ガザ地区での停戦はトランプ政権前の出来事だが、それは必ずしもバイデン政権の成果とは言えない。トランプ側の働きかけの効果が実を結んだという考え方の方がより正確だろう。イスラエルの現政権とトランプ氏との間には強い信頼関係が存在し、アメリカ大統領となるトランプ氏の圧力をネタニヤフ政権も無視でき無かったと考えられる。https://www.asahi.com/articles/AST1J2FHDT1JOXIE01QM.html
停戦後のガザは束の間かもしれないが平和であり、人質交換なども行われている。ただし、ヨルダン川西岸地区での戦闘は、以前からのことだが、時々発生しているようである。https://www.bbc.com/japanese/topics/cw5wn2e9rpnt
そんな中、ガザの住民をヨルダンやエジプトに移住させるべきだという先日(1月25日)のトランプ大統領の発言は、方々で悪意をともなって報じられている。例えばBBCニュースは、以下のように報じている。
トランプ氏はガザを「解体現場」と表現。「おそらく150万人ほどの人がいる。私たちはすべて一掃する」と述べた。また、こうした動きは「一時的かもしれない」し「長期的かもしれない」とした。https://www.bbc.com/japanese/articles/cj48ydjjen8o
トランプのある記者に対する専用機での発言は、And I’d like Egypt to take people and I’d like Jordan to take people. そして続いて I couldと言いかけ、一拍置いて I mean, you’re talking about probably a million and a half people、そして And we just clean out that whole thing. だった。
ガーディアンの下のサイトにその時の動画が字幕つきでアップされている。
この発言の全体から、And we just clean out that whole thingの意味は、「我々は全ての問題を取り合えず無くする」という意味だと分かるだろう。勿論、ガザ地区の民族浄化計画 ethnic cleansing planとは全く無縁であるとは証明でき無いが、トランプ大統領の意図は全くことなると思う。
トランプ氏の発言は、ガザ地区はがれきの山と化しているので、差し当たりその地区のパレスチナ人を周辺諸国に受け入れてもらい、その後は自然の成り行き(神の意思)に任せるべきだというくらいの意味だろう。(補足1)
更にその記者は、それは一時的にですか? それとも、戻れるのでしょうか?と問うた。その質問にトランプ大統領は、どちらでもあり得る。一時的かもしれないし、長期的かもしれないと答えた。これは、私に出来ることはそこまでであると言う意味を言外に含むのだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=DA095Kj6gSo&lc=Ugy094dZsZ8CcvsIiu54AaABAg
2)ガザ地区のパレスチナ人の運命
この問題を数歩下がって思考の枠組みを拡大して考えてみる。
米国におけるイスラエルロビーの力は巨大である。イスラエルと米国の間は極めて近く、一つと考える人まで存在する位である。(補足2)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241023/k10014617101000.html
上の記事の中に引用されている米国カジノ王、ミリアム・アデルソン氏の次の言葉がそれを良く表している。
「私たちは誇り高きユダヤ人であり、誇り高きイスラエル人であり、誇り高きアメリカ人です。私たちを支持する人たちに敬意を表しましょう」
在米の金融エリートたちは、米国政権の背後にあって世界の政治と経済を半ば支配している。彼らの一部の勢力はグローバリストとして、世界帝国の実現を企んでいる。そのエリートたちの多くは、等しくイスラエルと非常に親密な関係にある。彼らの計画の中には、イスラエルの人たちが期待する大イスラエルの達成も自然に含まれるだろう。
ただ、ユダヤ教正統派の人たちやイスラエルに住むかなりの人たちは、大イスラエルの達成は神によってなされる筈であり、人間の力で達成しようとするのは間違いであると考えている。外国に住むディアスポラのユダヤ人たちのシオニズム運動には反対しているのである。
自分たちの国を守ることが大切であると主権国家体制を維持したい反グローバリストたちが、このような経済的にも政治的にも力のあるエリートたちの世界支配の企みを覆すためには、イスラエルの反シオニズムのユダヤ人たちの力を借りる必要がある。その為には、現イスラエル首相のネタニヤフを反グローバリスト側に引き込むことが賢明だろう。
そのような背景を考えた場合、現状の廃墟となったガザ地区を再建したのちにパレスチナのアラブ人の方々にプレゼントすることは、理想論として語るとしても現実論として追及すべきとは思えない。
上記トランプ大統領の発言は、そのような微妙な意味を表現したのだろう。イスラエルのシオニズム運動に反対する人たちが力を増して、彼ら当事者の考えとして上記理想論が現実となればよい。しかし、そのようにはならない可能性の方が圧倒的に大きい。
ガザ地区の住人であるパレスチナ人が、その後どのような未来を迎えるかは神のみぞ知ることであり、トランプ大統領の能力の範囲を超える。エジプトやヨルダンでの移住生活が、「一時的かもしれないし、長期的かもしれない。」
のは、トランプ氏の力の及ぶ範囲には無いと言うことである。
トランプ政治の本質を知る為には、トランプ自身の現実的且つ直接的な言葉を良く分析すべきだが、例えばアルゼンチンのミレイ大統領の演説なども非常に参考になる。https://www.youtube.com/watch?v=Yd2Oc5q_Mu0
このダボス会議での演説の最初の方で、グローバリストと戦っている人たちとして、米国のトランプ、ハンガリーのオルバン、イタリアのメローニのほかに、イスラエルのネタニヤフ首相の名もあげている。それは、ハマス対イスラエルの戦争を切っ掛けにトランプ政権がイスラエルの反感を買って潰されてしまうのを怖れるからだろう。(補足2)
因みに、アルゼンチンのミレイ大統領は、グローバリストたちの目的は世界の人口削減にあると明確に言っている。我々日本国民や多くの地球人にとっては恐怖のシナリオである彼らの企みを砕くには、近代の価値観に足をすくわれてはならない。
上のNHKの記事を読めばわかるように、カマラハリスはグローバリストの端に位置しながら、ハマス・イスラエル戦争でパレスチナ側に立ち過ぎて、大統領選に敗れた。トランプの勝利は、彼のこれまでの姿勢を含めてイスラエルの味方として評価された結果である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12847903412.html
トランプ大統領の反グローバリストの思想は、現実的な政治空間に投影された結果である。それを反グローバリストだと自認している人たちがイマジナリーな空間の理想論で批判するのは、自分で自分の首を絞める愚挙である。
補足:
1)clean out は全てを取り除くと言う意味であり、瓦礫の山と化したガザ地区の問題、このままでは生活が出来ない150万人ほどのパレスチナの人たちの今後の問題などを取り合えず解決するという意味だろう。この発言中のjustという単語は、完全で理想的な解決ではないことをあらわしている。 Chat GPTに会話の主を伏せて聞いたところ、「単に/ただ」 (merely, simply) 、「とにかく/とりあえず」 (simply, without hesitation) などの意味がこのjustの意味として考えられるそうである。
2)ネタニヤフ首相はイスラエルの防衛のためにハマスと戦っているのは事実である。それは主権国家としてのイスラエルの防衛と言えなくもない。しかし、グローバリストの世界帝国実現が、大イスラエルをはじめユダヤ人の棲み処を世界に拡大する運動だとすれば、反対する筈はないだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿