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2020年1月8日水曜日

日本は何故バランス・オブ・パワーを考えた現実的外交ができないのか

伊藤貫と西部邁の討論を軸にしたある動画で、国際政治に対するまともな感覚を持たない日本の幼稚な政治家及び政治評論家を批判している。そして、世界の政治はバランス・オブ・パワーで動いており、そのような思考を持つ政治家が必要だということを主張している。今回、その動画の内容を元にして日本国の現状と将来を議論してみる。https://www.youtube.com/watch?v=w7pe3Ptw_H4

 

1)日本外交の貧困:

 

動画では、日本の総じて愚かな政治家や政治評論家の分類がなされている。それらは、1.護憲左翼グループ、2.親米保守、3.戦前保守、である。それらに対して、動画配信主(おそらく伊藤貫氏)や欧米や中国の政治家が採っている立場を、4.古典的なバランス・オブ・パワー派としている。

 

護憲左翼グループとは、言うまでもなく、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を信奉する(例えば旧日本社会党系の)人たちである。この人達を伊藤貫は、「5歳児」だと形容している。

 

親米保守とは、米国を父親のごとく慕う「10歳児」のように振る舞っていれば、日本は安泰であると信じる人達である。自民党右派のほぼ全員がその範疇にはいるだろう。正直者のトランプが、アメリカ・ファーストと言っても、各国が自国ファーストで外交すべきだと言っても、目が覚めないレベルの知性しかない。

 

戦前保守とは、この動画の配信主が適当に名付けたグループで、戦前の日本を擁護する立場の人たちである。この立場の人達の根本的な知的欠陥は、日本が戦争に負けたことを軽視して、国際政治を善悪論で論じていることである。ここでは「15歳児グループ」と呼ぶことにする。(補足1)

 

動画配信の主は、自分の思考法はこれら幼稚な思考法と異なり、世界の主流の思考様式の一つ「古典的なバランス・オブ・パワー派」であるとしている。これは、17−19世紀に国際政治の基盤となった体制を前提にして、各国のバランス・オブ・パワーを外交の方針とする考え方だという。(補足2)

 

日本が生き残るには、その思考法を採用し、主権国家としてふさわしい核武装を含めた自衛力を持つべきだといっている。その核武装に関する考え方は、米国の国際政治学者のケネス・ウォルツ(Kenneth Waltz)から採っている。(補足3)

 

以上は、一部を除いて、よくわかる議論である。そこから次の話、日本が主権を回復する具体的方法を論じてほしかった。その中で出てくると予想されるのは、抵抗勢力だろう。(補足4)

 

2)国際関係を考える二つの思考パターン

 

伊藤氏は、国際関係を考える二つの思考パターンを紹介している。その内の一つは、国際関係を国際法と国際組織で社会化するという、素朴な理想論的思考パターンである。国際連盟の創設を提唱したアメリカのウイルソン大統領に因んで、「ウイルソニアン・パラダイム」、或いは、リベラル派のパラダイムと呼んでいる。

 

もう一つの考え方は、国際法や国際組織という権威が、世界警察軍などに裏打ちされた権力を持たない現状から、主権国家である各国が、バランス・オブ・パワーを維持して国際関係を協力的に運営する必要があるという考え方である。これを「リアリスト・パラダイム」と呼んでいる。(補足5)

 

ここで注意が必要なのは、共和党政権下の米国も、対外的には理想論を強要し、「民主主義、人権重視、法治主義、国際協調」が全てを解決するとして、民主革命の方向に多くの国に強要した。この場合は、権力行使の論理(道具)として、理想論的思考パターンを用いたのである。

 

また、国際政治の中では、現実主義を重視する本音を持ちながら、理想主義的建前論で交渉をする場面が多いのではないだろうか。ウイルソンが理想主義者かどうかさえ、全くわからない。ウイルソン的思考は、当時の時代背景から米国の利益を考えて打ち出された現実主義かもわからない。(補足6)

 

現在、軸足をどちらに置くかは別にして、これらは本来同時に持つべき思考モデルであり、何かを主張するための道具だろう。ウイルソン的思考パターンは、遠い未来の世界の理想像を考察するときや、外国(敵国や利用国)に提示するときに有用であり、リアリスト的思考は、現在の自国の足元を見る時に必須である。

 

日本の、「5歳児」、「10歳児」、「15歳児」と形容した政治家は、そのどちらにも属さない。単に幼稚な政治屋である。

 

伊藤氏は、「バランス・オブ・パワーを重視するリアリスト」の立場であるという。政治家ではないので、国際政治の分析の結果、バランス・オブ・パワーでそれが動いていると言う説を主張するという意味だろう。(8分あたり)

 

米国の著名な政治家(キッシンジャーやブレジンスキーなど)も同じ立場をとってきたと言うが、その場合は、戦争にならないように力のバランスに注視しながら、国益を追求する外交を行ってきたという意味だろう。ウィルソンの理想論など一顧だにしなかったのではなく、その際は用いなかっただけだろう。未来までを視野に置いた場合、リベラル的思考の無視は国益を害することになると思っていただろうと思う。

 

動画10分のところで、人類は、世界政府とか「世界警察軍」をつくる事が出来ない体質を持たないと指摘している。しかし人類は、ウイルソン的理想論は持ち続けて、世界政府の実現に向けた努力を継続すべきだと思う。(ただし、それはグローバリズムという意味ではない。)それが、長期スパンで思考できる人の現実主義的対応だと思う。

 

以上から、

政治家や政治評論家には、単に優秀な人と無能な人に分類されると思う。思考パターンとして二つあるとしても、それによって政治家のラベル貼りをやることは無意味或いは間違いだろうと思う。時が来れば、突然に壮大な理想論を掲げる優秀な政治家が現れるかもしれない。その時に、現実主義と称して、一年前のバランス・オブ・パワーの図式に固執する政治家は、単に無能な政治家だということになる。

 

現在、現実主義政治家に見える人たちは、現実の荒波の中を自ら積極的に動く動力を持っていないというだけの可能性もあるので、注意が必要だろう。

 

3)日本の国際政治学と日本の未来予測:

 

動画では、日本の国際政治学のレベルが極めて低いことが、日本の国際政治が幼稚な原因の一つであると主張する。(11分半)日本の大学で教えられているのは、殆どがウイルソニアン的思考パターンである。その理由の一つとして、リアリストの考えは、真正面から憲法前文と吉田外交を否定することになるからであるとしている。

 

しかし、大学には学問の自由が在り、日本の政治とは無関係な筈である。従って上記吉田外交云々は、教授たちは全員政治家志望ではないので、その理由説明にはなっていない。大学の中での国際政治学のレベルが低いのは、単にコネ採用をする大学の人事に主原因があると思う。

 

動画では、高坂正堯、佐藤誠三郎、衛藤瀋吉などの学者を、バランス・オブ・パワー外交を論じなかったとして批判している。ただ、バランス・オブ・パワー外交ができない政治家や官僚に諮問会議などの有識者として使われ有名になった学者は、そのような思考法を取らないのはある意味当然である。

 

この日本の保守(「10歳児」の考えを持つ)のあり方では、今後米国が東アジアから撤退したあと、米国に見捨てられた南ベトナムのようになるだろうと予言している。そして、最後の部分で、日本の言論人が「核の傘の欺瞞性」を追求することはないと指摘し、間接的に日本の核武装のみが日本の独立を維持できると主張して、終わっている。

 

4)日本の現状と未来へ向けて取るべき草の根運動:

 

以上の議論は、「主権国家ではない日本」について、その結論に念を押す作業を並べ立てているように思える。その命題は、その作業の前提にされているものの、そこからの克服がこの動画の中で主題になっていない。「画竜点睛を欠く」議論のように思える。最初のセクションで述べたように、如何にして主権国家を回復するかの技術論に入るべきであり、それが日本救済への道である。いきなり核武装に行くのは、”電気のショート”的な結果になるだろう。

 

主権のない日本国には、国際政治のフロントは、手の届かない部分の筈である。それにも拘らず、イランを訪問して、そのような真似をする安倍総理の頭脳を疑う。そして、強力な軍事力を持つ中国に、「黙れ」と言われれば、日本で行う国際的な議論など吹き飛んでしまう。

 

昨年訪日した中国の王毅外相の態度がデカかったという話があったが、それは日本側の政治家が卑屈な姿勢をとったからだろう。それは、日本が主権国家でないことが顕になって、自分達が政治家を首にならないように、国民をごまかす努力の結果の一つだろう。つまり、中国の王毅にこっぴどく叱られないように、低姿勢をつらぬいたのだろう。政治屋は本能的に、自分の地位を守る卑屈な方法を知っている。

 

つまり、独自に国際的政治を論じる環境には日本はない。国家主権の無い国の政治家が、絵に描いた国際政治を想像しての議論しても、保守やリベラルという単語がただ虚しく響くだけである。

 

それにマスコミ各社は、上記の王毅のデカイ態度など日本の現実をあまり報道しない。それは、地上波テレビ各社は、元々日本の崩壊と中国の属領化を待ち望んでいるのだから、当然だろう。 https://www.youtube.com/watch?v=bfhD9CKxC3s&t=3040s 【38分のところで言及】(補足7)


以上から、既存の政治やマスコミなど現在の日本のレジームには期待できないだろう。

そこで、日本人がミクロな活動として為すべきことは、自分たちの命運は、自分たちが乗船している船(国際航路)である日本国と伴にあることを、周囲の国民全員に教えて自覚させることである。そして、その定着を待って、米国の植民地から主権国家へ戻ること、憲法改正と自国軍の保持を行うのである。国家の細胞(つまり個人)のレベルからの生命力回復が不可欠である。

 

外国の傀儡政権である日本政府を動かすのは、その努力はすべきだが、至難である。ネット空間などを利用して個人や私的な集団(知的民兵組織)が、或いは、地方行政が主役になって動くべきである。学校での課外活動、更に、町内会レベルでの勉強会などを通して、出来るところから、国家と国民の命運は一蓮托生の関係にあることをゲリラ的に教育すべきである。ちょっと過激な表現だが、そのように私は思う。

 

(1月9日、早朝編集)

 

補足:

 

1)第一次大戦後、日本の周辺にはソ連、中国(中華民国)、アメリカの3つが覇権国であったが、大日本帝国は、それらすべてを敵に廻して戦争をする愚を犯した。戦前保守と言われる人たちが戦中の日本を全肯定する論理は、「悪いのは周りの国であり、日本は悪くない」、そして、対米戦争の原因は、日本を戦争に追い込んだルーズベルト政権の陰謀だというのである。陰謀だったとしても、それに巻き込まれて、敗戦が確実な米国に戦争を挑んだ愚が、許される訳ではない。

 

2)その基礎にあるのが、ウエストファリア体制或いは主権国家体制のことだと理解する。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E4%BD%93%E5%88%B6

 

3)ウォルツは、論文“The Spread of Nuclear Weapons: More May Better,”では、核保有国が十数カ国になった方が世界はより安定するという主張を展開し、激しい議論となった。この議論をまとめたThe Spread of Nuclear Weapons: A Debateは、欧米では核問題を論ずる際の必読文献となっているという。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%84

 

4)上記1−3の分類に入る幼稚な政治家のグループに、それを装った外国の指示で動く人たちが大勢紛れ込んでいる筈である。氷山の一角として、日本共産党は1922年以降コミンテルン日本支部となったこと、社会党の党首が、KGBの司令で動いていたこと、などが疑われている。更に、それ以上の米国人脈が日本の与党にある筈。例えば、吉田茂の側近白洲次郎を、その種の重要人物にあげる人がいる。外交官のアメリカンスクールやチャイナスクールなども、外国からの影響の重要な窓口と考えられる。

 

5)パラダイムという単語は、主導的思考パターン或いは思考モデルという位の意味だろう。専門図式という解釈もウイキペディアには書かれている。例えば、地動説と天動説は二つのパラダイムである。単に地球が動いているだけでなく、宇宙の運動などに関する記述も地動説パラダイムにより為される。政治における現実主義と理想主義(ウイルソニアン的思考パターン)を、そのようなパラダイムという言葉を用いる是非はわからない。

 

6)「現実の国際政治では、理想主義は役立たない」という動画中の表題(8:53)は、私には、いまひとつ理解できない。遠くを諸外国と眺めるときには理想論も役立つだろう。日本国独自の生存と繁栄を考える場合には、現実主義の考え方は足元を見る意味で大事だろう。二つの考え方を巧みに使い分けてこそ、高度な政治が可能になると思う。

 

7)この動画の中で、馬渕元大使の40分以降の安倍擁護論は非常に苦しい。安倍総理は、トランプに見捨てられた自分を明らかにすれば、自分の政治生命が終わることを考え、安易に日中友好の中に日本の道を探すという致命的な間違いを犯している。それに異議を申し立てず、中国から金をもらった下地議員など自民党議員達は、売国奴的政治屋である。

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