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2023年10月22日日曜日

靖国神社例大祭への閣僚と国会議員団の参拝に反対する

靖国参拝の秋の例大祭が1017日から19日まで行なわれた。そこに18日、新藤経産大臣、高市安保担当大臣が参拝した。高市氏は記者に「国策に殉じられた方々の御霊に尊崇の念をもって感謝の誠を捧げてまいりました」と語った。

 

翌日には、超党派の国会議員96人が集団で参拝をした。その中の逢沢一郎氏は、「悲惨な戦争の記録や記憶を決して風化をさせてしまうようなことがあってはならない」と発言している。岸田総理は、真榊を私費で奉納したが参拝しなかった。


これをニュース討論番組としてアベマTVが報じ、それが動画として配信されている。https://www.youtube.com/watch?v=RT-qmWbs_hk

 

 

その動画には、中国報道官が「(閣僚の靖国参拝は)軍国主義の象徴である」と非難している様子や、「靖国神社にA級戦犯が合祀されているという中で行くことは適切なことではない」と語る野党立憲民主党の岡田幹事長の姿もあった。


この政府閣僚による靖国参拝の是非については、国政を担う政治家は中国等の連合国側の反対をおしきって靖国に参拝すべきではないと、その根拠とともに以前のブログ記事に書いた。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12704328039.html

 

また、高市早苗議員の靖国参拝の姿勢を批判した記事も今年8月に書いている。

 

 

再びこの問題をしつこく取り上げるのは、日本の政治家が何も学ばないで、愚行を繰り返すからである。今回は、出来るだけ異なる側面から与党政治家の靖国参拝を考えてみる。


現職閣僚の靖国参拝に反対する理由は、簡単である。

 

日本は、第二次大戦後サンフランシスコ平和条約(講和条約)を締結することで、国際社会に復帰できた。その平和条約の第11条に、東京裁判の判決を受け入れることと書かれている。政府要人の靖国参拝は、それを無視した行為になり得るからである。(補足1)

 

つまり、東京裁判で「平和に対する罪」を犯し死刑となった元軍人を神として祀っている靖国神社に、しかも例大祭の日を選んで参拝することは、講和条約を無視する行為として批判されても仕方がない。日本はその批判を避けるために、現職国会議員等は靖国参拝を控えるべきである

 

 

1)東京裁判について

 

国際関係は本質としてアナーキー(無政府状態)である。従って、戦争時の日本の首相や閣僚たちを裁判の形で罰するというのは、西欧の政治文化の都合で行われた茶番劇と考えるべきであり、東京裁判の判決を通常の法解釈で論じることは無意味である。

(伊藤貫さんの国際関係はアナーキーである:https://www.youtube.com/watch?v=AT3H75BaqOU

 

上記アベマTV動画8分頃から始まる稲田元防衛大臣の「東京裁判の日本帝国指導者に対する死刑判決は、事後法で裁いた結果であり、法適用の原則に反している」との主張は、国内法に関する考え方では正しくとも、元々茶番の東京裁判の批判には無力である。

 

また、この場でこの様に発言することは、稲田氏はサンフランシスコ平和条約の11条を受け入れていないことを自ら証明している。戦勝国の歴史の真実や法的正義を否定するのは、講和条約で達成した国際的秩序の“ぶち壊し”になる。

 

つまり、現在の国際的枠組の下では東条英機以下の名誉回復は不可能だろう。それでも尚、我慢ならないというのなら、日本国が主導して新しい国際的枠組みを作り上げなければならない。その道を進めば戦争になるだろう。ただ、戦争に勝てば、日本国の歴史認識が国際標準となる。(補足2)
 

また、上に引用したように、先日靖国神社に参拝した際に高市早苗氏は「国策に殉じられた方々の御霊に尊崇の念をもって。。。」と語った。

 

現在の日本国は大日本帝国の延長上にあり、ドイツのように新しい国家になった訳ではない。従って、上記高市氏の戦前の“国策肯定発言”は周辺諸国や現在の覇権国に軍国主義の復活だとして非難されても仕方がない。(補足3)

 

以上のことを与党自民党の議員たちは全くわかっていないのか、それを承知で靖国参拝しているのかわからない。多分、現職の政治家に向かって失礼だが、国際社会の枠組みなんて全くわかっていないのだろう。

 

 

2)政府の見解

 

今回の動画の10分ころで、“政府要人の靖国参拝に関する外務省の見解”を紹介している。それは、外務省のHPにある小泉首相が参拝した時の説明文、或いはその繰り返しである。(補足4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/yasukuni/tachiba.html

 

そこには、「日本の平和と繁栄を守ることの重要性を自覚し、不戦の誓いを込めて、総理の職務としてではなく、一人の国民としての立場で靖国神社に参拝している」とか「総理は(一部省略)A級戦犯のために参拝しているのではなく、また、日本が極東国際軍事裁判の結果を受け入れていることを明言している」とかの言い訳がなされている。
 

不戦の誓いは目には見えないし、一人の国民としてなのか日本国総理大臣としてなのかも、口では何とでも言える。「私人としての参拝だ」とか「A級戦犯の霊に参拝したのではない」などというのも、言い訳としか聞こえないだろう。

 

現職閣僚や首相の靖国参拝を批判する権利は戦勝国側にある。この件については、日本政府が何を言っても無駄である。この大日本帝国の名誉回復に拘る頑迷固陋な日本に対して、連合国側つまり国連は日本に敵国条項を残しているのである。

 

この敵国(Enemy states)条項に勝手に「旧」の字をつけて「旧敵国条項」と呼び、United Nations (連合国)を勝手に国際連合と訳す日本政府である。日本国民を騙すためには、この種の言葉使いは必要なのだろう。上記の言い訳は同じレベルである。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/un_kaikaku/j_yusen.html

 


 

補足:


1)サンフランシスコ平和条約(Treaty of Peace with Japan)の原文と翻訳は以下のサイトで見ることが出来る。

https://www.documentcloud.org/documents/1338718-san-francisco-peace-treaty-1951 

http://www. chukai.ne.jp/~masago/sanfran.html


その11条には、以下のように書かれている:「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」

 

)この国際関係の理解は、領土問題の理解にも必要である。日本維新の会の丸山穂高議員が元島民に「(戦争をしないと)取り返せない」などと発言して、除名処分された。 https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/17546.html 

丸山議員の発言は、ロシアが返還に応じる様子が全くない現状では、正しい。他の国会議員の頓珍漢な意見は本当に情けない。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516860.html

 

3)日本国憲法は明治憲法に則って行われたので、現在の日本は大日本帝国の延長上にある。その国策に殉じた方に尊崇の念を表明し感謝することは、近衛内閣や東条内閣の閣僚たちの進めた国策の肯定にあたる。もし近衛内閣や東条内閣の戦争遂行が日本国民にとって間違った国策だったなら、失われた多くの国民の命を考えても、評価したり感謝してもらっては困る。

一般の兵の命がもし無駄に失われたのなら、その失敗を戦後の政治に反映すべきだった。つまり、戦前の指導者は全て引責引退すべきだった。しかし、そうはしなかった。全く理解できない、高市は。

 

4)靖国参拝に対する国際的な批判は、中曽根首相が首相として靖国参拝したときが初めてであり、それまでは何も言わなかったではないかと稲田氏は語っている。これも良く聞く話だが、首相参拝で初めて諸外国は日本国政府首脳は本心から東京裁判を受け入れてはいないことを知ったのだろう。それ故、首相参拝は米国からも非難されるのである。


13時30、編集あり

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