放送法64条は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定している。ここで協会とは、NHK(日本放送協会)のことである。民間放送を受信するのにも同じ装置を用いるので、この法律は民間放送のみを見てNHKは見ないでおきたいという自由がないか、或いは受けないサービスに対しても契約を強要することになる。(補足1)
日本国憲法第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定している。つまり、何を見て、何をみないかという自己決定権を含めて、個人の自由は公共の福祉に反しない限り最大限尊重されるのである。
また、日本国憲法第二十九条は、「財産権は、これを侵してはならない」と書かれている。そして、第二項は、 「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」で、第三項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と、それぞれ定めている。
つまり、NHKが受信できるテレビを持つ限り、「私はNHK放送を見ません」と宣言しても受信料を奪い取られることになるので、その「私はNHK放送を見ませんと宣言すること」が“公共の福祉に反する”のでなければ、放送法64条は、自己決定権を保障する憲法13条に違反するか、或いは、受けないサービスに無理やり金を支払わされることになるので、財産権を保障する憲法29条に違反することになると思う。
この問題を上記憲法13条や憲法21条の表現の自由との関連で論じた文章が弁護人の代表からブログにて公開されている。http://www.azusawa.jp/comit/20091219.html 因みに、憲法21条とは表現の自由をうたった条文である。
しかし、不思議なことに裁判では、上記主張は認められていないのである。その理由を、この問題を網羅的に議論したサイト(http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n24263)にあったので、そこから引用する。この文章が正しいという保証はないので、そのつもりで読んでもらいたい。
「控訴人らは,控訴人らが放送受信料の支払を免れようとすると,必然的に民放のテレビ番組の視聴を妨げられ,民放のテレビ番組を視聴することにより情報を取得する自由を侵害される旨主張するが,法32条(現64条)及び放送受信規約9条(https://pid.nhk.or.jp/jushinryo/kiyaku/nhk_jushinkiyaku_260401.pdf)は,放送受信契約の締結及び被控訴人の放送を受信できる受信機を廃止しない間の放送受信料の支払を義務づけるだけであって,民放のテレビ番組を視聴することを制限するものではない。したがって,控訴人らの上記の主張は理由がない。」
このような訳のわからない判決文を書く裁判官は、現在の権力におもねることで、職業としての裁判官の地位にへばりつく自分をどう感じているのだろうか(補足2)。もっとも、自衛隊が軍隊でないし、交戦権は認めないという憲法を持ちながら、自衛隊を用いて集団的自衛権を認めるという法律を通す国だから、さもありなんと言えなくもない。
補足
1)このNHK受信料不払いの問題は、有料放送が行っているように受信契約をした人だけが放送を受信できるようにすれば、簡単に解決する。しかしそうすると、ほとんどの人が受信契約をしないことがNHK関係者はわかっているのだと思う。
2)この判決文は訳がわからない。NHKが映らないテレビで民放が映るようなテレビが存在しなければ、これは屁理屈である。
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