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人類史の本流は中華秩序なのか、それとも西欧型秩序なのか

1)米国が露呈させた中国共産党政権の真の姿と日本の課題   日本が抱えている最重要な課題は、コロナ問題や拉致問題等ではなく、表題の問に対して明確な答えと姿勢を持つことである。短期的な経済的利益に囚われないで、現在が世界の歴史の方向が決定される時なのかどうかを考えるべきである。...

2024年12月16日月曜日

混乱の韓国: その歴史的背景と将来

 

ユン・ソニョル(尹錫悦)大統領は12月3日夜に戒厳令を発布し、国会を閉鎖すべく軍をを派遣したものの、その特殊部隊が大統領の意思に反して国会を閉鎖しなかった。翌日開かれた国会で戒厳令解除の議決が出され、ユン大統領もそれを受け入れた。

 

このことにより、野党「共に民主党」(以下民主党)が過半数を占める国会は、一度与党の欠席で可決出来なかった大統領の弾劾案を14日に可決しユン大統領の職務が停止された。弾劾案は最高裁判所で審理されることになった。もし可決された場合にはユン大統領は罷免され、その後大統領選挙が行われることになる。また、近日中にユン大統領が内乱罪で告発される可能性が高くなっているという。

 

この件について数日前に文章をアップしたが、不十分な内容だったので一度取り消した。今回、再度修正版をアップすることにした。

 

1)戒厳令を発布した理由

 

今年4月15日に国政選挙が行われ、野党である共に民主党(以下民主党)が多数当選し、ユン大統領の国政をことごとく妨害することになった。大統領の活動がまともに出来ないように必要な予算をゼロにしたり、重要な政府高官や検察官弾劾するなどの妨害を行った。

 

この件は或る勇気ある韓国のyoutuberによって解説されているので、それを引用する。https://www.youtube.com/watch?v=jGyRdNLnlSQ

 

 

 

民主党は、米軍撤収、国家保安法撤廃、ユンソンヨル大統領弾劾などを掲げ、全国民主労働組合総連盟(民労総)と共同で活動している。最早妥協はなく、半年後に出されるであろう韓国最高裁の弾劾が否決される公算が大きいようだが、遅くともその時点から韓国は新たな段階に入るだろう。

今回の混乱は4月の国政選挙で野党の民主党が多数党になった時点に始まる。ユン大統領側は、この選挙に不正があったと考えており、今回の戒厳令は選挙管理委員会の強権的捜索が重要な目的の一つだったようである。

 

BBCの取材を受けた韓国外国語学院の准教授は、「ユン(尹)氏はおそらく逮捕され、尋問され、最終的には内乱罪で起訴されるだろう。ただ、状況はまだ流動的だ」と話した。当時国防部長官(国防大臣)だったキム・ヨンヒョン(金龍顕)氏は、大統領に戒厳令発布を進言したとして内乱罪で既に逮捕・拘禁されている。https://www.bbc.com/japanese/articles/cd9x25xzg85o

 

米国国務長官のブリンケン氏は、この大統領弾劾の動きに関して、「韓国は民主主義の強靭さを示した」と述べた上で、大統領代行となった ハン・ドクス (韓悳洙)首相と協力する姿勢を強調し、米韓同盟に対する「強い支持」も表明したという。https://www.yomiuri.co.jp/world/20241215-OYT1T50017/

 

韓国警察は内乱罪による野党の告発を受けて捜索しているが、これは法的に正しくないと思う。何故なら、戒厳令発布は大統領の職権の範囲内であるからである。ただ、韓国憲法は戒厳令を布いたのち、国会への報告を義務づけている。更に、国会が戒厳令を解除を決議した場合、大統領はそれに従わなければならないとしている。

 

この憲法上の矛盾が今回の混乱の大きな直接的原因のようだ。(この憲法上の矛盾をそのまま指摘できなかったのが、前回投稿を一度取り下げた原因である。)この件について、及び上記の勇気ある韓国人の若者と同じ話が昨日の李相哲さんにより説明されている。https://www.youtube.com/watch?v=m7wI2LBGjGI

 

 

2)韓国政界における深い左右分断 

 

「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は、ユン大統領弾劾が成立した場合、その後の大統領選挙における最有力候補である。しかしイ氏は公職選挙法違反で有罪判決(第一審)を受けており、野党は有罪が確定しない内に大統領選挙に持ち込みたいのだろう。https://www.youtube.com/watch?v=Tk7TfWnWbBo

 

竜谷大学教授の李相哲氏は、早くて来年5月に有罪確定の可能性があると話す。

 

その一方、ユン・ソニョル大統領は弾劾裁判で戦う意思を示しており(補足2)、かなり長引く可能性が高い。裁判の中で、韓国が北朝鮮のスパイ天国となっているとのユン大統領の主張が国民に伝われば、韓国民(特に左翼系)の熱気が冷める可能性がある。

 

イ・ジェミョン 氏と並んで弾劾運動を主導してきた第三党「祖国革新党」のチョ・グク(曹国)氏も娘の不正入試の件で告発されており、12日に有罪が確定し収監された。(補足3)その他には有力な候補を欠いている様で、仮に6ヶ月後にユン大統領弾劾が成立するとしても待てないのである。

 

韓国の検察は、ユン大統領が元検察のトップだったにも拘わらず、戒厳令発布を進めたとされる国防部長官を早急に内乱罪で逮捕した。ユン大統領の出身母体である検察も、左右に深く分断されているのではないだろうか。実際、パク・クネ政権時、保守政治家を選挙で落選させるために、検察は左翼の国家情報院職員が選挙介入した件をもみ消している。https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/23972.html

 

現在韓国は、政治も司法も左右に深く分断された勢力により運営されている。韓国は、米国ブリンケン国務長官の期待?に反してか沿ってか今一つわからないが、左側に急旋回する可能性が高い。米国務長官のブリンケン氏は、何も知らない筈が無いので、上記コメントは異常である。


 

3)背景と今後

 

朝鮮半島は中国など他国に支配されてきた歴史を持ち、その最後の支配国が日本である。それもあって、韓国民衆の愛国心は反日によって成立している。反日が反共と交錯しているのが、韓国分断の原因だろう。(追補1) https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466516806.html 

 

数年前に韓国の京畿道(補足1)議会で、一部日本企業を「戦犯企業」と規定し、学校が保有している製品に「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品である」と記したステッカーを貼り付ける反日教育を義務付ける条例案が可決された。反日を国是とする韓国を雄弁に語る出来事である。

https://www.youtube.com/watch?v=jOgP1p9gkuA

 

 

 

従って、韓国の20世紀後半からの政治は、反日とその揺り戻しの繰り返しである。今回も野党の目論見通り「共に民主党」のトップが大統領になれば、反日政策である慰安婦問題と徴用工問題等をぶり返すだろう。(補足4)左翼の政党には、日韓基本条約など眼中にないのである。

 

韓国は自由主義経済の恩恵を受けながら、この反日遺伝子が自由主義経済圏への反感を誘起し、隣接する共産主義独裁にすら親近感を持つようになる理由だろう。その混乱のままに今日まで来られたのだが、今回はそのような中途半端なことで終わらないかもしれない。

 

桜井よしこ氏は、「共に民主党」の李在明代表が仮に大統領になった場合、北朝鮮に急接近する政策をとるだろうと話している。ただ、北朝鮮は既に南北国境をまたぐ道路を破壊し送電線を撤収するなどして、韓国を敵国と定めており、行き詰った李在明政権は中国に方向を切り替えて接近するだろう。その結果、韓国が中国共産党政権の勢力圏になる可能性があり、それを心配している。https://www.youtube.com/watch?v=KMgeljL8ZQc

 

或いは、そんなことになる前に韓国は内乱或いは内戦のようになり、北朝鮮がそのすきに乗じて韓国侵略を試みる可能性もある。その場合、朝鮮戦争の再開であり、米国と日本はそれと戦うことになる。最近の3代の首相による法と法解釈の変更により、日本は戦争ができる国として米国の同盟国になっている。米国は当然のように日本を朝鮮戦争の米国代理とし、日本はウクライナ化する可能性が高くなり、存亡の危機を迎えることになる。それは以前から書いているように、グローバリストの極東戦略の中心の一つである。

 

なるべく穏便に、一審で選挙違反の件で有罪判決が出ている李在明氏の有罪が確定し、ユン大統領の弾劾が最高裁で否決されることに期待したい。


 

4)この件の本質:米国民主党政権の戦略

 

韓国のアイデンティティは反日であると書いてきた。韓国元ソウル大学教授の李栄薫氏らが書いた本「反日種族主義」は、この事実を韓国側から書いたものである。韓国に反日種族という遺伝子がある限り、日本との真の意味での融和はあり得ない。

 

ユン大統領が目指したのは、この反日種族主義の返上だったが、それが左翼野党との対立の中心にある。この危機をユン大統領が乗り越えれば、極東の同じ自由主義圏の国としての絆を取り戻すことが出来るだろう。逆にユン大統領が弾劾され、共に民主党が政権を再び掌握すれば、韓国は元の反日国にもどる。

 

上に米国ブリンケンしの言葉を紹介したが、この筋書きは米国ネオコンの極東戦略の中にあるので、ブリンケン氏は冷静に見ているのである。更に、韓国に反日であってほしい国は、北朝鮮だけでなく西欧諸国のほとんども含まれる。

 

 

ブリンケン米国務長官の韓国の民主主義を賛美する言葉には、米韓関係が破壊されるかもしれないという心配が感じられない。それは、今回の混乱は、彼らの思った通りの出来事であり、この極東の二国に仕組んだ仕掛けが正常に働いただけだからである。

 

もし、朝鮮戦争が再開され、極東の4ヶ国;中国、北朝鮮、韓国、日本が消耗戦に入り、人口が激減したとすれば、米国ネオコン民主党の理想のシナリオかもしれない。英国の国営放送のBBCが、この件の報道を日本のマスコミとは比較にならないほど勢力的に行っているのも印象的である。

 

追補:

 

1)分断の原因として、北朝鮮と中国による工作が重要である。反日には欠かせない慰安婦問題も、その背後にこれらの国があると考えられている。そこからの工作が韓国の団体である挺対協とともに、問題を作り出し政治的に利用したのだ。

 

 

 

補足:

 

1)第三勢力「祖国革新党」は、文在寅政権時の法務部長官だったチョ・グク(曹国)氏が代表の左翼政党である。2024年の韓国国会総選挙に向け結成された。
 

2)パク・クネ(朴槿恵)元大統領の弾劾裁判の時には、朴氏は裁判に出席しなかった。

 

3)韓国大法院(最高裁)は12日、 子どもの不正入学に関わったとして業務妨害や職権乱用の罪に問われた「祖国革新党」代表のチョ・グク氏に対し、一、二審の判決を支持し、懲役2年と追徴金600万ウォンを言い渡した。実刑が確定し、チョ・グク氏は国会議員を失職する。https://www.asahi.com/articles/ASSDD2JPZSDDUHBI01TM.html

これら政治家の刑事事件の頻発は、「司法の武器化」だと野党側は批判しているが、大統領と法務大臣を今回内乱罪で告発することも同じ様に見える。

 

4)日韓の間に楔を打ち込むのは、尖閣諸島問題も含めて英米グローバリストの企みである。慰安婦問題もその例外ではないのかもしれない。その本質について書いたことがあるので、それをいかに引用する。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12466515859.html

 

(12月21日早朝編集、表題を変更し追補1を追加して最終稿とする)



 

2024年12月12日木曜日

Deep State:金融資本による独裁政治のシステム

 

米国の政治はDeep Stateが動かしているという理解が、ネット社会ではほぼ定着している。ここでDeep State(以下DS)とは、SESSenior Executive Service)と呼ばれる高級官僚たちとSESと関係の深い有力政治家、更に世界の金融と経済を支配する人たちや有力シンクタンクなどとの政治的ネットワークと考えられる。https://www.youtube.com/watch?v=EHeuNIQ9i68

 

 

つまり、米国の政治は政策を考えて作り出すシンクタンク、政界の活動家であるロビィスト、それを議会に諮って法律化する政治家たち、そしてそれを実行する大統領府と各部門の高級官僚たちで動かされている。この中で力があるのは民主党が作り上げた高級官僚組織SESであるとするのが上の動画である。議員の役割として期待されるのは、極論すれば背後が作り上げた脚本に従って法律作りを演じることに過ぎない場合もあるだろう。(補足1)
 

最近数年間の世界政治をみれば、新世界秩序やグレートリセットという言葉にあるような世界史的改変を目指す一部の人々の明確な意思に従って世界の政治が動いているように感じられる。米国民主党による政治は、この世界史的な地球規模の動きと連携している。しかし、このDSモデルには、そのような特定の主体性あるグループやそのイデオロギーが反映していないように思う。

 

米国人の心中には、未だに建国の意思が教育等で存在しており、米国政治が特定の金融資本に乗っ取られている米国政治の現状に対し、十分な考察がなされていないと思う。以下にそれらの点についてなるべく原点から考察を行う。


 

2)Deep State DS)の歴史

 

近代資本主義社会は、産業と金融の連携で発展する経済構造を特徴とする。その経済の主体である株式会社等が、政治に参加し政治を自分たちに有利に動かしたいのは当然である。

 

これら企業を取りまとめる金融資本家或いは「金融資本」(補足2)に、政治を動かすという意思が存在した場合、個人や個別企業に比べてはるかに大きな力があるので、大きな政治的力となる。DSとは、そのような動機で始まり長期間に亘って成長した政治組織だと考えられる。

 

因みに、金融資本は現在では自由主義経済の構造中最上部に位置する。その下に株式会社等があり、個人はその下の最下層に位置する。この経済構造にも拘わらず、政治において最高権力者として個人を置くのが民主主義政治である。 この政治における個人が金融資本に完全に抑えられているというのが、表題の金融資本による独裁政治の意味である。

 

れは、資本主義社会において自然な姿であり、近現代の歴史の流れだろう。金融資本の中で、最も大きく成長したのが産業革命を主導した英国における「金融資本」であった。米国に移住したのち現在のDSをつくりあげたと考える。米国の広い国土と豊かな資源環境の下で、資本主義の経済構造を自らの成長を助ける形に仕上げ、現在、米国の殻を破って世界の政治・経済の支配に乗り出したように見える。

 

この資本主義社会におけるDSの誕生のメカニズムは、普遍的でありその結果世界各地に類似のDSが現れる。それらはよく似た意思をもつので、主として米国の金融資本が米国政府を使って作り上げた経済のグローバル化策を用いて連携して動くように支配している。そして最も強大な米国のDSが中心となり、この経済構造が成立している先進国を支配下に収めている。これが現在までのDSの歴史のように思う。


 

3)DSに支配される側からのDSの発生メカニズム

 

政治家になる動機は何だろうか? 政治家という職業に、社会的地位や名誉に一身をなげ打つだけの意味があるのだろうか? それを考えることも政治学の重要な項目であるべきだが、そのようなアプローチが大学等では研究・教育されているだろうか。
 

中世の絶対君主制や封建制の中では、だれもが政治を支配することの意味が理解できた。食うや食わずの世の中にあって、栄華を極めた王室の建造物や封建時代から残る名城を見るだけでも分かるだろう。近代資本主義社会を引き継ぎ、民主主義を成立さえたと考えられている現代、個人が政治家となり、表の世界で政治を支配するメリットは何だろうか?

 

民主主義国家では、選挙で当選すれば誰でも政治家になれる。選挙のたびに平身低頭する政治家を、民衆は身近な存在として感じるだろう。政治家も一応名誉ある地位と考えられても、大会社のCEOや一流の芸術家や小説家など、多くのより高い名誉ある地位がこの世界に存在する。そのような大衆の認識が、政治家に対する報酬が少ない原因であると思う。

 

この大衆の感覚と政治家の本来のあるべき地位とのギャップが、民主主義国家では非常に優秀な政治家を生まない原因である。例えば、youtube動画の世界では、世界を救うほどの政治的成果でもノーベル賞(補足3)狙いだろうという解釈がまかり通っていると前回記事でも批判した。(補足4)

 

金融資本家たちは、政治へ関与する取っ掛かりとして、政治家という地位の重要性と報酬との間の大きなギャップを利用する。それほど優秀でない政治家候補はその企みに従順に乗る。それは自然の成り行きであり、代替案を熟考しないで単に厳しく禁止すれば、政治家の質が益々低下するのみである。それが現在の政治家(特に左翼政治家)の姿である。これが私が考えたDSの誕生メカニズムのエッセンスである。

 

国政選挙に参加するには、選挙活動に勝ち残らなければならない。政治家候補には十分な資金を持たない場合が多い。(補足5)そこで選挙活動等の資金を補おうとして設立されたのが政治活動委員会(political action comittee; PAC)という制度である。更にその活動資金を無制限にする為に名目上独立の機関としたのがSuperPACである。
 

この制度で多額の政治資金を政治家に供給し、自らの野望をそれら政治家を使って達成しようとするのが、米国の金融資本家たちとそのネットワークが作るDSである。スーパーPACはこのDSが政治支配の能力拡大のために作り上げた制度だろう。https://cigs.canon/about/management/37840b9264f1c1229ac9c84ae44c943d73bdc364/20240221_7930.html

 

因みに、現在日本で進行している企業・団体献金の廃止を含む政治資金規正の動きの中で、民主党が政治団体を除外しようとしているのは、米国の上記制度に倣っているのだろう。つまり、民主党も自民党も政治資金に関しては同じ考えであり、多額の政治資金を念頭に例外を設けようとしているのである。https://news.yahoo.co.jp/articles/6f293a9d37279987b3d3d79e8a61c1836057b968

 

金融資本家たちは、企業と政治の両方を支配することで、巨万の富と自分の欲望を実現しようとする。(補足6)彼らは、SuperPACに制限なく多大の資金を供給し、特定の議員を支援する。そして議員たちは政治という演劇の中での役者を務めるため、主要メディアの宣伝(プロパガンダ)に従って最後の儀式である選挙によって選任される。

 

提供した金は、違った形で増額の上回収するという目論見あっての資金提供である。それが政治を民主国家にあるべき姿から変形するというのも至極当然である。このような政治環境では、大衆が選挙によって政治を動かすことなど不可能である。以上、これまでの米国の政治は金権が支配しており、その意味で一党独裁、金権党の独裁に近い。


 

Deep State (DS)と寡頭政治

 

米国では、ほとんどの国会議員(連邦議会議員)らは、議員を辞めたあとは膨大な政治資金の流れのなかに身を置いて現役時代よりも多額の報酬を得ることになる。議員としてのキャリアはそのロビィストになるための準備期間とも言えなくもない人も多いという。

 

この膨大な金融資本からロビー活動によって政治に流れるのはお金だけでなく、当然彼らが期待する政治の方向に関する情報も含まれる。その流れのなかに棲む住人は議員だけでなく、大統領までの行政官も含まれる。そのようにして金融資本と政治を結びつけるのである。その構造全体がDSである。

 

201911月に「崩壊する米国と道に迷う世界」という記事を書いた。この中にニューヨーク在住の国際政治研究家の伊藤貫氏の言葉から引用した文章があるので再録する。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12544848302.html

 

経済学者のサイモン・ジョンソン(Simon Johnson)は、「IMFを経験して(chief economist20073月〜20088月)分かったことは、米国もロシアと同様に寡頭政治(Oligarchy)だということだ」と言ったという。それは、ウオール街の金融業者が、巨大な金融資産で、政治をコントロールしているという意味である。米国の政治は世界の政治であるので、その結果として現在のグローバル化政治経済となったのである。

 

米国には建国以来、民主主義の伝統がある。それに英国で育ったDSが乗り込みオリガルヒ的な政治と経済を作り上げた。この大きな長年かかって作り上げられた構造の巻き戻しが、不動産で財をなした異色の政治家トランプとSNSによる加勢で可能となったように見える。この両者、金融資本家オリガルヒとそれに対抗するトランプ一派との戦いの頂点を若干過ぎた位置が現在の米国政治だと思うが、未だ勝敗は明確ではない。


 

終わりに:

 

現金、預貯金、株式、債券、など実物資産でない換金性の資産を金融資産という。金融経済はこれらの間の取引からなり、お金を通して実物経済と関係を持つ。金融資産が巨大化すれば、その一部が偏在化し、現実社会に通常あり得ない影響を及ぼす可能性がある。
 

世界の金融経済は肥大化を続け、現在実物経済の4倍程度あると言われている。このように巨大化した金融経済の身震いにより、実物経済が風邪をひくというのが現状である。リーマンショックなどがその例である。

 

金融はあくまでも実体経済を助けるわき役でなくてはならない。それをまるで主役のようにしてしまったのが現在の金融経済である。それを積極的に企んだのが、ある一部の金融家である。そしてそれを助けたのがDS政府による巨額の政府債務とそれに呼応する形で増大した民間債務の増加である。
 

国際金融協会(IIF)によると、20249月時点で世界の債務残高は312兆ドルに達しているという。その約13が公的債務である。https://www.nira.or.jp/paper/opinion-paper/2022/63.html
 

米国の公的債務の多くは、自国のための財政支出の他、DSの要求に従って世界の政治経済を牛耳るための戦争の経費として積み上げられた。公的債務は、私的資産となって蓄積するので、巨大化した私的金融資産は幾つかのプールの中にため込むための工夫もされてきた。

 

例えばビットコインの総額は1210日現在、288兆円にも上る。仮想通貨全体ではこの倍程度になるようである。この何の裏付けもない仮想の世界にすら、金が流れて金融資産化しているのである。それが金融経済のバブル的構造の典型である。
 

仮想の世界にまで金融経済が進出するのだから、もっとも人間的な政治の世界に金融の力が影響を強めるのは当然の成り行きだろう。その馬鹿げた世界を作り上げたのが、金融を奇形的に発展させた現在の仕組みである。それを実行した者たちは、上記米ドルの地位を守る戦争などを含めて人類史的な悪の創造者である。
 

その元をたどれば、上述のように人類の中での生存競争である。人間の生存欲が他に及ぼす行為は通常悪であり、自然なことではある。優秀な頭脳の持ち主が悪となり、劣悪な頭脳しか持たない者たちを支配し淘汰するという自然現象と言えなくもない。


 

補足:
 

1)米国の政治家は日本の政治家と比較して優秀な人物が多い。それ故、DSの枠を超えて本来の民主政治を取り戻そうとする政治家も時として現れる。その場合には、暗殺されたりスキャンダルをファイルの中から取り出して、或いは捏造して失脚させられる可能性が高くなる。上記動画では、ヒラリークリントンに対するDSの工作活動が述べられている。

 

2)金融資本は、資本主義という経済構造の中で株式会社等を支配する最上部の組織である。個人は株式会社等法人に雇用される存在であり、構造的には最下層である。民主主義とは、その最下層がすべてを支配するという政治形態だとすると、生物界を人類を含めて自然淘汰の世界と考える限り、幼稚な理想論にすぎない。

 

3)自然科学研究に携わった経験では、ノーベル賞の対象となったかなりの数の研究には世間で騒がれるほどの価値はない。自然科学の発展は世界中の無数の研究者が作りあげたのであり、ノーベル賞は単に独断と偏見で発展の歴史を極めて荒く点描したにすぎない。

 

4)下に引用の読売TVnewsyoutubeチャンネルでは、世界を第三次世界大戦から救うことになるかもしれないトランプ次期米国大統領(予定)の最近の活動にたいして、ノーベル賞を狙ってその候補となる期限の1月末までにウクライナ戦争を停戦させるためだと、かなり著名な方が話している。勿論、本人の気持ちは知る由もないがマスコミ従事者は、そのような低い評価を口にすべきではない。https://www.youtube.com/watch?v=bQJtqXfioFE
 

5)大きな企業の経営者が政治家になれば、この穴埋めができる。それがドナルド・トランプだろう。ひょっとしてイーロン・マスクがその跡を継ぐかもしれない。政治資金を他に頼っていてはDSの廃止を政策として提出することは不可能である。


6)政治を支配し企業に富を誘導する時、上記方法がもっとも有効になる産業は軍需産業である。そのように考えると、J.F. Kennedyのやろうとしたこと、米国の軍事戦略を大量報復型から相互確証破壊型に変更し、それに伴う軍事予算を削減することは、軍産共同体の産業側にとってはなんとか妨害したかったようである。これはナオキマンの動画で日本保守連合(JCU)の饗庭浩明氏がロバートケネディJrから聞いたJFK暗殺者の話である。https://www.youtube.com/watch?v=0fGMEwQ-PSQ (28分頃から)

 

追補: 今回はこれまでとは違って特定の民族を表に出さない形でDSを議論しました。これまでの議論は当ブログサイトに山ほどアップしましたのでご覧ください。過去の文章からうまくピックアップできないのですが、一つだけ下に引用します。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12862389687.html

 

(18:00、2か所修正、12/13/5:30一部修正し追補を付けて最終稿とする。)

2024年12月7日土曜日

ウクライナ和平は来年1月20に達成されるかも

ウクライナの方の日本語Youtubeチャンネル:U-Timesで、ウクライナ和平が1月20日に実現する可能性が高いとの発信がなされているので紹介したい。(補足1)U-Timesの発信者であるBOGDANさんは、これまでウクライナ戦争の戦況や評価をウクライナ側に立って発信されてきた人である。

 

2016年の大統領候補時代、トランプ次期米国大統領の外交アドバイザーだった陸軍(退役)中将のJoseph Keith Kellog Jr. (以下ケロッグ氏) が特使(補足2)となって、ケロッグ氏らが取りまとめた和平案に沿って交渉が進められているという。https://www.youtube.com/watch?v=rRDqm7y3eDM

 


ウクライナのネット新聞であるKyiv Independentや、ドイツ国際公共放送のDWnews(Deutsche Welle)も、トランプ次期米大統領の任命したケロッグ氏はウクライナとロシアの間で中立的であり、その提案は受け入れ可能であると報じている。

 

Kellog氏がまとめたウクライナ和平案

以下のBOGDANさんの解説に於ける和平案は、4月に出されたケロッグ氏らによるオリジナル案を踏まえているが、裏で進行している交渉を踏まえた最新の和平案だと解釈される。


先ず、西側はプーチン政権を一方的な悪とする評価を改めて、ロシアの国際的孤立化策を中止する。そして、以下の条件を提示し、ウクライナとロシアを和平交渉の場につかせる。

  ウクライナのNATO加盟を10年間延期する。

  現在ロシアが占領する領域をロシアの管理のままに保存する。
  停戦後に残存しているロシア制裁を段階的に解除する。

  ウクライナはこの地域のロシアによる併合を認めなくて良い。

  ウクライナはロシア支配域を奪還する為の軍事行動はしない。

  ウクライナへの軍事支援と安全保障を継続するが、交渉を拒否するなら軍事援助は打ち切る。
 

停戦後にウクライナへの監視団として英国とフランスが軍隊を派遣するように交渉が進んでいる。場合によってはドイツも監視団に参加する可能性があるという。(補足3)


この案にプーチン露大統領は既に同意しており、この案で国民を納得させる準備を配下に指示したと報道されているという。なかなか納得しない過激派がロシアに多くいるとBOGDANさんは話す。

なお、ロシア制裁の解除は現在苦境のロシア経済を救うことになるが、ロシアがこの案を受け入れない場合には、現在進行中のシリア内戦をアサド政権側の全面的敗北となると圧力をかけていると話している。

BOGDANさんは、今回のシリアのアサド政権側への反政府派の攻撃は、トランプ次期米大統領とトルコのエルドアン大統領との連携でなされ、ロシアをこの和平案へ同意させる為の圧力として利用する目論見があったと解釈しているようである。(補足4)

またBOGDANさんは、エルドアンとトランプの両氏は、ウクライナ戦争の停戦実現により歴史に名を残し、ノーベル平和賞の獲得を考えていると推測している。(補足5)

 

因みに、Kyivインディペンデント誌は、ドナルド・トランプ次期米大統領が11月27日にキース・ケロッグ氏をウクライナとロシア担当の特使に任命したことは、キエフにとっては(ケロッグ氏の和平案は)理想的ではないが、受け入れ可能で妥当な選択だとアナリストらは言うと書いている。

 

 

 

補足:

 

1)1月20日はバイデン政権が終わる日であり、且つトランプ政権の始まる日である。この日をBOGDANさんがどのように導いたのか、或いは知ったのかは分からない。しかし、もしこの日にウクライナとロシアの和平が実現すれば、バイデン政権も一部この和平実現を助けたということになり、政権移譲の障害となりにくいと考えたのかもしれない。

 

2)トランプ氏は1月6日の上院で次期大統領に決定される予定であり、正式には次期大統領ではない。従ってケロッグ氏は私人トランプ氏が政権を担ったときに予定する特使であり、バイデン政権の特使ではない。従って、このような和平案とそれに基づく話し合いに公的な権威は全くない。

なお、民間人がアメリカ政府の公式な外交政策を妨げたり、取引を行ったりすることを禁止する法律としてローガン法があるので、それに触れないように注意が必要だろう。

 

3)ウクライナへの監視団としてNATO加盟国が参加すれば、それは継続的なウクライナ支援とも考えられ、ウクライナのゼレンスキー政権にも受け入れやすい。これにロシアが同意するとすれば、それはプーチン露大統領がトランプ次期政権に対して信頼感を持っているからだろう。

 

4) この作戦は、レバノンのヒズボラに兵器を送るシリアを攻撃するという目的があったようだ。この辺りについては、以下のブログが詳細に解説しています。

 

 

5)政治家なら歴史に名をのこすと言う野望はあるだろうが、ノーベル賞はそのような活動の目的とはなり得ないと思う。BOGDANさんはノーベル賞を過大評価し過ぎであると私は思う。

(14時、編集)