注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2024年10月14日月曜日

今年のノーベル平和賞は日本人一般には有難迷惑

今年もノーベル賞のシーズンになった。その中で平和賞ほど、受賞者がその栄誉にふさわしいかどうかの議論が多い部門はない。その理由は、世界政治は自然科学ほど単純ではないからである。今年のノーベル平和賞の授賞者を知って、再びそのように感じることになった。

 

BBCの報道によると、ノルウェー・ノーベル委員会のヨルゲン ・ヴァトネ・フリドネス委員長は、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の受賞理由を、「核兵器のない世界実現を目指して努力し、核兵器は二度と使われてはならないのだと目撃者の証言から示したこと」と語ったようだ。https://www.bbc.com/japanese/articles/ckgnp02v5r0o

 

今回はこのノーベル平和賞受賞について、ノーベル賞の原点から日本への影響まで考えてみることにした。

 

1)ノーベル賞というラベル

 

ノーベル賞は、ダイナマイトの発明で巨万の富を築いたアルフレッド・ノーベル(1833-1896)による「自分の遺産を最も人類に貢献した人物に授与してほしい」という遺言に従って1901年に創設された。

 

その遺言の切っ掛けは、ノーベルが、或る新聞社が兄の死を自分の死と勘違いして「死の商人死す」と新聞に掲載したことだったという説がある。ノーベルが発明したダイナマイトが土木工事などの他、武器弾薬として多用されたことが、このような新聞紙上の評価につながったのである。

 

その記事にショックを受けたノーベルが、莫大な遺産を用いて永遠に自分の名を美化しようとして創設したのがノーベル賞だというのである。

 

ダイナマイトは、包丁や拳銃などの歴史上の偉大な発明と同様に、人々を豊かにする場合もあるが、人を傷つけ死に至らしめる場合もある。評価は、誰が何の為にするのか何を物差しに用いるかなどと、人と立場により大きく揺らぐ。このノーベル賞誕生秘話はその教訓を示している。

 

ノーベル賞は非常に権威が高く、科学や文学における業績を超優秀なものとそれ以外のものとに切り分ける。(補足1)そして、専門的な成果に対して専門外のものが安易に評価を下す際の「ラベル」として働く。意地悪く言えば、ノーベル賞は本来真実と向かい合う学問の世界で、名誉とそれに伴うメリットに対する人間的争いを助長する。

 

平和賞の場合は同様に、時として大きな力となって大衆世論を動かし、辛うじて機能している世界の民主政治に衆愚政治の種をまき散らすと言えなくもない。

 

例えば、ノーベル財団が明らかにした佐藤栄作氏のノーベル平和賞受賞理由の中で、佐藤氏が表明した非核三原則について「アジアの平和にとってこの姿勢は非常に重要だ」と評価している。それ以降、日本では非核三原則を批判すれば政治家は選挙において票を減らすことになった。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240105/k10014309481000.html

 

これが日本が非核政策を長く維持させる一つの力となったと言える。その一方,中国と北朝鮮が核兵器を開発し保有することになり、非核三原則とそれに対するノーベル賞の権威付けは、アジア全域ではなく核保有国の中国と北朝鮮の平和に貢献したと言えるだろう。

 

 

 

2) 日本被団協のノーベル平和賞受賞理由

 

日本被団協の活動は、核廃絶(核兵器禁止条約に全世界の国を加入させる)という理想を掲げて努力するという“草の根運動”である。その目標は、「理想」と「努力」という尊い概念から構成されており、彼らの運動を通常の論理で否定するのは困難である。

 

また、核兵器禁止条約への非核保有国の参加は、既に述べた様に、イザというときに仮想敵国かもしれない核保有国を利する効果しかない。非常に流動的な現在の世界政治において、中国の核兵器と対峙する日本国の政治的選択を狭める役割をしてきた。

 

広島サミットで岸田首相が明言したように、自民党政権は核兵器禁止条約を対外戦略の柱にしている。それは、自国に足枷をはめ込む愚かな戦略である。

 

世界中にたくさんの核廃絶を訴える人たちが居るが、ノーベル財団が特に日本被団協を授賞対象に選んだのは、自民党政権とそれを支持してきた日本国民に対し、今後もその核廃絶を目指す姿勢を堅持してもらいたいというメッセージを送る為だろう。

 

世界が第三次大戦を予想するようになり、日本でもボツボツと核武装の議論が出てくるようになった。そして、国家の防衛を原点から考える石破元防衛庁長官が首相になり、核共有までを考え言及するようになった。その日本の雰囲気の変化にノーベル財団が反応したのだろう。

 

繰り返すが、彼らの草の根運動が世界平和に貢献するほど、世界政治(での登場人物)は純情さを持たない。しかし(或いは案の定)、マスコミ各社は今回の日本被団協の受賞に触れる形で日本の核戦略を批判的に報じている。https://www.tokyo-np.co.jp/article/359921

 

例えば東京新聞は、石破茂首相は北大西洋条約機構(NATO)のアジア版創設を持論とし、その中で「核の共有や持ち込み」を具体的に検討すべきだと主張しているとして批判をしている。戦後の日本には、核兵器の共有を具体的に言及する首相はこれまで居なかったのである。

 

第三次世界大戦直前か或いは既に第三次世界大戦は始まっていると言われるぐらいに緊張する世界にあって、しかも3つの核保有国に囲まれている日本の首相が、米国の核兵器の共有に期待する発言をするのは常識的である。

 

この時期を狙って日本の被爆地に存在する日本被団協にノーベル平和賞を与えることは、日本に石破氏の核兵器対策を批判する世論を惹起する目的があったのではと考えられる。

 

ノーベル財団、そしてそれを支配する人たちは、この世界情勢が不透明になっている今、“日本が将来核保有国になる危険性”を危惧しているのだろう。(補足2)

 

 

おわりに

 

核兵器が廃絶されるのは、核兵器と同等或いはそれを超える威力のより安価(製造及び管理上)な兵器が発明された時である。或いは、独裁的な世界政府が出来、そこが核兵器狩り(秀吉の刀狩りから)をしない限り廃絶されることはないと考えるのが普通である。そんな時は当分来ない。

 

有史以来、民族と民族或いは国家と国家が生存をかけて戦争してきた。その状況では、国際法や国際条約などは無意味であり、全ての民族はより殺傷力の強い新型兵器の開発に努力してきた。その冷厳な事実は、ユダヤ人とアラブ人のパレスチナでの戦争を見れば分かる筈である。

 

また、ウクライナはソ連崩壊の時にブダペスト合意への英米露の署名と引き換えに、多数の核兵器のロシアへの移送に合意した。その合意は、国際条約に準ずるものだが、ロシアの侵攻を防ぐ力はなかった。このケースは、核兵器の戦争抑止効果を学ぶ教材と言える。

 

日本人はノーベル平和賞からよりも、現実に東欧や中東で発生していることから教訓を得るべきである。

 

 

補足:

 

1)この切り分けるという表現は、ノーベル賞の対象となった研究は単にその分野の一里塚として示されただけであるにも関わらず、特別な標識(ノーベル賞という)が付けられることを意味している。専門分野を持ち、そこで研究生活を体験すると、その分野の大きさ深さを実感することになる。その中でノーベル賞の栄誉に輝いた研究を見ると、上記表現の正しさが理解できるはずである。以下の文章を読んでもらいたい。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12536939371.html

 

2)現状では日本は核武装できない。例えば馬渕睦夫元ウクライナ大使は、日本が核兵器保有に踏み込めば、中国は国連憲章の敵国条項を理由に日本攻撃を開始するだろうと言っている。長年の政治の付けは長い年月をかけて支払う必要がある。

 

2024年10月10日木曜日

官房機密費は廃止すべき

政治と金の問題は常にそして古くから存在する。もし日本が本当に民主主義政治の国なら、政治献金は如何なる形でも廃止すべきだ。選挙活動の全てを行政が担当すればよい。テレビやインターネット、選挙公報などでその政治家の考え方と覚悟、そして資質が判断出来る筈である。

 

今回も、政治と金の問題で首相辞任と解散総選挙となった。そんな愚かなことはもう止めてもらいたい。票と金が間接的にでも結びつくような可能性は、完全に排除すべきである。

 

政治と金の問題で、マスコミで頻繁に言及されたのがパーティー券などでの政治資金集めとその分配であった。しかし、日本の場合、それ以上に問題にすべきは、官房機密費とその使い方である。マスコミでは重要な話としてあまり深く言及されて来なかったが、その理由は後の方で分かる筈。

 

官房機密費は毎月1億円、1年間12億円が内閣官房長官室の金庫に入れられ、官房長官が何処かに分配する。元は税金である。毎年使い切りで使い道は一切問題にされないし領収書は取らない。余って国庫に返されたという話も全く無いようだ。

 

官房機密費は、複雑な国際関係のなかで諜報活動とか、日本国の為急いで処理しなければならない案件に、専ら使われていると信じてきた。しかし日本のようにスパイ活動も反スパイ活動もほとんどしない国では、現政権の為の政治活動に使われていたことが、政界を引退した野中広務元官房長官により暴露された。野中氏は、官房機密費は廃止した方がよいと言ったという。

それに言及した動画を見つけたので以下に引用する。米国スタンフォード大フーバー研究所でフェローとして長年活動してこられた西鋭夫氏の「Hoover Report」(西氏のyoutube動画シリーズ)の一つである。明治以降の日本とアヘンの関係にも触れている必見の動画である。

 

満州支配とアヘンの話は実に面白く且つ重要なのだが、此処では文章としない。視聴してもらいたい。https://www.youtube.com/watch?v=XFtrh10RnpE

 

 

この動画の後半に、官房機密費に関する話が出てくる。自民党政権の安定確保のためにマスコミにばら撒いたり、政治家としての人脈づくりのためにバラまいていることが、野中広務氏の告白で明らかになったというのである。

西氏は、官房長官になった人は高い確率で総理大臣になれると言っている。安倍晋三氏や菅義偉氏も、総理大臣になる上で、その金の力が大きかっただろうという趣旨の解説をしている。

民主主義の前提は言論の自由や報道の自由である。この報道の自由を、官房機密費が破壊しているという話は本当に腹立たしい。

 

 

野中広務氏の告白によると、官房機密費から金を持って行って返却したマスコミ人は、田原総一朗氏ただ一人だったという話はショッキングである。

首相の部屋にも毎月1000万円配るそうである。官房機密費は領収書が要らないので、勿論税金も支払われない。年間1億2,000万円は個人のレベルでは大金である。使いようによっては、大きく日本の政治をゆがめることになるだろう。

 

この話は毎日新聞の記事にもある。有料記事なので全文は読めなかったが、大事な部分はネットでも読める。野中広務氏が語る官房機密費の使い道


===おわり===

2024年10月7日月曜日

日本経済の立て直しには何が必要か

この30年間、欧米G7グループ各国のGDPが増加し続ける一方、日本のGDPのみが殆ど増加していないのは、政府の財政政策の失敗だと考える人がかなり居る。具体例を上げると、参政党から次回の総選挙に立候補を宣言している安藤裕氏は、下図(図1とする)を見せながら、財務省がプライマリーバランスの方向を優先し、財政拡大にブレーキをかけたことが原因だと言っている。(補足1)
ttps://www.youtube.com/watch?v=RFVncpWe2BI (part 1)

https://www.youtube.com/watch?v=2e8ThrUPPpE   part 2

ネット上でそのような財務省批判を積極的に発信している人に、自民党総裁選で高市早苗氏を応援してきた西田昌司議員、立憲民主党の江田憲司議員、民間人では三橋貴明氏や藤井聡元内閣官房参与(安倍内閣)などが居る。

 

その他、年収〇〇万円時代という庶民の味方風の著書で有名な森永卓郎氏は、財政赤字を懸念して積極財政に賛成しない人たちをザイム真理教の信者と呼んでいる。(補足2)このザイム真理教という言葉は、「これまでの緊縮財政」を批判する人たちにとっての便利な用語となっている。

 

政府は、税収以上の予算を組むことも時として必要だが、財政法4条(補足3)が規定するように、単なる赤字補填の国債発行は禁止されている。慢性的に財政赤字を継続すれば、いつか途上国によくある様な通貨安やインフレに苦しむことになるからである。

 

安藤氏らは、緊縮財政で景気浮揚策が取れないことが原因だと言っているが、積極財政で経済が上向くのなら、社会主義国家が貧しくなる筈がない。また、現状でも日本政府は放漫財政と言われるほど国債を発行し続けて来ているので、低迷の30年間の原因は他に求めるべきだ。

 

下の図(図2)に示すように、G7の日本以外の国では国債残高が年々増加するものの、GDPの1.5倍以下に収まる。財政規律をある程度守りながら成長を遂げているのである。右側に1975年以降の一般会計歳出、税収、国債発行額を示している。このような放漫財政を継続すれば、円安とインフレが進行し、将来国民の安定した生活を破壊する可能性が高い。

 

日本は、“構造的不況”に苦しむ間、その「構造」への対処をせず、ひたすら財政という栄養補給で耐えてきた結果、G7でダントツ最大の債務残高を積み上げたのである。それは厚生労働省や経済産業省など内閣全体の責任であり、それを財務省にのみ押し付けるのは非常に奇異である。

 

この”低迷の30年”は、米国と日本の経済外交関係の変化(プラザ合意など)が引き金となったが、日本の特異な労使関係を生む文化と西欧から来た近代経済システムとの不適合を修正する等の工夫があれば、新しい日米経済関係の中で一定の成長があった筈である。

 

そのことは、政権内部でも議論されて来たようで、先の自民党総裁選の時の会見で小泉進次郎氏が発した「30年間議論してきた」という言葉で明らかになった。自民党議員たちは、改革の痛みで発生する国民の声により失職する危険性を恐れ、この改革を放棄してきたのである。

 

安藤氏らは、これらの事実と歴史を意図的に看過している。そして彼らは、財政法は完全無視し、政府は自国通貨建てで国債を発行する限り、財政破綻などする筈はないとか、政府の借金は国民の財産になるなど一面の真理を用いてごまかしているのである。

 

勿論、自国通貨建ての中長期国債が一定以下の想定金利で継続的に売れるのなら、この考えは成立するだろうが、それは基軸通貨発行国の米国以外では全く無理な相談である。何れ日本も、戦前のように外貨建ての国債しか売れなくなるだろう。

 

安藤氏の上記動画サイトには@rcspinopのハンドル名でコメントを書いて批判した。ある意味当然だが、多くの意味のない反論をもらった。

 

 

1)先進国での経済成長

 

経済成長を需要面から見ると、それは一般国民の購買欲の拡大 とそれによる消費増加である。購買欲の拡大には①個人の収入が増加し、且つ、②将来に経済的不安がないという条件が必要である。その収入増には、会社等の利益増加やその配分が必要で、その為には通常、労働生産性向上が必要である。(補足4)

 

つまり、需要側から見た購買意欲の増加が、供給側で見た労働生産性向上によって裏書されることで経済は発展する。

 

この図式が可能となるには、企業側ではオリジナルな技術の開発や製造ラインへのロボットの導入などの研究開発や設備投資が必要であるし、労働者側ではその企業側の要求にふさわしい労働力を供給しなければならない。教育側は、そのような人材を育てる必要がある。

 

これら全てが揃うことで、経済成長が継続する。政府の積極財政や地方創生などは、田中角栄の「日本列島改造」の段階での主題だと思う。それ以上の役割を政府の財政に期待するのは無理だろう。

 

日本は、資源がなく食料もエネルギー源も国外に依存するハンディを持った国である。その弱みを国民や諸機関・法人ともに意識し、自らの役割を意識して果たすことが、国全体の経済力となって表れる。国民には、ふさわしいポジションを得る努力、移動する勇気等が不可欠である。

 

政府は、それらの経済主体(人や会社)が過度に心配することなく行動できるように、規制を緩和したり諸制度を改めたりするような改革をすべきである。枠にはまった教育システムで22歳で大学を卒業し、揃って恭しく入社式で会社に迎えられ、定年で退社するという昭和のパターンは過去に送り去るべきである。

 

また、同一労働同一賃金なんて、当たり前のことが未だ実現していない。技能実習生としてごまかして安価な外国人労働者を雇うとか、そのほか様々な不公平と既得権益を改めないで経済成長なんか達成できるはずがない。

 

豊かな経済の復活維持には、国民全員の能力と勤勉さが有効に滞ることなく発揮される日本でなければならない。それらが報われる国でなくてはならない。積極財政一本槍で、国民を一様に豊かにするという類のマクロ経済政策を唱えるのは、本当に無責任である。

 

安藤裕氏の話の中には、上記のような内容は一切なかった。と言うよりも、無知なる者をごまかすような類のレベルの低い話だった。

 

2)政府が借金をしても国民に購買意欲は発生しない

 

日本政府や日銀の貸借対照表(BS)は、2013年頃に始まる異次元の金融緩和で非常に大きく且つ不健全になっている。下に示すのは日銀のHPからとった日銀当座預金残高の推移である(図3)。金融機関がこれだけ多量の預金を日銀に持っているのだから、貨幣に対する需要があれば幾らでも信用のある企業は借金ができる。

 

 

これだけ日銀当座預金が積みあがっているのは、民間にお金に対する需要がないか、銀行がまともに機能していないかである。財務省はお金をばらまいても、日銀当座に積み上げるだけであり、日銀は大きな国債残高故に独立して金利を動かすことが出来ない状況にある。

 

今、この時期に積極財政を言い出す人の考えがわからない。政府に積極的に金を使って正面から日本の経済を浮揚させる能力など無い。(補足5)政府は、環境づくりと規制緩和や既得権益廃止など法の整備など、側面或いは裏からの寄与に徹すべきである。

 

 

このグラフ一枚で、上に引用した安藤氏の動画の内容がインチキであることが、分かる人には分かるだろう。順調な経済は、政府が債務を拡大し、それと同額の大きい資産(ストック)を政府以外が持つだけで達成できる訳ではない。国民の購買欲を上げることが出来ないので、財政政策でインフレを誘起することなど、意味がない。

 

上図(図4)で、財政赤字が企業の黒字として吸い込まれているが、労働者にはわたっていない。企業がため込むだけで投資する意欲がないのは、国民に購買意欲がないからである。財政拡大よりも、セクション1)で述べたような改革が必要である。

 

追補: 日本が成長できない理由をNewsweekが記事にしています。それを紹介し、自分の考えを追加した記事を5年前に書いていましたので、以下に引用します。日本社会では評論家や国会議員のレベルが低いことも同じ理由で説明可能です。所謂日本病です。

 

(10月12日追加)

 

補足:

 

1)安藤裕氏は慶応大経済の卒業している。2012年から2021年まで自民党衆議院議員(安倍派か?)。2022年から新党くにもりから参議院選挙に立候補するが落選、20249月次期衆議院議員選挙に参政党から立候補すると表明している。これらの動画は、参政党の神谷党首との対談の形で発表されている。この記事を書き始めた動機は、これら動画が神谷党首の経済音痴を暴露し、自民党ら日本の支配層にとっての脅威の一つを亡くす戦略の一環として発表されたと思ったことである。ただ、今では安藤氏が経済について深い理解がないだけだと思っている。

私も元理系研究者であり経済が専門でないので、以下の解説が十分だとは思っていない。コメントなどいただけるならありがたい。

 

2)森永卓郎は、「ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト 」という本を出版している。

 

3)財政法第四条: 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。 但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。財政法4条は、通貨発行は日本銀行の専権事項としている。

 

4)労働生産性向上には、例えば既存製造業においてはロボットの導入や諸業務のデジタル化などが代表的だが、新規産業の創出も大きな役割を果たす。新しい収益性の高い事業を作り出せば、それは全社員の給与を上げること(つまり労働生産性向上)につながる。

 

5)ここではトップセールスなど特別なケースは除外している。

 

参考:安藤氏は、図4に相当する米国のグラフも引用して、米国政府の方がより継続的に財政支出をおこなっていて、それが米国の経済成長につながっていると言っている。

=== おわり ===   (翌日早朝、補足1に文章を追加、数か所の編集の後最終稿)

 

 

2024年10月2日水曜日

高市早苗氏が自民党総裁選に負けた原因

自民党総裁選が9月27日行われ、第一回目の投票で高市早苗氏が1位、石破茂氏2位、小泉進次郎氏が3位となった。過半数の票を獲得した候補が居なかったので、上位2位までの決戦投票の結果、1位と2位が逆転して石破茂氏が勝利した。

全部で9人の立候補者があったので、最初から混戦が予想されていた。そんな状況なので、1回目の投票は各候補への期待が票数に現れ、第2回目の投票では2人の候補へのマイナスの評価が対立候補側の票となったと思われる。つまり、高市氏を忌避する自民党議員が石破氏を忌避する議員よりもかなり多かったということになる。

高市氏を忌避する理由は、彼女の大日本帝国が遂行した戦争を肯定すると誤解されそうな歴史観にあるだろう。高市新首相の日本が、最悪の外交関係の中で戦争大敗と国民の大量犠牲を招くという恐怖である。

 

石破氏を忌避する理由は、口先だけで自民党の党内野党として活動してきたこれまでの政治姿勢だろう。要するに、高市氏は何かをやりそうだから怖いが、石破氏は口先だけで何もやらないから選んだということになる。

ここまでを大胆に抽象化すると、自民党議員たちは、何かを積極的に訴え且つ実際に実行しそうな人物よりも、言葉だけで実際は何もしないと思われる人物を安全の為に選んだということになったのである。実際、早々に解散総選挙を実施して最初の任期では何もしないようだ。

 

普通に考えれば、高市氏一人よりも自民党全ての決定の方が正しいだろう。それは、何もしない人物が安全だということが正しいということになる。候補者一人ひとりの能力が低すぎて、自民党からは国家のために何かをする人を期待できないことを意味する。

 

政治家全体の質を向上させない限り日本の政治に改善はないことになる。

 

https://www.youtube.com/watch?v=5L9H6JbeXng


1)首相の靖国参拝に拘り総裁選に敗れた高市早苗氏

上に言及した最悪の外交とは、長期的には世界の中で日本が孤立すること、短期的には対中関係の危機的状況を招きかねないことだろう。

 

深圳での日本人学童の刺殺は、日中関係の悪化が危機的状況に近いことを示している。そんな状況下で、秋の例大祭に高市首相が靖国参拝した場合、経済的危機の中国でかなり多くの日本人駐在員とその家族の命が狙われかねない。日本国内でもテロ等が多発する可能性がある。更にその責任の擦り付け合いから、日中の軍事衝突にまで発展するかもしれない。(補足1)

上に引用したyoutube動画で朝香豊氏も、高市氏が首相になっても靖国参拝は実行すると言って全く妥協の姿勢を示さないので、自民党内の左の方の票が逃げたといっている。

私も、日本の将来を考えると今回の総裁選の選択は正しかったと思う。何故なら、政府代表である首相が靖国参拝を強行すれば、日本政府はサンフランシスコ講和条約での約束「東京裁判を受け入れる」を敢えて無視したことになるからである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12837289399.html

東京裁判を受け入れるということは、A級戦犯として断罪された戦争時の日本の指導者たちが世界の平和を破壊する行為として戦争を遂行したという理解、つまり戦争の原因が日本の軍国主義によるシナ大陸侵略にあったという理解を受け入れることである。

東京裁判が正しいとか間違っているとかいう問題ではない。(補足2)第二次大戦を含め近代の世界における戦争の最大の責任は、英米など西欧各国にあり、日本がその流れに乗った或いは巻き込まれてしまったことの責任は、それよりかなり小さいかもしれない。

 

しかし日本は、戦勝国の論理を受け入れて戦後再出発したのである。何故なら、國際関係は本質的に野生のルールで動いているからである。正しい方が勝つのではなく、強い方が勝つのである。戦後80年を経過して、今更第二次大戦の終結を否定し、再び米中英仏蘭の敵国になるという選択をするべきではない。

 

もし日本が強大な軍事力を持ち、世界を席巻しているのなら東京裁判を否定することも一つの外交上の選択である。しかし、日本は自衛軍すら真面に保有しない国である。

勿論、私人なら靖国に参拝することは信教の自由の範囲に入るとの主張は可能である。しかし、首相にはそれが出来ない。何故なら、日本の首相は日本国そのものであり、その中心だからである。

何故こんな単純な論理が高市氏には理解できないのだろう。日本の国会議員たちは派閥抗争や人事の問題で明け暮れ、勉強不足なのだと思う。石破氏は確かに職業的政治家に見える場合もあるだろうが、そのあたりの知識はあると思う。その差が、総裁選の結果を分けたのだろう。


2)憲法改正案への自衛隊明記する場合の問題点

また朝香豊氏は、石破茂氏の自民党の憲法改正案に対する態度を批判している。安倍内閣の時に決めた自民党案では、憲法92項を残したまま第3項に自衛隊を明記するが、それでは改正にならないというのが石破氏の意見である。

朝香氏は以下のように話す: 憲法改正には公明党の数が必要であり、その連携を維持するために9条2項を残し自衛隊を明記する草案を作ったのである。石破氏は評論家的発言をして、その努力の結果である自民党案に反対し、結局憲法改正が出来なくしてきた。自分の案に拘るなら、それで公明党を説得する努力をすべきであった。しかし、石破氏は汗をかくタイプの人ではない。

また朝香氏は、政治は多数派を握った方が勝ちであり、従って純粋を求めてはいけない。理想論を語ることは良いが、政治は理想論だけでは動かないとも語っている。高市氏が今回の総裁選では、多数派工作として自分の靖国参拝への熱意を一時的に曖昧にすることだったと語る。

しかし、現実政治が妥協の産物だとしても、守るべき一線が存在する筈である。そのレッドラインの認識において、朝香氏は間違っている。現在の自民党案で憲法改正をすることは、日本を世界の笑いものにすることである。そこに自民党を導くことは、反日国家の工作かもしれないと考えるべきだ。

石破新首相がすべきなのは、元々意見の異なる公明党の説得ではなく、そのような考え方の異なる政党との間違った連立を解消して、本来の考えに従って草案を作り国民に理解を求めることである。


終わりに:

日本の政治の貧困は目を覆うほどである。その大きな原因は国会議員の質が低いということだと思う。その一つの原因は、国会議員の殆どが職業として永田町(国会)に勤務しており、終身雇用に近い職の安定を求めて活動していることである。

 

二世議員が多いのが原因であるという人が多いがそれは結果であり原因ではない。タレント議員も元官僚の政治家も、次の代は代議士を目標に人生を歩むだろう。従って、日本の政治改革の近道は、国会議員を職業とはなり得ない制度を取り入れることである。

 

例えば、国会議員をボランティアとする。そのうえで、一生涯で5年間を政治家としての最長活動期間とする。待遇だが、実費と自分の本来の職業の中で、5年間の政治家としてのサービスによる不利益を帳消しにするレベルの給与を支給する。 

国会議員の定数は、野党を含めて内閣を構成する人数の3~5倍程度として、定数を半分以下にすべきである。選挙活動は、候補者数人毎の討論を唯一とし、選挙期間を3か月以上とる。選挙区は道州制として、国会議員の地方での政治活動へのかかわりは禁止する。

 

 

補足:

 

1)今回の総裁選で、中国及び米国から自民党議員たちに対して強い干渉があった可能性を指摘する人もかなりいる。伊藤實氏はある動画の中でその可能性を示唆している。https://www.youtube.com/watch?v=-yLv4OQ2rY8 (動画の13分あたりから)

 

中国の場合、高市氏が選ばれ首相として靖国参拝をすれば、日本人が大変なことになるかもしれないというタイプの脅し或いは干渉があった場合、その効果は大きいだろう。何故なら、自民党議員たちはその可能性を既に考えているからである。

 

2)東条以下の平和に対する罪での断罪は、①事後法での裁きであるので法理論的に本来無効だという考え方がある。それはかなり説得力を持つ。また、平和を乱した責任など日本になく、②日本にとっては防衛戦争であったなどの論理も、歴史を詳細に見ればその通りだったということになるかもしれない。しかし、それらを現在世界を牛耳る勢力は決して認めない。そして、日本政府が①や②の論理を用いることを放棄したことで、サンフランシスコ講和条約が成立したのである。同じ“力の論理(歴史は勝者が書く)”で、原爆投下も正しいとされてきた。

 

(編集歴: 10月3日早朝、本文最後の文を修正、そのほか助詞修正レベルの編集の後最終稿)