youtube等のSNSでは、その分野の専門家でなくてもインフルエンサーとなって様々な言論を映像に乗せて公表することが出来る。それは知識を広めたいという善意でなされたとしても、受け手が一人の素人の観察・知識・意見であるとの了解を持たなければ、善意の目的に反してむしろ危険である。
また権威ある専門家でも、一般公衆に知識を広めると言うこと以外の動機、例えば政治的動機のもとになされれば、歪んだ情報は真実の外装を伴って広く伝搬される危険性がある。インターネットを手にした人類は、非常に高い情報伝達効率を実現したが、それに翻弄されない為には、受信者はより慎重な姿勢と情報浄化能力を持たねばならない。
受信側がSNSへの対応能力を持たなければ、そこでのやり取りから一般市民の意見が沸騰し、社会を混乱に導く可能性がある。本ブログ記事は、その危険性への警戒の必要性を示すためである。
一つの例をあげる。youtubeで主に政治分野のインフルエンサーとなった茂木誠氏とジェイソンモーガン氏の著作「西洋哲学入門」が別のあるyoutuberによって紹介されていた。その紹介動画によると、たいへん興味ある題材に関する本なのだが、誤解を招く部分も非常に多いと思った。(補足1)https://www.youtube.com/watch?v=xfh18CPrlnk
この本は、二人のyoutuberの対談本であり、SNSの延長上にある本と考えられる。その紹介された内容から、二人の哲学や宗教に関するyoutubeでの会話(補足2)に、「西洋哲学入門」という表題を付けて出版し売り出したように思われ、そのような題名を付ける傲慢さにあきれる。
勿論その責任の大きな部分は出版社にもあるのだろうが、やはり最終責任は著者が負うべきである。youtubeでの配信の感覚で出版されたのだろうが、ここで紹介された本を哲学入門書と思って買った人はとんだ思い違いをしていることになる。
二つだけコメントをアップしたので再掲する。この動画の17分頃のジェイソン・モーガン氏の科学と科学者についての誤解に対して、そしてもう一つは4分半頃からの哲学と宗教を混同した議論に対して、それぞれコメントした。(コメントの当否は動画を視聴して判断してもらいたい)
コメント1: (17分から)
「科学とは何か」と言うことを科学者自身が忘れているようです。今日では科学は宗教的になりました。」なんて、無茶苦茶な議論です。確かに科学を誤解している人もいるだろう。しかし、それは科学の責任でも科学者一般の責任でもない。馬鹿な科学者もいるだろうが、そんな安易な一般化は有害無益である。
二人は、政治の混乱を文明の問題としてしまっているのである。政治的に動く科学的知識を持った人物の行動や運動を科学の責任とすることにより、その政治運動に正しく対応すべく行動している者たちを邪魔することになると思う。
コメント2:(4分30秒から)
ここでの紹介どおりなら、お二人の著者は哲学を理解していない。哲学は宗教と違って真理を前提としないし求めもしない。そして知識においてパーフェクトを目指すとしても、その時点での知識をパーフェクトだとは考えない。改善が可能だと考える。特定の神を否定するとしても、神という概念を否定しない。仮説をたてるが、それは真実とはしない。
イオニア学派の延長上にあるニュートンの自然哲学を例にとると、万有引力の法則は真理ではなく単なる仮説である。真理を前提としない自然哲学、つまり科学は、その姿勢故に量子力学を生み出し、近現代の科学技術の基礎となった。その恩恵を受けていながら、それを病の元だというのは全くおかしい。
尚、これまでお二人の政治活動家としての意見をyoutubeで聴き、日本の為に良い活動をされていると思っている。それだけに、このような内容の文章を書くのは残念である。兎に角、反対意見を聴き、それについて議論することが、真実を目指す唯一の方法である。傲慢であってはならないと思う。
補足:
1)このyoutube動画に対して、原著者と思われる方からのお礼のメッセージとそれへの返答がコメント欄にあり、紹介内容が原著者の期待通りだったように思われる。
2)この本は二人の複数のyoutube動画での会話をまとめて整理したものだと思う。それらの一つは:https://www.youtube.com/watch?v=jTIuBNVHtis
==== 13:00編集 ====
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