1)北朝鮮の申出により、オリンピック開会式に出席していた米国ペンス副大統領と北朝鮮首脳との間で米朝会談が予定されていたが、北朝鮮が2時間前に断ったと米国マスコミが報じた。(2月20日ワシントン・ポスト)のこの件、米国の対話姿勢の確認のために、北朝鮮が最初から断ることを前提に申し込んだものらしい。この分析は、評論家の佐藤優氏により為されたもので、私は今回の佐藤氏の分析を流石だと思った。
日本は米国の犬であるから圧力一辺倒だが、その飼主はもっと自分に損害が及ばない方向でこの問題の解決を考えているのである。https://www.youtube.com/watch?v=ub_aAOpFn5s
この件当初佐藤氏は、韓国がオリンピックを利用して、北朝鮮問題の平和的解決の糸口を両国に見つけさせようとアレンジしたと考えていた。日本政府を始め多くの評論家が解釈を間違ったことは、日本がこの問題を全く理解していないこと、そして、日本政府も秘密裏にことが進むようになれば所詮蚊帳の外であることを証明したことになる。
会談の約束をキャンセルすることが北朝鮮のシナリオ通りだと佐藤氏が考える根拠は、金正恩の妹である金与正氏との会談が失敗した場合、金王朝に対する威厳が傷つけられ、それがやがて金正恩の立場を悪くする可能性が高いからである。(補足1)参照。 最初から米朝和平という向こう岸に渡る為の“瀬踏み”だったというのだ。米国に平和的解決の意志があるという確認が出来たので、北朝鮮は次に米韓軍事演習を韓国側からの拒絶するように要請するだろう。そして、文在寅大統領はそれに合意するだろう。
2)この外交的秘密がワシントン・ポストにより明らかにされた背景を佐藤優氏は、“深読み”と断わりながら語っている。「トランプ政権は、ICBMは許さないが中距離核までの保持を許すかも知れない。そう危惧する人たち(補足2)が、まさに今回そのような交渉をする可能性があったのだと言うために上記の話をリークしたのだろう」と分析した。そして、佐藤氏は「日本側にはそのような米国の姿勢に全く気付いていないし、考慮していない」と続けた。
実際、官房長官はテレビで米国の姿勢は、これまで通り強い圧力をかけ続けるという話に終始しているし、新聞は上記佐藤氏のような分析を掲載していない。産経新聞によると:
菅義偉官房長官は21日の記者会見で、米朝会談を北朝鮮側が拒否したことについて、「対話のための対話は全く意味がない。北朝鮮に政策を変えさせるためにはあらゆる手段を通じて圧力を最大限にし、北朝鮮から対話を求めてくる状況を作る必要がある」と述べた。
また、「安倍晋三首相とペンス副大統領は十分な時間をかけて、訪韓する北朝鮮代表団への対応などについて綿密にすりあわせを行い、必要な情報共有はしている」と強調し、事前に米国から情報がもたらされていたことを示唆した。
引用文の前半は意味不明の文章になっている。茶飲み友達でもない間柄で「対話の為の対話」などであるはずがない。また今回、北朝鮮から話し合いを求めてきたのだから、(補足3)これまでの圧力が効いたという評価しているようでもない。日本側はそのような事態を理解していないと佐藤氏が言う通り、首相や官房長官などは当惑している様である。
圧力を強めれば北朝鮮の非核化が実現するとは、いくら目出度い日本政府でも考えてはいないだろう。日本政府が考えているのは、圧力で経済的にも困窮した北朝鮮に内乱が起こり、臨時政府を相手になら北朝鮮の非核化ができるという筋書きだろう。それは余りにも運任せである。
その姿勢を貫いた末に最悪の戦争になれば、日本に何万—何百万人という死者を出すだろう。その可能性を排除して北朝鮮問題を解決する方法は、北朝鮮に核兵器保持を認めて米朝和平を行うことのみである。日本は差し当たり解決する当事者ではない(被害を受けると言う意味の当事者ではある)ので、その筋書きも考えて、日本は独自の核戦略と外交を並行した筋書きとして考えるべきだと18日のブログに書いた。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43573275.html
トランプ大統領が北朝鮮問題を直接軍事攻撃で解決することなど考えていないだろう(補足4)し、その考えが万が一あったとしても韓国はそれに従わないだろう。韓国が同意しないで、第二次朝鮮戦争を始めることは、米国でも出来ない。韓国が向こう岸に行けば、覇権の谷間に日本がなり、それは悲劇的シナリオである。
補足:
1)ペンス副大統領と会談が行われたとしても、おそらく殆ど何の進展も無いように見えるだろう。それが北朝鮮にとって、中距離核兵器まで保持した形の決着への大事な一歩となる会談であっても、これまで国内に行ってきた金正恩の「米国など蹴散らしてやる」レベルのアナウンスを基準にした場合、100%失敗に終わった印象を国内に与え、政権崩壊の一歩になり得る。
Kim Yong Namとの会談として申し込んでいたのなら、会談できただろう。それが出来なかったのは「金正恩でないと会談できない」という米側の返答を恐れたのだろう。
http://pqasb.pqarchiver.com/washingtonpost/doc/2006669603.html?FMT=FT&FMTS=CITE:FT&date=Feb+21%2C+2018&author=Parker%2C+Ashley&desc=N.+Koreans%2C+Pence+were+to+have+met+in+S.+Korea&free=1
2)何が何でも北朝鮮を非核化したいと思う人たちである。この好戦的な人たちは、強力残虐な高度軍事技術の国際的デモンストレーションをしたいのかもしれない。多数の死者がアジア人に出ても、「自国の防衛の為だろう」と何食わぬ顔で言える人達かもしれない。
3)ワシントン・ポストの記事によると、“It(会議)began to take shape when the CIA gotword that the North Koreans wanted to meet with Pence when he was on the KoreanPeninsula, according to a senior White House official.”ホワイトハウスの高官によると、CIAが北朝鮮側の訪韓中にペンス副大統領と会談したいという言葉を得て話が具体化した。つまり、北朝鮮の意志により会談の設定が為されたのである。10日土曜日の午後早く青瓦台(South Korea's Blue House)で、会談は予定されていたとある。
4)大きい声で軍事的オプションの可能性を言っているのは、米国の犬を買って出た人だろう。
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