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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2019年11月27日水曜日

北欧型社会主義の利点:「アメリカの崩壊:伊藤貫氏の講演動画」に対する追加

伊藤貫氏の下に引用の動画は、米国でのトランプ大統領という異色の大統領が誕生することになった背景について、議論することを目的としている。https://www.youtube.com/watch?v=Y_oD0ZWfWz4&t=4225s

私は既に、この動画の内容の要約と感想を記事として掲載している(11月13日の記事:崩壊する米国と道に迷う世界)。在米ブロガーのchuka氏が、この動画に関するコメントを、私の解釈に対する感想を含めて、掲載した。https://ameblo.jp/chuka123/entry-12548210120.html

私にとっては意外に思う内容もあるので、ここにこの動画のエッセンスを再掲し、私の解釈への追加、及び上記コメント記事への感想を書くことにした。今回更に、社会と個人の関係についても、少し考えてみた。素人の考えなので、自由に議論してほしい。

1)前回議論の内容の要約と追加:

伊藤氏は動画で、米国は近い将来、(a)貧富の差の拡大と富裕層による政治支配の進行、及び、(b)白人人口の減少とヒスパニックや黒人人口の増加により生じる歪の拡大、の二つの大きな変化により、米国社会が不安定化すると指摘した。(補足1)

上記(a)の原因は、米国がリーダーとなってネオリベラリズム的政策を進めることで、世界経済のグローバル化を進めたことにある。そのグローバル経済の中心にある米国金融資本に利用され(そして、逆に、米国金融資本を利用し)、グローバル化経済の現場となることで豊かになったのが、当時発展途上国の中国である。そして、切り捨てられ貧しくなったのが、米国内の白人ブルーカラーである。

その発展途上国の代表である中国が、米国副大統領により(昨年10月のハドソン研究所での講演において)、米国のライバルと確認されるまで巨大になった。また、米国に足場を置いてきた金融資本も大きくなるに従って、米国や米国民のための存在ではなくなった。その両方とも、現在の米国にとっては大きな問題となっている。

尚、伊藤氏の上記議論の延長上に意識されるのが、米国内で予測される政治的混乱とこれまで米国の一極支配だった世界が多極化することである。米国の世界経済におけるシェアの減少、その一方での中国のシェア増加により、米中の二極構造になるという予測である。

以下、近い将来の世界に対する私の考えを示す。其々の覇権域をサブドメインに分けると、核保有国であるロシア、欧州、インドなども地域的な極を形成するかもしれない。その際、米国とオセアニアとインド、さらに東南アジアの数カ国は、インド太平洋構想により巨大な覇権のベルトとして、更に、米国と欧州はNATOと言う覇権のベルトとして存在するだろう。それに加えて、世界には2,3の独立国家、パキスタン、イスラエルなどが、存在するだろう。

しかし残念ながら、伊藤貫氏の予測によれば、日本は東北アジアにおいて孤立し、10年程度の短い期間のうちに中国覇権域の中に包含される。現在の日本の国防体制と国民の国防意識から考えて、それは90%程度確実だと言う予測である。

日露同盟の可能性だが、米国がロシアと同盟関係になれば、考えられると思う。そしてそれが、中国共産党政権の崩壊の唯一のシナリオの最初の部分だと思う。

以上は全くの素人の予測である。しかし、米国のインド太平洋構想の中に、日本が入らない可能性を独自の考えとして、今年の4月の記事に書き予言している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516823.html そして、その記事の中で、安倍総理の親中姿勢の原因だろうと書いた。

この米国のインド太平洋地域の戦略構想は、今年6月、米国で決定されたという。この事実とその背景については、最新のチャネル桜の「日本核武装論」で矢野義昭氏が詳細に言及している。(2時間43分以降、50分までの間に語られている:https://www.youtube.com/watch?v=l3WVHGBNC68

ただ、安倍総理の姿勢変化の理由については、チャネル桜の出演者は気がついていない。(勿論、私の考えが間違っている可能性もある。)

2)Chuka氏のブログに書かれた伊藤貫氏の動画に対する感想について

Chuka氏は、①伊藤貫氏の主張(a)は、2016年の大統領選挙における民主党候補の座を争ったサンダース氏とほぼ同じであること;そして、②社会主義者のサンダースは、スウェーデン型の福祉国家を目指していると書いている。更に、スウェーデンでの一般市民の経済生活について紹介し、米国市民はスウェーデン型の政策に馴染まないだろう、と指摘した。

この最初の指摘、バーニー・サンダースを過去一度支持したことを理由に、伊藤貫氏が社会主義に共鳴する人間の様に評価するのは、間違いだと思う。米国の経済システムには、補正が必要である。その補正項として、バーニー・サンダースの政策を支持したのだろう。つまり、従来の米国の政治の考え方に対するアンチテーゼとして、サンダースを評価したに過ぎないと思う。

伊藤貫氏の政治思想は、一昨年に自殺した故西部邁氏の思想に近い。メインストリームに無いのは事実だが、それはメインストリームが米国に与えられた幼稚な民主主義を継承しているからであり、本来は保守本流にあるべき考え方である。

次に、②のスウェーデン型社会主義に対し、収入の60%を税金で支払った上に、物価が非常に高いスウェーデンの政治体制には、米国人は親和的でありえないというChuka氏の指摘は、一方的な様に感じる。それは、トランプ政権の誕生そのものが証明していると思う。

米国人の考え方はともかくとして、このスウェーデンの物価や租税負担率の話について、少し調べたので書いておく。

上図は、各国の国民負担率(租税負担率と社会保障負担率の合計;2016年のデータ)をグラフにしたものである。それは、米国では33.1%、日本で42.8%、スウェーデンで58.8%である。驚くのは、フランス、ベルギー、デンマーク、ベルギー、オーストリア、イタリアなどは、これらの値より高いという点である。北欧型社会主義と人々は言うが、ヨーロッパ諸国の国民負担と、実はそれほどの大差がある訳ではないのである。

また、Chuka氏はスウェーデンの物価高を住みにくい感覚として上げているが、これも一方的だと思う。つまり、物価の国際比較はなかなか難しいという点を看過している可能性があると思う。品目間での物価のばらつきは、国によってまちまちであること、そして、それらの実際の数値は、為替によって換算されていること、の2点に注意が必要だと思う。

一般に、ある国からの輸出品は、自国製品が国際的に安価であるから輸出されるのである。逆に、輸入品は、その品の国内価格が国際的にみて高価であるから輸入されるのである。従って、スウェーデンでの食品などの物価高は、それらがスウェーデンの輸入品であることを指摘したに過ぎない。(追加:日本のエネルギー高と似ている)

更に、伊藤貫氏がキャピタル・ゲインに対する課税を31%から20%に下げたクリントンをボロクソに貶していると指摘しているが、私にはそのような発言には聞こえなかった。批判したが、決してボロクソではない。ボロクソに批判したクリントンとは、奥さんのヒラリー・クリントンの方である。

ビル・クリントンの経済政策は、日本でも評判が高く、新書版のクリントンを褒め称える本が出ている位である。従って、キャピタル・ゲイン減税も、その経済政策全体の中で論ずべきであり、個別に取り出して批判するのは、Chuka氏の指摘のとおり、間違いかもしれない。

3)スウェーデン型社会主義の利点と米国の自由主義の利点

米国は、いろいろなトラブルはあるものの、多民族が国家を形成して、世界一の経済力と軍事力を誇っている。これは、私だけでなく、世界中の敬意を集めていることは間違いない。その成功の背景として、科学研究に始まって、企業型研究、新しい経営手法、新規創業など、あらゆる場面で、個人の自由な思考とエネルギーが発揮され集積される社会環境にある。

それは、西欧合理主義の産物であり、東アジアの人治国家的な閉塞社会では考えられない社会である。ただ、この合理主義だけを原理とした政治では、こぼれ落ちる人間が多い。デジタル技術やAIの進展で、益々こぼれ落ちる人間の割合が多くなっているのが、先進国アメリカの現状だろう。そこで、社会主義的方法が持ち込まれなければならないのだと思う。

私の想像だが、伊藤貫氏はスウェーデン型の政治経済を将来の人類のために、より良い選択肢と考えた可能性がある。スウェーデンは、上記社会主義的政策にも係わらず、自動車、発電、機械などの国際競争力を持つ産業を育成することに成功している。それは、ソ連や嘗ての中国型の社会主義では不可能なことである。

スウェーデンなど北欧諸国は、思想と行動の自由をしっかりと確保した国家であり、同時に「ゆりかごから墓場まで」の社会主義的政策を持つ国である。ヒラリー・クリントンと民主党の大統領候補の席を争った、サンダース上院議員もそのような考えだとしたら、それは真当な考え方に入るのではないだろうか。 伊藤貫氏は講演の中で、大企業経営者の給与についての日米の間の差について述べている。以下記憶を頼りに引用するのだが、日本の大企業の社長(CEO)の給与は、たかだか従業員の平均給与の20−50倍程度(高々 2−3億円)である。しかし、米国の大企業のCEOの給与は、一桁上である。日本円で、数10億円もある。更に、米国の大手金融会社のCEOの場合は、更に一桁上である。(補足2)

この米国での社会から受け取る給与の差は、正常な人間社会の姿だろうか? 決してそうではないと私は思う。下の図は、幾つかの国での大企業CEOの給与比較を示している。日本が低い点で、米国は高い点でともに抜群なようである。日本は既に社会主義の中にあると考えた方が良いのかもしれない。

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20190624.html より引用

4)社会と個人の関係:

ある国の政府、会社、協会、法人、個人は、全体として一つの社会を為す。個人以外の社会の要素は、全ての個人のために存在し、全ての個人の共有機関である。(補足3)この社会要素(特に国家や会社)を共有する感覚は、社会或いは国家へ、各個人における協力の意思形成の上で基礎となる。

一般に東アジア諸国では、その国家への協力の意思は少ない。国家は、国民から収奪する機関だと感じる人が多い。(補足4)

政府は、その社会要素を共有する感覚が、各個人に醸成されるような社会を建設する様、努力しなくてはならない。つまり、その協力関係を破壊するような、一部の個人に対する高額な給与は、そのような社会にふさわしくない。そのような道徳的感覚が、個人の中に存在しなければならない。

高額給与の大部分を租税の形で吸収するのは、健全な社会のあり方ではない。租税で取り上げれば、その能力抜群の個人を社会は失うことになるからである。以上のことを論理的に展開できないのは残念だが、それの様な社会が目指すべき方向であると私は思う。ましてや、特定の個人に集中した給与が、Super PAC(political action committee)のような政治献金機関に無制限に流れて、政策決定に影響するシステムは、民主主義の原則にも反すると思う。 (午後4:00全面的な編集;午後6:00語句修正数カ所あり)

補足:

1)トランプ大統領は、民主党の弾劾はクーデターの企みであると非難した。https://www.afpbb.com/articles/-/3247564

2)ソフトバンクは日本の投資会社である。その創業者孫正義氏に次期社長として期待されたインド人ニケシュ・アローラ氏は、孫氏と意見が合わず結局半年で退社した。その半年での給与合計は200億円程度だった。普通の感覚では、殺意を感じる数字である。何故なら、死亡保険或いは死亡保障金としてでも、普通の人間が受け取る金は、数億円を超えることはないからである。

3)ある個人が会社を創業したとしても、その会社は全ての個人(社会)の共有である。つまり、その個人は、公共の福祉向上を実現するために、その会社を経営する義務がある。その社会への貢献は、平均より大きいので、社会からより大きな恩恵(つまり、その人の給与や会社から受ける配当など)をうける。理由は、その個人が会社を経営する素地は、全ての個人及びその祖先らが貢献した国家が用意しているからである。

4)2,3の大国では、富を得たものは母国を飛び出して、米国などに移住する人が多い。その様な国では、国民のほとんどは、国家をこのような収奪機関と考えている可能性が高い。途上国にあるそのような国を、短時間で先進国並の経済力をもったらどうなるか? グローバリスト達はその問いに答えることのない、利己主義者だろう。

2019年11月26日火曜日

ローマ教皇様への手紙

世界で唯一の被爆国のいち国民から、ローマ教皇フランシスコ様に一筆啓上致します。

ローマ教皇様は長崎と広島を訪問され、世界に向けて核廃絶を訴えられました。長崎では「核兵器のない世界を実現することは可能であり、それは平和な世界に必要不可欠だと確信している」と強調されました。また、広島では「真の平和は非武装の平和以外にあり得ない」として、核兵器を含む大量破壊兵器の保有や核抑止の考え方も否定され、「被爆地訪問は自らの義務だ」というお考えをお持ちだと新聞に書かれていました。

今回、「核廃絶は可能である」との宣言を、被爆国である日本は福音として聴きました。その福音の伝達のために、被爆国日本に来てくださったものと思います。

教皇様の核兵器を世界から廃絶するというお考えには、被爆国日本の国民全ては大賛成であることは、言うまでもありません。我々日本人は、核兵器をどこの国民よりも怖れております。それは、核兵器を独占して、それを武器に使おうと考える国々に囲まれているからです。その日本に対して、最初に核兵器を持つなとおっしゃるということは悪い冗談だと思います。世界の非核化には、当然のことですが、大量に核兵器を持つ国から核兵器の削減をさせなければなりません。また、核兵器を使う可能性の高い国の核兵器の削減が最も急ぐべきことだと思います。

中国人民軍の国防大学教授で少将の朱成虎という人は、世界の人口削減に核兵器を使うべきだと発言しています。自国の人口をどんどん増加させ、インドや日本の人間を中国の核兵器で皆殺しにして、そこに移住すれば良いと言ったのです。既に、核兵器の照準は日本に多数向けられています。勿論、全てをご存知の教皇様は、中国人民軍の朱成虎将軍をご存知でしょう。中国の核兵器が、この世界唯一の被爆国である日本に多数向けられていることもご存知でしょう。

「核廃絶は可能である」とおっしゃるのですから、朱成虎将軍にも直接会って、更にその国の最高指導者にも直接会って、核廃絶の確約を取って下さることと存じます。隣国中国の核兵器の脅威に怯える被爆国日本の国民全ては、そのニュースを心待ちにしております。

被爆国日本には、廃絶すべき核兵器は一つも存在しません。そのような国に核兵器禁止を呼びかけても、核兵器は一発も削減されません。核兵器をつかって、日本人を皆殺しにすることが、世界の人口問題解決の方法だと言った朱成虎将軍の中国へ出向いて、その核兵器削減の約束を是非手土産にして、再度、長崎と広島へお越しください。

以上、どうかよろしくお願いします。

追補:

手紙の形で書きましたが、私は、フランシスコ氏は自らの教会での出世に、日本の核被爆を利用していると思っています。更に、バチカンの経済的利益を考えて、中国との関係において行動していると思います。それは、https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/11/blog-post_23.htmlに書いた通りです。

このフランシスコ氏の対中国姿勢にカトリックの保守派は反対しています。

2019年11月24日日曜日

安倍総理は外交の失敗の責任をとって辞任すべき

1)安倍外交の失敗

安倍外交の成果は何もない。中でも最大の失敗は、日米外交と日韓外交における失敗である。安倍総理大臣(首相)は、「中国との国交は正常化した」と国民の前で宣言した。それは米国との外交の失敗を宣言したのと同等である。この段階で、辞任するのが筋だろう。何故、延々と政権にとどまるのか?

日本の仮想敵国は中国だった。その“仮想敵国だった国との国交が完全に正常化したとの宣言”は、日本も韓国同様、中国覇権の領域に入る準備段階にあることを示している。それを自民党議員たちのほとんどは何も言わない。辛うじて、青山繁晴氏という新参の自民党議員が立ち上がったのみである。

安倍首相の訳の分からない外交に対する批判は何度もこのブログで書いている。最近のものでは10月28日の記事で、二番目のセクション「最近の安倍総理の対中姿勢と対米姿勢について」のところで、以下のように書いている。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12540200324.html

最近の安倍総理の発言、「日中関係は完全に正常化した」は、米国に突きつけられた2択問題において、安倍総理は自分の意思で、中国独裁政権を選択するという決断を行った事を示している。その理由には深いものがあるかもしれないが、その間違いは、確実に日本を破壊するだろう。

この中国との関係修復の動きは、すでに①新入国管理法と②アイヌを先住民と認定する法の制定の時、始まっていた。その可能性を指摘したのは4月6日のブログ記事である。この法律制定の経緯を、国会はもう一度振り返ってその目的などを議案提出者に確認すべきである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516823.html

幸福実現党の及川幸久氏のyoutubeブログでは、この17日、タイ・バンコクでの東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議が開かれたが、そこでのエスパー米国国防長官によるアジア太平洋構想の主張に賛同したのは、日本のほかインドとオーストラリアだったと言う。https://www.youtube.com/watch?v=CBxlXnYlIrc

上に引用の4月6日の私のブログ記事は、米国のその政策の中心メンバーとして日本がカウントされているのかという疑問を提示したものである。ここ一年位の間の安倍総理の対中外交は、トランプによりNOを突きつけられたことを暗示している。(追補1)つまり、自分が辞任しなければならないことを意識して、その事実を安倍総理は隠している可能性があると私は思う。

2)対日トランプ恫喝外交を国民に公開して、安倍総理は辞任すべき

上記及川幸久氏のyoutube動画は、更に重要なことに対する速報である。上記ASEAN拡大国防相会議において、韓国と中国の国防長官が、防衛協力とホットライン設置を内容とする防衛協定を結んでいたというニュースである。

及川氏は、そのニュースを米国ワシントン・ポスト紙の記事として引用していたが、その元の情報は、東京駐在の英国紙The Daily Telegraphの記者による記事(11月18日)である。

https://www.telegraph.co.uk/news/2019/11/18/china-signs-defence-agreement-south-korea-us-angers-seoul-demand/

その記事は以下の文から始まる。

The defense ministers of South Korea and China have agreed to develop their security ties to ensure stability in north-east Asia, the latest indication that Washington’s long-standing alliances in the region are fraying.

韓国と中国の防衛大臣は、北東アジアの安定を確保するために安全保障関係を発展させることに同意した。これは、この地域におけるワシントンの長年の同盟関係が崩壊の兆候である。

そこには、韓国にGSOMIA継続の圧力を掛けながら、米国トランプ政権は、現在28500人が駐留している米軍の経費として、現在支払っている923M$(約1000億円)を5B$(約5400億円)に増額するように韓国に要求したことが書かれている。

このトランプの脅しに対して怒った韓国は、外交の軸足を完全に中国に移したのである。(追補2)この同じ類の脅しを日本も受けている。安倍首相の対中国姿勢の急変は、韓国同様の情況に日本があり、それが原因だろうと考えられる。つまり、米国トランプ政権に対する安倍外交は既に失敗しており、そのことを安倍総理自身が深く自覚しているということになる。

安倍総理はトランプ大統領などをまともに相手にすべきでなかった。一時は鮮やかに見えただけに、トランプを支持する外交からステップダウンする宣言が出来ないで、国民を騙しながら反トランプ外交に舵をきったということだろう。

それは許されない。全てを国民の前に公開して、辞任すべきである。

追補(11月25日早朝追加)

1)米国が日本や韓国に米軍駐留費の大幅増を要求しているのは、少なくともトランプの戦略構想において、日韓は米国の覇権範囲から外れることを意味している。トランプの強引な直感外交は、おそらく、数年先の正統派外交に一致するのだろう。

2)GSOMIAの延長は、中韓の間に安全保障や経済協力の条約が出来、北朝鮮関係の枠組みが出来るまで、あと少しの期間は、傭兵として米軍が必要だということである。

2019年11月23日土曜日

ローマ法王は核廃絶を訴えるなら、米国、中国、ロシアなどの核保有国へ行くべき

1)ローマ法王の核兵器廃絶パーフォーマンスには別の目的がある?

今日、ローマ法王フランシスコが日本に来る。日本では、広島と長崎を訪問して、例のごとく核廃絶を口にするだろう。それは、「ピストルで殺された人の家族を訪問して、あなた方を始め世界の人類はピストルを持つべきではない」と言うに等しい。何故、ピストルを持つ殺人予備軍のところに行かないのか? それでも、広島と長崎の市民たちは、ローマ法王の核廃絶宣言を有難がるのか。

この件については既にブログ記事として書いている。ローマ法王が執拗に日本に来て、核廃絶プロパガンダを行うのには何か他に理由がありそうである。ローマ法王も十分知的な人物だろうから、日本で核廃絶を訴えることの無意味さや虚しさには気付いている筈である。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2018/01/blog-post_3.html

それなのに、何故日本に来てそのようなパーフォーマンスをするのだろうか。私は、あの米国オバマ大統領による広島訪問を思い出す。核廃絶に努力すると言って、被爆者の方と抱擁する場面を感激的だとして称賛する人も多い。しかし、その前日か前々日、オバマは米国における核兵器開発予算の大幅増加する案に署名している。その記憶を明確に頭に置きながら、あのパーフォーマンスが出来るのである。(ワシントン在住の伊藤貫氏の講演)

その神経は、凄いとしかいいようがない。ローマ法王の核廃絶宣言も、それと同様の政治的プロパガンダだと考えて間違いない。何故なら、核廃絶など現在の世界の枠組みでは不可能だからだ。それは、ロシアとそれに引き続いて米国の中距離核の開発と増産を考えれば分かる。また、北朝鮮から核兵器が無くならないことでもわかる。あのカダフィの核放棄宣言と、その後彼が殺害されたことの関係を、金正恩は知っている。

ローマ法王フランシスコは、イエズス会のトップである。嘗てイエズス会は、16世紀に世界中にキリスト教を布教して、人々に神の愛を説き、キリスト教の足場を作った。その後、西欧の国々がそこを植民地にし、そこから奴隷を調達した。そのような奴隷商人への協力(未必の故意的協力)を日本でも行おうとしたことを、広島長崎の人たちも知るべきである。

16世紀の日本には、イエズス会のフランシスコ・ザビエル、その後ルイス・フロイスが来ている。彼らは直接日本人奴隷を南方のポルトガルの植民地に売買したのではないが、結果的であるにしても、そのシステムの最初の段階、つまり奴隷調達地での基地作りを、受け持ったことは事実である。秀吉がバテレン追放令を出した主な理由は日本人奴隷売買の事実を知って激怒したのである。https://ironna.jp/article/11884?p=1

今回の日本訪問も、バチカンの“営業活動”と関係がありそうに感じる。ヨーロッパではもはや布教余地の少ないバチカンは、アジア特に中国を布教可能地域と捉えているようである。中国と一旦トラブルを抱えたが、それでも法王フランシスコが和解したのも、その大きな市場への配慮である。つまり、ヨーロッパの中国宥和姿勢と同じ構図である。https://www.afpbb.com/articles/-/3194951?cx_part=search

バチカンは独立国である。金を稼がなくてはならない。歴史的遺産だけではやりくりが大変である。マネーロンダリングに利用されても、仕方がないと考えている可能性もある。それは受け身で悪事へ加担することだが、その姿勢はイエズス会の16世紀と共通すると思う。https://www.newsweekjapan.jp/column/ikegami/2012/03/post-483.php

2)バチカンは、中国のアジアでの覇権拡大の尖兵的役割をするのか?

上記のように、バチカンが中国を有望市場と捉えているという考え方は、共同通信の記事による。https://www.businessinsider.jp/post-177501 この通りだと、イエズス会が植民地拡大の尖兵となったことの歴史の繰り返しではないだろうか?

  上記記事では、日本でのパーフォーマンスを評価した習近平が、ローマ法王フランシスコの訪中を認める可能性があると考えているようだ。その理由の一つとして、台湾がヨーロッパで唯一の国交を持っている国がバチカンであり、そのバチカンを台湾から剥がすことを習近平は考えている可能性である。

習近平は中国の覇権を世界に広げる中世的皇帝である。チンギスハンやフビライ・ハンが描いたような壮大な夢を持っているのかもしれない。例えば、中国が水面下で狡猾(こうかつ)に組織的なスパイ活動と利益誘導を駆使してオーストラリア政治体制の「乗っ取り」を企てていると、オーストラリア保安情報機構の元トップが豪紙とのインタビューで警告した。https://www.afpbb.com/articles/-/3256136?cx_part=topstory

また、イタリアのネット新聞「PRPチャンネル」は、「ニュージーランドにおける中国の影響は機密通信を脅かす」と題する記事を掲載し、以下のように記している。

カナダのセキュリティ情報機関(CSIS)の専門家が作成した「中国との戦略的競争の時代」と題する報告書によると、中国は貿易交渉で利益を得ること、中国に対する否定的見解を抑え、スパイ活動を促進し、ニュージーランドの中国駐在員コミュニティの見解をコントロールすることを目指している。 結局のところ、北京は、ニュージーランドを地域的かつ世界的な影響力を主張するための手段としてとらえようとしている。

ローマ法王の姿勢は、香港問題についてどのように発言するかを見ればわかるだろう。日本のマスコミは記者会見があるのなら、是非その件を詳細にぶつけてもらいたい。

(EOF)

2019年11月22日金曜日

再録)花岡事件について

1)今朝のNHKの番組で、花岡事件に関する慰霊の催しが報道されていた。この件、以前にも放送され、その感想文を別サイトに掲載していた。そこで、そのまま再録することにした。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2015/07/nhk.html 

犠牲者の数など、今回の放送内容と違うことなど、色んな意味で参考になると思う。日本が、中国の覇権下にはいると、いろんなイジメの材料が出てくるだろう。その一つがこの事件だと思う。

その新しい日本の苦難を、できるだけ小さくするには、何度もブログに書いたように、日本独自に戦争を含めた近代史の総括が必要である。それは、世界全体の中での日本という視点でも大きなプラスになると思う。

そして、同時に一票の格差を全廃し、国政選挙の区割りを道州制にして、地方の利権と離した形で国政選挙を行うべきである。そうすれば、現在の自民党は存在根拠を失うだろう。米国に占領される前の自由党と民主党の2大政党制に類似した政治構造ができれば、もうすこし現実的な政治が出来ると思う。

その結果、明治以降の古い日本を統治する勢力と離れて、新生日本を建設出来るかもしれない。そこで、完全に薩長土肥による革命政府から、まともな日本政府ができるかもしれない。憲法改正は今ではなく、その段階ですれば良い。今後、米国が覇権を放棄した東アジアで生きていくには、その程度の大きな変革が日本に無ければならないだろう。

2)再録)花岡事件について(NHK夜9時のニュースを見ての感想)(2015年7月5日投稿)

太平洋戦争時に、日本国内で不足する労働力を補充する為に、中国人を動員することを定めた「華人労務者内地移入に関する件」を閣議決定し、1944年に重労働の為に中国人労務者3万人の動員計画が盛り込まれた。

花岡事件は、1945年6月30日に秋田県の花岡鉱山で動員された中国人労務者が蜂起し、集団脱走をはかり、その後鎮圧された事件。戦後、過酷な労働環境について損害賠償請求裁判が提訴された。

秋田県花岡川の改修工事などの為に鹿島組で戦争末期に使役についた中国人約1000人のうち、事件までに137人が亡くなった。彼らは過酷な労働条件に耐えきれず、1945年6月30日夜蜂起し、日本人補導員4人などを殺害し逃亡を図ったが、憲兵、警察、警防団の出動により、多数の労働者が拷問などを受け弾圧(殺害)され、総計419人が死亡した。

連合国によるBC級戦犯横浜裁判では、鹿島組の3名が絞首刑の判決を受けた後、終身刑等へ減刑されている。

今年大館市の十瀬野公園墓地で中国人犠牲者の慰霊式が、日中の関係者100人以上が出席して開かれた。大館市長や父が花岡鉱山に連行された遺族代表の王敬欣さんが慰霊の言葉を述べた。

この事件、日本側の担当者が戦犯として裁かれ、そして、日中が平和条約を締結したからと言っても、それでおしまいという訳にはいかないだろう。安倍さんの戦後70年談話を控えて、この談話のあるべき内容について考える為の材料にしなければならない。

2019年11月21日木曜日

日本社会はイジメの社会:日本郵政のノルマと学校内でのイジメ

1)職場での上司による「パワハラ」が屡々報道されている。例えば、郵便局では、年賀はがきを売る人にノルマを課し、その達成をパワハラ的に上司が要求するようだ。その達成が容易でないために悩んだ挙げ句に自殺した人がかなり居る。下のサイトのケースもその一つである。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191118-00010000-nishinp-soci

この職員が一般採用で入社したのなら、労働協約に年賀状売上枚数などの定めなど無かっただろうから、ノルマという形で販売目標が提示されたとすれば違法である。ここでノルマとは、達成できないなら、何らかの処罰があることを前提に提示された労働成果の数値目標である。

ノルマという言葉は、第二次大戦後、シベリアに抑留されていた人たちが帰国した際に日本に広まったという。個人の自由と人権の確保を、最重要と考える現行憲法の下の日本に、このような不正が今でも存在するのは非常に腹立たしい。国会の野党議員は一体なにをしているのか。

このケースでは、おそらく上司は“努力目標”と喋っているだろう。しかし記事によれば、人権侵害の可能性のある“処罰”が上司により下されていた。「お立ち台」と呼ばれる台に上がり、数百人の前で謝罪させられるのである。 以下この問題を掲載した記事から引用する。

毎年、年賀はがき7千~8千枚の販売ノルマが課せられた。金券ショップに転売する同僚もいたが、転売は禁止されており、真面目な夫は「俺にはできない」。自宅には、自腹で購入した年賀はがきが山積みになっていた。歳暮や中元、母の日…。歳事のたびにゆうパック商品も購入。夫は「時間内に配達するので精いっぱい。営業なんかできるわけがない」とこぼした。

この方は、うつ状態になり、最後は勤務局の4階から飛び降り自殺した。9年前の出来事である。その後、配偶者の方は、職場からこのような被害者を無くするよう訴える集会に出席するなどの活動をされているようだ。上記記事全文を読むと、腹立たしさと悲しさで胸が詰まるほどである。

2)このケースでは、実質的に上司による部下からの給与の剥奪である。それを非常に陰湿な方法、つまり、不可能な販売ノルマを課し、達成出来なかった分を自分で購入するように仕向けるという方法で行っているのである。

上記記事が中心的に取り上げたのは9年前の事件だが、2年前にも同様の理由で自殺者が出たと書かれている。つまり、このような事が、今でも多くの郵便局で行われているのだろう。現に、最近話題になっているかんぽ生命(日本郵政の一角)での不祥事も、その延長上の出来事である。(補足1)元日本政府の中にあった企業体で、このような方法が採られていることは、日本全体の問題、文化の問題であることを示している。

この目標設定をして業績を伸ばす方法の日本での起源は、実はソ連のノルマではなく、米国のピーター・ドラッガーの本で紹介された目標管理制度(Management by objective; MBO)という経営手法のようである。

ドラッガーの方法では、上司と部下が話し合いを通して、担当する仕事の目標を具体的に設定することで、その部下の仕事と会社の目標とをリンクさせる。そのプロセスを意識させ、労働意欲を高めることがMBOの目的であると解説されている。https://www.hrpro.co.jp/glossary_detail.php?id=24

仕事を神が与えた罰であると考える傾向にある欧米人(補足2)に対して、会社の目標と個人の目標を具体的にリンクさせることで、自分の労働の意味の理解と労働意欲の向上を喚起させるのである。その思想(手法)を、仕事を人生の中心に置く日本人に応用するのなら、単に会社の目標と自分の仕事をリンクさせる話し合いで十分であり、数値目標は参考程度で十分だろう。

日本におけるMBOの猿真似は、経営者のエゴイズムと重なり、ソ連のノルマに変身したのだろう。会社にとってはむしろマイナス作用であることが理解できないのは、経営陣の能力不足であると思う。(補足3)

この会社全体の業績向上を直接会社員全体に押し付ける方法は、後で述べるように、日本の会社が共同体的であることを利用している。つまり、日本の労働者の人格は、名刺に書かれた会社の一員であることにほぼ一致するのである。それは、一定時間会社に労働を提供し、その対価を受け取るという西欧の機能社会的会社とはことなる。

日本の大企業経営者は、家族経営の延長上にある小企業の共同体的性格を大企業にまで持ち込むことの是非を、深く考えるべきである。飲み会や花見の会などの社内行事のあり方から、見直すべきである。

そして、社会全体としては、開かれた労働市場の実現により、労働力の流動性を高めることが大事である。つまり、適材適所を如何にして実現するのか、そしてそれら人材が能力を発揮できる環境(主体的に成果を求める環境)をどのように作るか、それをどのように組織全体の力として積み上げるか、を考えて日本の文化の中で実現すべきである。

「言うことは素人でもできるだろうが、本当は非常に困難なのだ」という反論は、MBOの猿真似的なノルマを企業経営に持ち込むことを止めてからにしてもらいたい。

3)パワハラなどのハラースメントが頻発する背景と日本の社会の特徴

ハラースメントの意味は、迷惑行為に近い。ただ、「XXハラ」と呼ばれるものは、被害が繰り返得されることが特徴であり、そして、その背景は単純な犯行よりも広く複雑である場合が多い。従って、暴行や傷害などで加害者の処罰はあり得るが、それは本質的解決ではない。

身体的、心理的な犯罪性では、刑法で罰するレベルではない場合でも、その社会的、文化的な性格のため、被害者にとっては非常に深刻な場合も多い。上記郵便はがきの販売ノルマのケースも、会社ぐるみのことであり、一個人を例えば名誉毀損罪などで裁いたとしても、それだけでは済まされない、社会全体に関係する深刻な問題を含んでいる。

“XXハラ”の一種に分類される「学校でのイジメ」が大きな問題になった時、ブログの記事を書いたが、その時、いじめの定義を以下のように書いている。 「いじめとは、共同体内の特定の構成員を孤立した状態に置いて、心理的圧迫や肉体的暴行を集団で加える行為である。」https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2015/07/blog-post_12.html

つまり、通常ハラースメントと呼ばれる犯罪的行為は、共同体内で行なわれるという点が重要である。パワハラなども、一人の上司の特定の小言が怖いわけではない。それが(共同体的性格の濃い)日本型企業の中でのイジメ的な処罰につながるから恐ろしいのである。

上記「お立ち台での謝罪」も、この種の集団での心理的暴行の類である。つまり、数百人の前で謝罪させられるイジメでは、上司だけでなくお立ち台を眺める数百人の従業員は、気が付か無いかもしれないが、イジメの共犯になっているのである。(補足4)

更に視野を大きく採って、日本社会全体を眺めてみると重要なことがわかる。つまり日本の、学校、地域社会、会社など、全ての社会が共同体的性格を濃く持っているのである。その結果、日本全体も一つの大きな共同体となっている。

日本の民族主義者(右翼)は、国は民族共同体で在るべきだと考えるのだろう。しかし、それは全体主義への入り口である。その考えを拒否されたのが、上皇や今上天皇の「象徴としての天皇を追求する姿勢」である。民族共同体的国家を目指す連中に、世界の中の日本を客観的論理的に考えることなど出来る訳がない。(補足5)

日本社会の様々な非効率、不合理、不平等などは、本来機能社会的でなければならない国家、学校、会社などに、共同体的性質を過剰に持ち込んでいるところにあると思う。(22日早朝、編集)

補足:

1)保険の切替時に、保険金の二重取り、或いは、無保険期間が発生していたという事件。ここで、係員は二重取りになるケースを知りながら、その際に新規契約の実績となるので放置していた。https://newswitch.jp/p/19771

2)多くの人がご存知だと思う。欧米人が労働を苦役と考えるのは、旧約聖書の創世記にあるエデンの園での出来事が原点にある。つまり、神の戒めを破ったイブとその夫アダムは、神から罰をうける。アダムに対して神は言われた「あなたは一生、苦しんで地から食物をとる」この話は、新約聖書の有名な「山上の垂訓」の中にも現れる。

3)グローバル化の世界で会社が発展するには、業務における新規な展開とその方法を会社の角層が広い範囲の視野で見出すことである。このような安易な方法で業績上昇を目指すことは、その時間と機会を見逃すことになる。

4)最初の記事の中で、自殺した人配偶者の方の言葉に注目してもらいたい。 “ミスを起こした局員は「お立ち台」と呼ばれる台に上がり、数百人の局員の前で謝罪させられた。「怖い。絶対に上がりたくない」と夫は漏らしていた。”

5)共同体の中では、論理や利害を超える価値を、その共同体のメンバーであることに置く。共同体とは、情の集団である。機能社会とは、現実的利益を重視する社会である。国際社会の中で重要なのは、現実的利益を最重要視する姿勢であるのなら、日本は共同体的社会を重視する傾向にあることを自覚するべきである。

2019年11月17日日曜日

グローバリズム2.0:ファリード・ザカリア氏の講演について

ファリード・ザカリア氏(Fareed Rafiq Zakaria)はインドで生まれ少年時代まで過ごした、米国の著名な国際問題評論家である。米国のイェール大学卒業後、ハーバード大学で博士号を取得した1992年に、28才でForeign Affairs の編集長(managing editor)になったと言う秀才である。

このザカリア氏のグローバリズムについての総合的な解説を、米国在住ブロガーのハンドルネームChukaさんが紹介している。その要約と元の動画をみた。https://ameblo.jp/chuka123 動画の英語は、日本人には比較的わかりやすい発音だが、字幕及びchukaさんの要約を参考に、その大筋を理解した。誤解や間違いと思われる箇所があれば遠慮なく指摘してほしい。

この動画は、2018年4月に行われたハーバード大学ケネディースクールでの大学創立記念講演である。表題は「グローバリゼーション2.0バックラッシュ(backlash)」である。グローバリゼーション1.0は、世界の途上国の経済を浮揚させた成功の部分を言うのだろう。https://www.youtube.com/watch?v=ZvwglFKGw_E

その反動(デフレと貧富の差の拡大)に苦しみだした先進諸国では、反グローバリズムの動きが、特に民族主義者を中心に出てきている。英国のブレグジットなど欧州連合の結合力にも陰りが出てきている。これらを演者は単にバックラッシュ或いは調整局面と捉えているように思うが、それは間違いだと僭越ながら素人の私は思う。

従来の米国支配層の側に立つザカリア氏は、現在現れているグローバリズムの弊害を反動(backlash)と呼び、当分はグローバリゼーションを修正しながら、人のグローバル化まで推進すべきだと主張するのだろう。

一方、トランプ大統領は明確にこれ以上のグローバル化に反対しており、これまでの自由貿易体制すら否定している。従って、両者の間には折り合いを付ける点はなく、単に敵対関係にあるといえる。それは、講演後の質問の時間に、トランプ大統領は止めるべきだと言っていることでも分かる。

以下、ザカリア氏の上記講演を私なりに紹介し、議論してみる。

1)ザカリア氏のグローバリゼーション:言葉の定義について

ザカリア氏は、この講演のなかでは、グローバリゼーションを文字通りの意味、地球規模化と定義し、特に途上国の視点から背景を大きくとって、その効果と「反動(バックラッシュ)」について議論している。

一方、日本でのグローバリゼーションの議論では、第二次大戦のころに始まったブレトン・ウッズ体制から、WTO(最初GATT)やIMFと言った国際機関の設立と、それを背景に世界での物品と資本の流れの自由化、様々な規制の撤廃を進めるネオリベラリズム的経済政策を意味する。これら二つのグローバリゼーションは重なる部分も多いが、その違いを意識しないと、講演の内容が分かりにくくなると思う。

ザカリア氏はグローバリズムの展開を、以下のフェーズに分けて考えている。

1)物品のグローバルな流れ。これは16世紀に背の高い大きな船の発明により可能になった。
2)19世紀に始まる資本のグローバリゼーション
3)20世紀のサービスのグローバリゼーション、特にインターネットを用いたものは劇的にそれを加速した。
4)人のグローバリゼーション、難民や移民の西欧や米国などへの流入を、ザカリア氏はグローバリゼーションと捉えている。(講演の36分)

このグローバリゼーションを進めるエンジンとして、互いに依存する3つの革命的出来事を挙げている。それは1990年ごろから急激に進んだ。

1)インフォーメーション革命:これは国際的な通信としては、短波放送、国際電信電話、衛星テレビ、インターネットなど普及である。特にインターネットの影響が大きい。

2)グローバルな貿易システム:19世紀に背の高い大きな船が発明され、物品の貿易が地球規模で可能になった。途上国も1990年ころからアメリカを中心とした貿易のネットワークに参加することになり、その結果飛躍的に経済発展を遂げた。1979年にGDP3%以上の成長を遂げたのは、31-32カ国であったが、2005-2006年には125カ国になった。2008年の金融危機後8年の現在でも、その数は85カ国である。

3)政治的安定化: 1991年末にソ連が崩壊し、冷戦が終結した。そして米国の一極支配が始まり政治が安定した。その結果、途上国がアメリカ主導のこの貿易システムに参加できるようになった。(補足1)

ザカリア氏は、政治の安定化という基礎の上に経済のグローバル化が進み、そこで情報の革命が展開されるようになったと言っている。その結果、途上国の経済は大きく成長し、世界から貧困が大きく減少した。ザカリア氏はこの部分をグローバル化の大きな利益であり、それがグローバリリゼーション1.0であり、本来のグローバリゼーションがこの延長線上にある筈だと考えているのだろう。

2)1990年以降の企業のグローバル化での成功パターンと「グローバル化のバックラッシュ」について:

バックラッシュという言葉は、意味が幾分曖昧である。辞書では「反動」と書かれているので、そのように以下用いる。ザカリア氏は、バックラッシュがグローバル化の副作用なのか、それとも本質なのかという問題には答えていない。それは、グローバリゼーションが①「従来の文明の自然な発展と地球規模の伝播」なのか、②「何者かによる明確な意図を持った政策」なのか?という疑問点をスキップして議論しているからである。

もし、①なら、各国が其々のパターンでグローバリズムを一旦後ろに戻すことで、正常な政治経済運営が可能となる。しかし②なら、その支配的な勢力は、グローバリズムを続けながら、ちょうど投資の時の借金を支払うように批判を部分的に抑えながら、従来路線を進めることになるだろう。この講演での不明瞭さは、ザカリア氏が従来のマスコミの中で生きている人物であること、つまり従来の支配者側の人物であると考えれば理解できる。

従って、グローバル化に反対するトランプに対する批判も、アマゾンに対する粗野な流儀を強烈に批判しながら、トランプは「グローバル化経済政策が、非常に多くの地方の町の個人営業の雑貨屋(moms and pops hardware store)を、強引に破壊するという不愉快な出来事の原因だと理解している」と真当に解説しており、中途半端である。(補足2)

後先になるが、最初の「バックラッシュ」の話は、Mackenzieの研究紹介から始まっている。[21:20] 以前は、景気回復から就業率の回復までは6ヶ月位だったが、1990年前半には15ヶ月に、2000年には25ヶ月になり、2008年頃には、明らかに景気回復してから就業率の回復までには64ヶ月かかるようになった。更に、労働の質もパートタイムが増えるなど悪化した。

この現象はグローバル化の本質であり、反動などではないと私は思う。つまり「資本と労働のデカップル」は、最初から経済のグローバル化を推進した勢力の目指したことである。ここで、私が3-4日前に書いたブログの内容を思い出してほしい。

米国クリントン政権(1993-2001)は、キャピタル・ゲインに対する税率を大きく下げたのである。このクリントン時代に大幅に税率を下げた主役が、財務長官だったロバート・ルービンやローレンス・サマーズだった。両者とも金融業と関係が深く、グローバリゼーションの加速に協力的だった。

  また、米国を代表する企業500社(S&P500)の場合、1980年代では上げた利益の50%が株主還元に、45%が設備投資や賃金上昇に用いられたが、2000年になると利益の90%が株主還元に向かうようになったのである。

つまり、「資本と労働のデカップリング」は、米国の資本の従来の資本家達への蓄積とグローバル展開を、特に民主党政権がニューヨークのウオール街の人たちの意思を反映する形で大きく進めたことである。それは明確な意図を以って行われたことである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12544848302.html

そして、この資本と労働とのデカップルは、ザカリア氏も以下の様に説明している。このグローバル化経済において、大企業なら資本入手が簡単なところ(つまり資本が安いところ)で資本を手に入れ、労働力が安い所で生産をし、高く売れるところで売ることで大きな利益を得られる。また、この巨大資本にとって非常に有利なパターンについて、以下の表現を用いている。You can surf this wave of globalization and the information revolution to enormous advantage. [23.56ころ]

英語の「you」は、「(貴方がその当事者なら)貴方は」という意味で屡々使われる。この「you」はニューヨークの金融業者の意味であり、この利益を上げる方法を「波乗り」に喩えている。まるで、「彼らとは直接関係なく生じた大きなグローバル化の波に上手く乗っている」という表現である。その解説をハーバード大のケネディースクールの学生たちは、そのまま信じるのだろうか?その「波」は彼らが最初から意図的に政治を動かして為し得たことである。

日本では、グローバリゼーションの結果、豊かになったという実感は全くない。それよりも、1970年代までの米国のアメリカからの資金援助である「ガリオア・エロア資金」などによる奇跡の発展のあとの、デフレ経済の元凶のように考える場合が多い。因みに、この米国の援助を政府は周知し、日本人は米国に感謝しなければならないと思う。

3)グローバリゼーションが、理想的な動機の下、各国の文化に配慮し一定の限度を置きながら、徐々に拡大させるという前提で運営されるのなら、それは人類にとって望ましいことである。しかし、そのためには世界を米国の単一覇権から、世界の人々を平等に扱う国際機関の一極支配下に移動させるべきである。国際連合の根本的改革が近道だが、それには相当の時間を要するだろう。(補足3)

国連の根本的な改革には、現在の常任理事国が特権を一旦放棄しなくてはならない。その為、リーダー的な大国全てが、長期的視点にたち互いの信頼感を高めなければならない。それは、世界各国による歴史の共有がなければならない。それには情報の自由な流れと、情報を消化する時間が必要である。中世的な隣の大国や小国などが、情報を操作したり封鎖したりする現状では、無理な話だと思う。

最後にザカリア氏は「人のグローバル化」について議論している。これはそれぞれの国家に混乱を持ち込むだけであり、明らかに時期尚早である。マクロンやメルケルを賞賛するのは、難民受け入れというヒューマニズムの観点からであるべきである。

ザカリア氏は民主党の「理想主義」を語っているのだろう。しかし、民主党は真に労働者の味方であった時代は終わっている。現在は、トランプがその役割を行っているようにも見える。スーパーPACなどで、米国の従来政党はウオール街の方を向くようになってしまったからである。

(18日早朝全体的編集、19日早朝2,3の語句修正)

補足:

1)その具体的展開は、世界銀行による登場国への融資、IMFなどによる通貨の安定化、更に、政界貿易機構(WTO)による様々な諸国間の貿易障害の撤廃などにより、世界経済が地球規模で発展した。この段階が、通常のグローバル化の定義だと思う。

2)23分頃; There is some , I don't know if it's a method or an instinct, or a genius, but even with the discussion of Amazon, while it's bizarre for the President to go after a particular company, he's actually wrong on the post office issue. He understands that there is some discomfort with the idea of this vast company (Amazon) that has disintermediated large number of moms and pops every hardware store in every local town, every bookstore. That process is sort of like creative destruction except on steroids.

ザカリア氏は、この様に話している。ただ、私には全体的にこの英語の意味が正確には理解できない。例えば最後の文のステロイドは麻酔薬という意味なのか?

3)国際連合と日本で訳すのは、占領軍の指示なのだろうか。これは元々、戦勝国となった諸国の連合を指す。この国連とその下部と辺縁にある組織の改革をしないで、政治と経済のグローバル化を勧めるのは、講和条約後の国際政治としては卑怯である。

(11月18日全体的に加筆編集)

2019年11月16日土曜日

二酸化炭素による地球温暖化=科学的解説=

2014年に投稿のものですが、ブログ内での検索にひっかからなくなったので、再録します。出来れば、この解説後に調べた記事:10月27日に投稿のものも参照してください。海水温のデータから、それほど大きくはありませんがこの20年ほどの温暖化が事実であることを確認し、紹介しています。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/10/blog-post_27.html 再録記事の原題は「CO2による最近の地球温暖化を完全否定する訳ではないが」ですが、改題しました。(以下、デスマス調からデアル調に言葉を変更します。)

はじめに: 先日、広島の土砂崩れにより多数の死者を出した。この件、自然現象が直接原因だが、他に二つの人為的因子が存在する。一つは、危険箇所での住宅建築を許可した行政の責任であり、もう一つは、所謂地球温暖化の問題である。頻発する豪雨とそれによる土砂災害の一因はCO2による地球温暖化であるとの考えを屢々見聞きするので、今回、地球温暖化問題を基本的データを元に再考してみた。データの出所は夫々の図に示した様に、全てネット上である。
 この問題に関しては、アルゴア氏の本の極端な記述に対する批判や世界気温の急上昇を示した“ホッケースティック図”に対するデータ偽造などの疑惑から、資源の温存を狙う西欧先進国による陰謀説なども出て、地球温度上昇を二酸化炭素の増加によるとする説自体が疑惑に包まれた感があった。更に、地球物理や地球環境を専門とする学者からも地球温暖化CO2原因説に否定的な意見が出ており、私はそれに賛同してきた。それらを疑問点を解消すべく、一から少し真面目に自分の意見を作るべく、この問題を考えた。

1)IPCCの地球表面温度の観測報告と最近の温暖化停滞について
 地球温暖化(問題)としてウィキペディアで説明されているのは、地球全体の気候が温暖になる自然現象を呼ぶのでなく、近年観測されている「20世紀後半からの温暖化」である。この “20世紀後半の温暖化に関しては、人間の産業活動等に伴って排出された温室効果ガスが主因と見られ、2007年2月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発行した第4次評価報告書 (AR4) によって膨大な量の学術的(科学的)知見が集約された結果、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は9割を超えると評価されている”と書かれている。


 つまり、地球物理の方々が主張している、大きな自然現象としての気候変動とその原因とは別に、この数十年の、地球物理的には小さいが人間生活にとっては大きな意味のある地球高温化は事実であり、その主因は地下資源を燃やしたことなどで排出されるガス、特に二酸化炭素であるとかかれているのである。
 図(1)左図に幾つかの温暖化ガスについて地球温暖化効率が見積もられている。一番効果が大きいのは、従来から言われている通り、二酸化炭素である。右図の世界の気温であるが、図にあるようにこの50年に0.5度ほど上昇している。良く見ると、最近の10年ほどの平均気温は、ほぼ一定しており、これが従来の考え方と合わないとして議論されてきた。これに関しても、最近、海水へのエネルギーの流れで説明する論文が発表されている。(注1)

2)温室効果と温暖化ガス
 図(2)は、マクロな視点で地球温暖化を捉えるための、黒体輻射の法則(注2)を利用した単純化されたモデルである。問題を議論するスタートとして利用される。この図は、文部科学省のHPに記載された名古屋大松井教授の報告書から転載したものである(注3)。地球の空気を含めて黒体と考えるこのモデルでは、温暖化ガスの増加は、空気の層が厚くなることに相当する。太陽から来た可視光線などが地表で熱に変換され、元々の赤外線も加わって地球を暖める、そして平衡状態では受け取った熱は全て地球上から宇宙に放射される。その熱エネルギーの全量が変わらず、且つ上層から地表までの大気の間で、熱のやり取りが十分早いという仮定の下で地表面の温度を考えるのである。


 そこで、太陽から来るエネルギーは例えば太陽を6000度の黒体球とすると、地球に来るエネルギー放射が計算できる。  黒体輻射の放射エネルギー(R)はシュテファン=ボルツマンの法則:
 R=σT^4; σ=5.67 x 10^-8 (Wm^-2K^-4)
を用いて計算される。 そこで、地球の位置で太陽光線と直角に面する時に受け取るエネルギー1366 W/m^2(太陽定数)から、その1/4(342W/m^2)が平均的な地球表面が受ける単位時間当りのエネルギーである。そして、その内の雲や地面から直接反射された分を除いた、240 W/m^2分が吸収され、熱平衡が成立しているとすると同じ分が放出される。黒体輻射の式を地球の熱放射にも利用すると、地表の温度が図にあるように摂氏-18度になるのである。

 空気が酸素と窒素とアルゴンのみである場合、太陽エネルギーを吸収しないので、地球へ届いたエネルギーはそのまま放射される。そこで、地球表面は摂氏-18度になる(一番左)。空気に温暖化ガスがあると、それらが途中で暖められる。また、地表から放射された熱がその温暖化ガスに吸収されて地表にもどされる。その場合、反射されたエネルギーと太陽から受けたエネルギーの和が、平衡状態で放射されるエネルギーと計算される。その結果、地表からは390W/m^2の放射が起こるとすると、それは地表面の温度摂氏プラス15度に相当する(単なる観測結果と合わせているだけである)。これは地表面と空気層を温室のビニル屋根に見立てた”温室モデル”であるが、連続的に空気が存在するので当然定量的な議論としては単純化し過ぎである。

 温暖化ガスがあっても地球外放射は同じであるから、平均的な放射面が温暖化ガスの増加とともに上昇すると考えられる。平衡がなりたっておれば、上空の-18度の空気と地表面の15度の空気を仮想的に入れ替えても変化がおこらない。つまり、摂氏-18度のガスを断熱圧縮して1気圧にしたときに摂氏+15度になると解釈できる。
 図(1)は人工的に排出されたガスをリストしているが、実際には温室効果ガスの大半が水(水蒸気)である。本来脇役である筈の二酸化炭素などが、”付加的な最近の地球温暖化"であっても、その主役であることを主張するには、もう少し緻密な議論が必要である。現状では二酸化炭素濃度増を主原因として、”最近の”地球温暖化が起こっているという説は確定していない。そこで、一度原点に戻ってこの問題を考えることにする。

3)空気に含まれるガス成分の光吸収と太陽から来る光の減衰
先ず、空気成分の光透過率を示す。これは、大気物理学(Atmospheric Physics)のジョージア工科大Sokokik 教授が講義ノートとして公開したものである。

ここで、一番下の図が空気の透過率になる。可視光線は殆ど透過するが、赤外線は相当広い範囲で吸収され、その大部分が空気中で%レベルの濃度を持つ水、つまり水蒸気による吸収である。水の基本赤外吸収は3657/cm; 3756/cm;& 1595/cm(/cmはカイザーつまり1cm当りの波数)であるが、倍波吸収などにより近赤外領域まで周期性を持った強い吸収を示す(注4)。ここで、透過率の高い部分を“大気の窓”と呼ぶ。例えば、最下図の波長8〜13μの領域が代表である。吸収の大きい、つまり、透過率の小さい波長領域は、主に水の吸収によるが、4.3 μと15μ付近に二酸化炭素の吸収が、9.6μ付近にオゾンの吸収がある。その他メタンによる~3μ付近と8μ付近にもかなり強い吸収があることが解る。
 太陽のエネルギー放射曲線と地表からの熱エネルギー放射曲線: 

 図(4)は同じくSokokik教授の講義(講演)資料からとった、太陽からくる放射エネルギーの波長依存性である。破線で示したのが、6000K(絶対温度6000度;摂氏5700度)の黒体放射スペクトルである。上の実線が大気圏外でのスペクトルで、その下が地表でのスペクトルである。紫外線部分が削られているのはオゾン層での吸収だろう。斜線により影をつけた部分は、大気内のガスによる吸収で減少したエネルギー部分である。当然、そのガスは上空で加熱されることになる。  ここでは波長2.5ミクロンまでしか書かれていないので、太陽エネルギーの大部分は可視光線と波長の短い赤外線(近赤外線)であることが解る。ここで注目したいのは、水による近赤外線の大きな吸収である。地上に来るまでに、おそらく15%(後に上げる図で、全大気による吸収は約16%)くらいは吸収されている。
 上記図(3)と(4)を一つにまとめて示した図が下のもので、情報的には何も加えないが、解り易いのでのせておく。

 図の2段目の吸収と散乱の効率を見ると、地上は光線から厚く遮蔽されていることが良くわかる。そして、水蒸気が近赤外から長波長部分を遮蔽する主なガスである。4.3μと15μ付近に炭酸ガスの吸収があるが、それがどの程度最近の人工的原因による地球温暖化に寄与しているか?が本文章のテーマである。 図上段の赤外部分の3本の線は恐らく、310K, 260K, 210Kの夫々黒体輻射を表わしているのだろう。青い部分は、”地球表面から放出された赤外線”を地球外から見たスペクトルだろう。後で説明する様に、実際に地表から大気の窓を通して放射されるのは約6%のエネルギーに過ぎない。また、人工衛星を使った観測では、上空大気からの放射がほとんどであり、このような形にはならない。

4)地球からの熱放射への温暖化ガスの影響

 図(6)上図に示されているのは、人工衛星から観測した地球からの放射スペクトルである。下図は、太平洋上熱帯地域での上空からの赤外線放射である。http://wattsupwiththat.com/2011/03/10/visualizing-the-greenhouse-effect-emission-spectra/ つまり、上のグラフが地球から出て行く赤外線のスペクトル、下のグラフが上空から地上に放射される赤外線のスペクトルである。破線は地表表面温度の黒体放射曲線とだけ書かれているが、ヴィーンの変位則から計算すると300K位である。
 下図の7μから13μまでの凹んだ部分に対応する赤外線は能率良く宇宙に放射されていること、上図の凹んだ部分から、夫々水分子(7μ、13μ以上)、オゾン(10μ)、二酸化炭素(15μ)が、括弧内に大凡の波長でしめした領域の赤外線を宇宙に逃がさないようにしていることが解る。以上は、温室効果ガスが実際に地球の温暖化に寄与していることを示している具体的な証拠であり、重要な結果だと思う。  この図及びこの図の元になった図で気になるのは、横軸である。上図をよく見れば、横軸目盛として波長(μm)が書かれているが、等間隔でも対数表示でもない。そのこと及び縦軸の単位からも解る様に、波数(/cm)が横軸であった図を左右逆転して表示したものである。注意を要するのは、一般に波長を横軸に表現された放射スペクトルと振動数(波数)を横軸に表わしたスペクトルは、ピークの位置も形も異なるということである。(注5)横軸を波数で表示したのは、二酸化炭素の効果を大きく見せたいとの意図があったと思われる。地球からの輻射曲線のピークが、丁度二酸化炭素の吸収域に来るからである。  この図を見て、二酸化炭素の重要な役割を感じるが、定量的議論がなければ近年の地球気温の温度上昇の機構だという決定的証拠にはならない。
(補足:図(6)の原図は縦軸単位を適当にとっている筈であり、科学的には問題が無いと思われる。適当とは、”X軸と曲線に挟まれた部分の積分値が、その波長範囲で観測された放射エネルギーになる”と言う意味である。2015/6/8)

5)エネルギー収支の問題 
 ここまで、IPCCの主張する人工的に放出された二酸化炭素などによる、追加的な地球温暖化とそのメカニズムを、太陽光の入射スペクトル、大気の吸収による地上でのスペクトル、そして、人工衛星で観測した上向き及び下向き放射のスペクトルなどから、考察した。ただ、実際に二酸化炭素などが地球の温暖化に著しく影響しているかどうかは、定量的な議論がなくてはならない。そこで、以下にエネルギー収支の問題を既存の図などを用い考えてみる。

   上の図(図7)はhttp://ja.wikipedia.org/wiki/地球のエネルギー収支 から採った太陽から入射するエネルギーと地表から放射されるエネルギーの入射及び放射経緯である。黄色は可視光線を赤は赤外線を表わしている。本来この全てのプロセスを定量的に考察しなければ、温暖化ガスによる地球温暖化は説明できたとは言えない。大気による吸収は16%あるが、これは図3にある水による吸収が大部分だろう。また、雲による太陽光の反射が20%あるので、雲の生成と地表温度の関係も当然大きい。
 また、地球表面で吸収された太陽エネルギーの割合が、地表面の形状によっても大きくことなること、地表面から空気中へのエネルギー移動には水分の蒸発による潜熱としての移動と直接空気と地面との接触による顕熱としての移動があるが、両方とも風速に依存し、潜熱移動の場合は更に湿度(より正確には比湿と飽和比湿の差)にも依存する。これらのプロセスは、詳細に大気物理学として知られているが、その分野の専門家でも明確な答えは出せない位複雑である。(注6)
 
6)二酸化炭素など温室効果ガスの増加による地球温暖化説への反論:

 図(7)と重なるが、図(8)に示したのは、各プロセスにワット数を直接記したものである。大気と地表との放射の交換が直接書かれていて解り易い部分もあり、相補的に図7−8は用いると、現象に対する理解が進む。図(6)の上のスペクトルは、夫々大気による放射と大気の窓経由の放射の和であり、下のスペクトルは大気による放射である。図(4)の太陽からのエネルギースペクトルは、左の入射する太陽放射342Wと、一番内側のat the sea levelと図中に示されているのが、地表による吸収部分168Wである。
 以上の様に、地球の表面温度に影響するプロセスはたくさん考えられる。従って、人工的に排出された温暖化ガスによる地球温度上昇という幾分単純なモデルに対する反論は多い。その中で説得力があったのは:
(A)地球に届く宇宙線の量が、太陽の磁場が大きくなると減少する。それが大気圏の雲の発生量の減少を招き、それにより太陽エネルギーの反射量の減少が地球温暖化の進行の原因であるという説である(注7)。ただ、2003年のP. Lautらの論文(注8)により、これが否定されたと言われている。つまり、宇宙線量と低層雲の量に相関がないというのである。また、 アラスカ大学教授(地球物理)であった赤祖父俊一氏の講演によると、(B)地球温暖化は起こったとしても1度以下だろうとのことで、大した問題ではないとの話もあった。更に、地球温暖化などの問題は時間的余裕もあり、まだまだ学者の研究する領域であり、政治的問題ではないと指摘している。

7)原点に戻ってIPCC報告等に対する最も基本的な疑問点:
 もう一つ、根本的な問題が東北大名誉教授の近藤純正氏によりサジェストされている。
それは、(C)IPCCの気温のデータは確かかどうかというものである。近藤氏は明確には書かれていないが、読者にはそう伝わる:http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ke04.html

 図(9)は、長野県の都市化が進んだ長野市と、都市化が進んでいない飯山市での約100年間の気温変化である。これは代表例で、他にも日本中の都道府県の都市化部と田舎部での気温データのペアが示されている。何れも都市部での温度上昇は、最近急に高くなっているが、田舎部では殆どコンスタントである。http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ke04.html
 都市部では人のエネルギー消費が大きくなることのほかに、コンクリートとアスファルトで地表が覆われることが多くなり、図(8)にある潜熱によるエネルギー移動や建物が建つことによる顕熱としてのエネルギー移動の双方が小さくなる。従って、都市化の進行によって観測地点の温度が徐々に高くなるだろう。それがそのまま統計データに入っているのではないだろうか。もしもそうなら、赤祖父俊一氏の言うように二酸化炭素の大気圏での増加による温度上昇はさほど大きな値ではないことになる(注9)。
 つまり、IPCCは世界各地で比較的都市化が進んだ場所のデータを集めている可能性があるのではないかという疑問である。もしそうだとすると、この10年間、あまり気温に変化が無い理由も解ってくる。先進諸国は殆ど日本病とおなじであり、デフレに苦しみだした10年だから、都市化の拡張が抑えられる傾向にあったからである。

終わりに:
 私は、以前から二酸化炭素による地球温暖化説を疑っていた。
http://rcbyspinmanipulation.blogspot.jp/2014/01/blog-post_23.html そして、今回、IPCCの考え方を真面目に考えてみた。その結果、図(8)にあるような多くのプロセスで地球の温度が決定され、そのプロセス一つ一つに、大気圏物理学や地球物理学という分野で、気候を含め様々な問題を研究している方々の膨大な研究があることを知った。その中に首を少し突っ込んだだけで、二酸化炭素などによる地球温暖化の進行という問題には、簡単には結論がでないことが解った。理解が進んで、難しさが解ったのである。  一点だけ簡単なことだが最も大切な点が気になった。IPCCは、温度測定ポイント近傍の都市化による温度上昇分を、地球全体の温度を見積もる際に、差し引いているかどうかである。その点について明確にすべきであるとおもう。
(追記2015/6/9:よく知られている様に、火山の大噴火により地球の寒冷化が起こる。それは、放出された微粒子が、雲が発生する際の核として働くからである。太陽光を反射する雲の量が増加すると、温暖化効果の大きい水蒸気が減少するので、その効果も考えなければならない。また、工業化で大気中に増加するのは、二酸化炭素の他に微粒子も放出され、後者は寒冷化の原因に成り得る。地球温暖化説は、よく引用される温室効果で説明出来る程簡単ではなく、非常に多く問題が絡む複雑な問題である。)
注釈:
1)最近、東大の渡辺雅浩准教授により“近年の地球温暖化の停滞は海洋熱吸収の増大によるものか”と題する発表が昨年夏になされた。Watanabe, M., et.al., Geophysical Research Letters (2013, July18)  最近の集中豪雨などは将に海水温の上昇が原因であることを考えると、非常に重要な指摘のように思われる。
2)黒体とは、どのような周波数の光も完全吸収・放出する物体である。その物体が加熱された場合プランク分布の式に従って、あらゆる周波数の電磁波(光)が放射される。プランクの式から、最大輻射の波長がその黒体の温度に逆比例するというヴィーンの変位則や、輻射エネルギーが温度の4乗に比例すると言うシュテファン・ボルツマン則などが導かれる。
3)松見豊、名古屋大太陽地球環境研究所教授 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333534.htm 参照。(文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会光資源委員会の報告書)
4)詳細は、J. Tennyson, et,al., Pure Appl. Chem., vol.86, pp71-83 (2014), and references therein.
5)周波数(ν=c/λ)或いは波数ν=1/λへの独立変数の変換は、(F(λ)dλ=F(ν)dν)から関数形を変換して計算する。
6)この当りの議論は、東北大学名誉教授の近藤純正氏のホームページに詳しくかかれている。http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kenkyu/ke03.html アドレスのke03の数字を換えると違う章に飛べる。都会化による温度上昇なども論じられている。大気物理(Atmospheric physics)で検索すれば、専門家の著述がたくさんある。ただ、上記引用の図が繰り返しあらわれるのも印象的である。
7)例えば、http://www.youtube.com/watch?v=sRYXyqg770E 丸山茂徳東京工業大教授による二酸化炭素による地球温暖化説は誤りであるとの解説があった。(現在著作権の問題か何かでyoutubeで観られない)その根拠として、過去1940年から40年間CO2濃度が急激に増加しているが温暖化は全くなかったことや、地質学的データであるが、CO2濃度が現在の50倍であるにも拘らず赤道まで凍った時期があるなどの事実が紹介された。また、地球の気温を決めるメカニズムとして、1)地球表面の雲による被覆率が太陽光の反射率を決め、2)その雲の量を決めるのは、水蒸気凝縮の核となる宇宙線(宇宙から降り注ぐ放射線)の量であり、3)宇宙線量は太陽活動により変化する磁気が決めるという。 過去1000年間の太陽活動、宇宙線量、気温のデータから判るという。
8)”Solar activity and terrestrial climate: an analysis of some purported correlations”, Peter Laut, Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics 65 (2003) 801–812
9)東京の平均気温が1度ほど低くなることになった。気象庁が観測地点を都心ではあるが公園(北の丸公園)にうつしたからである。http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG03H1E_T01C14A0CC1000/(注9は2014/11/30に追加)

2019年11月13日水曜日

崩壊する米国と道に迷う世界

以下は伊藤貫さんの2,017年に慶応大学で行った講演のデータを中心にして、米国の抱える矛盾とそれに翻弄される日本を含む国際社会について考察したものです。コメントや誤りの指摘など歓迎します。

1)米国の危機とトランプの利己主義:

米国社会にはいつ頃からかはわからないが、金儲け最優先主義が寄生している風に見える。その思想は今や全世界に拡散している。(補足1)それによる目に見える社会の症状は、第一に貧富の差の拡大であり、第二に社会の政治的混乱である。

先進国において貧富の差が一番大きいのは、当然米国自身であり、その結果米国社会は深刻な崩壊の危機を今後20年程の間に迎えるだろう。その主原因は、上記二つの症状だが、加えて特有の要因として、デモグラフィック(人口構成的)な要素がある。米国在住の伊藤貫氏はそのように語っている。https://www.youtube.com/watch?v=Y_oD0ZWfWz4&t=4225s

もう少し詳しく言うと、米国には貧富の差の拡大に加えて、人種構成に大きな変化が予想され、その両者には強い相関がある。2025年には、白人の人口よりも非白人の人口が多くなり、リタイヤした年金世代の比較的裕福な白人が、もともとそれほど裕福でなかった非白人の若者からの所得移転(年金)に頼るという構図である。

更に、米国は世界一の債務残高の国であるという特殊要因も存在する。そこで、トランプ大統領はその米国の危機を、世界各国に押し付ける政策を考えている。それが“America First”であり“Make America great again”の中身である。

つまり、その不可避に見える米国の衰退と分裂の危機を、トランプは本質的な解決で乗り越えるのではなく、あるコングリマット企業の不採算部門の切り捨てによる経営改善をモデルにして乗り越えようと考えているようだ。その不採算部門とは、諸外国との安全保障関係であり、米国経済の足かせとなるパリ条約などの国際条約であり、紛争国家への介入などである。これら全てにおいて、米国に共同責任があることを完全に無視するという利己的態度を取っている。

上記のような切捨は、必然的に米国のユニポーラーな世界覇権を不可能にする。トランプの世界の二極化或いは多極化は、積極的理念に裏付けられているのではなく、後付の政策である。米国を世界のユニポーラーな覇権国から、地域覇権国に後退させると米国のドルは崩壊するだろう。世界の基軸通貨である現在の米ドルの地位など、トランプの念頭にはないように思う。それは、利下げをFRBに強く要求したことでもわかる。

ドル基軸体制の崩壊と米ドルの紙くず化は、世界経済に大混乱を持ち込む。それをできるだけ連続的な長期プロセスで成し遂げるには、際限なきドル安への誘導ではないだろうか。その途中で、国債の紙くず化が起こる可能性があるので、米国は他国が持つ米国債を高利率の永久国債に切り替える強い要請をする可能性があると思う。

世界覇権と米ドルを基軸通貨とする体制は不可分だからである。なお、ニクソンショックのとき、米ドルが世界の基軸通貨としての地位を守れたのは、サウジアラビアの国防保障とともに、原油取引を米ドルに限るという約束があったからだと言われている。(補足2)

諸外国にとってこの問題が厄介なのは、FRBの崩壊の部分を除けば、おそらく米国の大半が合意することだと言う事である。そこまで強引にトランプが利己的にやってくれるなら、それは都合良い。悪いのは米国じゃない。宇宙人のトランプが悪いのだと世界から一定の納得が得られれば、なお良い。紳士的な米国はその後登場すればよいのだと。

2)米国の病気

伊藤貫氏の講演によると、1960年の白人人口は全人口の85%であった。それが、2017年には、60%に減少して居る。そして、出生率の差などから、2025年頃には50%以下になるという。また別の資料によると、2015年の白人、ヒスパニック、そして黒人の年間給与の中央値は、其々63000$、41000$、37000$だそうである。この所得格差はこの20年間広がって来て居る。https://zuuonline.com/archives/121819

この低所得層の有色人種が主になって、定年退職した白人の年金のために多額の出費をするようになったとき、そして、黒人などが受けていた積極的優遇策(逆差別策、Affirmative action)の廃止されたとき、上記人種間の分断は加速されるだろうと、伊藤氏は話している。

この貧富の差だが、20世紀後半からのグローバリズムの影響で大きく広がった。MITの研究者の論文によると、1947〜1973年の間、労働生産性が97%上昇し、労働者給与も95%上昇した。 しかし、1973年〜2013年には、労働生産性が80%上昇したにも関わらず、労働者給与は4%しか増加しなかった。(補足3)

別の角度から見ると、米国を代表する企業500社(S&P500)の場合、1980年代では上げた利益の50%が株主還元に、45%が設備投資や賃金上昇に用いられたが、2000年になると利益の90%が株主還元に向かうようになった。

伊藤氏によると、これらの数値はMITの研究者による論文からの引用である。この論文と思われる論文のアブストラクトには、「戦後初期(米国の黄金期)には、諸制度は富の広範囲への分配をデトロイト協約(累進税、高い最低賃金など)により重視したが、1980年以降にはその諸制度がワシントン・コンセンサスとして逆転した」と書かれている。ワシントン・コンセンサスとは、現在の米国主導のグローバル化経済の諸政策である。(補足4)

伊藤氏の講演は、米国に於けるこの富の分配における不公平に関して、そのメカニズムの出来た経緯についても解説している。それは、ニューヨークのウオール街の金融業者による企業経営の支配が進んだこと、そして、金の力で国政への影響力を強め、税制変更を実現した結果である。最終的に、株主としての金融業者(ヘッジファンド、投資銀行、private equity fundなど)が、企業があげた利益のほとんどを彼らのキャピタルゲインとして吸収するシステムが出来上がった。

その一例として、資本による収益(キャピタル・ゲイン)に対する税率の変化が紹介されている。ニクソン&カーター時代には35%だった税率が、パパブッシュの時代には31%、クリントンの時代に20%、息子ブッシュの時代に15%になったが、オバマの時代に20%に戻った。このクリントン時代に大幅に税率を下げた主役が、財務長官であったロバート・ルービンやローレンス・サマーズだという。両者とも金融業と関係が深い。(補足5)

更に、様々な税の抜け穴を利用して、ヘッジファンドなどが実際におさめている税金は、伊藤氏によると、せいぜいキャピタルゲインの10%程度だという。そのことと関連して、米国の税制に関する法律は75000頁という膨大な文章であり、他の先進国の10倍ほどにもなっているということなどが紹介されている。

2007〜2008に経済学者のサイモン・ジョンソン(Simon Johnson)は、「IMFを経験して(chief economist、2007年3月〜2008年8月)分かったことは、米国もロシアと同様に寡頭政治(Oligarchy)だということだ」と言ったという。それは、ウオール街の金融業者が、巨大な金融資産で、政治をコントロールしているという意味である。米国の政治は世界の政治である。その結果が、現在のグローバル化政治経済であり、最初のセクションで書いた米国と世界の病状である。

3)政治資金の問題

1970年代には、議員経験者の2-3%だけがロビーストになったが、現在では下院議員を辞めた人の5割、上院議員を辞めた人の9割がロビーストになる。その理由は、米国の両議院の議員年収が22万ドル程度と低く、トップ1%の年収の5分の1程度しかない。ロビーストになれば、多額の政治資金を議会に流す仲介をすることで、桁違いの年収を得る事ができるからである。

ワシントンのロビーストを通じて議会に流れる金は、毎年40億ドル程であり、例えば重要な委員会の委員長を経験したロビーストは、年収200-300万ドルが期待できる。従って、自分たちが議員のとき、その職につくことを考えている人(つまり現在では議員の大半)は、ロビー事務所に逆らうことはやらないで、彼らの意向を汲むようになる。

そのような情況を、元AFL CIO(American Federation of Labor and Congress of Industrial Organizations)のプレジデントだったRichard Trumka が、テレビ局によるインタビューにおいて、「民主党も共和党も関係ない。年収トップ0.1%の連中が、我々の選挙を買い取っている。」と言ったという。

伊藤貫さんの講演は、ヒラリー・クリントンが大統領選に負けた理由として、「元国務省の方が聴衆の中に居られるので気を悪くされるかもしれないが」と前置きして(追補1)、多額の政治資金を米国内外から集めたヒラリーの金集めと、国務長官時代に国務省のメイルシステムを一度も使わず、自宅のサーバー経由で電子メイルをやり取りしていたことなどとの関連に言及している。

この中で驚くべきことを言っている。ヒラリー・クリントンは、21世紀の初頭にクリントン基金という慈善基金を創設した。国務長官(2009〜2013)になった途端に、そこへの献金が急上昇した。そのクリントン基金に500万ドル以上献金のケースの半分以上は、外国政府または外国企業からであった。しかもマスコミ報道によると(2016年)、それまでに集めた24~25億ドルのうち、本来の慈善行為に使われたのは6%だけだった。その具体例は、ロシアに盗まれたポデスタ(John Podesta選挙運動責任者)の電子メイルから明らかになった。(補足6)

4)米国の政治資金規制

米国の政治資金規正法では、毎年一人あたり寄付できる上限は2700ドルである。一方、全国規模の政治団体への個人献金は年間1人5000ドルに制限されていた。しかし、2010年の裁判で、支持する候補者や政党と直接協力関係にない政治活動であれば、表現の自由の観点から、献金額に限度を設けてはならないとの判断がくだされた。

Wikipediaは以下のように記述している。

このような候補者から独立した政治団体は、企業献金や個人献金を大量に集め影響力が大きくなるにつれ、特別政治活動委員会(スーパーPAC)と呼ばれるようになった。スーパーPACは無制限に資金を集めることが許されており、テレビのCMなどを利用して様々なキャンペーンを行なっている。特徴的なのは、支持候補に対する支援ではなく対立候補へのネガティブ・キャンペーンが多い。スーパーPACへの献金者は公表が義務付けられているが、多くの団体は法的な技術を用いて選挙後まで公表を引き延ばしている。

その結果、政治資金の流れがおかしくなり、ニューヨーク・タイムズの報道によれば、2016年に民主党と共和党に流れた政治資金の少なくとも半分は、アメリカの130家族から来ているという。更に、別の報道によると、2016年政治資金の40%は米国の50人から来ているという。皮肉を込めて言えば、これぞ正にアメリカン・デモクラシーである。

また、去年ニューヨーク大学の法科大学院の2016年の調査報告では、2006年のローカル選挙での選挙資金として使われた金の25%は誰が出した資金か不明であった。つまり、ニューヨークの金融業者がチャリティやソーシャルウエルフェアファンドなどに寄付をし、大部分がそこからスーパーPACへ流れることがわかった。

このような政治資金の情況と関連しているかもしれない政治的判断の例を挙げる。
オバマ政権になって、2007年-2008年にジャンク抵当証券にトリプルAの格付けをしたことなどが、リーマンショックという金融危機を招いたが、オバマ政権は誰も上記犯罪的行為を裁かなかった。当時FRB議長だったバーナンキさえも、USA Todayのインタビューで、誰も告発されなかったのは遺憾であると発言している。

その件で金融機関には多額の支援金(約70兆円)を出しながら、900数十万の家を失った家庭には20兆円も支援をしなかった。民主党がこのように労働者階級に冷たいのと、最近25年間の金融機関からの政治献金が共和党よりも民主党へ流れていたこと(ヘッジファンドの政治資金の約7割が民主党に向かっていたこと)とは相関がありそうである。つまり、民主党は労働者の味方であったのは、もはや過去の話となったのである。 

  5)米国の病気の世界への伝染:

米国は、世界覇権を金融と軍事の両面から握っているので、国際的なルールも国際機関の決定という形で、一定の時間を要するが、米国(つまりウオール街)の考える通りに定着する。

各国の一流企業の経営も、株主である金融業者の意向に沿って進められる。株主の意向の実現のために、株主は経営者には当然非常に高い給与を得る様に勧める。その一方で、利益の多くは株主配当に向けられ、そのかなりの部分は、ニューヨークに送られる。最近その比率は低下しつつあるが、日本の大企業の株主のおよそ30%は外国人(法人を含む)の所有であり、2018には3年ぶりに30%を切った。日本人は、その意味するところ(最近低下していることについても)を、深刻に考えるべきである。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46583930W9A620C1MM0000/
https://www.stockboard.jp/flash/sel/?sel=sel533

米国発祥のグローバル化の結果、先進国の製造業は人件費の安い国に移動し、そこから諸外国に売ることで多くの利益を得る様になった。その際、自国の労働者のことや購買力低下のことなどを考えない。全世界の購買力が上がれば、それで良いからである。周知のことだが、それが資本移動の自由化(規制緩和)の効果である。

それが長期的に見て、その企業のプラスになるとは限らない場合でも、その企業に投資する金融業者は構わない。何故なら、その企業が落ち目になる場合、頃合いを見計らって株を売払い、投資対象を替えるだけで良いからである。また、その国の政治がいびつになっても、構わない。何故なら、その場合は国を移れば良いからである。それがディアスポラの民のかんがえることである。二大ディアスポラは、ユダヤ人と華僑である。

米国を代表する投資家の一人であるジム・ロジャーズは以下のように語っている。「1807年にロンドンに移住するのは素晴らしいことだった。1907年にニューヨークに移住するのは素晴らしいことだった。そして、2007年にはアジアに移住することが次のすばらしい戦略となるだろう。」彼は、家族とともに2007年、ニューヨークからシンガポールに移住した。

補足:

1)米国のニューヨーク金融界の一派が、近代社会の知恵である法規制を、大衆の洗脳工作により「自由を束縛する悪」として取り除き、金儲け最優先主義を正当化した。そして、その富は力であり、力は正義であるという中世への逆戻りなのか、ポストモダーン的な価値の分散なのか分からない社会にして、自分たち民族的マイノリティーのビリオネアたちが、マイノリティーの権利拡大の思想で自身の経済活動を正当化するとともに、政治そのものの支配を企んだ。

2)各国へのドル札の分配は、輸出品に対して支払う形で分配される。米国は世界中から自国通貨で買い物(輸入)ができるので、制限をあまり感じないで買い物を続けた。各国に余った米ドルは、米国債と引き換えに米国により回収された。一度着いた浪費癖が簡単には無くならないので、米国は多額の借金をすることになった。その米国債などで世界一の債務国となったが、その合計は20兆ドルを超える。

3)2000年代初頭の株主還元の内訳は、40%が配当に60%が自社株買いなどの使われたという。なお、最近起業されたアップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどはNASDAQ上場銘柄であり、S&P500には含まれない。

4)上記MITの研究者の論文だが、聞き取りにくい名前なのだが、グーグル検索するとそれらしい著者と論文が出てくる。それは:“Inequality and Institutions in 20th Century America”と題する論文である。著者は、Frank S. Levy & Peter Temin という人たちである。この論文は2007年に書かれて居るので、伊藤氏は2003年というべきところを2013年と言ったのかもしれない。https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=984330

論文の要約の中の一部を以下に抜粋し、伊藤氏に引用した論文かどうかの判断材料として提供する。本文に内容は書いているので、訳は省略する。
The early post war years were dominated by unions, a negotiating framework set in the Treaty of Detroit, progressive taxes, and a high minimum wage – all parts of a general government effort to broadly distribute the gains from growth. More recent years have been characterized by reversals in all these dimensions in an institutional pattern known as the Washington Consensus.

5)ルービンは元ゴールドマン・サックスの共同会長、サマーズはハーバードの学長の時にヘッジファンドから年に26ミリオン$の顧問料をもらっていたという。つまり、両者とも金融業者であった。

6)この件が明らかになったことの経緯を、伊藤氏はかなり詳しく述べている。そして、2016年の大統領選挙でヒラリーが負けたのは、この件で民主党のサンダースを支持した人たちが米国の政治或いは民主党に嫌気が差して投票に行かなかった体と思うと述べている。

追補1:この言葉は、深く考えると、元国務省の人と出席者および将来のyoutube視聴者に「国務省の方の存在を認識しています」と知らせているとも考えられる。この追補を書く動機は、伊藤さんが故中川昭一さんと「お互い殺されないように気をつけよう」と話したと何かで明かしていたからである。

(編集:2019/11/15早朝)

2019年11月12日火曜日

安倍総理は何故親中策に舵を切ったのか

1)日本の政治評論家は、米中覇権戦争は決着がつくまで続き、中途半端な終息はないだろうと声を揃えている。もしそうなら、安倍総理が中国との関係を深めようとする姿勢がわかりにくい。モスクワ在住の北野幸伯氏が、何度も日本に向かって警鐘を鳴らしているように、日本は二度目の大敗戦の前夜なのかもしれない。https://www.mag2.com/p/news/423231

一度目の大敗戦に至るプロセスは、米国の巧みな戦争への誘導だった。それはGHQのトップだったマッカーサーの議会証言や、Fルーズベルトの前任大統領だったフーバーが歴史を再評価して書いている通りである。(補足1)

大恐慌から抜け出られない自国の“出口のない状況からの脱却”を解決する方法として、米国は戦争への参加という方法を選んだ。ドイツに宣戦布告をする口実がないので、日本を標的にした。(補足2)そして、軍縮条約締結から経済封鎖策を経て、戦争に誘導した。日本の敗北は、二発の原爆によらずとも戦争前から明らかだった。(補足3)

戦後その日本を、占領から完全な従属国にして、二度と立ち上がれない状態に整形した。日本を非武装中立という脆弱体質の国家に仕上げ、そこからの脱却を企むようなまともな政治家を全て潰し、官僚という政治家の適正が皆無な人種が政治を担う国家に仕立て上げた。(補足4−1)

講和条約を米国の忠犬となった元内務官僚の吉田茂政権の時に締結し、その後の完全独立を防止した。その後、東アジアの覇権支配の基地として、日本を不沈空母(やはり米国の忠犬的な元内務官僚、中曽根康弘元総理の言葉)にして、ドル基軸体制を、不換紙幣を用いながら続けた。(補足4−2)

今回、異星人的な人物が大統領になったのを機会に、日本を独裁国の中国の犠牲になるよう仕向けて、東アジアから撤退しようとしている。その方法として、あの戦争の時と同様に、全て日本の責任でシナリオが進むようにしたいのである。その罠に、安倍総理が引っかかった可能性がたかい。

2)安倍政権は、来春中国の習近平主席を、国賓として日本に招く予定をしている。それは、トランプ政権の対中国外交に盾突く外交である。それを国会でもどこでもほとんど議論しないのが、レベルの極めて低い日本の国会議員や主流派の政治評論家である。地上波のテレビも新聞も何も言わない。

この問題に関連して、10月25日のトランプ政権のペンス副大統領による演説が行われ、昨年に続いて中国を批判した。しかし、若干融和的姿勢が見えていると中国専門の遠藤誉氏が指摘しているが、それはその通りだろう。https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20191028-00148588/

その後、10月30日には副大統領演説を補強するかのように、ポンペオ国務長官がハドソン研究所において何とか賞の受賞講演として、中国共産党政権は米国やその他の民主主義諸国の価値観を否定しているとして激しく非難し、全世界の民主主義諸国が団結して中国と対決することを求める演説をした。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58150

ただ、副大統領や国務長官が中国非難をしても、肝心のトランプ大統領はこれまでの習近平とは信頼関係が出来ているという態度に、変更を加える発言をしない。トランプのこれまでの外交は、米国の利己主義を100%他国に押し付ける極めて身勝手な姿勢を、見せたり隠したりしてきた。つまり、トランプにとっては、日本などどうなっても構わないかの様である。

ヨーロッパ諸国は、中国は第二ではあっても第一の仮想敵国ではないので、そして、米国とのNATOも(フランス大統領は批判したが)、トランプ退任後はまともになるだろうから気楽である。しかし、非武装中立の日本は、米中対立の中でどちらにも付かないで独自路線を取るのは、両側に絶壁を持つ稜線渡りと同様に困難である。そこで、トランプを信じられない安倍政権は、中国との関係を改善する方向に少し向かったのだろう。

次回の大統領選挙でトランプが敗北することが確実なら、おそらく日本側はポンペオ長官の言う通りに、中国を敬遠する方向に舵を切るだろう。しかし、習近平はいい奴だとか、金正恩と仲がいいとか言って同盟国を馬鹿にするトランプ大統領の再選の公算は大きい。そのような大統領を産むほど、米国も病んでいる。(補足5)

安倍総理とその取り巻きは、この複雑怪奇なあるいは“マッドマン”(補足6)を大統領に持つアメリカの情況を十分読むことが出来ないのだろう。丁度、80年前に平沼麒一郎首相が、独ソ不可侵条約の締結を知って、「複雑怪奇」と声明を残して総辞職したことを思い出す。その後、一年ごとに首相が代わるという混乱の後、東條英樹が首相になり戦争がはじまった。

この歴史に学ぶべきだが、もう遅いようである。それを示す出来事がすでに起こっている。天皇の即位礼にペンス副大統領は参加を取りやめて、全く日本では名前が知られていない一長官が代わりに参加した。おそらく、中国の王岐山と顔を合わせるのを嫌ったのだろうが、その辺の経緯は日本では全く議論されない。

3)日本が反中国の姿勢を取った時、中国はより一層国際環境の中での孤立感を深める。そこで米国は中国との関係修復に動くだろうと安倍総理は疑っている可能性がある。それは、自身の損害を最小限にし、中国に最大の譲歩をさせる米国トランプ一流の利己的外交である。

その後、日本が中国からイジメを受けるのは、日中の二国間問題であり、アメリカは無関係であるという姿勢をトランプなら採るだろう。

トランプ退任後の可能性が高いが、何れ米軍は東アジアから撤退するのは、伊藤貫氏の指摘の通りだろう。そこで、米国の負担を最小にして、日米の関係を切りたい。上記シナリオは従って一石二鳥である。そのような酷い事でも、トランプならやりかねない。

何も報道せず、何も議論しない日本である。日本国民は未だ寝ぼけている。安倍さんがもし天才的政治家であっても、そして、伊藤貫さんが主張するように憲法改正から核武装実現を狙ったとしても、日本国内の猛反対と、米国、ロシア、中国などからの非難大合唱にあうのは必然である。(補足7)

日本では、その極めて危険な賭けをしている安倍政権を、まともに見ないでおこうと言う政治屋とその使い走りが多い。彼らは、その代わりに断然簡単な韓国批判で国民の目をそらせている。

もう一つ、日本の政治屋とその取り巻きが期待しているのは、中国の経済崩壊である。しかし、中国は崩壊する時には、元は紙くずになるが、ドルによる外国債務は残さないだろう。経済に詳しい李克強は、そんなヘマはやらない。(補足8)

習近平政権が潰れれば、中国は世界のほとんどの国同様にパニックになるが、それでもその後は共産党独裁の経済大国として短期に復活するだろう。再びチャイナ7が政権を支える体制に戻るだけだろう。

日本の若者や小さい子供を抱えた夫婦は、ジム・ロジャーズの言う通り、出来るなら日本脱出を考えるべき時である。

補足:

1)マッカーサーはGHQ総司令官を退任後、議会で証言している。また、ハーバート・フーバー著「裏切られた自由」か、その解説本に書かれている。私は解説本しか読んでいないが、元の本を引用しても許されるだろう。

2)桂ハリマン協定を破棄した日本に対して、米国は腹立たしい気持ちに満ちていた。そこで、日本を戦争の標的にするのは、当然だとも言える。

3)オバマ大統領が、広島訪問の数日前に核兵器予算を大きく増やしたことを、伊藤貫氏は指摘している。核廃絶に互い努力しようと広島で呼びかけた数日前の事である。その冷酷無比とも言える国際政治の現状を考えるべきである。

4)1.孫崎享著「アメリカに潰された政治家たち」に書かれている。2.不換紙幣によるドル基軸通貨体制は、オイル取引に米ドルのみを用いる制度を作ることと、世界のユニポーラ-覇権で維持された。 5)これについては、2、3日中に伊藤貫さんの講演を引用して、書く予定である。

6)トランプ外交を“Madman Theory”を採用していると言われるので、トランプの形容にそれをそのまま用いただけである。 https://en.wikipedia.org/wiki/Madman_theory

7)日本の現状は、国民の大半は「火事だ」と叩いても、今「寝ている最中だ」と怒り出すほどの、白痴的平和ボケである。日本の政治家のうち立憲民主党などを含め、半数近くは、中国や朝鮮半島出身かと思われるほどの、非武装中立論者である。多分、かれらは日本が崩壊するときに、隣国に逃げるつもりをしているのだろう。

8)中国のトップ周辺には本当の秀才が多い。李国境は経済指数を作るほどの経済通であり、王岐山はハエやトラを叩くだけでなく、非常に優秀な政治家だと言われている。日本の政治家とは、それこそ雲泥の差である。

2019年11月7日木曜日

頭を悪くする日本の教育: 入試を改革しても何も解決しない

1)T大出身の官僚と政治家

日本の母親たちは、勉強すると頭がよくなると思っている。しかし、本当は逆である場合が多い。日本の進学校を良い成績で卒業して、T大学に入学すると、いろんな知識を得てクイズ番組に出て恥をかかないようにはなる。

毎日ほどテレビ放送されているクイズ番組だが、その幾つかで、その大学の学生数人がクイズが得意だということで、T大王という名前で登場している。王なんて称号で呼ばれて恥ずかしくないのだろうか?彼らはきっと、そのような感覚など無くしていて、ただナイーブにその呼び名を歓迎しているのだろう。

T大とは、日本の無能な官僚を大量生産している大学のことである。戦後、GHQの政策により、最も適さない彼らが政治家になり、日本人を今や世界の絶滅危惧種にしている。(補足1)

以上は、多少モジってはいるが、ワシントン在住の国際政治・金融コンサルタントの伊藤貫さんの意見でもある。伊藤貫氏は、そのT大経済学部を卒業し、米国のコーネル大で米国政治史・国際関係論を学んだ人である。伊藤氏によると、日本の官僚や政治家は、致命的と言えるほど思考力が弱いというのである。https://www.youtube.com/watch?v=pwDkY3uOA_Y

伊藤貫さんは、日本に帰ってきた時、西部邁さん(昨年死去)などと議論をして、日本外交の現状を指摘してきた人である。私も、彼の話がもっとも分かりやすいので、数回ブログで紹介した。その伊藤さんは、上記日本の官僚の弱点の原因について、以下のように話している。

私は18、9才のころ、同級生と付き合っていて、「彼らの大部分は、すでに思考能力を破壊されているな」と感じました。彼らは記憶力や計算力は抜群だけれども、自分で考えないのです。

  日本の中学と高校の教育課程で、「自分で疑問を持つ、人のつくった回答に満足しないで、納得できるまで自分で考えてみる」という能力をすでにすり潰されているのです。だから彼らに、「大学に入ったのだから、主体的にものを考えろ。知的創造性を発揮せよ」などと要求しても、もう遅いのです。

  その時点で彼らの大部分には、模範解答を丸暗記する能力しか残っていない。 そんな模範解答丸暗記型の秀才がキャリア官僚になるわけですから、米中ロのタフで柔軟で冷酷なバランスオブパワー外交なんか、とても対応できません。日本の外交政策と国防政策は、いつまで経っても米中ロに弄ばれ続けるのです。

  これほど明快に日本社会の弱点が指摘されているのに、国会ではその解決策など何も考えないで、大学入試の英語民間試験を採用するとかなんとか、馬鹿な議論をしている。 学校で英語教育をもっとしないといけないという類のミクロな話では、教育改革なんか出来はしない。そうではなく、T大卒のラベルよりも、その個人の大学でつけた実力が、社会で評価されるようにしなければならないのだ。そのような日本にどのようにして改革するかを、国会議員は議論すべきなのだが、そんな事が分かる政治家はいない。

その名門XX大卒というラベルを得ることが、入試だけで決定され、馬鹿でもそのラベルが貼られていれば、高給と高い地位が約束される。そんな社会が健全な筈がない。何でもラベルで判断される社会は、全体主義社会である。そのような社会を持つ国には、破滅しか約束されていない。

日本の教育が如何に日本人を馬鹿にしているかを、2つの例をあげて示す。

2)日本外交の大失敗

日本が、まともな国にひとっ飛びで成れるチャンスを逃した政治家の話である。私も既にブログに書いている。T大卒の官僚政治家、佐藤栄作がその主人公である。(補足2)米国大統領だったニクソンが日本に核武装と東アジアで指導的役割を果たすように進言した。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2017/01/blog-post_12.html

伊藤貫氏は、最初に引用の動画で(9分30秒あたりから)、次のように語っている。ニクソンが実際に佐藤栄作に会ってみたら、あまりにも頭が悪く、しかも国際政治に対して完全に無知で鈍感なので、「こんなヤツはダメだ。全く相手にならない」ということになった。高坂正堯のような、憲法9条と吉田外交(吉田茂の対米従属外交)を支持した日和見主義的なコラボレーショにストをブレインにしていた佐藤首相と、ニクソンがマッチョなバランス・オブ・パワーゲームをやろうとしても、それは無理というものである。

そして、ニクソンは「もうジャップなんか相手にするな」と公言するようになった。その結果、現在の日本の運命が決定されたようなものである。現在、仮に朝鮮半島が核武装しても日本にだけは核武装させないという。(上記動画の8分位)その確固とした米国の方針は、米中の密約でもある。その米中密約は、ワシントンでの公然の秘密だという。(一定の核拡散の必要性については既に議論している=>https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2019/02/blog-post.html

その中国は、あの対中戦争においてプライドを傷つけた日本に、その埋め合わせをさせる時期を75年後の今日も、待っているというのである。その時は近くまで来てしまったようだ。(10月末と11月最初のブログ記事)

米国の著名な政治学者のジョン・ミアシャイマーやケネス・ウォルツらは、国際政治は三千年前から本質的に無政府状態であると言っている。そして、国家にとって頼りになるのは、自国だけであり、国際法や同盟関係が国家を救ってくれる訳ではないと言っている。

いつも私がブログに書いている「国家の作る社会は、野生の原理が支配する」ということである。何故理系の元研究者の私にわかるのか?それには、伊藤さんが明確に答えている。高校生でも分かることだと。日本のT大卒の官僚や政治家(元官僚)の無能は、国を滅ぼすことになる。佐藤栄作や吉田茂、更に大勲位中曽根康弘は、その筆頭容疑者達だろう。宮沢喜一?思考能力がないという点では筆頭だろう。飛び抜けてT大の秀才だったというのだから。

3)二つ目の例:馬鹿にされる日本の労働者

どこの大学を出た、どの家系に生まれた、どの民族に生まれたなど、何かの最初が問題の社会を“入口社会”と呼ぶことにする。(補足3)もっと庶民的な話でも、上記“入口社会”の欠陥は指摘する。それは、日本の経済力の逓減である。

それを明確に表す図がある。下に示す。

これが日本の賃金の推移である。この賃金は、例えばトヨタの各国の賃金を例にとっても同じだという。トヨタは英国や米国などにも工場を持っている。(私の車も、英国製のトヨタ車である。)そこでの賃金も、このように推移しているというのだ。つまり、日本の給与が低いのはデフレのためであるというのは、少なくとも国際的な企業では嘘である。

その指摘をしているのが、以下のニュースサイトの記事である。https://www.mag2.com/p/news/408545

このような調査は、少し真剣になれば誰にでもできる。しかし、それすらやらないで、テレビなどに出ている日本の政治経済評論家は、日本はデフレで給与が上がらないと言っている。名門大学を出ても、この体たらくである。

上記記事では、日本の労働者は馬鹿にされていると書いている。その通りだろう。その原因だが、私が何度もブログで書いた様に、日本が入口社会だからである。入口社会では、「給料が安ければ、自分の実力を正当に評価してくれる他の会社に行けば良い」ということには成らないのである。

それを労働流動性が悪い、或いは、労働市場の流動性が極めて悪いと言う。名門T大学を出て(「入学したのだから」が正しい;補足3)、XX株式会社に奉公することになったのだから、滅私奉公が本来の日本人のあり方だという態度である。本当はそうでないのだが、自分の頭で考える能力を無くしているので、“その本当”に気が付かないのである。

結び:

最後に一言。これも最近ブログで書いたことだが、ジム・ロジャーズという米国のユダヤ系大金持ちが、若者は日本から逃げるべきだと言っている。あの韓国よりも、日本に将来性がないというのである。それは、お前たちユダヤ系金融資本家の所為だろうと、馬渕睦夫元ウクライナ大使は言うが、被害妄想の類かもしれない。何故なら、自分のことは自分で決められるからである。

ユダヤ系が握る米国が日本を破壊しようとしているというのなら、今からでも、戦えば良い。伊藤貫氏が言うように、「日米安保が信じられないので、独自外交をして軍事力と核を保持する。経済制裁刷るならしろ」といえば良い。北朝鮮は立派に核武装したではないのか? 

補足:

1)次の動画でも、GHQによる財閥解体の結果、特殊法人が増殖したこと、更に、戦前には官僚出身の政治家はあまりいなかったことが語られている。それが官僚出身の政治家を育てる土壌になったことは明白だろう。https://www.youtube.com/watch?v=dpq-_e0Og4Y

2)主人公は国民ですという声が上がるかもしれない。しかし、国民に佐藤栄作を総理にする事が出来たか?答えは明らかにNOである。しかし、佐藤栄作氏は総理に成らない選択は出来た。それだけで十分だろう。因みに私の日本改革諸案の内の一つは、上記質問をYESにすること、つまり、共和制への移行である。

3)大学の授業は、教授連中が給与のためにしゃべるだけである。学生は、ただそれを眺めるだけであり、その間を静寂が支配している。 補足1に引用の動画は、日本の大事件を喋っているある大学の授業風景だが、学生の存在が感じられない。サンデル教授の熱血授業は、日本中の話題になった。しかし、日本人はそこから何も学んでいない。

習熟度テストはあるのだが、一夜漬けで何かを書けば良い。教授は、それに5段階か4段階で点をつけるが、一定の割合しか落第点はつけられない。自分の仕事が増えるだけだからである。一部の国家資格を受けるために大学に入る学生たちを除いての話だが、彼らは卒業証書がほしいだけである。授業が聴きたいわけではないし、況してや何かを学びたいわけではない。

2019年11月4日月曜日

乳幼児の集団保育の危険性などについて:乳幼児の段階でヒトという動物は人間になる

昨年の11月4日の本サイトにおけるブログ記事は、「人の幼児期が長いことと、言葉と道徳とを学ぶことの関係について」であった。自分の書いた記事に、なるほどと改めて納得し、新しい角度からリブログすることを思いついた。昨年の記事の内容を用いて、表題の視点から議論する。

1)人にとって乳幼児期は、人間として生きる為の基礎を学ぶ最も重要な時期だと思う。丁度一年前の記事では、他の動物に比較して非常に長い人の幼児期を考え、「言葉を話し、言葉を信じる動物」として育つ為にその期間が必要である結論した。(補足1)

補足1に引用の記事(https://copel.co.jp/article/childhood-ability-statistics/)に、「乳幼児は、統計パターンに基づいて学習する」という話がある。これは非常に重要な指摘である。乳幼児は、統計の標本と母集団の関係を理解していて、自分の統計分析に基づいて、周囲の世界についての理論を組み立てているというのである。カリフォルニア大バークレーのアリソンという先生の考えだという。

一般に、周囲と自分の関係を知るには、原点の自分を明確に確認し、その自分を物差しにして他を測る、つまり、認識する。しかし、自分の存在に気づいた時には全くの白紙状態であるから、世界の概略を理解するのは容易ではないだろう。その理解の前半は、周囲特に母親や家族との関係から帰納的に、自分を知ることに費やされるだろう。(補足2)

つまり、自分は母に依存し、母は自分を無二の存在として大事にしてくれる存在であることを、多くの体験から帰納的に習得する。それが、乳児が世界を認識する第一歩である。父親や兄弟姉妹がその周囲に存在するが、母から受ける体験とはかなり統計的に異なる。それが、「自分、自分に対峙する者、そして、第三者」という形式で世界を理解する第一歩だと思う。

世界を以上のように帰納的に知るということは、上記アリソン教授の理論、乳児は「統計分析により周囲を知る能力を持つ」と同じであり、白紙の乳児にとっては当たり前のことだと私は思う。

アリソン教授の理論を紹介したブログ記事は、幼児教室コペルホームという企業のものであるが、その記事で導いている「多くの情報に触れさせることが、より高い成長のために重要だ」という結論は、必ずしも真とは言えないだろう。むしろ、統計処理をして、真実を抽出する時、あまり困難を感じない安定な環境が必要だろう。

もし人を信じ、人としての情を豊かに持つ人間を育てるのなら、乳児期には保育園による育児ではなく、基礎がしっかりした家庭で母親に直接育てられるのが大事だということになるだろう。

2)昨年の記事に書いたことを一言でいうと、「乳幼児が言葉を学ぶことは、世界を理解することである」と言えるだろう。そして前のセクションで議論したように、その世界のモデルを自分の中に創り出すために統計処理的思考を用いているということになる。

例えば、「母」という言葉を理解するには、周囲の人を個別認識し、それぞれの自分にたいする接し方を観察して、(自分を殊の外大事にしてくれる)異質な一人を抽出し、それが常に同じ人であることを知らなければならない。更に、他の子供にも、自分の母とは違う個人だが同じような一人が存在することを知るようになる。そして、新しい概念として「母」を抽象化するのである。これらの作業は全て、頭脳が自分の目前の画像と自分に及ぶ(他人の)作用を、記憶領域に積み重ね、統計的な処理をして習得される。

この幼児期の作業で、言葉の意味と信憑性を、論理的思考により判断するのではない。 ただ、信じることを前提にその言葉を聞くのである。人が「止まれ」と言えば、それを聞いた人は先ず止まるだろう。その後長じて、「嘘」に接するようになる。嘘が社会生活の上で一定の効果を持つのは、その嘘の言葉を人が信じるからである。

聞いた言葉をそのまま信じるという習性が全く出来ていない場合、嘘にも引っかからない。全く嘘に引っかからないヒトは、全く真実も知らないヒトである。しかし、それは言葉を理解しない野生のヒトに留まっているということである。

従って、乳幼児期の段階から、周囲からの情報に嘘が交じると、子供は言葉を習得できにくくなる筈である。乳児期には、なるべく母親とその家族が育てるべきである。まわりの人は皆、その乳幼児の味方であるという情況で聞いた言葉と自分の体験から、言語の習得ができる。そして幼児は、言葉を学習すると同時に“言葉を信じる性質”を獲得するのである。

人の乳幼児の期間が長いのは、言葉の創造とそれを用いて周囲と情報交換することに、長時間を要するからだろう。「言語の創造」は、外国語を学ぶのとは、全く異なる次元のことである。

尚、道徳もこの時期に同時に習得されるだろう。たとえば、「駄々をこねる」のは、道徳を学ぶ一環である。それに対する、親の反応を見ることで、幼児は何かを要求する際の限度などを学ぶだろう。道徳とは、個人が要求できる範囲を自覚することであり、この幼児期に習得される。

3)昨年のブログ記事の言葉と、議論の延長

以上、幼児教育の大切さ、特に、母親と家庭が言葉と道徳の学習大事であることが理解できるだろう。現在、男女平等や女性の自立が議論されている。また、それを助ける保育施設の拡充が課題だと考えられている。心配なのは、その様な議論をする人たちは、人の言語習得や道徳学習などにとって非常に大事な幼児期を対象にしていることを、十分自覚しているかということである。

尚、今回の議論は、ダーウィンの進化論を仮定している。そして、言葉でのコミュニケーション能力のある人が、肉体的に丈夫な人よりも人間社会に適応できることを、適者生存の原理として仮定している。特別なスペシャリスト(例えば兵士や運動選手)の育成は、この記事の対象ではない。

やや禁句に近いことを言うと、豊かさと平等は、人の平均としての社会的能力を低下させる。また、男女が分業的に生きてきた過去の歴史を否定し、同じことを権利として主張することも同様である。

乳幼児は不満を泣き声で表現し、母親は愛情でそれに対応するが、母親が自動販売機的に泣き声というコインで、乳幼児の要求に応じるのでは、愛情という概念の抽出に失敗する可能性がある。社会の多様性、環境の多様性を理解し、それに対応する能力を育てるには、体験も年齢に応じて多様化しなくてはならない。

少年期には、その体験を先人の体験にまで延長するべきである。つまり、歴史教育が何よりも大事だろう。ユダヤ人の能力が高いのは、家庭レベルで聖典(聖書とタルムード)により歴史教育が成されることだろう。彼ら宗教(ヤハウェ神信仰)とは、民族の歴史教育なのだ。

西欧では、都市が城壁で囲まれていることは何故なのか? その事実を、どれだけの少年が学校で教わるだろうか? 廃仏毀釈が何故、明治の日本で行われたか? その議論を中学校で行ったのか?

重要な事実とそれに対する何故という疑問の提出、更に、それに対する議論が、日本の教育には欠けている。 先人の体験を追体験するには、現在の歴史教育には無駄が多いように思う。

補足:

1)下に引用の記事では、幼児の学習能力の高さについて解説している。そして、幼児期に多くの情報にふれさせることが、より高い成長のために重要だと結論している。 https://copel.co.jp/article/childhood-ability-statistics/

2)真実を抽出する方法として、演繹と帰納の二つがある。演繹とは、前提から論理的に次(の命題)に至る思考であり、帰納とは多くの現象から一つの事実を抽出する思考である。

補足2への蛇足: 複雑な系における未来の予測にも、同様の二つの方法があるだろう。私の乏しい知識、カルタゴの滅亡、クレタ文明の滅亡、19世紀のモリオリ族の滅亡などから、将来の日本の滅亡を予想するのも、帰納法的な思考による。(=>地政学)

2019年11月2日土曜日

日本の終焉の前に、戦争までの歴史の評価を終了すべき(2):日本国憲法の話

1)現在の政権に正統性があるのか?

現在、日本の国会議員は選挙で選ばれている。しかしその選挙は、明治時代の廃藩置県を元に決められた選挙区割と大きな一票の格差とにより、完全な普通選挙ではない。その原因は、何度も選挙無効の裁判が行われても、最高裁が現行の一票の格差を認めてきたことである。結果として、明治維新の官軍の末裔が、未だに政治の中心に座る体制が維持されている。(補足1)

上記藩閥政治の支配層が自分たちの権力維持のために、選挙制度の改訂をしてこなかったことと、日本で三権分立が実際上成立していないこととは、密接な関係がある。司法が行政から独立していないので、①日本での最高裁判決は国家行政上の重要なところを遡上に乗せることができない。その言い訳として、統治行為論なる異国の理屈が都合よく用いられている。(補足2) https://www.asahi.com/articles/ASLDM4TRXLDMUTIL02B.html

三権分立と言っても、その三権は本来国家元首の下に位置する。そうでなければ、3つ首がある動物のようで、にっちもさっちもいかなくなる場面がありえる。普通の国では、三権が三竦みの情況になれば、国家元首が結論をだす。しかし、日本には国家元首の規定が憲法にない。(補足3)

話を元に戻す。三権分立が成立していれば、最高裁は行政のトップと同等であるから、行政に対する憲法判断が可能となる。日本のように、総理大臣が最高裁長官を指名する国では、総理大臣の行政に最高裁はクレイムを付けられない。

日本国憲法41条には、「国権の最高機関は国会である」と書かれている。つまり、現行憲法のままでは、日本が国難の際に元首の役割をするのは、総理大臣ではなく、名誉職的になっている国会議長かもしれない。しかし、参議院議長なのか衆議院議長なのかは、分からない。

現在ような状況下でも、この国の根本的な体制(国体)が法的に整備されていないことが、大きな問題となったことはない。もちろん指摘はあっただろうが、それが国全体に広がらないのは、日本の政界や官界、それに報道関係者などが十分西欧の学問体系を学んでいないからだろう。(補足4)

2)日本国憲法の欠陥

日本国家が上記のような情況にあるもう一つの重要な原因は、敗戦後の戦争の総括を日本は何もやって来なかったことにある。400万人の軍人や民間人の死者を出しながら、日本はその戦争の総括をせず、その戦争責任者の末裔の可能性が高い人たちを、国家の要職においている。

日本の右よりの方々は、米国フランクリン・ルーズベルトによる戦争吹っ掛けや、戦後の東京裁判、それに占領軍の洗脳工作WGIP(War Guilt Information Program)こそ、戦後日本を国家としての体をなしていない情況に追い込んだ元凶だと言う。しかし、それは「敵が日本を倒した」「卑怯な奴らだ」と言い続けて75年間、今なお立ち上がろうとしない惨めな姿なのだ。 https://www.sankei.com/life/news/150408/lif1504080003-n1.html

日本の保守本流を辞任する自民党が、国家としての整合性回復の第一歩を踏み出せない理由は、天皇の存在だろう。現在の天皇性は、先の敗戦の結果日本全土を占領した国連軍(実質は米軍)の統治下において決定された。憲法が公布されたのは、1946年11月3日のことである。その第一条に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と書かれている。天皇は統治者(つまり国家元首)でなくなったのである。

つまり、日本国が祝日にしている11月3日の憲法記念日とは、日本の国家元首が消滅した日なのである。この祝日を70回以上も迎えながら、そのことに言及した人は居るのだろうか?もちろん、憲法制定当時は、最高権力者のマッカーサーが居り、被占領国なので別に不合理な点はないだろう。しかし、その憲法を日本国が独立したとされるサンフランシスコ講和条約以降も、そのままにしてきた。何故なのか?

その原因は、7年間国連軍に占領されていたとは言え、日本国憲法は大日本帝国憲法の規定に沿って改訂され、日本の天皇を中心とした国家体制が継続していたことである。その一方で、天皇を国家元首とし、日本国軍を復活させるという憲法改訂は、その当時の環境でも今でも無理である。

対外的には、一つには米国大統領トルーマンの態度が恐ろしかったことがあるだろう。もう一つの原因として、周辺国との国交回復が為されていなかったことがある。しかし、最も大きな原因は、国内にある。それは、日本国軍の保持と天皇元首制を謳う憲法への改訂は、国民の同意を得られないということである。それは戦争前の体制に戻るという印象を与えるからである。あの戦争は、深層心理にまで及ぶ深い傷跡を日本民族に残したのである。

憲法改正をする時としては、日韓基本条約、日ソ共同宣言、日中平和条約など一連の戦後処理が終わったとき以降の安定政権の時だろう。その最初のチャンスは、中曽根内閣の時である。中曽根康弘氏は、これまで皇族以外で大勲位菊花大綬章をもらった唯一の総理大臣である。それは、憲法改正しないで政治の面での天皇制を護った功績なのだろうか?(この勲章も明治の遺物である。)

3)まともな国になるには:憲法改正の要点

日本がまともな国になるには、国家元首と日本国軍を憲法に規定しなければならない。その唯一の方法は、明治維新以降の歴史、特に先の大戦の再評価を行い、天皇の地位を江戸時代以前の姿に戻すことであると思う。つまり、名実ともに共和制への移行である。

その事により、先の大戦で交戦国であった国々や、戦場となった国々、更に、日本の一部として当事国であった、韓国、北朝鮮、台湾などから、真の平和国家として再出発する日本の覚悟に対して、大きな理解が得られるだろう。

それは誰も言ってこなかったが、多くの人達は気づいていた筈である。その動きは、小泉内閣の時にあった女系天皇容認論である。天皇の地位を徐々に小さくして、最終的には権威を消滅させるという手法である。それは、日本民族から天皇を奪い去ることになり、日本人はアイデンティティを失うことになる。

そのような元も子もなくする方法ではなく、元をしっかりと残す方法を考えるべきである。つまり、天皇を日本人の精神文化の中心に置くが、世俗の政治とは切り離す英断を、憲法改正とともにすべきである。それは、天皇を政治利用した薩長藩閥政治からの完全脱却を意味する。

そのために、旧皇族を復帰させて、男系男子の皇位継承を将来に亘って可能にする。そして、実際の政治においては、米国のように大統領選挙人の選挙と、選挙人による投票という形で大統領を決定する規定を、憲法の中に書き込むのである。更に、日本国軍を再興する。実際には、自衛隊を自衛軍と現行の英語名をそのまま翻訳するだけである。

天皇を精神文化の中心に置くことは、近代国家として必須の政教分離原則も明確に担保され、同時に、天皇陛下が現実の政治の泥をかぶる可能性も取り除くことができる。そして、それが天皇軽視でないことを、天皇を尊崇する日本国民に納得してもらうには、明治維新からの歴史見直しが必須なのである。

それは、大日本帝国の天皇制は、薩長が倒幕のために天皇を利用したことが出発点にあることを、国民が学ぶことである。つまり、蛤御門の変などで、革命軍的な薩長軍が徳川軍を圧倒する方法として、錦の御旗を偽造して用いたことが関係している。

その利用が上手く行ったので、明治憲法の第11条に「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と定め、賊軍の末裔と考えられる可能性が高かった薩長軍(軍の要職はほとんど薩長が占めた:ウイキペディアの藩閥政治参照)の権威を高め、その後の政治支配にも利用したのである。

因みに、この明治憲法の規定が、中国大陸における関東軍の暴走など、先の日中戦争の間接的な引き金であったことは良く知られている。

これらを成し遂げるには、かなりの努力を要する。しかし、国難が極めて高い確立で予想される現在、それを成し遂げなければ、日本は滅びる可能性が高い。

(11月3日夕刻:改訂、整理出来ていない文章で失礼しました。)

補足

1)大日本帝国の政治は藩閥政治と言われ、薩長土肥出身の有力者により政府要職が独占されていた。要職は、藩閥の周囲(縁故関係など)に拡散はしたが、その延長上に現在の日本もある。現在の総理も副総理もその系列下にある。https://www.mag2.com/p/news/215037/2

2)統治行為論は司法にも手の届かないところがあるというのだろうが、国家元首が規定されていない場合、行政の独走を許すことになる。歴代の最高裁判事は、私の考えでは、遊んで高給を食んでいる。

3)韓国大統領が、「徴用工問題で三権分立の原則を尊重し」というのは、国内用のセリフであり、外国つまり日本に向けてのメッセージではあり得ない。外交は元首の名に於いて成されるのであり、そこにはその国の最高裁の出る幕はない。

4)諸説あるようだが、Wikipediaの「日本の元首」欄をみると、元首など不要だという学者(浦部法穂)もいるようだ。元首が居なくて、誰が内乱のときに戒厳令をだすのか? 学者とはXXの別名なのか?