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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2024年4月27日土曜日

日本の途上国化は政府の財政を含む政策が原因

 

日銀の金融政策決定会合の結果、今後も金融緩和を続けることになった。日銀の植田総裁は為替レートの変化が直接物価に影響する部分を物価上昇の第一の力と呼び、日本国内の景気循環の効果(第二の力による物価上昇)とは関係が薄いとして無視するようだ。目標2%とは、後者による物価上昇に限っての話のようだ。https://www.youtube.com/watch?v=k4LHqEHOd3s

つまり、インフレ率2%を目標に続けて来たアベノミクスの下の金融緩和は、単に円安誘導であり、輸出業者に対する不景気対策としての短期的効果はあったものの、本質的な経済対策ではあり得なかった。そして、今日の様に日銀がほとんど金融政策が実行できないという大きな副作用の一因となった。つまり危機下に時間を浪費する失敗だった。(補足1)

今回の記者会見での話は、3月の会合の時と殆ど何も変わらないようで、結果として今後更に円安が続く可能性が高くなった。実際、現時点でドル円レートは158円を超えている。記者会見の中で(上の動画12分ころから)、為替介入の他にも国債買入量を減少させるかどうかの話もあったが、それも3月の時の話と変わらず、何らかの行動に出る可能性は無いようだ。

この円安の効果だが、タイや台湾等東南アジアから日本に来る人達には物価が安くて助かると言う人が多く、我々日本人にはまるで経済破綻近くの国として馬鹿にされているように感じる。最低賃金などもタイなどの国よりも安いと言われると、日本はアルゼンチンの様に再び途上国状態に戻るのだろうと思ってしまう。

円安の原因は周知の通りである。日本はゼロ金利だが米国は相当金利が5%以上であり、その金利差で円安が進んでいるのである。FXでも何でも1万ドル分買って持っていれば、一年後にはほゞ500ドル分の利子が付いていることになる。差し当たりドルを買っておこうと考えるのは自然である。

何故日銀は財務省の指示を得てドル売り介入しないのかという疑問が湧くのは当然であり、昨日午後の植田総裁への記者会見でも質問が多く為されていた。植田総裁は、物価目標だとか景気循環だとか何やらむにゃむにゃと呟くものの、結局その意思は無いようだ。つまり、出来ないか効果があまり見込めない様だ。

この為替介入をしない理由を分かりやすく説明しているのが、楽天証券のアドバイザーの方の話(以下の動画)である。ただ、国債買い入れを減らさないと言う話については十分な説明が無かったのは、それはむしろ政治つまり財政の問題だからだろう。巨額の財政赤字が根本問題として横たわっているのだhttps://www.youtube.com/watch?v=YhiNmVDf01s



一般に為替介入は何らかの異常があって発生したことなら短期にそれを是正する効果はあるが、本質的な原因で起こっている場合には、為替介入の効果は直ぐになくなり、資金の無駄遣いに終わってしまう。国債買い入れ量を減少させることは無いのかという質問もあったと思うが、それも様子見であるという話だった。

つまり、本質的な円安に対して為替介入をすれば、FXや株式で、その動きについて行けない素人が損をして、それを利用する玄人が金を稼ぐだけということになる。為替介入は外貨準備を用いて行うが、その資金を無駄に使うだけであると言う。

現在、外貨準備高は12000億ドル程度とG7中最大であり、原資に不足はないという。今後本質的な理由で更に円安が進めば、この外貨準備金がより有効に使うことが可能である。今無駄遣いして、投機筋に儲けさせるのは得策ではないだろう。(補足2)

 

 

2)国債買い入れを減らさないこと

植田総裁は、国債保有の減額を能動的な金融政策として使いたくなく、将来自然に減額していくことに期待しているようである。国債買い入れを減額すると、国債価格が市場で決定されることになり、そこを起点として利上げにつながることを恐れているのだろう。

つまり、日本政府の放漫財政が原因で、日銀は国債を買い入れざるを得ない。そうしなければ、国家財政が実質的に破綻する可能性すら存在する。(補足3)買い入れを無くせば、新規国債は売れるまで金利を上げなければ裁けなくなる。国家財政が先にあり、それへの対応として日銀が買い入れる量を決める必要があるということだろう。

 

この問題は、以下の動画の6分15秒から言及されている。

 


その結果、日銀は現在約500兆円以上の巨額の国債残高を持つに至った。もし、この国債を市場に放出するとなると、国債値下がりは防止できない。国債値下がりは金利上昇から2%よりも遥かに高いインフレを招くだろう。つまり、日銀の資産の実質的価値の減少は、同時に円の信用減少に繋がる。(補足4)

国会議員には、この国家の財政にたいする安易な理解があるように思う。前回引用の江田憲司議員の言葉もそうだが、他にも自民党の西田昌司議員の以下の動画での言葉も、上記のような危険性への配慮が全く感じられない。https://www.youtube.com/watch?v=vnjDuA8IVJg

以上から、この円安に対して日銀には打つ手が無いのである。つまり、黒田前総裁の時に行った異次元の金融緩和の付けを、今になって日本は支払わされているのである。日銀にはとり得る金融政策の幅が殆どなく、完全に米国の連銀に任せている情況である。連銀の金融政策に動機して、ドル円レートが上下することになる。

健全な財政とは、日銀に十分な幅で金融政策がとり得る余地を残すことである。現在、財政赤字の対GDP比が諸外国の値と大きく離れて大きくなっていることの意味を今思い知っている情況であると思う。

為替が不安定な現在、円安だからと言って日本の企業の国内回帰も発生していない。それは、米国が利下げをすれば、直ぐにでもまた130円からそれ以上の円高に振れることになる。そんな情況では、危なくて国内回帰することが出来ないのだ。

 

3)適正な為替レートは2010年に達成されていた1ドル80円だった

 

相応しい為替レートは、名目実効為替レートと実質実効為替レートが同じ場合だろう。そこで以下のニッセイ基礎研究所による解説記事を引用する。https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71027?site=nli

 

下の図は、この解説記事から抜き取らせてもらった国際決済銀行が作った円の名目及び実質の実効為替レートである。

 

 

これを見れば、2010年までの為替レートは大きく円安に振れていたことが分かる。1990年頃でも実質としては、円の実力は名目の倍程度あった。しかし、そこから急激に円の価値が減少し、2010年ごろには名目と実質がほぼ一致している。

 

つまり、2010年の1ドル80円のレートは円高などではなく、正しいレートだったのである。その時の不況を円高不況と呼ぶのは正しくなく、前日銀総裁の黒田氏の時におこなったマクロな金融政策で円安誘導することは、一時的な対症療法的な意味はあったかもしれないが、根本的に間違った対策だったと言えるだろう。

 

デフレ不況の原因を三本の矢で克服するというのは正しいかもしれないが、日本の経済が円滑でない原因を正しく追及しないで、安易に円安誘導に走った。三本の矢の最初の一本だけ放ち、あとの二本が放たれなかったのである。日銀による大量の国債買い入れによるマネーサプライを増加させる金融政策だけでは副作用が大きい。その結果、日本円の信用は下落し、中央銀行が自国都合で金融政策が実行できないほどになったのである。


 

日銀も日本政府もこの失敗は隠すだろう。(補足5)

以上は、元理系の一素人の文章ですので、批判や間違いの指摘等歓迎します。

 


補足:

1)このことは何度も議論している。2022年に書いた以下の記事を観てもらいたい。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12723713884.html

 

2)田中氏によると、外貨準備は約12000億ドルであり、現在の為替では約170180兆円になる。現在外貨準備をこんなに大量持つ必要がないので、為替介入で得た円はそのまま国債残高を減少させることに利用可能だという。つまり、NTT株を売って5兆円ばかり欲しいと政府が思うなら、NTT法改訂などという姑息なことをせずに為替介入をすれば簡単に稼げるという話である。

3)このままの情況で日銀が国債をゼロに近づければ、国債価格は著しく低下し、ハイパーインフレになる可能性が高い。日銀がそれを防いでいるのだが、その副作用として金融政策が自由にとれないというのが現在の円安である。

 

4)この問題に答えるだけの知識を、現在の私は持ち合わせていない。ただ、増資という形で帳尻を合すか、貸借対照表に国債の価値を額面で記載するかの何方かの方法をとるだろう。何れにしても、日銀の信用は減り、高いインフレの原因になると考える。

 

5)明治に始まった日本は、長州の下級武士たちが英国系の金融資本の指導で作り上げた国であり、日本民族が独自に作り上げた国ではない。かの国の支配者である金融資本家たちは、人類が長い年月を費やして作り上げた近代西欧文明の「真や善」を無視して、利己的に国家を支配し運営する習性がある。それは、ガザ地区の陰惨な情況や、ウクライナ戦争のインチキを見ればわかる。その指導で作り上げた日本も、同様に自分たちの国家支配を優先し、不都合は隠して済ませる体質である。

 

編集履歴: 15:25、§2の3つ目のパラグラフを導入(https://www.youtube.com/watch?v=KysROBY3Xc8

 

(以上)

2024年4月22日月曜日

日本の株高は円安の効果に過ぎないのか?

1)2025年日経平均5万円の可能性

 

日本の株は日経平均で4万円を超えた後、直近では7‐8%下落している。今後のイスラエル対イランの戦争が本格的になり、更に米国のウクライナ支援予算が通ることでウクライナ戦争の帰趨が不明確になれば、もっと下がるだろう。(補足1)

 

ただ、これらの戦争が局地的に留まり世界戦争に発展しなければ、更なる円安やインフレの影響も重なり、2025年には日経平均は5万円以上になるだろう。これは経済アナリストとして高名なエミン・ユルマズ氏(補足2)の予言を元にしたシナリオである。https://www.youtube.com/watch?v=2PE6B4-x13g

 

 

このエミンユルマズさんの動画が公表されたのは日経平均が未だ30000円に到達していなかった時であり、その後株価が上がり4万円を一時超えたことから、上記仮定が満たされればだが、予言は的中する可能性が高い。結論として、円預金は日本株に投資した方が賢明だろう。

 

エミン・ユルマズさんが挙げる今後の日本株価上昇の根拠は、日本企業の実力がこの10年間で増加したことと未だ割安であることである。彼は更に、新たな冷戦構造の下で、日本に製造業などが戻ってくることや、金融における日本の役割が大きくなるなど、株価上昇の好条件が揃っていると指摘する。

 

今後更に進むと予想されるインフレの影響もあり、日経平均株価は2050年には30万円になる。新NISAが始まったのも、株価引き上げに対する効果は大きいだろう。ただ、一般人の資金のかなりの部分がバブルの米株へ向かっているようだが、それはあまり良い決断ではないと語る。

 

実際、世界三大投資家の一人ウォーレン・バフェット氏も日本株を買いだしたことがネットに紹介されている。最近世界最大の投資会社のブラックロックが割安の小野薬品の株を買い増したというニュースもある。

 

あの堀江貴文氏も、日本株を推奨している。(https://www.youtube.com/watch?v=WNEsSTOZnq0230あたり)米国株があまり推奨されないのは、既に人気株がバブル状態だからである。次図は、GDPと株価総額のシェアをしめしている。

この図を見れば、米国の株が如何に高いかがわかるだろう。成長する国と停滞又は衰退する国では勿論株価は異なるが、通常の範囲にある国なら、株価とGDPのシェアがあまりも離反するのは何か変だということになる。その意味で、米国と中国の株には注意が必要だろう。

 

実績純益で計算した株価利益率(計算株価と直前期純益の比率)も、米国株の場合23.22023)であり、日本の14.6や世界の先進国平均の18.8より相当高い。(補足3)これらからも、下手な政治によるリスクを除外すれば、日本株への投資が推奨される。https://myindex.jp/global_per.php#google_vignette

 

エミン・ユルマズ氏は、最近の動画でも上記自説を繰り返す他、独自の日本の経済循環モデルなどからも日本株の優位性を説いている。明治以降、日本の経済は75年程の周期を経験しており、1950年代の日本の経済復興に対する朝鮮戦争特需と似た冷戦の効果が、今回の新冷戦構造でも考えられるというのである。現在、米国は日本を過去30年よりも強く必要としており、製造業などの日本回帰も起こると言うのである。https://www.youtube.com/watch?v=fAA9jZbZ9IM

 

この冷戦によって米国経済がより日本を必要とすることは、現在産業の米である半導体関連の情況にも表れている。半導体の素材や部品が供給できる主要国は、中国、台湾、韓国、日本の4ヶ国であるが、台湾有事や南北朝鮮対立などの影響が最も小さいのは日本である。

 

そう考えると、最近のTSMCの日本進出に日本政府が大金を出したことも、米国の意向が絡んでいるだろうと想像できる。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240224/k10014369011000.html

 

 

2)日本円安の影響

 

エミン・ユルマズ氏の解説する日本株が上がって当たり前の情況は、この10年の間に日本企業の経営が大分よくなったと言う話だった。ただ、日本人が感じている株価の急上昇は、米ドルで株価を見る外国人には実は幻である。為替レートを考えれば、ここ数年間、むしろ下がり気味だったと言えるだろう。

 

例えば、202121日の為替レートは104.914円でありその時の株価28966円を、2024419日の米ドル154.63円で換算して計算すれば、42692円に相当する。従って米ドル換算で見れば、昨年秋から年末の日本の株価急上昇は2021年初めの株価に比べて非常に低くなったので、急激に調整が進んだが未だ追いついていないということになる。(補足4)

 

 

 

円安が今後進行して短期間に200円になるという人もおり、そうなれば日本はエネルギーや原材料などのコスト増によって、経営環境が悪くなる可能性もある上、日本という国そのものに対する信用も低くなる。そもそも、ここ数年ドル換算で日本の株が安くなって来たのは、それが原因ではないのか?

 

 

上図は、各国の債務残高の対GDP比の比較である。これは政府の運営効率の比較とも言える。この大きな政府債務の多くは国債残高であり、その半分以上は日本銀行により保有されている。日銀の総資産額は740兆円余りだが、その内の約586兆円が日本の長期国債である。https://www.boj.or.jp/about/account/zai2311a.htm

 

その事実と既に述べた異常に高い日本国の債務対GDPの比は、日本円の信用低下の原因になっている筈である。日銀は金利引き上げをすれば、それは自動的に日銀保有の国債の実質的価値低下をもたらし、直ぐに実質債務超過となるだろう。

 

勿論、満期まで待つのだから、価値は変わらないと強弁することは可能である。しかし、通常の経済の感覚では、金利を1%上げれば満期まで10年ある債債の価値は10%以上下がる。日銀の純資産は5兆円ほどであり、586兆円の国債の価値がそれ程低下すれば、実質的に債務超過である。

 

その時、円で発行された日本国債の引き受ける外国機関は完全に無くなるだろう。現在、外国が保有する日本国債の総額とその全国債残高に対する割合は、下図にあるように、2021年以降は緩やかに下降している。今現在、外国人保有の割合が大きく低下していないのは、“ドル建ての日本国債”が多く売れているからだろうと推測する。

 

このドル建て日本国債だが、直接財務省が発行する債券ではなく、日本国債を為替と組み合わせた商品である。詳細は日経新聞の有料記事を読んでもらいたいが、日本円と日本国債の暴落を誘う危険性を大きくする仕組みだろう。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41429820Y9A210C1EN2000/

 

「日本国債は円建てなので、日本が財政破綻することはない」のは、日銀が日本政府の子会社的存在なので真実である。しかし、日本円の価値が急激に下がる可能性は、最近毎年貿易赤字であることと、新NISAで一般国民のお金が米国のインデックスファンドに向かっていること、更には上記”ドル建て日本国債”の増加などから、増加しつつある。

 

政府とその子会社の日銀が目指すべきなのは、長期的に無理の無い範囲のインフレを起こし、主として老人層に溜まっている個人金融資産の実質価値の減少を非常に大きな不満を引き起こさない形で実現し、国家債務を実質的に減少させる金融政策である。

 

現在のような情況下で国債大量発行と日銀買い上げが続けば、日銀の信用低下と過度な円安をもたらす。現在既に、日本円は安全資産などではなく、投機の対象になっているという記事もある。https://toyokeizai.net/articles/-/635176

 

上にも書いたように、日本人の多くが新NISAを利用してNasdaq100SP500などのインデックスファンドを買っている事が円安に拍車をかけている。それは将に、日本円の信用低下が既に国内でも発生しているということである。

 

このような情況でも、政府が国債をドシドシ発行して、景気刺激すべきだという人たちが居る。(補足5)所謂リフレ派と呼ばれる人たちである。財務省や日銀には流石にいないだろうが、このような意見が国会でも聞かれる。私も素人でたいして解っている訳ではないが、無責任な国会議員も居るものだと呆れる。https://www.youtube.com/shorts/dJHfQJw4TEc

 

 

補足:

 

1)この件については、しっかりフォローされている以下のブログ記事を参照してもらいたい。https://ameblo.jp/docomo1923/entry-12849277548.html 更にその中に引用されているシェリルさんのブログ記事 https://ameblo.jp/sherryl-824/ を推奨します。

 

2)トルコ・イスタンブール出身のエコノミスト、為替ストラテジスト。1997年に日本に留学。一年後に東大理科一類に合格、2004年に東大工学部を卒業、2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了後、野村証券に入社。投資銀行部門、機関投資家営業部門に勤務後、2016年に複眼経済塾の取締役・塾頭に就任。

 https://toyokeizai.net/list/author/エミン・ユルマズ

 

3)株価利益率とは、株価総額を一年間の純益で割り算した値(PER)である。株価の評価に頻繁に使われる。その他のパラメータとして株価純資産比率(PBR)、更に総資産利益率(ROA)などがある。尚、エミン・ユルマズ氏が今後株価が10倍になる可能性がある企業の見分け方として、①過去4年売り上げ成長20%以上、②営業利益率10%以上、③上場5年以内、④オーナー企業かトップが筆頭株主の4条件を挙げている。この最後の情報が、今回のブログ記事で最も価値がある?!

 

4)為替レートで米ドル建てで見た日経平均のグラフは以下のサイトにある。

 

5)このような人たちは、日本政府が必死に財政出動を繰り返してきたことが、国家債務残高対GDPの比をあらわした図を見ても分からない人たちなのだろう。日本の中道から保守と言われる議員たちが、日本が基軸通貨発行国でもないのに米国の極左議員の主張するMMT理論に毒されているのは、非常に奇妙である。

 

(翌早朝補足5を追加し、語句の修正後最終版とする)

2024年4月17日水曜日

巣鴨プリズン跡で行われたパンデミック条約・IHR改悪に反対する集会

 

つい先日、池袋サンシャインビル隣の東池袋中央公園に「永久平和を願って」と書かれた「平和の碑」があることを知った。この公園は、東条英機以下の極東軍事裁判で戦犯とされた人たちが処刑された巣鴨プリズン跡に作られ、石碑はそのことを記念して建てられた。

 

この記念碑のことを知ったのは、あるブロガーのパンデミック条約・国際保健規則IHR改悪に反対する集会と池袋でのデモ行進を報じた記事に紹介されていたからである。https://ameblo.jp/docomo1923/entry-12848248070.html

国家主権を脅かす事態に抗議する集会が、国家主権を失った苦い経験を記念する公園で開かれたことになる。

 

「永久の平和を願って」という曖昧でお粗末な碑文と公園の片隅に追いやられた様な置き方から、日本国がこの瀕死の経験から”生還”したものの、何も学んでいないことを示している様に感じた。そして、その評価にピッタリの岸田首相と上川外相の日本国では、デモの効果は疑問であり参加者の心配事が現実になるだろうと思った。

 

この碑文について、ブログ投稿者に以下のようなコメントを書いた:

 

東京裁判のA級戦犯とされた人たちもここ(この石碑周辺)で処刑されたのでしょうか? そのような処刑場跡のモニュメントにしては非常に小さく控え目です。そのように作らなければならなかったのだろうか? また、「永久平和を願って」という文は、第三者的で、日本民族の誰かが建立したにしては不思議です。

 

これに対して、以下のような返答(主旨を変えず短縮)をもらった:

 

巣鴨プリズンを公園にする際に、管理する豊島区が碑を建てたとネットにあった。公園の隅の目立たないところに作られ、特別な案内板もないので、公園に来るほとんどの人はその碑の存在自体知らないようだ。特別な団体が建てたのではなく、豊島区として設置したので「第三者的」な文言になったのかもしれない。

 

つまり、国家はこの記念碑には関与しなかったということである。国はこの大切な経験から何かを学ぶことを拒否した、或いはその現場を国民からなるべく隠したかったとも考えられる。何方にしても日本の政府は愚かである。そしてその愚かさは、日本国民全ての責任である。

 

近代日本の建国は、日本国内部の歴史的経緯からではない(補足1)ので、国家としての纏まりもなく、国家主権なる言葉も単にお経の様に暗記されているだけでだろう。日本国には主権を国民の為に行使するという本来の国家の能力など無く、それがパンデミック条約とIHR改悪に無警戒な外相を生んだのだろう。(補足2,国家主権について)

 

2)巣鴨プリズン跡に作られた公園

 

元首相以下戦時の閣僚が当時の敵国に惨殺された現場に、同じ日本人がそれを記念し建立した碑であるにも拘わらず、その表の文章は第三者的且つ抑制的である。それが最初に感じた違和感であった。(補足3)

 

「永久平和を願って」と書かれているが、誰の為の平和で、どのような方法で誰が獲得するのかなど、何も書かれていない。その碑文には日本人の意思が表現されていない。

 

ネット検索すれば、この公園及び石碑についてのかなりの数の解説が見つかる。その一つの記事に、石碑裏に書かれた建立の趣旨が紹介されていた。https://tokyo-indepth.com/2022/04/05/ikebukuro-1/

 

第二次世界大戦後、東京市谷において極東国際軍事裁判所が課した刑及び他の連合国戦争犯罪法廷が課した一部の刑が、この地で執行された。戦争による悲劇を再びくりかえさないため、この地を前述の遺跡とし、この碑を建立する。昭和五十五年六月

 

そしてそのブログ記事には、この石碑について「見せたくない碑」との言及がある。日本国が自国の失敗をこの公園の訪問者になるべく見せたくないという解釈である。恐らくその通りだろう。見せたくないが建立しない訳にはいかないという中途半端な姿勢には、国家としての結束や統一性が感じられない。

 

3)巣鴨プリズン跡石碑が目立たなくした理由の推測

 

上に引用のtokyo-indepth.comのコラム記事に、この石碑を「見せたくない碑」と言及する部分があったと書いた。見せたくないのは、建立者が連合国に対して恐らく遠慮があったからだろう。その遠慮の根拠の一つに、日本国は東京裁判を受け入れることを条件に連合国と講和が出来たことがある。

 

このサンフランシスコ講和条約の第11条は以下のようになっている。

 

日本は、極東国際軍事裁判および国内外の連合国戦争犯罪裁判所の判決を受け入れ、それによって日本に投獄されている邦人に課せられた刑を執行する。 かかる受刑者に対する恩赦、減刑及び仮釈放の権限は、それぞれの場合に刑を課した政府の決定及び日本の勧告に基づく場合を除き、行使することができない。。。

https://treaties.un.org/doc/publication/unts/volume%20136/volume-136-i-1832-english.pdf

 

この巣鴨プリズンで絞首刑になった東条英機以下の当時の日本の指導者に対する裁判を、日本国は受け入れる約束をしているのである。現在、日本国がサンフランシスコ講和条約後の国際体制の下にある限り、その解釈を受け入れる義務がある。(補足3)

 

しかし、この戦争の経緯や意味を深く学ぶことは日本の国家主権の範囲内にある。日本が本当に講和条約のこの条文を受け入れているのなら、そして日本が主権を回復したのなら、あの戦争までの歴史を詳細に健闘し、そこから多くを学んで新しい日本の体制に活かすべきである。

 

仮にその戦争の経緯が連合国の悪だくみであっても、それを知ること及びしっかりと国民に知らせることは、国家主権の範囲内であり、サンフランシスコ講和条約11条は、それを禁止しているわけではない。

 

巣鴨プリズン跡をそのような場として国民に提供したくないのは、単に現在の日本国があの戦争をレビューしたくないからである。つまり、日本の政治勢力の中心は、第二次世界大戦で敗戦を経験しても明治維新の時に作られた大日本帝国のままだからだと考えられる。自分たちの失敗を国民に周知すれば、その地位が危うくなるのである。

 

そして、現在政府を牛耳る既得権益層の人たちが、二度目の敗戦プロセスに入る端緒として、パンデミック条約・国際保健規則IHR改悪があると思う。

 

終わりに:

 

パンデミック条約・国際保健規則IHR改悪は、グローバリストたちの世界帝国建設の一環で、保健行政に関する各国の主権を取り上げる企みである。それに反対する集会とデモ行進の趣旨を考えると、この公園で最近にない大規模な集会が行われた意味は、大きい。今後反芻され、大きな力を生む端緒となってほしい。

 

(19:00及び翌日早朝編集)

 

補足:

 

1)明治の日本帝国は、外圧の中で外国(英国)の影響下にあって、俄普請的につくられた国家であった。それまでの1000年間の歴史を無視して、英国の支援の下に天皇を国家の統治者とすることで短時間に創り上げた。そしてその実質的権力者として長州と薩摩の下級武士たちが座ることになった。現在も日本国の行政はその末裔が中心になって動いている。

 

2)国家主権とは、国家の構成要素のうち、近代的な領域国家における意思決定と秩序維持における最高で最終的な政治的権利をいう。具体的には、統治権( 国民および領土を統治する)、対外独立権(他国の支配に服さない)、政治的自己決定権(国家の政治的形態を決定する)三つからなる。

つまり、国家が国内最高の権力であり、外部の力にも従属しないことを意味する。西欧史的には、近代国家の成立に当たって、封建諸侯に分割されていた権力の国王への集中と、ローマ教会などの外部権力による干渉を排除するための理論として登場した。

 

3)「碑文なんて、そんなもんです」と言う人も多いだろう。感じ方は、あの戦争と東京裁判の異常性に対する感じ方によると思う。確かに「見ざる言わざる聞かざる」の日本なら、特別に不思議という程ではないだろう。その日本のままでは“日本民族”に未来はないと思うのが、”過剰”に反応する理由である。

 

4)サンフランシスコ講和条約第11条については、野田佳彦元首相による国会質問がある。https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a164308.htm

この質問は、この条文と日本との関連を考える上で参考になると思う。

2024年4月13日土曜日

第三次世界大戦誘発を目指す米国バイデン政権と米議会で協力を約束した岸田首相

 

共同通信によると、バイデン米大統領は12日、イランによるイスラエル攻撃が「すぐにでもあり得る」と述べた。「やめろ」とイランに警告し「米国はイスラエルの防衛を支援する」と強調した。https://nordot.app/1151607117246021857

 

2年前の2月のこれと似た情況を記憶している人が多いだろう。その時のロシアとウクライナが、今回はイランとイスラエルに替ったのである。米国のネオコン民主党政権とその手先は、相手方を追い詰め、この延長上には戦争しかないと思いこませた段階で、口先だけは「戦争は止めた方が良い」というのである。そのやり方は、真珠湾攻撃の時から同じである。

 

米国バイデン政権を牛耳るのは、ユダヤ系金融資本家を中心としたグローバリストたちであり、彼らは第三次世界大戦を世界帝国の建設の始まりとして期待している。ウクライナ戦争で始まった戦争を、中東に拡大させ、第三次世界大戦に格上げする心算なのだろう。

 

また彼らは、グローバル帝国の完成のための中心地である米国を、トランプなどの一派に渡さず今後も彼らの支配下に置くためには、第三次世界大戦が今や必須であると考えているのだろう。もし何も起こらなかったなら、次期米国大統領にはトランプがなり、彼らの長年の計画は幻となって消える可能性が大きいからである。

 

彼らの世界大戦の中東における基地がイスラエルだろう。イスラエルの人たちも利用されて居ると考え、ネタニヤフ政権に反対運動をするべきだと思う。世界大戦が起こり、東アジアにも広がった時、日本と韓国が米国の基地国或いは戦争代理国にならないか心配している。

 

 

2)イスラエルは米国ネオコンに牛耳られている:

 

ヨルダン川西岸の地を、イスラエルとパレスチナとの二つの国として安定させるというのが、1947年の国連の調停案だった。中東戦争が何度も起こったが、イスラエルの最大の支援国であり20世紀後半から世界覇権を握っていた米国なら、二つの国の共存を安定化出来た可能性がある。

 

しかし、米国はそうはしなかった。そして事態は逆の方向に進んだ。米国のネオコン政権は、所謂two-state solution が不可能なようにこの地域を不安定化させたのではないだろうか? 伊藤貫氏はこの50年間で、イスラエルは右派が大勢を占めるように変貌し、今やイスラエル人1人が犠牲になれば、パレスチナ人100を殺しても良いという右派が大きくなっているという。https://www.youtube.com/watch?v=Ms_RV2IK-40

 

 

一年ちょっと前、中国の仲介でイランとサウジアラビアが国交を樹立した。その結果スン二派とシーア派の間の対立は消え、イエメン内戦もなくなり、中東の紛争はイスラエル近辺のみとなった。あとはユダヤ人とアラブ人が19世紀までのように平和に共存するようになれば、平和が戻る。

 

勿論、アラブにはこれまでの経緯を考えれば不満が大きいだろうが、米国の力をもってすれば押させられる可能性があった筈。岸田首相が米国議会で演説したように、米国が世界の平和を守るリーダーなら、そのように努力しただろう。

 

米国バイデン政権は、逆に紛争状態を取り戻す作戦に出た。サウジアラビアとイランとの間に楔を打ち込むために、サウジアラビアには核開発に協力するという餌をぶら下げ、イスラエルとの国交樹立を画策したのである。(補足1)

 

この餌ならムハンマド皇太子は乗るかもしれないと不安を感じたのが、もしそうなれば完全に孤立するパレスチナの人たちであり、ガザ地区のハマスだろう。その米国の画策がハマスのテロの一つの要因と考えられている。攻撃を許すかのようなネタニヤフ政権の緩い警戒網を超えて、ハマスはテロ攻撃を仕掛けることが出来た。

 

強力なイスラエル軍による反撃は、完全に報復の意味を超えている。現在では、パレスチナ人をガザから完全に追い出すことの他に、イランをイスラエルとの戦争に誘い込むことも目的としているように見える。4月11日の記事に書いたように、この姿勢からネタニヤフ政権は、西欧諸国や日本と同様に米国ネオコン政権に操縦されていると見てもよいのではないだろうか。

 

イスラエルのユダヤ人たちも戦争を欲してはいないだろう。それに超正統派のユダヤ教徒たちは、元々人為的にイスラエル国を建設するシオニズム運動は間違いだと考えている位である。(補足2)

 

イスラエルとイランの間で戦争が勃発した場合、戦争は長引くだろう。米国が本腰を入れてイスラエル支援を開始すると、大統領選挙が実施できなくなり、米国は一層混乱するだろう。それがバイデン政権の一つの狙いだという分析は今や常識的である。

 

イスラエルの後ろには米国があり、対イラン戦争になった時の支援は、ウクライナへの支援とは比較にはならないだろう。しかし、イランにもロシアが付いている。イランはロシアと包括的同盟関係樹立の直前にあるからである。https://www.youtube.com/watch?v=eITn3fkuVGU

 

 

 

3)岸田政権の米国に対する約束は日本人にとって悲劇の始まりである

 

イランとイスラエルが戦争になれば、ロシアはイランに味方するだろう。そうなれば、バイデン政権はロシアの力を分散させることを考えるだろう。つまり、極東での紛争にロシアを巻き込むことをバイデンは考えるだろう。朝鮮半島がきな臭くなるかもしれない。その時には、日本も巻き込まれる可能性がある。勿論、台湾有事の可能性もある。

 

その時に備えて、バイデン政権は日本の岸田首相を国賓待遇で米国によび、米国国会で演説させたのだろう。その期待に副う様に、岸田首相は精一杯の表現で第二次大戦後の米国を「自由と民主主義の旗手」と言う風に持ち上げた。そんな古い表現が未だに使えるのかという疑問が湧かないのが、岸田首相の凄いところである。


岸田首相の米国議会での演説の中に、以下の文章がある。

 

「世界は米国のリーダーシップを当てにしていますが、米国は、助けもなく、たった一人で、国際秩序を守ることを強いられる理由はありません。」

 

「日本国民は、自由の存続を確かなものにするために米国と共にあります。それは、日米両国の国民にとどまらず、全ての人々のためにであります。」

 

これらは、日本もバイデン政権の戦略に100%賛成し、その下で働きますという宣言である。自由と民主主義を守る世界のリーダー米国という今や完全に崩壊したモデルで米国を表現しているので、下院議長(共和党)は呆れて拍手もしなかったようだ。 日経新聞が報じた岸田首相の演説全文

 

岸田政権がこれ以上続くのなら、日本は21世紀も悲劇の主人公になるだろう。

 

以上は一素人の考察ですので、解釈とそれによる行動は自己責任でお願いします。

 

補足:

 

1)中国の仲介でイランとサウジアラビアは国交樹立したが、サウジアラビアにはイランの核兵器は依然脅威である。それを熟知する米国は、サウジアラビアに核武装させると見せかけて、イランとサウジの間に楔を打ち込みたいのである。

 

2)シオニズムは世俗化したユダヤ人の金融資本家たちの考えだろう。ただ、ユダヤ教徒達が自分たちの国が出来たのならそこに住みたいと思うのは当然だろう。このある種矛盾した気持ちを持ちながら、多くのユダヤ人たちはイスラエルに住んでいるのではないだろうか。

(翌日早朝本文最後の一文を追加;加えて編集あり)