本日のNHKクローズアップ現代で、東大紛争について新しい資料に基づいた解説があった。新しい資料とは、加藤一郎総長代理の下、紛争の収拾を任された教授達の会議録である。東大紛争の経緯を簡単に書く。当時、医学部研修医の待遇改善運動などが全国の医学部でおこり、その拠点であった東大で医学部学生の無期限ストライキに発展した。その際、学生と大学当局者との間で衝突事件が発生し、処分された数人の中に誤認処分された学生一人含まれていた。その処分を巡る紛争が長期に亘り、急進派学生の安田講堂占拠へ発展したものである。
私は、当時大学生であったが、安田講堂に立てこもった学生に違和感をもっていた。その原因は、どのようなプロセスが大学当局と学生の間にあったとしても、大学の建造物占拠は違法行為であり、且つ、日本は法治国家を名乗っていたからである。大学の自治といっても、それは、思想の自由に由来する学問の自由に基づくものであり、それはゲバ棒(学生達が武器として用いた棒)で護るべきものではないからである。ゲストの方の「国民にもシンパシー(感情的な共鳴)があった」という発言には驚いた。
当時全国の大学に紛争が広がったのには、いろんな理由があると思う。その一つとして、番組で紹介されていたのは、当時の高度経済成長路線に対する漠とした疑問である。活動に参加した学生達があげた疑問として番組で紹介されたのは:
1)高度成長は何故必要か? 2)学問は何の為にするのか?
である。当時を回想した教授の一人から、「それらの問いかけに我々もまともな答えを持っていなかった」との正直なコメントがあった。
しかし、このような純粋な質問の陰に隠れて存在するのは、世界を二分する勢力間の冷戦構造であったと思う。何故なら、全国の大学紛争が先鋭化した後に聞こえたシュプレヒコールは、「安保反対」であったからである。今日の放送で、このことが全く触れられなかったのは、非常に不自然である。また、早期に安田講堂占拠事件が解決しなかった原因は、日本国全体に当時も今も法治国家という制度が文化として定着していない為であると思う。
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