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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

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2023年9月24日日曜日

日本国民が日本国を自分の国として愛せない理由

今回も、この重大な国際環境の変わり目にあって、日本はどうすべきか、日本に何が欠けているかに関する議論である。表題に書いた理由を探すべく、世界の近現代史を簡単に復習し、そこから日本の近代史と現代日本に必要なものを考えてみる。

 

1)世界の近現代史:主権国家体制とその破壊

 

主権国家体制を定義すれば、一定の要件を整えた主権国家で国際社会を構成し、国家間の諸問題を内政に干渉することなく外交交渉のみで解決するという国際政治システムとなるだろう。この西欧に誕生した体制が正しく機能するには、国家は人権と法治の原則による政治制度を具えなければならない。(補足1)

 

国家は、内政干渉を排除する権利を保有するが、それは正常な外交関係を維持する上で内政に干渉する必要がないことを意味する。従って、主権国家体制の前提として、主権国家は基本的人権や法の不遡及等と言った“公序良俗”を維持している必要がある。(補足2)

 

ハーグ陸戦条約(1899年)やパリ不戦条約(1928年)の成立で、ヨーロッパを中心とした国際社会における政治文化として完成したと思う。現在までこの主権国家体制のルールは生きているようだが、遵守されてはいない。(補足3)

 

この地球上の人間社会の活動を、主権国家の健全な内政と主権国家間の外交とに区別できれば、この体制は機能的で堅牢な建物にも似て、人類の棲む安定な空間と言えるだろう。その一方、主権国家を認めず、その地域の無政府状態を好む国があるとすれば、それは犯罪者的国家である。

 

因みに、この主権国家体制は17世紀のヨーロッパに生じた考え方であり、巨大な神聖ローマ帝国が分解していく過程で、それらの国々が緩やかな国家連合の形式をとっていたことに由来する。それは、神聖ローマ帝国がカトリックの国であり、教皇と皇帝とに権威と権力が分離していたこととも関連すると思われる。

 

この主権国家体制が西欧から世界に広がったのは、西欧の市民革命に伴う人権思想の広がりにより、西欧の植民地が次々と独立し、国家主権を主張するに至ったからだろう。以上が、近代から現代の世界の政治史の粗筋である。

 

その国際政治体制が怪しくなってきたのは、20世紀に発生したグローバリズムによる。既に何度も書いたように、それは国際共産主義革命という形で、20世紀初頭にユダヤ系のマルクスとレーニンが中心になって世界史に埋め込んだ。

 

この現代の世界政治の流れは、これまでのキリスト教的人類史を破壊する方向への歴史の流れでもある。レーニンやトロツキーの共産主義、それを継承する米国のネオコンの主義は、人と人の間の無条件の親和性(愛)を説くカトリック的国際関係を破壊し、世界をゼロサムの唯物主義を原理とする暴力革命に導く思想である。これは、主権国家を持ちようのない人たちのその他人類への復讐の論理なのかもしれない。

 

歴史上の権威を全て否定した後に残る金融と政治の力で世界を単独統治し、世界帝国を完成する計画の為に工夫された理論が、史的唯物論と世界共産主義革命の理論である。この第一回目のグローバル化はレーニンとトロツキーがロシアを起点に進めたが、スターリンに乗っ取られて頓挫した。スターリンは本質的に民族主義者なのである。(補足4)

 

その時の革命家の生き残りと世界金融の支配者たちが、再び自分たちの世界帝国を目指し、95%まで完成させたのが、昨今のグローバル化運動の現状である。これらのグレートリセット或いは国際共産主義同時革命のための準備作業は、世界統一政府を目指す者たちの思想とその工程という題で、19日にアップした記事で述べた。

 

この第二回目の国際共産主義運動は、R・マクドナルドが「億万長者以外の資本家を倒し、労働者を抑圧して地球上の全ての富を億万長者が独占するために考え出された巧妙な策謀」として見抜いていた。(319日の記事)

 

現在、地球環境問題や地球資源問題などの国際条約やパンデミック条約などを利用して、主権国家体制を破壊する計画として進行中である。

 

 

2)愛国心の由来

 

ヨーロッパで主権国家体制が成立したのは、ウェストファリア条約の締結によるとされている。それは30年戦争後、厭戦気分の結果として締結されたと言われる。神聖ローマ帝国から独立するプロセスにおいて、各国の民族がアイデンティティを確認強化した結果だろう。

 

当初、構成国の多くは絶対王政であった。国民意識に目覚め、国境線で区切られた領土を持ち、傭兵でなく国民軍を擁し、国民主権を具現化した「国民国家」が形成されるのは、市民革命の後である。それらのプロセスが進行する背景に、キリスト教があったようだ。国民主権或いは民主主義の発生には絶対者である神の存在が前提であるというのは、井沢元彦氏の解説である。

 

 

ウエストファリア体制の下で、各民族のアイデンティティの確認強化は、領主や王の間だけでなく、市民一般に広く進行した。そのプロセスは、各個人が自分と”自分の国”の関係を考えるプロセスであり、それは民主主義国家建設の基礎的プロセスである。

 

日本も民主主義国になるのなら、自分の人生を考える時期に、自分と”自分の国”との関係を深く考えるプロセスが必要である。その為には、この国がどのようにして現在の形になったのか、そのプロセスに於いて自分がどのように関係したのか? つまり、国民が自国の近代史を細部に亘って、自分と自分の家族の問題として考え知ることが、国民主権の国家として日本が成立する必須条件である。

 

その思考の中から、自分のアイデンティティの一部として、この国の一員であるという確かな意識が生じる。そして、自国に対する愛着とこの国に所属するという誇りが生じる。(補足5)それが愛国心である。前回の記事でも、そのことを書いた。

 

9年前に、日本人に愛国心などないという文章を書いた。https://rcbyspinmanipulation.blogspot.com/2014/11/blog-post_19.html

そこに、もし敗戦時の日本人に愛国心があったのなら、着任後の連合国司令長官マッカーサーに直ぐに従順に振る舞い、且つ、解任されたとき10万人以上が沿道で手を振り見送るというような事は起こらなかった筈であると書いた。

 

 

従って、太平洋戦争の開戦時から、徴兵された人々の心にも、送り出す家族の心にも、愛国心などなかったと思う。あったのは、家族への思いと故郷への思いだけだったろう。故郷が破壊され家族に危害が及ぶなら、徴兵に応じて敵と戦おうと思って戦争に向かっただろう。(補足6)

 

 

3)終わりに:

 

日本の現在を考えるとき、歴史を160年ほど前まで遡る必要がある。そして、明治維新は市民革命ではなかったこと、単に領主が徳川幕府から明治政府に移っただけのクーデターであったことに気付くことが先ず必要である。

 

そのクーデターに利用されたのが、天皇家であった。徴兵制は、新しい支配者が人民を奴隷的に兵士として狩り出すための装置であった。現在の日本は、その大日本帝国の延長上にあって、その抜殻の様に見える。独立国としてのスピリットも、そのための身も体もない。

 

近代的民主国家の日本に生まれ変わるには、少なくとも市民革命かその代わりとなる大きな政治的出来事が必要である。そして、旧権力者の退任、既得権益の一掃が実現されるべきである。敗戦直後が良い機会だった。その時昭和天皇は退位され、明治から太平洋戦争までの大日本帝国において利用された天皇の地位を、江戸時代までの姿に戻すべきであったと思う。

 

近代史を学ぶことで、大日本帝国は戦争に邁進するために、天皇と日本国民の間の関係を絶対君主と被統治民の関係に変質させたことを理解し、戦後そのような政治体制を完全に取り去ることが必要だったことを知るべきだと思う。

 

大日本帝国の支配階級と披支配階級の構図は、中世の構図である。未だに日本国はその構図のままである。日本の支配階級は、ずっと薩長とその支持者により占められてきた。現在も日本を支配するのは、政治を家業とする政治貴族である。

 

占領中、米軍は都合の悪い出版物を廃棄させる一方、日本の政治家の内、独立指向の強い者たちを公職から追放した。更に、占領終了後の日本を戦前の支配者に任せることにしたのである。その結果、あの戦争の再評価する機会をは日本国民は奪われたままである。

 

戦後も引き続き日本の指導者となった大日本帝国の中心にあった人たちは、自分に都合の悪い大日本帝国とその戦争の歴史をなるべく学校で教えないように指導した。その結果、日本人は明治以降の近代史は殆ど学校では学ばない。近代史を学ばなければ、歴史を学ぶ意味も学ばずに終わる。その教育は今日も続いている。

 

そして、多大な犠牲を出した戦争から、日本国民は何も学ばなかった。あの原爆碑の文章「安らかにお眠りください。あやまちは二度とくりかえませぬから」は、その証明である。日本のどこにも、「かれらはあんな残忍な殺され方をして、安らかに眠れる筈はない」と叫ぶ者などいないのだ。

 

結論を一言で言う:日本国民には西欧各国民のように、自分が政治主体を為すという形で民族のアイデンティティを学ぶ機会など無かった。市民としての自覚がないのに、愛国心などある筈がない。

 

 

補足:

 

1)この定義は、政治学や歴史学の専門教育を受けていない素人の私による、現代の政治から抽出した主権国家体制である。歴史的な定義としては、「16~17世紀までのヨーロッパにおいて、徴税機構を中心とした行政組織と常備軍をもち、明確な国境内の領域を一個の主権者である君主(国王)が一元的に(中央集権体制的に)支配する「主権国家」と、それらの国家間の国際関係が形成された。その国際体制のこという」(一部修正)と世界史の窓というサイトに書かれている。

 

2)中国や北朝鮮は、人権無視の人治国家である。それらの国々は国際社会の一員となる資格がない。中国を西欧政治文化である主権国家体制の国際社会の一員として、特別にWTOに加盟させるなどして迎え入れた米国には、この主権国家体制を破壊する計画が当初からあった筈である。それが、919日の記事に書いたLaurence McDonaldが指摘した国際共産主義革命つまり世界経済フォーラムが言うところのグレートリセットだと考えられる。

 

3)近代の西欧政治文化では、戦争を外交の一つとしている。ハーグ陸戦条約は戦争において守るべきルールを規定した条約である。一方、パリ不戦条約は理想論であり、国際連盟憲章とともにグローバリストらの計画の一環かもしれない。何故なら、この非現実的な条約は、破壊しやすい脆い現実をつくるからである。尚、その条文は日本国憲法第9条の条文に利用されている。

 

4)ロシア大統領のプーチンは民族主義者の筆頭格に属する人物である。そのプーチンは、ロシア革命のレーニンを全く評価せず、スターリンの方を評価していることは良く知られている。

 

5)この同じ問題を2020年にも考えていました。それは、「保育園落ちた、日本死ね」というツイートがネットで話題になったことを引用した記事です。殆ど同じ主張でした。

 

 

6)特攻隊兵士が天皇陛下万歳と言って死んでいったというのは本当かもしれないが、それ程天皇に対する忠誠心があったというより、それ以外に自分を心理的に誤魔化す方法が無かったのだろう。日本国民はマッカーサーを新しい支配者としてスムースに受け入れたことがそれを証明している。

 

(9月25日、午後9:00全体を編集;9月26日早朝再編集、補足5を追加して最終稿)

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