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2023年7月6日木曜日

ウクライナ問題とフランスの暴動、そしてそれらの繫がりについて

及川幸久氏は、昨日、現代の世界に於ける重要な二つの問題に関する解説をyoutube動画で行っている。一つは、ウクライナ戦争でウクライナに勝つ見込みがないという米国シカゴ大のミアシャイマー教授の議論の紹介、もう一つはフランスで起こっている内乱ともいえる暴動に関する議論である。

 

今回は、前者について簡単に触れた後、フランスの暴動について考え、最後に二つの現象には共通の原因が存在するとのコメントを試みる。

 

及川氏の解説によると、ミアシャイマー教授はNATOなど西側のマスコミ報道とは逆に、ロシアの戦闘能力はウクライナを圧倒しており、西側からの支援があってもウクライナに勝ち目がないと話していると言う。

 

そこで、ミアシャイマー教授へのインタビュー動画を探したところ、出てきたのが以下のものであった。

 

 

 

 youtube 動画は抜粋で、全体は音声のみだが以下のサイト参照:https://podcasts.apple.com/us/podcast/interview-john-mearsheimer-leading-international-relations/id1669610956?i=1000618961241

 

少しだけ及川さんの話に無かった部分に触れる。ミアシャイマー教授は、2008年のNATOサミットからの経緯を具体的に説明している。NATOサミットで、ウクライナのNATO 入りが議論されたが、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が反対したという。

 

メルケルは反対の理由として、ウクライナをNATO に入れることは、ロシアのプーチンは宣戦布告と受け取るだろうと言ったという。ミアシャイマー教授もその後の話の中で一貫して、緩衝国としてのウクライナの地政学的位置を重視すべきだとしている。(補足1)

 

その後、オバマ政権の時にはオバマ大統領はネオコンの圧力の下でも、危険をおかしてまでウクライナのNATO加盟を考えることはしないという態度であったが、その後ワシントンの姿勢が変化した。そこに、民主党側があり得ないと考えたヒラリーに対するトランプの勝利があった。

 

ミアシャイマー教授はこの戦争の責任は米国の外交エスタブリッシュメントに存在すると明確に言っている。ただ、教授はネオコンとか外交エスタブリッシュメントには言及するが、世界中のグローバリストが共有する世界支配の長期戦略に対する言及はしない。

 

恐らく米国は、陰謀論という批判が学者としても命取りになる国なのだろう。

 

その他ミアシャイマー教授はウクライナ戦争の現況について、ウクライナはロシア兵1人に対してウクライナ兵5人を犠牲にして、兵力でも武器の面でも強いロシアと愚かにも戦争継続の道を選んでいると解説している。

 

この異常な事態、そしてゼレンスキーによるウクライナ人にとって残忍な戦争継続を、ウクライナ人の愚かな選択としてだけでは理解不能である。それには、前回の記事で書いたように、国際的DS(つまりグローバリストであり現代版トロツキスト)を考えないでは解説不可能だと思う。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12810471872.html

 

兎に角、ウクライナには勝ち目はないようだ。過去の記事の一つをここで撤回削除する。(補足2)https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12803710555.html 

 

また、現在でもロシアでのプーチンの支持率は80%を越えているという。その上、今回の戦争で目覚めた多くのロシア人は、より愛国者(ナショナリスト)になっているようだ。

 

 

2)現代の奴隷制

 

話の前半で、及川氏はフランスの暴動の原因について、フランス経済が北アフリカからの移民のもたらす安い労働力に頼って来たことだとしている。それにより移民労働者とそれ以外のマジョリティとの間に分断を生じたというのである。

 

それは日本も米国も同様で、日本経済は技能実習制度という低賃金で働く外国人労働者に頼っていると指摘する。その原因を考えるヒントとして、映画「縁の下のイミグレ」を紹介している。その映画は、技能実習制度で来日する外国人と、彼らを低賃金で働かせる一部企業の実態を描いているようだ。その実態は現代の奴隷制度ではないかという。

 

そして、低賃金で働く技能実習生と彼らが給与不払いなどでトラブルを抱えることの原因は、我々が安いものを要求しその結果安い労働力が必要となる社会構造に原因がある。その映画は、そのことに気づかせてくれると、及川氏はその映画を評価する。

 

しかし、及川氏のその考えは根本的に間違っている。消費者が安いものを求め、それを供給する側がそれに応じようとするのは自由主義経済では自然なことである。この問題の考察には、もっと近代史的な考察が必要だと思う。

 

先ず、技能実習生制度は欺瞞的であり、まともに議論すべき対象でもない。日本政府とそれを許す日本国民は批難されるべきだ。そのような制度は、設備投資による労働生産性向上の機会を奪う上に、十分企業努力をしない劣悪企業の存続を許すことになる。

 

この30年間の低迷の日本経済の根本には、このような欺瞞をも許す日本文化にあると思う。

 

日本の労働文化に関する多くの問題は、①同一労働同一賃金の原則、②労働の流動性拡大の実現で解決できる。それらの実現を妨げている原因は、能力に沿った採用や昇格が為されていないこと、そして給与が仕事に対して与えられるのではなく、封建時代の“扶ち”に似ているなどの議論は既に行った。(補足3)岸田政権の左翼政策:新しい資本主義 | Social Chemistry (ameblo.jp)

 

フランスの大量移民受け入れと移民が住む地域を別途設けるなどの徹底した隔離政策、そして米国での不法移民の実質的放置(補足4)などと、それらによる治安悪化などの根本的原因も同じく外国人低賃金労働者により生産性を向上させる(生産コストを下げる)という政策にある。

 

そしてそれは、国内製造業などに国際的競争力を維持する為に導入されている。自国産業が国際競争力を失えば、貿易赤字に始まり、その国の通貨安と途上国化が始まるからである。(補足5)

 

 

3)グローバル化が原因

 

この世界的な経済界の動きの原点に、米国が中国を巻き込んで始めた経済のグローバル化がある。資本の自由な国際間移動を中国を対象にしても可能とし、その上で中国の安い労働力を利用する体制を整えることにより、殆どの大きな製造業は中国に移動することになった。(WTOへの中国の加盟)

 

中国共産党独裁政権は、農村戸籍と都市戸籍を峻別して、農村からの出稼ぎ労働者の賃金を安く抑え続け、世界中の製造業を吸収して、その利益で経済大国及び軍事強国となった。それも自国民の奴隷化である。

 

この中国の見せかけの高い労働生産性(つまり安い賃金)の下での製造業と競争する国内企業には、全く新しい分野を開拓創業するか、安価な外国人労働者を国内に流入させるかしかない。

 

日本の場合は、最低賃金の法令を無視できないので、技能実習生という制度の拡大適用に依存したのだろう。米国の場合は、不法移民の大量流入を許す国境政策、フランスの場合も元植民地の北アフリカからのボートピープルの受け入れであった。

 

これらの安い労働力を確保しようとする姿勢は、ともに現代の奴隷制度と言ってもよいが、その問題の解決は簡単ではない。それは単に世界中の資本家がお金儲けの為にやっていることではない。この問題の解決にはもっと根深いところからの問題把握が必要である。

 

これら問題の発端にあるのは、上述の経済のグローバル化である。そしてそれは政治のグローバル化を目指す勢力が、途上国の経済発展を看板に考えだしたことであり、途上国への内政干渉と先進国の国境破壊を目的にする長期戦略として進行中だと思う。

 

フランスの暴動も米国の分裂の危機も、現在が経済のグローバル化から政治のグローバル化に移行する時点に至ったことから本格化したのである。

 

つまり、主権国家体制の固い枠組みの浸食は、経済のグローバル化から始まった。今、その浸食が主権国家体制の枠組み自体の崩壊の瀬戸際に来ているのである。

 

ウクライナ戦争もこの歴史の転換点で発生したのであり、単にクリントンが落ちてトランプが当選したことでロシアゲート疑惑を信じる空気が米国民主党内で蔓延したという話(これも上記ミアシャイマー教授の話にある)や、米国ネオコンのロシア嫌いだけでは解釈不能だと思う。

(18時一部論理不明な点もあり編集しました。申し訳ありませんでした。)

 

補足:

 

1)過去にも言及しているが、元大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャー氏も同様に考え、ダボス会議でウクライナ問題の現実的解決法として、「ウクライナは、ロシア侵攻の日以前に支配下に無かった領域をロシアに割譲すべきだ」と発言した。

 

2)ある米国系と思われる中国人youtuberの方の解説を重視して、この現況について間違った記事を書いたと思います。ここで、5月19日にアップした記事を撤回します。

 

3)扶ち”とは、主君から家臣への給付金であり、それを労働の対価に改めるには、日本に残る家父長制的&封建的な労使関係の解消が必要である。

 

4)国境付近で一旦は逮捕して、裁判所の住所と裁判の期日を記した紙きれを渡して、一旦釈放する。その後、不法移民は二度と裁判所や警察には現れないのである。

 

5)ある国の通貨価値の長期的な動きは、その国の国際収支でほぼ決まる。赤字になっても、必需品(例えばエネルギーや食糧)は輸入しなければならない。その場合、当然自国通貨は安くなる。自国通貨安は国内でインフレを進行させる。このメカニズムには、必須の輸入品がかなり存在する限り、GDPの多くが国内消費であると言ってみても、より遅く進むかもしれないが、変化はない。

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