2016年4月7日木曜日

防衛大学校卒業生の任官拒否についての小川和久氏の意見とその分析

1)防衛大学校では授業料、生活費はただで、月額10.8万円ほどの給与にボーナス31.9万円ほどが出るという(補足1)。そこを卒業しても自衛官にならないで民間に就職することを任官拒否というが、無料で授業を受け、食と住を提供され、しかも給与は貰いっ放しである。これをそのまま放置するのは如何なものかと思う。もちろん、任官拒否を許してはならないと言っている訳では無い。授業料相当分か給与分を返納する制度を導入すべきであると言っているのである。

しかし、軍事アナリストになった小川和久氏(補足2)は、「任官拒否者を対象に、教育費等の返還を制度化する必要性はない」と、全面的に現行制度を擁護している。https://www.youtube.com/watch?v=Uh5xzvBvこの動画を先ず見てもらいたい。

小川氏の現行制度擁護の理由は、全く非論理的である。東大などの学生経費を700万円以上と割りまし計算をし(補足3)、防衛大学校の教育経費約400万円と比較して、防衛大学校の教育費が割安だという、全く訳のわからない理由を披露している。教育にかかる金額の問題ではない上に、防衛大学校と東大を比較して任官拒否を問題視しないというのは、二重に誤魔化しがあり全く説得力がない。

東大と防衛大を比較する理由であるが、小川氏は東大を国家公務員及び裁判官養成のための大学校と決めつけている(誤魔化している)様だ。つまり、小川氏は東大卒業生の内、公務員試験を受けて公務員になる数と司法試験を受けて裁判官などの司法公務員になる人の合計数が、全卒業生の5パーセントに過ぎないが、防衛大では任官率が90%を超えていると主張している。つまり、防衛大は任官率が高いのだから、任官拒否を問題視してはならないというのである。

要するに、防衛大学校卒業しても無料教育と給与をもらいっぱなしで、任官拒否する制度で良い。日本国はケチなことを言わない方が良いと、これもその辺の魚屋のおじさんの安売りの理屈のようなものを持ち出して、現行制度を弁護しているのだ。この小川氏は、日本で唯一自衛官の任官拒否に関する本を出版された方であると仰っている。それだからこそ、動画を引用し個人名をあげて反論しているのである。

2)もちろん、私は任官拒否をしても良いと思っている。ただし、その場合は教育経費の一部を返還すべきであると考えている。任官拒否を当然だと思う理由は、小川氏のおっしゃる通りである。つまり、18歳のときに決意して任官しても、途中で迷いが出る可能性は当然あり得る。その場合は、その時点で自衛官になるのを止めて、別の道を歩めば良い。それは職業選択の自由の観点から当然である。しかし、防衛大学校の教育は、任官を前提として行なっているのだから、授業料相当分か給与相当分を返納する様に制度化するのは当然だろうと思う。

一度返納させる法案が出されたが、廃案になったという。したがって現行制度の下では、任官拒否者してもこれまでの給与や教育費用を返納する必要は無い。合法的食い逃げであるが、制度がそうなっている以上、任官拒否者は大手を振って他の企業に就職するなりすれば良い。後ろめたい感情を持つ必要など全く無いし、それは動画の中で紹介されている小泉進次郎氏の挨拶にある通りだ。

ここで議論しているのは、返納すべく法の整備をすべきかどうかということである。制度の問題と、任官拒否する個人の問題を混同しているから、話が分かりにくくなっているのである。しかし、それを分かりながら、小川氏はこのような誤魔化しの論理を展開しているのではないだろうか。

3)「返納を制度化すると、どうせ、返せばよいのだろうと開き直って途中でやめる人が増える。これはおかしい」と小川氏はおっしゃる。その小川氏の言葉も理解に苦しむ。任官しないと決めた時点で、堂々とやめれば良いのである。そして、それで自衛官の数が確保できないのなら、一定の任官数を確保すべく入学定員を増やすしかない。その場合、只で教育と食と住を供給され、更に給与ももらえ、自衛官という危険な現場に出なくて良いし、更に、卒業しても任官拒否できるという、世界一恵まれた待遇を求めて、多くの高校卒業生が入学を目指すだろう。

小川氏は、今年任官拒否が前年比で倍増したのは、集団的自衛権を明記した安保法制が施行され、防衛大生の母親方が危機感をもったのも原因だろうと話しておられる。それは、自衛官は警察官より安全な職業だと思って応募している学生がかなりいることを意味しており、大きな問題である。つまり、この問題は日本の安全保障のあり方と直結しているのであり、根が深いのだ。

小川氏の現行制度の弁護は、自衛隊や防衛省の本音から出ているのだろう。つまり、できるだけ入口を大きく広げ、曖昧な覚悟で入ってきた人たちも、調教すれば自衛官幹部として任官させることが可能だろうという考えである。「任官拒否の場合には授業料相当額か給与相当額の返納を要する」と明記すれば、そこで希望者が激減すると予想し、それを危惧されているのだろう。

制度を曖昧にしておき、入り口を広げ、「任官拒否は卑怯ではないのか?」という素朴な世論の圧力と日本人特有の卒業生の心に生じる良心の呵責に期待して、一般社会への出口を締めるという方法を考えておられるのだろう。それは、本当の国家防衛を考える端緒を自分で捨て、本来の国家のあり方に日本国が戻ることを遅らせるとになると思う。これは、それを心配して投稿する文章である。

補足:
1)防衛大学校に入る時の試験は入学試験ではなく、通常の会社と同じ採用試験である。そこでの勉学は、教育というより任官した後の自衛官としての仕事のための訓練である。支払われる月額10.8万円とボーナス31.9万はその仕事に支払われる給与である。したがって、防衛大学校卒業後に任官しないと決断した時点で、退学すべきである。
2)小川氏は15歳で自衛隊に入隊後、陸上自衛隊生徒教育隊や航空学校を修了している。その後、同志社大学神学部へ進学するも除籍になり、新聞記者や週刊誌記者を経て、軍事アナリストになっている。https://ja.wikipedia.org/wiki/小川和久 
3)東大での学生一人当たりの教育費は、運営交付金(840億円)/(大学生数14000+大学院学生数13300)で、約308万円である。(2013年)

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