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2024年10月2日水曜日

高市早苗氏が自民党総裁選に負けた原因

自民党総裁選が9月27日行われ、第一回目の投票で高市早苗氏が1位、石破茂氏2位、小泉進次郎氏が3位となった。過半数の票を獲得した候補が居なかったので、上位2位までの決戦投票の結果、1位と2位が逆転して石破茂氏が勝利した。

全部で9人の立候補者があったので、最初から混戦が予想されていた。そんな状況なので、1回目の投票は各候補への期待が票数に現れ、第2回目の投票では2人の候補へのマイナスの評価が対立候補側の票となったと思われる。つまり、高市氏を忌避する自民党議員が石破氏を忌避する議員よりもかなり多かったということになる。

高市氏を忌避する理由は、彼女の大日本帝国が遂行した戦争を肯定すると誤解されそうな歴史観にあるだろう。高市新首相の日本が、最悪の外交関係の中で戦争大敗と国民の大量犠牲を招くという恐怖である。

 

石破氏を忌避する理由は、口先だけで自民党の党内野党として活動してきたこれまでの政治姿勢だろう。要するに、高市氏は何かをやりそうだから怖いが、石破氏は口先だけで何もやらないから選んだということになる。

ここまでを大胆に抽象化すると、自民党議員たちは、何かを積極的に訴え且つ実際に実行しそうな人物よりも、言葉だけで実際は何もしないと思われる人物を安全の為に選んだということになったのである。実際、早々に解散総選挙を実施して最初の任期では何もしないようだ。

 

普通に考えれば、高市氏一人よりも自民党全ての決定の方が正しいだろう。それは、何もしない人物が安全だということが正しいということになる。候補者一人ひとりの能力が低すぎて、自民党からは国家のために何かをする人を期待できないことを意味する。

 

政治家全体の質を向上させない限り日本の政治に改善はないことになる。

 

https://www.youtube.com/watch?v=5L9H6JbeXng


1)首相の靖国参拝に拘り総裁選に敗れた高市早苗氏

上に言及した最悪の外交とは、長期的には世界の中で日本が孤立すること、短期的には対中関係の危機的状況を招きかねないことだろう。

 

深圳での日本人学童の刺殺は、日中関係の悪化が危機的状況に近いことを示している。そんな状況下で、秋の例大祭に高市首相が靖国参拝した場合、経済的危機の中国でかなり多くの日本人駐在員とその家族の命が狙われかねない。日本国内でもテロ等が多発する可能性がある。更にその責任の擦り付け合いから、日中の軍事衝突にまで発展するかもしれない。(補足1)

上に引用したyoutube動画で朝香豊氏も、高市氏が首相になっても靖国参拝は実行すると言って全く妥協の姿勢を示さないので、自民党内の左の方の票が逃げたといっている。

私も、日本の将来を考えると今回の総裁選の選択は正しかったと思う。何故なら、政府代表である首相が靖国参拝を強行すれば、日本政府はサンフランシスコ講和条約での約束「東京裁判を受け入れる」を敢えて無視したことになるからである。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12837289399.html

東京裁判を受け入れるということは、A級戦犯として断罪された戦争時の日本の指導者たちが世界の平和を破壊する行為として戦争を遂行したという理解、つまり戦争の原因が日本の軍国主義によるシナ大陸侵略にあったという理解を受け入れることである。

東京裁判が正しいとか間違っているとかいう問題ではない。(補足2)第二次大戦を含め近代の世界における戦争の最大の責任は、英米など西欧各国にあり、日本がその流れに乗った或いは巻き込まれてしまったことの責任は、それよりかなり小さいかもしれない。

 

しかし日本は、戦勝国の論理を受け入れて戦後再出発したのである。何故なら、國際関係は本質的に野生のルールで動いているからである。正しい方が勝つのではなく、強い方が勝つのである。戦後80年を経過して、今更第二次大戦の終結を否定し、再び米中英仏蘭の敵国になるという選択をするべきではない。

 

もし日本が強大な軍事力を持ち、世界を席巻しているのなら東京裁判を否定することも一つの外交上の選択である。しかし、日本は自衛軍すら真面に保有しない国である。

勿論、私人なら靖国に参拝することは信教の自由の範囲に入るとの主張は可能である。しかし、首相にはそれが出来ない。何故なら、日本の首相は日本国そのものであり、その中心だからである。

何故こんな単純な論理が高市氏には理解できないのだろう。日本の国会議員たちは派閥抗争や人事の問題で明け暮れ、勉強不足なのだと思う。石破氏は確かに職業的政治家に見える場合もあるだろうが、そのあたりの知識はあると思う。その差が、総裁選の結果を分けたのだろう。


2)憲法改正案への自衛隊明記する場合の問題点

また朝香豊氏は、石破茂氏の自民党の憲法改正案に対する態度を批判している。安倍内閣の時に決めた自民党案では、憲法92項を残したまま第3項に自衛隊を明記するが、それでは改正にならないというのが石破氏の意見である。

朝香氏は以下のように話す: 憲法改正には公明党の数が必要であり、その連携を維持するために9条2項を残し自衛隊を明記する草案を作ったのである。石破氏は評論家的発言をして、その努力の結果である自民党案に反対し、結局憲法改正が出来なくしてきた。自分の案に拘るなら、それで公明党を説得する努力をすべきであった。しかし、石破氏は汗をかくタイプの人ではない。

また朝香氏は、政治は多数派を握った方が勝ちであり、従って純粋を求めてはいけない。理想論を語ることは良いが、政治は理想論だけでは動かないとも語っている。高市氏が今回の総裁選では、多数派工作として自分の靖国参拝への熱意を一時的に曖昧にすることだったと語る。

しかし、現実政治が妥協の産物だとしても、守るべき一線が存在する筈である。そのレッドラインの認識において、朝香氏は間違っている。現在の自民党案で憲法改正をすることは、日本を世界の笑いものにすることである。そこに自民党を導くことは、反日国家の工作かもしれないと考えるべきだ。

石破新首相がすべきなのは、元々意見の異なる公明党の説得ではなく、そのような考え方の異なる政党との間違った連立を解消して、本来の考えに従って草案を作り国民に理解を求めることである。


終わりに:

日本の政治の貧困は目を覆うほどである。その大きな原因は国会議員の質が低いということだと思う。その一つの原因は、国会議員の殆どが職業として永田町(国会)に勤務しており、終身雇用に近い職の安定を求めて活動していることである。

 

二世議員が多いのが原因であるという人が多いがそれは結果であり原因ではない。タレント議員も元官僚の政治家も、次の代は代議士を目標に人生を歩むだろう。従って、日本の政治改革の近道は、国会議員を職業とはなり得ない制度を取り入れることである。

 

例えば、国会議員をボランティアとする。そのうえで、一生涯で5年間を政治家としての最長活動期間とする。待遇だが、実費と自分の本来の職業の中で、5年間の政治家としてのサービスによる不利益を帳消しにするレベルの給与を支給する。 

国会議員の定数は、野党を含めて内閣を構成する人数の3~5倍程度として、定数を半分以下にすべきである。選挙活動は、候補者数人毎の討論を唯一とし、選挙期間を3か月以上とる。選挙区は道州制として、国会議員の地方での政治活動へのかかわりは禁止する。

 

 

補足:

 

1)今回の総裁選で、中国及び米国から自民党議員たちに対して強い干渉があった可能性を指摘する人もかなりいる。伊藤實氏はある動画の中でその可能性を示唆している。https://www.youtube.com/watch?v=-yLv4OQ2rY8 (動画の13分あたりから)

 

中国の場合、高市氏が選ばれ首相として靖国参拝をすれば、日本人が大変なことになるかもしれないというタイプの脅し或いは干渉があった場合、その効果は大きいだろう。何故なら、自民党議員たちはその可能性を既に考えているからである。

 

2)東条以下の平和に対する罪での断罪は、①事後法での裁きであるので法理論的に本来無効だという考え方がある。それはかなり説得力を持つ。また、平和を乱した責任など日本になく、②日本にとっては防衛戦争であったなどの論理も、歴史を詳細に見ればその通りだったということになるかもしれない。しかし、それらを現在世界を牛耳る勢力は決して認めない。そして、日本政府が①や②の論理を用いることを放棄したことで、サンフランシスコ講和条約が成立したのである。同じ“力の論理(歴史は勝者が書く)”で、原爆投下も正しいとされてきた。

 

(編集歴: 10月3日早朝、本文最後の文を修正、そのほか助詞修正レベルの編集の後最終稿)

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