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2024年2月13日火曜日

(プーチン)ロシアはNATOに加盟可能か?;(クリントン)面白い、イエスだと思う

タッカー・カールソンがロシア大統領プーチンに対しウクライナ戦争などに関してインタビューを2月6日行った。それを2月9日にX(旧ツイッター)上で動画として発表した。(追補1)本ブログ記事の表題は、インタビューの最初の部分で紹介された、プーチンがロシア大統領になった直後に訪露したクリントン米大統領との会話の一部である。https://twitter.com/TuckerCarlson 

 (下はyoutube動画の引用ですが、削除の場合X上の動画をご覧ください)

 

 

 

1)何故プーチンへのインタビューを実行するのか

 

その一つ前のX上の動画で、彼は何故このインタビューを行なったかについて説明しているので、先ずそれを独自の要約で紹介しておく:https://twitter.com/TuckerCarlson/status/1754939251257475555

 

自分たちジャーナリストは人々に真実を知らせる義務がある。それにも拘わらずウクライナ戦争勃発後に西欧諸国から一人のジャーナリストもプーチンに話を聞いていない。米国民はこの戦争に多くのお金を支払っているのだから、そしてこの戦争が世界を大きく変えようとしているのだから、真実を知るべきである。しかし、マスコミの情報口は破壊されており、米国民は何も知らないのが現状である。受け身でいるべきではない。

 

クライナ戦争は人類の大災害である。欧州では大きな人口の国であるウクライナの若者の一つの世代が消えようとしている。更に世界政治と経済への長期影響は甚大で、第二次大戦後80年続いた米ドル支配の世界経済を大きく変えようとしている。世界の殆どはこのことをよく知っている。アジアや中東で聞いてみれば良い。しかし、英語圏の人々は殆ど気付いていない。誰も真実を知らせていないからだ。

 

私は。プーチンを愛しているのではない。米国を愛しているから、バイデン政権の妨害を振り切ってモスクワに来た

 

 

2)ロシアの歴史とウクライナ: ウクライナはレーニンによる人工国家である

 

プーチンとの2時間以上に亘るインタビューだが、最初の凡そ30分をロシアとウクライナの歴史を解説することに使っている。今回はその部分のみに注目して記事を書く。それは、ウクライナ戦争の背景を知る上で最も大事な部分だからである。

 

ロシアは、862年にリューリク(北欧バイキング)により北部のノブゴロドで建国され、その後882年にその後継者のオレグ王子がキエフを征服し、一つの権力の下で東スラヴの北部と南部の土地を統一した。その後988年にリューリクの曾孫により国教として正教(ロシア正教)が採用された。

 

ノブゴロド とキエフ(ウクライナ)が、チンギスハーンの侵略以前のロシア帝国の中心的都市であったことと、その一つの明確な領域の中に、ロシア語とロシア正教と統一された経済などが成立していたと言うロシア帝国の説明である。そのロシア誕生からの歴史知識がタッカーとの話の基礎として重要なのだろう。この話はウイキペディアにもある。それによれば、これはロシア、ウクライナ、ベラルーシに共通のキエフ大公国までの歴史である。ノブゴロドの地には、ロシア建国1000年を祝う碑が存在する。

 

その続きの歴史の話の中で注目すべきなのは、ソ連建国の英雄であるボルシェビキのレーニンは、ソ連の中でウクライナの領域を明確にすることに積極的だったと語っている点である。つまり、ウクライナはレーニンによる人工国家であるとプーチンは考えているのである。その目的についてレーニンらがどのように考えたは語られていない。

 

この辺りの国境画定の歴史の詳細は、ハンガリー、ルーマニア、ポーランドなど周辺国にも、自分たちが主張し得る潜在的領有権との絡みで興味があるだろう。プーチンは、場合によっては、現在のウクライナはこれらにロシアを加えた国々に分割される可能性もあったと言いたいのかもしれない。(この部分については、下に引用のLizzy Channelの動画をご覧ください。)

 

 

3)ソ連崩壊時にロシア幹部は、西側先進国に理解されようとソ連解体にむしろ積極的だった

 

この歴史に関する話が近代に差し掛かってから、YoutubeのLizzyさんの翻訳吹き替え版を参考にさせてもらった。幾つかの部分でリジーさんの訳と異なる解釈にしたが、大部分はリジーさんの訳を元のタッカーカールソンのX上の動画で自分の能力の範囲で確認して進んだ。https://www.youtube.com/watch?v=uVXqpCpVJqU

 

 

プーチンは、「1991年のソ連の崩壊は、当時のロシアの指導部が引き起し、その領地をウクライナに惜しみなく分配した。そのロシア指導部が何によって動かされていたか分からないが、それで上手くいくと考えた理由は、想像するに、ロシアとウクライナの関係の基本として、共通言語を持つことと信じていたことだろう」と語っている。

 

「当時ウクライナ地区住民の90%がロシア語を話していたことや、経済や宗教(ロシア正教)においても共通だった」、また、米国民の方々に是非理解してほしいこととして:「当時のロシア指導部は、ソ連解体に同意し積極的に参加していたこと、かれらは西側先進国に協力的であり理解されようとしていた」と語る。

 

「当時、ドイツのエゴンバール(補足1)などは、ロシアを含めたヨーロッパと北米に新しい安全保障体制を作り上げるべきだと考え、(ソ連に対抗するための)NATOは拡大すべきではないとの考えを示していた。しかし、欧米は彼の意見に耳を貸さなかった」、「そして全ては彼(エゴンバール)が言う通りになった」と語っている。この下線部分は危惧した通りにと解すべきだろう。(同時通訳が間違っている可能性もある。)

 

タッカーは、「何が、西側の政策担当者にロシアを倒さなければならないと考えさせたのか?」と問うた。


それに対してプーチンは、「西側諸国は強いロシアを恐れる以上に強い中国を恐れている」とビスマルクの言葉を利用しながら言っているが、その詳細には立ち入ることを止めている。そして、米国が我々を騙した。NATOは約束を反故にして5度拡大したことを語る。(補足2)

 

兎に角、ソ連崩壊の1991年以後、ロシアがこれから文明国の兄弟として迎えられると期待したが、このようなことにはならなかった。我々はあなた方と同じ市場経済の国であり、共産党の力は無い。エリツインは米国議会で演説し、全て西側のルールを受け入れるというシグナルを送った。

 

しかし、その後のユーゴスラビアの紛争などで、米国は国際法に違反してベオグラード(ユーゴスラビアの首都)空爆を開始し、(紛争の)遺伝子をビンから出した。(補足3)

 

ロシアの怒りの抗議にたいして、「米国は(今でも国際法を持ち出すくせに、)国連憲章と国際法は時代遅れとなった。」と言ったのである。ユーゴスラビアの件は終わり、私は2000年にロシア大統領になり、再び西側との関係樹立のドアを開けようとした。

 

ここクレムリンでもう直ぐ辞任するクリントン米国大統領に「ロシアがNATOに加盟すると言ったら、実現するだろうか?」と尋ねた時、ビル・クリントンは「それは興味ある話しだ、実現すると思う」と答えた。「その後夕食の時にクリントンは、我々のチームで話をしたが、今は無理だ。彼に聞いてくれ」と言った。

 

タッカーは、「もし、クリントンがイエスと言えば、ロシアはNATOに加盟しましたか?」と質問すると、プーチンは、「私は指導者の立場を知りたかったことが不誠実なのかどうか。。」と言いかけるが、重ねて同じ質問をしたタッカーに、「間違いなく和解のプロセスが始まっていただろう」と答えた。

 

そこでタッカーは、「あなたはこの対応を恨んでいると思うが、何故冷戦が終結しても、欧米はあなた方を拒絶したと思いますか? あなたの視点から答えてください」と問う。プーチンは「別に恨んでなんかいない。我々がそのような関係では歓迎されないという事実を理解したというだけだ。そうなら別の関係樹立の基盤を探そうと思った」「冷戦が終わっても、米国がそのような対応をする理由は、あなた方のリーダーに聞いてください」と答えた。

 

ここでリーダーとは上のクリントン大統領の話が示すように、米国大統領ではない。その陰に隠れた巨大勢力である。その暗示を得たところで、長くなるのでここで今回の区切りとします。

 

終わりに:

 

ウクライナ戦争に関する部分で、プーチンはバイデンは自分の意思で政治を行っているのではないと明確に言っている。つまり、影の勢力の存在は世界中の反グローバリスト(前回記事を参照)の人たちには知れわたっている。その意味で、インタビューの一番重要だと思われる部分については、我々にはほとんど予想の通りであり、それほどびっくりした内容ではない。勿論、プーチンの口から語られたことには意味がある。

 

ただ、表題の件やプーチンはJ.W. ブッシュの能力を評価していることなど意外な部分もあり、次回にそれを出来れば書いてみるつもりである。ただ、その部分については、張陽チャンネルで和訳され紹介されているので、それをここで引用して終わりにするかもしれない。https://www.youtube.com/watch?v=p0ZzuymTuxo 

 

 

このインタビューに対するG7側の反応も興味があるのだが、ここでは一つだけヒラリークリントンの言葉とそれに対するシカゴ大のミアシャイマー教授の言葉の動画を引用しておく。 https://www.youtube.com/watch?v=CcC6rWjlA-A

 

 

ヒラリークリントンはタッカーカールソンを侮辱することで、このインタビューを意味の無いものと大衆に思わせようとしている。ミアシャイマー教授は、それは逆に彼女の品性を傷つけるだけだと言っている。

 

追補1) 幸福実現党が、このインタビューの全体を上手くダイジェスト版として動画を作っていますので、ここで追補として紹介します。https://www.youtube.com/watch?v=BbnG-8z_JN4

尚、2022年2月13日に、ウクライナ危機の原因について書いている。その時の理解からこのインタビューの中心の内容はそれほど離れてはいない。

 

 

 

補足:

 

1)エエゴン・バール(Egon Karlheinz Bahr)は、ドイツの政治家でブラント(代4代西ドイツ首相)の側近。東西ドイツ基本条約交渉を始め、東方外交において主導的な役割を担った。

 

2)米国は、冷戦時代にソ連と対抗するために作られたNATOを、ソ連崩壊後、エリツィンの西側先進国に協調的になろうと決断した米国議会での演説などを聞きながら、ロシアを潰すための軍事同盟に変質させた。その上で、何度もNATO非拡大を約束しながら、最後には兄弟国でありロシアの発祥の地であるウクライナにまでそのNATOを広げようとしたのである。

 

3)ロシア語の同時通訳では「gene out of the bottle」と聞こえるので、ここでは紛争の遺伝子と訳した。リジーさんは「を出したのは米国だ」と訳している。

 

(2/14/6:45; 一箇所一語追加、13:40追補1の追加をして最終稿とする)

 

 

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