注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2022年9月26日月曜日

日本の将来は政治における論理の回復に係っている

日本の政治は、論理性に欠けている様に感じる。法律や条約の解釈も都合主義的に行うように見え、恐らく国際的には特殊な国とみなされているだろう。それらに関連して、今年2月9日に「日本の保守系を支配する明治の文明開化の思想」でかなり自分の考えを書いた。 https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12725869797.html

 

今回は具体例を幾つか挙げて、再度そのことを強調したい。

 

1)天皇に関する憲法の規定について

 

日本国憲法第一章(第1条~第8条)は、天皇に関する記述である。二条以下は何のためにあるのかわからない。これら条文を、独立後改正しなかったのは、日本人は論理的に文章を用いる習慣に欠けていると諸外国から評価されるだろう。或いは、これらの条文の意味を考えたことがほとんど無いのだろう。

 

1条において、天皇は国家の象徴である書かれている。第4条には、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とある。「象徴」と「国政に関する権能を有しない」は矛盾しない。

 

しかし、第6条と第7条には、天皇の国事行為がたくさん書かれており、それは第1条と第4条と矛盾するか、或いはそうでないなら、無意味な条文だと思う。

 

第6条は「国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命する」など、第7条は、「内閣の助言と承認により、憲法改正、法律、政令及び条約を公布することなどの他、国会召集、衆議院の解散などの国事行為を行う」などと書かれている。

 

国会が指名した人物を天皇が必ず任命するとしたら、天皇は総理大臣の名前を表示する電光掲示板のスイッチのようなものなのか? (仮に、天皇が国会より上位の存在なら、指名した人物の任命を拒否することもあり得る筈。その場合、別の人物を国会が指名するのなら、天皇は国政に関する機能を有することになる。)

 

第7条も、内閣が助言し、天皇が何かを行い、それを内閣が承認するという条文である。「Aが助言しBが行いAが承認する」このタイプの光景は、何処かの何かの教習所のようなところで見かける。一体何のために、このような国事行為があるのか、さっぱり分からない。天皇の権威付けにどうしてなるのかも、さっぱり分からない。

 

「まあ、政治的にはどうでも良いことなのだが、天皇は総理大臣と最高裁長官を任命する。更に、国会を招集し、必要とあれば衆議院を解散するのだよ。」と子供が納得するように教えられる先生はこの世に居るだろうか?

 

2)自衛戦争に関して:

 

憲法9条には、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書かれている。しかし、多くの議員さんたちは、「だからと言って自衛権を放棄したわけではない。自然権として自衛権は存在する」と仰る。

 

彼らは、戦争の多くは自衛戦争の名で行われることを知らない筈はない。一昨日の記事でも、「ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東南部4州を独立させてロシアに併合し、そこにウクライナが攻撃してきた時点で、自衛の戦争という名目でウクライナとの本格的戦争に入るつもりだ」と書いた。

 

ロシアも一方的な侵略戦争はやりたくないので、まどろかしい方法をとってでも、自衛戦争の形にしたいのである。

 

そして、幾ら自衛戦争と主張しても、やはり2国間のトラブルであり“国際紛争”である。憲法9条は、国際紛争を解決する手段として武力の行使は放棄しているので、明確に自衛戦争も日本は放棄しているのである。

 

9条2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は、この自衛戦争放棄のダメ押しである。軍隊を持たないで、そしてその上交戦権も放棄して、一体どのようにして自衛するのか?

 

日本の国会議員の方々は、この程度の日本語が理解できないのだろうか? 理解できるとしたら、何故独立後2,3年ほどで新憲法を作らなかったのか?

 

3)国葬に関して:

 

安倍元首相の国葬が明日行われる。岸田内閣では、これを国葬儀と名付けて通常行政の一環と捉えることで、その開催決定について、国全体の判断が不要であるとしている。しかし、諸外国から参加される要人は、普通の国葬と考えて、日本国と日本国民全体に対する弔意を表明すべく来日される。これは羊頭狗肉のような日本政府の行為である。

 

国葬は、日本国元首が日本国民を代表して開催を判断し行うのが普通だが、現在の日本のように国家元首が天皇なのか国会議長なのか、総理大臣なのか分からない(憲法に規定がない)国では、少なくとも内閣の発議と国会の議決を経て開催すべきである。本来は、元首を憲法に明示し、その判断で行うのが正しいと思う。

 

4)靖国問題:

 

総理大臣は公式には、靖国に参拝すべきではない。何故なら、サンフランシスコ講和条約(以下講和条約)11条にあるように、連合国の戦争犯罪裁判を受け入れることを条件に、連合国との講和が出来たからである。

 

一般に、敗戦国が戦勝国の考えを受け入れることで、講和が可能となる。一旦講和条約で合意した事項の解釈変更には、戦勝国の合意が必要である。

 

「国家のために命を捧げた英霊に対して、尊崇の念を表明するのは首相の当然の行為である」という論理は理解できる。しかし、講和条約の要件である東京裁判で犯罪者とされた人たちを崇めることは、少なくとも総理大臣など政府の要人は行うべきではない。

 

日本国がそうすべきだと思うのなら、講和条約など結ぶべきではなかった。その場合、大きな不幸の代償を日本国民は受けることになる。そんな理屈も分からない人が、総理大臣の候補になったことがある。

 

日本の右寄りの方々は、その女性を高く評価したが、その方は日本消滅への道の案内人としてふさわしい。日本国はもっと論理をまともに運ぶことのできる人物を国家の要人に任用すべきだ。

 

5)日米安全保障条約と台湾問題:

 

中国習近平政権による台湾侵攻の危険性が増している。今年かもしれないが、来年かもしれないというほど緊迫している。このような国際環境で安倍元首相は、「台湾有事は日本有事、日米同盟の有事」と言った。

 

この言葉は、「中国人民解放軍が台湾に侵攻する際、尖閣を先ず基地化して、東側から侵攻するだろう。従って、日本の自衛隊は防衛戦争に入ることになる。また、米国が台湾支援のために戦うことになれば、先ず沖縄の米軍基地が中国により攻撃されることになる」という意味だろう。

 

しかし、尖閣防衛のために、日本が数千発の核ミサイルを持つ中国と戦争することは賢明ではない。もしその様なことになれば、数百万人或いはそれ以上の命を犠牲にする可能性がある。

 

日米安全保障条約は日本防衛のためと思っている人が多いが、それは嘘である。それは米国が日本を利用するために存在する。米国の存在が間接的に日本の防衛に役立つだけである。「瓶のふた論」(日本封じ込め戦略)では、攻撃の的は日本となる筈。

 

米国との同盟は、米国にこき使われる羽目に陥る。韓国はベトナム戦争で十分学んでいるだろう。トルーマンの以下のセリフを日本人は何度も読み、その意味を考えるべきである。正に、米国に使われるように国を徐々に変更していったのが安倍元首相であった。

その様な事態になれば、ウクライナを利用してプーチンのロシアを弱体化する作戦の、東アジアでの再現となり、非常に馬鹿げている。日本や韓国は、第二のウクライナになるのである。

 

米国は本格的には参戦しないだろう。バイデンはあたかも台湾を守るような発言をしているが、それは日本や韓国の協力を前提にしたものである。日本と韓国などに、ウクライナのように戦いの前面に立たせ、習近平政権の中国を弱体化する作戦の筈である。

 

6)国際法や条約に対する姿勢

 

国際間の問題において、日本のように法解釈が曖昧な国は非常に危険な落とし穴にはまり込む危険が在ると思う。

 

例えば、第二次大戦の終結と日本の国際社会への復帰に際して、日本は講和条約を締結し、その中で歴史問題や領土問題について約束を行っている。それらを改めることは、連合国側の同意が必要である。そうでないと、日本の国際社会への復帰が取り消されることにもなりかねない。

(その一つは、既に「4)靖国問題」の所で書いた)

 

約束とは、カイロ宣言、ポツダム宣言、サンフランシスコ平和条約などでの連合国側の主張に日本が従うことである。例えば、日本の中国での戦争は侵略戦争であったとする認識、日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並び連合国側が決定する諸小島に局限すること、などである。

 

本当の歴史的事実は、日本はアジア諸国を植民地支配から開放するつもりだったと言ってみても、それは通らない。国際社会は事実を基礎に成立しているのではない。本質的に野生の原理の下に、互いの利益を争っているのが国際社会である。ヤクザの世界と言っても良い。残念だが仕方がない。

 

中でも重要なのは領土問題だろう。日本では、戦前まで継続的に日本の領土だったから、戦後もそれらの地域に関して領有権の主張が出来ると考える傾向がある。そんな理屈は全く成り立たないことを、日本政府は上記国際社会の本質とともに国民に周知すべきである。

 

例えば北方領土の場合、サンフランシスコ条約で国後島や択捉島は放棄している。その事実は、政府に提出された質問とそれに答えた当時の西村条約局長の言葉でも明確である。つまり、ソ連に戦争の結果として獲られたのであり、その結果を連合国全体に対して日本が受け入れたのである。

 

それにも関わらず、米国ダレス国務長官が日ソ間の平和条約の締結を妨害するために強制した、北方4島一括返還の主張が、その後の日本の姿勢となった。この領土に対する姿勢は、日ソ間或いは日露間の関係を悪くするだけでなく、日本は条約を無視し、国際秩序を軽視する国と受け取られる危険性が高い。(補足1)

 

沖縄の領有権についても注意が必要である。中国は日本に沖縄の領有権が無いと時として主張するが、それには理由がある。日米間の沖縄返還交渉だけでは、沖縄の日本領有は、国際的に認められたわけではないからである。沖縄はサンフランシスコ平和条約の時、国連の信託統治になる前の一定期間米国が統治すると決められた。

 

そして、沖縄返還協定において、米国は沖縄における権益を日本のために放棄した。しかし、連合国の全ての国がそれに同意したわけではない。その点に関し、日本政府は国民に対して説明していない。また、諸外国との交渉において、十分配慮なされていないのではないのか? 

 

間抜けなことに、日中共同声明又は日中平和友好条約で、中国は沖縄や小笠原に対する日本の領有権に合意するという一文はない。

 

7)尖閣問題

 

日中共同声明の際、日本は中国共産党政府を中国唯一の合法政府として認めた。また、台湾が中国共産党政府の領土の不可分の一部であるとの主張を理解し尊重するとしている。また、日本はポツダム宣言及び関節的ながらカイロ宣言の条文を受け入れている。

 

つまり、嘗ての戦争を侵略戦争と認め、日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並び連合国側が決定する諸小島に局限することに同意している。敢えて繰り返す。日中共同声明においても、尖閣は愚か沖縄諸島まで、日本の主権の及ぶ範囲であるとの合意を得ていないのだ。

 

既に言及したように、米国に沖縄の領有権を日本に返還するだけの権威は無かった。従って、尖閣を日本の領土として国際的に認められているとは言えない。(補足2)その尖閣のために、日本人が血を流すのは馬鹿げている。

もし、台湾との関係を重視したいのなら、1972年の共同声明など出すべきではなかったのだ。

(17:20 サブタイトルの編集; 9/27/5:00 補足など編集;5)の改題など)

 

補足:

 

1)北方領土問題は何度も議論した。国後択捉問題:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516752.html ダレスの恫喝には従わざるを得ない。米国が圧倒的に強いからである。しかし、一定時間後は、それを忘れた振りをして、2島返還で平和条約を再度トライすべきだった。

尚、竹島問題も同様に日本の主張は非論理的である。その指摘は:https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12658433723.html 

領土問題は、日本が勝手に日本の国益のために外交しないように繋ぎとめるロープなのだ。その端を握るのは当然米国である。

 

2)202011月に来日した王毅外相が、茂木敏充外相との会談後の共同記者会見において、「日本の漁船が絶えなく釣魚島(尖閣諸島魚釣島)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を(日本側は)避けるべきだ」と語り、尖閣諸島の領有権は中国にあることを主張した。しかし、茂木外相は何の反論もしなかった。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63096

0 件のコメント:

コメントを投稿