国際政治における左翼側のグローバリスト勢力を応援してきたことなど、批判的に解説している。https://www.youtube.com/watch?v=2ennCTeux-g

 

 

例えば、法王フランシスコは同性カップルへの祝福を認める(または推進する)など、カトリックをLGBTへ配慮する方向に導いてきたことで、世界中のカトリック教徒の考え方を乱した。

 

また、性犯罪がカトリック教会の中で行われてきたことを大々的に暴露し、世界中で一般人の関心を集めた。(補足1)

 

例えば201725日、ローマ法王フランシスコは、教会の男性聖職者が修道女を性的に暴行する問題が継続中であり、性奴隷扱いしていたケースもあると認めた。これはその組織のトップの行為としてはいささか不自然なほど正直であるため、偽善を感じる人も多いだろう。https://www.bbc.com/japanese/47140076

 

更に202110月3日、キリスト教カトリック教会の関係者による虐待行為を調査する独立委員会のトップは1950年以降、フランス・カトリック教会内で数千人の小児性愛者が活動していたと明らかにした。https://www.bbc.com/japanese/58784328

 

これらの報道で注目すべきは、カトリックが堕落しているということもあるが、それを何故調査のための組織を自ら組み、大々的に公表するのかということである。更に、グローバリストの報道機関トップともいえるBBCが何故、次々とこのような報道をするのかということである。この疑問に対する答えを用意することが本稿を記す動機である。


 

2)イエズス会の法王は宗教のグレートリセットを企んできた

 

上記疑問に対する説得力ある答えは反グローバリストとして活躍中の河添恵子氏によって既に与えられている。河添氏によれば、イエズス会は1543年にカトリックを脅かすプロテスタントと戦うために作られた軍隊的組織であり、キリスト教の一派とは思えないような側面があるという。

 

 

実際、16世紀の信長の時代にキリスト教の布教の形で日本に渡来した。しかしその目的は、南北アメリカ大陸などを植民地化したのと同様に、日本を植民地化する予定だったのだろう。実際彼らは、日本でも婦女子を南方に売り渡して金を稼いでいた。

 

しかし、日本は武士の国であり、高い戦闘能力と賢明なリーダーを擁していた。時の権力者だった豊臣秀吉は、イエズス会にとりこまれた伴天連大名を成敗するとともに、イエズス会の者たちを日本から追い出した。https://president.jp/articles/-/59341?page=1

 

河添氏によれば、イエズス会は世界で戦争を引き起こす活動をしてきており、カトリックの一派というよりも、カトリックや世界の宗教を破壊するために活動をしてきたと言っている。(補足2)このイエズス会に対する河添氏の考え方が、上記疑問の答えになっているのである。


つまりイエズス会所属の神父がバチカンを乗っ取り、一部の神父の性犯罪をまるでカトリックの本性のように公表し、BBCというグローバリストのスポークスマン的報道機関によって世界に向けて大々的に報道したことの目的は、カトリックを破壊することであると分析される。

 

通常組織のトップは、組織内の不祥事を拡声器で発表するようなことはしないで、その組織の原点に立って再建に動く。カトリックの原点とは、イエス・キリストである。彼らはイエス・キリストの教えに反して、ユダヤの律法を執行するがごとき対応を行ったのである。(補足3)

 

及川幸久氏のローマ法王フランシスコへの評価も引用する。https://www.youtube.com/watch?v=_GoQv_RnHUk

及川氏は、youtube動画でローマ法王フランシスコはキリスト教をリセットする(つまり潰す)活動をしてきたと言っている。そして、経済をリセットすると言っていたクラウス・シュワブのグレートリセットを支持してきたというのである。流石、16世紀から植民地支配の尖兵となってきたイエズス会の方だということになるのだろう。

 

因みに、ローマ法王死去の翌日、クラウス・シュワブは世界経済フォーラム会長からの辞任を表明した。このことは、ローマ法王フランシスコとクラウス・シュワブの深い関係を象徴する出来事である。https://www.youtube.com/watch?v=_GoQv_RnHUk&t=809s
 

今後世界がグローバリストの企みを挫く方向にすすむかどうか注目したい。トランプがあまりにも急激にMAGAの方向に急ぐと、この流れはゼンマイバネの逆回転のようにグローバリストに味方する可能性もあるだろう。トランプにはもっと賢明になってもらいたい。トランプの時間軸と世界史の時間軸は桁が違うのだ。


 

補足:

 

1)それら性犯罪が個人的な犯罪だったなら、それは教皇自らが告発する形でBBCを通じて世界に宣伝するほどのことでないかもしれない。つまり、警察官による窃盗事件などもいくらでも存在する。この教皇公表とBBCの報道は、それら犯罪がカトリックという組織に固有な、あるいは組織的な犯罪のように人々に思わせる可能性が高い。

 

2)第二次大戦後の世界の戦争の多くは米国によって引き起こされてきたのだが、その背後に米国のグローバリストであるロックフェラー家、ロスチャイルド家、モルガン家などが居たと考えられ、彼らはほとんどイエズス会の所属だというのである。また、実行部隊の中心である米国のペンタゴンの中枢にいるイエズス会所属者がその力を発揮していると言う。https://www.youtube.com/watch?v=i21c4NYS5Yg


3)そのヒントはヨハネによる福音書8章にある。弟子たちに教えていたイエスのところにユダヤの律法を信じる者たち(つまりユダヤ人)が、姦淫をした女を連れてきて「モーセは律法の中でこのような女は石で打ち殺せと命じましたがあなたはどう思いますか」と言った。イエスは罪を憎みながらその女を赦したのである。 https://www.wordproject.org/bibles/jp/43/8.htm

===(17:00編集;4月24日午後、織田信長=>豊臣秀吉に修正。)===

2025年4月19日土曜日

トランプ革命と米ドル基軸体制についてのまとめ

トランプ大統領の関税政策は、ドル基軸通貨体制の崩壊への備えだという考え方が正しいだろう。ドル基軸体制の維持は、グローバリストたちにとっても、米国を利用して世界帝国を実現するまで必須である。ただ、彼らは世界支配が完了すれば米国も米ドルも不要である点が、トランプの姿勢とは根本的に異なる。

 

1)トランプはドル基軸体制崩壊前に米国を外国に依存しない強大な独立国に再建しようとしている

 

篠原信と言う方がJBpressという雑誌に“同盟国にも関税かけ軍費増大を求めるトランプ、全ては「ペトロダラー・システムの終焉」を見越しての判断か”という記事を著している。ここで、ペトロダラー・システムとは石油決済を利用した米ドル基軸通貨体制を維持するための体制である。https://news.yahoo.co.jp/articles/

 

米国はグローバリストたちが世界支配のための活動で蓄積した36兆ドルという莫大な国債残高をもっている。そしてその1/4は外国保有である。それらはドル基軸体制でのみ特別な意味を持つが、ドル基軸体制(ペトロダラーシステム)が崩壊すれば、その時点で価値がかなり下落する可能性がある。(補足1)

 

 

従って、米ドル基軸通貨体制が崩壊する危険性を市場が感じると、米国債とその他の米ドル建債券が売りに出され、米国は金利高騰からドル安そして輸入物価の高騰という困難を迎えることなる。最近のトリプル安(株安、国債安、ドル安)は、その危険性の暗示というか、既にその兆候が現れているかも知れないと当事者は心配しているだろう。

 

通常は、国債と株は資金を分け合う関係にあるので、同時に下がることはあまりない。トリプル安が持続すれば、それは米国売りを意味しており、米国にとっては国難だろう。しかし今回は後に述べるように一過性のもので本当の米国売りは始まっていないだろう。(補足2)

 

トランプはドル基軸体制下でグローバリストたちが作り上げた世界一の消費市場の米国を利用して、それが崩壊しないうちに強国米国を再現しようとしているのである。一方、グローバリストたちはもともと無国籍なので産業の空洞化とか貧富の差の異常な拡大等が発生しても大きな問題ではなく、米国が一つの独立国としての体を喪失することも顧みず世界の政治支配を急いでいるようだ。

 

一方米国民を大事に考えるトランプ大統領は、ドルの価値が崩落しない内に独立国に必須の物品等を輸入に頼らず、自国で作る体制を整えるべきだと考え、その方法として相互関税を考えたのだと考えられる。(補足3)

 

米ドルを脅かすのは差し当たりBRICS通貨かもしれない。その創生の中心と考えられているのは実質経済力が米国に勝るとも言われる中国であり、米国が最大の貿易赤字を出しているのは貿易相手国である。トランプ関税が中国を第一の対象とするのは当然である。(https://www.youtube.com/watch?v=CHY2dKlNaol)

 

しかし、基軸通貨を作るのは世界から高い信用を得なければならず、大変困難な道であるので、米国が世界随一の覇権国家である限り、しばらくは経済活動に便利に整備されている米ドル基軸体制の崩壊はないだろう。


 

2)グローバリストたちによるペトロダラー創成と米国の世界覇権戦争

 

米国は20世紀の後半から世界のリーダーとして世界中で軍事オペレーションを展開してきた。それらのうちイラクやリビアでの戦争は、米ドルを石油決済専用通貨としてサウジアラビアに約束させ、その体制に従わないようなアラブの政権転覆のための戦争だと考えられてきた。(補足4)それにより金本位制を放棄した後も、米ドルが国際決済通貨としての地位を保つことになった。

 

また、ソ連崩壊後のカラー革命への米国の関与は、ヨーロッパでの米国の覇権をより確実なものとするためだったと解釈される。しかし、米国の戦争に対するこの分類はおそらく表面的であり、イラクやリビアでの戦争も東欧でのカラー革命のような戦争も、根は同じなのだろう。

 

最近、ヨーロッパ議会で行った講演でコロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、ソ連崩壊後の東欧でのカラー革命(ウクライナのオレンジ革命を含む)、イラク、シリアを含む中東の戦争、スーダン、ソマリア、リビアを含むアフリカの戦争はすべてアメリカが主導して引き起こしたと話している。(補足5)

 

それは、イデオロギーからではなく、東欧各国の顧問などを務めた自分の体験からの認識であると話している。サックス教授はウクライナ戦争の経緯も詳細に語っており、それはこれまで本ブログサイトで書いてきたこととほぼ同じである。

 

https://www.youtube.com/watch?v=hA9qmOIUYJA

 

ジェフリーサックス教授は、中東での米国の戦争は全てイスラエルにとっての理想の中東を建設するために、イスラエルロビーとネタニヤフが米国にさせた戦争であると上に紹介の講演で語っている。つまり、イラク戦争などは米国をイスラエルの代理に採用した代理戦争だというのである。中東での戦争は、要するに米国とイスラエルの覇権を確立するためのもので、ペトロダラーは重要なその産物なのだろう。

 

要するにイスラエルとネオコンなどの支配する米国は一つの権力の二つの顔なのだろう。このような米国の過去の国際政治は、民主党の政権であっても共和党の政権であっても同じである。やはりグローバリストと米国内のイスラエルロビー、そしてイスラエル国のシオニストたちとは、20世紀を通して関係が深まったと想像される。

 

つまり、ドル基軸体制を今後も維持し、最終的には世界帝国を建設するために米国を利用するためである。ここで米国を利用するのは、元々心理的には無国籍のグローバルエリートの金融資本家たちを表に持つ、上に書いた巨大で強固なこれまでの米国とイスラエルの共同体的組織なのだろう。彼らは「通貨を牛耳るものは世界を牛耳る」を金科玉条とする人たちである。

 

その米国と完全に対立する姿勢のトランプは、やはり反グローバリストなのだろう。本ブログサイトではずっとそのように評価してきたのだが、最近になって大統領選後の組閣やウクライナ戦争におけるマルコ・ルビオとウクライナのサウジでの会見などを見て、その評価が揺らいできたのだが、やはり間違いないだろう。

 

彼らグローバリストが安心して気を抜ける瞬間は世界帝国が完成したときである。それを目指したレーニンとトロツキーは、ロシア(厳密にはジョージア)の現地人スターリンにソ連を掠め取られてしまった。今回の戦いは二度目の世界帝国への挑戦である。それを掠め取ろうとしているのがトランプだと言えるだろう。


 

3)トランプはグローバリストが占拠している偉大な米国を取り返すつもりだろう

 

トランプはイスラエルの味方で、ネタニヤフとも親密な態度をとってきた。従って、これまでのグローバリストたちが地下深くから指揮した米国の政治を完全否定する訳ではない。トランプは、多くのドル資金と犠牲者を出すこれまでの戦略を批判しているが、それは多くの犠牲と資金を無駄に使ってきたと考えているのである。トランプの公約のMAGA(偉大な米国を建設しよう;米国第一)は、世界帝国の実現と隣り合わせである。

 

トランプは民族主義者というよりも、上の動画でジェフリー・サックス教授が言うように帝国主義者に近いと思う。トランプは表舞台で覇権主義的である点が、グローバリストたちとは異なる。そしてトランプの目的も、アメリカを強力にするのは同じだが、世界帝国の実現までアメリカを引っ張ることは考えていないだろう。つまり米国人のための主権国家アメリカの確立へ舵を切ると思う。

 

これまでの米国の政治により、世界中の国々には反米勢力が一定の政治勢力として存在する。そして、既に上に述べたように世界経済における米国の優位性が減少している現在、世界の金融における米国のドルの覇権も長くは持たない。トランプは仮にドルが基軸通貨でなくなっても、大きなドル安にはならないように国際収支及び財政の黒字化を考えて、DOGEによる政府効率化と関税による製造業の米国内回帰を目指しているのだろう。

 

グローバリストたちは通貨と情報の支配から世界帝国を築く努力をしている。一方トランプは、米国という世界一の消費市場を利用して、米国に製造業を呼び戻し強力な米国の再建を目指している。トランプは、グローバリストの世界帝国樹立の企みとは一線を画しており、彼らのホステージとなっている米国を米国民のために取り戻すことにした。

 

地球は巨大であり、このままでは地球温暖化で人が棲めなくなるという話や、パンデミックによる被害を最小にするために世界連携が必要などという話などはグローバリストたちが作り上げた物語である。それらを解決するためとして、世界大戦という悲惨な出来事(グレートリセットによる)を経て、世界を統一するというのがグローバリストたちの企みである。

 

そんな必要などない。実際、地球には人類が発生させる二酸化炭素を吸収する能力を十分持っているのだ。トランプもそう思っているだろう。

 

 

 

補足:


1)一般に国債(国の借金証書)は国民の資産となり、現在の通貨制度の下では金と同様に中央銀行の準備金の根拠を構成するも考えられる。基軸通貨発行国であり世界の覇権を握る米国の国債は、他国にとっても確かな国家の準備金としての意味を持つ。基軸通貨発行権を失うと、そのような意味を失うので、その分価値が減少する。

 

2)長期国債が売られているとしたら、おそらく中国が売っているのだろう。中国は人民元を支えるためにドルを必要としているためである。日本の農林中金が大きな損失を出し、その補填のために米国債を売却したという話もある。これが原因で、トランプは最大の米国債保有国の日本に相当の配慮をしているのかもしれない。https://www.cnbc.com/video/2025/04/14/japan-not-china-might-have-incentive-to-sell-us-treasury-holdings.html

 

3)独立国に必須のものとは、国民が日々消費する食料とエネルギーが先ず考えられる。その他、例えば戦争などが発生した場合、基礎的工業製品(例えば鉄やアルミなどの必須材料や基本的機械の製造技術、その材料としての半導体など)が手に入らない場合、国内産業が止まってしまい、民生品だけでなくミサイルや戦闘機まで国内で製造できなくなる。それらのものも自前で用意できなければならない。

 

4)近代貨幣制度の出発点は、金(ゴールド)の借用証書を通貨とする制度だが、その金本位制は世界経済の膨張とともに成立しなくなった。それがニクソンショックである。そこで彼らは、世界の覇権を米国に握らせることでドル基軸通貨体制を維持するしかない。そこでサウジアラビアを取り込んでペトロダラー体制を作ったのだ。

 

5)この動画での講演内容は、長周新聞により日本語に翻訳されているので、私は主にそちらで読んだ。https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34317

https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34414

 

===EOF===

2025年4月16日水曜日

トランプ関税はドル基軸通貨体制崩壊への備えである

米国トランプ政権は、米国に製造業を取り戻して貿易赤字を解消するために、相互関税という強引な方法を考えた。全ての国を対象に輸入超過がゼロであるべきと考え、輸入超過の割合に一定の係数を掛けて輸入関税率とするという乱暴な方法である。

 

しかしその赤字には、世界を一つの米ドルという決済通貨圏として、円滑な貿易を維持するためには必要だったという本質的理由が存在する。そのお陰で、世界の中で最も安価に製造できるところで商品を製造し、最も必要とするところで消費するというグローバル化経済が成立し、世界経済は飛躍的な発展を遂げた。

 

つまり、各国が決済通貨としての米ドルと、米ドルに容易に変わりえる金融資産を一定量持つことがグローバル経済には必要であるが、それは米国の赤字によって作られているのである。時間がたてば、米国以外の国、特に途上国などは発展するが、米国自身はその赤字に苦しみ始め最終的には米国経済は崩壊の道をたどることになる。https://www.youtube.com/watch?v=O3tx4D0wjMY

 

 

この米国が抱えている罠は、トリフィンのジレンマ(補足1)と呼ばれ、20世紀の中頃にベルギー生まれの米国の経済学者ロバート・トリフィンによって指摘されていた。

 

実際、世界経済の中での米国の相対的地位は低下し、このままでは米ドルが国際決済通貨としての地位を失う可能性が出てきた。昨今、BRICS通貨やデジタルコインなどの米ドル以外の決済通貨ができる可能性が議論されるようになり、そのような事態があり得ないとは言えなくなってきたのである。https://www.youtube.com/watch?v=CHY2dKINaoI

 

 

もし仮に突然米ドルが国際決済通貨でなくなったとすれば、米ドルと不可分の関係にある米国債の市場価値が暴落し、米国経済が急激なインフレなどの危機を迎えることになる。

 

この事態を避けるために立ち上がったのがトランプである。相互関税というトンデモないと世界中が騒いでいるが、以上のように深刻な真実がその理由として存在するのである。米国は、今は発展した元途上国の中国や日本から製造業を取り戻したいのである。

 

この米ドルを基軸通貨として、その恩恵を発展途上国とともに受けてきたのは、金融エリート達つまりグローバリストたちである。つまり、トランプ関税もグローバリストとの戦いの一つなのだ。

 

終わりに: 同じ趣旨の話を4月11日の記事に書いていますので、それも参考になると思います。

 

 

 

補足:

 

1)ベルギーの経済学者ロバート・トリフィンによれば、基軸通貨国(米国)は、世界の流動性(つまり資金の流れ)を支えるために経常赤字を出し続けなければならないが、赤字が続けばその通貨への信認が揺らぎ、最終的にその地位が不安定になる。これをトリフィンのジレンマという。https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ri/A03155.html

 

(4月16日、表題を変更)