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2024年7月8日月曜日

G7サミット出席の首脳たちはお馬鹿さんなのか? 


今回のブログ記事は、先日のG7サミットでの議論や結論を批判した近現代史研究家の渡辺惣樹氏のyoutube動画「イタリアG7「戦争サミット」・最後の「おバカさん」会議」を批判した内容である。勿論、G7サミットを高く評価した訳ではなく、もっと真相に迫る内容にしてほしいという意味である。この件に関する本ブログの結論は、現在の世界政治の解釈には前回記事に書いたような広い分野に立脚するもっと大きなモデルが必要だということである。

1)イタリヤ・プーリアでのG7サミット首脳に対する渡辺惣樹氏の批判


6月13日から15日にかけてイタリア・プーリアにてG7サミットが開催された。議題及び参加者・招待者については外務省のHPにある。https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/pageit_000001_00752.html

最重要課題と考えられるウクライナ支援についてはウクライナのゼレンスキー大統領の参加もあって、長期に渡る支援が合意された。https://it.usembassy.gov/fact-sheet-the-2024-g7-summit/

中でも注目されるのは、西側で凍結されたロシアの金融資産の利子分をウクライナ支援金に充てるなどの決定である。それらは、G7諸国とロシアとの関係悪化をより一層深めるものである。このことは、G7首脳たちはロシアとの和平など全く考えていないことを何よりも明確に示している。

これらの決定の理由については、上記米国外務省及び現地領事館からの公表文書やホワイトハウスの “イタリアでの米国とウクライナの二国間会議で決定された協定に関する文書”に書かれている。
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2024/06/13/bilateral-security-agreement-between-the-united-states-of-america-and-ukraine/

要するに、ウクライナの対露戦争はロシアの侵略からウクライナの自由と民主主義を守るための戦いであるとし、G7がウクライナを支援する理由はウクライナの安全はヨーロッパ大西洋領域の安全に不可欠であるからだとしている。

ただこの論理は、米国がソ連崩壊後、NATOを利用し且つウクライナの内政に介入する形で進めたウクライナの対ロシア前線基地化と、そこからのロシアへの軍事圧力強化という経緯を考えれば既に破綻している。つまり、ウクライナの受けてきたロシアからの脅威は、ウクライナを経由して米国がロシアに与えていた脅威の反射或いは反作用である。

ウクライナに対するロシアの脅威を排除するもっとも有効な方法は、2014年米国が深く関与して現職のヤヌコビッチ大統領をウクライナから追い出したクーデター(マイダン革命と呼ばれる)の時から変わっていない。米国がウクライナに対する軍事的関与を止めることである。これは、今日にも実行可能であり、1ドルも掛からない。トランプが、自分が大統領なら24時間以内に戦闘を止めることが出来ると言った背景にはこの事実が存在する。米国は何故実行しないのか?

近現代史研究家として著名な渡辺惣樹氏は、この会議を「本来なら如何にして世界を平和にするかを話し合うべきですが、ウクライナ支援の継続を決め、相変わらずロシアを問答無用の悪者に仕立て上げる会議でした」と総括する一方、そこへ参加したG7首脳をお馬鹿さんと評価した。www.youtube.com/watch?v=OkbIeBgqQLc

 


これは誤解を招く内容の動画である。渡辺氏は以下のようにも言っている。「集まった(首脳の)面々の一人でも正常な精神そして憐みの精神があれば、戦争継続で苦しむウクライナそしてロシアの国民の気持ちを慮ることができた筈。核戦争にもなりかねないこの戦いを局地戦として封じ込めながら、如何にして早期に終結させるかを語ることができた筈です。責任ある世界の指導者であれば、その為の知恵を出さなくてはいけなかったのです」と。

しかし、米国が明確な意図(ロシアの弱体化)をもってウクライナの内政に関与し、ロシアに軍事圧力を掛けたことが始まりなので、米国がNO1の覇権国である限り、他の国には米国を諫めることなど出来る筈がない。米国が止めようと思えば、ウクライナへの軍事関与を止めればよいだけであり、米国だけの決断ですぐ出来る。7か国の会議など不要である。

つまり、このG7首脳に対する渡辺氏の評価は基本的に間違っている。英米以外の5人の首脳は、世界の政界に並び力のある7ヵ国の首脳の会議という”イカさま劇”を演じさせられただけである。G7の範囲では、米国は唯一無二の巨大強大国家であり、他の6ヵ国はその取り巻きに過ぎない。勿論、英米首脳の二人も、自分の地位と安全のために動いているだけだろう。彼らはお馬鹿さんなどではない。単にバカ芝居の演技を強制させられただけである。

つまり、G7の内英米以外の5ヵ国首脳の“バカな演技”は、それぞれの国或いは個人に掛けられた米国の方向からの強力な圧力或いは脅しの結果だろう。どの国でも米国と一対一の形で制裁されれば、その経済は破壊される。個人への脅しとしては、確証はないものの日本で2年前の7月8日に起こった事件を思い出す。

いつも米国の政治について有益な議論を動画でアップしている渡辺氏なので、今回の動画は非常に残念だった。


2)「G7の首脳は愚か」なのか?

この命題(「」内)が「偽」であることは既に書いた。その理由をもう少し丁寧に考察する。

渡辺氏は動画のすこし後の方で、2022年3月にトルコが仲介してウクライナとロシアとの停戦合意が実現しそうになった時、英国ジョンソン首相がウクライナに乗り込んでそれをつぶした件に言及している。

ジョンソン首相(当時)個人に元々そんな能力や権限があると考える人は居ないだろう。得体の知れない何者かが彼を動かしたのであり、そのようなか企みが可能な巨大な力の存在を知れば、英米以外の国の首脳たちには、もしこの歴史の流れに竿させば、ウクライナが経験している困難な情況と同程度の情況に自国が陥った姿が頭をよぎるだろう。(ただ単に自分と家族の安全を考えるだけのバカ殿もいるだろうが。)

我々市井の素人が研究家や評論家たちに期待するのは、その陰から巨大な力を英米の首脳に対して働かせる何者かに対して、それを明らかにし告発する議論であり、G7の首脳はお馬鹿さんであるという風に問題を矮小化し、その場での小さな稼ぎを得ようとする姿勢ではない。

トルコの外相が、「NATOの中にはウクライナ戦争を長引かせたい国がある」と発言したことはその時広く世界中に伝えられている。その時の発言を遠藤誉氏が書いた記事からコピペして以下に示す。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1efdbe2b0f9da5cdcb277e5e5fd4327e9f1098c1

NATO外相会談を通して、私はある印象を抱くに至りました・・・つまり、いくつかのNATOメンバー国は、戦争が長引くことを望んでおり、戦争を長引かせることによってロシアを弱体化させようと思っている(=ロシアを弱体化させるためにウクライナ戦争を長引かせようとしている)ということです。

更に遠藤誉氏は、レーガン政権時の外交アドバイザーが「米国政権はロシアの弱体化のためにウクライナを戦わせている」と述べているという、米国保守系ウエブサイト「The American Conservative」の記事を引用している。https://www.theamericanconservative.com/washington-will-fight-russia-to-the-last-ukrainian/


つまり、渡辺氏が考えるウクライナ戦争などの世界の混乱は、実はあるシナリオに沿って進められており、米国や英国がその作戦実行を担当しているのである。陰から或いは地下から巨大な力を行使してこの戦争を英米に指示している本体は明らかになっていないものの、ウクライナを米国の代理とする米露戦争であるというこの戦争のモデルは、今や世界の常識であり、渡辺氏も過去何度も語っていた筈である。

何故、何十万人というウクライナの青壮年を犠牲にしてでも、或いは何十兆円という米国資金を使っても、この戦争を続ける必要があるのか? その謎が解けないので、日常的な「平和が大事である」とか「人命には最大限の配慮をすべきだ」などの価値基準で、無理やり分析して出した安易な結論が「G7首脳のお馬鹿さんたち」なのだ。

日本の多くの評論家も、「何故、米国ネオコン政権は執拗にロシアの弱体化を多大な犠牲を払って実行するのか」という謎を解くこと、或いはそれを説明する有力なモデルが設定できないので、このウクライナ戦争の真実について知ることが出来ないのである。というより、そのようなモデルを完成している人は大勢いる。ただかれらはマスコミにも出ないし、ネットでも蚊の鳴くような声で発信できるに過ぎないのだ。日本でも米国でも、マスコミは既存勢力に支配されており、隠ぺいするように働いている。(追補参照)

この様なモデルを構築するには、思考上の障害を幾つか取り除く必要がある。例えばそれは、「人は平和を望む存在である」とか、「責任ある世界の指導者は、世界平和の実現に貢献するのは当然である」などの“お経”から、自分の頭と心を解放することである。(補足1)つまり、思考のレジームを現代政治のパラダイムに置くのではなく、哲学的思考に戻る必要がある。筆者は前回のブログ記事でそのモデル(勿論真実かどうかはわからない)の一つを示した積りである。


追補: ウクライナ戦争の解決は、トランプが次期大統領に就任すればある程度期待できるだろうが、今後半年間に彼に何か大きな困難が起こる可能性がある。また、すでに多くの個人的な圧力が掛けられている筈である。ただ、米国にはウクライナ戦争の真相を語る人物もいる。例えば、シカゴのミアシャイマー教授やタッカーカールソン、ウィキリークスやプロジェクト・ベリタスなどの団体である。それが米国の偉大な点である。

 

因みに、ウクライナのゼレンスキー大統領も戦争をやめたいかもしれない。国際政治評論家である田中宇氏は、最新のメルマガで、最近ハンガリーのオルバン大統領がゼレンスキーを訪問した後ロシアを訪問してプーチンと話し合ったのは、ゼレンスキーからの依頼でロシアとの仲介に乗り出したという説を主張している。

 



補足:

1)自然科学では、ある現象の原因とその解釈にモデルを作る。そのモデルは通常理論と呼ばれるが真実とは言えない。日本語では自然科学は自然哲学の意味に用いられる言葉お経とは、古い常識の意味である。原点思考・哲学的思考をするには、つまり日常的な思考から哲学的思考に移動するには、意図的に日常採用している思考の枠組みを排除することが必要である。それがここでいうお経から自分の頭と心を解放することの意味である。

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