注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2018年11月28日水曜日

点と線の正義:その間を気体のように埋める信用を取り除く現代資本主義文明

今年1月27日の日付で、別サイトに編集中のまま放置されていた文章を掲載します。

1)表題は、現代社会に於いて「正義は点と線のみで確保されている」との主張を表現している。つまり、我々は、近代国家の内部全体において、法と正義が支配していると考えるのは勘違いであると思うのである。それは、犯罪が現代社会の多くの領域で起こり得るという主張ではない。法と正義に反する行為が存在したとしても、それらが全て行政と司法により然るべく処理されると考えるのは間違いだという主張である。それは、これまで観てきた社会の諸事象から得た結論である。

この事実は、例えば、相撲協会での出来事を考察すれば、一般にも理解出来るだろう。犯罪は隠蔽され、闇に葬られることの方が多かっただろう。そうでなければ、部分的にせよ諦めて泣き寝入りをする人が多い筈がない。(補足1)また、商店街の住人で“みかじめ料”などのトラブルに巻き込まれた人には、上記命題が嫌というほど身に沁みている人が多いだろう。さらに、ネットオークションなどで壊れたものを高い値で買ってしまい、売り主と交渉してもはかどらず、結局泣き寝入りするしか無かった人もその考えに同意するだろう。

警察(行政)も司法も、結局点と線以外には完全には役立たないのである。個人が出来ることは、その点と線の上を歩くように、私的な努力をすることである。ただ、その私的な努力が点と線を動かす様になると、社会全体が法治国家という建前も維持できないことになる。それは独裁国家の入り口である。

点と線の上に乗る努力とは、司法や行政の中に人脈を作り上げることなどだろう。点と線を動かすとは、司法や行政(警察)への介入を意味する。国家の首脳レベルでは、そのような疑惑は歴史の中に多く有るだろう。東アジア諸国では、法と正義の支配する社会の確立そのものが怪しげである一方、西欧ではそれが一応完成しているようである。しかし西欧でも、空間全体の法と正義の支配は建前としてのみ成立しているのであり、現実は理想から遠く乖離しているだろう。

何れにしても、法と正義による社会の支配は、不完全且つ限定的である。

2)以上は国家とその中で生きる個人を対象にした議論であるが、世界とその中で“生きている”国家の関係を考えると、上記現実が一層理解し易いだろう。

近代になって、世界は凄惨な戦争を振り返り、国際的な枠組みを作るようになった。(補足2)現在では、国連憲章、国際司法裁判所、国連軍が国家に類似した枠組みをこの世界に作っている。西欧が中心になって作ったこの仕組は、絵に書いただけのようなものだが、世界政府的なイメージを想像させる。

つまり、国連憲章、国連軍、国際司法裁判所は、国家のシステムから類推すれば、世界の法、行政(警察)、司法ということになる。それを本気というか、あまりにも真面目に考えている(振りをしている)のが、日本政界における革新系野党である。また、与党にもそのように考える人が多く、今は野党に属するが小沢一郎氏がその代表だった。(補足3)

そのように世界のモデルを考えると、直ぐに「法と正義」が成立する「点と線」の上に乗っている国家と、そのような力と知恵のない国家の区別が明確に出来る。「点と線」を自分の上に引き寄せているのが、国連常任理事国と言われる国々であり、その中の最大最強の国は、点と線を自分で描いていると言えるだろう。(補足4)

上記のように、社会における「点と線の正義」というモデルは、国内と世界の両方を見ると理解し易いように思う。

3)文明による文化の破壊: 

そのような世界でどう生きるかだが、国によってもその具体的方法は異なるだろう。例えば、中国なら血縁を大事にして、一族から上級の共産党員を生み出して、そこからの利益誘導を考えるだろう。そのような国で、公務員の利益誘導や汚職を無くすることなど不可能である。「ハエも虎も叩く」の言葉には、その文の主語が大虎であったという“落ち”があることを中国人は知っているだろう。(補足5)

日本では血縁とともに地縁が大きな役割をしてきた。地縁は血縁を超える繋がりであり、全体として公正な社会構築の素地となり得る。それが、日本国民が米国の押し付けた憲法前文にそれほど違和感を感じない理由の一つだろう。また、野党の幼稚な正義論が未だに力を持つ背景にあるのだろう。

しかし、近代資本主義は血縁も地縁も破壊してしまい、現在ではこの国も荒涼とした社会になりつつある。(補足6)正義の社会が映る様な“レントゲン撮影”をすれば、この国の風景も砂漠のなかにオアシスと舗装道路だけ存在するようなものだろう。オアシスを離れたところにあるテント村が日本相撲協会だと考えれば、今回の春日野部屋での障害事件が理解できる。 https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12144-319617/

信用が空間を満たすことが、法と正義の支配が点と線ではなく面と体で成立する為の条件である。今朝も話題になっていた成人式用の貸衣装を業とする「はれのひ」の詐欺的商法や、最近多くなった企業による不正事件の増加は、日本的な“信用を重視する文化”の崩壊を示している。

それは単に歴史の出来事の一つではなく、人類史の必然の流れだろうと思う。つまり、文明と文化が並行して発展してきた近代史は終わり、現代以降は文明による文化の破壊のフェーズなのだろう。経済的に一定以上豊かになった人間は、思考する人間の特技を錆びつかせ、本能のみの存在に還るのである。

それを先送りできるとしたら、政治というサービス業の革新と効率化のみだろう。つまり、行政(警察)、司法、立法の三分野全ての効率を飛躍的に高くし、人知を超えた全く新しいタイプの社会主義の確立が必要だろう。それが出来るのは、天才かAGI(統合的な人工頭脳)である。

シンギュラリティー(補足7)というのは、ひょっとして人類史における明治維新的なものかもしれない。つまり、それは排除(攘夷)すべき対象ではなく、それにより新しい世界を開くということになるかもしれない。勿論、人間が人口頭脳の奴隷にならぬよう、注意が必要である。

(文章語句などかなりの編集あり、22:00)

補足:
1)1)琴光喜の追放などは、たまたま点の上に琴光喜が乗ってしまった結果だろう。ここで補足したいのは、点と線の上の正義でも、その他の分野や地域での不正義の発生を不完全ながら抑止する働きは存在する。
2)“歴史には無知”の領域に入る筆者だが、ウエストファリア条約(1648年)やパリ不戦条約(1928年)などが近代になって作られた、国際的枠組みの基本的なものだと思う。戦争のルールに関しては、ハーグ陸戦条約が知られている。
3)小沢一郎氏が国連中心主義を掲げる代表である。しかし小沢氏は、日本が世界の覇権を握る場合にのみ、国連中心主義が日本の外交姿勢になり得ることを知らないのか、知らないふりをしているのだろう。https://yoshiko-sakurai.jp/2007/10/25/633 宮沢喜一らを面接して、総理大臣を選んだと言われている小沢一郎にしてこの程度なのだ。
4)点と線の近くに居ると表現したのは、彼等常任理事国が正義を定義するのだから、正義は彼等の近くに存在する筈という位の意味である。
5)汚職追放を大々的に担ぎ出したのは、薄煕来である。彼は中国での権力闘争で、それを看板に勝ち抜こうとしたが、自身の不正やスキャンダルで失脚した。不正蓄財は温家宝など殆どの共産党幹部や元幹部で行われていると言われる。
6)経済発展で豊かになることは、人と人が協力する基本的文化を破壊する方向にも働く。更に、農村や山村から都市部への人口流動が全国的に生じ、それを受け入れる大規模団地が各地に作られ、地縁的協力の文化も破壊した。それは防寒のための体毛喪失と、服や着物の文化が同時進行的に人という動物に起こったことと重なって見える。
7)技術的特異点(Technological Singularity)、またはシンギュラリティ(Singularity)とは、人工知能(AGI)の発明が急激な技術の成長を引き起こし、人間文明に計り知れない変化をもたらすという仮説である。ウィキペディア参照。

2018年11月26日月曜日

韓国のプロパガンダ:日本の韓国統治非合法論

1)最近、チャネル桜で朝鮮半島に関する議論がなされ、youtube上に公開されている。そこで、西岡力氏や西村幸祐氏が、韓国には革命政権ができ、現在体制変換に向けて準備を整えているという趣旨の発言をしている。所謂、徴用工裁判の判決は、その活動の一環であると考えるべきだとしている。https://www.youtube.com/watch?v=oCvz8ZjXCWY

上記チャネル桜の番組で、西岡力氏は以下のような趣旨の分析をしている。「韓国が目指している戦時労働に対する補償の対象は、肉体的な苦痛に関するものではなく、奴隷労働を強制された精神的苦痛に関するものである」と。 その主張を韓国は21世紀に入り、国際社会に向けて発信しており、ニューヨークタイムズなどもその韓国の主張を受け入れた報道をしているという。1)

この徴用工判決が韓国の深い戦略のもとに出されたにも関わらず、日本の反応には戦略性が全くないと、西岡氏はいう。①日韓併合時の日本の対韓国インフラ投資の高い経済効果や基本条約後の経済協力金による奇跡的な経済復興などなどがあったこと、②当時の韓国にはそのような意地悪な見方がなかったこと(youtube 動画、西村幸祐氏)などを根拠に、そして、③国際社会は証拠と論理で動かせるとの誤解で、簡単に反駁できると甘く考えているからだろう。

彼らも日本人の多くも、慰安婦問題からも何も学んでいないのだ。2)

実際、他のyoutube動画などでは、保守系の論客たちは安易に韓国批判を展開している。しかし、将来予想される事態はそれほど簡単なものではないと西岡氏は警告しているのである。

2)日韓併合を違法であるとの国際的認定3)を得ようと、韓国が企画した会議が2001年に開催された「韓国併合再検討国際会議」である。この時には、併合は非合法だという結論にはならなかった。今後韓国は、この種目的の会議を画策するだろうし、実際にいろいろな企みをやっているだろう。4)https://en.wikipedia.org/wiki/Japan%E2%80%93Korea_Treaty_of_1910

その昔、ほとんどの国では国際的交渉において、嘘を並べることに一定の抵抗感を持っていただろう。しかし、現在の国際社会では、表の会議よりも裏の活動の方が活発なのではないだろうか。その流れに乗れば、韓国の工作が成功する日が来るかもしれない。つまり、過去の韓国や台湾の併合は、植民地支配でありこれまでの平和条約は全てやり直す必要があると、国際社会が結論つける日が来る可能性がある。その時、恐ろしいのはニューヨークタイムズの国である。

その恐ろしい国と上記企みの本当の黒幕は、現在対立状態なので、日本に少しだけ時間的余裕ができている。その黒幕が大手を振って表に姿を表す時がくれば(米中融和の時代が再びくれば)、朝鮮半島や台湾だけでなく、琉球も日本が“違法に”植民地支配したということになるだろう。日本は最悪のシナリオを想定して戦略を練り実行すべきである。

日本は、戦前の大日本帝国を悪の帝国にすることで利益や心理的安定を得ようとする国や組織に囲まれている。日本は残された写真や、会議や調査などの記録を基に、科学的方法で現在悪化しつつある状況を乗り切ろうとするかもしれなが、それは特別に有効というわけではない。論理で戦争をふっかける親切な国はない。それを韓国は教えてくれて居ると考えるべきである。

国際政治における歴史書は、過去の史記などの歴史書と同様、ほとんど覇権を持つものに都合の良い話で埋められる。最終的な勝者が作る物語に当てはまる出来事とその解釈が歴史の真実となる。そのような出来事がなければデッチ上げがなされるだろう。慰安婦の性奴隷性も、戦時労働(徴用工)の奴隷労働性も、歴史の真実となるかどうかは、覇権を持ったシナリオライターにより決められる。

3)日本は何をなすべきだろうか。先ずは、覇権国とは当然親密な外交を展開することだろう。そして、覇権国の国民に直接真実を知ってもらうべく活動することだろう。現在の覇権国の国民は、それを理解するだけの知性と正義感を持っている。それが日本の唯一の命綱かもしれない。

米国の権力は分断されている。働きかける時にはそれをよく考えるべきである。ケネディ暗殺を企画したグループは、米国WASPと呼ばれる人々の知性と正義感を悪用している。少数者の権利とか、レジティマシーとかコンプライアンスとか、日本で流行して居る標語は、すべてそのグループが作り出したのだろう。

ブレイクニー、ローガンなどの弁護士は、対日戦線では米国のために戦いながら、東京裁判のときには、日本の弁護をしてくれた。そのように論理を大切にする人たちもあの国にはいる。5)

論理的に反駁するのなら、後者の人たちの姿勢を見習うべきである。そして、日本は独自に日本の近代史を再評価し直すべきである。その際、日本の指導者の愚かな決断は、すべて明らかにすべきである。敗戦国は日本である。我々が学んだ日本史の背後に、蓄積された愚かさ、傲慢さなどがなければ、あのような惨めな敗戦国になる筈はない。

また、あのような慰安婦騒動も起こる筈はない。朝鮮半島や中国で行った日本の戦時行為を残らず詳細に調べ上げるべきである。そこには必ず何か、出て来る筈である。謝罪をするのなら、そのあとにすべきである。

事実と論理に基づいて国際政治をするのなら、本当の意味で真実を見る力や真実に対する敬意を持たなくてはならないと思う。真実を裏打ちするために、インテリジェンス機関やシンクタンクを育てるなど、”投資”をすべきである。そして、国際標準の外交活動を展開すべきである。

二つの勢力)

嘘は効果的に紳士的につかなくてはならないのだろう。タルムードの解説書には、そのように書かれて居る。(ユダヤ5000年の知恵)しかし、傲慢な人たちや強欲な人たちがそのような知恵を悪用したら、世界は暗くなる。東アジアで常に権力争いの中で知恵を磨いた民族が居る。その知恵が編み出した戦法には次のように書かれて居る。百戰百勝、非善之善者也、不戰而屈人之兵、善之善者也。知彼知己、百戰不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戰必殆。(https://ja.wikiquote.org/wiki/%E5%AD%AB%E5%AD%90)

これら両民族を敵にしたのでは勝てそうにない。トランプもそう思ったのかもしれない。 補足:

(1)ニューヨークタイムズは、ウィキペディアにも記述があるように、その背後にユダヤ資本がある。彼らは、満州利権を日本から奪おうとして失敗したことを根に持ち、日本を恨んで居るのだろう。フグプランやシモン・カスペ事件も、日本嫌いの原因かもしれない。  例えば菅直人政権下で日本の植民地支配を批判する動きが活発化し、菅直人という売国奴的首相は謝罪の声明をだした。その時も米国のニューヨークタイムズ(2010/8/10)は、大々的に韓国が望むような報道をした。https://www.nytimes.com/2010/08/11/world/asia/11japan.html

(2)最近、モスクワ在住の北野幸伯氏はメルマガで、慰安婦問題について米国人ジャーナリストのマイケル・ヨンさんの本を引用して、「(慰安婦問題における)戦局を大きく変えることに貢献してくださった」と書いている。その本とは、「決定版・慰安婦の真実—戦場ジャーナリストが見抜いた中韓の大嘘」という本で、この11月刊行された。しかし、この本も帝国の慰安婦も、何の効果もニューヨークタイムズにはないだろう。トランプと米国マスコミの戦いを見てもわかるが、彼らは真実など争ってはいない。

(3)国際社会は法治社会ではない。国家間のトラブルを裁き、処罰を加えるための法治機関や、それを執行する行政機関など存在しない。それにも関わらず、日韓併合を違法だと国際社会に訴えるのは、日韓戦争(冷戦)に持ち込むためである。

(4)2010年6月23日、75人の韓国議員は、菅直人首相に対する日韓併合条約の法的無効化を提案した。また、2010年7月6日、韓国と日本の進歩的なキリスト教徒のグループが、更に、2010年7月28日、韓国と日本の約1000人の知識人が、夫々日韓併合条約が有効ではないという声明を出している。(ウィキペディアから抜粋)

(5)ローガン弁護人は、最終弁論において、アメリカの対日経済制裁と戦争挑発政策を批判し、大東亜戦争は「不当の挑発に起因した、国家存立のための自衛戦争」であったと論じ、真珠湾攻撃については「この日本の攻撃が自衛手段でないと記録することは実に歴史に一汚点を残すものであります」と述べ、アメリカの戦争責任を徹底的に追及した。(https://blogs.yahoo.co.jp/tomopapa1023/6997588.htmlより引用)この考え方は、連合国司令長官を解任されたマッカーサーの米国議会での離任演説でも語られている。 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Yasunari/7517/nenpyo/1951-60/1951_makasa_shogen.html

2018年11月23日金曜日

グローバリズムと米国トランプ大統領の姿勢

グローバリズムについて、ウィキペディア(日本語)では、以下のように書いている:

グローバリズム(英: globalism)とは、地球を一つの共同体と見なして、世界の一体化(グローバリゼーション)を進める思想である。字義通り訳すと地球主義であるが、通例では、多国籍企業が国境を越えて地球規模で経済活動を展開する行為や、自由貿易および市場主義経済を全地球上に拡大させる思想などを表す。

以下、この記述をグローバリズムの定義と考えて議論する。

数百年の人類の目標をどう設定するかは自由であるが、地球を一つの共同体と見做すことなど遠分出来る訳がないことは、この100年間の世界での出来事を見れば明らかである。従って、思想の部分は凡そ非現実的だと思う。
現実的には、上記ウイキペディアの記事の“通例では”に続く文が、グローバリズムの中身だと思う。

1)グローバリズムの二つの側面について:

グローバリズムは2つの部分(側面)或いは段階からなる。一つは①「自由貿易および市場主義経済を地球上に広げる」であり、もう一つは②「国を跨いだ資本移動を自由にし、生じた多国籍企業に自由な経済活動を可能とする」である。グローバリズムの政治経済に与える影響の議論では、この二つを区別することが大事だと思う。

この内、市場主義経済と自由貿易の拡大は、財の生産を最も得意な国、或いは能率的な国で行い、それを互いに輸出入で交換することで、双方を豊かにするという人類の知恵だと思う。20世紀後半からその動きが活発になり、そのためにGATTなどの体制が作られた。例えば日本では、農業や資源生産は不利なので、農産物や石油・天然ガスなどの輸入が容易になり、且つ、それらの輸入量は増加した。その一方で、得意な輸送機器や工作機器などの輸出が増加している。

もう一つの面は、「国境を跨いだ資本投下を、世界中どこにでも可能にする」という、国際間の資本取引及び資本投下の自由化である。その結果、単純労働者を必要とする産業は発展途上国に移り、そこで安価に製品を作ることが可能となる。それは、仮に先進国全体の経済を豊かにしても、仕事の一部を途上国に奪われた先進国のブルーカラーは、失業や全体として賃金の実質低下に苦しめられることになる。そして、貧富の差の拡大とデフレ傾向が先進国共通の課題となる。

国内生産が不利であると考えた先進国に残った企業も、賃金の安い移民労働者を利用して他の先進国企業との競争を容易にしたいと考えるだろう。そして、必然的に人の移動の自由化を考える人が増え、移民受け入れの一つの圧力となっていると思う。

会社に対して、新たに“法人”という形で一定の権利と義務を付与し、保護育成してきたその国の国民にとっては、会社法人(企業)の裏切り行為である。一体、誰のために、そして、何の為に存在する法人なのか(補足1)、わからなくなってきている。

他民族は全く別の文化を持っているため、移民増加は治安の悪化や契約行為の複雑化(阿吽の呼吸ではすまなくなる。)、地域社会の破壊など、現在様々なトラブルを引き起こしている。国家全体としては、住民の間に深刻な分断を持ち込むことになる。それが地震の断層のように動いて、政治上の混乱の原因となる可能性がある。(補足2)

グローバル化の問題が議論される切っ掛けとなったのは、「デフレ傾向、貧富の差の拡大、移民の増加(治安の悪化や文化の破壊)」である。ネットでグローバリズムに否定的意見を出している方々としては、経済評論家では三橋貴明氏、政治評論家では馬渕睦夫氏が代表的である。

先進国においては、余剰労働力を新事業例えばサービス業などへ移動させることで解決するのが本来のあり方である。(補足3)もし、失業率が一定程度以下であり、GDPが順調に増加しておれば、問題の解決は本来国内で行われるべきだろう。

また、多国籍企業の進出により、発展途上国の経済は豊かになる。しかし、副作用として本来その国に企業が発生し、調和の取れた経済構造が出来るというプロセスを阻害することがある。従って、グローバリズムを新しいタイプの植民地主義と見る見方も存在する。つまり、途上国が経済発展する前に、そこに出かけて会社つくり、そこの儲けを占める体制を作っておきたいという先進国資本のエゴイズムだという主張が成立する。

この国際間の資本規制を取り払うことは、そして、多国籍企業の誕生と成長を許したことは人類の間違いだろう。(補足4)しかし後戻りは難しいので、何らかの軌道修正が必要だろう。

2)トランプ米国大統領の対外政策について:

今回のトランプ大統領のアメリカ・ファーストという姿勢は、米国の白人ブルーカラーの貧困層への転落の原因を、上で①と分類した自由貿易体制とみなし、それを破壊しようとしている様に見える。つまりトランプの米国は、自国の巨大資本の意向を汲み、グローバリズムを推進したにも関わらず、自国経済における歪、貧富の差の拡大などの上記問題点を自由貿易の所為にして、それをエゴイズム的に強引に解決しようとしているように見える。

下の図に示すように米国のGDPは順調に増加している。日本などに比較すればそれがよく分かる。この順調なGDPの伸びは、上記自由貿易体制の下に達成されたのだと思う。もし、保護貿易的な政策をとれば、世界の経済は縮小し、米国も大きな打撃を被るのではないだろうか。

米国が抱える白人ブルーカラーの貧困化の原因は、グローバル化による部分もあるだろうが、主に国内での富の不公平な分配ではないのか。ブルーカラーの不満を、グローバリズムのリーダーだった米国が、外国にその責任を押し付けるのはおかしい。

勿論、中国との知財に関するトラブルは、中国の責任として解決してもらわないといけない。しかし、その他の国との貿易自体は公正に行われている筈である。

具体的に話を進めると、トランプ大統領が問題として取り上げている、中国との貿易不均衡や日米の貿易不均衡自体は、本来問題にすべき事柄ではないと思う。世界の経済を豊かにした自由貿易体制においては、既に述べたように、自国が上手く生産出来ない物を生産する国に対しては輸入超過になり、得意な物の輸出相手国に対しては輸出超過になるのは当たり前である。それを一対一の国家間で差し引きゼロを目指すという考えは、物々交換の考え方である。

日本も産油国相手には輸入超過であり、貿易は不均衡だろう。そのかわり、別の国との間では、輸出が輸入を超える。それは当然のことである。日本は米国車に高い関税をかけているわけではなく、単に米国の車にそれほどの魅力がないだけである。円/ドルレートも、市場の取引で決まっており、その値は購買力平価からも日本の円が安すぎるということにはならない。

トランプの自由貿易自体を破壊しようとする、所謂「トランプの反グローバリズム運動」は、世界経済にマイナスだと思う。

ただ、移民阻止や外国資本の流入制限などは、その国が独自に決定すべき政策であると思う。グローバル化は人類の方向であるかもしれないが、あくまで新たな歪や不公正や不均衡を生じないような、ゆっくりとしたプロセスで自然に進むべきだと思う。

利己的な動機で拙速にグローバル化を行うことは、世界秩序を破壊することになると思う。現在の資本移動と資本投下の自由化を含むグローバル化は、速く進み過ぎたと思う。今後、多国籍企業の巨大化には何らかの歯止めをかけるとか、それらが上げた利益の分配の問題を国際的に公平となるような改革など、話し合いが必要だろう。

素人のメモですので、間違いの指摘など歓迎します。

補足:

1)単に人の集まりにすぎない会社(企業)に、法人という独立の人格を与えたのは、独自の権利と義務を普通の人(自然人)のように与え、その企業活動を容易にし、保護育成するためである。それは、あくまでもその社会或いは国家を構成する人のために役立つという前提の下の政策である。

2)多量の移民は、国内部に断層を生じさせる。それが国境を破壊するための企みであるかどうかは、現時点では分からない。ただ、最近のEU圏への移民を目指したボート・ピープルと米国を目指す中米からの移民キャラバンを見ると、似ているような気がする。

3)日本の人手不足は色んな側面がある。人口構成が極めて歪んでいること、定年制、若年層の高学歴化(全く高学力化ではない)など、別途議論し解決すべき問題が多い。また、外国人労働者を入れることに関して、年金問題と絡めた議論もある。

4)中国では多くの分野で、海外企業が進出をする場合、50%程度の資本を持つ合弁企業としてしか許可されないという。つまり、多国籍企業は100%出身国の資本で進出出来ない。

追補:米中覇権戦争と米国第一主義 (11/23/18:30追加)
トランプ大統領の反グローバリズム政策について真正面から反対するのは間違いかもしれない。その強引で利己的に見える米国第一主義は、現在米中の覇権戦争的な展開を見せている。中国の大胆な世界展開に力でストップをかけられるのは米国のみであるから、反自由貿易のような姿勢は、マッドマンズ理論を用いた巧妙な作戦であると考えられないこともない。

2018年11月21日水曜日

グローバリゼーションの系譜と民族の生きる戦略

人は物理的には弱い動物であるが、地球上を支配している。人が生き残り、地球上を支配するまでになったのは、人には代々継承される文化と文明があったからである。文化とは代々継承される知恵の集積である。(補足1) 民族や国家でも、長い歴史とその間に大きくなった知的体系(=文化)がある場合、生き残りに有利だろう。長い間に育てられた文化のレベルは、現在の民族のメンバー個人の知恵と、変化に適応する能力として測られる。以下民族としての生き残りの問題を考えてみる。 1)民族の生き残りは、多民族との競争における勝利である。民族が生き残った理由には、文化と地政学の両面がある。深く高い文化を持たなくても、山岳地深く住む民族は生き残ることができただろう。その逆のケースもあり得る。知や美を極めたとしても、戦いに破れればその民族は消滅する。

地政学的意味は時代とともに変化する。現在、ほぼ究極の移動手段を手にしているので、地政学的に地球は平坦になった。つまり、山岳民族も離島の民族も、簡単には生き残れない。生き残りには、文化と文明における総合的な力が要求される。

13世紀にユーラシア大陸の広い範囲を勢力圏に収めたモンゴル帝国は、必ずしも西欧に比較して高い文化を誇った訳ではない。それには、広いユーラシアでの争いを前提に作られた“武の文化”があったのだろう。

現在、世界を制覇しているとも思われるユダヤ資本を考えると、彼らは民族内での強い人的ネットワークと、政治と金融における知恵と力を持っている。その民族の団結と高い文化のレベルが、相互作用的に彼らに利をもたらした。その背後には、継承したユダヤの信仰(意思)やタルムードなどの知恵があったと思う。

現在、世界は第二次から四次までの産業革命後の生産性向上により、経済的に拡大した結果、戦いの動機はかなり減少している。しかし、将来大量消費の時代が続くだろうから、資源や食料の枯渇が必ず問題となる時期がくる。そして、再び民族の淘汰がなされる可能性が高いと思う。この危機を乗り越えるには、民族としての現状認識および生き残り戦略が不可欠だろう。特に、現在のグローバリゼーションの分析と、それに基づく対応が取れるかどうかだと思う。 2)経済のグローバル化は、国境の破壊又は崩壊への一里塚である。その差し当たりの効果は、先進国への移民の流入と途上国人口の増加と経済発展である。世界を広く経済発展させようとするグローバリゼーションと上記人口動態は、先進国の国境だけでなく文化も崩壊させるだろう。その先頭にあるのが、米国だろう。世界のリーダーの米国は、グローバリゼーションの旗手でもある。 米国は、世界の縮図だと思う。固有の民族も文化もない。その米国で大手を振る概念は、「自由と人権」であり、その社会における具体的表現がマイノリティへの差別撤廃(権利拡大)と法的コンプライアンスだろう。それらは米国の多様性や多文化主義的様相を益々強めて居る。また、「自由と人権」の政治的表現が「民主主義」である。

「自由と人権」そして「民主主義」に最高の価値をおくことが、米国により示された近代政治文化の普遍的方向のように見えるが、それは民族(国家)の生存という点で、全てではない。それと部分的に矛盾するのが、民族のエゴイズムであり、“本音と建前の二重螺旋”のうちの本音として存在する。

この「建前の米国」を世界にひろげる計画の原動力は、本音のエゴイズムである。その計画は、米国を牛耳る一部の逞しい人たちの本音によりエネルギーを与えられた世界戦略なのだろう。既にその方法は米国を牛耳る段階で有効性が証明されている。

マイノリティの一つでもあるユダヤ社会が、その少数派の権利確保という名目で運動を組織化し、米国を牛耳ることに成功したと、政界の重鎮だったブレジンスキーが回顧録の中で書いているという。https://www.youtube.com/watch?v=Z85BnnOPmZ4&t=412s 

ブレジンスキーは自分でタネを明かす不思議な奇術士だと思う。本音を明かす動機はわからないが、それは真実だろう。そして、抵抗勢力をコンプライアンスという言葉で封じてきたのだろう。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43792629.html

その建前と本音の間には、螺旋を数回りしたところで食い違いを生じる。自由の一表現である「銃で守る自由」は、非文化的であり往往にして銃により破壊される。また、“自由”の陰で消えそうに存在するのが“平等”である。経済生活上の不公平係数である“ジニ係数”は、米国において先進国中最大である。(補足2)自然発生した単独の民族から生じた文化なら、自由と平等は2本足のように存在する筈ではないのか?

米国の自由や人権は、建国当初のものから変質して来たのだろう。現在では、建国当初の主要メンバーだった白人達のブルーカラーの部分は貧困層であると聞く。(補足3)国家全体にそのような分断がある限り、米国の「自由と人権」は形骸化していると言える。中国が、内部の矛盾を外部に勢力を広めることで解消しようとして居るとよく言われる。その批判は米国にも当てはまるのではないのか。その姿は、トランプ大統領の外交姿勢で明らかになってきている。民族の淘汰は、見えたり隠れたりするかもしれないが、常に存在するというのが正しい理解だろう。

3)評論家の三橋貴明氏は、ネットでの解説において、国際共産主義運動を第一次のグローバリゼーションとし、資本と人の移動から国境障壁を無くす現在進行形のグローバリゼーションを第二次グローバリゼーションとしている。馬渕睦夫元ウクライナ大使は、その両方とも米国に多く在住するユダヤ資本家たちが推進したと、指摘している。

経済のグローバリズムは、株式会社のために国境を跨ぐ移動に際して、障害を取り除くことである。そのために、人や物、金の自由な移動を可能にする制度である。自由と人権の思想を自然人から法人に拡大し、国境を取り除いて世界に広げようとしているのである。それは、米国がこれまで国内で個人を対象に採用してきた考え方の延長上にある。

地球上に散らばりながら生存空間の拡大を目指してきた彼らユダヤ系資本家たちが先頭にたち、支配下にある法人とともにグローバルな自由度を獲得したのだろう。彼らは、グローバリゼーションの中で生き残る実力と自信があり、グローバリゼーションの中で消滅する他民族と他文化の運命も知って居るのではないだろうか。

馬渕大使は、その中で米国民の多数派で支配層だった白人・アングロサクソン・プロテスタント(WASP)の生き残りのために立ち上がったのが、反グローバリストのトランプであり、グローバル化の弊害から世界を救う活動家だと考えて居るようである。中米ホンジュラスからの移民キャラバンは、そのトランプへの反撃として引き起こされたという考えは十分説得力があるように思う。(昨日の記事)

トランプの姿勢はグローバリズムに敵対する動きであり、トランプが勝てばハッピーエンドだろうか。私には、トランプの単純な勝利は、世界に別の混乱を引き起こすように思える。差し当たり現段階で立ち止まり、今後の世界の未来を考えるべきである。

今回は、中途半端ですが、このあたりで終わります。民族の生き残りを標榜しながら、そこまで議論が進みませんでした。近いうちに続編を書きたいと思います。素人の考察ですので、いろんな角度から不十分な点や誤りを指摘いただけたらと思います。

補足:
1)文化は知恵と慣習の集積だが、慣習は知恵の継承の為に作られた習慣だと思う。つまり、継承する本体は知恵である。
2)http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html
2)ジニ係数を算出するプロットで、右端の富裕層にユダヤ資本家たちが並ぶ。WASP(白人アングロサクソンプロテスタント)の下に、更に有色人種が左側に並ぶのだろう。(補足1参照)それは自由と人権を標榜する国としては異常であると思う。

2018年11月20日火曜日

中米から米国を目指す移民キャラバンの不思議

中米ホンジュラスを出発した米国への移民を目指すキャラバンの約3000人が、グアテマラを経てメキシコに流入し、米国との国境の町ティファナに到着した。更に、4000人ほどが近く合流する見通しだという。ティファナ市長によれば、移民の流入は「少なくとも今後半年は続く」見込みだという。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181119-00010000-aptsushinv-n_ameもう一つのサイト

このキャラバンについては不思議な点が多い。出発はホンジュラスだそうだが、SNSで参加を呼びかけたのは誰なのか、何故グアテマラ国境を突破できたのか、何故、メキシコ国境を突破できたのか? 米国大統領がメキシコ国境に壁を築くと宣言したトランプの時に、何の保証もなくキャラバンに参加することなどできるのだろうか?(ウィキペディアに記述がある。)或いは、なんらかの保証のセリフを語るものがいたのか?

グアテマラやメキシコと言う国々はそんなに簡単に国境を突破できるのか? 普通の感覚では、国境警備隊に銃撃されると考えるだろう。私の想像だが、そのようにならなかったのは、国境警備隊を指揮する立場の者がなんらかの利益と引き換えに国境を開いたのだろう。

トランプ大統領は、その背後に民主党がいると選挙演説で主張したという。http://www.afpbb.com/articles/-/3194542 素人の感覚では、民主党が党としてそのようなことを画策するとは思えない。例えば、民主党を支援する勢力とか、大統領はもっと真実に近い情報を知って居るだろう。

その他に協力者として報道されているのは、著名なユダヤ人投資家のジョージ・ソロスの関係団体である。つまり、ソロスのオープンソサエティー財団や一部企業が支援して居るという報道がなされている。そのあたりのことは、このサイトに書かれている。

その記事の執筆者は、ソロスは人道的立場で貧しい移民希望者を支援しているのか、世界をボーダレス化して現政権を転覆させて、社会主義化させようとしているのか、或いは税金逃れのためなのか、見極める必要があると記事を結んでいる。

トランプ大統領は簡単には入国はさせないだろう。その結果、キャラバン参加者はティファナで長期間、不自由な暮らしを強いられるだろう。町の治安は悪化し、被害を受けるティファナ市民とキャラバン参加者との摩擦など、大きな混乱が生じる可能性がある。

このようなキャラバンを無責任に立ち上げたのがソロス氏だとすれば、彼は決して人道的立場にたつ人物ではないだろう。何千人という人の運命をあまりにも軽く見て居ると思う。

兎に角、トランプ大統領は難問を抱えたことになるだろう。
今後恐らく、メキシコは国境を閉めるだろう。この騒動で私腹を肥やした者もいるだろうが、その事実も次第に明らかになるだろう。ひどい事件であると同時に、世界の政治を知る上で非常に興味深い事件でもある。

2018年11月16日金曜日

日露平和条約に米国の協力は得られる筈:新冷戦の中での露日米の融和関係樹立の主張

1)日本は西欧的近代文化の中にある国であることを明確に表明すべきである。その論理を交渉の枠組として、日露平和条約にトランプ・米国の協力は得られる筈である。

昨夜の産経新聞配信のネット記事は、日露の領土交渉についてまとめている。その日露交渉史は、ロシアの返還可能な線と日本の要求する線が、位相を異にして、歯舞色丹両島返還を中心に南北に動いていることを端的に記述している。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181115-00000615-san-pol

ロシアの姿勢が強硬になる原因は、常に日米安全保障条約である。それは、北方領土が東西冷戦の現場であったことを示している。現在、東西冷戦は殆ど消滅して新冷戦の時代であると考えれば、ロシアは少なくとも現在その中心には無く、米国の協力とロシアの理解は、得られる可能性がかなりある。安保条約の役割も変化している筈だからである。

何れにしても、日本や朝鮮半島は冷戦での対立の境界線上にあり、従って、日露平和条約は考え方によれば新冷戦を緩和する役割を持つ。安倍内閣がこれ迄のように、東西冷戦の谷間で他動的に揺れるのではなく、自発的に新冷戦の緩和と解消に貢献出来るチャンスでもある。

新冷戦において、米国の相手の中心に現在存在するのは言うまでもなく中国である(追補2)。その中国との間では、日本は自由と開かれた貿易体制を築くというスタンスで関係改善を探っている。その両方(対中関係と対露関係)を上手く組み合わせることで、日本が新冷戦の解消に寄与出来る可能性があり、安倍総理はそのように動いていると思う。

トランプ・米国は、既に多極化の方向に動いている。しかし、中国が世界を中華秩序の中に飲み込んでしまうのではないかという懸念が、新冷戦の心理である。そして、ロシアをその中華新秩序のパートナーにするとすれば、米国の非常に愚かな選択となるだろう。

従って、日露平和条約締結への協力を切っ掛けにして、米国はロシアを一歩、新冷戦の中心から遠ざける事ができるのである。米国の協力とは、「今後(21世紀以降でも良い)新たなに日本領となった地域は、日米安全保障条約の第6条の適用外とする」の一文を日米地位協定に入れることへ同意するだけである。(最下段の追補参照)

2)紳士的敵対と野獣的敵対

これら一連の新冷戦を小さく砕き、解消させる方向に努力する日本外交の基本的論理は、日本は西欧近代文明の枠組の国であり、新興巨大勢力となった中国もその枠組の中に迎え歓迎する手引き役となり得ると主張することである。既に中国は、自由で開かれた貿易体制という、西欧の論理が中国の利益とも一致するとして受け入れているので、全く不可能な話ではないだろう。

中国がその発展のペースを緩め、一帯一路構想も自由と公正の西欧論理の枠組みで展開すれば良い。岩礁を元に埋立地をつくり、それを新しい領土とするような(西欧文化の中心的論理と矛盾する)姿勢を今後はとらないという意味の声明を、中国が得意のレトリックを用いて言明すれば良い。その中に、「中国は借金外交(China debt diplomacyの訳)など、元々意図しなかったのだ」も折り込めばもっと良いだろう。(補足1)

国家の間であれ、個人間であれ、敵対関係は当然ありえる。しかし、その敵対関係が紳士的或いは文明的なものか、それとも野獣的或いは異星人的であるのかは、大問題である。中国には少なくとも文化的で紳士的な敵対関係を、米国側(日本もその一員である)と取ってもらいたい。そのように中国と交渉できたら、日本の初めての主導的で自発的な国際貢献となるだろう。

その西欧文化圏の中に、ロシアは存在する筈である。米国のトランプ大統領には、新冷戦の拡大を防止するという観点から、日露平和条約の締結に理解と協力をしてもらうことは、可能だろうと考える。

補足:

1)韓国は、日本と同様に東西冷戦の谷間に浮遊する木の葉のような存在であった。日本と異なるのは、この数百年同じような情況だったことである。そのため、彼の国(かのくに)は、西欧近代文化を全く吸収していない。それが、日韓対立の根本原因である。韓国は、親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法(ウイキペディアの同項目参照)などを持つ国であることを、世界に宣伝すべきである。徴用工問題も、法治主義という西欧近代文明を受け入れていない為に生じた話である。

追補:(16日21:00)日米安保があっても、日本の意思で色丹歯舞への米軍の展開は無いようにできる。佐藤優氏の解説参照: https://www.youtube.com/watch?v=uSzA57m0fag 追補2(17日午後2時半):新冷戦についての私の理解は間違っているかもしれません。現在でもシリアなど中東での対立が主なら、ロシアが新冷戦の中心だということになります。しかし、対中国の方が現在は大きな対立に見えます。

2018年11月15日木曜日

日露平和条約を二島返還を大きな成果と考えて結ぶべきである。また、統一朝鮮の成立前に日朝基本条約の締結と拉致被害者の救出を同時に達成すべきと考える

以下は、政治の素人の夢想を書いただけのものです。予めお断りしておきます。

1)安倍総理とプーチンロシア大統領がシンガポールで会談した。安倍総理は歯舞色丹の平和条約後の返還を約束した日ソ共同宣言をベースに、今後平和条約締結交渉をする意向らしい。中日新聞一面及びNHKニュースではそのように報じている。

中日新聞の朝刊三面の記事では、あくまでも4島返還が日本政府の方針であるとしており、平和条約と領土問題解決に際して日露両国の間には依然として深い溝が存在すると書いている。その一つとして、仮に二島返還で話をまとめるにも「これらの北方4島が第二次大戦の結果、合法的にソ連領と認めることが必要条件となる」とロシア側外交筋の考えとして書いている。

ただ、中日新聞等ではこの平和条約交渉の経緯についてあまり詳細には書いていない。(補足1)また、上記ロシア外交筋が用いたという「合法的」という言葉は、国内法の「合法的」とは意味がことなるが、その使用に何の配慮もない。

サンフランシスコ条約の際、千島列島の放棄に同意したのだから、そして、ソ連は戦勝国連合の同意を得て千島を取った。それを合法的というのなら、合法的であることは明白である。国後と択捉は放棄した千島に入るのは、吉田茂首相と西村条約局長の国会答弁でも明らかにされている。

更に、日露関係の改善を現在の国際情況全体の中で考えるという視点が全く欠けている。日本国民に日露平和条約締結に反対するように仕向けているのは、中日新聞、恐らく関係の深い東京新聞や朝日新聞が、反日新聞であることの結果だろう。

この件については、9月21日のブログ記事に書いたように、早期の平和条約締結が日本にとって大きな利益となる。是非、年内或いは出来るだけ早期に、日露平和条約を実現してもらいたい。何故なら、日本に時間はそれほどないからである。(9月21日の記事参照)

2)米国は北朝鮮との交渉での着地点をどのように設定するかは、中国と北朝鮮の関係次第だろう。北朝鮮が中国の属国ではなく、まともな独立国としての地位を得られるのなら、核兵器を隠して持つことを米国は許容するだろう。それは将来の、核を持った統一朝鮮の誕生に繋がる可能性を大きくする。

日本が何も手を打たなければ、中国、ロシア、朝鮮、米国の4つの核保持国の谷間で、孤児のようになり、経済と政治の両面で消滅の危機に晒されることになると思う。将来的には、米国はグアム以東に退き、日本との関係も緊密でなくなる可能性が高い。

最近の国際情勢では、米中新冷戦は今後数十年に亘って続く可能性が強いと見えるが、それは全く予測不可能である。米国にそれだけの体力があるかどうか分からないからである。

従って、日本はロシアとの関係改善、中国との関係改善などをオプションとして持つべきだろう。何方が簡単かと言えば、現在はロシアとの関係改善である。何故なら、米国と中国の覇権争いが差し当たり現在の国際環境の主なる潮流だからである。ロシアとの関係改善と極東での経済発展は、中国とロシアの間に一枚岩的な反日の動きを封じることに繋がるだろう。

韓国の徴用工裁判を見れば判るように、国際社会は準野生の世界である。法も正義も国際会議の中の話であり、二国間の外交や交渉の現場は、法と正義の支配から戦争までの間の連続した空間を作っており、「合法と非合法」などという言葉で仕分けができる空間ではない。

日露が接近できたとしても、更に、北朝鮮、韓国、中国の間に一枚岩的な反日同盟関係を築かせないためにはどうすべきかを考えるべきだと思う。場合によっては、北朝鮮といち早く日朝基本条約を締結し、拉致問題と一緒に片付けることも考えるべきだと思う。

韓国の反日は、北朝鮮が韓国で展開したオルグ活動の結果の可能性が高い。それは日韓の関係に楔を打ち込み、日米韓連携を崩す為だろう。現在、日韓関係は破壊に向けて進んでいるので、日本は北朝鮮との基本条約を、韓国による日本の負担額の吊り上げ工作(補足2)の前に、結んでしまうことが良いと思う。それは、反日統一朝鮮の誕生と成長を遅らせることにも繋がる。

元々、民主国家を経験した韓国と中世的共産党の名を冠した王朝との統一は、相当に難しいのだから、北朝鮮による韓国の吸収合併以外にその道はないだろう。文在寅韓国大統領の考えていることと、韓国一般の考えていることは大きく異なる可能性が高いと思う。

補足:

1)日ソ共同宣言は、米国の傀儡政権である吉田内閣ではなく、鳩山一郎内閣のときに締結されたことに注目すべきである。この二島返還で日ソ平和条約を結びたいとの鳩山内閣の意向を拒絶したのが時の米国国務長官ダレスであり、そのときに4島返還論が出来たという。(9月21日の記事参照)

2)徴用工問題は、北朝鮮と日本の基本条約締結に関する日本側の敷居を高くするためなのかもしれない。この効果自体については4日のブログ記事で書いた。
トランプ大統領は、金正恩を高く評価する発言を何度もしている。その意味は、もし米国が北朝鮮を承認し、その経済復興を日本にやらせれば、中国から独立した国家に育つ可能性があるからだろう。

河野外務大臣がしっかりした政治家であることを証明した動画+α

1)以下のyoutube にある動画が面白い。末松という立憲民主党衆議院議員が国会で質問に立ち、河野太郎外務大臣が答弁している。https://www.youtube.com/watch?v=eg1IsfFjVT0 

末松議員の質問は、3日に発表された河野外相の談話に関するものだろう。それは、トランプ米政権の新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」に関し、「わが国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にした。高く評価する」という談話(意見表明)である。

産経新聞によると、河野外相は「北朝鮮の核・ミサイル開発の進展で安全保障環境が急速に悪化している」と指摘。米国と危機意識を共有するとした上で「日米同盟の抑止力を強化していく」と表明したようだ。 https://www.sankei.com/politics/news/180203/plt1802030009-n1.html

末松議員は、「河野太郎さんは、2,3年前に世界から核廃絶する道を開くべく日本政府も努力しなければならないと(理想論を)話していた筈だが、その話は何処へ行ったのだ」という意味の質問を必死にやっているのである。そこで以下のコメントを投稿した。

末松さんは格闘しています。目標は核廃絶信仰へ河野太郎を勧誘すること。しかし、河野さんは当然現実問題を喋っている。宗教への勧誘は、教会の前でやることなのだが、場所を間違えている。戦場の指揮官に向かって、神の愛を説いているのだ。誰か、漫画に描けば面白い。

2)この動画は、政治家河野太郎の姿勢が明確に示されている点、そして、立憲民主党などの野党議員の国会活動の本質が見える点で、興味深い。河野さんは、現実と理想を上手に使い分けている。

本音と建前の使い分けは、民主主義世界の政治家教育では、初等中等教育の必須科目だろう。素人である大衆の前では建前を語り、玄人である筈の政治家の中では現実を語るのが、これまでの政治家の姿勢だったからである。

しかし、ネット社会になり、この政治家の姿勢維持が難しくなったと、昨年なくなった米国のブレジンスキーが白状している。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43792629.html

ブログの記事を読んでもらえば分かる通り、最初の発言でブレジンスキーは、ユダヤ社会がマイノリティーの権利拡大という「建前」で、「現実」の米国政治の支配権を獲得したことについて言及し、更に2番目の発言(100万人云々の話)で、その建前が通用しなくなりつつあることへの懸念を表明した。

そこでは、知りすぎた素人は殺した方が楽だと発言してしまった。(補足1)それは、玄人はだしの素人が現れたからである。現在、知識を持った素人とズブの素人的な職業政治家が、共存する時代となった。

そして、理想論ばかりで現実論など頭の端にもないのが立憲民主党の議員たちであることをリトマス試験紙的に示したのが、この動画での末松議員の質問である。(時々同僚から起こる拍手が、リトマス試験紙が有効であることを示している。)

日本の国会の正常化には、国民一人ひとりがユダヤ人のように原点から物事を考える習慣を身に着け、この手の理想論しか頭にない政党や議員を出来るだけ国会から排除することが必要だろう。

補足:

1)ただこのケースでは、年を取ることが、秀才ブレジンスキーからも本音と建前の使い分け能力を奪ってしまうことを証明したのか、それとも、年を取れば、話し相手すら間違えてしまうことを証明したのか、更には、玄人だけの秘密の会議を盗み聞きして、誰かがネットに流したのかわからない。

この発言は、「知りすぎた素人100万人を説得するよりも、殺したほうがよほど簡単だ」である。https://www.youtube.com/watch?v=Gc9rsvBIh9Uにあったのだが、今は削除されている。グーグルで「ブレジンスキー、100万人」で検索すれば、それに言及したサイトが出てくるが、そこで引用された動画は全て削除されているようだ。これも恐ろしい現実を示している。

2018年11月9日金曜日

外国人労働者の受け入れの前に日本の労働文化を見直すべき

1)安倍政権は、外国人労働者の受入枠拡大のための法令を、準備しているようだ。単純労働者を大量に入れることになるかもしれないのに、殆ど国民的議論のないままにそれを推し進めようとしている。在留資格として、専門性の高い職種のほか、特定活動従事という訳のわからない資格を設けて、要するに単純労働の長期在留者を作ろうとしている。それが一つの移民制度でなくて何なのか。(補足1)

日本の政府は、差し当たり労働者が必要だからという理由だけで外国人を受け入れるべく、なるべく有権者の反発を招かない文言で法令をつくるつもりだろう。しかし、それが将来的に移民に変身する可能性があるのなら、最初から移民制度として考えるべきである。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181109-00184845-diamond-bus_all&p=1

現状で移民を受け入れれば、日本社会は諸外国以上に不安定になるだろう。日本が、個人主義文化の国でないからである。会社の採用のあり方や就労形態を見ても、諸外国とは全く異なる。会社への就職は、主従の関係樹立であり、労働力を売り買いする契約ではない。そこに単純労働の外国人を実習生や短期雇用の労働者の形で入れれば、大きな不満を生じることになるだろう。その不満を持った多数の外国人が発生すれば、将来国際問題の火種になる可能性すら存在する。

70年以上も前の徴用工問題で、日韓の間に修復不可能な亀裂が生じようとしていることを、どう考えているのか?

一定数以下の少数の外国人なら、ローカルな努力が社会全体の問題になる前に、不満を吸収できるかもしれない。しかし、多数の外国人在留者が一定の社会的勢力にまで成長すると、現在の日本文化と致命的に衝突し、社会全体が不安定となるだろう。その事態になれば、治安の悪化や様々な社会的コストの増加で、日本の政治経済は破壊される可能性すらあると思う。

世界の中の日本を考える際、日本独特の文化をそのままにして、国際化社会に生きることは出来ないだろう。その議論を先ずしてから、外国人労働者の受け入れを考えるべきだと思う。

2)労働力の不足の問題も、総合的視点にたって問題点を整理しなければ、真に国家の利益となる様な解決法は見つからないだろう。経済界の一部から強力な圧力が政権側にあったのだろうが、その企業のエゴイズムに屈する形での法令改正は、国民への背信行為である。

先ず、労働力は何故不足しているのか?という問題を考えるべきである。GDPはこの20年間ほとんど増加していないのに、何故労働力が不足するのか。GDPが一定であり、労働生産性が減少した訳でもないのなら、通常労働力不足は考えられない。(補足2)

突然経済成長が始まった訳ではないのだから、老齢人口の増加と若年労働力の不足が原因だろう。しかし、それは本質的な労働力不足ではない。労働力があるにも関わらず、それを有効利用していないだけである。

もしそうなら、日本独特の中世的な労働文化を廃止して、西欧と同じ様にすれば問題は解決する。それは、会社と従業員の関係を、労働力の需要側と供給側という普通の関係にするだけである。そうすれば、定年制廃止がただちに可能であり、大量の「労働市場に提供される労働力」が発生する。(補足3)

また、その労働文化の改革により、若年労働力の不足も解決する可能性がある。何故なら、高校や大学の卒業生にとって、就職の意味が大きく変化することになるからである。大手企業と封建的な関係を結ぶわけでないのなら、一流大学に入学していなくても、自分の技量と能力を示せば、就職出来るはずである。就職という点だけなら、90%の仕事において大学教育など不要だろう。相応の中等教育と社内研修で済むだろう。(補足4)

大学進学率が日本や韓国で非常に高く、社会が学歴に異様に拘るのは、22-3歳のときの一流企業への就職が人生を決めるからである。人生は80年と長いのに、何故その大学に入る前の5年間ほどの努力、つまり体力と執着力、で全てが決まるのか?

米国では、仕事にアプライする際、履歴書に年齢は書かない。そして、年齢差別は強く禁止されている。雇用関係を、純粋に労働の需要側と供給側の関係と捉えることで、労働力の再配分の能率を上げているのである。まさに、適材適所がネチネチした人間関係に邪魔されることなく達成される社会なのである。 http://www.dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3509534_po_r070601management.pdf?contentNo=1&alternativeNo= 

そのような労働文化であれば、パワハラなど生じる素地はなくなるだろう。そのような上司の下には優秀な労働力は自然と来なくなるからである。無駄な高等教育もなくなり、大学に就業している教員や事務員が多数、企業に流れることになるだろう。

老齢の者も、そのような社会になれば、自分の能力を客観的に把握できるようになり、相応の社会貢献も可能になるだろう。定年後の優れた能力をボランティアとしてのみ用いるのは、もったいないと言える。

そのように考えれば、外国人労働力など、経済成長しない現状では日本に不要だろう。そして、経済成長は労働生産性の向上によりなされるべきである。その正常な経済成長なら、尚更外国人労働者は高度な人材に限る事が可能となる。

補足:

1)この法案を読んだことがなく、報道された記事の概要だけで議論しています。間違い等の指摘があればお願いします。

2)給与は労働生産性と比例関係にある。給与が殆ど一定であるから、労働生産性が減少したわけではない。

3)前日まで年俸1000万円の労働力が、突然ゼロ近辺まで落ちるのが定年制である。それは、労働力の対価として給与があるのではなく、椅子に給与が張り付いていることを示している。日本では、この種の多数の椅子が社会を硬直化させている。それに気づくべきだ。

4)前の記事でも書いたが、佐藤優氏が日本は学歴社会ではなく、入学歴社会だと言っていた。つまり、一流と言われる大学を卒業して一流の学力をつけることが社会で成功する鍵ではなく、一流と言われる大学に入学することが成功の鍵だとうのである。華々しい人生は、一流の高等教育ではなく、私立中高一貫教育を受けた中等教育によりもたらされるのである。

2018年11月4日日曜日

人の幼児期が長いことと、言葉と道徳とを学ぶこととの関係について

人は言葉を話し、人の言葉を信じる動物である。どのようにして人は言葉を話すことになったのか?人は何故、他人の言葉を信じることができるのだろうか。以下、断定的に「である」で終わる言葉は、学説を確認したという訳ではなく、単に自分の考えを述べたにすぎないことをお断りしておく。(補足1)

人は長じて嘘をつくようになる。嘘が社会生活の上で一定の効果を持つのは、その嘘の言葉を人は信じるからである。人は、全く前提を置かずに言葉を聞き、その後言葉の意味と信ぴょう性を判断するのではなく、信じることを前提としてその言葉を聞くのである。人が「止まれ」と言えば、それを聞いた人は先ず止まるだろう。そのことからも、上記命題は明らかである。

言葉は幼児期に人の頭に埋め込まれるのだろう。その段階では、まわりの人は皆その幼児の味方である。従って、自分が聞いた言葉と自分の体験が常に一致する。その一致により、幼児は言葉を学習すると同時に“言葉を信じる性質”を獲得するのである。人の乳幼児の期間が長いのは、道具としての言葉の学習と、それを用いた人との情報交換の方法を学習するためだろう。

人が草食動物のように、早期に自分の足で歩いたり走ったりできれば、生存に有利だと思うだろうが、人間としてはそうではない。

生まれてすぐに歩き出せば、言葉の習得前に、幼児は自分の味方以外の人物と出会うことになる。その結果、幼児は言葉が信じられないことを学ぶと言うより、言葉そのものの学習が出来ないことになる。言葉を学ぶには、頭脳が完成したとしても少なくとも2年程かかるだろう。従って3-4歳までは、完全に信頼できる母親とその家庭の下で育たなければ、言葉の習得と言語文化の基本がまともに習得出来ないことになるだろう。

「駄々をこねる」のも、言葉を学ぶ一環である。それに対する、親の反応を見ることで、幼児は言葉が人に何かを要求する時の道具となることや、その際の限度などを学ぶだろう。道徳とは、個人が要求できる範囲の自覚であると考えると、言葉と道徳は一体として幼児期に習得されることも理解できるだろう。

以上の説明で、幼児教育の大切さ、特に、母親と家庭が言葉と道徳の学習に如何に大事かが理解できるだろう。現在、男女平等や女性の自立が議論されている。また、それを助ける保育施設の拡充が課題だと考えられている。心配なのは、その様な議論をする人たちは、人の言語習得や道徳学習などにとって非常に大事な幼児期を対象にしていることを、十分考えているのではないことである。

何故なら、人類は未だ自分自身を理解していないからである。

補足:
1)ネット検索をしても、人の幼児期が長い理由についての議論が見当たらない。多分定説はないのだろう。

追補:今回の議論の基礎は、ダーウィンの進化論である。つまり、言葉でのコミュニケーション能力のある人が、肉体的に丈夫な人よりも人間社会に適応できること、それに適者生存の原理を仮定している。やや禁句に近いことを言うと、豊かさと平等は、人の平均としての社会的能力を低下させる。また、男女が分業的に生きてきた過去の歴史を否定し、同じことを権利として主張することも同様である。
(補足と追補は、11月5日早朝追加)

韓国最高裁の徴用工問題判決:政治を法と論理の世界だと思う日本の愚かさ

1)徴用工の問題で日韓関係が揺らいでいる。韓国最高裁は、韓国人元徴用工の主張を認めて、元徴用工に対し当該日本企業に賠償を命じる判決を出した。原告の要求は、未払い給与の支払いなどではなく、劣悪な環境で働かされた苦痛に対する賠償要求であり、当時の日本国家の決定に基づいてなされた徴用工制度に直接関係する。従ってそれは、日韓基本条約と同時にむずばれた請求権協定で、韓国側が一括放棄した権利である。この件、昨年8月のブログに既に議論している。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/08/blog-post_18.html

今朝(2018年11月3日)のテレビ番組ウェイクで、中央大法科大学院教授の野村修也氏は、「韓国は三権分立の国だから、大統領もこの判断を覆すことは出来ないだろう」と言っていた。この発言は、意味不明である。司法の判断を大統領権限で覆すことなど、出来る訳がない。多分、野村氏の発言は、「大統領はその最高裁の判断に従って、日本企業へ賠償させる様に動かざるを得ない」という意味だろう。しかしそれは単純な解釈だと思う。通常なら、大統領がその司法判断に従って行政を動かすだろうが、国家にとって非常に重要な影響がある場合、それを無視することも考えられるからである。

民主国家における行政の最終判断は、主権者の国民によりなされるべきである。しかし、国民全体の意思を直接確認することは通常不可能であり、それを国民の選任による国家元首が行う。つまり、大統領が日韓関係を破壊し、国民全体が多大な損害を被ると考えた場合、特例として司法の判断をそのまま行政に直接反映させないことも可能だろう。

以上述べたことは、通常大統領と呼ばれる地位は国家元首であり、単なる行政官のトップではないということを根拠にする。つまり、大統領の権威は三権の上位に位置する。極端な例をあげれば、国家存亡の時には国家元首は、憲法などの国家の法体系を停止する国家緊急権を行使する。(補足1) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E7%B7%8A%E6%80%A5%E6%A8%A9

もし韓国がそのような国なら、当然文在寅大統領は、韓国の今後の行政に今回の最高裁判決に従った措置を取るかどうかの判断が可能である。それは、福田総理のときのダッカでの人質解放の時にとった措置と同類である。

この問題が大きくなるとした場合(この放送を観た感想だが)、テレビが国民に正しい情報を与え、考える材料を与える役割など出来そうにない。日本の電波は、レベルの低い人達や、仮面を被った反日スパイ的な人に支配されているからである。

おそらく文在寅大統領はベトナムのような統一朝鮮を考えているだろう。その場合、韓国経済はひどい情況になる可能性がたかい。また、北朝鮮は日本と日韓基本条約に相当する条約を結ぶことになる筈である。その際、巨額の戦後賠償を得るには、この問題を大きくしておくことが有利だろう。

韓国は消滅するのだから、韓国に相当する地域は、二度目の賠償金を日本から手にするチャンスであると考えているかもしれない。

2)今回の韓国最高裁の判決は、文在寅大統領の顔色をうかがって出された判断だろう。今後それを利用して、無から有を出す日本相手の韓国風錬金術として利用するためである。そのようなことをすれば、国際的な悪評を世界にばらまくことになると、ナイーブに日本人は考えるだろう。

Youtube動画などでも、韓国批判をして溜飲を下げるような内容の動画がほとんどであり、テレビ同様に視野の狭い内容を流布している。その中で、日本の多くが簡単に片付ける程には単純な問題ではないと指摘したのが、佐藤優氏である。佐藤氏は、以下のような問題点を指摘している。 https://www.youtube.com/watch?v=T6vJjPpQnw4&t=1068s 

①日本企業は、保障をする法的義務が無いとしても、人道的観点と企業イメージの毀損を防止する観点から、個別に保障をしてきた例がある。今回の判決で、それが出来なくなるだろう。それが、韓国内に日本に対する不満を更に大きく醸成することになる。

②韓国が、日本企業の韓国内資産を差し押さえることになれば、日韓の経済交流は大きく縮小し、多大な経済的損害を生じることになる。更に、韓国は米国に存在する資産を差し押さえるべく、弁護士を使って活動した場合、米国での経済活動においても、日本企業は韓国リスクを背負うことになるだろう。もし、中国が韓国に習って、同様の行動をとれば更に大変な問題になる可能性がある。

③法理論としては日本側に利があるとして、安閑としていては日本が巨大な罠にハマってしまう可能性がある。その方法は、日本の徴用工の悲惨さを慰安婦問題と同様に捏造宣伝することである。その様に、米国市民の感情に訴えた場合、日本の国際的イメージを大きく悪化させることになる可能性がある。中国と韓国がこのようなプロパガンダを展開することになれば、慰安婦問題との相乗効果で、日本が窮地に立たされる危険性もある。

世界は衆愚政治の時代に入ったと思う。その兆候は、米国や最近のブラジルなど、到るところに現れて来ている。法と論理による政治参加ではなく、感情と怒りによる政治参加を主張し、それを扇動することで利益を得ようとする勢力が世界に台頭している。日本はそのような世界の動きに鈍感である。未だに、法と論理で物事が運ぶと幼稚に考えている。

貧富の差の大きい中国と米国(補足1)で、そのような衆愚政治の嵐が吹けば、世界は混乱の時代に入る可能性が高い。経済のグローバル化と先進国での大きな貧富の差が、そのような素地を一層強く世界中に作り出した。高い貧富の差に苦しむ世界の衆愚は、生贄を必要としている。そこで、最初の犠牲に日本国がなる可能性がかなり大きいかもしれない。非常に心配である。

補足:
1)貧富の差を表す統計数値にジニ係数がある。主要国の中でそれが大きい代表的国家は、米国、ブラジル、中国である。低い国家として北欧諸国がある。http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html