韓国の野党「祖国革新党」の曺国代表らが5月13日、竹島に上陸し、対日関係を重視する尹錫悦政権を批判した。外務省は、曺氏らによる竹島上陸について、韓国政府に強く抗議したとしている。https://www.youtube.com/watch?v=oxkBmenKb00
この件について、立憲民主党の松原仁議員が衆議院外務委員会で、竹島は我が国固有の領土であるから、この不法入国に対して入管法上の処罰が可能な筈なのに、なぜそのような措置をとらないのか、刑の執行が出来なくても、判決は出せる筈だと質問している。
https://www.youtube.com/watch?v=yWv51KHpZzM
それに対して上川外務大臣は、竹島は韓国が1954年以来不法占拠し、現状日本の施政権下でなくなっており、従ってそのような対応がとれないと答弁した。つまり、我が国固有の領土であっても、現状施政権下に無い以上、そのような告発は不可能だというのである。
何という愚かな質疑だろうか? 松原氏と外務省がわざわざ政治ショーとしてやっているのである。この馬鹿げた質問で、松原仁氏は次回も国会議員に選んでもらえると期待しているのだろう。更に腹立たしいのは、日本のマスコミはその政治ショーに100%参加していることである。
松原仁議員が“竹島問題”に本気で立ち向かうなら、先ず最初に質問すべきは: ①竹島は日本固有の領土だというが、「固有の領土」とはどういう意味なのかと言う質問である。その上で、②日本の領有権を韓国が侵犯している現状を何故放置するのか、自衛隊を出動させないのは何故かと質問すべきである。
松原議員は、この問題の原点を確認しないで、また竹島には既に韓国の常備軍が駐留しているにも拘わらず、韓国の一国会議員が渡航したことに対して入国管理法上の措置をとらないのはおかしいのではないかと外相に質問しているのである。愚かである。そして、松原議員は国士であるとか何とか言って、誉めそやしている人たちも同様である。
外務省も外務省である。竹島は現在不法占拠されており、日本の施政権下にないので、そのような行政上の対応はとれないと答弁しているのである。松原議員と外務省の間で「韓国による領有権侵害そのものは問題としない」という暗黙の了解のもとで、政治ショーを共に演じているのである。
外務省は恐らく、竹島は敗戦時に米国に取り上げられた領土であり、日本の領土ではないと納得しているのだろう。この領有権の問題は、既に記事に書いているので、編集して再掲する。
2)日本は敗戦により竹島を失った
韓国による竹島占領は、李承晩ラインの設定により始まると言われている。しかし、本当はそうではない。それ以前の2本の連合国最高司令官司令(SCAPIN)において、日本領土から外されており、李承晩ラインはこのSCAPINの延長でしかない。
その一つは、「一部の地域を政治上及び行政上日本から暫定的に分離することに関する覚書」として1946年1月の連合国最高司令官司令677号(SCAPIN-677)である。その第3項は以下のようである。
SCAPIN-677の第3項: この指令の目的から日本と言ふ場合は次の定義による。
日本の範囲に含まれる地域: 日本の四主要島嶼(北海道、本州、四国、九州)と、対馬諸島、北緯30度以北の琉球(南西)諸島(口之島を除く)を含む約1千の隣接小島嶼;
日本の範囲から除かれる地域: (a)欝陵島、竹島、済州島。(b)北緯30度以南の琉球(南西)列島(口之島を含む)、伊豆、南方、小笠原、硫黄群島、及び大東群島、沖ノ鳥島、南鳥島、中ノ鳥島を含むその他の外廓太平洋全諸島。
(c)千島列島、歯舞群島(水晶、勇留、秋勇留、志発、多楽島を含む)、色丹島。
つまり、このSCAPIN-677により、日本から竹島、歯舞群島、色丹島などが除外されたのである。また、「日本の漁業及び捕鯨業に認可された区域に関する覚書」として、SCAPIN-1033が出され、所謂マッカーサーラインが引かれた。その第3項にリアンクル岩礁(つまり竹島)の12海里内に立ち入っては行けないと書かれているという。
そのマッカーサーラインがサンフランシスコ講和条約(1952/4/28)で消されるかもしれないと考えて、李承晩が独自に宣言したのが、李承晩ラインであり、それはマッカーサーラインと同じである。講和条約ではマッカーサーラインや竹島に関する言及は無かった。
日韓基本条約締結により李承晩ラインは廃止され、それに代わって日韓漁業協定が締結された。李承晩ラインの廃止までの13年間に、韓国による日本人抑留者は3,929人、拿捕された船舶数は328隻、死傷者は44人を数えた。ただ、日韓基本条約において竹島領有権には触れていない。
拓殖大学客員教授の濱口和久氏のニュース記事「韓国の仮想敵国は日本?」(2014年11月28日)によると日本政府は、李承晩ラインの問題を解決するにあたり、日本人抑留者の返還と引き換えに、韓国政府の要求に応じて、常習的犯罪者あるいは重大犯罪者として収監されていた在日韓国・朝鮮人472人を放免し、日本国内に自由に解放し在留特別許可を与えた。
3)自民党政府の日本国民に対する二枚舌
先ず、以上を整理する。
竹島はGHQの指令(SCAPIN-677)により日本行政区域から除外された。そして、日本漁船の操業出来る区域の境界線として、マッカーサーラインを示した。(SCAPIN-1033) それらが、サンフランシスコ講和条約で廃止され、竹島が日本領土となることを恐れた李承晩は、マッカーサーラインをそのまま韓国の主権が及ぶ範囲として決定した。それが李承晩ラインである。
講和条約後も、日本は口先で竹島の領有権を主張したが、それにも関わらず、韓国に拿捕された漁民の日本側への引き渡しと引き換えに、日本の刑務所に服役中の重大犯や常習犯472人を釈放して、日本国内に住まわせた。
従って、以下のように筆者は結論する。
①日韓での拿捕された日本漁民と日本国内刑務所で服役中の朝鮮・韓国人犯罪者との引き渡し交渉での合意、②竹島区域に関して、SCAPIN-677の指令と異なった合意がサンフランシスコ講和条約でなされなかったこと、及び、③日韓基本条約において竹島が日本領であるとの合意がなされなかったこと、以上①—③により、実質的に日本政府は竹島を韓国領土として認めたことになる。
韓国の竹島領有を黙認した上で、日本が竹島領有権を主張することは、相手国の悪行(追補1)とする形で、日本に問題を解決する能力がないことを隠したいのである。サンフランシスコ講和条約後も、日本が憲法を改正して独立国にならなかったのは、米国と日本を統治している大日本帝国の生き残りがそれで良しと結託したからである。
同様のことが歯舞群島や色丹島の領有権の主張にも言える。SCAP-677でそれらの島々は、日本領から外された。それらの日本返還を明確に述べた日ソ共同宣言(1956/12/12)に署名し批准しながら平和条約締結を諦めたのは、米国で外交を司る国務省(米国ではどういう訳かそう呼ぶ)のトップであったダレスの恫喝によると言われている。つまり、SCAPINは未だに有効なのである。(追補2)
吉田茂はサンフランシスコ講和条約締結(1952/4/28)直後に、憲法改正すべきだった。それをしなかったのは、私の想像では、明治維新の際の薩長土肥政府の中で出世した自分たちとその一族、仲間たちの名誉を守るためだったのだろう。敗戦の総括がなされれば、彼らは国賊として裁かれることになるからである。(補足1)
政府の鳩山一郎は、1954年に総理大臣に就任している。憲法改正には、吉田茂の自由党や日本社会党の支持がなければ不可能である。日ソ共同宣言とその後の平和条約への道を創ったのは功績だったが、ダレスの恫喝を受けて、その後12月23日総理大臣を辞任している。米国国務省による妨害が、日本とソ連(ロシア)との平和条約締結を妨げたとして、プーチンロシア大統領も明言している。つまり、日本は独立国としての外交が出来なかったのである。
https://www.huffingtonpost.jp/2016/12/18/putin-dulles_n_13703530.html
それにも関わらず、自民党日本政府が北方4島や竹島を日本領土として主張するのは、米国の属国としての日本の地位、それを選択した自分たちの売国的政策を隠すためである。そのために、悪役となったのが韓国でありロシアである。それが、世界各国が、日本は過去の戦争の結果を認めていないと言って攻撃する理由の一つだろう。
おわりに:
以上、多少皮肉な見方なのかもしれないが、日本国民は未だ自分達の国家をもっていないということになる。そして、米国政府の下で占領政治を続けているのは、薩長土肥の日本帝国の生き残りである。
その体制維持の為に、中央集権体制を維持している。国会議員は、実質的に中央政府からの御用聞き、或いは、地方からの陳情屋に過ぎない。その国会議員という職業を維持するために、一票の格差が2倍以上の小選挙区制という選挙制度を堅持している。
つまり、150年前に決定した小さな区割り(県という)から、その地方に国家から与えられる利益と直結した形で国会議員を置くのである。国家から与えられる利益が、自民党以外の人物が国会議員になれば無くなってしまう場合、その県から選ばれる議員は必然的に自民党所属議員となる。単なる御用聞きなので、知識も知性も不要であり、世襲制の方が中央政府支配層には有利である。
この所謂55年体制は、官僚が政治を立案し行うことで、一応体裁を整えてきた。従って、外務大臣は外務省の意見で動くのだが、外務省は米国の指示を第一に優先する。そのために、外務次官経験者が駐米大使に就くことが慣例となっていた。
追補:
1)ある国家が他国に占有されていない土地を占領し領有宣言することは正当な政治的行為である。それに異存がある国は、その旨の宣告をして外交的手段を講じるのも正当である。この外交的手段の範囲に戦争も含まれるのは、主権国家体制が始まって以降、近現代の常識である。
2)このことは安倍内閣の時、日露が平和条約締結にほぼ合意しながら、日本を統治するシステムの一環として存在する日米安全保障条約の規定故に断念したことがあった。歯舞色丹が日本領に戻った場合、そこにも米国が基地を設けることが可能となり、それを日本が拒絶できないからである。
補足:
1)吉田茂は、1878年高知県出身の竹内綱の5男として生まれ、1881年(明治14年)8月に、旧福井藩士で横浜の貿易商(元ジャーディン・マセソン商会・横浜支店長)・吉田健三の養子となる。養父・健三が40歳の若さで死去し、11歳の茂は莫大な遺産を相続した。(以上ウイキペディアより抜粋)
(18:30、20:45編集;翌早朝再編集、追補1,2を加えて最終稿とする)
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