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2025年3月31日月曜日

トランプ政権は世界をかき混ぜるだけなのか?

1)ウクライナ戦争は拡大して第三次世界大戦に発展するのか?

 

米国大統領がトランプに代わったのでウクライナ戦争が近いうちに終わるという、“反グローバリスト”の人達の期待は若干甘かった。そして、“グローバリスト”たちの言う“グレートリセット”の緒戦とも言えるこの戦争は、元々の危惧の通り、世界大戦へ拡大する可能性が出てきた。(補足1)

 

この戦争は、2008年のオレンジ革命から2014年のマイダン革命など、米国ネオコン政権によるウクライナの反ロシア化と東欧へのNATOの拡大が背景にある。その経緯の中でウクライナ東部に住むロシア語を話す人たちの大量殺害などもあり、これらがロシアに対する挑発となって始まったと言える。(補足2)

 

トランプは、この戦争を早期に停戦させると発言し米国大統領となった。反グローバリストたちは、トランプがグローバリストの戦略を潰してしまうだろうと期待して、“トランプ革命”を見守った。(補足3)それがグローバリストの予定路線に戻ったのは、米国務長官の「ウクライナ戦争は米国とロシアの代理戦争である」との発言からである。

 

トランプ政権の国務長官がこの戦争への米国の関わりの本質を「ウクライナ戦争は、ウクライナを米国の代理とした米露間の戦争である」と公的に発言したことで、トランプは停戦仲介の前にその覚悟の程を示すように要求されたことになる。つまり、気楽に不条理に支配された戦争をやめさせるという第三者的関与が出来なくなったのである。
 

この代理戦争を始めた民主党政権の政策を改めるという具合に、自国の現代史の問題として政策変更を明確に示す必要がある。米国のこれまでの国際政治の誤りを認めて政策変更をするか、或いは米国ネオコン&グローバリストの主張通りにこの戦争を継続するかの選択に追い込まれたのである。

 

トランプにとって、自国の国際政治上の誤りを認めることは極めて困難だろう。トランプが剛腕であるものの単なるポピュリストであれば、当然後者を選び早期停戦の目論見は完全に外れる。もしトランプがグレートリセットの企みと戦う英雄なら、最初にその困難なことをやり遂げた後に、現実的なウクライナとロシアの関係を、EU諸国の反対も押し切って実現するだろう。それは世界の主権国家体制を守ることになる。
 

残念だが、トランプはMAGAという時代遅れの思想を本気で具体化しようとするポピュリストだったと、歴史において評価される可能性が大きいというのが現在の私の考えである。ウクライナ戦争が米国に多額の出費を強いて来たという理由が、トランプがこの戦争の停戦を目指す唯一の理由としてあったようだ。

 

多額の出費故にウクライナ支援から遠ざかる米国を横目に見ながら、フランスと英国の左派政権は、今週にもウクライナに軍事顧問団を派遣する可能性が高いと言われる。これでトランプの早期和平の目論見は崩れた。https://www.youtube.com/watch?v=jlfTt1EWhYo

 

 

EUVon der Leyienは、米国がNATOから遠ざかるのなら、EUがその肩代わりをすると言いだした。それと同時にフランスのマクロンは、EUの核の傘はフランスが受け持つべきだと言い出した。政治のグローバリズムの実行、つまりグレートリセットは、主権国家主義の雄であるロシアを弱体化することから始まるというのだろう。


 

2)トランプの早期和平失敗の経緯

 

228日のトランプとゼレンスキー会談の後、米国は前政権時に始まった対ウクライナ軍事支援を停止し、その後CIA長官がウクライナとの諜報情報の共有を「一時停止」するよう命じ、その後短期間に停戦に進むかと思われた。しかし、余りにもロシア有利の形での停戦から和平に進むのは、西側の無様な敗戦ではないかという意見が米国に現れたようだ。

 

その言葉がトランプにも敏感に響いたのようだ。長年の米ソ冷戦で作られたロシア悪者論は、米国市民の心中深く残っている筈である。トランプはあくまで中立の立場からウクライナ戦争の停戦仲介に臨まなければ、ほぼ固まった米国民のトランプ応援の基盤が破壊される可能性があるからである。

 

その微妙な雰囲気をマルコ・ルビオ国務長官も敏感に受信したようだ。そしてルビオは「トランプ大統領は、この紛争が長期化し膠着状態にあるとみており、率直に言って、これは核保有国、つまりウクライナを支援する米国とロシアの間の代理戦争だ」とフォックス・ニュースに語ったのである。
 

この発言内容はこの戦争の当初から知られていた事実であり、ロシア側(Dmitry Peskov報道官談)も同意した。ロシアのプーチン政権もウクライナ侵攻の動機の正統性を米国も認め、これで一挙に停戦かと思ったかもしれない。

https://www.themoscowtimes.com/2025/03/06/rubio-calls-ukraine-war-proxy-conflict-between-us-and-russia-a88265


しかし、ルビオ国務長官は別の思惑、つまり、ウクライナ戦争は米国とロシアの代理戦争なので、米国とウクライナはもっと強く連携しなければならないという方向にこの事実を利用しようと上記発言をしたようだ。トランプには「ウクライナを代理に立てた米国とロシアのどちら側の味方ですか?」と聞こえただろう。


サウジアラビアでの米―ウクライナ協議には米側代表としてマルク・ルビオ国務長官が参加したことは、その時点でトランプの早期和平の試みが失敗したことを示している。その後発表された内容の薄い停戦合意発言から、これは代理であるウクライナと雇用主である米国との作戦会議となったと以前のブログに書いた。

 

マルコ・ルビオ氏は、国務長官への就任を野党側からも支持された人物であり、ロシアと中国を嫌う人物として知られていた。その国務長官をウクライナとの協議に派遣したことは、トランプの姿勢変化と見ることができる。そこにイスラエルロビーの働き掛けがあったかもしれないと前回ブログに書いた。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12889749237.html

 

トランプは、この戦争の歴史を背景に、具体的なプロセスとしての停戦方法を持っていなかった可能性が大きい。トランプが短期間で停戦可能だと言ったのは、単に彼がグローバルエリートたちとは離れた存在であり、且つ上記のグローバリストの企みと歴史的経緯とを十分には考察していなかったからだろう。

 

トランプが停戦に熱意を示したのは、彼の心の内にノーベル平和賞狙いのようなポピュリストとしての目的か、米国側の出費削減の目的があったからだろう。国際社会への米側の責任或いは米国の貢献という類のレベルの高い期待をトランプ政権に持ったのは間違いなのだろう。

 

実際、トランプはNATOや日米や日韓等の軍事同盟関係を軽視することで、米側の国際政治への関与を減らそうとしている。NATO諸国や日本への軍事費の対GDP増加を要請する発言も、単に米国の出費削減を考えての発言だろう。

 

米国がNATOの中心としての地位を放棄する姿勢をとれば、ヨーロッパでの政治的影響力を無くすことになり、フランスや英国がその穴埋めに動くので、上述のように仏マクロンや英スターマーがウクライナ戦争への関与を強め、和平が遠ざかるのは当然ではないのか。

 

これでトランプの早期和平の目論見は崩れた。トランプの高い評判は、反グローバリスト側でも崩壊する可能性が高くなってきただろう。


 

終わりに:

 

世界は米国を中心として複雑なネットワークを形成しており、米国の態度急変はそのバランスを崩す可能性がある。今まで世界のリーダーとして米国は振る舞い、その負担とともに恩恵を米国は受けてきたことをトランプは知らないのだろうか。

 

そのリーダーシップを放棄すれば、世界は次の体制に移るまで混乱を来す可能性が大きいことを、トランプは知らないのだろうか。

 

米国が世界政治のリーダーシップを放棄すれば、世界のパワーポリティックスのバランスが崩れる可能性が高くなる。同様に、米国が世界経済でのリーダーシップを放棄すれば、世界は不況に陥る可能性が高くなる。トランプの世界各国との貿易において米国は損をしてきたという理解は非常に浅いと思う。


鉄鋼とアルミ、自動車に対し25%の関税をかけることで、それら産業における米国内での雇用を確保しようとしているが、それは余りにも短絡的過ぎるように思う。米国内でそれら産業が停滞したのには、それなりの理由が他にある筈である。


世界の経済は、一つの複雑なシステムとなっている。それにも関わらず、夫々の品物の生産と分配を個別に一次元問題として設定するトランプの思考は単純過ぎる。トランプ関税は、世界経済には大きなマイナスであり、米国内でも物価を上昇させるなど、米国市民の間からブーイングが起こる可能性が高い。実際、日米を始め、世界の株価は急落している。

 

 

補足:
 

1)世界のグローバルエリートたちは、自分たちのために地球環境の保全と人口削減を考えている。その表の機関として世界経済フォーラムが存在し、その定期総会であるダボス会議でWEFの会長であるクラウス・シュワブはグレートリセットなる提言を行った。グレートリセットとは、現在の経済システムである株主資本主義を廃止し、全ての法人組織を社会全体の保有とする改革=世界の共産革命を意味する。そしてこのグレートリセットは、レーニンとトロツキーという二人のユダヤ人革命家がロシアで実行し失敗した革命に続く、第二の世界共産革命の企みである。これを支持するグローバルエリートたちとその周辺をグローバリスト、この革命に反対する人たちを反グローバリストと言う。

 

2)このような緩衝国的な地域をめぐる争いは、日清日露の二つの戦争にも共通している。ウクライナ戦争をこの構図で見ない日本人が圧倒的多数であるのは不思議である。それは当ブログサイトで何度も書いたように、マスコミが米国ネオコン政権のプロパガンダ機関であった結果である。

 

3)トランプは大統領就任後に素早く米国政府の無駄を無くすという政策で、米国のグローバリストたちが国際政治に関与するための機関としてきたUSAID(米国国際開発庁)の整理に着手し、それが2008年と2014年のウクライナでの親ロシア政権を潰すための活動資金を提供したこと等を明らかにした。それらの活動には米国務次官補やユダヤ系資本家であるジョージソロスが大きく関与したことを明らかにした。

 

(翌早朝編集あり)

2025年3月23日日曜日

JFKファイル公開がウクライナ戦争終結を促進するかも?

東大先端研の小泉悠准教授がCOURRiERという雑誌の取材に応じ、ウクライナ戦争停戦交渉の今後について答えた。その「プーチンはいまのトランプとは停戦に応じない」と題する記事が、ヤフーニュース上に転載されている。(補足1)https://news.yahoo.co.jp/articles/36dc0c0be0ccaef2ac4b4b892bb2baef59679bc6 

 

小泉氏の分析は、本ブログ筆者の解釈を交えて整理すると以下のようになる:

 

トランプ大統領の停戦方針が報道されてから3月上旬までは、トランプはロシアの思惑通りの停戦案で仲介を進めるとおもわれたが、3月11日のサウジアラビアでの米ウ高官会議を境にトランプ政権の方針が変化した。

318日のプーチン・トランプの電話会談もその延長上で行われ、トランプはプーチンが言うウクライナ戦争の根本的原因の除去に応じる訳にはいかなくなったのである。
 

ここで根本的原因の除去とは、米国ネオコン政権がロシア潰しの前線基地化したウクライナを、ロシアの脅威とならないように改質することである。別の表現では、ロシアの脅威とならないようにウクライナをマイダン革命以前の状態に戻すことである。(補足2)

 

トランプ政権が3月11日以降それに応じられなくなったので、ロシアとウクライナ両国は何か重大な変化があるまで、しばらくは戦場での解決を目指す以外にないだろう。(補足3)

 

トランプ大統領のウクライナ戦争の終結に向けた姿勢がサウジアラビアでの米ウ会談の後に変化したとの上記指摘だが、その変化については本ブログサイトでも313日と15日の記事で言及している。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12889978781.html

 

このトランプ政権の姿勢変化は、グローバリストからの新しいタイプの圧力が、名ばかり共和党員(Republican in name only; RINO) と言われるマルコ・ルビオ国務長官を経由してトランプに働いた結果だろう。

 

ただ、グローバリストとの闘いはトランプが大統領に就任する動機でもあった筈であるので、そこからの圧力は予想していた筈。何か想定外の新しい圧力があった筈と推理すると、恐らくその中核が直接的且つ強力にトランプに圧力を掛け始めたのではないだろうか。彼らにとってもこの戦いは現在正念場となっているからである。

 

その中核とは、恐らくトランプも逆らえないイスラエルロビーの可能性が大きい。そのように考える理由を次のセクションであるJFKファイルの公開のところで考えてみる。トランプも、ケネディー暗殺以降の全ての大統領と同様に、イスラエルロビーには逆らうことがなかなか難しいのである。

 

 

2)JFKファイル公開は事態を変えることが出来るだろうか?

 

35代米国大統領だったJ. F. ケネディが暗殺された事件がオズワルドの単独犯行でないことはもはや常識である。CIAによって計画されたとみる人が多いが、今回のJFKファイルの公開後にはイスラエルのモサドによる犯行説が有力となってきた。 

 

その場合に考えられる動機は、ケネディがイスラエルの核武装に同意しなかったことと、ユダヤ系金融資本が支配するFRBなどの廃止も考えていたことである。(補足4)この件が以下の動画でかなり詳細に語られている。

 

https://www.youtube.com/watch?v=nP0XVpho4vY  (<= 視聴にはここをクリックする)

 

大統領暗殺の可能性が、事件前にロシアから米国に注意喚起されたことも明らかにされ、このモサドとCIAによる犯行説を補強することになった。ロシアが諜報活動の中でケネディ暗殺の企みに関する情報を得ることは、米国内で完結する犯行では考えにくいからである。

 

そして、既に書いたように、JF. ケネディ暗殺後の歴代大統領の全てが不思議とイスラエルロビーの言うがままに動くことになったことも、この説を示唆する。

 

もし米国の金融エリート、そして米国に存在するイスラエルロビーが、モサド及びCIAを動かしてケネディの暗殺をさせたとする説が世界中に発信されたなら、彼らグローバリストとその企みが陰謀論としてではなくインパクトを伴って世界中の人々の頭に叩き込まれることになるだろう。

 

それが、ウクライナを軍事支援する欧州各国の世論と政権の姿勢を変化させ、当初のトランプが考えた通りの和平案が再浮上する可能性も出てくるだろう。ウクライナ戦争は、21世紀初頭から始まったグローバリストとその中核にあると考えられるシオニストたちによるロシア潰しの作戦と考えられるからである。(補足5)

 

グローバリストの世界帝国建設の計画に対して、先進諸国の国民の多くが現実的危機であるを感じることが、ウクライナ戦争や中東での戦争を第三次世界大戦へ発展させないために必要である。


 

補足:

 

1)元のクーリエ誌の記事は有料である。恐らく一定期間後にはヤフーのこの記事は削除されるだろう。https://courrier.jp/news/archives/395446/ 

 

2)マイダン革命とは、オバマ政権下の2014年、米国国務省の国務次官補だったビクトリア・ヌーランドらによって工作されたウクライナのクーデターである。ロシアと友好関係を維持することでNATO諸国とは一線を画していたヤヌコビッチ大統領をウクライナからロシアに追い出す為に、ウクライナのネオナチグループと言われるアゾフ連隊などによる暴動や反ヤヌコビッチの大規模デモを支援した。その資金が、米国国際開発局(United States Agency for International Development;USAID)を通して国際支援の名目で支出されていたことが最近のトランプ政権によって明らかにされた。

 

3)現在そのようなウクライナを実現するには、東部4州の自治或いは独立を明確にすることやクリミヤでのロシアの地位を確保することと、ウクライナの中立化、つまりロシアと欧米との緩衝地帯とすることの確約が必須だろう。

 

4)ケネディは、ユダヤ系私銀行であるFRBの発行する米ドルを廃止して、政府発行通貨を米国紙幣とすることを考え、政府紙幣の発行を始めた。暗殺された後、政府紙幣は全て回収された。

 

5)ただ、イスラエル国内もこの二派が存在しており、ネタニヤフ政権の中にその亀裂が入っているというのが、私の考えである。

 

===翌朝編集あり ===

 

2025年3月15日土曜日

トランプは短期間での停戦実現のためにマルコ・ルビオを解任出来るか?

今回のマルコ・ルビオ米国務長官がサウジアラビアに出向いて、ウクライナ側高官と協議し作り上げた "ウクライナ戦争停戦案”を、トランプ大統領は本気になってロシアのプーチン大統領に突きつけたようだ。それはトランプが隠れネオコンだったのなら分かるが、そうでなければ彼はそれほど緻密に考えるタイプではないということになる。(以下敬称略)

 

今朝、国際政治に関するYoutuberの及川幸久氏が、この停戦案に対するプーチンの声明の内容について報じている。https://www.youtube.com/watch?v=zB8w4X1N2JA

 

 

プーチンは、言葉を慎重に選びながらトランプに直接話し合って停戦交渉を練り直したいと持ちかけており、トランプの本当の意思を確認したいと考えていることが分かる。及川氏がプーチンの声明の要約を示しているので、その趣旨を以下に記す。

 

その中でプーチンは、トランプの紛争解決に向けた努力に感謝すると述べたあと、「この紛争を平和的手段で終結させるというアイデアには全面的に賛成であるが、我々はこの停戦が長期的な平和につながり、この危機の根本原因を排除すべきという前提に立っています」とロシア側の停戦に向けた姿勢を述べている。

 

ここで、今回目指す停戦交渉の背景について少しまとめてみる。今回の交渉と両当事国の姿勢を評価する為には、戦争中の両側に戦闘能力がかなり残されているという情況下での停戦交渉であり、降伏文書への署名とは全く異なる点を念頭に置かなければならない。

 

つまり、ロシア側が警戒しているのは、2014年と2015年の二度にわたって行われたミンスク合意が失敗に終わったことである。

 

ミンスク1では欧州安保協力機構が停戦監視にあたったが、数か月で合意が破られたこと、更に2015年のミンスク合意2は、ウクライナを支援する西側とウクライナの時間稼ぎに使われ(西側諸国も認めている)問題が深刻化したことなどから、プーチンは同じ轍を踏みたくないのである。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-02-18/R7I2ZBDWX2PS01

 

今回のプーチンの声明は、停戦する前にこれらの可能性の除去が大事であるという意味のものであって、論理的であり、国際平和実現の視点で当然である。

 

ウォールストリートジャーナルは、ウクライナは停戦交渉につくがプーチンにはそのような気持がない(表題:Ukraine Turns Tables With Cease-Fire Proposal but Putin Has Little Incentive to Sign)と、プーチン批判を行っているので、このジャーナルはネオコン万歳の新聞であることを白状しているのである。

https://www.wsj.com/world/ukraine-turns-tables-with-cease-fire-proposal-but-putin-has-little-incentive-to-sign-353464a5

 

他のメジャーな新聞も、確かめてはいないが、どうせ同じトーンだろう。

 

ミンスク1では停戦合意が三ヶ月しか持たなかったのは、停戦の実現とその確認、更にその継続には相応の技術的問題をクリアできていなかったからである。そこでプーチンが確認したことは、

 

1.2000㎞の戦闘前線で停戦実施は相当困難であること、2.十分な停戦を監視するシステムが必要であることであり、これらの問題解決のためにトランプ大統領に協力すると言明した。

 

更に、同種の紛争が将来にわたって発生しないようにするには、この紛争の根本的な原因が除去される必要があり、それについてもトランプ大統領と議論したいと述べている。

 

そして根本原因としてプーチンがあげたのは以下4項目である:

1.NATOをウクライナに拡大しない;2.ウクライナの完全な「非武装化」と「非ナチ化」;

3.東部のロシア語圏がウクライナから独立;4.生物兵器開発への取り組み(を止める)

 

これらについて十分な取り組みがなされなかったことが、まさに今回のウクライナ戦争の原因である。原因を取り除かなければ、紛争は終わらない。原因を取り除くには、少なくとも一方の当事国の譲歩か、消滅(完全敗戦)が必要である。

 

それはロシアのウクライナ侵攻前と後で何回もブログ記事に書いた通りである。
 

これらのことを考えると、この戦争を短期間に終了するには、トランプ側に決断が必要である。その一つは、ネオコンであることが判明したマルコ・ルビオの国務長官解任だろう。

 

(以上速報的に書きました;18:30 表題の部分修正あり)
 

2025年3月13日木曜日

米国がロシアに送った30日暫定停戦案の意味


トランプ政権は、マルコ・ルビオ国務長官らとウクライナ首脳との会談の後、対ロシア戦争に対する一時停戦の申し入れをプーチン大統領に送ったようだ。この提案にはいくつもの不思議且つ不確かな点が存在すると、国際政治に関するyoutuberの及川幸久氏が、配信した動画の中で語っている。
https://www.youtube.com/watch?v=nLswemCBHW0

 

 

協議に長時間を要したにも拘らず、共同声明で公表された停戦案はウクライナ側の最初の案にあった空と海だけの部分的停戦を、“全てにおける一時停戦”に変更しただけのものである。それだけに6時間の議論を要した筈がないので、それ以外の公表されていない条件があるのかもしれないと、及川氏は指摘する。この公表されただけのものでは、まともな停戦案になっていないと言うのである。

私が感じたところを言うと、今回の会議は停戦協議の名を借りたウクライナと米国の間の対ロシア作戦会議であった可能性が高い。不利な情況下では停戦したくないので、長時間の会議ののち、建前だけの「停戦の意志あり」という言葉をロシアに送ったのだろう。

会議終了と同時に、米国はウクライナへの軍事支援と軍事情報の貸与を再開したことも、この解釈の妥当性を示している。そして、ウクライナ支援の姿勢を明確にした今回の米国新政権の姿勢を、EU委員長、フランス大統領、そして英国首相などは高く評価している。
https://jp.reuters.com/world/ukraine/ULAXICMKOBMRBHTGJJ5M5X7NZI-2025-03-11/

一方、ロシアのプーチン大統領は数か月前に、「和平交渉の目的は、短期的な停戦や、紛争継続を目的とする軍の再編成や再軍備のための休息であってはいけない。当事者の正当な利益に基づく長期的和平でなければ」と語っているので、このままでは停戦に合意する筈はない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f6e21816ef9dc6607d1815b4f4368fb8b8b0cb89?page=2


2)マルク・ルビオによるウクライナ戦争に関する公式定義の変更

上の及川氏の動画は、「今回の提案は、3年間続いたこの戦争における停戦の提案とは成りえず、意味不明である。この提案はトランプの平和路線とは一致しないので、今後米国側から何か変更が加えられる筈だ」という趣旨の発言で終わっている。

ところが、前回記事に書いたマルコ・ルビオのウクライナ戦争に関する解釈或いは定義を、トランプ政権による公式見解だと考えることで、一時停戦に関するここまでの話の分かりやすい解釈が可能であることを指摘したい。

それは、マルコ・ルビオによる「ウクライナ戦争は米国とロシアの代理戦争である」という定義である。そして、ロシア大統領府のペスコフ報道官も「プーチン大統領自身の見解と一致している」と述べている。(補足1)

 

 

このマルコ・ルビオの発言は、ウクライナ戦争に対するトランプ政権の姿勢を示しているとロシアに受け取られるだろう。代理戦争だと言う限り、ウクライナと米国はこの戦争の一方の当事国であることを意味している。

 

従って、今回のサウジアラビアでの会議は、看板は停戦協議だが、米国は仲介国としての地位を既に放棄していることになる。今回の一時停戦の提案は、米国とウクライナの長い作戦会議のあと、それによる作戦の一つとしてロシアに送られた米国・ウクライナ側の作戦の一部と受け取れる。

 

マルコ・ルビオはウクライナを支援し続け、第三次世界大戦の危険性をおかしても戦争に勝利するつもりだろう。この戦況芳しくない時点で、ロシアに領土に関する譲歩をしてウクライナに停戦の合意をさせるのなら、米国の代理としてロシアとの戦争に従事しているウクライナを裏切ることになる上、ウクライナ国民に賠償責任を負うことになると考えるのが普通だろう。

 

この国務長官の「代理戦争発言」は、トランプに対しロシア側が有利な現在の状況下でウクライナに停戦を強要させないように放った禁断の最終兵器なのだと思う。今後もウクライナと米側が有利になる状況まで戦闘を続けるつもりなら、停戦案は雑なものになるだろうし、フランスやイギリス等の好戦派はその停戦案を素晴らしいとして拍手を送るだろう。

 

そのことをトランプは十分承知しているのかどうかはあやしい。トランプが、本当に平和を望むのなら、この代理戦争発言に対するコメントや対応なしに彼をサウジアラビアでのウクライナ高官との会合に送ったのはお粗末である。


サウジアラビアでの会議後のルビオ国務長官の言葉:「この戦争を終わらせ、和平を実現する方法は“交渉”です。それにはまず双方が撃ち合いをやめる必要がある。ロシアにもイエスと答えてほしいが、ボールはロシアにあります」という言葉は、私にはちょっとした脅しに聞こえる:

私の解釈:「新政権になった以降も、米国は対ロ戦争においてウクライナを支援する側であることを明らかにした。我々は今後、陰に隠れることなくウクライナを支援することにする。貴国が停戦の話し合いに応じるなら、その条件は今後協議で相談したいが、どうされますか?」

トランプは国務長官に策士的なRINO(名ばかり共和党)を置いたため、外交において大失敗する可能性が大きくなったと思う。

補足:

 

1)ウクライナ戦争はロシアと米国の代理戦争(ウクライナを米国の代理とする)であるという発言のオリジナルは: And frankly, it’s a proxy war between nuclear powers – the United States, helping Ukraine, and Russia – and it needs to come to an end. この発言の中でマルク・ルビオは、ロシアは勝ち逃げできないと明言している

https://www.state.gov/secretary-of-state-marco-rubio-with-sean-hannity-of-fox-news/

 

(17:30;22:30 編集しました)

2025年3月9日日曜日

世界を分断する大断層は米国に存在する:ウクライナ戦争は米露の代理戦争

 昨日、日本でも以下の大ニュースが報じられた。マルコ・ルビオ国務長官がウクライナ戦争はロシアと米国との間のウクライナを米国の代理とする戦争であると発言したのである。この考えにロシア側も同意した。

 

 

 

現在、世界は世界統一を目指す勢力と主権国家体制を守る勢力の二つに大きく割れている。その両派の争いが具現化したのが、ウクライナ戦争である。前政権時代の米国を筆頭に西側がグローバリスト側であり、ロシアが主権国家体制を守る側である。

 

米国はトランプが大統領になって、主権国家体制を守る側に移ったのであり、それがトランプ革命の本質である。

 

従って、米国国務長官がこの発言をしたということは、その大きな世界分断の断層が、米国内の前政権側と現政権側の間を走っていることを明言したことになる。それは、米国トランプ政権には謂わば禁じ手の類であるが、それほど緊迫しているのである。現在、世界は上記両勢力の戦いの帰趨を決する分水嶺にあることを示している。

 

このウクライナ戦争が西側(つまり米国)とロシアの代理戦争であるという事実は、国際情勢にある程度の知識のある人には常識である。この常識に基づかない発言をしている日本の評論家などは、グローバリストから既得権益を得ているか無知かのどちらかである。

 

本ブログサイトでも、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後から何度も言ってきた。その一つを下に引用する。この代理戦争の本質について書いているのでご覧いただきたい。

 

(以上速報)

 

 

2025年3月7日金曜日

ウクライナ戦争停戦への道は未だ遠い?

1) 初会談でトランプ大統領を激怒させたゼレンスキー大統領


ウクライナ大統領ゼレンスキーは米大統領トランプ(以下敬称略)との会談で非常に失礼な態度を取り、約束の議題であったウクライナの鉱物資源開発協定の調印もせずにホワイトハウスを去った。

 

ラフな服装もその一つだが、何よりも失礼なのはウクライナ戦争の停戦プロセスの第一歩を約束して調停役のトランプと初会談を持ちながら、交渉相手側のロシアを徹底的に批判した上で、今の段階では停戦は考えていないという趣旨の発言をしたことである。

 

この鉱物資源開発協定は、トランプがウクライナ戦争当事国間に割って入るために作り上げた計画であり、前回記事に書いた通り、経済的な効果はそれほど重要視していないと思われる。

 

例えばBloombergは、ウクライナには経済的に採算が合うと国際的に認められた主要なレアアース鉱床はないと報じている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-02-19/SRWH5YT0G1KW00

 
下に存在すると考えらている地下資源の地図を示しておく。これは多分ゼレンスキー側で作成したものだろう。鉱物資源開発の話は、ゼレンスキー側からフランスに援助との引き換えに持ち出したという説がある。https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000407782.html

 

ウクライナ戦争を停戦に導き、これ以上国民の命を無駄に失わないことを希望するなら、ウクライナにとって、トランプに停戦協定まで導いてもらえるという話は大きなチャンスの筈だった。

 

マルコ・ルビオ国務長官に口頭で調印すると約束した上でのホワイトハウス訪問だったが、上述のように、彼は本心ではこの段階での調印には納得していなかった。

 

ある時点から、鉱物資源開発協定への調印よりも、トランプとの直接面談を利用してトランプから戦争への全面支援を求める交渉が訪米の目的となってしまったようだ。その理由は、現在のロシアによる支配地域をそのままにして停戦しては、これまでの多大なる犠牲が無駄となるからである。

 

 

2)ゼレンスキーの大失敗:ロシア侵攻直後に始まった停戦交渉で調印しなかったこと

 

もし2022年2月24日のロシアによる侵略以前の領土を明確な形で奪還できないのなら、その直後に始まった調停案を受け入れておればもっと有利な形で停戦出来ていたと考えられる。そこでその時の停戦へ向けた動きを、Ikumu Nakamuraと言う方がGloval News Viewというサイト(補足1)に記した記事を参考に少し復習してみる。https://globalnewsview.org/archives/21445

 

2022年2月28日に、ベラルーシでウクライナとロシアの間での停戦交渉がスタートし3回ほど会議を持ったが、双方の隔たりが大きすぎて話は一時立ち消えになった。その後3月初めに、イスラエルによる調停が何回か行われた。更にその後の3月初旬に、トルコのエルドアン大統領の仲介による協議が始まり調印近くまで進んだ。

 

そこで署名しなかったことは、ゼレンスキーの大失敗であり、ウクライナとロシアの双方、及び世界にとって悲劇的だった。この失敗は、①ゼレンスキーをウクライナの大統領に担ぎ上げた“裏の勢力”の誘導の結果であった。上記Nakamura氏の論文からその部分を引用する。

 

 英国ジョンソン首相(当時)は、ゼレンスキー大統領にウクライナへの財政的・軍事的援助をアピールし、さらに、ロシア打倒の必要性について説き、トルコでの協議の中止を呼びかけたとされている。ウクライナの報道機関のひとつであるウクライインスカ・プラヴダは、ジョンソン首相の訪問について、「ロシアとウクライナの交渉決裂に導いた」と、厳しい評価を下している。

 

また、4月25日には、イギリスの後を追うように、アメリカのロイド・オースティン国防長官(当時)もキーウを訪問し、②ロシアを弱体化させることが、この戦争におけるアメリカの目的であることを表明した。〈下線と太字はブログ筆者による)

 

その裏の勢力からの圧力は現在も未だ継続している。参政党の山中泉氏によると、トランプとの面談前に前政権の国務長官ブリンケンなどに会い、停戦すべきでないと説得されたという。https://x.com/SenYamanaka/status/1896732974324076838


 

3)今回会談での発言:戦争継続を希望するゼレンスキーと米国前政権首脳

 

今回の2月28日(2025年)の会談の動画全体は、次のサイトにある。その一部を引用し、今回の会談が破断になった経緯について再度考えてみる。https://www.youtube.com/watch?v=ajxSWocbye8 

 

 

このトランプとの会談で、ゼレンスキーは口論となる直前に(30min 50s)以下のように話している。(語ったままの文字起こし

 

First of all, I want I want really to tell you, and I think that everybody understand that Ukraine, more than Ukrainians, nobody wants to stop this war. But at the future any negotiations, its understandable that two sides of the war, not Russia and the United States, because this is not the war between Russia and the United States,  will be at the negotiation and negotiation table.  

 

Then of course, United State like the strongest partner of the Ukrain and of course Europe. Europe is important because we really defend Europe for today. All Europians are really recognized that we are defending the line.(以下続く)

 

ゼレンスキーの英語はかなり粗雑なのだが、さしあたりこれをGoogle翻訳すると、以下のようになる。発言の英語もその翻訳も機械的に行うことで、本筆者の恣意的解釈の入り込む余地を取り除いていることを理解してもらいたい。

 

まず第一に、本当に皆さんに伝えたいのは、ウクライナは、ウクライナ人以上に、誰もこの戦争を止めたいと思っていないということを皆さんが理解していると思うということです。③しかし、将来のいかなる交渉においても、これはロシアと米国の戦争ではないので、戦争の双方、ロシアと米国ではなく、交渉のテーブルに着くことは理解できます。(補足2)

 

そしてもちろん、米国はウクライナの最強のパートナーであり、もちろんヨーロッパです。ヨーロッパは重要です。なぜなら、私たちは今日、ヨーロッパを本当に守っているからです。すべてのヨーロッパ人は、私たちが防衛線を守っていることを本当に認識しています。

 

この最初の発言 I think that everybody understand that Ukraine, more than Ukrainians, nobody wants to stop this war. の部分の意味は、特に慎重に推理すべきだと思う。

 

「ウクライナ人よりもこの戦争を止めたい人など誰も居ないことを、皆理解していると思う。」は、それに続くBut at the future, any negotiations(しかし将来のどのような交渉においても)と続けることで、現在のトランプの仲介による交渉をやりたくないと言っているのである。

 

現時点から将来のある時期(in the future)での交渉まで、「But」で繋ぐ形で話を飛ばすことで、「しかし現時点では、我々は戦争を止める訳にはいかない、ロシアに勝たなければならない」という彼の考えをトランプに伝達しているのである。(補足3)

 

ゼレンスキーの戦争継続の論理は、日本のマスコミも宣伝しているように、プーチンは旧ソ連の領土を奪還したいと思っているである。もしウクライナが負ければ、バルチック沿岸諸国やポーランドをロシアは侵略する。ウクライナの国民は、邪悪なロシアとの戦いの最前線で命を落としている。それ故ヨーロッパ諸国は我々ウクライナを支援するのである(整理短縮)」。

 

ただゼレンスキーのこの戦争に関する理解は完全に間違っている。ソ連崩壊後に侵略的だったのはロシアではなく、米国とNATOである。そのことは、トルコのエルドアン大統領による仲介で和平に近づいていた時に教えられていた筈である。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

 

ここでこのソ連崩壊後からの米国民主党とネオコン政権の責任追及の話を始めれば、世界は混乱するだけである。(補足4)

 

従って、このトランプとの協定に署名できなかったのは、ゼレンスキーの大きな失敗だったという解釈や、この戦争においてウクライナを支援しただけのヨーロッパ首脳は愚かだったとかいう理解で留まれば、問題の本質は全く見えない。
 

 

4)世界の裏権力

 

彼ら(英、米(ネオコン)、仏、独など)はソ連崩壊からNATOの拡大、カラー革命(オレンジ革命)、マイダン革命などの歴史を全て熟知した上で、この戦争においてウクライナを支援している筈。英仏らEU諸国は、戦争を遂行することを諦めてはいけないとゼレンスキーを励まし諭す会議を、トランプとの会見直後に英国で開催している。
 

彼らはロシアを崩壊させることなくしては彼らの将来がないと考えているのだろう。彼らはもっと大きなことを、彼らの政治家としての使命と考えていると思う。その使命を投げ出しては、もっと上の権力(上で言及した裏の勢力)から彼らの政治生命は奪い取られると考えている筈である。それはGreat Resetや或いは新世界秩序樹立などと呼ばれるトロツキーの世界共産革命の現代版である。

 

32日の欧州首脳会議の際に英国王室がウクライナ戦争を支援する一環としてゼレンスキーをもてなしたことから、この2022年から用いている“大きな裏の権力の存在”を想定する国際政治のモデルは所謂陰謀論ではないことが分かるだろう。https://www.bbc.com/japanese/articles/c39vxdmwgm3o
 

彼らはなりふり構わず、ゼレンスキーの背中を押している。英国王の極近くに裏の権力の中枢が存在する。英国には国王も自由に出入りできない場所がある。

 

既に、トランプにもチャールズ国王から英国への招待状が出されているが、この英国王とゼレンスキーの面談は、明らかにトランプへの圧力を意図したものである。従って、英国王室の招待を受け入れたものの、トランプの英国訪問の時期はずっと後だろう。


 

5)ウクライナ戦争停戦は英仏の関与で困難になるかも
 

上記のゼレンスキーの発言のもう少し後で口論が始まる。そして会議は解散となり、その後トランプはゼレンスキー批判を繰り返し、バイデン政権が決定し現在も継続しているウクライナへの武器支援さえも打ち切りを指示することになった。

 

もし武器支援が打ち切りになれば、ロシアは停戦交渉開始までに占領区域を簡単に拡大するだろう。それ故、英仏のグローバリストやゼレンスキーは慌てることになった。彼らの目標達成は益々困難となるので、急遽、ウクライナの鉱物資源開発協定にサインするために米国を再度訪問したいと書いた手紙をトランプに送った。

 

トランプはその手紙を受け取ったという事実を、議会での初演説の際に公表した。感謝すると言ったが、これで強引には進めなくなり心の底では感謝などしていないだろう。英国スターマー首相やフランスマクロン大統領も、米国を再訪問するゼレンスキーに伴うということになっているようだ。まるで父兄同伴のようだ。

 

レアアース等の資源開発のために米国民間人が多数ウクライナに駐留することには、プーチンは相当難色を示したようだが(補足5)、トランプの経済制裁への言及と互いに信用出来る政治家であるとの相互の認識が、プーチンを納得させることになったようだ。

 

プーチンを説得する際、「第三次世界大戦を防ぐためだ」というセリフがあっただろう。そのトランプの労苦をゼレンスキーがもしウクライナのことを、そして世界の人民のことを心配する気が多少ともあるのなら、もっと評価すべきだった。

 

今後、停戦交渉を妨害するために、英仏はこの鉱物資源開発にも参加したいと言い出す可能性が高いと思う。最初に言及したように、フランスは米国よりも早い時期にこの話をゼレンスキーから持ち出されたようだ。https://apnews.com/article/ukraine-france-minerals-rare-earths-defense-weapons-lecornu-e5fc5fa487d0b8fd884c7783356812d4

 

ただ、英仏が地下資源開発協定に始まる停戦交渉に参加すれば、停戦交渉は纏まらなくなる。それは、英仏のウクライナ和平監視団のウクライナ駐留を要求する可能性が高く、それをロシアは拒絶するからである。

 

グローバリスト側のこれら時間稼ぎの間に何が起こるかわからない。トランプやイーロンマスクは飛行機事故などに警戒すべきだと思う。


 

補足:


1)Gloval News View (GNV)は、大阪大学を拠点とするメディア研究機関。(日本で)報道されない世界の出来事や現象、傾向、視点を解説形式で提供するほか、日本の国際報道を分析し傾向を調べ公表しているようだ。大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)教授の国際政治学者であるヴァージル・ホーキンス(Virgil Hawkins)氏が創設した。()内は本筆者による推測

 

2)ゼレンスキーは米国トランプとロシアのプーチンが勝手にこの停戦協定を進めていると疑い、それが大きな不満として存在する。これは、ロシアもこの停戦協定案には反対意見が強いので、トランプが予めプーチンに制裁とセットで相談したのだろう。トランプはウクライナの背後の勢力の方が強敵であり、且つ、直接の二か国面談は直ちに破談となることを知っているのである。

 

3)ゼレンスキートランプ会談の全文和訳は、NHKが掲載している。https://www3.nhk.or.jp/news/html/ause/k10014737411000.html

 

ただ、「nobody wants to stop this war」という非常に微妙な部分をグローバリストの主張を認めるような形で翻訳している。そのために、その次の「But at the future」を翻訳から除外している。翻訳文でいえば、セクション3の緑色の部分の下線部(しかし、将来のいかなる交渉においても)がNHKの翻訳では消されているのである。

 

このBut at the future (at a  time in the future 位の意味だろう)の存在により、今は停戦は無理であるとの彼のその時点での考えが表現されている。その重要な意味がNHKの翻訳文には反映されていないことになる。尚、NHKにはUSAIDからのお金がBBCを中継して送られていることが明らかになっている。

 

4)ソ連が崩壊して、NATOの役割が終わったにも拘らず、旧ソ連諸国の政情を不安定にする工作を行い(所謂カラー革命)NATOを東方に拡大していったのである。このあたりのことについては、ロシアのウクライナ侵攻10日ほど前に本サイトにアップした記事を見てもらいたい。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

このような考察は、米国シカゴ大学のミアシャイマー教授も繰り返し言及しており、その学説の又聞きなどから素人の私でもわかることであり、そしてブログ記事に書いてきたことである。従って、ヨーロッパ首脳が愚かだと考える限り、問題の本質は見えない。

 

5)トランプとゼレンスキーが喧嘩別れになった前回面談を、元ロシア大統領のメドベージェフは「豚が豚小屋の主から叩かれた」と表現していることから、ロシア幹部もトランプに信頼感を寄せているわけではないことが分かる。https://news.yahoo.co.jp/articles/2edb6adb498d908305b27bfd8e5843890a73ef07

 

(3月8日早朝、趣旨不変だが大幅な編集あり;3月9日早朝、セクション3の文章を書き替えた。助詞を数か所修正、最終稿とします。)

2025年3月3日月曜日

トランプ和平案におけるガザ地区と東部ウクライナ(トランプは国内政治闘争と世界戦争危機を乗り越えられるだろうか) 

1)ゼレンスキーとその背後の世界戦略:

トランプ政権のウクライナ和平プログラムの最初のページが、ゼレンスキー・ウクライナ大統領により反故にされた。それが事故的ではなく意図的であることは、会談終了時にゼレンスキーがある方向を向き、微笑みながらthumbs-upをしたことでも分かる。https://www.youtube.com/watch?v=OPa29S_-u_Q&t=2033s

ゼレンスキーは、東部ウクライナの資源開発の協定に署名する際に、ウクライナの全面的な安全保障を米国に要求した。しかし、それはトランプがその場で言ったように、米国を全面的に対ロシア戦争に引きずり込むことを意味しており、トランプの和平案を拒否することに等しい。

何故なら、全面的な安全保障は対戦国であるロシアを筆頭に親ロシアの諸国から得るべきものだからである。翌日、英国やドイツの左派政権が全面的なゼレンスキー支援を約束したことから、彼らも停戦から和平に向かう意図などないと思われる。ヨーロッパの左翼政権も、対ロシア全面戦争から第三次世界大戦を想定しているように見える。

トランプ政権は対ウクライナ軍事支援を打ち切る可能性が高くなり、それは米国内ネオコン・左派の団結を促進し、トランプ政権との政治的闘争が新たなフェーズに発展する可能性がある。(補足1)そして停戦から和平への道が閉ざされ、更に数十万人から数百万人、世界戦争になれば数億人の命が失われることになりかねない。

 

会談が口論となった時、ゼレンスキーの「あなたには素晴らしい海がある。今はそれを感じていないが、将来それを感じるようになるだろう」という言葉は、一番最後の数字(数億人)を示唆している。(前回記事参照)なんという悪辣な類の人物(補足2)だろうか。

トランプ政権は、この政治的バリアを超えなければならないが、あまりにも早い時期にそれは現れた。これはゼレンスキーだけでなく、米国ネオコン・左派・グローバルエリートたちの計画通りかもしれない。ゼレンスキーがthumb-upして見せた相手が気になる。

ここで、トランプの和平案のエッセンスを我流だが、抽出してみたい。トランプはマッドマンの振りをしながら、緻密な戦略を立てているように見える。


2)トランプの和平案

トランプの和平案は、戦闘の最前線に米国の民間人組織の大勢を入り込ませることで、米国トランプ政権とともに戦争当事者間の緩衝材となることである。普通の国なら、大勢の民間人には、諜報機関の人間がかなり混じっていることは当然と考えるだろう。

その緩衝材の役割は、ウクライナにおいてはレアアース開発の為の開発業者が、ガザ地区においてはリゾートの開発業者が担当するのだろう。後者においては、マッドマントランプの正業である不動産業が結びついているものの、木に竹を接ぐような不自然さに普通の人は気付くだろう。そんな開発が出来たとしても、その地のホテルは20年間ほどは閑古鳥が鳴くだろう。

これらトランプの和平案の最初のステップは、無理やり作り上げたものであり、それを強欲トランプならあり得るかもしれないと思わせるのは、これまでのネオコン・民主党派のプロパガンダの結果であり、それを上手くトランプは利用しているのである。

繰り返しになるが、停戦から和平、その後の完全な安全保障は、Step-by-stepに進むべきものであり、その共通の一歩をそれまでの数年間憎しみ会ってきた戦争当事者が同時に進むことが不可欠である。それ故、ゼレンスキーがウクライナの安全保障を米国に要求することは、単に米国にウクライナ側に加勢してロシアと戦うべきだと言っているに等しいのである。

そのように考えれば、ゼレンスキーとヨーロッパの左翼政権は米国のネオコンやグローバルエリートと組んで、ウクライナ戦争をロシアを潰すことを世界戦略の一部としていることが分かる。その究極の目的は、彼らによる世界帝国の建設である。


補足:

 

1)この会談後、トランプとゼレンスキーは再交渉の余地を残す発言をSNSにアップしている。可能性が極めて少なくてもそのような姿勢を示すことは、現実的な政治の世界では当然のことであるが、今回のケースでは反対勢力の批判を和らげる意味しかないだろう。

 

2)ゼレンスキーはホワイトハウスの大統領執務室訪問にあたって、中国のネット販売業者であるTEMのシャツを着て現れたとネットで話題となっている。ことの真偽は兎も角として、あの服装で世界の首脳と会うのは、彼が並外れた優越意識を持っていることを示している。我々人類という考え方は取らない類の人たちの一人だろう。


ーーー 以上速報 (18:30、編集あり)ーーー

2025年3月2日日曜日

ゼレンスキーは第三次世界大戦の方を選択したのか?

 

ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプ米大統領の招待に応じアメリカを訪問し、停戦合意のための第一歩を踏み出すべき席についた。しかし、彼は最初から停戦を望んではいなかった。それは、ゼレンスキーは第三次世界大戦こそ、自分と家族が生き残り裕福に生きる道だと考えたからだろう。

 

ゼレンスキーは米国国務長官と交わした今回の協定への合意約束を覆したのみならず、トランプの和平に向けた戦略を完全に否定し、更にバイデン政権時代以上のウクライナへの軍事支援をすべきだという趣旨の発言をした上で、トランプの米国政府を侮辱したことで証明されたと思う。

 

以上の推論は、日本のメディアやSNSでは十分には紹介されていない。立憲民主党の原口一博氏https://www.youtube.com/watch?v=D_fx-vxk-Rs右派政治評論家の桜井よし子氏の他、多くの動画配信者はこの会見決裂をゼレンスキーの失敗のように報じている。

https://www.youtube.com/watch?v=4_mdJ67JJAA

 

しかし、元喜劇俳優だったゼレンスキーが、ユダヤ系オルガルヒのコロモイスキー氏の支援で世界一の腐敗大国と言われたウクライナの大統領になった時から、(コロモイスキーという人物:

https://www.bbc.com/japanese/64493839彼は一定の使命を与えられていたと思われる。今回も失敗ではなく、その元の使命から一歩も退かないという態度を示しただけである。


その使命とは、ロシアをエリツィン時代のようにユダヤ系オリガルヒの支配下に取り戻すことだろう。彼らグローバリストたちは世界戦争も計画に入っていると思われると以前からこのサイトに書いてきた。
 

最初に注目すべきは、この会談にゼレンスキーはTシャツのような普段着で現れたことである。トランプも副大統領のバンスも背広にネクタイ姿であるのにも拘わらずラフな姿で現れ、最初からトランプの努力に感謝や米国大統領府に対する敬意の欠片も感じさせない態度であった。

 

ここでは、分かりやすく纏めている及川氏の動画を引用する。https://www.youtube.com/watch?v=vnUhijberYA

 

 

最初の40分くらいは通常の首脳会談の様子だったが、あるところからゼレンスキーの失礼な態度が目立つようになったという。それを指摘したバンス副大統領と口論のあと、トランプの逆鱗に触れることになった。このあたりの経緯は上の動画解説か、元の動画をご覧いただきたい。

 

ゼレンスキーは、トランプ政権になっても米国が完全にウクライナ側について軍事支援をすべきだという彼の考えがトランプに撥ねつけられたのを確認したあと、彼は「あなたには素晴らしい海がある。今はそれを感じていないが、将来それを感じるようになるだろう」と言ったのである。(及川氏の動画の15分ころ)
 

このゼレンスキーのセリフは、ユーラシア大陸全体が戦場になった場合でも、米国は大西洋によってユーラシア大陸から隔絶されていることの有難さを知るでしょうと言う意味である。このセリフは、ゼレンスキーには、この世界大戦のシナリオが既に頭にあることを証明しているのだ。

 

更に、米国のこれまでのウクライナ支援に対しても「米国にとっては気楽にプレイできることでしょう」位の意味を持ち、米国外交を侮辱する発言である。

 

ホワイトハウスの大統領執務室を訪問し、トランプ大統領との初の面談にも関わらず、ラフなTシャツのような服装で臨む姿勢、米国はウクライナを米国の運命共同体のように扱うべきだと取れんばかりの厚かましい発言、そしてそれが受け入れられなかったことを確認したあとの上記捨て台詞によって、今回の訪問の目的が分かるだろう。

 

元から、トランプの休戦協定の筋書きを破壊するための訪米だったのだ。(追補:これと真逆の間違った解説が、朝香豊氏によって為されていることを知りましたので、追加引用させてもらいます。コメントも@rcspinopのハンドルネームでアップしたのでご覧ください:https://www.youtube.com/watch?v=jNAnOH7H2H8 )


 

2)トランプの思慮深い戦略

 

トランプの戦略の第一は、現在ロシアが占領している東部4州に存在すると言われているレア・アース金属を米国が投資して開発するという大型契約を結び、米国がウクライナ東部に自由に出入りできる様にすることである。それは、米国の本格的な介入を、軍隊派遣ではなく、ロシアの脅威とならない民間企業を派遣して、ウクライナ東部に米国の存在根拠を創るというものである。

 

米国民間人のウクライナ東部4州駐留が実現すれば、同時に米軍の関係者も背広姿で駐留することになる。米国が駐留することになれば、ロシアはもはや手出しは出来ないし、プーチンもこの停戦から終戦案に合意せざるを得ない状況になる。

 

しかも、この協定はウクライナと米国とで結ばれる。つまり、トランプはこの東部4州に対するウクライナの主権を認めていることになる。この線でプーチンの合意を得たとすれば、既にその段階でトランプは大きな圧力をプーチンにかけたことになる。

 

それだけの恩恵を用意した上で、ゼレンスキーは米国に招待されたのである。プーチンは既にトランプの戦略を知っている可能性が高い。トランプを敵に回してしまっては、これまでのような化石燃料を欧州や中国に売りつけながら戦争を継続することなど不可能になる。それは既に、トランプが手を打っていることである。

 

CNNによると、ウクライナのゼレンスキー大統領との「1兆ドル規模の協定」により、米国が大量のレアアース(希土類)鉱物を簡単に利用できるようになると主張しているが、ウクライナにレアアースやその他の鉱物資源が豊富にあるという実際の証拠はほとんどないとの見方を紹介している。

 

 

つまり、このレアアースを米国に寄こせというトランプの言葉は、これまでバイデン政権がウクライナ支援に使った資金の回収が目的ではなく、ほぼ純粋に和平のための戦略の一環だった可能性がたかいのだ。

 

これまで作り上げられたトランプのイメージにより、「ウクライナのレアアースを米国に寄こせ」というトランプの言葉は、マッドマンのトランプなら有り得る話だとロシアを含めて世界の一般市民に思わせるだろう。しかし、その態度や言葉とは裏腹に、トランプには綿密な戦略があったことが知恵ある人には分かるだろう。

ーーーーーーー以上、速報 (10:45 追補をいれた)ーーーーー

2025年3月1日土曜日

財務省とトランプは諸悪の根源ですか?

ー議論が無ければ知の共有もないー

 

単独の知的作業で世界の全てを知ることは不可能である。そこで人は分担して知識を収集し、それらを共有することで世界についての知を創造し深めてきた。そのプロセスは、対話による知識の授受と確認、それらの評価と接続、さらには対象とする事象の本質についての理解深化などである。

 

日本の文化は、その対話で互いの知を広く深くするというプロセスに冷淡だと思う。人々は、言葉は人に侵入し、その人を変える或いは汚すと感じる感覚の中に生きている様に思う。そして人間は、神が作り上げた純なままであるべきと考えるようだ。
 

それ故、人は見知らぬ人とは距離をとり、電車内など人が密集するところでは沈黙を守る。それは長い間続いた政治権力には好都合である。この文化の時間軸は80年かもしれないし、2000年かもしれない。日本文化として宗教的意味も伴って定着していると考えれば、後者の時間軸で考える方が正しいだろう。
 

 

1)言霊の国は、議論で知識を深める機会に欠ける


インターネットが普及した昨今でも、日本は上記のような言霊の国であり続けている。数字の4や42を嫌う。プロ野球の選手の背番号には、これらの他、9番なども見当たらない。また、受験生の前では決して「落ちる」という言葉を用いてはならないし、「桜が散っている」と言ってはいけない。

 

人が経を読んだり写したりするのは、「照見五蘊皆空度一切苦厄」のような言葉は理解出来ないが、言葉自体に霊的価値があると感じるからである。更に、沈黙を美徳とする故、外を歩いている一般人への情報周知は、標語等を幟や看板に示す方法が多用されている。

 

ある命題について相手側の考えを否定することは、より高いレベルの理解への道筋である。しかし、それ(命題の否定)は、言霊の国では人格非難と受け取られかねない。ことばとその人物は一体であり、言葉はその人物(心や能力)が外に出たと見做されるからである。

 

 

日本社会では、多数の人が関与する情報伝達と対象の理解深化のプロセスが円滑でないので、知的な部類に入る人達でも国際的な政治や経済に関しては非常に浅い理解にとどまる場合が多い。それは日本語という言語の壁があるのと、上記に示したように、日本国内では多くの人々の間で情報獲得、検証、深化のプロセスが十分には働かず、まともな知識が流通していないからだと考えられる。

 

ネット社会になって、この情報の多元化やSNS等での情報の分散処理がなされるようになり、急速に事態は改善されるだろうが、ここ数年の国際政治の歴史的変化に間に合うかどうかはわからない。間違った情報が権威あると見なされたところから発せられ広がった場合、日本国民の殆どがその部分の理解が不可能となってしまうのが現状である。

 

例えば、著名な大衆的経済評論家である森永卓郎氏が、ザイム真理教という言葉を日本中に広めてしまえば、相当知的な他分野の人物も不景気を財務(×オーム)真理教の悪として短絡的に処理してしまい、その歴史的な失政を矮小化し、根本から正す手段を国民から奪ってしまう。

 

この財務省を悪として処断する根本的な間違いは、原点から考えれば簡単にわかる。本来、官僚機構は政治の下請け組織であり、無謬性を有する。(補足1)つまり、財務省の上に内閣があることをわざと無視している。「財務省が悪いと思う」は、泥棒がこの手が悪いという言い訳と同じである。
 

その「ザイム真理教」なる“財務省=諸悪の根源”的な考え方を、公共の福祉に貢献すべき(放送法第一条)地上波テレビも繰り返しお経のように広めている。国民のための情報を伝達すべきNHKも、国民から視聴料を "むしり取り”ながらこの宣伝グループの一員となり下がっている。https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/my-asa/teg20240114.html

 

上記NHKの記事は森永氏の考え方を紹介しているが、森永卓郎氏の論理に対する反対意見が紹介されていない。それは視聴者を真実に近づけるというNHKの設置目的を放棄したものである。真実に近づくためには議論が必須であるというのは、ギリシャの昔からの常識である。しかし日本では、真実は天下り的に供給されると考えるようだ。


 

2)日本の農政と「ザイム真理教」という日本政治に対する誤解

 

東大大学院特任教授である鈴木宣弘氏による、日本の農政がまるで米国の為に存在するかのように見えると、簡潔に指摘した動画を紹介したい。https://www.youtube.com/watch?v=k50hllDg44A

 

 

この動画では、70年以上続いた自民党の農政に「食の安全保障」という考え方が欠けているという重要な指摘がなされている。国際政治が流動的になっている今こそ、日本国民はこの問題を大きく取り上げて議論すべきだろう。少し残念なのは(後で言及する)諸悪の根源に財務省を置いている点である。

 

具体的には、鈴木教授によれば昨年のコメ不足の背後には、敗戦直後から現在までの自民党政府の一貫した売国奴的な食糧政策が存在すると指摘している。つまりコメ不足は、農家の保護育成に使うべき農政予算を、減反政策等の農家潰しの為に用いた結果であると言うのである。

 

何故農家を潰すのか? それは日本国民が将来餓死するかどうかよりも、米国の農産物輸出に協力することの方が自民党政治家にとっては重要だからである。何故、米国の方が大事なのか? それは、彼ら国会議員或いは政府高官としての地位とそれに対するあらゆる権益は、米国の支配下の政治構造の中で得られているからである。
 

今回のコメ不足の原因が戦後の自民党政府の悪政の結果であるという事実を隠すために、日本政府はコメ不足は流通システムが上手く稼働していないからだと説明し、備蓄米の放出でごまかすつもりらしい。しかし、恐らくコメ不足の問題は今後常態化するだろう、そう鈴木教授は話す。

 

その他、野菜の収穫には先ず種子の入手が大事だが、それを一昨年だったかに種子法を改正して、日本独自に保管販売することを禁止するという売国奴的政策を行っている。これも米国の種子業者(モンサント社)から間接的に圧力が原因だろうと鈴木氏は言っている。

 

更に、この動画では核戦争の結果として起こる飢饉について推測した結果を紹介している。米国の或る科学者の推計によれば、もし核戦争が起こってしまった場合、日本に核爆弾が落とされなかった場合でも予想される核の冬によって7000万人の日本人が死亡するというのである。気候変動等の効果よりも遥かに大きい確率と規模で、悲惨な情況になる可能性があるのだ。(補足2)

 

通常兵器による台湾有事等でも、物流が障害されることによる食料危機が予想され、大量の餓死者が出る危険性がある。これらの場合の餓死者は、食料安全保障をしっかり行っていれば何とか無くすことが可能である。国際政治への参加つまり外交を考える上で非常に重要な予測である。

 

ただ、この素晴らしい意見表明の動画を、ザイム真理教というタグを表に出して戦っておられるのには非常に驚いた。ザイム真理教の問題とする限り、問題の在処が明確化できない。これは官僚機構の問題ではない(C.F., 官僚の無謬性:補足1)。政治の問題であり、内閣及び国会(特に予算委員会)の問題である。そのことにこの知識人も気付いておられないのだろうか。

 

つまり、総理大臣をどう選ぶかが問題である。トランプ政権に代わってからの米国官僚機構の改編を見れば、それは明らかである。

 

これまで通り、国会で質問することや農作物増産に努力する類の戦いでは事態は改善しない。問題は戦後政治全体に存在するのだから、自民党や公明党を永田町から追い出す工夫を緻密に組上げる必要がある。これ以上の国会での議論は不要である。

 

そのためには似非野党を除いて連携を模索し、選挙制度改革を目指すべきである。一票の格差が二倍以内なら合憲だという最高裁を潰すべく行動すべきである。また、自由な報道を獲得するために、旧態依然たるテレビ局も攻撃すべきである。

 

そのような活動自体は小さい効果しか持たないかもしれないが、問題の在りかを明確に示し、それを除去する運動を的確に進めれば、その結果として同じ意識を国民と共有できることになるだろう。それに成功すれば、改革の確かな芽となる可能性が高い。


 

3)日本の閉じた言語空間とウクライナ戦争に関する誤解

 

ウクライナ戦争に関する日本の全てのマスコミ報道は、独裁国家での報道のように純粋且つ幼稚であった。その結果、「ウクライナ=善&ロシア=悪の構図」が、日本国民の頭を独占している。

 

2022年に発生したロシアのウクライナ侵攻を、事件以前の30年間の歴史を無視し、国際法違反という教条主義的解釈だけで報道することにより、報道や政治に携わる知識人にまでに無知の壁を築いて真実から遠ざけている。https://ameblo.jp/sherryl-824/entry-12887898228.html

 

その情報元の米国バイデン政権でも、当然情況は同じであった。上のの構図が、殆ど言論統制と言えるほどに報道機関を占領していた。しかし米国では、トランプ政権に代わって無知の壁は将に炎天下の氷のように解け去った。もし10年トランプ政権が続けば、報道機関の経営者は全て交代しているだろう。

 

ウクライナ戦争の歴史パターンは、日本が戦争に追い込まれたという太平洋戦争の歴史パターンと似ている。(補足3)Fルーズベルト政権は、諜報活動と様々な圧力によって日本を真珠湾攻撃に追い込んだ。この理解は現在広く日本国民に共有されているが、日本のウクライナ戦争に対する貧弱な理解は、この経験から学んでいないことを示している。(補足4)https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

 

昨日だったか、国際問題を取り扱うyoutuberの朝香豊氏が、「実はトランプはロシアを追い詰めている」という副題で動画を配信している。https://www.youtube.com/watch?v=Q5BUx-Zpo6Q

 

 

彼は、ウクライナ戦争に関しては日本のマスコミのこれまでの解釈:ロシアによる国際法違反の侵攻は悪であり、欧州各国の左派政権とバイデン政権の米国はウクライナのために支援してきたという説(上記のモデル)を、多くの自民党政治家を含め、そのまま受け入れている。(補足5)
 

そして、トランプは和平実現を言明しながらロシアを経済的に追い詰める戦略は、マッドマン理論で解釈できるとしている。私には全く訳が分からない。この動画は、日本の貧困な情報風土の被害を受けた知識人(彼はinfluencerである)の泣き言のように聞こえる。

 

トランプのロシアに対する圧力は単に戦争終結のためのものだろう。ウクライナ戦争について、バイデン政権や欧州のリベラル派政権の作戦に乗せられたウクライナに主要な責任を帰していることから、それは明らかだと思う。トランプのこの戦争の評価は、「ゼレンスキーは戦争を始めるべきではなかった」という言葉でも明らかである。

 

補足:

 

1)官僚の無謬性とは、すべての政策の責任は政府にあり、官僚は単にその実行のための下請け組織でしかないという意味である。(また、「ある政策を成功させる責任を負った当事者の組織は、その政策が失敗したときのことを考えたり議論したりしてはいけない」などということではない。日経新聞のこの記述は間違いである:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO30783840R20C18A5EN2000/
 

2)この論文にはアクセスできなかったが、インドのメディアが引用して議論していたのでそのサイトを以下に示しておく。https://timesofindia.indiatimes.com/world/us/devastating-impact-nuclear-war-in-us-would-wipe-out-300-million-report-says/articleshow/105248987.cms

 

3)トランプ氏は18日の記者会見で、ウクライナに戦争開始の責任があると示唆した。首相在任中、ウクライナ支援に尽力したジョンソン氏は太平洋戦争の発端となった旧日本軍による米ハワイの真珠湾攻撃に触れながら発言に異を唱えた。
 

4)ここでも再び原爆記念碑の言葉を引用する。「安らかに眠って下さい  過ちは 繰返しませぬから」という言葉には、戦争に導いた人たちや原爆を投下して国際法違反のジェノサイド行った人たちに対する怒りの感情など全く感じられない。国際法違反のジェノサイドの現場にこのような言葉で記念碑を建立したことの異常さをもっと真剣に日本人はレビューすべきである。

 

5)ほかに私の知る範囲では、多くの自民党政治家の他、右派の桜井よし子氏、経済学の上念司氏などウクライナ戦争をのモデルで理解している右派の人が多い。自民党政治家が国家よりも自身の権益を大事にする類の人物であることは既に書いているので、ここではあまり議論の対象としなかった。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12858831049.html

 

 


2025年2月22日土曜日

トランプ改革の今後に予想される壁


1)USAIDとウクライナ戦争

 

トランプ米大統領による米国の政治改革は革命的であり、その影響は世界に広がっている。DOGE(政府効率化部門)が主導するUSAID(米国国際開発庁)の調査の中で、その予算の大部分が所謂グローバリストの戦略に沿った諜報活動等に使われていたことや、それに絡んでの左派或いは似非左派(ネオコン)政治家の腐敗を明らかにした。ネオコン(新保守主義)は、民主党多数派とほぼ同じ思想のようなので以下区別しない。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12746100027.html

 

例えば、ウクライナでの反ロシアの活動支援などに多額のUSAIDの資金が、当時の国務次官補のビクトリア・ヌーランドを通して使用されたことから、ウクライナ戦争がウクライナを米国の代理とした米露戦争であるという本質が、この資金の流れから確認されることになった。
 

この戦争は、ロシアという膨大な大地の資源と経済の占有を目指す金融資本グループの戦略の一環だが、そのような策略を米国民から隠すには、飢餓対策や災害復旧などの対外支援を名目とするUSAIDの資金が便利だったのである。

 

ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前に、ことの本質を既にブログ記事として本サイトにアップしている。2004年の政変(オレンジ革命)から、米国のユダヤ人富豪のジョージ・ソロスの暗躍が明らかになっており、ソロスの財団(オープン・ソサエティー財団)へもUSAIDの資金が流れていたことも今回明らかになった。この戦争の経緯が世界中のある程度知的な層には既に明らかになっているのである。(補足1)

 

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12726626308.html

 

従って、ウクライナ戦争の終結には、米国とロシアが雑音なしに交渉することが必須である。その停戦&和平交渉が米露間でサウジアラビアにおいて始まった。NATOのメンバーでこの戦争の協力者であった英仏独等の左派政権は、その交渉の場に自分たちの椅子など無いことを知り、はしごを外された格好になったのでパニック状態のようだ。https://globe.asahi.com/article/15630313

 

例えば英国のスターマー(Sir Keir Starmer)首相やマクロン仏大統領は、自国軍のウクライナ派遣を言い出す始末。戦争当事者の一角にありながら、自軍を平和維持軍などの名目でウクライナに派遣するというのは、非常に奇妙な論理である。そのような発言は、停戦を妨害したいからとしか考えられない。https://jp.reuters.com/world/ukraine/DUFMRKXS6ZNYRJUAIFUUQDXGFU-2025-02-20/

 

対ソ防衛の同盟だったNATOは、ソ連崩壊後はロシア潰しの道具となり、米国の左派(=ネオコン)政権の道具となった。英仏独その他は、ウクライナ戦争においてNATO構成国としてこき使われたが、トランプ政権になって舞台に取り残されたピエロのような存在になったのだ。


 

2)戦争屋廃業後の米国及び世界の政治&経済

 

ただ、上記DOGEの政府効率化は、一次効果としては米国の経済にとって必ずしもプラスではないだろう。経済学的には政府サービスの減額であり、GDPの減少要因となるからである。政府が金を使えば、その政府債務は国債という国民の金融資産を生み、バラまかれた金とともに新しい投資の原資になる可能もある。因みにこの後半の理屈は、日本の財政拡大派政治家の論理でもある。
 

一般に、不正に多額の金を政府から得たとしても、その金を受け取った側がジャンジャン使えば、それはGDPの増加に寄与し、米国経済の数字を押し上げる作用をする。それは、金に困って銀行強盗等悪事を働く者が多くなって、犯人たちが得た金を消費に回せば、一次効果としてはGDP増加の働きがあるのと同様である。住みやすさとGDPの増加は必ずしも一致しない。

 

二次効果においても、銀行は警備に費用をかけるだろうし政府は警察官の増員をする等の対策が考えられ、この種のサービス業は繁盛する。悪事を切っ掛けにしてでも、経済の数字にはプラスの効果が大きい。
 

戦争の種を世界各地に植え付けて大きく育てあげ、“自由と民主主義の布教・定着”の名目で米国の若者を武器弾薬と共に送ってきたことも、米国を含む世界のGDP総計の増加に寄与してきた。その資金を様々なプロセスで米国に還流することで米国の世界経済支配のメカニズムとするのがネオコン戦争屋の政策だった。(補足2)
 

この軍産複合体メカニズムを、それへの言及を陰謀論というラベルを貼って潰してきたネオコンたちの企みとともに、金の流れという証拠とともに明らかにしたトランプ政権の人類への貢献は大きい。トランプ改革を最後まで進めるために、現在顕在化しつつある経済問題を是非解決してもらいたい。

 

現在の世界経済は、戦争屋であった米国を中心に市場経済のメカニズムで最適化された結果である。突然米国が戦争屋を廃業した時には、米国経済とともに世界経済の再構成が各国政府の努力と市場の原理で進むのを待たなければならない。国際政治の再構成も、その経済構造に適合する形に改変が進む筈である。

 

スキーのジャンプ競技のように、再度最適な経済構造や政治システムに軟着陸するには技術が必要だろう。トランプ政権の俊秀たちがそれを無事に成し遂げるまで、何とか米国及び世界の人たちの協力と忍耐を期待したい。


 

3)トランプの経済政策の問題点
 

トランプ政権の主要な課題は、米国政治の改革と米国民との約束である米国経済の好調維持である。ネオコン・グローバリストとの戦いも、米国民の支持を失ってしまえば「トランプ革命」は失敗に終わる。米国民に仕事と満足な給与を提供するにはどうすれば良いかを考えた結果、トランプは諸外国からの輸入品に高額の関税をかけると言い出した。

 

米国経済は、デジタル革命などで世界を席捲して多額の収入を得るなど、新規産業や金融業等においてはほぼ順調である。ただ、古くからの製造業においては外国に依存する傾向が強くなり、所謂「産業の空洞化」が進行している。(補足3)https://ameblo.jp/sherryl-824/entry-12886787053.html
 

産業を士農工商で分類すれば、米国は「工」の部分が非常に弱くなっているのである。「商」の部分でも金融業は別格であり経済だけでなく政治も牛耳るようになった。金融業(今では投資業)が主導しただろうWTO体制により、製造業の現場を低賃金国に移した結果、職を失ったブルーカラーの人々が下層に追いやられ、社会に分断を生じているのが米国の現状である。

 

労働者の味方となる筈だった(過去形です)左派政治家は、一般に自分勝手な(=想像力に欠ける)理想主義者が多い。物事をマクロにしか考えず、人の心理や現状の複雑さ等ミクロを排除して議論する傾向がある。彼らは思考モデルを描く想像力だけでなく、自身の欲望への抵抗力にも欠けるようで、過去の偉人の思考モデルと巨大資本の要請に唯々諾々となり、ブルーカラーの人たちの窮状など目に入らない。

 

産業の空洞化に加えて新たに加わる軍需産業や政府職員という“独占企業”から労働市場に放出されるブルーカラーたちに仕事と給与を与えることが、トランプ政権の偉業の背後で生じた大問題である。(補足4)トランプは製造業の米国回帰を考え、工業製品の輸入に高額関税をかけるという方針を出した。米国が、戦争屋廃業に伴う寒風を貿易障壁で一時的に凌ぐのは止むを得ないかもしれない。

 

関税を上げると、トヨタやホンダも米国内に工場を移し、仕事の確保に貢献する。米国の高い人件費を支払っても、そこでの車の競争力は関税分だけ有利となるのである。

 

このトランプの方針は、これまでの自由貿易の拡大の方向(WTO体制)とは真逆であり、米国の物価を上昇させるだけでなく米国及び世界の経済にマイナスとなる可能性が大きい。米国及び世界の経済的繁栄のメカニズムは、この経済のグローバル化にあったことは間違いないからである。
 

現在の米国を始めとする先進諸国が享受している豊かな経済は、適材を世界に探し、適所で生産し、それを短時間で世界に輸送するという政治経済システム(つまりWTO体制)で構築されてきた。その適材と適所は、自由な市場経済の結果として決定されている。そのシステムは、資本の移動を自由にし、関税は無くする方向で成長してきた。

 

それでも具体的な資本規制や関税率は、主権国家が出来るだけ豊かな国民生活を実現するという目的をもって決定することが出来た。トランプは、その時間(歴史)の流れを逆方向にするような性急な改革案を出している様にも見えないこともないのだが、ここは世界にある程度の寛容を期待する。

 

この問題の解決には、友好国間の連携が必要である。トランプ政権にとってもっとも簡単な解決策は、力で諸外国に犠牲を強いる方法であるが、それは友好国の信頼感を破壊し、結果として世界の経済をより深刻な事態にする可能性がある。戦争屋を追放したのなら、その予算を含めてトータルとして富は十分に存在する。その再分配を考えるだけだから、不可能では無い筈。

 

主権国家のローカルな事情とそこで暮す人々の生活と文化を無視して、地球国家を建設するというグローバリストのやり方も大きな問題だが(補足5)、西欧が築き上げた近代の国際政治の文化を全否定して、時代の流れを逆にしようとするのも問題なので、あくまで過渡的な手段としてもらいたい。


 

4)終わりに:トランプ革命の方法についての独自のモデル

 

地球上の資源が有限であることや良好な環境を維持する上で許容される老廃物の量に上限があるなどの理由により、地球人口にも上限があるだろう。ハーバーボッシュ法(補足6)により食料による人口上限が一時的取り払われたが、それも再び人口上限決定因子となってきた。所謂グローバリストたちは、その問題を病的に恐れているように見える。

 

彼らが世界帝国の建設を目指す背景には、既に上限を突破したかも知れない世界人口を抑制する目的がある。彼らが秘密裏に考える解決法の背後には、非エリートの一般的な人たちは、自分たちエリートの支配下にあって当然だという思想があるようだ。
 

世界の人口問題は多くの人たちが経済的に十分豊かでない現在、緊急の問題ではない。しかし、現在グローバリストの中心に居る人たちの相対的力は、世界の金融経済の多くを保持出来ている今がピークである。彼らの多くは地球上で国家を持たないマイノリティであったことから、自分たちに有利に力で解決できる時間は限られており、その意味で彼らにとって緊急の問題だと言える。

 

トランプを支持する世界の人々は、政治および文化のグローバル化という化粧をした、世界帝国の建設に反対している。トランプは、非常に手ごわいグローバリストの周辺にあって、左足をイスラエルにおいて、つまり主権国家イスラエルを強固にするという方針で、この戦いを続けている。左足をそこに置く理由は、現在のグローバルエリートの力を分散させるためである。(補足7)

 

トランプの重点は右足である米国に置いて居る。米国を偉大にするという政治スローガンをテコにして、このグローバリストの企みに反対している。これに成功するにはバランス感覚が必要である。世界は、このことを知ってトランプに協力すべきである。


 

補足:

 

1)悪を隠す為に善の衣を着せることは、古くからの知恵なのだろう。また、大国であっても彼らマイノリティが牛耳る場合、敵を創造して滅ぼすには決して自軍が先制攻撃してはならない。自国の大衆を味方にするため、敵に悪の着物を着せ、敵を窮地に陥れて怒らせ、先制攻撃させるというのも彼らの知恵である。(例えば:真珠湾攻撃、トンキン湾事件) 自国大衆には敵が卑怯にも先制攻撃をしてきたとマスコミを利用し言いふらすのである。
 

2)この間の最大の被害者は、自分たちの大切な息子を戦場に送らなければならなかった米国の一般家庭である。現在彼らはほぼ目覚めている。友好国は彼らと連携してトランプの革命の成功のために協力する必要があると思う。

 

3)経済の発展によって、高機能の製品や新しいタイプのサービスなどが供給され、仕事はより専門的になる。それにより労働生産性が向上し、給与もそれに比例して上昇する。ただこれまでの品物を製造する企業は、関税を支払ってでも人件費を抑えるために工場を他国に移転した方が有利な場合が多い。その結果、仕事を奪われるブルーカラーが生まれる。彼らは、生活維持のためにより専門性の低い仕事につかざるを得ないが、他国よりもかなり高い給与をもらわないと自分の国で生きていくのが困難となる。その問題の解決は、所得の再分配という形で政治が行う場合が多い。

 

4)トランプのMAGA (make america great again) は、米国民マジョリティを味方にするためのキャッチフレーズである。トランプ政権の仲間たち、イーロン・マスクやロバート・ケネディ・Jr らの視野には米国だけでなく世界全体が入っている。MAGAは、政治家トランプの米国向けのキャッチフレーズである。MAGAを達成するには世界を視野に入れ、世界とともに繁栄させなければならないと考えてくれていることを切に願う。

 

5)世界が統一の方向に向かうのは、人類という認識がある以上、当然の方向だろう。しかし、ローカルな歴史を無視するわけにはいかないので、本来かなりの長時間を要する。更に、人類の一部が他を支配するという類の構造であってはならない。この考え方が非グローバリストの多くのものとするなら、真の理想主義者は非グローバリスト側である。グローバリストたちを左翼と呼ぶが、彼らの真実は民族主義者であり利己主義者である。何れにしても、左翼とか右翼と言う表現は廃止すべきである。

 

6)ハーバー・ボッシュ法は窒素と水素から直接アンモニアを合成する化学工業における大発明である。アンモニアは硝安や硫安などの窒素肥料となる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jieenermix/100/6/100_690/_pdf/-char/ja

 

7)トランプの娘夫婦はユダヤ人である。トランプは平和が第一だと考えるユダヤ人一般を愛する人だろう。そのような人たちが住むイスラエルを安全で強力な国にしたいと思っているだろう。しかし、世界各地で戦争を引き起こし、世界を占有することを目指す人たちには強く反対している。トランプは人類一般を大事に考える人物であると、私は思っている。

 

 (編集あり:16;00;翌朝編集とともに補足7を追加して最終稿とする)