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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2021年12月12日日曜日

中国人民の月収分布

中華人民共和国(以下中国)の国務院総理である李克強が、月収1000元以内の国民が約6億いるといって、一時話題になったことがあった。しかし、中国人の爆買いなどで、中国の経済発展が相当進んでいることを実感していた我々には若干意外だった。

 

しかしその後、6億人と言っても赤ちゃんも青少年や老人も含めての話であり、勘違いしてはいけないという指摘が中国専門家の遠藤誉氏よりなされた。そして、習近平との政争の中での発言であったことも影響して、今ひとつ頭に残らなかった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20211109-00267232

 

しかし、12月10日のEpock Timesが提供する新聞看点というyoutubeサイトで、李沐陽氏が中国経済の今後には暗雲が立ち込めているという内容の話の中で、月収分布という形でかなり詳細なデータを紹介した。中国の大手投資会社の中金公司(公司とは中国語で会社の意味)が、全人口を月収で11の層に分け、そこへの分布を公表したのである。それにより、李総理の発言の意味が正確にわかるようになった。

https://www.youtube.com/watch?v=vIYbFP0oFIs (640〜)

上に引用の李沐陽氏の6:40からの話は、2億2000万人余りの月収が500人民元未満だというデータ紹介で始まる。

 

表によれば、中国では月収0の人が546万人居る。未就学児童や老人の人口を合わせば、数億人になることを考えると、ここでの月収は世帯の収入を世帯人数で割った値としての一人当たり月収と考えられる。また、それ以外には考えられない。(補足1)

 

つまり、上に引用の遠藤誉さんの言葉も不正確だったことがわかる。(追補1)おそらく、中国では世帯や家族という単位が、現代日本の家族などより明確であり、おそらく個人よりも重要な単位として存在するのだろう。一人当たりの月収を議論する際、日本なら家族単位で考えるという定義を予め示す必要があるが、中国ではそうではないのだろう。(補足2)

 

このデータ紹介が本ブログ記事の目的である。それだけで終わるのは貧弱なので、そのデータからジニー係数などを計算してみたので紹介する。

 

因みに、ジニー係数とは全人口の所得を下位から積み上げたグラフの両軸を1.0で規格化した曲線(ローレンツ曲線)から計算した所得の不平等分配を表す指数である。引用のウィキペディアの記事によれば、0.4以上が社会騒乱多発の警戒ラインである。(補足3)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%8B%E4%BF%82%E6%95%B0

 

下にその分布と解析図を示す。右上のグラフが月収分布曲線であり、縦軸は人数(億人)横軸は月収(人民元;一元はほぼ17日本円)

 

ここでは、月収500 元以上800元未満を800にラベルして示している。更に、二万元以上を仮に3万元として示した。月収二万元以上の人たちの収入分布は、特に大きな範囲に亘っているだろう。この部分の平均月収は、中国人民の暮らしむき(経済ではなく)を考える上でそれほど大きな意味を持たないが、ジニー係数には大きく効く。

 

図右下のローレンツ曲線から計算したジニー係数は0.476である。財務省の広報誌「ファイナンス」に発表された「中国における格差」という論文(2019年)には、各国のジニー係数が図示されており、その図を読めば2017年の値は0.48である。(因みに日本は約0.34である。)

https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201903/201903l.pdf

 

以上から、上記月収分布のデータが、ほとんど正確に中国人民の経済状況を表していることになる。今日はデータとその簡易的な分析を示して終わる。

 

尚、最初の李沐陽氏のyoutube動画は、今後の中国経済には暗雲が垂れ込めているという内容である。この中国の景気後退は、最初恒大不動産の倒産から不動産不況の形で始まるだろう。

 

 

この影響を、日米欧などはどのように受け、反専制主義を現在掲げている民主国のネットワークが、今後どれだけ維持できるか解らない。兎に角、来年は大変な年になると思う。

 

(18:00 編集、追補1を追加し、補足番号を整理)

 

補足:

 

1)月収0元の人とは、完全に自給自足で生きている少数民族だろう。自給自足とぶつぶつ交換では、月収として計上されない。0から500元も多くは自給自足にたよる農村部だろう。月収8500円は少ないようだが、日本の1950年台の農村部&大家族の家ではかなりあったと思う。

 

2)「こどもの貧困」が現代日本の問題として提起されているが、これも正しくは子供の親の貧困である。https://kodomohinkon.go.jp/hinkon/ また、最近の年収960万円以下の家庭の子供に10万円配るという話でも、政府与党は世帯の年収という言葉の定義を曖昧にして混乱を引き起こした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/104dc7a4d5246063e9ee6292af30d74fd79f683c あらゆる問題に言えることだが、本質的な解決にはゼロから考える必要がある。そしてその為には、必然として言葉の定義には慎重且つ厳格でなければならない。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515785.html

 

3)ジニ係数は所得再分配後の値を示すのが普通であるが、時たま再分配前の値が出ることもあるので注意が必要。再分配とは、富者から税金をとり貧者に分配する制度である。社会保障や公的負担を通じて行われる。世界のジニ係数(再分配後)は以下のサイトにある。

http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.html

 

追補1)遠藤さんの記事内では、”「働いている人の月収が1000元程度」と言っているのではなく、働いている人の世帯人口で割り算した一人当たりの収入を指している。”と書かれている。

この文の意味は、後で読み返して上記定義と同じだと分かった。「世帯人口」ではなく、「世帯の人数」と書いてあれば、さっと読んだとき誤解しなかっただろう。この点で誤解があれば謝ります。

2021年12月9日木曜日

マグニツキー法制定はC国に対する内政干渉になるのか?

125日の記事「日本に人権外交をする資格は? マグニツキー法んが制定できる国になるべき」に、米国在住の方よりコメントを頂いた(姉妹サイト)。そこには以下のように書かれている。

 

マグニツキー法は人権侵害のある他国への罰ではなく、国際間の貿易法です。だから他国の法や内政には関与していない。この法の前の法に、ロシアがユダヤ系のイスラエル移民を妨害しないことを一つの条件としてロシアを貿易優待国にする、というのがあり、その延長戦上でマグニツキー氏の死に責任ある人や組織の米国内での金融活動をさせない、という法です。

 

コメントへの返答としては、議論が長くなるので、別記事としてここに掲載することにした。マグニツキーの死以前に、古いバージョンがあったとの情報は、先ずは勉強になる。この指摘文の中での“国際間の貿易法”というのは、おそらく貿易に関する国際協定の例外規定(GATT21条など)という意味だと思う。その前提で以下議論する。自分の勉強結果をそのままブログ記事にしたので、冗長になっている点ご了承ください。

 

 

1)WTO協定:

 

国際間の貿易に関してはWTO協定が重要である。その前段階的な条約としてGATT(関税と貿易に関する一般協定)がある。両方とも現役の国際協定である。GATTは、工業製品の貿易について、加盟国に最恵国待遇(補足1)を与えるという条項が重要である。

 

WTOでは、サービス業や知的所有権についてまで対象範囲を拡大している点、そして協定だけでなくそれを実施する機関を運営する点が、GATTとの大きな違いである。この発展過程及びGATTWTOの関係については、以下のサイト参照。https://liberal-arts-guide.com/gatt/

 

WTOで、自由貿易の方向への協定つくりが進まなかったので、二国或いはそれ以上の国家間で自由貿易協定が結ばれることになった。例えばNAFTAからUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に代わった北米での自由貿易協定などである。(補足2)

 

WTO加盟国が他のすべての加盟国に最恵国待遇を与えるというのは、USMCAなどローカルな自由貿易協定が存在することから考えて、原則論でしかないことがわかる。更に、“加盟国による正当な国内政策の実施を縛るものではない”ので、例えば安全保障に関する国内政策と結びつけて、貿易障壁を設けることなどが可能である。これは、安全保障例外と呼ばれる。(GATT 21 条)

https://www.meti.go.jp/committee/summary/0004532/pdf/2016_02_04.pd

 

マグニツキー法の位置は、おそらく上記安全保障例外のような国内政策上の要請からの例外規定と理解できる。つまり、「人権重視は米国の国是であり、その部分に瑕疵のある国には最恵国待遇は与えられない」という考えに基づくものである。

 

 

2)マグニツキー法制定が関係相手国の内政干渉になるのか?

 

GATTWTOは、経済のブロック化や孤立化などで、将来重大な国際紛争の原因とエネルギーが国際間に蓄積しないようにするため、国際間の経済関係を拡大する目的で制定・設立された。従って、例外を設けてでも、経済交流を重視する規定が設けられたのだろう。

 

ソ連が崩壊しロシアとなっても真の民主主義体制は一朝一夕には完成しない。そのためロシアは、かなり専制主義的な政治体制で漸く国家としての安定を保っているだろう。この国に対しても、WTO加盟を許したのは、将来民主主義や人権尊重といった近代政治文化の発展がロシアに期待されるからだろう。

 

この場合、それら近代西欧の価値基準が定着することに(将来に)期待するか、現在の人権軽視を問題視するかで対応が異なる。将来、民主的な国家群を形成する仲間となる期待が薄いのなら、マグニツキー法などで現状重視の姿勢で望むことになるだろう。

 

それは間接的だが、反体制派を擁護することになり、ロシアの崩壊と内戦につながる可能性がある。その意味で内政干渉になると前回の記事に書いた。

 

更に、主権国家体制や民主主義といった近代の西欧政治文化を受け入れる予定のない国に対して、WTOが門戸開放をするのは、西欧先進国にとっては非常に危険である。相手国の経済発展を手助けることで、国際社会の価値(民主や人権重視)を崩壊させられる危険性がある。それが当に、中国共産党政権(C国)の超限戦(補足3)による中華グローバル帝国を作り上げる企みに対する危惧である。

 

この問題の根本には、米国のウォール街を中心にしたグローバル化勢力が、WTOを用いて、中国共産党政権(以下C国)と彼等の経済的巨大化のために協力したことにある。つまり、独裁政権下、奴隷労働で安く工業製品を製造する国をWTOに加盟させ最恵国待遇を与えると、当然その国は非常に有利に貿易を行い、WTO加盟国の産業は打撃を受ける。

 

その稼いだ金で軍事力を整備して、世界制覇をこころみるような事態になれば、人類の未来は暗い。米国がもしこの過ちに気付いたというのなら、マグニツキー法をC国に適用するのは賢明だろう。敵対国と決まってしまえば、その国の内政に干渉するなどの諜報活動は当然である。

 

日本がC国を対象に“マグニツキー法”を制定するには、安全保障の問題を熟慮する必要がある。日本が一人前の独立国になって、その問題がクリアされるまで、その制定は無理だろう。この点の指摘が125日の記事の内容であった。

 

3)マグニツキー法の適用は冷戦的対応である

 

マグニツキー法”(英国等を含む)は、国内における貿易及び国際金融取引上の活動に影響力を持つ国内法だと思う。従って、国内に存在する外国人の財産や、外国人の入国審査などを対象にする。裁判は国内の裁判所が担当するが、証拠の収集はまともに出来ない以上、最初から明らかな事実がなければまともな裁判は出来ない。

 

例えばC国共産党員が、ウイグルの人権抑圧に関係したとして銀行口座を凍結されたとして、そんな事実は無いと米国の裁判所に訴えたとする。しかし、C国がウイグルでの人権抑圧などの事実について正確な情報公開をしなければ、まともな裁判など出来ないだろう。従って、“マグニツキー法”の制定とそのC国及びC国共産党員への適用は、超法規的に行うことになるだろう。つまり、冷戦的対応にならざるを得ない。

 

つまり、マグニツキー法は国内法だが、特定の国とその国民に対して適用される。名目上は、他国或いは他国民が関与する国内経済活動や入国管理に関して、自国の価値観で規制を掛けるだけだと言えるだろう。しかしその規制は、対象国の複数の政治勢力の一部を冷遇することになり、実質的にその国の内政に影響を及ぼす。

 

しかし、このような法律を特別に制定しなければならない程、C国の人権に関する価値観が米国のものと著しく異なるのなら、WTOに加盟の段階で考慮すべきことだった。

以上、現在各国で進行している“マグニツキー法”の制定は、民主主義圏と言われる米国を中心とした国家の集まりによる、C支配層を国際経済活動において冷遇する、冷戦的対応である。

 

(17:30 全体を編集しました。)

 

補足:

 

1)関税など貿易条件において、第三国以下の待遇を適用しないという規定。WTO加盟国でありながら、相手国が第三国(WTO加盟国であってもなくても)と自由貿易協定などを結ぶと、WTO条項違反となる。ただ、それが安全保障や特別な事情によることが説明できれば、WTO条項違反にはならない。それが例外条項である。

 

2)EUのように政治と経済を含めた協定があり、最終的には加盟国は主権国家と呼べなくなる方向に進む可能性がある。更に、EUと日本の間のEPA協定なども出来、WTOは経済交流拡大のための協定のベース部分を為すことになったと思う。

 

3)中国空軍の喬良、王湘穂は、今後の中国が行う戦争を、あらゆる手段で制約無く戦うものとして捉え、超限戦と名付けた。(ウィキペディア参照)

 

2021年12月6日月曜日

モンティ・ホール問題について

モンティ・ホール問題とは:
3つの見た目が同じ箱A, B, Cがあり、ホストがその内一つに当たりくじ、残り二つにハズレくじを入れる。その準備はゲストに隠して行う。
1)ゲストが最初に3つの内一つを選ぶ。箱は開けないでおく。
2)その後、ホストが残り二つの内、ハズレくじが入った箱を開けて(つまりホストは当たりの箱を知っている)、そこでゲストに「選択を変えても良いですよ」という。
3)ここで、最初の選択を変えないままにしたほうが、当たりの確率が大きいか、選択を変えた方が当たりの確率が大きいか、どちらでしょうか?
という問題である。

正解は、変えた方の当たりの確率が2/3で、変えない場合の倍である。

ウィキペディアの解説に以下の様に書かれている。
1990年9月9日発行、ニュース雑誌「Parade」にてマリリン・ボス・サヴァントが連載するコラム「マリリンにおまかせ」で、上記の読者投稿による質問に「正解は『ドア(本ブログでは箱)を変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には景品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答。すると直後から、読者からの「彼女の解答は間違っている」との約1万通の投書が殺到し、本問題は大議論に発展した。

投書には、1000人近い博士号保持者からのものも含まれていた。その大部分は「ドアを変えても確率は五分五分(2分の1)であり、3分の2にはならない」とするものであった。サヴァントは投書への反論を試み、同年12月2日、数通の反論の手紙を紹介した。

この騒動が面白くて、本ブログで紹介することにした。この問題を知ったのは、何時も中国問題について興味ある情報を配信している妙佛DEEP MAXというyoutubeサイトの中で、余談として紹介された時である。以下の動画の8分10秒あたりから始まる。

 


ここで大事なポイントは、ホストがハズレひとつを開けた後「選択を変えても良いですよ」と言ったとき、残り二つから「改めて選択する」のではなく、①最初の選択を変える場合と②変えない場合のどちらかから選ぶ点である。ここで、「改めて選択する」の意味は、最初の選択を忘れ、新たな2択問題とする場合で、当たりくじを手にする確率は1/2となる。

① ホストがハズレの箱を開けたあと「選択を変える」と予め決めて居た場合:

最初にゲストが正解の箱を選択した場合、ホストが次にハズレの箱を一つ開けたあと、必ず残りのハズレを選択する。一方、最初にゲストがハズレを選択した場合、次にホストが必ずハズレを選択してくれるので、ゲストは最初の選択を変えて、必ず当たりを選択できる。従って、正解の確率は3つの箱から最初にハズレを選択する確率の2/3となる。

② ホストがハズレの箱を開けたあとも「選択を変えない」と予め決めて居た場合:

正解の箱を当てるのは最初の選択で決まるので、その確率は1/3となる。

これだけの話なのに、誤解して10000通もの投書が届いたのは、問題を正しく言葉で伝達することがなかなか難しいということを示している。

ホストがハズレを選択して除外したあと言う「選択を変えても良いですよ」の言葉は、「選択を変えても変えなくても良い」の意味だが、人は得てして「自分が現在当たりを選択しているので、ハズレの方に誘導しているのだろう」と考えガチである。

ウィキペディアでは、この点からこの問題を「一種の心理トリックになっており、確率論から導かれる結果を説明されても、なお納得しない者が少なくないことから、本項~プロブレムの他、~ジレンマあるいは~パラドックスとも称される」と記述している。

(おわり;なお追補は削除しました;15:30;ややこしい表現に消去線を入れました;翌日13時)

 

 

2021年12月5日日曜日

日本に人権外交をする資格は? マグニツキー法が制定できる国になるべき

1)マグニツキー法の制定

 

ロシア税務当局による汚職を暴き、獄中で死亡した税務弁護士セルゲイ・マグニツキーを念頭に、人権無視の組織や個人を罰するために所謂マグニツキー法が2012年に米国で制定された。

 

この法律の特徴は、米国の内政の及ばない国や地域での出来事を対象に処罰する点である。人権無視の政策に携わった組織や政権幹部などが米国内に保持する財産を差し押さえたり、個人の入国を制限するなどが処罰の内容となる。

 

セルゲイ・マグニツキーは、何らかの犯罪の疑いで刑務所に収容され、刑務所内で色々な病気になった。その治療を受けさせてもらえず、更に暴行を受けて一年ほどして死亡したと言われる。ロシアは未だこのような人権無視・非合法なやり方で、政治の安定を確保している。

 

国内犯の場合、検察などの捜査で証拠が集められ、その後裁判で有罪の判決がなければ、どのような犯罪も処罰されない。しかし、米国と雖も、ロシアの刑務所内の出来事について、まともな捜査が出来る筈はない。

 

従って、この法の制定と適用は、単なる犯罪処罰というより外交上の敵対措置という色彩が強い。必然として外交問題に発展するので、それを念頭において制定される。この法律は、20世紀の西欧的政治文化を逸脱するものである。(勿論、21世紀の地球規模の政治文化の主流となるべきと言えるかもしれない。)

 

つまり、主権国家体制の下では、他国の内政には干渉しないという原則があるが、それに反しているのである。ロシアの政治を担う人たちに人権思想や遵法精神が乏しいと言えるのだが、それでも他国の内政に干渉することは、20世紀の国際法の思想からは逸脱していると私は思う。

 

法治の原則が可能となるには、相応の文化的文明的素地が必要である。例えば半世紀遅れた政治文化しか根付いていない国家が、政治的安定を得るために超法規的措置を取らざるを得ない場合があるだろう。それを、強力な経済力と軍事力を持つ先進国が、その周囲を取り巻く国家群に見せつける形で制裁するのがマグニツキー法の本質である。

 

特定の国を対象に、”所謂マグニツキー法”を制定し施行することは、本来政治文化上での途上国である敵対国に対する冷戦的対応である。

 

 

2)中国共産党政府の人権無視と各国の“マグニツキー法”の制定、そして日本政府の跛行外交

 

中国共産党政権によるウイグル人の人権無視政策が、国際的に非難の的になっている。米国トランプ政権によって、中国共産党政権の人権無視の姿勢が鮮明に浮き彫りされ、香港の民主政治も廃止されることになった。更に、台湾侵攻の意思表明などもあって、米国を始めとする“民主主義国”との対立が深刻なレベルになっている。(””は無駄に付けた訳ではない。)

 

米国は、上記マグニツキー法の対象国として、当初のロシアの他に中国も含める措置をとることになり、また英国、EU、カナダも同様のグローバルに人権保護を謳う法律(各国版のマグニツキー法)を制定した。そして最近、オーストラリアも豪州版マグニツキー法を制定することになった。

 

 

何れの場合も、中国の外に出なければ拘束などされる訳ではないが、この法律を施行している国に持っている財産の凍結や、その国への入国制限などの制裁措置が取られることになる。

 

今後日本が同様の法律の制定に動くかどうかが、国際的に注目されている。①「もし、主要な自由主義国の中で日本だけが制定しないとなると、日本が中国共産党幹部の財産の隠し場所になる可能性がある」と、岸田内閣が新設した国際人権問題担当首相補佐官の中谷元・元防衛相は話していた。https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210513/pol/00m/010/002000c

 

その中谷氏は、「制裁に伴ってどういうことが起こるかしっかり検証しないといけない。日本は対話と協力で(中国との様々な問題に)対応してきた」と、24日のBS11TV番組で、自身の主張をトーンダウンさせた。https://www.jiji.com/jc/article?k=2021112800101&g=pol

 

私は、出来るなら日本もマグニツキー法(日本版)を制定すべきだと思う。その法律には、特定の国家や個人を明示する必要などないので、もし日本が普通の国なら、他国に一切遠慮する必要は無いと思う。セクション1)に示したように、平和な時代の主権国家体制堅持の原則に反するかもしれないが、ここでは民主主義の国々と歩調を合わすべきだろう。

 

しかし、日本は普通の国ではない。それに気付かなかったのが、中谷元氏であり彼を新設した国際人権問題担当首相補佐官に指名した岸田新首相である。

 

法案に特定の対象が書かれてなくても、ウイグルや香港などでの人権侵害に対して憂慮の念を中国に伝達してきた以上、差し当たり中国共産党現政権や共産党幹部が対象になっていることは明らかである。従って、制定には中国と深刻な対立関係を覚悟する必要がある。

 

もし日本が日本版マグニツキー法を制定すれば、中国からは例えば「チベットや香港の問題に干渉するのは、内政干渉である。そのような外交をとるのなら、日中平和友好条約の破棄も考えざるを得ない」など、強い反発が予想される。

 

つまり、「このレベルの中国との対立を想定してでも、この種の法案を政府から提出する覚悟があるのか」と、誰かが岸田総理に尋ねたのだろう。中谷元氏のトーンダウンも、このような指摘があったことが原因だろう。

 

岸田内閣内には外交の専門家と名乗る人も居る。その人が閣内でまともな議論をしていれば、中谷氏の華麗な発言と、その後の無様はトーンダウンは無かっただろう。ひょっとして、中国関係者からの声が何らかの形で岸田内閣に届いたのかもしれない。

 

日本が第一に優先ですべきことは、日本の防衛体制をまともな独立国のものに改正すべきことである。そのために、憲法改正案を国会に即刻提出すべきである。議論は、それからすれば良い。それが現在の自民党議員にできないのは、安定な家業である政治屋という職業を失う危険があるからである。その程度の人たちが日本の中枢を形成しているのである。

 

3)日本は先ず、まともな国家になるべきである

 

日本政府の無様な外交を指摘すれば山程あるだろう。それらは全て、知的能力の低い元代議士の二世や三世が家業の政治屋を相続したことと、どこかの有名大学を猛勉強で入学した人たちだけで日本国の官僚組織を占有していることとの結果かもしれない。

 

例えば、フランスから本音を日本に投げてくる2チャンネルの創始者や、知事になり公営バスの運転手の給与を民間並みに強引に値下げした弁護士の方など多彩な本音を語る人たちが永田町や霞が関に多くなれば、日本は変わるだろう。人材がいない訳ではないし、国会内にも多少は居るだろう。

 

今更遅いかもしれないが、国民がめざめることである。そのためには、テレビと新聞をやめて、インターネットで情報を得るようにするべきかもしれない。兎に角、即刻憲法改正案を国会あるいは内閣から提出すべきだ。そのあと議論になれば、国民も少しは考えるだろう。

 

付録:

 

最後に、中国問題として国防動員法に関するメモを残す。国防動員法とは、国家(中国共産党)がイザとなれば、全世界の中国人を夫々の現地で戦闘行為などに動員させる法律である。

 

この他国の内政を無視する法律を制定した国家の民を対象に、日本政府はまともに考えないで多数の日本在留ビザを発行している。現在100万人以上が日本国内に在留するのである。https://kamome.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1306144259

 

山谷えり子参議院議員(伊藤貫氏の姉)が、国防動員法に関して内閣に質問した記録が公表されているので、その一部を記載する。この問題は単独でブログに取り上げたかったが、そのような根気は現在持っていないので、このメモだけにする。

 

中国における国防動員法に関する質問主意書から一部抜粋:

 

本法により、中国国内はもちろん海外在住の中国人も動員の対象となるだけではなく、中国国内で活動する外国企業や居留権を有する外国人も、動員・徴用の対象となる可能性がある。そこで以下のとおり質問する。

 

一 本法により、日本に在住する約六十五万人の中国人は、中国政府の命令で動員され、中国に進出している日本企業は中国政府の命令で動員・徴用の対象となることも考えられる。日本政府として本法が日本に在住する中国人及び中国に進出している日本企業に適用されると分析しているのか示されたい。

 

二 中国に進出している外国企業の施設、物資の徴用を可能にしているが、在中国の日本企業などにも適用されると考えるか、日本政府の見解を示されたい。また、適用される場合、日本の主権はもちろんのこと、中国に多数進出している日本企業を守る日本政府の防護策についても示されたい。

 

三 本法第四十九条では、「満十八歳から満六十歳の男性公民と満十八歳から満五十五歳までの女性公民は国防役務を担当しなければならない」と規定されている。この「公民」には日本在住の中国人も含まれるが、現在、本条に該当する日本在住の中国人が何人いるのか示されたい。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/syuh/s177044.htm

 

内閣総理大臣菅直人からの答弁: 

御指摘の「国防動員法」は、他国の法律であることから、同法律の個々の規定の解釈について、政府としてお答えすることは差し控えたい。なお、平成二十一年十二月末日時点で、外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号)により外国人登録原票に登録された国籍を中国としている外国人のうち、十八歳から六十歳までの男性は二十五万七十八人、十八歳から五十五歳までの女性は三十五万二千二百七十四人である。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/touh/t177044.htm

(12/5/18:00 文章の文法上の誤りや、単純ミスの修正をおこなった)おわり。