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2025年3月31日月曜日

トランプ政権は世界をかき混ぜるだけなのか?

1)ウクライナ戦争は拡大して第三次世界大戦に発展するのか?

 

米国大統領がトランプに代わったのでウクライナ戦争が近いうちに終わるという、“反グローバリスト”の人達の期待は若干甘かった。そして、“グローバリスト”たちの言う“グレートリセット”の緒戦とも言えるこの戦争は、元々の危惧の通り、世界大戦へ拡大する可能性が出てきた。(補足1)

 

この戦争は、2008年のオレンジ革命から2014年のマイダン革命など、米国ネオコン政権によるウクライナの反ロシア化と東欧へのNATOの拡大が背景にある。その経緯の中でウクライナ東部に住むロシア語を話す人たちの大量殺害などもあり、これらがロシアに対する挑発となって始まったと言える。(補足2)

 

トランプは、この戦争を早期に停戦させると発言し米国大統領となった。反グローバリストたちは、トランプがグローバリストの戦略を潰してしまうだろうと期待して、“トランプ革命”を見守った。(補足3)それがグローバリストの予定路線に戻ったのは、米国務長官の「ウクライナ戦争は米国とロシアの代理戦争である」との発言からである。

 

トランプ政権の国務長官がこの戦争への米国の関わりの本質を「ウクライナ戦争は、ウクライナを米国の代理とした米露間の戦争である」と公的に発言したことで、トランプは停戦仲介の前にその覚悟の程を示すように要求されたことになる。つまり、気楽に不条理に支配された戦争をやめさせるという第三者的関与が出来なくなったのである。
 

この代理戦争を始めた民主党政権の政策を改めるという具合に、自国の現代史の問題として政策変更を明確に示す必要がある。米国のこれまでの国際政治の誤りを認めて政策変更をするか、或いは米国ネオコン&グローバリストの主張通りにこの戦争を継続するかの選択に追い込まれたのである。

 

トランプにとって、自国の国際政治上の誤りを認めることは極めて困難だろう。トランプが剛腕であるものの単なるポピュリストであれば、当然後者を選び早期停戦の目論見は完全に外れる。もしトランプがグレートリセットの企みと戦う英雄なら、最初にその困難なことをやり遂げた後に、現実的なウクライナとロシアの関係を、EU諸国の反対も押し切って実現するだろう。それは世界の主権国家体制を守ることになる。
 

残念だが、トランプはMAGAという時代遅れの思想を本気で具体化しようとするポピュリストだったと、歴史において評価される可能性が大きいというのが現在の私の考えである。ウクライナ戦争が米国に多額の出費を強いて来たという理由が、トランプがこの戦争の停戦を目指す唯一の理由としてあったようだ。

 

多額の出費故にウクライナ支援から遠ざかる米国を横目に見ながら、フランスと英国の左派政権は、今週にもウクライナに軍事顧問団を派遣する可能性が高いと言われる。これでトランプの早期和平の目論見は崩れた。https://www.youtube.com/watch?v=jlfTt1EWhYo

 

 

EUVon der Leyienは、米国がNATOから遠ざかるのなら、EUがその肩代わりをすると言いだした。それと同時にフランスのマクロンは、EUの核の傘はフランスが受け持つべきだと言い出した。政治のグローバリズムの実行、つまりグレートリセットは、主権国家主義の雄であるロシアを弱体化することから始まるというのだろう。


 

2)トランプの早期和平失敗の経緯

 

228日のトランプとゼレンスキー会談の後、米国は前政権時に始まった対ウクライナ軍事支援を停止し、その後CIA長官がウクライナとの諜報情報の共有を「一時停止」するよう命じ、その後短期間に停戦に進むかと思われた。しかし、余りにもロシア有利の形での停戦から和平に進むのは、西側の無様な敗戦ではないかという意見が米国に現れたようだ。

 

その言葉がトランプにも敏感に響いたのようだ。長年の米ソ冷戦で作られたロシア悪者論は、米国市民の心中深く残っている筈である。トランプはあくまで中立の立場からウクライナ戦争の停戦仲介に臨まなければ、ほぼ固まった米国民のトランプ応援の基盤が破壊される可能性があるからである。

 

その微妙な雰囲気をマルコ・ルビオ国務長官も敏感に受信したようだ。そしてルビオは「トランプ大統領は、この紛争が長期化し膠着状態にあるとみており、率直に言って、これは核保有国、つまりウクライナを支援する米国とロシアの間の代理戦争だ」とフォックス・ニュースに語ったのである。
 

この発言内容はこの戦争の当初から知られていた事実であり、ロシア側(Dmitry Peskov報道官談)も同意した。ロシアのプーチン政権もウクライナ侵攻の動機の正統性を米国も認め、これで一挙に停戦かと思ったかもしれない。

https://www.themoscowtimes.com/2025/03/06/rubio-calls-ukraine-war-proxy-conflict-between-us-and-russia-a88265


しかし、ルビオ国務長官は別の思惑、つまり、ウクライナ戦争は米国とロシアの代理戦争なので、米国とウクライナはもっと強く連携しなければならないという方向にこの事実を利用しようと上記発言をしたようだ。トランプには「ウクライナを代理に立てた米国とロシアのどちら側の味方ですか?」と聞こえただろう。


サウジアラビアでの米―ウクライナ協議には米側代表としてマルク・ルビオ国務長官が参加したことは、その時点でトランプの早期和平の試みが失敗したことを示している。その後発表された内容の薄い停戦合意発言から、これは代理であるウクライナと雇用主である米国との作戦会議となったと以前のブログに書いた。

 

マルコ・ルビオ氏は、国務長官への就任を野党側からも支持された人物であり、ロシアと中国を嫌う人物として知られていた。その国務長官をウクライナとの協議に派遣したことは、トランプの姿勢変化と見ることができる。そこにイスラエルロビーの働き掛けがあったかもしれないと前回ブログに書いた。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12889749237.html

 

トランプは、この戦争の歴史を背景に、具体的なプロセスとしての停戦方法を持っていなかった可能性が大きい。トランプが短期間で停戦可能だと言ったのは、単に彼がグローバルエリートたちとは離れた存在であり、且つ上記のグローバリストの企みと歴史的経緯とを十分には考察していなかったからだろう。

 

トランプが停戦に熱意を示したのは、彼の心の内にノーベル平和賞狙いのようなポピュリストとしての目的か、米国側の出費削減の目的があったからだろう。国際社会への米側の責任或いは米国の貢献という類のレベルの高い期待をトランプ政権に持ったのは間違いなのだろう。

 

実際、トランプはNATOや日米や日韓等の軍事同盟関係を軽視することで、米側の国際政治への関与を減らそうとしている。NATO諸国や日本への軍事費の対GDP増加を要請する発言も、単に米国の出費削減を考えての発言だろう。

 

米国がNATOの中心としての地位を放棄する姿勢をとれば、ヨーロッパでの政治的影響力を無くすことになり、フランスや英国がその穴埋めに動くので、上述のように仏マクロンや英スターマーがウクライナ戦争への関与を強め、和平が遠ざかるのは当然ではないのか。

 

これでトランプの早期和平の目論見は崩れた。トランプの高い評判は、反グローバリスト側でも崩壊する可能性が高くなってきただろう。


 

終わりに:

 

世界は米国を中心として複雑なネットワークを形成しており、米国の態度急変はそのバランスを崩す可能性がある。今まで世界のリーダーとして米国は振る舞い、その負担とともに恩恵を米国は受けてきたことをトランプは知らないのだろうか。

 

そのリーダーシップを放棄すれば、世界は次の体制に移るまで混乱を来す可能性が大きいことを、トランプは知らないのだろうか。

 

米国が世界政治のリーダーシップを放棄すれば、世界のパワーポリティックスのバランスが崩れる可能性が高くなる。同様に、米国が世界経済でのリーダーシップを放棄すれば、世界は不況に陥る可能性が高くなる。トランプの世界各国との貿易において米国は損をしてきたという理解は非常に浅いと思う。


鉄鋼とアルミ、自動車に対し25%の関税をかけることで、それら産業における米国内での雇用を確保しようとしているが、それは余りにも短絡的過ぎるように思う。米国内でそれら産業が停滞したのには、それなりの理由が他にある筈である。


世界の経済は、一つの複雑なシステムとなっている。それにも関わらず、夫々の品物の生産と分配を個別に一次元問題として設定するトランプの思考は単純過ぎる。トランプ関税は、世界経済には大きなマイナスであり、米国内でも物価を上昇させるなど、米国市民の間からブーイングが起こる可能性が高い。実際、日米を始め、世界の株価は急落している。

 

 

補足:
 

1)世界のグローバルエリートたちは、自分たちのために地球環境の保全と人口削減を考えている。その表の機関として世界経済フォーラムが存在し、その定期総会であるダボス会議でWEFの会長であるクラウス・シュワブはグレートリセットなる提言を行った。グレートリセットとは、現在の経済システムである株主資本主義を廃止し、全ての法人組織を社会全体の保有とする改革=世界の共産革命を意味する。そしてこのグレートリセットは、レーニンとトロツキーという二人のユダヤ人革命家がロシアで実行し失敗した革命に続く、第二の世界共産革命の企みである。これを支持するグローバルエリートたちとその周辺をグローバリスト、この革命に反対する人たちを反グローバリストと言う。

 

2)このような緩衝国的な地域をめぐる争いは、日清日露の二つの戦争にも共通している。ウクライナ戦争をこの構図で見ない日本人が圧倒的多数であるのは不思議である。それは当ブログサイトで何度も書いたように、マスコミが米国ネオコン政権のプロパガンダ機関であった結果である。

 

3)トランプは大統領就任後に素早く米国政府の無駄を無くすという政策で、米国のグローバリストたちが国際政治に関与するための機関としてきたUSAID(米国国際開発庁)の整理に着手し、それが2008年と2014年のウクライナでの親ロシア政権を潰すための活動資金を提供したこと等を明らかにした。それらの活動には米国務次官補やユダヤ系資本家であるジョージソロスが大きく関与したことを明らかにした。

 

(翌早朝編集あり)

2025年3月23日日曜日

JFKファイル公開がウクライナ戦争終結を促進するかも?

東大先端研の小泉悠准教授がCOURRiERという雑誌の取材に応じ、ウクライナ戦争停戦交渉の今後について答えた。その「プーチンはいまのトランプとは停戦に応じない」と題する記事が、ヤフーニュース上に転載されている。(補足1)https://news.yahoo.co.jp/articles/36dc0c0be0ccaef2ac4b4b892bb2baef59679bc6 

 

小泉氏の分析は、本ブログ筆者の解釈を交えて整理すると以下のようになる:

 

トランプ大統領の停戦方針が報道されてから3月上旬までは、トランプはロシアの思惑通りの停戦案で仲介を進めるとおもわれたが、3月11日のサウジアラビアでの米ウ高官会議を境にトランプ政権の方針が変化した。

318日のプーチン・トランプの電話会談もその延長上で行われ、トランプはプーチンが言うウクライナ戦争の根本的原因の除去に応じる訳にはいかなくなったのである。
 

ここで根本的原因の除去とは、米国ネオコン政権がロシア潰しの前線基地化したウクライナを、ロシアの脅威とならないように改質することである。別の表現では、ロシアの脅威とならないようにウクライナをマイダン革命以前の状態に戻すことである。(補足2)

 

トランプ政権が3月11日以降それに応じられなくなったので、ロシアとウクライナ両国は何か重大な変化があるまで、しばらくは戦場での解決を目指す以外にないだろう。(補足3)

 

トランプ大統領のウクライナ戦争の終結に向けた姿勢がサウジアラビアでの米ウ会談の後に変化したとの上記指摘だが、その変化については本ブログサイトでも313日と15日の記事で言及している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12889978781.html

 

このトランプ政権の姿勢変化は、グローバリストからの新しいタイプの圧力が、名ばかり共和党員(Republican in name only; RINO) と言われるマルコ・ルビオ国務長官を経由してトランプに働いた結果だろう。

 

ただ、グローバリストとの闘いはトランプが大統領に就任する動機でもあった筈であるので、そこからの圧力は予想していた筈。何か想定外の新しい圧力があった筈と推理すると、恐らくその中核が直接的且つ強力にトランプに圧力を掛け始めたのではないだろうか。彼らにとってもこの戦いは現在正念場となっているからである。

 

その中核とは、恐らくトランプも逆らえないイスラエルロビーの可能性が大きい。そのように考える理由を次のセクションであるJFKファイルの公開のところで考えてみる。トランプも、ケネディー暗殺以降の全ての大統領と同様に、イスラエルロビーには逆らうことがなかなか難しいのである。

 

 

2)JFKファイル公開は事態を変えることが出来るだろうか?

 

35代米国大統領だったJ. F. ケネディが暗殺された事件がオズワルドの単独犯行でないことはもはや常識である。CIAによって計画されたとみる人が多いが、今回のJFKファイルの公開後にはイスラエルのモサドによる犯行説が有力となってきた。 

 

その場合に考えられる動機は、ケネディがイスラエルの核武装に同意しなかったことと、ユダヤ系金融資本が支配するFRBなどの廃止も考えていたことである。(補足4)この件が以下の動画でかなり詳細に語られている。

 

https://www.youtube.com/watch?v=nP0XVpho4vY  (<= 視聴にはここをクリックする)

 

大統領暗殺の可能性が、事件前にロシアから米国に注意喚起されたことも明らかにされ、このモサドとCIAによる犯行説を補強することになった。ロシアが諜報活動の中でケネディ暗殺の企みに関する情報を得ることは、米国内で完結する犯行では考えにくいからである。

 

そして、既に書いたように、JF. ケネディ暗殺後の歴代大統領の全てが不思議とイスラエルロビーの言うがままに動くことになったことも、この説を示唆する。

 

もし米国の金融エリート、そして米国に存在するイスラエルロビーが、モサド及びCIAを動かしてケネディの暗殺をさせたとする説が世界中に発信されたなら、彼らグローバリストとその企みが陰謀論としてではなくインパクトを伴って世界中の人々の頭に叩き込まれることになるだろう。

 

それが、ウクライナを軍事支援する欧州各国の世論と政権の姿勢を変化させ、当初のトランプが考えた通りの和平案が再浮上する可能性も出てくるだろう。ウクライナ戦争は、21世紀初頭から始まったグローバリストとその中核にあると考えられるシオニストたちによるロシア潰しの作戦と考えられるからである。(補足5)

 

グローバリストの世界帝国建設の計画に対して、先進諸国の国民の多くが現実的危機であるを感じることが、ウクライナ戦争や中東での戦争を第三次世界大戦へ発展させないために必要である。


 

補足:

 

1)元のクーリエ誌の記事は有料である。恐らく一定期間後にはヤフーのこの記事は削除されるだろう。https://courrier.jp/news/archives/395446/ 

 

2)マイダン革命とは、オバマ政権下の2014年、米国国務省の国務次官補だったビクトリア・ヌーランドらによって工作されたウクライナのクーデターである。ロシアと友好関係を維持することでNATO諸国とは一線を画していたヤヌコビッチ大統領をウクライナからロシアに追い出す為に、ウクライナのネオナチグループと言われるアゾフ連隊などによる暴動や反ヤヌコビッチの大規模デモを支援した。その資金が、米国国際開発局(United States Agency for International Development;USAID)を通して国際支援の名目で支出されていたことが最近のトランプ政権によって明らかにされた。

 

3)現在そのようなウクライナを実現するには、東部4州の自治或いは独立を明確にすることやクリミヤでのロシアの地位を確保することと、ウクライナの中立化、つまりロシアと欧米との緩衝地帯とすることの確約が必須だろう。

 

4)ケネディは、ユダヤ系私銀行であるFRBの発行する米ドルを廃止して、政府発行通貨を米国紙幣とすることを考え、政府紙幣の発行を始めた。暗殺された後、政府紙幣は全て回収された。

 

5)ただ、イスラエル国内もこの二派が存在しており、ネタニヤフ政権の中にその亀裂が入っているというのが、私の考えである。

 

===翌朝編集あり ===

 

2025年3月15日土曜日

トランプは短期間での停戦実現のためにマルコ・ルビオを解任出来るか?

今回のマルコ・ルビオ米国務長官がサウジアラビアに出向いて、ウクライナ側高官と協議し作り上げた "ウクライナ戦争停戦案”を、トランプ大統領は本気になってロシアのプーチン大統領に突きつけたようだ。それはトランプが隠れネオコンだったのなら分かるが、そうでなければ彼はそれほど緻密に考えるタイプではないということになる。(以下敬称略)

 

今朝、国際政治に関するYoutuberの及川幸久氏が、この停戦案に対するプーチンの声明の内容について報じている。https://www.youtube.com/watch?v=zB8w4X1N2JA

 

 

プーチンは、言葉を慎重に選びながらトランプに直接話し合って停戦交渉を練り直したいと持ちかけており、トランプの本当の意思を確認したいと考えていることが分かる。及川氏がプーチンの声明の要約を示しているので、その趣旨を以下に記す。

 

その中でプーチンは、トランプの紛争解決に向けた努力に感謝すると述べたあと、「この紛争を平和的手段で終結させるというアイデアには全面的に賛成であるが、我々はこの停戦が長期的な平和につながり、この危機の根本原因を排除すべきという前提に立っています」とロシア側の停戦に向けた姿勢を述べている。

 

ここで、今回目指す停戦交渉の背景について少しまとめてみる。今回の交渉と両当事国の姿勢を評価する為には、戦争中の両側に戦闘能力がかなり残されているという情況下での停戦交渉であり、降伏文書への署名とは全く異なる点を念頭に置かなければならない。

 

つまり、ロシア側が警戒しているのは、2014年と2015年の二度にわたって行われたミンスク合意が失敗に終わったことである。

 

ミンスク1では欧州安保協力機構が停戦監視にあたったが、数か月で合意が破られたこと、更に2015年のミンスク合意2は、ウクライナを支援する西側とウクライナの時間稼ぎに使われ(西側諸国も認めている)問題が深刻化したことなどから、プーチンは同じ轍を踏みたくないのである。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-02-18/R7I2ZBDWX2PS01

 

今回のプーチンの声明は、停戦する前にこれらの可能性の除去が大事であるという意味のものであって、論理的であり、国際平和実現の視点で当然である。

 

ウォールストリートジャーナルは、ウクライナは停戦交渉につくがプーチンにはそのような気持がない(表題:Ukraine Turns Tables With Cease-Fire Proposal but Putin Has Little Incentive to Sign)と、プーチン批判を行っているので、このジャーナルはネオコン万歳の新聞であることを白状しているのである。

https://www.wsj.com/world/ukraine-turns-tables-with-cease-fire-proposal-but-putin-has-little-incentive-to-sign-353464a5

 

他のメジャーな新聞も、確かめてはいないが、どうせ同じトーンだろう。

 

ミンスク1では停戦合意が三ヶ月しか持たなかったのは、停戦の実現とその確認、更にその継続には相応の技術的問題をクリアできていなかったからである。そこでプーチンが確認したことは、

 

1.2000㎞の戦闘前線で停戦実施は相当困難であること、2.十分な停戦を監視するシステムが必要であることであり、これらの問題解決のためにトランプ大統領に協力すると言明した。

 

更に、同種の紛争が将来にわたって発生しないようにするには、この紛争の根本的な原因が除去される必要があり、それについてもトランプ大統領と議論したいと述べている。

 

そして根本原因としてプーチンがあげたのは以下4項目である:

1.NATOをウクライナに拡大しない;2.ウクライナの完全な「非武装化」と「非ナチ化」;

3.東部のロシア語圏がウクライナから独立;4.生物兵器開発への取り組み(を止める)

 

これらについて十分な取り組みがなされなかったことが、まさに今回のウクライナ戦争の原因である。原因を取り除かなければ、紛争は終わらない。原因を取り除くには、少なくとも一方の当事国の譲歩か、消滅(完全敗戦)が必要である。

 

それはロシアのウクライナ侵攻前と後で何回もブログ記事に書いた通りである。
 

これらのことを考えると、この戦争を短期間に終了するには、トランプ側に決断が必要である。その一つは、ネオコンであることが判明したマルコ・ルビオの国務長官解任だろう。

 

(以上速報的に書きました;18:30 表題の部分修正あり)
 

2025年3月13日木曜日

米国がロシアに送った30日暫定停戦案の意味


トランプ政権は、マルコ・ルビオ国務長官らとウクライナ首脳との会談の後、対ロシア戦争に対する一時停戦の申し入れをプーチン大統領に送ったようだ。この提案にはいくつもの不思議且つ不確かな点が存在すると、国際政治に関するyoutuberの及川幸久氏が、配信した動画の中で語っている。
https://www.youtube.com/watch?v=nLswemCBHW0

 

 

協議に長時間を要したにも拘らず、共同声明で公表された停戦案はウクライナ側の最初の案にあった空と海だけの部分的停戦を、“全てにおける一時停戦”に変更しただけのものである。それだけに6時間の議論を要した筈がないので、それ以外の公表されていない条件があるのかもしれないと、及川氏は指摘する。この公表されただけのものでは、まともな停戦案になっていないと言うのである。

私が感じたところを言うと、今回の会議は停戦協議の名を借りたウクライナと米国の間の対ロシア作戦会議であった可能性が高い。不利な情況下では停戦したくないので、長時間の会議ののち、建前だけの「停戦の意志あり」という言葉をロシアに送ったのだろう。

会議終了と同時に、米国はウクライナへの軍事支援と軍事情報の貸与を再開したことも、この解釈の妥当性を示している。そして、ウクライナ支援の姿勢を明確にした今回の米国新政権の姿勢を、EU委員長、フランス大統領、そして英国首相などは高く評価している。
https://jp.reuters.com/world/ukraine/ULAXICMKOBMRBHTGJJ5M5X7NZI-2025-03-11/

一方、ロシアのプーチン大統領は数か月前に、「和平交渉の目的は、短期的な停戦や、紛争継続を目的とする軍の再編成や再軍備のための休息であってはいけない。当事者の正当な利益に基づく長期的和平でなければ」と語っているので、このままでは停戦に合意する筈はない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f6e21816ef9dc6607d1815b4f4368fb8b8b0cb89?page=2


2)マルク・ルビオによるウクライナ戦争に関する公式定義の変更

上の及川氏の動画は、「今回の提案は、3年間続いたこの戦争における停戦の提案とは成りえず、意味不明である。この提案はトランプの平和路線とは一致しないので、今後米国側から何か変更が加えられる筈だ」という趣旨の発言で終わっている。

ところが、前回記事に書いたマルコ・ルビオのウクライナ戦争に関する解釈或いは定義を、トランプ政権による公式見解だと考えることで、一時停戦に関するここまでの話の分かりやすい解釈が可能であることを指摘したい。

それは、マルコ・ルビオによる「ウクライナ戦争は米国とロシアの代理戦争である」という定義である。そして、ロシア大統領府のペスコフ報道官も「プーチン大統領自身の見解と一致している」と述べている。(補足1)

 

 

このマルコ・ルビオの発言は、ウクライナ戦争に対するトランプ政権の姿勢を示しているとロシアに受け取られるだろう。代理戦争だと言う限り、ウクライナと米国はこの戦争の一方の当事国であることを意味している。

 

従って、今回のサウジアラビアでの会議は、看板は停戦協議だが、米国は仲介国としての地位を既に放棄していることになる。今回の一時停戦の提案は、米国とウクライナの長い作戦会議のあと、それによる作戦の一つとしてロシアに送られた米国・ウクライナ側の作戦の一部と受け取れる。

 

マルコ・ルビオはウクライナを支援し続け、第三次世界大戦の危険性をおかしても戦争に勝利するつもりだろう。この戦況芳しくない時点で、ロシアに領土に関する譲歩をしてウクライナに停戦の合意をさせるのなら、米国の代理としてロシアとの戦争に従事しているウクライナを裏切ることになる上、ウクライナ国民に賠償責任を負うことになると考えるのが普通だろう。

 

この国務長官の「代理戦争発言」は、トランプに対しロシア側が有利な現在の状況下でウクライナに停戦を強要させないように放った禁断の最終兵器なのだと思う。今後もウクライナと米側が有利になる状況まで戦闘を続けるつもりなら、停戦案は雑なものになるだろうし、フランスやイギリス等の好戦派はその停戦案を素晴らしいとして拍手を送るだろう。

 

そのことをトランプは十分承知しているのかどうかはあやしい。トランプが、本当に平和を望むのなら、この代理戦争発言に対するコメントや対応なしに彼をサウジアラビアでのウクライナ高官との会合に送ったのはお粗末である。


サウジアラビアでの会議後のルビオ国務長官の言葉:「この戦争を終わらせ、和平を実現する方法は“交渉”です。それにはまず双方が撃ち合いをやめる必要がある。ロシアにもイエスと答えてほしいが、ボールはロシアにあります」という言葉は、私にはちょっとした脅しに聞こえる:

私の解釈:「新政権になった以降も、米国は対ロ戦争においてウクライナを支援する側であることを明らかにした。我々は今後、陰に隠れることなくウクライナを支援することにする。貴国が停戦の話し合いに応じるなら、その条件は今後協議で相談したいが、どうされますか?」

トランプは国務長官に策士的なRINO(名ばかり共和党)を置いたため、外交において大失敗する可能性が大きくなったと思う。

補足:

 

1)ウクライナ戦争はロシアと米国の代理戦争(ウクライナを米国の代理とする)であるという発言のオリジナルは: And frankly, it’s a proxy war between nuclear powers – the United States, helping Ukraine, and Russia – and it needs to come to an end. この発言の中でマルク・ルビオは、ロシアは勝ち逃げできないと明言している

https://www.state.gov/secretary-of-state-marco-rubio-with-sean-hannity-of-fox-news/

 

(17:30;22:30 編集しました)