注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2023年3月14日火曜日

米国のモラル崩壊とその原因

伊藤貫氏と在日米国人のジェイソン・モーガン氏が、「何故、アメリカ文明からアングロサクソンとキリスト教的な価値観が消えたのか?」というテーマで議論した。https://www.youtube.com/watch?v=MWXKT9qq1gI

 

 

米国において伝統的価値観が消失し、社会の崩壊が進み、利己主義を最優先する風潮が国家の中心にまで見られる。米国社会のこの変化は、グローバル化が進む世界の政治経済における倫理・道徳の崩壊に繫がるので、人類文明の危機とも言える。二人は、その原因の分析に関し議論している。
 

最初に伊藤貫氏により道徳が崩壊した米国の現状について、過去60年間に支配層(マジョリティ)がWASP(白人アングロサクソンプロテスタント)からそれ以外に移行したことで、アングロサクソン的政治文化とキリスト教的価値観が破壊されたことが原因であるとの概観が説明された。
 

それに対しジェーソン・モーガン氏は米国の現状に同意する一方、その経緯については異論を出した。カトリック信者であるモーガン氏は、英国から移住したピューリタンの人たちはキリスト教徒とは言い難く、従って米国は建国時からキリスト教の精神に乏しいと言うのである。(補足1)
 

詳細な議論は専門外の私には追跡不可能なのだが、要するに、ヨーロッパの啓蒙思想がキリスト教的道徳から人々を「解放」し、個人主義と自由主義から利己的な成功を目指す風潮が強くなった。その結果、自己犠牲や自己抑制の社会における大切さを強調する宗教的価値観が消失したのである。

 

その風潮に迎合する考え方も発生する。アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)が提唱する「欲求5段階説」と呼ばれる自己実現理論が紹介されている。そして米国では、自己の尊厳を持つこと、自己主張すること、それらを通して自己実現するのが人生のあるべきパターンだという考え方が幅を利かせることになったようだ。

 

覇権国米国の考え方は当然衛星国に及ぶ。伊藤氏は、日本でも受け売りで同じ主張する人たちの一人として、先日襲撃された都立大教授の宮台真司氏の名前を出している。「自己実現を目指す前に、習得すべき道徳があるだろう」というのが二人の考えだろう。

 

伊藤氏は、キリスト教的道徳を回復しようという人も1960年代の米国には居たが、現在の大学などにも居なくなった。マスメディアも独善的になり、先日ワシントンポストに同誌の前編集長とCBSの人が書いた評論では、マスメディアに客観性など不要であると書いているという。そしてその理由は、何と!世界に客観的事実など無いからだというのである。(動画の40分頃から)

 

このような思想が、現在の米国の政治・外交とそれを報道するマスコミに信頼性が全く存在しなくなった原因である。そして二人は、客観性を失った米国に残るのは、ナチスドイツとソ連共産党の全体主義であると結論する。

 

実際、近代西欧が作り上げた主権国家体制と国際法とによって平和を目指す政治文化も、現在ではほぼ破綻し、国際社会は半野生の世界となっている。つまり、軍事的に強い国が、弱い国を支配下に置き、パワーゲームの駒に使うのである。

 

世界を啓蒙するという思い上がりと、能力のあるものが世界の富を独占するのは当然のことだという独善(補足2)が、モーガン氏に「ワシントンは全人類の敵」と言わしめるほどの政権を作り上げたということになる。https://www.youtube.com/watch?v=E7WLTY5zNbc

 

因みに上記米国を象徴する現象として、伊藤氏は、現在のアイデンティティーポリティックス(以下IDPLと略記)が生まれたと話す。古典的宗教が教えてきた人間の本来あるべき姿をゴミ箱に捨て、自分の病的異常性や未熟性までもアイデンティティだとして社会に向け主張するのである。

 

それは、家族や民族という既存構造を破壊し、人々をバラバラにするための道具となっている。LGBTQの権利確保の運動、BLM運動、クリティカルレース理論(補足3)などがIDPLに含まれる。

 

この米国の状況から本来の姿を取り戻すには、宗教を含めて古典を学ぶことが重要性だと二人は指摘している。私には、それは「時計の針を戻せば解決するだろう」という考えの様に聞こえる。つまり、今となってはそれでは問題解決にはならないだろう。

 

前回記事で書いたように、上記ワシントンの体制をつぶす動きが、そんな米国でも生まれ成長しており、それを援護する方がより有望だと思う。その点に言及されない点が最初に引用した動画における二人の討論が不完全だと思う理由である。


 

2)伊藤氏とモーガン氏が何かを見落としている?

 

上記討論の最後の方で、伊藤氏は米国の大学が1960年代から古典を教えないようになり、米国の価値観が現実主義と功利主義に染まったといっている。(補足4)それがモーガン氏の言う様に、ピューリタン的思想からの発展としてのみ解釈可能なのだろうか?

 

二人は肝心な要素に言及しない。つまり、二人は米国におけるユダヤ資本とそれに育てられた米国資本による産業の発展と、道徳心を欠いた米国の社会風潮との関連への言及を避けているように見える。伊藤氏は、米国の社会を混乱に導くIDPLを、ピューリタンの個人主義の延長線上にあると議論しているが、それは培地であってもIDPLの種ではないと思う。

 

ユダヤの資本家たちが米国支配のために発明したマイノリティの権利拡大という道具(補足5)の延長上にIDPLが生まれたと思う。アングロサクソンの政治文化の崩壊も、かれらの工作によると思われる。それはウィルソンが大統領になった際の経緯(補足6)、そしてウイルソンがそれに報いるためか、FRB(連邦準備銀行、米国中央銀行)を創設したことで分かる。

 

米国社会における道徳・倫理の崩壊は、彼らの支配下で生まれ加速された。マイノリティの彼らにとって、国家とその秩序は、彼らを弾圧する仕掛けと環境であり、最初から敵視の対象である。彼らが頼りにするのは、同族の団結のみである。

 

彼らとその仲間が勧めるグローバリズムは、全ての民族国家に対する敵意を動機の一つとしている筈である。例えば、日本に対しても彼らは敵意に満ちている。モーガン氏は米国の日本に対する憎しみの根源に、日本の神道が存在すると言う。(補足7)

 

神道によって作り上げられた日本の整然とした姿が利己主義で生きてきた現在の米国指導層にとっては脅威なのだ。例えば、12年前の東日本大震災の際にも、東北地方の被災者は苦難にありながら整然と耐えた。それを褒める人たちもいるが、それは陰では警戒と敵意の対象だろう。(補足8)

 

ユダヤ教の聖典であるタルムードには、「いいウソと悪いウソがある」(補足9)と教えている。その知恵に代表されるご都合主義と上記の国家秩序に対する嫌悪が、米国の今日を作り上げる上で大きな働きをした筈である。

 

今、そんな戦争と内乱さえも利用して大きくなった米国中心のグローバル政治・経済の後遺症が、世界全体で現れるようになったと思う。そんな米国中心の倫理崩壊の現状から逃れようとする国や人々が現れている。

 

BRICSを中心とした独自経済圏が構築されるのなら、そこに参加したいと考える国が増加しているようである。日本も、米国の指導と企みによって作られた近隣(ロシア、韓国、中国))敵視の外交をもう一度評価しなおすべき時期だろう。

 

例えば、以下の動画には賛成しかねる部分も多いが、このような意見が出てきたことは現在の世界を考えると興味深い。「日本はBRICs側に付くべき?インフレ、食糧、エネルギーなどから分析してみました - YouTube」: https://www.youtube.com/watch?v=giUf-QaEfB8

 

そのような現状に気づいた米国の右派たちは、古典への回帰も考えている筈である。トランプやデサンテス(フロリダ州知事)ら、そしてイーロンマスクなどに期待したい。世界は激動の時代に入っている。今その入口だが、新しい秩序の時代まで日本が存続できるかはわからない。


 

補足:

 

1)ジェイソンモーガン氏は、そのような道徳の崩壊が何故米国に起こったのかについての答えとして、米国はピューリタンが造ったという答えを用意したのである。 ピューリタンは当時の英国でカルト宗教と受け取られていたという。その影響下で成長した過激な米国の個人主義が、米国独自の“文化”として存在するという話である。それは或る意味単純な結論だと思うので、セクション2に私の考えを記した。

 

2)世界トップの経済力と軍事力で、民主主義と自由主義(個人主義)こそが社会の標準であるとの思想を世界に押し付けるようになった。そして、教えることと奪い取ることの区別さえ出来ないのが現在の米国だろう。彼らは、発展途上の主権国家に民主主義と自由主義を押し付けるビジネスモデルを発明した。途上国にテロや内乱を誘発して、自分たちが富を独占できる様な資本構造の国に転換するのである。民主主義と自由主義は毒を売る薬屋の看板に過ぎない。そのような仕事に従事する米国の若い人たちは悲惨である。自由主義個人主義の果てとして出来上がった大きな貧富の分布のなかで、大学に学ぶときの借金を兵役につくことで返すという人生モデルも、彼らの創造である。ここに彼らとは、ヨーロッパから移民として米国民となったマイノリティである金融資本家たちである。

 

3)クリティカルレース理論(Critical Race Theory)では、白人は黒人等を奴隷として支配したので、それに直接かかわらなかった白人もその責任を生まれながらに負うという考え方である。日本人を対象に、韓国や中国が用いる可能性が高いので、今後注意が必要だろう。


4)大学の社会的役割は単に高等教育機関であるだけでなく、社会に健全な価値観とそれに基づく文化を維持することである。日本ではこの大学の文化がない。それが日本の全ての大学が就職予備校となっている原因である。

 

5)これは何度も紹介してきた。「マイノリティの権利拡大はユダヤ人が米国で勢力を増す為に用いた」というのは、元大統領補佐官のブレジンスキーが言った言葉である。それは、マイノリティーであった黒人やヒスパニックを味方につけるためである。メキシコとの国境から不法移民の流入を助けて米国を混乱に導く米国の左翼政党、不法移民を南米から送り込む財団(オープンソサエティ財団)の主等には、米国の国益などどうでもよく、彼らは米国における彼らの勢力拡大から世界を支配することを目指している。それをグローバリズムという言葉でゴマ化しているのである。
 

6)第二期を目指すタフト大統領が再選される見込みが大きかった。どうしてもウイルソンを大統領にしたい彼らは、共和党を二つに割って異なる名称の党を立ち上げ、元大統領のセオドア・ルーズベルトを立候補させたのである。その結果僅差でウイルソンが当選したことになった。ウイルソンはFRBを創設するなど彼らのために働いた。

 

7)これまで伊藤氏は屡々、ワシントンの例えば国務省官僚たちは本当に傲慢な人たちだと言っている。その具体例として、周辺の国々が次々と核武装をしても、彼らは日本にだけは核武装を許さないと言う場面が最初の動画の後半にあった。この米国の対日姿勢に対するモーガン氏の分析である。

 

) 【衝撃】世界中のメディアが日本の凄さを痛感した光景「日本は尊厳と誇りの国だった。」

https://www.youtube.com/watch?v=70Bbg7caZRU

 

)ラビ・マービン・ケイヤ―著加瀬英明訳「ユダヤ5000年の知恵」(実業之日本社20088ページ)「タルムードでは二つの場合において、嘘をつきなさいといっている。もう既に誰かが買ってしまったものについて意見を求められたとき、たとえそれが悪くても、素晴らしいと嘘をつきなさい。次に、友が結婚したときは、必ずたいへんな美人です、幸福に暮らしなさいとうそをつきなさい。」

0 件のコメント:

コメントを投稿