注目の投稿

人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2024年9月28日土曜日

石破新総裁で対中関係の危機は多少先送りか?

石破茂氏が27日の自民党総裁選の決戦で思わぬ票の動きで勝利した。第一回目の投票で党員票でも国会議員票でも高市氏に負けていた石破氏だったが、1位と2位の間で行われる決戦投票で、一回目で別候補に投じられた票がかなり纏まって石破氏に流れたと考えられる。

 https://www.youtube.com/watch?v=fdRADLbafak

 

 

恐らく前回の総裁選で出来ていた小石河(小泉、石破、河野)連合関係の票がかなり石破氏に流れたのだろう。また、第一回投票後の5分間演説 (動画2:16:00~) の最初に、石破氏がこれまで不快な気持ちにさせてきた議員たちに、自分の能力の無さの結果であったとして謝罪したこと等が、大きかったという評論家もいる。(補足1)

 

確かに石破氏の演説は良くまとまっていた。政治の原点を持っている人物のように思える演説だった。自民党をルールを守る公正な政党にするという言葉に共感した若手がかなりいた可能性もある。最後まで手を抜かなかった石破氏の姿勢が、思わぬ形で勝利に結びついたのだろう。
 

更に、高市氏の対中国強硬姿勢が不必要に中国を刺激することとなり、不測の事態を招きかねないと感じる人たちが、安心感を石破氏に求めた可能性もあると思う。また、石破氏がこれまでの演説で、日米地位協定の見直しや東アジア版のNATO創設という具体的な改革に言及したことに、若い世代の国会議員には賛同した人もいたと思う。

 

石破氏の経済政策には大きな不安を感じるが、経験と知識のある石破氏が当選したことは、安全保障、特に対中国外交の面で一安心だと言える。

 

その経済政策だが、大企業の利益の積み上げや配当金の増加を悪のように言及する発言、法人税や金融所得課税の強化への言及など、経済を疲弊させるような発言があった。その一方、海外進出率の高い大企業に国内回帰させたいという発言など、互いに矛盾し且つ自由主義経済の原則に反するような話をしている。(補足2)

 

決選投票前後の演説でも、岸田政権の「新しい資本主義政策」を進めるという類の発言をしていた。岸田氏が最初に言った新しい資本主義は、クラウス・シュワブの「株主の為の資本主義から全関与者の為の資本主義への転換」という考え方であり、突き詰めれば新世界秩序或いは世界共産主義帝国を築くという発想である。“論理的に話ができる”人だと思っていた石破氏から、新しい資本主義という言葉が出れば、経済界は警戒するのは必定である。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/0201_2

 

もし石破新首相となり、そのような左翼的経済政策を実行すれば、日本経済は不況に落ち込むだろう。小泉氏の解雇規制を徐々に緩和するという話よりも遥かに強い打撃を与える上に、何の利益も結局生まないだろう。実際、石破氏が当選した瞬間から日経先物が2000円ほど急降下している。

 

自民党の総裁候補9名とも、クラウス・シュワブの「新しい資本主義」が世界共産主義革命の現代版であることなど知らないのかもしれない。また、彼ら全員がウクライナ戦争とはロシアが領土拡大欲求を満たすために国際法に違反してウクライナ侵攻したことが殆どすべてであり、国際秩序が守るためにはロシアを懲罰し、ウクライナを全力で支援しなければならないという理解に留まっていることと符合し、将来の日本外交に不安を感じる。
 

以上、石破氏は新しい風を一時期日本政界に吹き込むかもしれないが、現在のままでは日本のリーダーとしては能力不足であり長期政権にはならないだろう。それでも今回先頭グループを形成していた石破、高市、小泉の三人の中では一番安定感のある人物だと思う。今後、いろんな人から話を聞いて、徐々に立派なリーダーに変身(補足3)していってもらいたい。


 

補足:
 

1)自民党議員の中にも、中国に対して強硬姿勢を見せる高市氏に不安を感じる人が多いかもしれない。首相になっても靖国参拝を継続するという発言もあり、高市首相が誕生した場合には中国に駐在する日本人に更に大きな被害が発生する可能性があった。そのような議員たちが石破氏の方に流れやすくする効果が、この謙虚な姿勢と言葉にあったと考えられる。

 

2)石破氏は選挙戦の演説の中で次のように言っている:ドイツや韓国の輸出額の対GDP比が夫々47%と44%であり、日本のそれは18%に過ぎない。その低い値は日本の製造業がより多く海外に出ている結果なので、それらの国内回帰を目指す。

ただ、企業でも人でも、日本を出るのは日本が棲みにくいからである。その改善をしないならそれら企業が日本に回帰する理由はない。企業の剰余金に課税したり、配当金などの金融所得に新たに課税するという石破氏の方針とは矛盾している。

そんなことはしないで、小泉氏が言ったような日本にダイナミズムを採り入れる改革を徐々に採り入れるのなら、海外進出した工場も日本回帰が可能になってくるだろう。

 

3)ソ連のゴルバチョフ書記長の例もあるので、まったくあり得ないことではない。自民党を換骨奪胎するのである。

 

(14:00修正;翌日早朝編集後最終版)

0 件のコメント:

コメントを投稿