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2026年4月15日水曜日

「ナフサ不足」の本当の理由

——イスラエルと米国によるイラン侵略被害:ナフサ不足が何故被害の第一波なのか—— 


 

最近のニュースで、イラン情勢の悪化に伴う「ナフサ不足」が連日報じられています。「ナフサ」とは普段あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、石油製品の一種であることから、「ガソリンなどの燃料が足りなくなっているのかな?」と不安に思う方もいるでしょう。

 

実際のところ、中東情勢の悪化によって将来的に燃料が不足するリスクは大いにあります。しかし現状の燃料については、国や企業が備蓄を放出している筈であり、すぐに車が動かなくなるような事態にはなっていません。今、即座に深刻な危機に直面しているのは、プラスチックや繊維などを製造する「素材産業」なのです。

 

なぜ原油ではなく「ナフサ」の不足が素材の危機に直結するのか。その裏側にある産業的・地政学的な現実を整理してみました。

 

1. ガソリンや軽油と何が違う? ナフサの分類

原油を加熱して分留する際、沸点が30℃〜180℃付近で取り出される炭化水素の混合物が「ナフサ(粗製ガソリン)」です。産業界ではこれを炭素の数(分子の大きさ)によって大きく2つに分けて使っています。

  • 軽質ナフサ(炭素数5〜6が中心): 沸点が低く、これが今回のニュースの主役である「石油化学用ナフサ」です。

  • 重質ナフサ(炭素数7〜11が中心): この成分に化学的な改質を加えてオクタン価を高めたものが、私たちの使う「自動車用ガソリン」になります。

ちなみに、トラックの燃料などに使われる「軽油」や、ストーブの「灯油」は、ナフサよりも炭素数が多く(炭素数11〜20程度)、分留塔のより高い温度帯で抽出されるため、ナフサのグループには含まれません。

 

2. 軽質ナフサから「プラスチック」ができるまで

不足が叫ばれている「軽質ナフサ」は、そのままではレジ袋にも衣服にもなりません。素材に変えるための最初の工程が「熱分解(クラッキング)」です。これは中東ではなく、日本国内の巨大な化学工場(エチレンプラント)で行われます。

 

中東から運ばれてきた軽質ナフサを800℃〜900℃の超高温で加熱すると、分子の炭素同士の結合が切れ、反応しやすい「二重結合」を持った小さな分子が生まれます。具体的には、エチレン(炭素数2)、プロピレン(炭素数3)、ブタジエン(炭素数4)などです。

 

この小さな分子たち(モノマー)を、数千から数万個繋ぎ合わせる「重合」という化学反応を起こすことで、ポリエチレンやポリプロピレンといった高分子材料(ポリマー)が出来上がります。これが最終的に、あらゆる工業製品のプラスチック部品や合成繊維となるのです。

 

3. なぜ日本の工場で賄えないのか?

「日本にも製油所があるのだから、輸入した原油からナフサを作ればいいのでは?」と思うかもしれません。確かに国内でも精製していますが、日本の巨大な化学産業をフル稼働させるためには、それだけでは全く量が足りません

 

そのため、日本の化学メーカーは、消費するナフサの約半分を、原油からではなく「軽質ナフサという製品」の形で、直接海外から買い付けています。

 

中東の巨大ガス田からは、天然ガスと一緒に「コンデンセート」と呼ばれる超軽質の原油が出ます。これを現地の装置で切り分け、あらかじめ「軽質ナフサ」という製品にしたものを、タンカーで直接日本へ運んできているのです。

4. イランから輸入していないのに、なぜ影響が出る?

「イラン戦争でナフサ不足」と聞くと、「日本はイランからたくさんナフサを買っていたのか」と思いがちですが、実は現在、米国の経済制裁などを背景に、日本がイランから直接輸入しているナフサは実質ゼロです。

 

ではなぜ大騒ぎになるのか? 理由は「ホルムズ海峡」という地理的条件と、民間保険会社のシビアな判断にあります。日本が頼りにしている中東のナフサ輸入元は、UAE、クウェート、カタールなどですが、これらの国からタンカーを出すには、例外なくイランの目の前であるホルムズ海峡を通らなければなりません。

 

ここで最も重要なのが「海上保険」の存在です。軽質ナフサを満載した巨大タンカーは、言うなれば数十億円の価値がある「巨大な引火物の塊」です。万が一の攻撃や事故に備えた保険が掛けられていなければ、海運会社は絶対に船を動かしません。船や積荷だけでなく、万が一原油やナフサが海に流出した際の莫大な賠償責任を負いきれないからです。

 

ポイントは、通行できるかどうかを最終的に決めるのは、当事国の政府ではなく民間の保険会社であるという冷徹な現実です。

 

仮に米国政府が「民間船の通行は許可する」「海峡は実質的に開いている」と宣言したとしても、実際にその海域で軍事的な緊張が高まれば、国際的な保険市場(ロイズなど)は一帯を「戦争危険区域」に指定します。

 

流れ弾や機雷のリスクがある海域に対して、民間企業である保険会社は「保険の引き受けそのものを拒否する」か、「1回の航海で利益が吹き飛ぶような天文学的な保険料(ウォー・リスク・プレミアム)」を要求します。

 

つまり、国が通っていいと言っても、保険会社が保険を売ってくれなければ、物理的にタンカーは一歩も動けないのです。この保険機能の停止によって、周辺の湾岸諸国からの安全な運び出しルートが完全に塞がれてしまうことこそが、日本を直撃するナフサ不足の最大の理由なのです。

 

まとめ

ニュースで報じられている「ナフサ不足」の正体は、以下の3点に集約されます。

  1. 不足しているのは燃料ではなく、日本の工場で高分子材料の原料(エチレン等)を生み出すための「軽質ナフサ」。

  2. 日本はこれを国内精製で賄いきれず、中東からの「製品としての直接輸入」に大きく依存している。

  3. イランとの取引がゼロでも、ホルムズ海峡の封鎖リスクによって中東全域からの海上輸送が事実上ストップしてしまう。

プラスチック製品の背景には、分子レベルの化学から遠く離れた海峡の地政学まで、これほど脆く複雑なサプライチェーンが繋がっているという事実に、改めて驚かされます。

 


本稿は、ブログ筆者の地政学的・経済的分析と戦略的着想に基づき、AIアシスタントであるGeminiが情報の整理・構成および専門的知見の補足を行い、共同で作成したものである。

 

 

 

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