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2013年8月31日土曜日

アベノミクスの指南役”浜田宏一氏”の本を読んで:


(7月ホームページ付属のブログに投稿したものを若干修正して掲載します;http://island.geocities.yahoo.co.jp/gl/mopyesr/view/201307)

 昨日、「アメリカは日本経済の復活を知っている」と題する本を本屋で見つけて買った。著者の浜田先生はアベノミクスの指南役のような立場の方であるということなので、一度、読んでみたかった。内容は一言で言うと、通貨供給量を増やせば、為替は妥当な円相場(\100-110/$)にもどり、輸出企業は復活するだろうというもの。ゼロ金利に近く企業などに借り手が無くても、強引にやれば良いということである。円高になった原因はリーマンショック以後、他国が通貨供給量を増やしたのに、日本はほとんど増やさなかったからということである。用意されたグラフ(図表9;ソロス・チャート, p102)を見ればその点は明らかである。

 ただ、低金利政策なら日銀はやったと思うが、既にゼロ金利だったことが、日銀が何もしなかった或は出来なかった理由だと思う。金の借り手が無くても、通貨供給量を増やす具体的な方法が、そこではなく、ずっと後ろの方に書かれていた。
以下その方法:1)日銀が多量に国債を市場から買い上げて、政府がその金をインフラ整備などに使う“財政出動”である(ほとんど法律違反であるが)。(注1) 
その他に、2)いろんな債券や投資信託などを購入する。

 株価指数連動型上場投資信託(ETF)などを買う場合には、株価の上昇を後押しする。また、不動産投資信託(REIT)を購入した場合には、不動産価格が上昇するだろう。これも日銀は投資会社ではないので、一部の業界へのプレゼントのように見える異常な手段である。

 つまり、何れの方法も緊急避難的であり、政府の堕落の危険性と経済分野における不平等性を含むと思うが、そのあたりは非常に楽観的に書かれている。日銀の金融緩和に反対する経済通の人は、1)の方法をとることによる、国家財政規律崩壊と破綻を心配している。IMFも何とか破綻を防ぐ対策をとる様に(つまり、財政再建)勧告してきているので、浜田名誉教授の書いておられる程安全ではないと思う。多くの大口の円通貨保持者は海外に資金を移動するだろうし、悪い噂が流れた時には銀行に人が列をつくることになるかもしれない。また、国家が破産しても国民が破産するわけではないとおっしゃるが、ずっと郵便貯金で持っていた人は酷い目に遭うのではないでしょうか?実際には長期金利も低く、破綻の心配はないということであるが、逃げ足の速いプロの投資家は直前まで心配ないというだろう。日銀が相手なら最後までやれば投資家に勝ち目は無いとはいえ、後始末がたいへんだろうと思う。(つまり、極端な場合は国債を全部買い上げてしまえば良いとまで書いてあったと思う。)

 浜田名誉教授の説明される円高の弊害は、国内コスト、特に賃金が国際比較で高くなり過ぎ、輸出企業に不利になるということである。そして、それを是正する為に通貨発行量を増加し、円安に誘導するということである(p73)。日銀の白川さんが通貨量を増加しなかったのは、既にゼロ金利だったことと、多額の国債発行残高があったためであり、日銀だけの失敗ではない。ただそのとき、対策をとり得るのは日銀だけだったということで、矢面に立っているだけである。農業への株式会社の参入などを許さない規制温存の政治、ダイナミックな国際展開などを思い付かない老人幹部の(人事が停滞した)企業なども原因である筈。今の政治では国民は将来に不安を感じ、出来るだけ貯蓄をして老後に備えようとするだろう。そもそも、伝統的に政府不信の国民は、貯金を多く溜め込むことを無条件に良い事と考えている。金のある人も無い人も、一億人が貯金に励むことが、通貨の循環を阻害し、不景気の主原因の一つとなってきた筈。(注2) 

 実際、第4章以降に、日本の教育、文化、などが、国際基準からみて大きく異なっており、競争は大学入試で終了し、同じ分野での競争をへて優れた人材が指導者として浮き上がるメカニズムが無いなど、日本の文化に疑問を呈しておられる。それらを国際標準的に正すことが、日本経済復活の原因療法の一つであると思っておられるのだと思う。明確にそう書いてほしかった。
また、与謝野さんや藤井さんをデフレ擁護論者と言っておられるが、そうではなく、財政再建優先論者だと思います。彼ら政治家としては誠実ではあるが、経済をあまり知らないのでそう言われても仕方ないということでしょうか?与謝野さんと藤井さんに本を書いてもらいたいものである。

「注釈」
1) 国債の直接引き受けは法律で禁止されている。市場からどんどん買えば良いというのは、屁理屈に聞こえる。
2) 「だから、政府は金を使う役を引き受けて来たのだ」といいたいのであろうが、そう言う理屈を古来より、「盗人たけだけしい」というのである。

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