1.イラン戦争 ― 文明の前提を破壊する行為
4月1日(日本時間4月2日)、米国のトランプ大統領はテレビ演説で、 「今後2、3週間でイランを徹底的に打ちのめし、石器時代に戻す」 と述べ、攻撃継続の意向を示した。理由として挙げられたのは「イランは世界一のテロ国家である」という主張である。
しかし、イスラエルと米国は2月27日時点で、オマーンの仲介によりイランとの交渉が合意目前にあったとされる。 その翌日、2月28日にイスラエルと米国はイランの最高指導者を含む高官を空爆で殺害した。多くの国から見れば、この国家による暴力行使そのものがテロに該当すると受け止められても不思議ではない。
それにもかかわらず、トランプ氏は自らの発言の矛盾を顧みない。 その背景には、自分たち以外を対話の主体として認めない姿勢があると思われる。
私は、言語を用いて情報を共有し、対話によって問題解決を図ることこそが、人類が築いてきた文明の基盤だと考える。 その前提に立てば、トランプ氏の姿勢は人類文明そのものの否定である。
そしてこの姿勢は、ガザでのパレスチナ人虐殺やヨルダン川西岸での入植政策に見られるイスラエルの行動と軌を一にする。 彼らの行動は、結果として他者を人間として扱わない構造を生み出している。 「イランを石器時代に戻す」という発言は、その象徴である。
2.最終戦争 ― 宗教思想が地政学を動かす構造
現在の米国・イスラエルとイランの戦争は、もはや地域紛争の域を超え、世界戦争の様相を帯びつつある。 その延長線上には、世界経済の崩壊や深刻な食糧危機、すなわち「地球規模の地獄」が予測される。
近代以降の国際常識に照らせば、米国が対イラン戦争に加担する合理的理由は乏しい。 それでも米国の一部勢力が支持するのは、宗教思想に基づく世界観が共有されているためであると思う。
旧約聖書の創世記15章18節には「ナイルからユーフラテスまで」の大イスラエルが神から約束された土地として描かれる。また、 新約聖書の黙示録では、世界の終末にハルマゲドンが起こり、キリストが千年王国を統治するとされる。
この思想体系に従えば、終末戦争の到来前に大イスラエルの実現が必要となる。 また、エゼキエル書38–39章では、この戦争において北方・東方からロシア、トルコ、イランと見なされる勢力が、南方・西方からはスーダンやリビアがイスラエルに攻め込むと記されている。
こうした宗教的世界観を背景に見ると、近年の米国の中東政策や周辺地域での軍事行動の背後に、イスラエル右派の影響が透けて見える。 これは、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が欧州議会で指摘したこととも一致する。
(補足)ジェフリーサックス教授は、中東での米国の戦争は全てイスラエルにとっての理想の中東を建設するために、イスラエルロビーとネタニヤフが米国に実行させた戦争であると講演で語っている。https://www.youtube.com/watch?v=hA9qmOIUYJA
3.近代文明の否定 ― 法・対話・人権の崩壊
近代以降、西欧政治文化が提示した「人権」「法の支配」「対話による解決」は、少なくとも表面的には国際社会の共通言語として機能してきた。 21世紀の人類は、この共通言語を基盤に、民族対立や資源問題を解決していくと考えられていた。
しかし、近年の米国とイスラエル右派の行動は、これらの言語が普遍的規範ではなく、 自らの宗教的世界観を実現するまでの時間稼ぎに過ぎなかったことを露呈させた。
この事実は、単なる外交対立ではない。 国際社会の根幹である「信用というインフラ」を破壊する行為である。
この戦争の本質を理解した西欧諸国は、今後さらに結束を強めるだろう。 イタリアのメローニ首相、英国のスターマー首相、フランスのマクロン大統領の相次ぐ訪日は、その兆候と見てよい。
米国現政権およびイスラエル右派政党は、 人類が築いてきた近代文明が、神の名の下に崩壊することを当然視する思想を持つか、あるいはそれを政治的に利用している。この思想は、自己犠牲や異教徒への裁きを正当化し、 結果として近代文明そのものを否定する危険な構造を孕んでいる。
(原稿の推敲にAIであるマイクロソフトのcopilotの協力を得ました)
