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2024年9月19日木曜日

総裁候補9名の全国行脚:日本の政治経済に必要な改革はハード面ではなくソフト面のものである

自民党総裁選挙への立候補者9名が全国を回って、自分の政策などについて一般国民の前で個々に語っている。全国行脚は悪いことではないが、何か不自然である。何故なら、我々国民一般には選挙権がないからである。

 

勿論悪いことではないが、一体何のために彼らは互いに議論せず仲良く全国を回っているのだろうか?いっそのこと、首相公選制を次期憲法に書いたらどうかと言いたいが、9名からはそんな話は一切でていない。https://www.youtube.com/watch?v=XITZnWhZNMI

 

 

沖縄での会合でも、彼ら9名は各10分間の演説を一方的に喋るが、全く議論はない。話の内容も、すこし沖縄と自分との関わりと沖縄での経済振興策についても若干語るが、そのほかは本土での話と対して変わらない。最後に9名が手をつないで会場に礼をする姿が映し出されていた。9名は互いに日本国の首相の座を争っている筈である。何か安物の茶番劇を見せられているような感じを受けた。https://www.youtube.com/watch?v=6dsmDYZVp64

 

 

それらの話の中で、石破候補は沖縄戦の後、海軍陸戦隊司令官の大田実中将が自決する前に本土の海軍次官に送った電報(補足1)を紹介し、沖縄等の米軍基地の日米での共同管理を訴えていたのは印象的だった。 ただ、それもパーフォーマンスに過ぎない。何故なら、日本側からそのような提案など米国に出来るとは思えない非現実的なものだからである。

 

9名が総理の席を争って自分の政策を主張する討論会なら、各人が自分の意見を述べた後には、議論となって然るべきである。また、沖縄戦や基地問題の話が出たなら、沖縄県民には様々な意見があるだろう。何故、それらの声を質問という形で受けないのか? 引用のANNnewsの上記動画では、演説会(公演、講演、協演?)終了後一時間程、議論の時間枠の積もりなのか沖縄の景色を無言で映している。

 

そのような議論や質疑が無ければ、9人はいったい何のために沖縄まで出かけて行ったのだ?沖縄県人は、大田実海軍中将の言葉を軽々しく引用する石破氏と、何も沖縄県人の疑問に答えない次期総裁候補たちに落胆しても不思議ではないだろう。自民党県連の方々は例外かもしれないが。

 

一連の9名の全国行脚は、日本の政治を牛耳る者たちが総選挙を有利に戦うには誰を総裁に選ぶべきかを決めるためのものだろう。国民の反応から、やはり小泉でないと勝てないと思われるようなら、彼らは小泉を勝たすだろう。日本政治の支配者たち(最近、日本のDSという人もいる)の作戦ではないだろうか。

 

名古屋の野外講演では、小泉の話が終わると、多くが帰路についているとライブ報道する人たちが語っていた。これは日本のDSの記憶に強く残っただろう。(動画330秒)

 

 

 

勿論この考え方は深読みし過ぎかもしれない。彼らは、自民党の若い力と熱気を国民に見せて、それが冷めないうちに総選挙をしてしまいたいと思っているのかもしれない。確かなことは、日本国民に必要な総理大臣を選ぶ為ではなく、自民党が引き続き政権を維持するために9名の全国行脚は行われているのだろう。


 

2)日本経済に必要なのはハードウェア的改革ではなく、小泉氏が語るソフトウェア的改革である:

 

高市候補は、何が何でも経済だと言う。その経済重視の政策は、他の小泉氏と河野氏を除く他候補とも共通している。どのように経済を押し上げるのかと言えば、政府による積極投資だという。小林候補による、各地方に半導体や宇宙産業などの先進産業の中心を作るというのは、その具体例である。

 

この考え方で自民党の投資は既に行われている。新総裁を選ぶ必要などない。最近、TSMCに多額の金をだして、熊本に誘致したのも一つの例である。高市氏が今回の講演会で言及した、13年前に沖縄に作った沖縄科学技術大学院大学(OIST)もその一つである。高市氏は沖縄への国家投資の成功例のように話すが、教官の64%学生の80%が外国人では、どの国の為の教育研究機関か分からない。

https://www.oist.jp/ja/about/facts-and-figures

 

学生には年間240万円の生活費と60万円の授業料の合計300万円が支払われ、教官89人と学生272名の教育研究機関に対する運営交付金相当額は、190億円を超える。しかし、このような好条件で世界中から外国人学生と研究員を集めて、外国人のための大学院大学を作れば、研究論文の質と量の統計数値が高くなるのは当たり前だろう。

 

そんな安っぽいアイデアの箱物行政では、日本経済も日本の学問もレベルの向上はないだろう。それよりも日本中の国立大学をはじめ、日本の教育全般について、そのレベル向上にむけてエネルギーを使うのが本来の教育行政である。

 

これら財政偏重政策を批判して、河野太郎氏は、危機の時に十分な財政出動が可能なように、普段は財政規律は守るべきだと話す。ネットの世界でもこの真面な考え方に逆らって、プライマリーバランスに拘る財務省を批判する人が多い。かれらは米国民主党の左派のMMT理論に毒されているのである。(補足2)それに比べて、経済政策で日本低迷の原因から掘り起こして、対策を出しているのは小泉氏だけである。(補足3)

 

ネット上では、そのような議論が十分に理解できない三流の経済評論家などが、日本の既得権益者である“実力者”の意向を組んでか、小泉批判を大規模に展開している。それは、小泉氏の考え方が本筋の経済振興策であっても分かりにくいソフトウエアの改革だからである。そして、それは既得権益者にお金を流す必要のない根本的方法なのである。

 

ハードウエア的改革とソフトウエア的改革

 

田中角栄の日本列島改造論は日本の成長期に必要なハードウェア的改革の提案であった。そしてその実施により、日本の地方が中央である都市部から近くなり経済的に連結されると伴に、その後20年の日本興隆の基礎となった。それが過ぎ、日本経済は低迷の30年に入る。その原因が政治の貧困であることに気付いた人も多かった。

 

そして現れたのが小沢一郎の「日本改造計画」という本だった。そこには日本の民主政治の病根が書かれていた。小沢氏の本では、「自立しない個人が集まっても本物の民主政治は不可能である」という趣旨の論理が、西欧文化と日本文化の比較という形で紹介されていた。

 

しかし残念ながら、小沢一郎氏は師匠の田中角栄のどぶ板選挙を信じる古い政治家に過ぎなかった。日本改造計画は、この自民党有力者の口を借りて政治学者たちが語った言葉に過ぎなかったが、日本国民の頭の中にある日本文化を、西欧近代文化を採り入れて21世紀に向けてバージョンアップする必要性を説いた斬新なものだった。

 

今の日本の政治と経済に必要なのは、ハードウエア的改革ではなく、ソフトウエア的改革である。小沢は、政治のソフトウエア改革を訴えたが、それがご本人の頭から出たものでなかったということになる。(補足4)

 

今回も小泉氏が主張したのは経済のソフトウエア的改革である。その重要な部分は、日本改造計画と重なる。彼以外の地方創生を主張する人たちは何か勘違いしている。彼らは、中央がだめだから地方の力に頼ろうと中央の政治家が言うことに違和感を感じない連中なのだろう。

 

 

3)小泉氏の日本経済改造計画

 

小泉氏は、日本の低迷はダイナミズムに欠ける社会にあると分析している。学校を卒業して定年まで同じ会社で働く日本の典型的な人生パターンは、昭和の成長期のものであり時代遅れとなっている。技術が進歩し国際的競争が激しくなった現在では、適材適所が常に達成される労働の流動性が無くてはならない。

 

会社の中で自分の能力が十分発揮できなくなれば、他の会社等に大きな条件の悪化なく移動できる社会にしなければならないと話す。

 

大企業が、不要部門の整理が必要でも、現在のように規制で縛られていては、その会社の労働生産性が害されるだけでなく、自分の能力を生かせないで9時-5時の間そこに縛られる労働者も不幸である。改革の壁の象徴は、解雇規制であるが、その運用はフェイルセイフを整えた上でもっと柔軟にするべきである。

 

小泉氏はこのように話すが、ネットでは小泉つぶしのような議論が多い。解雇規制の柔軟化が恐い労働者が多いことは分かる。ただ、そのかなりの部分はさしたる仕事もなく、会社に居残って高い給与をもらっている既得権益者だろう。この改革の峠は越えなければならないと思う。

 

小泉氏がいうように、リスキリングと再就職支援を大企業に義務付ければ、なんとかなるのではないだろうか。あの日産が潰れかかったとき、カルロス・ゴーンが見事に立て直したのだが、その方法は単に不採算部門の整理だったという。

 

小泉氏の言葉で重要なのは、不採算部門で半分眠っている労働力が他の企業では不可欠な労働力となる可能性があるということである。そのように日本人の全員が元々持つ高い能力を発揮すれば、日本の経済は必ず上向きになるという話である。

 

小泉氏と河野氏を除く7人が主張するように、赤字国債でしばらく国民が楽になることは可能である。しかし、それでは後に付けを残すだけである。

 

同一労働同一賃金の達成、年収の壁の撤廃など、すべて労働の流動性を上げるために必要だろう。それは、会社に奉職するという昭和の封建主義的労働スタイルとの決別を意味する。それが日本文化の産物であるから、再び日本を世界のトップにとか、他の国から頼りにされる一流国家とするなどの目標を掲げるなら、つまり欧米並みの経済を欲するなら、古い日本文化からの脱却は必須である。

 

小泉氏の演説を書いたのが、一流のスピーチライターで、小泉氏の頭の中にこのような内容は全くなかったという可能性だが、それは小沢一郎氏のケース同様無いとは言えない。日本に新しい風を吹き込むための捨て駒になったとしても、小泉氏の功績はかなりのものと言える。ネット上で小泉批判をする有名だが愚鈍な方々に惑わされないように期待する。

 

終わりに:

 

最後に石破氏の演説について一言追加する。最初に引用した動画での石破氏の演説はある意味で注目される。「国民を守る日本政府を創る」という話には一定の評価をしたい。ただ、彼のウクライナ戦争や国連に対する理解は米国が日本国民に刷り込んだものであり本質的に間違っている。

 

ウクライナ戦争は、ロシア潰しのためのウクライナを代理とする米国の対露戦争である。また、国連は戦勝国連合であり、国際連合と訳しその名にふさわしい機能を期待するのは間違いである。石破氏をはじめ、自民党の総裁候補全員にも言えると思うが、21世紀の国際関係も国際法を基準にするのが標準的であると誤解している。有史以来、国際関係は本質的に野生の原理で動くという国際政治の基本が分かっていない。https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5574


つまり、日本の政治の基本ソフトウエアが戦後米国の占領軍によって入れ替えられたのである。そのソフトを維持するために選ばれた人物が、吉田茂であり本来A級戦犯とされる筈だが無罪放免されて米国に奉仕した自民党の岸信介らと右翼の児玉誉士夫らである。日本社会党もCIAから資金をもらっていたというから救い難い。

 

私が小泉進次郎氏を政治家として高く評価しているというのではなく、彼が語る経済政策の根本にある思想を支持しているだけである。それを現在の日本に適用する場合、一時日本経済は苦しくなる可能性もあるだろう。その意味で慎重さが必要だろうが、避けてはならないと思う。

 

 

補足:

 

1)海軍の沖縄根拠地隊司令官である大田実中将が小禄半島で自決直前に海軍次官にあてた電文では、沖縄戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世特別の配慮を」と訴えた。https://www.asahi.com/articles/ASP893W3SP87PITB00N.html

 

2)中央銀行は国と一体であるとの仮定が置ける場合、自国通貨で発行する国債残高が大きくなっても、国家財政破綻に至ることはない。従って、想定のインフレ率を超えない限り、国債発行は可能である。経済発展の割合(GDP成長率)よりもインフレ率が小さければ、その範囲で幾らでも国債発行は可能だろう。 ただ、基軸通貨発行国でなければ、国家の債務残高が十分な資産の裏付けが無いと債権者(貯蓄者である国民)が考えた場合、その貯蓄が海外に逃げ通貨安を招くということがスパイラルに(自己触媒的に、或いは正のフィードバック効果的に)発生し、想定を超える急激なインフレがおこる可能性がある。それが現在日本で起こっている状況かもしれない。

 

3)経済発展はそこに住む人たちの生活改善が目的である。企業活動が円滑に行われるなら、労働分配率を上げることで、現在の日本経済でも国民の生活がもっと豊かになってもいい筈だという人も多い。左翼的な石破氏もその中の一人である。日本の企業は600兆円もの内部留保を持っているとして、その国民への分配を主張するが、その額は一年分のGDPに過ぎない。その理屈なら、一人当たり1000万円以上の金融資産を持つ日本国民はもっと金を使うべきであるという理屈と同じレベルである。

 

4)この本が小沢氏のほか北岡伸一氏、御厨貴氏など多くの評論家と開いた勉強会の成果であったようだ。最終的に内容を決定したのは小沢氏なので、小沢一郎著と言えるという人も多いだろう。

 

多いだろう。しかし、海部内閣がつぶれたあと、当時自民党幹事長だった小沢はその後任の総裁決定の際に宮沢喜一、渡辺美智雄、三塚博と面会した。その時、小沢氏の権力は絶頂期だったが、何故か彼自身は総理の椅子を目指さなかった。その経緯を熟知しているわけではないが、本当に一度も総理大臣を目指さなかったのなら、日本改造計画は小沢の著書ではないと言える。

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