1)昨日、政治評論家の加藤清隆氏のyoutube動画を観た。そこでは、トランプ大統領の知恵袋的なキッシンジャー氏に対する批判が語られていた。キッシンジャーは、米国において中国の利益を代表する人物であると語っている。https://www.youtube.com/watch?v=aSlZ_aiC4OU
キッシンジャーが10月にホワイトハウスに招かれた際、米中の取引で北朝鮮を平和裏に治める案を吹き込んだ可能性があるという。その内容はニューズウイーク紙の11/28日号に、中国専門家のBill Powell氏の記事として書かれているという。
それによれば:1.中国は全ての手段を用いて金正恩に核計画を諦めさせる;2.米国が検証し納得する;3.米国と北朝鮮を正式に承認し、経済援助を行う;4.在韓米軍は撤退する、の4項目であるという。(補足1)
この4番目は、日本にとって最悪のシナリオとなり得る。韓国にとっても最悪だと、加藤氏は言っているが、現韓国大統領にとっては織り込み済みのシナリオかと私は思う。
また加藤氏は、「トランプ大統領はキッシンジャーの意見に従ったために、米中首脳会談でも米国の主張が出来なかった。」更に、「キッシンジャーは中国の利益を代弁し、“日本に未来永劫核武装を許さない”という姿勢を米国政府に持ち込んでいる」と言っている。(「」中の文は話の内容であり、語りをそのまま書いたのではありません。)
その上で、キッシンジャーは「日本にとっては有害な人物と言う事もできる」と語っている。その様に語るのなら、その理由も具体的に語るべきである。「虫が好かない」レベルの「キッシンジャーは反日である」という議論は、有害無益であると私は思う。
2)キッシンジャーとともに、米国の国際戦略に重要な役割を果たした人に、ブレジンスキーがいた。あの「ひよわな花・日本」を書いた人である。今年死亡したらしいが、そのニュースが大きく報道されなかったことは、日本が政治と報道の両面で後進国であることを示している。
北野幸伯氏が自身のメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」にブレジンスキーの死去にふれている。そこで、伊藤貫氏(補足2)の著書「中国の核が世界を制す」の中の「ブレジンスキーもキッシンジャーも反日親中である」を引用し、更に、つぎの様に書いている。
キッシンジャーと同様の親中外交論を主張してきたブレジンスキーは、「中国こそは、アジアにおける”アメリカの自然な同盟国”と言ってよい。アメリカの国防政策は、日本政府の行動の自由を拘束する役割を務めている。この地域で優越した地位にある中国こそ、アメリカの東アジア外交の基盤となる国だ。」と述べているというのである。
一方、「この二人には違いもある。ブレジンスキーは日本人を小馬鹿にしているが、日本人を憎悪してはいない。それに比べてキッシンジャーは、日本人に対して鋭い敵意と嫌悪感抱いている。」とも書かれているという。https://news.goo.ne.jp/article/mag2/world/mag2-250961
ところで、何故この二人の米国外交の中心的人物が日本軽視の戦略論を展開してきたのか? 私は、それを語らずして“誰それは日本に有害な人物である”と言うべきではないと思う。上記北野幸伯氏の文章では、その反日親中は、中国が彼ら二人の生い立ちから調べ上げ、プライドの高い二人の特性を利用して取り込んだ結果だと書いている。
それもその通りだろうが、キッシンジャーの反日姿勢(憎悪感を持つ)について、もう少し別の背景があるように思うので、それを書いてみたい。
3)加藤氏の話にある通り、反日キッシンジャーは“日本には未来永劫核武装はさせない”と思っているだろう。しかし、キッシンジャーは“日本も核武装をすべきである”と考えた時期があったと、或る本に書かれている。片岡哲哉著「核武装なき改憲は国を滅ぼす」である。そのことは既にブログで紹介した。https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/43129251.html
日本が佐藤栄作政権下であり、米国はニクソン政権下であった。そのニクソン政権の安全保障担当の補佐官がキッシンジャーだった。私の理解したところでは、米国が自国のアジア戦略において、何処に重点を置くかを考えた時、第一に日本を考えた。つまり、日本を核武装した米国の同盟国にすることを考えた。しかしその時、無能な佐藤総理が、日本はそのような役割はできないと断ったのだった。その結果、未来永劫日本国民は、中国、ロシア、米国、更に朝鮮の核の脅威に怯えることになったのである。そして、中国を米国のアジア戦略のパートナーと考えることになったのだろう。(補足3)
更に日米繊維摩擦の際、ニクソン大統領は佐藤総理に何とかして欲しいと対策を依頼した。沖縄が交渉の末に1972年5月に返還されたのだが、そのような時期だけにニクソンは佐藤が合意に基いて有効な手を打ってくれると思っていたが、佐藤は何もしなかったという。そこで、ニクソンは烈火のごとく「ジャップの裏切り」と怒ったという。佐藤は、愚かにも日本のもの(沖縄)は返還されて当然だと考えたのだと、書かれている。(ウイキペディア参照)(補足4)
つまり、そのような歴史的背景を念頭において、キッシンジャーの対日対中姿勢を考えなければならないと思うのである。「戦略なき政府は国を滅ぼす」である。
補足:
1)上記4項目とティラーソン国務長官の「四つのNO」とは関連があるという。1.北朝鮮の政権交代を望まない;2.北朝鮮の政権は滅ぼさない;3.半島の統一は加速させない;4.米軍を38度線以北に派遣しない、は北朝鮮の主張を取り込んだもので、これも出処はキッシンジャーではないかと加藤氏は言っている。
2)訂正:「核武装なき改憲は国を滅ぼす」の著者を伊藤貫氏と書いた事があるかもしれません。正しくは片岡哲哉氏です。
3)上記片岡哲哉著の本の中に、ニクソン政権の時、佐藤政権の日本に核武装を打診した旨の詳しい記述がある。その時の安全保障補佐官はキッシンジャーである。「北朝鮮の核武装と日本の核武装論」https://blogs.yahoo.co.jp/mopyesr/42740249.html
4)「核武装なき改憲は国を滅ぼす」では、その怒ったニクソンの下に派遣されたのが田中角栄であり、田中は米国の駐留経費に金をつぎ込むことで解決したと書かれている。つまり、戦略もなにもなく、金で解決するという日米安保体制が出来上がったと書かれている。米国が、戦略的同盟の意志を無くすのは当然かもしれない。
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