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2021年12月5日日曜日

日本に人権外交をする資格は? マグニツキー法が制定できる国になるべき

1)マグニツキー法の制定

 

ロシア税務当局による汚職を暴き、獄中で死亡した税務弁護士セルゲイ・マグニツキーを念頭に、人権無視の組織や個人を罰するために所謂マグニツキー法が2012年に米国で制定された。

 

この法律の特徴は、米国の内政の及ばない国や地域での出来事を対象に処罰する点である。人権無視の政策に携わった組織や政権幹部などが米国内に保持する財産を差し押さえたり、個人の入国を制限するなどが処罰の内容となる。

 

セルゲイ・マグニツキーは、何らかの犯罪の疑いで刑務所に収容され、刑務所内で色々な病気になった。その治療を受けさせてもらえず、更に暴行を受けて一年ほどして死亡したと言われる。ロシアは未だこのような人権無視・非合法なやり方で、政治の安定を確保している。

 

国内犯の場合、検察などの捜査で証拠が集められ、その後裁判で有罪の判決がなければ、どのような犯罪も処罰されない。しかし、米国と雖も、ロシアの刑務所内の出来事について、まともな捜査が出来る筈はない。

 

従って、この法の制定と適用は、単なる犯罪処罰というより外交上の敵対措置という色彩が強い。必然として外交問題に発展するので、それを念頭において制定される。この法律は、20世紀の西欧的政治文化を逸脱するものである。(勿論、21世紀の地球規模の政治文化の主流となるべきと言えるかもしれない。)

 

つまり、主権国家体制の下では、他国の内政には干渉しないという原則があるが、それに反しているのである。ロシアの政治を担う人たちに人権思想や遵法精神が乏しいと言えるのだが、それでも他国の内政に干渉することは、20世紀の国際法の思想からは逸脱していると私は思う。

 

法治の原則が可能となるには、相応の文化的文明的素地が必要である。例えば半世紀遅れた政治文化しか根付いていない国家が、政治的安定を得るために超法規的措置を取らざるを得ない場合があるだろう。それを、強力な経済力と軍事力を持つ先進国が、その周囲を取り巻く国家群に見せつける形で制裁するのがマグニツキー法の本質である。

 

特定の国を対象に、”所謂マグニツキー法”を制定し施行することは、本来政治文化上での途上国である敵対国に対する冷戦的対応である。

 

 

2)中国共産党政府の人権無視と各国の“マグニツキー法”の制定、そして日本政府の跛行外交

 

中国共産党政権によるウイグル人の人権無視政策が、国際的に非難の的になっている。米国トランプ政権によって、中国共産党政権の人権無視の姿勢が鮮明に浮き彫りされ、香港の民主政治も廃止されることになった。更に、台湾侵攻の意思表明などもあって、米国を始めとする“民主主義国”との対立が深刻なレベルになっている。(””は無駄に付けた訳ではない。)

 

米国は、上記マグニツキー法の対象国として、当初のロシアの他に中国も含める措置をとることになり、また英国、EU、カナダも同様のグローバルに人権保護を謳う法律(各国版のマグニツキー法)を制定した。そして最近、オーストラリアも豪州版マグニツキー法を制定することになった。

 

 

何れの場合も、中国の外に出なければ拘束などされる訳ではないが、この法律を施行している国に持っている財産の凍結や、その国への入国制限などの制裁措置が取られることになる。

 

今後日本が同様の法律の制定に動くかどうかが、国際的に注目されている。①「もし、主要な自由主義国の中で日本だけが制定しないとなると、日本が中国共産党幹部の財産の隠し場所になる可能性がある」と、岸田内閣が新設した国際人権問題担当首相補佐官の中谷元・元防衛相は話していた。https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210513/pol/00m/010/002000c

 

その中谷氏は、「制裁に伴ってどういうことが起こるかしっかり検証しないといけない。日本は対話と協力で(中国との様々な問題に)対応してきた」と、24日のBS11TV番組で、自身の主張をトーンダウンさせた。https://www.jiji.com/jc/article?k=2021112800101&g=pol

 

私は、出来るなら日本もマグニツキー法(日本版)を制定すべきだと思う。その法律には、特定の国家や個人を明示する必要などないので、もし日本が普通の国なら、他国に一切遠慮する必要は無いと思う。セクション1)に示したように、平和な時代の主権国家体制堅持の原則に反するかもしれないが、ここでは民主主義の国々と歩調を合わすべきだろう。

 

しかし、日本は普通の国ではない。それに気付かなかったのが、中谷元氏であり彼を新設した国際人権問題担当首相補佐官に指名した岸田新首相である。

 

法案に特定の対象が書かれてなくても、ウイグルや香港などでの人権侵害に対して憂慮の念を中国に伝達してきた以上、差し当たり中国共産党現政権や共産党幹部が対象になっていることは明らかである。従って、制定には中国と深刻な対立関係を覚悟する必要がある。

 

もし日本が日本版マグニツキー法を制定すれば、中国からは例えば「チベットや香港の問題に干渉するのは、内政干渉である。そのような外交をとるのなら、日中平和友好条約の破棄も考えざるを得ない」など、強い反発が予想される。

 

つまり、「このレベルの中国との対立を想定してでも、この種の法案を政府から提出する覚悟があるのか」と、誰かが岸田総理に尋ねたのだろう。中谷元氏のトーンダウンも、このような指摘があったことが原因だろう。

 

岸田内閣内には外交の専門家と名乗る人も居る。その人が閣内でまともな議論をしていれば、中谷氏の華麗な発言と、その後の無様はトーンダウンは無かっただろう。ひょっとして、中国関係者からの声が何らかの形で岸田内閣に届いたのかもしれない。

 

日本が第一に優先ですべきことは、日本の防衛体制をまともな独立国のものに改正すべきことである。そのために、憲法改正案を国会に即刻提出すべきである。議論は、それからすれば良い。それが現在の自民党議員にできないのは、安定な家業である政治屋という職業を失う危険があるからである。その程度の人たちが日本の中枢を形成しているのである。

 

3)日本は先ず、まともな国家になるべきである

 

日本政府の無様な外交を指摘すれば山程あるだろう。それらは全て、知的能力の低い元代議士の二世や三世が家業の政治屋を相続したことと、どこかの有名大学を猛勉強で入学した人たちだけで日本国の官僚組織を占有していることとの結果かもしれない。

 

例えば、フランスから本音を日本に投げてくる2チャンネルの創始者や、知事になり公営バスの運転手の給与を民間並みに強引に値下げした弁護士の方など多彩な本音を語る人たちが永田町や霞が関に多くなれば、日本は変わるだろう。人材がいない訳ではないし、国会内にも多少は居るだろう。

 

今更遅いかもしれないが、国民がめざめることである。そのためには、テレビと新聞をやめて、インターネットで情報を得るようにするべきかもしれない。兎に角、即刻憲法改正案を国会あるいは内閣から提出すべきだ。そのあと議論になれば、国民も少しは考えるだろう。

 

付録:

 

最後に、中国問題として国防動員法に関するメモを残す。国防動員法とは、国家(中国共産党)がイザとなれば、全世界の中国人を夫々の現地で戦闘行為などに動員させる法律である。

 

この他国の内政を無視する法律を制定した国家の民を対象に、日本政府はまともに考えないで多数の日本在留ビザを発行している。現在100万人以上が日本国内に在留するのである。https://kamome.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1306144259

 

山谷えり子参議院議員(伊藤貫氏の姉)が、国防動員法に関して内閣に質問した記録が公表されているので、その一部を記載する。この問題は単独でブログに取り上げたかったが、そのような根気は現在持っていないので、このメモだけにする。

 

中国における国防動員法に関する質問主意書から一部抜粋:

 

本法により、中国国内はもちろん海外在住の中国人も動員の対象となるだけではなく、中国国内で活動する外国企業や居留権を有する外国人も、動員・徴用の対象となる可能性がある。そこで以下のとおり質問する。

 

一 本法により、日本に在住する約六十五万人の中国人は、中国政府の命令で動員され、中国に進出している日本企業は中国政府の命令で動員・徴用の対象となることも考えられる。日本政府として本法が日本に在住する中国人及び中国に進出している日本企業に適用されると分析しているのか示されたい。

 

二 中国に進出している外国企業の施設、物資の徴用を可能にしているが、在中国の日本企業などにも適用されると考えるか、日本政府の見解を示されたい。また、適用される場合、日本の主権はもちろんのこと、中国に多数進出している日本企業を守る日本政府の防護策についても示されたい。

 

三 本法第四十九条では、「満十八歳から満六十歳の男性公民と満十八歳から満五十五歳までの女性公民は国防役務を担当しなければならない」と規定されている。この「公民」には日本在住の中国人も含まれるが、現在、本条に該当する日本在住の中国人が何人いるのか示されたい。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/syuh/s177044.htm

 

内閣総理大臣菅直人からの答弁: 

御指摘の「国防動員法」は、他国の法律であることから、同法律の個々の規定の解釈について、政府としてお答えすることは差し控えたい。なお、平成二十一年十二月末日時点で、外国人登録法(昭和二十七年法律第百二十五号)により外国人登録原票に登録された国籍を中国としている外国人のうち、十八歳から六十歳までの男性は二十五万七十八人、十八歳から五十五歳までの女性は三十五万二千二百七十四人である。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/touh/t177044.htm

(12/5/18:00 文章の文法上の誤りや、単純ミスの修正をおこなった)おわり。

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