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2025年6月20日金曜日

トランプは馬脚を現したのか(II) イスラエルの対イラン要求の本質

国際政治を解説するyoutuberの及川幸久氏が、トランプがイスラエルの対イラン戦争に米国を参加させるかどうについて米国で行われている議論を紹介している。

 

https://www.youtube.com/watch?v=gMx7929oud4

 

タッカーカールソンがトランプ大統領にストレートに反対意見を贈ったこと、スティーブ・バノン元首席戦略官(第一次トランプ政権)も反対していることなどが示すように、イラン攻撃への加担はこれまでのMAGA(アメリカ第一主義)政策と明らかに矛盾している。

 

及川氏は、トランプは「イランへの米軍の攻撃を承認したが、その開始についての最終命令を保留している」というところをもう少し考えるべきだと考えているようだ。そして、Gilbert Doctorowというロシア史で博士号を取得した人物の意見を参考のため紹介している。

 

ドクトロー氏は、トランプは良い意味での日和見主義者(opportunist)で、イランとの取引のためにこのような際どい方法をとっているのだと話したという。

 

私は、このドクトロー氏という人物をまるで一流の国際政治学者のように仕立ててトランプの戦術を語ることに大きな違和感を感じた。ドクトロー氏は、ロシア関連のビジネスマンとして25年間働いた人物で、単にロシアと未だ問題を起こしていないトランプを応援するために無理な理屈をこねているように見える。彼の国際政治評論も有名なのはロシア関係に限られるように思う。

https://fable.co/author/gilbert-doctorow 

 

そこで、改めてイスラエルの対イラン要求について考えてみる。

 

2)イスラエルそして米国のイランに対する要求とは何だろうか?

 

イスラエルのイランに対する要求とは、イランの核兵器開発の放棄であると言われている。しかし、今年3月の議会証言において、国家情報長官はは現在核兵器を持っていないし、核兵器の開発も行っていないと証言しているので、イランはこの要求に従って久しいことになる。従って、それは国際社会に向けたプロパガンダの一部である。

 

つまり、それが本当の要求なら、そして国家情報長官の証言を信じる限り、イランは既にその要求に応じている。今更、他に何を約束せよというのか? しかし、トランプは国家情報長官のいうこと等気にしないという。これは暴力団が警察や裁判所の言うことなど気にしないという類のセリフであり、これ以上議論することは不可能である。

 

ここでもう少しイスラエルの対イラン要求を深読みすると、それは、今後軍事的不安を全く感じないようなイランになることかもしれない。周りを異教徒に囲まれたユダヤ教の国なら、心情としては分からない訳ではない。しかし、それは近代国際社会にあっては理不尽な要求である。

 

つまり、全く毛色の違う人物に対して「俺が全く不安を抱かないようにしろ」ということは、「お前はこの世界から消えろ」ということに他ならない。

 

主権国家体制(ウェストファリア条約の体制)は、相手国の主権を尊重することで互いの存立を確保する体制であり、中世までの強い国が生き残るという体制下で悲劇を繰り返してきた人類の知恵である。その主権には自国の防衛力確保も含まれ、それは隣接国には幾何かの脅威になるのは当然である。

 

しかもイスラエルは既に核保有国である(6/17の記事参照)。仮にイランが核兵器を手に入れたとしても、核の抑止力で互いが共存可能である。原子力発電所の建設などの核の平和利用も含めて今後の核開発を永久に放棄しろというのは、あまりにも理不尽である。(補足1)

 

従って、イスラエルの要求は、イランが独立国家としての主権までも放棄するということだろう。それは「(この世から)消えろ!」という暴力団の要求である。

 

それでも尚、アメリカ人の大半が反対するイラン参戦に傾くとしたら、トランプは日和見主義であるなら、ネタニヤフのご機嫌を見ているのだろう。これが結局本稿の結論である。この動画について、以下のコメントを書いた。

 

コメント1: トランプの真意は、自分の命を失いたくないということです。トランプは、大統領自身の命の問題は一般軍人と同様プライベートな問題だということを知っているのだろうか?思い出すべきはネタニヤフがトランプに贈ったポケベルの置物です。(イスラエルはヒズボラの戦闘員を彼らのポケベルの中に爆弾を仕組むことで殺害したと言われている。イスラエルも否定していない。)

コメント2:オポチュニストはギルバート・ドクトル博士の方ですよ。ディールは共通の基盤の上で成り立つが、ポケベル(爆発物入り?)の置物を送ってくる人物と共通の基盤は持てない。私は、ジェフリーサックス教授の方が正しいと思う。

 

コメント3:Gilbert Doctorowという人物は国際政治学の方では有名でなく、ロシアの歴史で博士号をとったのち25年間ロシア関係のビジネスマンだったとネットには書かれています。英語版wikipedia にもそんな人物の紹介はありません。

 

補足:

 

1)イランが核施設を建設し、ウラン258の濃縮を行っているのは事実である。ただ、原子力発電のためにもウラン濃縮が必要であることを忘れてはならない。つまり、現在イランが行っているウラン濃縮は原子力発電のためと言える。勿論、原子力発電を行えば、その燃料滓からプルトニウム239を分離することが可能で、それは長崎型原爆の材料となり得る。

 

(15:30 補足1を追加、編集あり)

 

 

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